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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059526
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】鉄道車両用制振装置
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/24 20060101AFI20230420BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20230420BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20230420BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B61F5/24 F
F15B11/028 A
F16F9/32 T
F16F9/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169587
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】青木 淳
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小林 将之
【テーマコード(参考)】
3H089
3J069
【Fターム(参考)】
3H089AA03
3H089BB10
3H089BB17
3H089CC01
3H089DA02
3H089DA14
3H089DB03
3H089DB33
3H089DB43
3H089EE36
3H089FF10
3H089GG02
3H089JJ20
3J069AA50
3J069AA64
3J069EE02
3J069EE32
3J069EE35
(57)【要約】
【課題】アクチュエータに外乱が入力されてもアクチュエータに目標推力と誤差の少ない推力を発揮させ得る鉄道車両用制振装置を提供する。
【解決手段】鉄道車両用制振装置1は、シリンダ2と、シリンダ2内に移動可能に挿入されるピストン3と、シリンダ2内に移動可能に挿入されるとともにピストン3に連結されるロッド4と、シリンダ2内に流体を供給可能なポンプ12と、ポンプを駆動するモータ15と、圧力オーバーライド特性を具備するとともに供給される電流量に応じてシリンダ2内の圧力を調整する圧力制御弁22とを有するアクチュエータAと、圧力制御弁22の開弁圧を調整してアクチュエータAが発生する推力を制御するコントローラCとを備え、コントローラCは、アクチュエータAに発生させる目標推力Frefと、ポンプ12の回転数Rpとに基づいて、圧力制御弁22へ与える目標電流量Irefを求める。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、前記シリンダ内に前記シリンダの軸方向へ移動可能に挿入されるピストンと、前記シリンダ内に前記シリンダの軸方向へ移動可能に挿入されるとともに前記ピストンに連結されるロッドと、前記シリンダ内に流体を供給可能なポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、圧力オーバーライド特性を具備するとともに供給される電流量に応じて開弁圧を変更可能であって前記シリンダ内の圧力を調整する圧力制御弁とを有するアクチュエータと、
前記圧力制御弁の開弁圧を調整して前記アクチュエータが発生する推力を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記アクチュエータに発生させる目標推力と、前記ポンプの回転数とに基づいて、前記圧力制御弁へ与える目標電流量を求める
ことを特徴とする鉄道車両用制振装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記モータが有する回転位置センサが検知する前記モータのロータの回転位置から前記ポンプの回転数を把握する
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用制振装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記ポンプを基準回転数で駆動しつつ、前記圧力制御弁へ与える電流量を調整して、前記アクチュエータの前記推力を制御するとともに、
前記基準回転数を含んだ回転数帯域における複数の異なる指定回転数に対して、それぞれ設定された複数の関数を有し、
前記関数は、前記目標推力をパラメータとして前記目標電流量を求める関数であって、
前記コントローラは、前記圧力制御弁が供給される電流量の増加に伴い開弁圧を減少させる場合、前記ポンプの回転数以上であって値が最も近い指定回転数に対応する関数を利用して前記目標電流量を求め、前記圧力制御弁が供給される電流量の増加に伴い開弁圧を増加させる場合、前記ポンプの回転数以下であって値が最も近い指定回転数に対応する関数を利用して前記目標電流量を求める
ことを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道車両用制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用制振装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の制振用途に利用される鉄道車両用制振装置は、鉄道車両の車体と台車との間に水平に介装されて、車体の進行方向に対して左右方向の振動を抑制する目的で使用されている。そして、鉄道車両用制振装置は、アクチュエータとアクチュエータを制御するコントローラとを備えており、アクチュエータが発生する推力で車体の振動を抑制する。
【0003】
このような鉄道車両用制振装置におけるアクチュエータは、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、シリンダ内に移動可能に挿入されるとともにロッドに連結されるとともにシリンダ内を作動油が充填されたロッド側室とピストン側室とに区画するピストンと、作動油を貯留するタンクと、ロッド側室とピストン側室とを連通する第1通路に設けた第1開閉弁と、ピストン側室とタンクとを連通する第2通路に設けた第2開閉弁と、ロッド側室へ作動油を供給するポンプと、ポンプを駆動するモータと、ロッド側室とタンクとを連通する排出通路と、排出通路に設けた開弁圧を変更可能な比例電磁リリーフ弁と、ピストン側室からロッド側室へ向かう作動油の流れのみを許容する整流通路と、タンクからピストン側室へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路とを備えている(たとえば、特許文献1参照)。第1開閉弁と第2開閉弁とはアクチュエータの推力の方向の切り換えのために使用され、比例電磁リリーフ弁はアクチュエータの推力の調整のために使用される。
【0004】
比例電磁リリーフ弁は、コントローラからの通電量に比例して開弁圧を変化させてシリンダ内の圧力を調整できる。そして、アクチュエータの推力がシリンダ内の圧力に比例して変化するため、コントローラは、比例電磁リリーフ弁へ供給する電流量の適切に制御することで、アクチュエータの推力を制御している。
【0005】
詳細には、コントローラは、車体の加速度を検知して、当該加速度からアクチュエータに発揮させる目標推力を求め、ポンプを一定の回転数(回転速度)で回転させるようにモータを制御しつつ、第1開閉弁、第2開閉弁および比例電磁リリーフ弁を制御して、アクチュエータに目標推力通りの推力を発揮させようにしている。
【0006】
ここで、比例電磁リリーフ弁は、作動油の通過流量の増加に伴って抵抗が増える圧力オーバーライド特性を有しているため、通過流量に変動があると、シリンダ内の圧力が変動してアクチュエータの推力も変動する。
【0007】
そこで、従来の鉄道車両用制振装置では、コントローラは、アクチュエータの伸縮速度を検知して、伸縮速度からシリンダから排出される作動油流量を把握して、ポンプから吐出される作動油の流量とシリンダ内から排出される作動油の流量との合計流量が一定となるようにポンプの回転数を調節し、シリンダ内の圧力変動を低減させてアクチュエータに目標推力通りの推力を発揮させるようにしている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-202675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の鉄道車両用制振装置では、コントローラは、アクチュエータの伸縮速度に応じてポンプの回転数を都度調節することで、アクチュエータに作用する外乱による流量変動の影響を取り除き、比例電磁リリーフ弁を通過する作動油量を一定に保つことで、アクチュエータの推力を目標推力となるように制御する。
【0010】
よって、従来の鉄道車両用制振装置では、コントローラは、加速度から求めた目標推力のみをパラメータとして比例電磁リリーフ弁の電流量を求める関数に、目標推力を代入して当該電流量を求めて、比例電磁リリーフ弁に求めた電流量の電流を供給している。
【0011】
ところが、アクチュエータに作用する外乱の影響によってポンプの回転数が変動し、また、モータの目標回転数に対する追従性に限界があるため、従来の鉄道車両用制振装置では、アクチュエータに外乱が作用すると、比例電磁リリーフ弁を通過する作動油量が変動してしまい、目標推力とアクチュエータが実際に発生する推力との間に少なからぬ差が生じてしまうという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、アクチュエータに外乱が入力されてもアクチュエータに目標推力と誤差の少ない推力を発揮させ得る鉄道車両用制振装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した目的を達成するため、本発明の鉄道車両用制振装置は、シリンダと、シリンダ内にシリンダの軸方向へ移動可能に挿入されるピストンと、シリンダ内にシリンダの軸方向へ移動可能に挿入されるとともにピストンに連結されるロッドと、シリンダ内に流体を供給可能なポンプと、ポンプを駆動するモータと、圧力オーバーライド特性を具備するとともに供給される電流量に応じて開弁圧を変更可能であってシリンダ内の圧力を調整する圧力制御弁とを有するアクチュエータと、圧力制御弁の開弁圧を調整してアクチュエータが発生する推力を制御するコントローラとを備え、コントローラは、アクチュエータに発生させる目標推力と、ポンプの回転数とに基づいて、圧力制御弁へ与える目標電流量を求める。
【0014】
このように構成された鉄道車両用制振装置では、コントローラがポンプの回転数を監視して、ポンプの実際の吐出流量に応じてアクチュエータに目標推力通りに推力を発揮させるために最適な目標電流量を求めることができる。
【0015】
また、鉄道車両用制振装置におけるコントローラは、モータが有する回転位置センサが検知するモータのロータの回転位置からポンプの回転数を把握してもよい。このように構成された鉄道車両用制振装置によれば、ポンプの回転数の検知にあたってモータが備えている回転位置センサを利用しているので、わざわざポンプの回転数を検知するセンサを設けなくて済み、コストを低減できる。
【0016】
さらに、鉄道車両用制振装置は、コントローラがポンプを基準回転数で駆動しつつ、圧力制御弁へ与える電流量を調整して、アクチュエータの推力を制御するとともに、基準回転数を含んだ回転数帯域における複数の異なる指定回転数に対して、それぞれ設定された複数の関数を有し、関数が目標推力をパラメータとして目標電流量を求める関数であって、コントローラが、圧力制御弁が供給される電流量の増加に伴い開弁圧を減少させる場合、ポンプの回転数以上であって値が最も近い指定回転数に対応する関数を利用して目標電流量を求め、圧力制御弁が供給される電流量の増加に伴い開弁圧を増加させる場合、ポンプの回転数以下であって値が最も近い指定回転数に対応する関数を利用して目標電流量を求めてもよい。
【0017】
このように構成された鉄道車両用制振装置によれば、アクチュエータが実際に発生する推力は、必ず、コントローラが求めた目標推力以下になるので、アクチュエータが車体の振動を抑制するために必要な目標推力を超える推力を発生して車体を加振して振動抑制能力を低下させてしまうこともない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の鉄道車両用制振装置によれば、アクチュエータに外乱が入力されてもアクチュエータに目標推力と誤差の少ない推力を発揮させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】鉄道車両に設置した一実施の形態における鉄道車両用制振装置を示す図である。
図2】一実施の形態の鉄道車両用制振装置におけるアクチュエータの回路図である。
図3】一実施の形態の鉄道車両用制振装置における圧力制御弁の圧力流量特性図である。
図4】一実施の形態の鉄道車両用制振装置におけるコントローラの構成図である。
図5】圧力制御弁に供給する電流量とアクチュエータの推力との関係を示した図である。
図6】一実施の形態の鉄道車両用制振装置におけるコントローラの処理手順を示したフローチャートである。
図7】供給される電流量の増加に伴って開弁圧を減少させる圧力制御弁を利用する場合における圧力制御弁へ供給する電流量とアクチュエータの推力との関係を示した図である。
図8】供給される電流量の増加に伴って開弁圧を増加させる圧力制御弁を利用する場合における圧力制御弁へ供給する電流量とアクチュエータの推力との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における鉄道車両用制振装置1は、図1に示すように、アクチュエータAと、アクチュエータAを制御するコントローラCとを備えて構成されている。アクチュエータAは、一端が鉄道車両Tにおける車体Bの下方に垂下されるピンPiに連結されるとともに他端が台車Wに連結されて、車体Bと台車Wとの間に水平に介装されており、車体Bに水平横方向の推力を作用させ得る。
【0021】
そして、この鉄道車両用制振装置1は、基本的には、コントローラCがアクティブ制御によってアクチュエータAが発生する推力を制御して車体Bの車両進行方向に対する水平横方向の振動を抑制するようになっている。具体的には、鉄道車両用制振装置1では、コントローラCは、車体Bの車両進行方向に対して水平横方向の加速度αに基づいてアクチュエータAが発生すべき目標推力Frefを求め、アクチュエータAが発生する推力を目標推力Frefとなるように制御して車体Bの水平横方向の振動を抑制する。
【0022】
以下、鉄道車両用制振装置1の各部について詳細に説明する。まず、アクチュエータAについて説明する。アクチュエータAは、図2に示すように、シリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3と、シリンダ2内に挿入されてピストン3に連結されるロッド4と、シリンダ2内にピストン3で区画したロッド側室5とピストン側室6と、タンク7と、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する第一通路8の途中に設けた第一開閉弁9と、ピストン側室6とタンク7とを連通する第二通路10の途中に設けた第二開閉弁11と、シリンダ2内におけるロッド側室5へ流体を供給するポンプ12と、ポンプ12を駆動するモータ15と、ロッド側室5とタンク7とを連通する排出通路21と、排出通路21に設けられてシリンダ2内の圧力を調整する圧力制御弁22とを備えており、片ロッド型のアクチュエータとして構成されている。また、ロッド側室5とピストン側室6には流体として作動油等の液体が充填されるとともに、タンク7には、液体のほかに気体が充填されている。なお、本実施の形態のアクチュエータAは、液体を作動流体とする液圧アクチュエータとされているが、気体を作動流体とする空圧アクチュエータとされてもよい。
【0023】
そして、アクチュエータAは、第一開閉弁9で第一通路8を連通状態とするとともに第二開閉弁11を閉じた状態でポンプ12を駆動すると伸長方向に推力を発生し、第二開閉弁11で第二通路10を連通状態とするとともに第一開閉弁9を閉じた状態でポンプ12を駆動すると、収縮方向に推力を発生する。
【0024】
以下、アクチュエータAの各部について詳細に説明する。シリンダ2は筒状であって、その図2中右端は蓋13によって閉塞され、図2中左端には環状のロッドガイド14が取り付けられている。また、前記ロッドガイド14内には、シリンダ2内に移動自在に挿入されるロッド4が摺動自在に挿入されている。このロッド4は、一端をシリンダ2外へ突出させており、シリンダ2内の他端を同じくシリンダ2内に摺動自在に挿入されているピストン3に連結してある。
【0025】
なお、ロッド4の外周とシリンダ2との間は図示を省略したシール部材によってシールされており、これによりシリンダ2内は密閉状態に維持されている。そして、シリンダ2内にピストン3によって区画されるロッド側室5とピストン側室6には、上述のように液体として作動油が充填されている。
【0026】
ロッド4の図2中左端とシリンダ2の右端を閉塞する蓋13には、図示しない取付部を備えており、図外の取付部によって、アクチュエータAを鉄道車両Tにおける車体Bと台車Wとの間に介装することができる。
【0027】
そして、ロッド側室5とピストン側室6とは、第一通路8によって連通されており、この第一通路8の途中には、第一開閉弁9が設けられている。この第一通路8は、シリンダ2外でロッド側室5とピストン側室6とを連通しているが、ピストン3に設けられてもよい。
【0028】
第一開閉弁9は、この実施の形態の場合、電磁開閉弁とされており、第一通路8を開放してロッド側室5とピストン側室6とを連通する連通ポジション9bと、ロッド側室5とピストン側室6との連通を遮断する遮断ポジション9cとを備えたバルブ9aと、遮断ポジション9cを採るようにバルブ9aを附勢するばね9dと、通電時にバルブ9aをばね9dに対抗して連通ポジション9bに切り換えるソレノイド9eとを備えて構成されている。
【0029】
つづいて、ピストン側室6とタンク7とは、第二通路10によって連通されており、この第二通路10の途中には、第二開閉弁11が設けられている。第二開閉弁11は、この実施の形態の場合、電磁開閉弁とされており、第二通路10を開放してピストン側室6とタンク7とを連通する連通ポジション11bと、ピストン側室6とタンク7との連通を遮断する遮断ポジション11cとを備えたバルブ11aと、遮断ポジション11cを採るようにバルブ11aを附勢するばね11dと、通電時にバルブ11aをばね11dに対抗して連通ポジション11bに切り換えるソレノイド11eとを備えて構成されている。
【0030】
ポンプ12は、モータ15によって駆動されるようになっており、ポンプ12は、一方向のみに液体を吐出するポンプとされており、その吐出口は供給通路16によってロッド側室5へ連通され、吸込口はタンク7に通じて、モータ15によって駆動されると、タンク7から液体を吸込んでロッド側室5へ液体を供給する。
【0031】
前述のようにポンプ12は、一方向のみに液体を吐出するのみで回転方向の切り換え動作がないので、回転切り換え時に吐出量変化するといった問題は皆無であり、安価なギアポンプ等を使用することができる。さらに、ポンプ12の回転方向が常に同一方向であるので、ポンプ12を駆動する駆動源であるモータ15にあっても回転切り換えに対する高い応答性が要求されず、その分、モータ15も安価なものを使用することができる。なお、供給通路16の途中には、ロッド側室5からポンプ12への液体の逆流を阻止する逆止弁17を設けてある。
【0032】
また、この実施の形態の場合、ロッド側室5とタンク7とが排出通路21を通じて接続されており、この排出通路21の途中に開弁圧を変更可能な圧力制御弁22が設けられている。
【0033】
圧力制御弁22は、排出通路21の途中に設けた弁体22aと、排出通路21を遮断するように弁体22aを附勢するばね22bと、通電時にばね22bに対抗する推力を発生する比例ソレノイド22cとを備えて構成された可変リリーフ弁とされており、比例ソレノイド22cに流れる電流量を調節することで開弁圧を調節できる。なお、圧力制御弁22は、上流側の圧力を調整可能であれば可変リリーフ弁以外の弁であってもよい。
【0034】
圧力制御弁22は、弁体22aに作用させる排出通路21の上流となるシリンダ2内におけるロッド側室5の圧力がリリーフ圧(開弁圧)を超えると、当該排出通路21を開放させる方向に弁体22aを推す前記圧力に起因する推力と比例ソレノイド22cによる推力との合力が、排出通路21を遮断させる方向へ弁体22aを附勢するばね22bの附勢力に打ち勝つようになって、弁体22aを後退させて排出通路21を開放するようになっている。
【0035】
また、比例ソレノイド22cに供給する電流量の調整によって比例ソレノイド22cが弁体22aに与える推力を調整でき、圧力制御弁22は、比例ソレノイド22cに供給する電流量を最大とすると開弁圧を最小とし、反対に、比例ソレノイド22cに全く電流を供給しないと開弁圧を最大とする。このように、圧力制御弁22は、供給される電流量の増加に伴い開弁圧を減少させる。また、圧力制御弁22は、図3に示すように、液体の流れに対して一定の流路抵抗を持っており、通過流量に比例する圧力流量特性(圧力オーバーライド特性)を備えている。このように圧力制御弁22は、比例ソレノイド22cへ供給する電流量の調整によって図中の上限特性から下限特性の変化幅で圧力流量特性を変化させ得る。
【0036】
なお、圧力制御弁22は、第一開閉弁9および第二開閉弁11の開閉状態に関わらず、アクチュエータAに伸縮方向の過大な入力があって、ロッド側室5の圧力が開弁圧を超える状態となると、開弁して排出通路21を通じてロッド側室5とタンク7とを連通するので、ロッド側室5内の圧力が過剰となるのを防止してアクチュエータAのシステム全体を保護する役割を担っている。
【0037】
また、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1におけるアクチュエータAは、ピストン側室6とロッド側室5とを連通する整流通路18と、タンク7とピストン側室6とを連通する吸込通路19とを備えている。
【0038】
整流通路18は、途中に逆止弁18aを備えており、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。さらに、吸込通路19は、途中に逆止弁19aを備えていて、タンク7からピストン側室6へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。なお、整流通路18は、第一開閉弁9の遮断ポジション9cを逆止弁とすることで第一通路8に集約することができ、吸込通路19についても、第二開閉弁11の遮断ポジション11cを逆止弁とすることで第二通路10に集約することができる。
【0039】
このように構成されたアクチュエータAに所望の伸長方向の推力を発揮させる場合、第一開閉弁9を連通ポジション9bとし第二開閉弁11を遮断ポジション11cとしてモータ15を一定回転させつつポンプ12からシリンダ2内へ液体を供給する。このようにすると、ロッド側室5とピストン側室6とが連通状態におかれてロッド側室5とピストン側室6とにポンプ12から液体が供給され、ピストン3が図2中左方へ押されアクチュエータAは伸長方向の推力を発揮する。そして、シリンダ2内におけるロッド側室5およびピストン側室6の圧力が圧力制御弁22の開弁圧を上回ると、圧力制御弁22が開弁して液体が排出通路21を介してタンク7へ移動する。圧力制御弁22は、圧力オーバーライド特性を備えているので、ロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力は、圧力制御弁22に与えられた電流量で定まる開弁圧に圧力制御弁22を通過する流量に応じた圧力オーバーライド分の圧力を加算した圧力値に一致するように調整される。そして、アクチュエータAは、ピストン3におけるピストン側室6側とロッド側室5側の受圧面積差に前記した圧力制御弁22によって調整される前記圧力値を乗じた値の伸長方向の推力を発揮する。
【0040】
これに対して、アクチュエータAに所望の収縮方向の推力を発揮させる場合、第一開閉弁9を遮断ポジション9cとし第二開閉弁11を連通ポジション11bとし、モータ15を一定回転させつつポンプ12からロッド側室5内へ液体を供給する。このようにすると、ピストン側室6とタンク7が連通状態におかれるとともにロッド側室5にポンプ12から液体が供給されるので、ピストン3が図2中右方へ押されアクチュエータAは収縮の推力を発揮する。前記したところと同様に、圧力制御弁22の電流量を調節することで、アクチュエータAは、ピストン3におけるロッド側室5側の受圧面積と圧力制御弁22によって調整される前記圧力値を乗じた収縮方向の推力を発揮する。
【0041】
なお、このアクチュエータAの場合、ロッド4の断面積をピストン3の断面積の二分の一にして、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積がピストン側室6側の受圧面積の二分の一となるようになっており、伸長駆動時と収縮駆動時とでロッド側室5の圧力を同じにすると、伸縮の双方で発生される推力が等しくなり、アクチュエータAの変位量に対する流量も伸縮両側で同じとなる。
【0042】
詳しくは、アクチュエータAを伸長駆動させる場合、ロッド側室5とピストン側室6を連通させた状態となってロッド側室5内とピストン側室6内の圧力が等しくなって、ピストン3におけるロッド側室5側とピストン側室6側の受圧面積差にロッド側室5内の圧力を乗じた推力を発生し、反対に、アクチュエータAを収縮駆動させる場合、ロッド側室5とピストン側室6との連通が断たれてピストン側室6をタンク7に連通させた状態となるので、ロッド側室5内の圧力とピストン3におけるロッド側室5側の受圧面積を乗じた推力を発生することになり、アクチュエータAの発生推力は伸縮の双方でピストン3の断面積の二分の一に圧力制御弁22によって調整されるロッド側室5内の圧力を乗じた値となる。したがって、このアクチュエータAの推力を制御する場合、伸長駆動時と収縮駆動時とで推力の大きさが同じであれば圧力制御弁22へ与える電流量も同じになるので、アクチュエータAの制御が簡素となり、加えてアクチュエータAの変位量に対する流量も同じとなるので伸縮両側で応答性が同じとなる利点がある。
【0043】
また、本実施の形態のアクチュエータAは、整流通路18および吸込通路19とを備えているので、第一開閉弁9と第二開閉弁11がともに遮断ポジション9c,11cを採ると、整流通路18および吸込通路19と排出通路21で、ロッド側室5、ピストン側室6およびタンク7が数珠繋ぎに連通されて、ユニフロー型のダンパとして機能する。したがって、アクチュエータAの各機器への通電が不能となるようなフェール時には、第一開閉弁9と第二開閉弁11のバルブ9a,11aがばね9d,11dに押圧されて、それぞれ遮断ポジション9c,11cを採り、圧力制御弁22は、開弁圧が最大に固定された圧力制御弁として機能するので、アクチュエータAは、自動的に、パッシブダンパとして機能する。
【0044】
なお、モータ15を停止させてポンプ12を駆動しない場合、アクチュエータAは、第一開閉弁9と第二開閉弁11とのいずれか一方のみを開弁させる状態では、伸長時或いは収縮時のみ減衰力を発生することができる。このようにすると、アクチュエータAは、所望する方向へのみ減衰力を発揮できるので、セミアクティブダンパとして機能できる。
【0045】
つづいて、コントローラCは、アクチュエータAをアクティブ制御するため、図4に示すように、車体Bの水平横方向の加速度αを検知する加速度センサ40と、演算処理装置41と、演算処理装置41からの制御指令を受けて第一開閉弁9、第二開閉弁11、圧力制御弁22およびモータ15を駆動する駆動装置42とを備えている。
【0046】
加速度センサ40は、車体Bに設置されており、所定のサンプリング周期で車体Bの水平横方向の加速度αを検知する。演算処理装置41は、加速度センサ40が検知した加速度αおよびモータ15の回転位置を取り込み駆動装置42へ与える制御指令を生成する。
【0047】
駆動装置42は、第一開閉弁9、第二開閉弁11、圧力制御弁22およびモータ15をそれぞれ駆動するための4つのドライバ回路と各ドライバ回路を制御する制御ユニットとを備えており、演算処理装置41から受け取った制御指令に従って第一開閉弁9、第二開閉弁11、圧力制御弁22およびモータ15を駆動する。また、圧力制御弁22は、比例ソレノイド22cに流れる電流量を検知する図外の電流センサを備えており、駆動装置42は、電流センサで検知した電流量を取り込んで演算処理装置41から圧力制御弁22の目標電流量を指示する制御指令に従って比例ソレノイド22cの電流量が当該目標電流量となるように電流供給を行う。駆動装置42におけるドライバ回路は、ソレノイド9e,11e、比例ソレノイド22cおよびモータ15の駆動に適する回路構成を備えていればよい。なお、比例ソレノイド22cに流れる電流を検知する図外の電流センサは、駆動装置42におけるドライバ回路に設けられていてもよい。
【0048】
また、モータ15は、図示はしないが、三相の巻線を備えたステータと、ステータに対して相対回転可能であってポンプ12に接続されるロータと、巻線に流れる電流量を検知する電流センサと、ステータに対するロータの回転位置を検知するレゾルバ等の回転位置センサ53とを備えている。なお、電流センサは、駆動装置42におけるドライバ回路に設けられていてもよい。
【0049】
そして、駆動装置42は、前記電流センサで検知した電流量と回転位置センサ53が検知したロータの回転位置を取り込んで演算処理装置41からモータ15の目標電流量を指示する制御指令に従って巻線の電流量が当該目標電流量となるように電流供給を行う。
【0050】
演算処理装置41は、詳細には、図4に示すように、加速度センサ40が検知した加速度αに基づいてアクチュエータAに発生させるべき目標推力Frefを求める目標推力演算部41aと、モータ15の回転位置センサ53が検知したロータの回転位置からモータ15の回転数Rを求める回転数演算部41bと、目標推力Frefとモータ15の回転数Rとに基づいて比例ソレノイド22cへ与える目標電流量Irefを求める目標電流量演算部41cと、目標推力Frefに基づいて第一開閉弁9および第二開閉弁11への通電を指示する制御指令を生成する開閉弁制御部41dと、モータ15の回転数Rをモニタしてモータ15を所定の回転数Rrefで回転駆動させる制御指令を生成するモータ制御部41eとを備えている。なお、モータ制御部41eは、アクチュエータAをアクチュエータとして推力を発生させる場合には常時モータ15を所定の回転数Rrefで回転駆動させるように制御する。
【0051】
目標推力演算部41aは、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1の場合、H∞制御器とされており、加速度αから抽出した鉄道車両Tの車体Bにおける共振周波数帯の成分を抽出し、抽出した加速度αの前記共振周波数帯の成分に対して周波数で重みづけを行って車体Bの振動を抑制する目標推力Frefを求める。目標推力Frefの値の符号は、アクチュエータAが出力すべき推力の方向を示し、目標推力Frefの値の数値は、アクチュエータAが出力すべき推力の大きさを示す。なお、目標推力演算部41aは、車体Bの横方向の加速度αのみから目標推力Frefを求めているが、車体Bのスエー加速度とヨー加速度とに基づいて、車体Bのスエー方向の振動を抑制する制御力とヨー方向の振動を抑制する制御力を別々に求め、これらを加算して目標推力Frefを求めてもよい。また、目標推力演算部41aは、加速度αから車体Bの速度を求めてスカイフックゲインを乗じて目標推力Frefを求めるスカイフック制御を行う制御器であってもよい。さらに、目標推力演算部41aは、目標推力Frefを求めるための制御則を複数保有し鉄道車両の走行状況に応じて最適な制御則を選択して使用して目標推力Frefを求めてもよい。
【0052】
なお、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、目標推力Frefの値の符号が正である場合にアクチュエータAに伸長方向に推力を出力させることを示し、負である場合にアクチュエータAに収縮方向に推力を出力させることを示している。よって、開閉弁制御部41dは、目標推力演算部41aが求めた目標推力Frefの符号が正である場合、第一開閉弁9のみに通電する制御指令を生成して駆動装置42に出力する。駆動装置42は、当該制御指令を受け取ると第一開閉弁9のみに通電して第一開閉弁9を開弁させ、第二開閉弁11には通電せずに第二開閉弁11を閉弁させる。他方、開閉弁制御部41dは、目標推力演算部41aが求めた目標推力Frefの符号が負である場合、第二開閉弁11のみに通電する制御指令を生成して駆動装置42に出力する。駆動装置42は、当該制御指令を受け取ると第二開閉弁11のみに通電して第二開閉弁11を開弁させ、第一開閉弁9には通電せずに第一開閉弁9を閉弁させる。なお、目標推力Frefの符号とアクチュエータAの推力の発生方向は、アクチュエータAがピンPに対して左右何れに設置されているか、および加速度センサ40の車体Bへの設置方向によって、変化するので、アクチュエータAの設置箇所と加速度センサ40の設置方向によって目標推力Frefの正負とアクチュエータAの推力の方向とが前記したところと異なる場合がある。
【0053】
つづいて、回転数演算部41bは、モータ15の回転位置センサ53が検知したロータの回転位置を微分して角速度を求めてから、角速度に30/πを乗じて回転数Rを求める。モータ制御部41eは、回転数演算部41bからモータ15の回転数Rを得て、予め設定される所定の回転数Rrefでモータ15を回転駆動させる制御指令を生成して駆動装置42へ入力する。より、詳しくは、モータ制御部41eは、所定の回転数Rrefと回転数演算部41bが求めたモータ15の実際の回転数Rとの偏差を求め、比例微分積分補償或いは比例積分補償等の補償を行って駆動装置42がモータ15へ供給するべき電流量を指示する制御指令を生成し、駆動装置42へ当該制御指令を与える。
【0054】
駆動装置42は、モータ制御部41eから制御指令を受け取ると、ドライバ回路を通じて当該制御指令が指示する電流量をモータ15の巻線へ供給する。なお、駆動装置42における図外の制御ユニットは、モータ15の電流センサで検知した巻線に流れる実際の電流量と目標電流量との偏差を求め、比例微分積分補償或いは比例積分補償等の補償を行って、モータ15の巻線に流れる電流量を目標電流量に追従させるようPWM駆動する。また、駆動装置42におけるモータ15への通電を制御する制御ユニットは、三相の巻線に適切なタイミングで通電するために回転位置センサ53で検知するロータの回転位置を取り込んでいる。
【0055】
ここで、圧力制御弁22の圧力流量特性とアクチュエータAの推力との関係について詳細に説明する。図3中の一点鎖線で示すように、比例ソレノイド22cにある電流量を与えた場合の圧力制御弁22の圧力流量特性は、通過流量の増加に伴って圧力制御弁22の上流側の圧力が上昇する圧力オーバーライド特性を備えている。
【0056】
演算処理装置41におけるモータ制御部41eは、アクチュエータAに推力を発生させる場合には、モータ15を所定の回転数Rrefで回転駆動するように制御するので、何ら外乱が無ければポンプ12の吐出流量が一定となる。モータ15のロータは、ポンプ12の駆動軸に連結されており、ポンプ12の回転数Rpがモータ15の回転数Rに比例した値となることから、モータ15が一定の回転数Rrefで回転駆動されれば、ポンプ12の回転数Rpも一定となってポンプ12の吐出流量が一定となる。なお、モータ15が所定の回転数Rrefで回転している場合におけるポンプ12の回転数を基準回転数Rprefとしており、コントローラCは、ポンプ12を基準回転数Rprefで回転駆動するように、常時、モータ15を制御している。
【0057】
また、圧力制御弁22を通過する液体の流量は、ポンプ12の吐出流量とアクチュエータAが伸縮することに伴ってシリンダ2内で出入りする流量とを合算した流量となる。アクチュエータAが伸長する場合には、ロッド4がシリンダ2内から退出してポンプ12から吐出された流量の一部がシリンダ2内に吸収されるので、圧力制御弁22を通過する液体の流量はポンプ12の吐出流量よりも少なくなる。反対に、アクチュエータAが収縮する場合には、ロッド4がシリンダ2内へ侵入してシリンダ2内から液体が排出されるので、圧力制御弁22を通過する液体の流量はポンプ12の吐出流量よりも多くなる。よって、何ら外乱が無くポンプ12の吐出流量が一定である場合、比例ソレノイド22cに供給する電流量を一定にすると、圧力制御弁22で調整されるシリンダ2内の圧力は、たとえば、図3中で上限特性とした場合に、アクチュエータAの伸縮による流量変動分による圧力変動があるものの、凡そポンプ12の吐出流量Qに対応する圧力Pを含んだ前記圧力変動の範囲内に収まる。ところが、アクチュエータAが外乱で伸縮することによってポンプ12の回転数が変動すると、圧力制御弁22を通過する流量が大きく変動してシリンダ2内の圧力も同様に大きく変動してしまって、圧力制御弁22で調整したシリンダ2内の圧力を前記圧力変動の範囲内に収めることができなくなって、アクチュエータAの実際の推力と目標推力Frefとの差が大きくなってしまう。
【0058】
圧力制御弁22を通過する流量は、アクチュエータAが伸縮しない場合、ポンプ12の吐出流量が増加すると増加し、ポンプ12の吐出流量が減少すると減少する。たとえば、図3の実線Uで示すように、比例ソレノイド22cにある一定の電流量を供給した場合であって、アクチュエータAが伸縮せず、ポンプ12の回転数Rpが一定でポンプ12の吐出流量が値Q1であった時に、シリンダ2内の圧力の値が圧力制御弁22によって値P1となるとする。図3中の実線Uは、比例ソレノイド22cにある一定の電流量を供給した場合の圧力制御弁22の圧力流量特性を示している。ポンプ12の吐出流量が値Q2に増加すると、アクチュエータAが伸縮しない場合であっても、圧力制御弁22を通過する流量が増加するために、圧力制御弁22の圧力オーバーライド特性によって、シリンダ2内の圧力が値P2に上昇する。他方、ポンプ12の吐出流量が値Q3に減少すると、アクチュエータAが伸縮しない場合であっても、圧力制御弁22を通過する流量が減少するために、圧力制御弁22の圧力オーバーライド特性によって、シリンダ2内の圧力が値P3に下降する。よって、アクチュエータAが外乱で伸縮することによってポンプ12の回転数が変動すると、前述した通り、アクチュエータAの実際の推力と目標推力Frefとに差が生じてしまうのである。
【0059】
そこで、目標電流量演算部41cは、目標推力Frefとモータ15の回転数Rとに基づいて比例ソレノイド22cへ与える目標電流量Irefを求めるようになっている。
【0060】
具体的には、目標電流量演算部41cは、回転数演算部41bからモータ15の回転数Rを得て、当該回転数Rからポンプ12の回転数を把握する。モータ15のロータは、ポンプ12の駆動軸に連結されているので、ポンプ12の回転数は、モータ15の回転数Rに比例した値となる。モータ15とポンプ12との間に減速機が設置されている場合、減速機の減速比をβとすると、ポンプ12の回転数Rp=R/βを演算することで求めることができる。減速比の値βは、実際に使用する減速機の仕様により既知であるので、目標電流量演算部41cは、回転数演算部41bが求めたモータ15の回転数Rを得て、ポンプ12の回転数Rpを回転数Rと減速比βとから前記演算を行って把握できる。なお、目標電流量演算部41cは、モータ15のロータが減速機を介さずにポンプ12の駆動軸に連結されている場合には、モータ15の回転数Rをそのままポンプ12の回転数Rpとするか、或いは、減速比βの値を1として演算を行って回転数Rpを求めればよい。
【0061】
また、目標電流量演算部41cは、ポンプ12の基準回転数Rprefを含んだ回転数帯域における複数の異なる指定回転数に対して、それぞれ設定された複数の関数を保有している。回転数帯域は、外乱によってアクチュエータAが伸縮した際にポンプ12の回転数が変動する可能性のある範囲に設定されており、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、ポンプ12の基準回転数Rprefが1300rpmに設定されていて、前記回転数帯域は、1100rpmから1500rpmに設定されている。回転数帯域は、外乱によってアクチュエータAが伸縮した際にポンプ12の回転数が変動する可能性のある範囲に設定されればよいので、前記した具体的な数値は実際の鉄道車両用制振装置1の仕様に応じて適宜変更できる。
【0062】
そして、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、ポンプ12の基準回転数Rprefである1300rpmを含んだ前記回転数帯域の範囲で、1300rpmを中心として100rpm刻みの1100rpm、1200rpm、1300rpm、1400rpm、1500rpmの合計5つの回転数をそれぞれ指定回転数に指定している。複数の指定回転数の1つには、基準回転数Rprpmを指定するのが好ましい。
【0063】
よって、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、指定された5つの指定回転数に対してそれぞれ関数が設定されている。関数は、具体的には、アクチュエータAが伸縮しないこととして、つまり、アクチュエータAの伸縮による流量変動の影響が無いとして、対応する指定回転数でポンプ12を回転駆動した際に比例ソレノイド22cに供給される電流量とアクチュエータAの推力との関係を数式化したものである。前述した通り、圧力制御弁22に供給する電流量によって圧力制御弁22の開弁圧を調整して、シリンダ2内におけるロッド側室5内の圧力を調整でき、アクチュエータAの推力はピストン3のロッド側室5側の受圧面積にロッド側室5内の圧力を乗じた値になる。よって、アクチュエータAの伸縮による流量変動の影響が無い場合、アクチュエータAの推力は、圧力制御弁22に供給する電流量によって制御されるシリンダ2内の圧力に比例する関係にあり、前記関数は、この関係を関数化したものである。
【0064】
アクチュエータAの伸縮による流量変動の影響が無いとして、ポンプ12の基準回転数Rprefである1300rpmで駆動する場合に、比例ソレノイド22cに供給する電流量とアクチュエータAの推力との関係は、比例ソレノイド22cへ供給する電流量の増加に伴って圧力制御弁22の開弁圧が低下するため、図5に示した特性線L1となる。よって、指定回転数が1300rpmである場合の関数は、図5中の特性線の切片の電流値をIaとし、特性線の傾きをa1とすると、目標推力Frefをパラメータとして、目標電流量Iref=a1×Fref+Ia1で表すことができる。なお、圧力制御弁22の開弁圧の減少と比例ソレノイド22cの電流量の増加とが厳密に比例しない場合、1次関数の近似式を関数としてもよい。また、関数は、1次関数でなくともよく、目標推力Frefから目標電流量Irefを求め得る関数であればよい。
【0065】
同様に、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、ポンプ12を1100rpm、1200rpm、1400rpmおよび1500rpmで駆動する場合に、比例ソレノイド22cに供給する電流量とアクチュエータAの推力との関係は、図5に示すように、特性線L2,L3,L4,L5となっている。なお、特性線L2は、ポンプ12の回転数を1100rpmとした場合、特性線L3は、ポンプ12の回転数を1200rpmとした場合、特性線L4は、ポンプ12の回転数を1400rpmとした場合、特性線L5は、ポンプ12の回転数を1500rpmとした場合の特性を示している。よって、指定回転数を1100rpm、1200rpm、1400rpm、1500rpmとした場合の関数は、それぞれ特性線L2,L3,L4,L5の軌跡を描く関数に設定されればよい。なお、ロッド4の断面積をピストン3の断面積の二分の一に設定しない場合、アクチュエータAが伸長方向に推力を発生する場合と、収縮方向に推力を発生する場合とで、圧力制御弁22に同じ電流量を供給しても推力に差が生じるから、伸長方向に推力を発生する場合の関数と収縮方向に推力を発生する場合の関数とを用意しておけばよい。
【0066】
そして、たとえば、アクチュエータAの目標推力Frefを値F1とすると、ポンプ12を基準回転数Rprefである1300rpmで回転駆動させた場合では目標電流量Irefを値I1に設定すればよいところ、ポンプ12の回転数Rpが1200rpmになると、圧力制御弁22を通過する流量が低下するので、比例ソレノイド22cへ供給する電流量をI1より小さいI3にする必要がある。同様に、アクチュエータAの目標推力Frefを値F1とすると、ポンプ12の回転数Rpが1100rpmになると、圧力制御弁22を通過する流量がさらに低下するので、比例ソレノイド22cへ供給する電流量をI3よりもさらに小さいI2にする必要がある。
【0067】
他方、アクチュエータAの目標推力Frefを値F1とすると、ポンプ12の回転数Rpが1400rpmになると、圧力制御弁22を通過する流量が1300rpmでポンプ12が回転していた場合よりも増加するので、比例ソレノイド22cへ供給する電流量をI1よりも大きなI4にする必要がある。同様に、アクチュエータAの目標推力Frefを値F1とすると、ポンプ12の回転数Rpが1500rpmになると、圧力制御弁22を通過する流量が1300rpmでポンプ12が回転していた場合よりもさらに増加するので、比例ソレノイド22cへ供給する電流量をI4よりもさらに大きいI5にする必要がある。
【0068】
よって、各特性線の傾きの符号はマイナスであるので、指定回転数が減ると特性線の傾きが増加するとともに特性線が電流値軸と交わる切片の値が減少し、指定回転数が増えると特性線の傾きが減少するとともに特性線が電流値の軸と交わる切片の値が増加する関係にある。以上より、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、各指定回転数に対して設定される関数を目標電流量Iref=aN×Fref+IaN(添え字Nは1から5までの整数)で表現すると、a5<a4<a1<a3<a2およびIa2<Ia3<Ia1<Ia4<Ia5の関係を満たす。なお、aの添え字Nが1の場合は指定回転数が1300rpmである場合の関数を、aの添え字Nが2の場合は指定回転数が1100rpmである場合の関数を、aの添え字Nが3の場合は指定回転数が1200rpmである場合の関数を、aの添え字Nが4の場合は指定回転数が1400rpmである場合の関数を、aの添え字Nが5の場合は指定回転数が1500rpmである場合の関数を、それぞれ示している。
【0069】
このように、目標電流量演算部41cは、基準回転数Rprefを含んだ回転数帯域内に基準回転数Rprefである1300rpmを中心として100rpm刻みで5つの指定回転数を設定して、5つの指定回転数毎にそれぞれ対応する関数を保有している。なお、指定回転数は、複数設定されればよく、その値は任意に設定でき、また、指定回転数同士の間隔も任意に設定できるが、アクチュエータAの推力を目標推力Frefに精度よく一致させる上では指定回転数の設定数を多くする方がよい。
【0070】
また、圧力制御弁22が比例ソレノイド22cに供給する電流量とアクチュエータAの推力との関係を示す特性線の傾きが或る推力F0で変化する非線形な特性を持つ場合、0<Fref≦F0の範囲で用いる関数とF0<Frefの範囲とで用いる関数とを各指定回転数に対して設定しておけばよい。また、関数は、特性線L1,L2,L3,L4,L5の軌跡を描く関数であればよいので、前述した一次関数に限られない。
【0071】
そして、目標電流量演算部41cは、モータ15の回転数Rから実際のポンプ12の回転数Rpを把握し、把握した回転数Rp以上であって、かつ、最も値が近い回転数の指定回転数の関数を選択する。つまり、目標電流量演算部41cは、把握したポンプ12の回転数Rpがいずれかの指定回転数と合致している場合、合致している指定回転数の関数を選択し、把握したポンプ12の回転数Rpがいずれの指定回転数とも合致していない場合、把握した回転数Rpより高く、かつ、最も値が近い回転数の指定回転数の関数を選択する。
【0072】
よって、たとえば、目標電流量演算部41cは、把握したポンプ12の回転数Rpが1400rpmであれば、1400rpmに設定されている指定回転数と合致するので、1400rpmに対応する関数を選択する。また、たとえば、目標電流量演算部41cは、把握したポンプ12の回転数Rpが1410rpmであれば、1410rpmより高く、かつ、最も値が近い回転数の指定回転数である1500rpmに対応する関数を選択する。
【0073】
そして、目標電流量演算部41cは、ポンプ12の回転数Rpの値に基づいて複数の指定回転数に対応した関数から1つの関数を選択した後、目標推力演算部41aが求めた目標推力Frefの絶対値をパラメータとして選択した関数のFrefに代入して目標電流量Irefを演算する。なお、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1において、目標電流量演算部41cが目標推力Frefの絶対値を関数に入力するのは、アクチュエータAの推力の出力方向については第一開閉弁9および第二開閉弁11によって制御し、圧力制御弁22の開弁圧のみの調整でアクチュエータAの推力を調節しているからである。
【0074】
前述したように、目標電流量演算部41cは、関数を選択して目標推力Frefを選択した関数に代入して目標電流量Irefを求めると、比例ソレノイド22cへ供給する電流量を目標電流量Irefとするように指示する制御指令を駆動装置42へ与える。駆動装置42は、目標電流量演算部41cから制御指令を受け取ると、ドライバ回路を通じて当該制御指令が指示する目標電流量Irefを比例ソレノイド22cへ供給する。なお、駆動装置42における図外の制御ユニットは、比例ソレノイド22cに流れる電流量を検知する図外の電流センサで検知した電流量と目標電流量Irefとの偏差を求め、比例微分積分補償或いは比例積分補償等の補償を行って、比例ソレノイド22cに流れる電流量を目標電流量Irefに追従させるようPWM駆動する。
【0075】
以上のように、コントローラCは、モータ15を駆動してポンプ12を基準回転数Rprefで回転させるように制御しつつ、加速度αから求めた目標推力Frefの符号により第一開閉弁9および第二開閉弁11を切り換え制御する。さらに、コントローラCは、ポンプ12の回転数Rpに応じて目標推力FrefをアクチュエータAに発揮させる最適な関数を選択して目標推力Frefから圧力制御弁22へ供給すべき目標電流量Irefを求めて、圧力制御弁22の比例ソレノイド22cに流れる電流量を目標電流量Irefとなるように制御する。
【0076】
よって、圧力制御弁22に供給される電流量は、コントローラCによってポンプ12の回転数Rpに適した電流量に制御されるので、アクチュエータAに外乱が入力されてポンプ12の回転数Rpが変動してもアクチュエータAに目標推力Frefと誤差の少ない推力を発揮させ得る。
【0077】
なお、演算処理装置41は、ハードウェア資源としては、図示はしないが具体的にはたとえば、オペレーティングシステムおよびモータ15、第一開閉弁9、第二開閉弁11および圧力制御弁22を制御するための他のプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、前記制御に必要なプログラムを格納するROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、CPUに記憶領域を提供するRAM(Random Access Memory)等の記憶装置と、前記CPU、加速度センサ40および駆動装置42とで信号をやり取りするためのインターフェースとを備えて構成されればよい。
【0078】
そして、コントローラCにおける演算処理装置41の目標推力演算部41a、回転数演算部41b、目標電流量演算部41c、開閉弁制御部41dおよびモータ制御部41eの各部は、CPUが前記制御を行うプログラムを実行することで実現される。
【0079】
具体的に、演算処理装置41の処理を図6に示したフローチャートに即して説明する。まず、演算処理装置41は、加速度センサ40が検知した加速度αを取り込んで、アクチュエータAに発生させるべき目標推力Frefを求める(ステップS1)。つづいて、演算処理装置41は、モータ15の回転位置センサ53が検知したロータ51の回転位置を微分してモータ15の回転数Rを求める(ステップS2)。さらに、演算処理装置41は、モータ15の回転数Rからポンプ12の回転数Rpを求めて(ステップS3)、関数が設定されている5つの指定回転数のうちポンプ12の回転数Rp以上であって、回転数Rpに近い値の指定回転数の関数を選択する(ステップS4)。演算処理装置41は、選択された指定回転数に設定された関数に、目標推力Frefを代入して比例ソレノイド22cへ供給する目標電流量Irefを求める(ステップS5)。そして、演算処理装置41は、モータ15の回転数Rからモータ15を制御するための制御指令、求めた目標推力Frefの符号から第一開閉弁9および第二開閉弁11を切り換え制御するための制御指令、および、目標電流量Irefから圧力制御弁22を制御するための制御指令をそれぞれ生成して、駆動装置42へ出力する(ステップS6)。演算処理装置41は、以上の処理手順を繰り返し実行することでアクチュエータAの推力を制御する。
【0080】
以上のように、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1は、シリンダ2と、シリンダ2内にシリンダ2の軸方向へ移動可能に挿入されるピストン3と、シリンダ2内にシリンダ2の軸方向へ移動可能に挿入されるとともにピストン3に連結されるロッド4と、シリンダ2内に流体を供給可能なポンプ12と、ポンプを駆動するモータ15と、圧力オーバーライド特性を具備するとともに供給される電流量に応じて開弁圧を変更可能であってシリンダ2内の圧力を調整する圧力制御弁22とを有するアクチュエータAと、圧力制御弁22の開弁圧を調整してアクチュエータAが発生する推力を制御するコントローラCとを備え、コントローラCは、アクチュエータAに発生させる目標推力Frefと、ポンプ12の回転数Rpとに基づいて、圧力制御弁22へ与える目標電流量Irefを求める。
【0081】
このように構成された鉄道車両用制振装置1では、コントローラCがポンプ12の回転数Rpを監視して、ポンプ12の実際の吐出流量に応じてアクチュエータAに目標推力Fref通りに推力を発揮させるために最適な目標電流量Irefを求めることができる。よって、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1によれば、ポンプ12の回転数RpがアクチュエータAに入力される外乱によって変動しても、その時のポンプ12の吐出流量に応じて最適な目標電流量Irefを求め得るので、アクチュエータAに目標推力Frefと誤差の少ない推力を発揮させ得る。
【0082】
また、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1におけるコントローラCは、モータ15が有する回転位置センサ53が検知するモータ15のロータ51の回転位置からポンプ12の回転数Rpを把握するようになっている。このように構成された鉄道車両用制振装置1によれば、ポンプ12の回転数Rpの検知にあたってモータ15が備えている回転位置センサ53を利用しているので、わざわざポンプ12の回転数Rpを検知するセンサを設けなくて済み、コストを低減できる。
【0083】
つづいて、図7の縦軸を電流値として横軸を推力としたグラフ上に、指定回転数を1300rpmとして当該指定回転数に設定された関数を線X1で示し、指定回転数を1400rpmとして当該指定回転数に設定された関数を線Y1で示す。線X1,Y1は、前述したように、圧力制御弁22に供給される電流量とアクチュエータAの推力との関係を示している。アクチュエータAの推力は、圧力制御弁22により制御される上流側の圧力に比例する。圧力制御弁22は、供給される電流量の増加によって開弁圧を減少させる特性となっているので、圧力制御弁22に供給される電流量が増加するとアクチュエータAの推力は減少する。アクチュエータAに発揮させたい推力の値をFbとすると、1300rpmに設定された関数では、目標電流値の値はIb1となり、1400rpmに設定された関数では、目標電流値の値はIb2となる。
【0084】
ここで、コントローラCが圧力制御弁22の目標電流量Irefを演算する際に検知したポンプ12の回転数Rpは、1350rpmであるとする。1350rpmでポンプ12が回転する場合の圧力制御弁22の電流値とアクチュエータAの推力との関係は、図7のグラフ上で1300rpmの関数と1400rpmの関数との中間の線Z1で示される。ポンプ12の回転数Rpが1350rpmである場合、1300rpmの関数で求めた目標電流値Ib1の電流量を比例ソレノイド22cへ供給すると、アクチュエータAの推力は、推力Fbより大きな推力Fcとなる。他方、ポンプ12の回転数Rpが1350rpmである場合、1400rpmの関数で求めた目標電流値Ib2の電流量を比例ソレノイド22cへ供給すると、アクチュエータAの推力は、推力Fbより小さな推力Fdとなる。推力Fbは、アクチュエータAに発生させたい推力であるので、目標推力Frefとして捉えることができるから、ポンプ12の回転数Rp以上であって値が最も近い指定回転数に対応する関数を利用して目標電流量Irefを求めると、アクチュエータAが実際に発生する推力Fdは、目標推力Fref以下の値になる。
【0085】
このように、コントローラCは、圧力制御弁22が供給される電流量の増加に伴い開弁圧を減少させる場合、ポンプ12の回転数Rp以上であって値が最も近い指定回転数に対応する関数を利用して目標電流量Irefを求めると、アクチュエータAが実際に発生する推力は、必ず目標推力Fref以下になる。
【0086】
そして、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、コントローラCは、ポンプ12を基準回転数Rprefで駆動しつつ、圧力制御弁22へ与える電流量を調整してアクチュエータAの推力を制御するとともに、基準回転数Rprefを含んだ回転数帯域における複数の異なる指定回転数に対してそれぞれ設定された複数の関数を有し、関数が目標推力Frefをパラメータとして目標電流量Irefを求める関数であって、コントローラCは、圧力制御弁22が供給される電流量の増加に伴い開弁圧を減少させる場合、ポンプ12の回転数Rp以上であって値が最も近い指定回転数に対応する関数を利用して目標電流量Irefを求める。このように構成された鉄道車両用制振装置1によれば、アクチュエータAが実際に発生する推力は、必ず、コントローラCが求めた目標推力Fref以下になるので、アクチュエータAが車体Bの振動を抑制するために必要な目標推力Frefを超える推力を発生して車体Bを加振して振動抑制能力を低下させてしまうこともない。
【0087】
なお、圧力制御弁22が供給される電流量の増加に伴って開弁圧を増加させる場合、コントローラCは、ポンプ12の回転数Rp以下であって値が最も近い指定回転数に対応する関数を利用して目標電流量Irefを求めればよい。図8の縦軸を電流値として横軸を推力としたグラフ上に、指定回転数を1300rpmとして当該指定回転数に設定された関数を線X2で示し、指定回転数を1400rpmとして当該指定回転数に設定された関数を線Y2で示す。圧力制御弁22は、供給される電流量の増加によって開弁圧を増加させる特性となっているので、圧力制御弁22に供給される電流量が増加するとアクチュエータAの推力も増加する。アクチュエータAに発揮させたい推力の値をFbとすると、1300rpmに設定された関数では、目標電流値の値はIb3となり、1400rpmに設定された関数では、目標電流値の値はIb4となる。
【0088】
ここで、コントローラCが圧力制御弁22の目標電流量Irefを演算する際に検知したポンプ12の回転数Rpは、1350rpmであるとする。1350rpmでポンプ12が回転する場合の圧力制御弁22の電流値とアクチュエータAの推力との関係は、図8のグラフ上で1300rpmの関数と1400rpmの関数との中間の線Z2で示される。ポンプ12の回転数Rpが1350rpmである場合、1300rpmの関数で求めた目標電流値Ib3の電流量を比例ソレノイド22cへ供給すると、アクチュエータAの推力は、推力Fbより小さな推力Feとなる。他方、ポンプ12の回転数Rpが1350rpmである場合、1400rpmの関数で求めた目標電流値Ib4の電流量を比例ソレノイド22cへ供給すると、アクチュエータAの推力は、推力Fbより大きな推力Ffとなる。推力Fbは、アクチュエータAに発生させたい推力であるので、目標推力Frefとして捉えることができるから、ポンプ12の回転数Rp以下であって値が最も近い指定回転数に対応する関数を利用して目標電流量Irefを求めると、アクチュエータAが実際に発生する推力Feは、目標推力Fref以下の値になる。
【0089】
このように、コントローラCは、圧力制御弁22が供給される電流量の増加に伴い開弁圧を増加させる場合、ポンプ12の回転数Rp以下であって値が最も近い指定回転数に対応する関数を利用して目標電流量Irefを求めると、アクチュエータAが実際に発生する推力は、必ず目標推力Fref以下になる。
【0090】
よって、このように構成された鉄道車両用制振装置1によれば、アクチュエータAが実際に発生する推力は、必ず、コントローラCが求めた目標推力Fref以下になるので、アクチュエータAが車体Bの振動を抑制するために必要な目標推力Frefを超える推力を発生して車体Bを加振して振動抑制能力を低下させてしまうこともない。
【0091】
なお、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、コントローラCは、圧力制御弁22に供給する電流量の増加に伴って開弁圧が減少する場合には、ポンプ12の回転数Rp以上であって回転数Rpに最も近い値の指定回転数に設定された関数を選択し、或いは、圧力制御弁22に供給する電流量の増加に伴って開弁圧が増加する場合には、ポンプ12の回転数Rp以下であって回転数Rpに最も近い値の指定回転数に設定された関数を選択して、目標電流量Irefを求めているが、ポンプ12の回転数Rpに合致する指定回転数がない場合、以下のように目標電流量Irefを求めてもよい。
【0092】
コントローラCは、当該回転数Rpより高く、かつ、最も値が近い指定回転数をR1として、この指定回転数R1に設定されている関数を用いて目標電流量を求めて、この値を第1目標電流量Iref1とする。また、コントローラCは、当該回転数Rpより低く、かつ、最も値が近い指定回転数をR2として、この指定回転数R2に設定されている関数を用いて目標電流量を求めて、この値を第2目標電流量Iref2とする。そして、コントローラCは、第1目標電流量Iref1と第2目標電流量Iref2との値を線形補間して、ポンプ12の回転数Rpに適した最終的な目標電流量Irefを求めて、圧力制御弁22に当該目標電流量Irefが指示する電流量を供給してもよい。具体的には、コントローラCは、Iref={1-(Rp-R1)/(R2-R1)}×Iref2+(Rp-R1)/(R2-R1)×Iref1を演算して、ポンプ12の実際の回転数Rpにより適した目標電流量Irefを求めてもよい。
【0093】
また、ポンプ12の基準回転数Rprefを含んだ回転数帯域において、ポンプ12の回転数Rp、目標推力Frefおよび目標電流量Irefとの関係を予め3次元マップ化しておき、コントローラCは、回転数Rpと目標推力Frefとの値をパラメータとしてマップ演算を行って目標電流量Irefを求めてもよい。ただし、前述したように、ポンプ12の基準回転数Rprefを含んだ回転数帯域において、複数の指定回転数を指定して、各指定回転数に対してそれぞれ関数を設定して、目標電流量Irefを求める場合、コントローラCでは、演算負荷が高いマップ演算を行う必要もなく、記憶容量の大きな3次元マップを記憶しておく必要もなく、記憶容量の少ない関数を用いて単純な計算で目標電流量Irefを求めることができる利点がある。
【0094】
さらに、鉄道車両用制振装置のアクチュエータは、ポンプ12が吐出する流体を4ポート3位置の方向切換弁を介してシリンダ2内のロッド側室5とピストン側室6の一方を選択して供給するとともにロッド側室5とピストン側室6の他方を方向切換弁を介してタンク7に連通するとともに、ポンプ12から流体が供給されるシリンダ2内のロッド側室5とピストン側室6の一方の圧力を圧力制御弁22で調整するように構成されてもよい。なお、このように構成された鉄道車両用制振装置では、第一開閉弁9、第二開閉弁11、整流通路18および吸込通路19を廃止した構成を採用可能である。この場合の鉄道車両用制振装置にあっても、アクチュエータの推力の発生方向を方向切換弁によって切り換えでき、圧力制御弁22へ供給する電流量に応じてシリンダ2内のロッド側室5内とピストン側室6内のうち流体を供給してる室内の圧力を調整してアクチュエータの推力を制御でき、アクチュエータに入力される外乱によってポンプ12の回転数Rpが変動してもアクチュエータに目標推力Frefと誤差の少ない推力を発生させ得る。
【0095】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0096】
1・・・鉄道車両用制振装置、2・・・シリンダ、3・・・ピストン、4・・・ロッド、12・・・ポンプ、15・・・モータ、22・・・圧力制御弁、53・・・回転位置センサ、A,A1・・・アクチュエータ、C・・・コントローラ
図1
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図8