(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059487
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】レーザ加工機
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20230420BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20230420BHJP
B23K 26/70 20140101ALI20230420BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K26/03
B23K26/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169538
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】伊東 美紀
(72)【発明者】
【氏名】鶴留 亮太
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168CA16
4E168CB03
4E168CB15
4E168HA05
4E168HA06
4E168JA02
(57)【要約】
【課題】通常のパスラインよりも高い位置にワークが存在しているなどの場合、加工ヘッドがワークなどに干渉してしまうことがある。
【解決手段】レーザ加工機10は、ワークWが載置されるパレット50と、ワークWに向かってレーザビームを照射する加工ヘッド30と、加工ヘッド30を移動させるヘッド駆動機構15と、加工ヘッド30の先端からワークWまでの距離をセンサ距離として検出するセンサ部35と、ワークWに対する加工ヘッド30の先端の高さが予め定められた倣い高さを保つように、センサ距離に基づいて倣い動作を行う制御装置100と、を備えている。制御装置100は、ワークWのレーザ加工を開始する加工開始点において、センサ距離に基づいて加工ヘッド30の先端をワークWに対して接近させる動作を行うことで、倣い動作を開始するときの加工ヘッド30の高さの基準値を設定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが載置されるパレットと、
前記パレットの上方に配置され、前記ワークに向かってレーザビームを照射してレーザ加工を行う加工ヘッドと、
前記ワークの面内方向において直交する前後方向及び左右方向、並びに前記ワークの面直方向である上下方向に沿って前記加工ヘッドを移動させるヘッド駆動機構と、
前記加工ヘッドの先端から前記ワークまでの距離をセンサ距離として検出するセンサ部と、
前記ワークの前記レーザ加工に伴って前記加工ヘッドを前記前後方向及び前記左右方向に移動させるときに、前記ワークに対する前記加工ヘッドの先端の高さが予め定められた倣い高さを保つように、前記センサ距離に基づいて前記加工ヘッドを前記上下方向に移動させる倣い動作を行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記ワークの前記レーザ加工を開始する加工開始点において、前記センサ距離に基づいて前記加工ヘッドの先端を前記ワークに対して接近させる動作を行うことで、前記倣い動作を開始するときの前記加工ヘッドの高さの基準値を設定する
レーザ加工機。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記基準値をメモリに記憶し、
前記基準値の設定後に前記倣い動作を行うときは、前記メモリから読み出した前記基準値から、前記倣い動作を開始する
請求項1記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記制御装置は、
加工プログラムに従って前記ワークの前記レーザ加工を行い、
前記加工プログラムに規定される複数のコードのうち、最初に到来する加工開始のコードの実行をトリガーとして、前記基準値の設定を行う
請求項1又は2記載のレーザ加工機。
【請求項4】
前記パレットは、
枠体と、
前記枠体に跨がるように、互いに間隔を空けて配列された複数の板状のワーク支持部材と、を含み、
前記パレットには、
前記複数の板状のワーク支持部材の間隔よりも小さな間隔のメッシュ構造からなる加工用ジグが設置される
請求項1から3いずれか一項記載のレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
板金などの板状のワークに対して切断加工を行う加工機として、レーザビームを用いて加工を行うレーザ加工機が知られている。レーザ加工機は、ワークにレーザビームを照射することで、熱エネルギーによってワークを切断する。レーザ加工機は、レーザビームを照射する加工ヘッドをワークの面内方向に沿って移動させることで、ワークからパーツを切り出す。また、レーザ加工機は、レーザ加工を行うときに、ワークに対して加工ヘッドが一定の高さを保つように、加工ヘッドを上下方向に移動させる倣い動作を行う(特許文献1)。
【0003】
レーザ加工機は、加工対象となるワークが載置されるパレットを備えている。熱エネルギーの影響を受けたワークの溶融物が溶着することを防止するために、パレットには、複数の山形の突出部を備える板状のワーク支持部材が一定の間隔を空けて配列されている(特許文献2)。パレット上のワークは、複数の板状のワーク支持部材によって支持されている。
【0004】
薄板のワークを用いて微細なパーツを切り出す微細加工を行う場合、切り出された微細なパーツが、隣接するワーク支持部材の間から落下してしまう。そこで、微細加工を行う際には、レーザ加工機のパレットに、ワーク支持部材の間隔よりも小さな間隔のメッシュ構造からなる加工用ジグを設置し、この加工用ジグ上にワークを載置してレーザ加工を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-09906号公報
【特許文献2】特許第4188471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザ加工機は、通常のパスライン、すなわちワーク支持部材によって支持されるワークを対象としてレーザ加工を行うことが通常である。このため、倣い動作を開始するときの加工ヘッドの高さである倣い開始高さは、ワークの板厚に一定のマージンを加算した値に基づいて決定されている。しかしながら、加工用ジグを用いる場合などのように、通常のパスラインよりも高い位置にワークが存在している場合、加工ヘッドがワークなどに干渉してしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のレーザ加工機は、ワークが載置されるパレットと、パレットの上方に配置され、ワークに向かってレーザビームを照射してレーザ加工を行う加工ヘッドと、ワークの面内方向において直交する前後方向及び左右方向、並びにワークの面直方向である上下方向に沿って加工ヘッドを移動させるヘッド駆動機構と、加工ヘッドの先端からワークまでの距離をセンサ距離として検出するセンサ部と、ワークのレーザ加工に伴って加工ヘッドを前後方向及び左右方向に移動させるときに、ワークに対する加工ヘッドの先端の高さが予め定められた倣い高さを保つように、センサ距離に基づいて加工ヘッドを上下方向に移動させる倣い動作を行う制御装置と、を備えている。制御装置は、ワークのレーザ加工を開始する加工開始点において、センサ距離に基づいて加工ヘッドの先端をワークに対して接近させる動作を行うことで、倣い動作を開始するときの加工ヘッドの高さの基準値を設定する。
【0008】
本発明の一態様のレーザ加工機によれば、ワークの加工を開始する加工開始点において、センサ距離に基づいて加工ヘッドの先端をワークに対して接近させる動作を行っている。ワークがパスラインよりも高い位置に存在するような場合であって、センサ部によってワークの上面を検知することができるので、ワークと干渉させることなく加工ヘッドをワークに対して接近させることができる。これにより、倣い開始高さを適切に取得することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、適切な高さから倣い動作を開始することができるので、加工ヘッドがワークなどに干渉してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るレーザ加工機を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るレーザ加工機を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、レーザ加工機の制御構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、レーザ加工機の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本実施形態に係るレーザ加工機について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るレーザ加工機の構成を模式的に示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係るレーザ加工機を模式的に示す斜視図である。まず、本実施形態に係るレーザ加工機10の概要を説明する。このレーザ加工機10は、ワークWが載置されるパレット50と、パレット50の上方に配置され、ワークWに向かってレーザビームを照射してレーザ加工を行う加工ヘッド30と、ワークWの面内方向において直交する前後方向及び左右方向、並びにワークWの面直方向である上下方向に沿って加工ヘッド30を移動させるヘッド駆動機構15と、加工ヘッド30の先端からワークWまでの距離をセンサ距離として検出するセンサ部35と、ワークWのレーザ加工に伴って加工ヘッド30を前後方向及び左右方向に移動させるときに、ワークWに対する加工ヘッド30の先端の高さが予め定められた倣い高さを保つように、センサ距離に基づいて加工ヘッド30を上下方向に移動させる倣い動作を行う制御装置100と、を備えている。制御装置100は、ワークWのレーザ加工を開始する加工開始点において、センサ距離に基づいて加工ヘッド30の先端をワークWに対して接近させる動作を行うことで、倣い動作を開始するときの加工ヘッド30の高さの基準値を設定する。
【0013】
以下、
図1乃至
図3を参照し、本実施形態に係るレーザ加工機の詳細を説明する。
図3は、レーザ加工機の制御構成を示すブロック図である。本明細書では、水平方向において直交する左右方向及び前後方向と、左右方向及び前後方向それぞれに直交する上下方向とを方向の定義として用いる。左右方向及び前後方向は、パレット50に載置されるワークWの面内方向と対応し、上下方向は、パレット50に載置されるワークWの面直方向に対応する。
【0014】
図1に示すように、レーザ加工機10は、基台11と、サイドフレーム12と、ヘッド駆動機構15と、加工ヘッド30と、センサ部35と、パレット50と、制御装置100と、レーザ発振器110とを備えている。
【0015】
基台11は、概ね直方体状に構成されており、床面などの設置面に設置される。
【0016】
サイドフレーム12は、基台11の前縁部及び後縁部にそれぞれ配置されている。前縁部及び後縁部のサイドフレーム12は、互いに平行に配置されている。
【0017】
ヘッド駆動機構15は、前後方向、左右方向及び上下方向に沿って加工ヘッド30を移動させる機構である。ヘッド駆動機構15は、X軸キャリッジ16と、Y軸キャリッジ17と、Z軸駆動部18とを備えている。
【0018】
X軸キャリッジ16は、門型形状を有している。X軸キャリッジ16は、一対のサイドフレーム12によって支持されており、サイドフレーム12に沿って移動可能に構成されている。X軸キャリッジ16は、サイドフレーム12に設けられたX軸駆動部19(
図3参照)によって駆動され、左右方向に移動する。
【0019】
Y軸キャリッジ17は、X軸キャリッジ16に配置されている。Y軸キャリッジ17は、X軸キャリッジ16によって支持されており、X軸キャリッジ16に沿って移動可能に構成されている。Y軸キャリッジ17は、X軸キャリッジ16に設けられたY軸駆動部20(
図3参照)によって駆動され、前後方向に移動する。
【0020】
Z軸駆動部18は、Y軸キャリッジ17に配置されている。Z軸駆動部18は、加工ヘッド30を上下方向に沿って移動させる。Z軸駆動部18は、駆動モータ、駆動モータの回転駆動を上下方向の直線運動に変換するボールねじ、上下方向の位置を検出する位置センサとしてのエンコーダなどで構成されている。
【0021】
図1及び
図3に示すように、加工ヘッド30は、ワークWの上方からレーザビームを照射して、ワークWに対してレーザ加工を行う。加工ヘッド30には、プロセスファイバを介して、レーザ発振器110から射出されたレーザビームが伝送されている。加工ヘッド30の先端には、レーザビームを射出するノズル31が着脱自在に取り付けられている。ノズル31の先端部には、円形の開口が設けられており、レーザビームは、ノズル31の先端部の開口からワークWに照射される。
【0022】
加工ヘッド30は、Y軸キャリッジ17に配置されており、上下方向に移動可能に構成されている。X軸駆動部19及びY軸駆動部20を駆動して、X軸キャリッジ16及びY軸キャリッジ17を移動させることにより、加工ヘッド30をワークWの面内方向と平行な左右方向及び前後方向にそれぞれ移動させることができる。また、Z軸駆動部18を駆動することにより、加工ヘッド30をワークWの面直方向である上下方向に移動させることができる。
【0023】
加工ヘッド30は、ヘッド駆動機構15による左右方向の移動及び前後方向の移動を通じて、予め定められた加工範囲の中で、レーザ加工を行うことができる。本実施形態のレーザ加工機10は、小さいサイズのワークWを想定した装置であり、加工範囲は、最大で4'×4'(1219mm×1219mm)サイズのワークWを加工することができる範囲に設定されている。
【0024】
図1に示すように、パレット50は、一対のサイドフレーム12によって水平に支持されている。パレット50には、ワークWが載置される。パレット50は、ほぼ正方形に形成されている。パレット50には、最大で4'×4'サイズのワークWを載置することができる。
【0025】
パレット50は、枠体51と、複数のスキッド52と、複数のクランプ部53とを備えている。
【0026】
枠体51は、上面視において略方形となるフレーム部材である。
【0027】
複数のスキッド52は、パレット50に載置されるワークWを支持する。個々のスキッド52は、左右方向にかけて間隔を空けて配置されている。スキッド52は、前後方向に延在する板状のワーク支持部材であり、鋼などの金属材料、例えば軟鋼から構成されている。スキッド52は、前後方向と平行に配置され、スキッド52の両端は、枠体51に対して固定されている。枠体51に固定されたスキッド52は、例えば鉛直に起立している。
【0028】
個々のスキッド52は、それぞれが上方に向かって突出する複数の突出部を備えている。複数の突出部は、スキッド52の上端部に、前後方向にかけて間隔を空けて設けられている。突出部は、上下方向に沿って縦長となる板体であり、上端部に向かう程に幅が狭くなるような山形の形状を有している。ワークWは、スキッド52の上端部、すなわち個々の突出部の頂点において支持される。
【0029】
複数のクランプ部53は、スキッド52によって支持されるワークWを固定する。複数のクランプ部53は、枠体51に固定されている。
【0030】
図2に示すように、パレット50上の所定の領域には、薄板などのワークWを載置して微細加工を行うための加工用ジグ55を設置することができる。加工用ジグ55は、矩形フレーム56と、この矩形フレーム56に保持されたワーク支持体57とで構成されている。ワーク支持体57は、パレット50に配列されたスキッド52の間隔よりも小さな間隔のメッシュ構造を有している。このようなメッシュ構造としては、水平方向の断面形状が六角形となるハニカム形状、水平方向の断面形状が四角形となる格子形状を用いることができる。加工用ジグ55は、上下方向に一定の幅を備えており、その上面にワークWを載置することができる。加工用ジグ55に載置されたワークWは、スキッド52によって支持されるワークWの高さである通常のパスラインよりも高い位置に存在することになる。
【0031】
図1及び
図2に示すように、制御装置100は、箱形の筐体、この筐体の内部に収容される回路基板などで構成されている。制御装置100は、基台11の右端下方に配置され、基台11に固定されている。
【0032】
図3に示すように、制御装置100は、レーザ加工機10の各部の動作を制御する。制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサ(Hardware Processor)と、メモリ(Memory)と、各種のインターフェース(Interface)とを有するコンピュータによって構成されている。メモリ、各種のインターフェースは、バスを介してハードウェアプロセッサに接続されている。ハードウェアプロセッサによってメモリに格納されたプログラムを実行させることにより、制御装置100が備える種々の機能が実現される。
【0033】
制御装置100には、加工ヘッド30に搭載されたセンサ部35から出力されるセンサ信号が入力されている。センサ部35は、倣いセンサであり、加工ヘッド30の先端、すなわちノズル31から、その下方に存在するワークWまでの距離をセンサ距離として検出する。センサ部35としては、例えば静電容量の変化によって距離を検出する静電容量式のセンサを用いることができる。
【0034】
本実施形態の関係において、制御装置100は、メモリから加工プログラムを呼び出して実行し、ヘッド駆動機構15及びレーザ発振器110といったレーザ加工機10の各部の動作を制御してワークWに対してレーザ加工を行う。例えば、制御装置100は、ヘッド駆動機構15を制御して、ワークWから所定形状のパーツを切り出すように、加工ヘッド30を左右方向及び前後方向に移動させる。
【0035】
制御装置100は、ワークWのレーザ加工に伴って加工ヘッド30を左右方向及び前後方向に沿って移動させるときに倣い動作を行う。倣い動作とは、ワークWに対する加工ヘッド30の先端(ノズル31)の高さが予め定められた倣い高さGpを保つように、加工ヘッド30を上下方向に移動させる動作をいう。また、制御装置100は、ワークWの加工を開始する加工開始点において、センサ距離に基づいて加工ヘッド30の先端をワークWに対して接近させる動作を行う。制御装置100は、この接近動作を通じて、倣い動作を開始するときの加工ヘッド30の高さの基準値(以下「倣い開始高さ」という)を設定する。
【0036】
図1及び
図3に示すように、レーザ発振器110は、レーザビームを生成し、加工ヘッド30に対してレーザビームを供給する。レーザ発振器110は、箱形の筐体と、この筐体の内部に収容される電子部品及び電機部品などで構成されている。レーザ発振器110は、基台11の右端上方に配置され、基台11に固定されている。レーザ発振器110は、制御装置100の上方に配置されており、レーザ発振器110と制御装置100との間には隙間となる空間部が形成されている。
【0037】
図4は、レーザ加工機の動作を示すフローチャートである。つぎに、本実施形態に係るレーザ加工機10の動作について説明する。以下の説明では、テーブル50に加工用ジグ55を設置し、この加工用ジグ55上のワークWに対してレーザ加工を行う状況を前提とする。
図4のフローチャートに示される動作は、ワークWを加工するための加工プログラムの実行をトリガーとして開始される。
【0038】
まず、ステップS10において、制御装置100は、加工プログラムにおいて実行するコードを監視し、ワークWの加工開始であるか否かを判断する。具体的には、制御装置100は、現在実行するコードが、加工プログラムに規定される複数のコードのうち、最初に到来する加工開始のコードであるか否かを判断する。加工開始のコードとしては、例えばM103といった加工ヘッド30の下降を指令するコードなどを用いることができる。換言すれば、このステップS10の判断により、加工ヘッド30が、ワークWの加工を開始する加工開始点にあるか否かが判断される。
【0039】
ステップS10において肯定判定された場合、すなわち加工開始である場合には、ステップS11に進む。一方、ステップS10において否定判定された場合、すなわち加工開始ではない場合には、ステップS10に戻る。
【0040】
ステップS11において、制御装置100は、加工ヘッド30の先端をワークWに対して接近させる動作を開始する。ステップS11の接近動作は、現在の加工ヘッド30の上下方向の位置(高さ)、すなわち加工開始(M103)によって加工ヘッド30を下降させる前の位置を起点に実行される。この接近動作により、加工ヘッド30は、現在位置から下降させられ、加工ヘッド30の先端がワークWに対して所定の基準高さとなるまでワークWに接近させられる。基準高さは、ワークWのレーザ加工時の倣い動作で用いる倣い高さGpであってもよいし、ステップS11の動作のときのみに用いる専用の高さであってもよい。制御装置100は、センサ距離に基づいて、ステップS11の動作を行う。
【0041】
ステップS12において、制御装置100は、ステップS11の接近動作の結果から、ワークWに対して基準高さとなったときの加工ヘッド30の先端の高さ(上下方向の位置)を取得する。なお、加工ヘッド30の先端の高さは、ワークWの上面の高さ(上下方向の位置)から基準高さだけ上方に位置する関係にあり、両者の間には相関があるので、ステップS12で取得する高さは、ワークWの高さであってもよい。
【0042】
ステップS13において、制御装置100は、ステップS12で取得された高さに基づいて倣い開始高さを設定する。倣い開始高さは、ステップS12で取得された加工ヘッド30の高さをそのまま用いてもよいし、ステップS12で取得された加工ヘッド30の高さに対して一定のマージンを加味した値を用いてもよい。そして、制御装置100は、設定した倣い開始高さをメモリに記憶する。
【0043】
このような一連の処理により倣い開始高さが設定されると、制御装置100は、加工プログラムを終了するまで間、すなわち同一のワークWに対して加工を行っている間は、倣い動作を行う場合、メモリから読み出した倣い開始高さから倣い動作を開始する。すなわち、倣い開始高さの設定は、最初のパーツに対する加工開始点に行われ、それ以降に同一のワークWの中で加工される別のパーツに対する加工開始点においては行われない。
【0044】
このように本実施形態のレーザ加工機10によれば、ワークWの加工を開始する加工開始点において、センサ距離に基づいて加工ヘッド30の先端をワークWに対して接近させる動作を行っている。ワークWがパスラインよりも高い位置に存在する場合であっても、センサ部35によってワークWの上面までの高さを検知することができるので、ワークWと干渉させることなく加工ヘッド30をワークWに対して接近させることができる。このとき、加工ヘッド30の高さを通じてワークWの高さを認識することができるので、倣い開始高さを適切に設定することができる。これにより、適切な高さから倣い動作を開始することができるので、加工ヘッド30がワークWなどに干渉することを抑制することができる。
【0045】
本実施形態において、制御装置100は、倣い開始高さをメモリに記憶し、倣い開始高さの設定後に倣い動作を行うときは、メモリから読み出した倣い開始高さから倣い動作を開始している。
【0046】
この構成によれば、倣い動作の度に、倣い開始高さを設定する必要がない。これにより、加工動作を効率的に行うことができるので、生産性の向上を図ることができる。
【0047】
本実施形態において、制御装置100は、加工プログラムに従ってワークWに対するレーザ加工を行い、加工プログラムに規定される複数のコードのうち、最初に到来する加工開始のコードの実行をトリガーとして、倣い開始高さの設定を行っている。
【0048】
この構成によれば、加工ヘッド30がワークWと干渉する可能性がある最初のタイミングで倣い開始高さの設定を行っている。したがって、倣い開始高さを適切に取得することができる。これにより、適切な高さから倣い動作を開始することができるので、加工ヘッド30がワークWなどに干渉することを抑制することができる。
【0049】
本実施形態において、パレット50は、枠体51と、枠体51に跨がるように、互いに間隔を空けて平行に配列された複数のスキッド52と、を備えている。パレット50には、複数のスキッド52の間隔よりも小さな間隔のメッシュ構造からなる加工用ジグ55が設置される。
【0050】
この構成によれば、加工用ジグ55の上面にワークWを載置することができるので、薄板などワークWを用いて微細なパーツを切り出す加工を行うことができる。また、加工用ジグ55によってワークWがパスラインよりも高い位置に存在するような場合であって、センサ部35によってワークWの上面を検知することができるので、ワークWと干渉させることなく加工ヘッド30をワークWに対して接近させることができる。したがって、倣い開始高さを適切に取得することができる。これにより、適切な高さから倣い動作を開始することができるので、加工ヘッド30がワークWなどに干渉することを抑制することができる。
【0051】
本実施形態に係るレーザ加工機10は、加工用ジグ55上でワークWをレーザ加工するような加工形態において好適である。しかしながら、成形物上といったように通常のパスラインとは異なる高さでレーザ加工を行う加工形態に広く適用することができる。ただし、本実施形態に係るレーザ加工機10は、通常のパスラインでレーザ加工を行う加工形態であっても適用可能である。
【0052】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0053】
10 レーザ加工機
11 基台
12 サイドフレーム
15 ヘッド駆動機構
16 X軸キャリッジ
17 Y軸キャリッジ
18 Z軸駆動部
19 X軸駆動部
20 Y軸駆動部
30 加工ヘッド
31 ノズル
35 センサ部
50 パレット
51 枠体
52 スキッド
53 クランプ部
55 加工用ジグ
56 矩形フレーム
57 ワーク支持体
100 制御装置
110 レーザ発振器