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特開2023-59511木製の巻取ドラムと回転軸との連結構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059511
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】木製の巻取ドラムと回転軸との連結構造
(51)【国際特許分類】
   B65H 49/20 20060101AFI20230420BHJP
   E21F 17/02 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B65H49/20
E21F17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169570
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】504066298
【氏名又は名称】和田 勝秀
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】和田 勝秀
【テーマコード(参考)】
3F109
【Fターム(参考)】
3F109BA01
3F109CA04
3F109CA06
3F109CB01
(57)【要約】
【課題】木製ドラムを回転軸に簡単に取り付けて両者を容易に連結することができる木製ドラムと回転軸との連結構造を提供すること。
【解決手段】回転軸7によって回転駆動される木製ドラム8と回転軸7との連結構造であって、木製ドラム8の一対の側板8Bの中心には、回転軸7が挿通する円孔8aがそれぞれ形成され、回転軸7には、金属製の一対の連結部材9が軸方向に摺動可能にそれぞれスプライン嵌合しており、前記各連結部材9は、木製ドラム8に向かって縮径する裁頭円錐状の部材であって、その外周面には軸方向に沿う歯(突起)9aが周方向に複数突設されており、一対の連結部材9を回転軸7に沿って互いに近接する方向に移動させ、各連結部材9の外周に突設された歯9aを木製ドラム8の円孔8aに食い込ませて木製ドラム8と回転軸7とを連結部材9によって連結する。
【選択図】図8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸によって回転駆動される木製の巻取ドラム(以下、木製ドラムという。)と前記回転軸との連結構造であって、
前記木製ドラムの一対の側板の中心には、前記回転軸が挿通する円孔がそれぞれ形成され、
前記回転軸には、金属製の一対の連結部材が軸方向に摺動可能にそれぞれスプライン嵌合しており、
前記各連結部材は、前記回転ドラムに向かって縮径する裁頭円錐状の部材であって、その外周面には軸方向に沿う突起が周方向に複数突設されており、
一対の前記連結部材を前記回転軸に沿って互いに近接する方向に移動させ、各連結部材の外周に突設された前記突起を前記木製ドラムの前記円孔に食い込ませて前記木製ドラムと前記回転軸とを前記連結部材によって連結することを特徴とする木製ドラムと回転軸との連結構造。
【請求項2】
前記連結部材の外周面に突設された複数の前記突起は、軸方向に沿って互いに平行に突設されたプレート状の歯で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の木製ドラムと回転軸との連結構造。
【請求項3】
前記連結部材の外周面に突設された複数の前記突起は、雄ネジで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の木製ドラムと回転軸との連結構造。
【請求項4】
一対の前記連結部材の外周にそれぞれ突設された雄ねじは、互いに逆ネジで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の木製ドラムと回転軸との連結構造。
【請求項5】
前記雄ネジの前記木製ドラムの前記円孔への食い込みは、前記回転軸の回転を停止した状態で、前記木製ドラムを回転させることによって行われることを特徴とする請求項3または4に記載の木製ドラムと回転軸との連結構図。
【請求項6】
前記回転軸の回転停止は、ブレーキ装置によって行われることを特徴とする請求項5に記載の木製ドラムと回転軸との連結構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーが巻取られる木製の巻取ドラム(以下、木製ドラムともいう。)と金属製の回転軸との連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シールド工法によるトンネルの構築作業においては、シールドマシンで掘削されたトンネル内が換気されるが、この換気は、地上に設置された送風機から吐出される外気をダクトとこれに接続された風管を経てトンネル内に供給することによって行われる。
【0003】
ここで、上記風管は、伸縮可能な蛇腹状の管であって、トンネル内において、トンネルの掘削の進行に合わせて当該トンネルの天井に沿って順次継ぎ足されて設置される。トンネルの天井に沿って配置される複数の風管は、ワイヤーの巻取ドラムから引き出され適宜の張力を備えて天井に架設されるワイヤーに支持されトンネルの天井に沿って水平に吊下げられる。ここで巻取ドラムから引き出されるワイヤーに適宜張力を付与できる機能を備える巻取ドラムはワイヤーテンショナーとも称される。
【0004】
ところで、上述のトンネル工事などの現場において使用されるワイヤーのテンショナー機能を備える巻取ドラムに、市販の木製ドラムが使用される場合、木製の巻取ドラムを金属製の回転軸に強固に連結する必要がある。なお、ワイヤーの巻取ドラムに関しては、今までに種々の提案がなされている(例えば、特許文献1~3参照)が、木製の巻取ドラムとそれを回転自在に支持する回転軸との連結構造や連結形態について格別の工夫をしたものは見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭57-082157号公報
【特許文献2】実開昭63-128427号公報
【特許文献3】特開平8-081186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように,トンネル工事などの現場で風管をトンネルの天井に沿って吊り下げ支持するために用いられるワイヤーの巻取ドラムには、ワイヤーを巻取った市販の木製ドラムが使用されている。この木製ドラムとこれを回転支持する金属製の回転軸との連結は、単に連結するだけではなく、木製ドラムから引き出されるワイヤーに適切な張力(テンション)をかけるために、木製ドラムと金属製の回転軸とは確実強固に連結されている必要があるが、木製の巻取ドラムと金属製の回転軸の連結は容易ではなく、複雑な構造と多くの部品を要するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、木製ドラムを回転軸に簡単に取り付けて両者を容易に連結することができる木製ドラムと回転軸との連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、回転軸によって回転支持される木製ドラムと前記回転軸との連結構造であって、前記木製ドラムの一対の側板の中心には、前記回転軸が挿通する円孔がそれぞれ形成され、前記回転軸には、金属製の一対の連結部材が軸方向に摺動可能にそれぞれスプライン嵌合しており、前記各連結部材は、前記回転ドラムに向かって縮径する裁頭円錐状の部材であって、その外周面には軸方向に沿う突起が周方向に複数突設されており、一対の前記連結部材を前記回転軸に沿って互いに近接する方向に移動させ、各連結部材の外周に突設された前記突起を前記木製ドラムの前記円孔に食い込ませて前記木製ドラムと前記回転軸とを前記連結部材によって連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属製の一対の連結部材を回転軸に沿って互いに近接する方向に移動させ、各連結部材の外周に突設された突起を木製ドラムの円孔に食い込ませるだけという簡単な操作によって木製ドラムと回転軸とを容易に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】シールド工法によるトンネルの構築作業を示す部分側断面図。
図2】本発明に係る連結構造を適用したワイヤーテンショナーの一部破断正面図。
図3図1のワイヤーテンショナーの平面図。
図4図1のワイヤーテンショナーの左側面図。
図5図2のA-A線拡大端面図。
図6】(a)は本発明の実施の形態1に係る木製ドラムと回転軸との連結構造に使用される連結部材の側面図、(b)は(a)の矢視B方向の正面図。
図7】本発明の実施の形態1に係る木製ドラムと回転軸との連結構造に使用される連結部材の斜視図。
図8】(a)~(c)は図6図7の連結部材を用いた実施の形態1に係る木製ドラムと回転軸との連結方法をその工程順に示す部分正断面図。
図9】本発明の実施の形態2に係る木製ドラムと回転軸との連結構造に使用される連結部材の側面図。
図10】(a)~(c)は図9の連結部材を用いた実施の形態2に係る木製ドラムと回転軸との連結方法をその工程順に示す部分正断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
[ワイヤー巻取ドラムの使用例]
先ず、ワイヤー巻取ドラムの使用例として、シールド工法によるトンネルの構築作業を図1に基づいて概説する。なお、図1においては、シールドマシンの進行方向前方を「前」、逆方向を「後」、図1の紙面垂直方向を「左右」、図1の上下を「上下」とする。
【0013】
図1はシールド工法によるトンネルの構築作業を示す部分側断面図であり、トンネル100の構築作業においては、図1に示すように、地中が図示矢印方向に進行するシールドマシン50によって掘削され、地中には円孔状のトンネル100が形成される。ここで、シールドマシン50の後方には、複数(図示例では、2台)の台車51,52が連結されており、最後尾の台車52には後述するワイヤーテンショナー機能を備える木製のワイヤー巻取ドラム1(以下、この巻取ドラム1をワイヤーテンショナー1ということもある。)が搭載されている。なお、複数の台車51,52は、トンネル100内に敷設された仮設レール101に沿って走行する。
【0014】
ところで、工事中はトンネル100内が換気されるが、この換気は、地上に設置された送風機(ブロア)60から吐出される外気がダクト61とこのダクト61に連結された複数の風管62を経てトンネル100内に供給されることによってなされる。ここで、送風機60の吐出側から延びるダクト61は、立坑200を垂直下方に向かって延びた後、トンネル100の天井100aに沿って直角に折り曲げられており、その端部には、トンネル100の天井100aに沿って配置された複数(図示例では、2つ)の風管62が接続されている。
【0015】
上記風管62は、伸縮可能な蛇腹状の管部材であって、トンネル100内においては、この風管62は、トンネル100の掘削の進行に合わせてトンネル100の天井100aに沿って順次継ぎ足されていく。そして、トンネル100の天井100aに沿って配置された複数の風管62は、ワイヤー巻取ドラム1から引き出されて天井100aに架設されるワイヤーWによってトンネル100の天井100aに沿って略水平に吊下げられる。より詳細には、ワイヤー巻取ドラム1から引き出されたワイヤーWの端部(自由端)は、図1の点aにてトンネル100の天井100aに固定されており、接続された各風管62は、そのフランジ部62aが図示の点b,c点においてワイヤーWで吊下げ支持されることによって、トンネル100の天井100aに沿って略水平に配置されている。なお、複数の風管62を吊下げ支持するワイヤーWは、図1に示す点dにおいて折り返されてワイヤー巻取ドラム1に巻き取られ、ワイヤーWには適宜の張力が掛かっている。
【0016】
ところで、トンネル100の構築作業の進行に伴ってシールドマシン50は前方(図1の左方)へと移動し、これに伴って該シールドマシン50の後部に連結された複数(図示例では、2台)の台車51,52も仮設レール101に沿って前方へと移動する。すると、最後尾の台車52に搭載されているワイヤー巻取ドラム1も台車52と共に前方へと移動し、該ワイヤー巻取ドラム1からワイヤーWが引き出される。
【0017】
また、上述のようにシールドマシン50と台車51,52の前方への進行に伴って、掘削されるトンネル100の長さが次第に長くなるため、トンネル100の奥まで十分に換気するためには、既設の風管62に別の風管62を新たに継ぎ足していく必要がある。
【0018】
したがって、トンネル100の天井100aに沿って架設されたワイヤーWに略水平に吊下げ支持される風管62の数は、シールドマシン50によるトンネル100の構築作業の進行に伴って増えていく。増設される風管62をトンネル100の天井100aに沿って略水平に吊下げ支持するためには、ワイヤーWは、ワイヤー巻取ドラム1が台車52と共に前方へと移動しているときも含めて常に所定の張力で引っ張られている必要がある。このため、本実施の形態では、ワイヤー巻取ドラム1に制動手段が設けられてワイヤーテンショナー1に形成されているが、この制動手段については後述する。
【0019】
ここで、ワイヤー巻取ドラム1(ワイヤーテンショナー1)の構成の詳細を図2図5に基づいて以下に説明する。
【0020】
[ワイヤー巻取ドラム(ワイヤーテンショナー)]
図2はワイヤー巻取ドラム1の一部破断正面図、図3は同ワイヤー巻取ドラム1の平面図、図4は同ワイヤー巻取ドラム1の左側面図、図5図2のA-A線拡大断面図であり、これらの図においては、図示のように各矢印方向をそれぞれ「前後」、「左右」、「上下」方向とする。
【0021】
図示のワイヤー巻取ドラム1は、矩形枠状に構成された基台2を底部に備えており、この基台2の左右には、L字状に屈曲された支持フレーム3,4の各側壁3A,4Aがそれぞれ垂直に立設されている。そして、支持フレーム3,4の各側壁3A,4Aには、軸受ブロック5,6がそれぞれ同一高さ位置に取り付けられており、これらの軸受ブロック5,6には、左右方向に沿って水平に配された回転軸7が回転可能に挿通支持されている。すなわち、回転軸7は、その左右両端部が軸受ブロック5,6を介して左右の支持フレーム3,4の各側壁3A,4Aに回転可能に支持されている。
【0022】
そして、回転軸7の左右方向の中間部には、該回転軸7によって回転支持される木製の巻取ドラム8(以下、木製ドラム8という。)が配置されている。この木製ドラム8は、円筒状の胴部8Aと、該胴部8Aの軸方向両端に取り付けられた円板状の左右の側板8Bによって構成されており、左右の側板8Bの各中心には、図2に示すように、円孔8aがそれぞれ形成されており、これらの円孔8aを回転軸7が貫通している。したがって、木製ドラム8は、後述する連結部材9を介して回転軸7と同軸に配されており、回転軸7の軸心Oを中心として該回転軸7と共に一体に回転する。なお、回転軸7の左右の軸受ブロック5,6で挟まれた部分(中央部分)は、図5にその断面を示すように、スプライン軸とされている。なお、図示しないが、木製ドラム8の胴部8Aの外周には、ワイヤーWが巻回されている。
【0023】
ところで、木製ドラム8と回転軸7との連結は、回転軸7に軸方向に沿って摺動可能にスプライン嵌合する左右一対の連結部材9によって行われるが、この連結構造の詳細は後述する。
【0024】
そして、本実施の形態に係るワイヤー巻取ドラム1には、木製ドラム8のワイヤー引き出し方向の回転に制動を加えて当該木製ドラム8から引き出されるワイヤーWに所定の張力(テンション)を付与するための制動手段の一例としてディスクブレーキ10が設けられている。
【0025】
上記ディスクブレーキ10は、図2図4に示すように、回転軸7の左端部に結着された円板状のブレーキディスク11と、このディスクブレーキ11を左右両側から挟み込むための左右一対のブレーキパッド12a,12bを備えるブレーキキャリパ12を含んで構成されている。ここで、ブレーキキャリパ22は、図2に示すように、左側の支持フレーム3の側壁3Aから左方に向かって水平に延びる支持ステー13を介して支持フレーム3に取り付けられており、このブレーキキャリパ12には、調整ボルト14が進退可能に螺合している。この調整ボルト14はその先端部が一方のブレーキパッド12aに当接しており、従って調整ボルト14は、ディスクブレーキ10の制動力を調整する調整機構を構成している。
【0026】
木製ドラム8の回転に制動を加えるディスクブレーキ10を備えることによりワイヤー巻取ドラム1はワイヤーテンショナー1になり、このワイヤーテンショナー1が図1に示すように工事中のトンネル100の内の最後尾の台車52に搭載された状態では、ディスクブレーキ10によって木製ドラム8の回転に制動を加えている。このため、工事の進行に伴って走行台車52とこれに搭載されたワイヤーテンショナー1(ワイヤー巻取ドラム1)が前進することによって該ワイヤー巻取ドラム1から引き出されるワイヤーWには所定の張力が付与される。すなわち、ワイヤー巻取ドラム1(ワイヤーテンショナー1)からはワイヤーWが所定の張力で引っ張られた状態で引き出されることになる。
【0027】
したがって、図1において前述したようにシールドマシン50によるトンネル100の構築作業の進行に伴って風管62を継ぎ足し、トンネル100の天井100aに沿って複数の風管62がワイヤーWによって略水平に吊下げられた状態において、前述のようにワイヤーWは、所定の張力によって常に緊張状態にあるため、このワイヤーWによって略水平に吊下げ支持される複数の風管62が自重によって垂れることがなく、これらの風管62は、ワイヤーWによってトンネル100の天井100aに沿って略水平に吊下げ支持される。
【0028】
なお、ディスクブレーキ10(図2図4参照)によってワイヤーWに付与される張力は、調整ボルト14を回転させることによって任意に調整される。具体的には、調整ボルト14を図4の矢印x方向(時計方向)に回せば、ブレーキキャリパ12の一方のブレーキパッド12aがブレーキディスク11を押圧する力が増大してディスクブレーキ10の制動力が高められるため、引き出されたワイヤーWに付与される張力が大きくなる。逆に、調整ボルト14を図4の矢印y方向(反時計方向)に回せば、ブレーキキャリパ12の一方のブレーキパッド12aがブレーキディスク11を押圧する力が減少してディスクブレーキ10の制動力が小さくなるため、ワイヤーWに付与される張力が小さくなる。
【0029】
[木製ドラムと回転軸との連結]
次に、木製ドラム8と回転軸7との連結構造の実施の形態について説明する。
【0030】
<実施の形態1>
図6(a)は本発明の実施の形態1において使用される連結部材の側面図、図6(b)は図6(a)の矢視B方向の図、図7図6の連結部材の斜視図、図8(a)~(c)は本発明の実施の形態1に係る木製ドラムと回転軸との連結方法をその工程順に示す部分正断面図である。
【0031】
本実施の形態1において使用される連結部材9は、その外径が木製ドラム8に向かって(図6(a)の右方に向かって)縮径する裁頭円錐状の金属部材であって、そのテーパ面状の外周面には、軸方向(図6(a)の左右方向)に沿って直線状に延びる複数(図示例では、8つ)のプレート状の突起としての歯9aが周方向に等角度ピッチ(図示例では、45°ピッチ)で立設されている(図6(b)及び図7参照)。ここで、連結部材9の外周に立設された複数の歯9aの外接円直径の最小値φDmin(図6参照)は、木製ドラム8の円孔8aの内径φd(図8参照)よりも小さく設定されており(φDmin<φd)、複数の歯9aの外接円直径の最大値φDmax(図6参照)は、木製ドラム8の円孔8aの内径φdよりも大きく設定されている(φDmax>φd)。なお、左右一対の連結部材9の構成は同じであり、図6及び図7には一方(左側)の連結部材9のみを図示している。また、図6及び図7に示すように、連結部材9の中心には、回転軸7のスプライン部が挿通嵌合するスプライン孔9Aが貫設されている。
【0032】
次に、以上のように構成された左右一対の連結部材9を用いた木製ドラム8と回転軸7との連結方法を図8(a),(b)にしたがって以下に説明する。
【0033】
図8(a)に示すように、木製ドラム8の左右の側板8Bにそれぞれ開口する円孔8aに回転軸7が挿通し、この回転軸7に軸方向に摺動可能にスプライン嵌合した左右一対の連結部材9が木製ドラム8の左右の側板8Bから軸方向に離間している状態から、左右の連結部材9を回転軸7に沿って互いに近づく方向に摺動させる。すると、左右の連結部材9の各外周面に立設された複数の歯9aが図8(b)に示すように木製ドラム8の左右の側板8Bに開口する円孔8aにそれぞれの歯9aにより形成される溝に嵌め込まれる。そして、この状態から左右の連結部材9を互いに近づく方向(図8(b)の矢印方向)に強く押し込むと、金属製の左右の連結部材9に形成された複数の歯9aが木製ドラム8の左右の側板8Bに開口する円孔8aの内周面にそれぞれ食い込み、これらの連結部材9を介して木製ドラム8と回転軸7とが図8(c)に示す状態に連結され、両者は一体に回転可能となる。
【0034】
以上のように、本実施の形態1においては、金属製の一対の連結部材9を回転軸7に沿って互いに近接する方向に移動させ、各連結部材9の外周にそれぞれ突設された複数の歯9aを木製ドラム8の円孔8aに食い込ませるだけの簡単な操作によって木製ドラム8と回転軸7とを容易に連結することができる。
【0035】
なお、本実施の形態1では、各連結部材9の外周に8つの歯9aをそれぞれ立設したが、歯9aの数は8つに限定される訳ではなく、複数であれば任意である。また上記において左右の側板8Bの円孔8aに連結部材9が食い込んで回転軸7と連結された木製ドラム8は当該回転軸7のスラスト方向にフリーであるが、木製ドラム8が回転軸7上で移動しても左右の側板8Bが左右の軸受ブロック5,6のインナーベアリングに接して同期回転するからスラスト方向の移動は問題にならない。
【0036】
<実施の形態2>
次に、木製ドラム8と回転軸7との連結構造の実施の形態2を図9及び図10に基づいて以下に説明する。
【0037】
図9は本発明の実施の形態2において使用される連結部材の斜視図、図10(a)~(c)は本発明の実施の形態2に係る木製ドラムと回転軸との連結方法をその工程順に示す要部の正断面図である。
【0038】
本実施の形態2において使用される連結部材19は、その外径が木製ドラム8に向かって(図9の右方に向かって)縮径する裁頭円錐状の金属部材であって、そのテーパ面状の外周面には、突起として螺旋状の雄ネジ19aが形成されている。なお、連結部材19の中心には、回転軸7のスプライン部が挿通嵌合するスプライン孔19Aが貫設されている。
【0039】
ここで、連結部材19の外周に形成された雄ネジ19aの外接円直径の最小値φDmin(図9参照)は、木製ドラム8の円孔8aの内径φd(図10参照)よりも小さく設定されており(φDmin<φd)、雄ネジ19aの外接円直径の最大値φDmax(図9参照)は、木製ドラム8の円孔8aの内径φdよりも大きく設定されている(φDmax>φd)。なお、左右の連結部材19の構成は同じであるため、図9には一方(左側)の連結部材19のみを図示している。但し、左右の連結部材19の各外周面に形成された雄ネジ19aは互いに逆ネジの関係にある。
【0040】
次に、以上のように構成された左右一対の連結部材19を用いた木製ドラム8と回転軸7との連結方法を図10(a)~(c)にしたがって以下に説明する。
【0041】
図10(a)に示すように、木製ドラム8の左右の側板8Bにそれぞれ開口する円孔8aに回転軸7が挿通し、この回転軸7に軸方向に摺動可能にスプライン嵌合した左右一対の連結部材19が木製ドラム8の左右の側板8Bから軸方向に離間している状態から、左右の連結部材19を回転軸7に沿って互いに近づく方向に摺動させる。すると、左右の連結部材19の各外周面に形成された雄ネジ19aが図10(b)に示すように木製ドラム8の左右の側板8Bに開口する円孔8aにそれぞれ嵌め込まれる。
【0042】
そして、上記状態からディスクブレーキ10(図2図4参照)によって回転軸7の回転を阻止(ロック)した状態で木製ドラム8を回転させる。このように、回転軸7を固定した状態で木製ドラム8を回転させると、この木製ドラム8の左右の側板8Bは大径であるため、この大径の側板8Bを手動で回すことによって、小さなトルクで木製ドラム8を回転させることができる。
【0043】
上述のように、回転軸7の回転を阻止(ロック)した状態で木製ドラム8を回転させると、前述のように左右の連結部材19に形成された雄ネジ19aは互いに逆ネジの関係にあるため、これらの連結部材19が回転軸7に沿って図10(c)の矢印方向(互いに近づく方向)に移動し、これらの連結部材19に形成された各雄ネジ19aが木製ドラム8の左右の円孔8aの内周面をねじ切りしながら該円孔8aの内周面に食い込んでいく。この結果、左右の連結部材19によって木製ドラム8と回転軸7とが確実に連結され、両者が一体に回転することができる。
【0044】
以上のように、本実施の形態2においては、金属製の一対の連結部材19をその外周面に設けた雄ネジ19aの逆ネジの関係を利用して回転軸7に沿って互いに近接する方向に移動させる。即ち、前記雄ネジ19aが木製ドラム8の左右の円孔8aにそれぞれ嵌め込まれた状態において回転軸7の回転を阻止(ロック)し、木製ドラム8を回転させるだけの簡単な操作によって、各連結部材19に形成された雄ネジ19aが木製ドラム8の左右の円孔8aの内周面にねじ切りしながら食い込んで木製ドラム8と回転軸7とを確実に連結することができる。これによって木製ドラム8と回転軸7とを容易且つ確実に連結することができるという効果が得られる。
【0045】
なお、以上は、本発明をシールド工法によるトンネルの構築作業において使用されるワイヤー巻取ドラムに対して適用した例について説明したが、本発明は、他の任意の用途に供されるワイヤー巻取ドラムに対しても同様に適用可能である。
【0046】
また、以上の実施の形態では、制動手段としてディスクブレーキを用いた例について説明したが、制動手段としては、ディスクブレーキ以外の例えばドラムブレーキなどの他の任意の機械的ブレーキを用いることができる。
【0047】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 ワイヤー巻取ドラム(ワイヤーテンショナー)
3,4 支持フレーム
5,6 軸受ブロック
7 回転軸
8 木製ドラム(木製の巻取ドラム)
8A 木製ドラムの胴部
8B 木製ドラムの側板
8a 木製ドラムの円孔
9 連結部材
9a 連結部材の歯(突起)
19 連結部材
19a 連結部材の雄ネジ(突起)
W ワイヤー

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10