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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059529
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0276 20160101AFI20230420BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230420BHJP
【FI】
H01M8/0276
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169592
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】間野 洋嗣
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
(72)【発明者】
【氏名】久保 厚
(72)【発明者】
【氏名】古橋 資丈
(72)【発明者】
【氏名】武田 恭英
(72)【発明者】
【氏名】武井 智行
(72)【発明者】
【氏名】仲曽根 歩
(72)【発明者】
【氏名】中根 淳志
(72)【発明者】
【氏名】河内 達磨
(72)【発明者】
【氏名】林 裕二
(72)【発明者】
【氏名】平野 稔
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA13
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
5H126DD17
5H126EE03
5H126EE24
5H126FF08
5H126GG18
5H126JJ02
(57)【要約】
【課題】アノードから発生した二酸化炭素を外部空間に容易に放出することができる燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料電池1は、電解質膜21と、電解質膜21の一方の面上に設けられたアノード22と、電解質膜21の他方の面上に設けられたカソード23と、を有するMEA2と、MEA2におけるアノード22上に設けられたアノード側セパレータ3と、MEA2におけるカソード23上に設けられたカソード側セパレータ4と、電解質膜21とアノード側セパレータ3との間に介在するアノード側シール材5と、MEA2、アノード側シール材5及びアノード側セパレータ3によって囲まれたアノード側内部空間50とを有している。アノード側シール材5は、アノード側内部空間50及び外部空間のうち少なくとも一方に開口し、アノード側内部空間50と外部空間とを連通可能に構成された圧力解放孔51を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面上に設けられたアノードと、前記電解質膜の他方の面上に設けられたカソードと、を有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体における前記アノード上に設けられたアノード側セパレータと、
前記膜電極接合体における前記カソード上に設けられたカソード側セパレータと、
前記電解質膜と前記アノード側セパレータとの間に介在するアノード側シール材と、
前記膜電極接合体と、前記アノード側シール材と、前記アノード側セパレータとによって囲まれたアノード側内部空間と、を有し、
前記アノード側シール材は、前記アノード側内部空間及び外部空間のうち少なくとも一方に開口し、前記内部空間と外部空間とを連通可能に構成された圧力解放孔を有している、燃料電池。
【請求項2】
前記圧力解放孔は、可撓性を有する可撓性蓋部を有しており、前記可撓性蓋部は、前記アノード側内部空間と外部空間とが連通した解放状態と、前記アノード側内部空間が外部空間に対して閉鎖された閉鎖状態とを前記アノード側内部空間の内圧に応じて切り替え可能に構成されている、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記可撓性蓋部はエラストマーから構成されている、請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記圧力解放孔は前記アノード側内部空間に開口した内側開口を有しており、前記可撓性蓋部は前記内側開口よりも外部空間に近い位置に設けられており、前記内側開口から前記可撓性蓋部までの範囲において、前記可撓性蓋部側の端部における前記圧力解放孔の断面積が前記内側開口の開口面積よりも狭い、請求項2または3に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記圧力解放孔は、前記内側開口から前記可撓性蓋部に近づくにつれて断面積が狭くなるテーパ形状を有している、請求項4に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記圧力解放孔は、前記内側開口から前記可撓性蓋部までの範囲に1か所以上の段部を有しており、前記段部よりも前記可撓性蓋部側の部分の断面積が当該段部よりも前記内側開口側の部分の断面積よりも狭くなるステップ形状を有している、請求項4に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記アノード側シール材は、さらに、前記アノード側内部空間に開口した内側開口と外部空間に開口した外側開口とを備え、前記アノード側内部空間と外部空間とを連通する第2圧力解放孔を有しており、前記圧力解放孔は、前記第2圧力解放孔を上方に向けた状態において、前記第2圧力解放孔よりも下方となる位置に配置されている、請求項2~6のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記圧力解放孔は、前記膜電極接合体から離隔した位置に設けられている、請求項1~7のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記圧力解放孔は、前記アノード側シール材と前記アノード側セパレータとの間に設けられている、請求項8に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記アノード側シール材はエラストマーから構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池等の燃料電池は、電解質膜と、電解質膜の一方の面上に設けられたアノード電極と、電解質膜の他方の面上に設けられたカソード電極と、を含む膜電極接合体(いわゆるMEA)を有している。燃料電池は、MEAのアノードに燃料を供給するとともに、カソードに酸化剤を供給することにより、各電極において電極反応を生じさせることができる。そして、これらの電極反応の結果、アノードとカソードとの間に起電力を生じさせ、発電を行うことができる。
【0003】
近年、固体高分子形燃料電池の中でも、燃料としてメタノールを用いる直接メタノール形燃料電池やギ酸を用いる直接ギ酸形燃料電池が注目されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、水素イオン伝導性を有する高分子電解質膜と、上記高分子電解質膜を挟むアノードおよびカソードと、上記アノードに燃料を供給する燃料流路を有するアノード側セパレータと、上記カソードに酸化剤を供給する酸化剤流路を有するカソード側セパレータと、上記アノード側セパレータと上記高分子電解質膜の周縁部との間、および上記カソード側セパレータと上記高分子電解質膜の周縁部との間の少なくともいずれかに介在され、上記アノードまたは上記カソードを囲み、一対の上記セパレータとともに上記高分子電解質膜をその厚さ方向に加圧するガスケットと、を備えた燃料電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-170892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料電池の燃料としてメタノールやギ酸などの炭素原子を含む液体を用いる場合には、電極反応によりアノードに二酸化炭素(CO)が発生する。アノードで発生した二酸化炭素の量が多くなると、燃料電池の単セルにおけるアノード側の内部空間、つまり、高分子電解質膜とアノード側セパレータとガスケットとにより囲まれた空間の内圧が上昇する。そして、内部空間の内圧が上昇すると、燃料流路内に局所的に圧力が高い領域と圧力が低い領域とが形成されやすくなり、燃料流路からアノードへの燃料の供給量に局所的な偏りが生じるおそれがある。
【0007】
また、内部空間の内圧が上昇するとMEAに加わる応力が増大するため、MEAの強度を高める必要がある。しかし、MEAの強度を高めようとすると、材料コストの上昇や発電効率の低下などの問題が生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、アノードから発生した二酸化炭素を外部空間に容易に放出することができる燃料電池を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、電解質膜と、前記電解質膜の一方の面上に設けられたアノードと、前記電解質膜の他方の面上に設けられたカソードと、を有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体における前記アノード上に設けられたアノード側セパレータと、
前記膜電極接合体における前記カソード上に設けられたカソード側セパレータと、
前記電解質膜と前記アノード側セパレータとの間に介在するアノード側シール材と、
前記膜電極接合体と、前記アノード側シール材と、前記アノード側セパレータとによって囲まれたアノード側内部空間と、を有し、
前記アノード側シール材は、前記アノード側内部空間及び外部空間のうち少なくとも一方に開口し、前記内部空間と外部空間とを連通可能に構成された圧力解放孔を有している、燃料電池にある。
【発明の効果】
【0010】
前記燃料電池は、MEAとアノード側セパレータとの間に介在するアノード側シール材を有している。また、アノード側シール材には、アノード側内部空間及び外部空間のうち少なくとも一方に開口し、内部空間と外部空間とを連通可能に構成された圧力解放孔を有している。それ故、前記燃料電池においては、アノードにおいて生じ、アノード側内部空間に滞留した二酸化炭素を、圧力解放孔から外部空間に容易に排出することができる。そして、アノード側内部空間に滞留した二酸化炭素を外部空間に排出することにより、燃料流路内の圧力の偏りを低減するとともに、内部空間の内圧の過度の上昇を抑制することができる。
【0011】
従って、前記の態様によれば、アノードから発生した二酸化炭素を外部空間に容易に放出することができる燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1における燃料電池の要部を示す断面図である。
図2図2は、図1における圧力解放孔近傍の拡大図である。
図3図3は、図2のIII-III線矢視断面図である。
図4図4は、実施形態2における、テーパ形状を有する圧力解放孔を備えた燃料電池の要部を示す一部断面図である。
図5図5は、図4のV-V線一部矢視断面図である。
図6図6は、実施形態2における、ステップ形状を有する圧力解放孔を備えた燃料電池の要部を示す一部断面図である。
図7図7は、図6のVII-VII線一部矢視断面図である。
図8図8は、実施形態3における、2つの圧力解放孔を備えたアノード側シール材を有する燃料電池の要部を示す一部断面図である。
図9図9は、図8における第2圧力解放孔近傍の拡大図である。
図10図10は、図9のX-X線一部矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
前記燃料電池に係る実施形態について、図1図3を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の燃料電池1は、電解質膜21と、電解質膜21の一方の面上に設けられたアノード22と、電解質膜21の他方の面上に設けられたカソード23と、を有するMEA2と、MEA2におけるアノード22上に設けられたアノード側セパレータ3と、MEA2におけるカソード23上に設けられたカソード側セパレータ4と、電解質膜21とアノード側セパレータ3との間に介在するアノード側シール材5と、MEA2と、アノード側シール材5と、アノード側セパレータ3とによって囲まれたアノード側内部空間50と、を有している。図1図3に示すように、アノード側シール材5は、アノード側内部空間50及び外部空間のうち少なくとも一方に開口し、アノード側内部空間50と外部空間とを連通可能に構成された圧力解放孔51を有している。
【0014】
本実施形態の燃料電池1は、炭素原子を含む液体を燃料として使用することができるように構成されている。例えば、燃料電池1は、ギ酸を燃料として使用する直接ギ酸形燃料電池として構成されていてもよく、メタノールを燃料として使用する直接メタノール形燃料電池として構成されていてもよい。燃料電池1は、アノード22に燃料を供給するとともに、カソード23に酸化剤を供給することにより発電することができる。燃料電池1に供給される酸化剤としては、例えば空気や酸素ガス等を使用することができる。
【0015】
燃料電池1は、例えば図1に示すように、MEA2、アノード側セパレータ3及びカソード側セパレータ4を含む単セル11を1個以上有している。図には示さないが、燃料電池1が複数の単セル11を有している場合、これらの単セル11は、互いに積層されることによりセルスタックを構成していてもよい。また、燃料電池1が複数の単セル11を有している場合、各単セル11は、他の単セル11と電気的に直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。
【0016】
MEA2における電解質膜21は、電気絶縁性を有し、水素イオン(H)等のカチオンを選択的に透過可能に構成されたカチオン交換樹脂からなる。カチオン交換樹脂としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸系ポリマー(例えば、デュポン社製「ナフィオン(登録商標)」)等を使用することができる。
【0017】
アノード22及びカソード23は、電解質膜21の中央部に配置されており、電解質膜21上に層状に形成されている。アノード22及びカソード23は、電極反応を触媒可能に構成されている。例えば、アノード22及びカソード23には、パラジウム(Pd)や白金(Pt)などの貴金属触媒を担持した触媒担持カーボンが含まれていてもよい。また、アノード22及びカソード23には、触媒担持カーボンを保持可能に構成されたバインダが含まれていてもよい。
【0018】
MEA2におけるアノード22上には、アノード拡散層24が設けられていてもよい。アノード拡散層24としては、具体的には、導電性炭素繊維と炭素との複合材料であるカーボンペーパーや導電性炭素繊維からなるカーボンクロス等の、細孔や隙間を有する導電性炭素材料を用いることができる。アノード拡散層24として電気伝導性を有する材料を用いることにより、アノード22とアノード側セパレータ3とを電気的に接続し、MEA2で発電した電力を外部に取り出すことができる。また、アノード拡散層24に微小な空隙を設けることにより、単セル11内に供給された燃料をアノード拡散層24内において拡散させつつアノード22に導くことができる。その結果、燃料をアノード22とより効率よく接触させ、発電効率を向上させることができる。
【0019】
図2に示すように、MEA2におけるアノード22を取り囲む電解質膜21上には、燃料の浸透を抑制するためのバリア材26が設けられていてもよい。このように、アノード22の周囲に存在する電解質膜21をバリア材26で覆うことにより、アノード側内部空間50内の燃料が電解質膜21に接触することを容易に回避することができる。その結果、燃料が電解質膜21を浸透し、カソード23に到達する燃料クロスオーバと呼ばれる現象の発生をより効果的に抑制することができる。
【0020】
バリア材26は、例えばポリエチレンテレフタレートなどの、電解質膜21よりも燃料の浸透性が低い材料から構成されていることが好ましい。本実施形態のバリア材26は、ポリエチレンテレフタレートからなり、片面に粘着層を有する粘着性フィルムである。バリア材26は、粘着層を介して電解質膜21に貼付されている。
【0021】
図1及び図2に示すように、MEA2におけるカソード23上には、カソード拡散層25が設けられていてもよい。カソード拡散層25としては、アノード拡散層24と同様に、導電性炭素繊維と炭素との複合材料であるカーボンペーパーや導電性炭素繊維からなるカーボンクロス等の、細孔や隙間を有する導電性炭素材料を用いることができる。カソード拡散層25として電気伝導性を有する材料を用いることにより、カソード23とカソード側セパレータ4とを電気的に接続し、MEA2で発電した電力を外部に取り出すことができる。また、カソード拡散層25に微小な空隙を設けることにより、単セル11内に供給された酸化剤をカソード拡散層25内において拡散させつつカソード23に導くことができる。その結果、酸化剤をカソード23とより効率よく接触させ、発電効率を向上させることができる。
【0022】
アノード側セパレータ3は、MEA2におけるアノード22を有する側の面上に設けられている。アノード側セパレータ3は、金メッキが施されたステンレス鋼等の金属材料や、導電性カーボンなどの導電性非金属材料、導電性複合材料等の電気伝導体から構成されていてもよい。電気伝導性を有するアノード側セパレータ3は、MEA2での電極反応によって生じた電子を集める集電体として機能し、MEA2で発電した電力を外部へ導くことができる。
【0023】
アノード側セパレータ3におけるアノード拡散層24と当接する電極当接面31には、アノード22に燃料を供給可能に構成された燃料流路32が設けられている。燃料流路32の形状や配置などは、種々の態様をとり得る。例えば、燃料流路32は、矩形状、三角形状及び半円状などの断面形状を有し、アノード側セパレータ3に設けられた溝であってもよい。また、燃料流路32は、例えば、互いに平行に並んだ複数の直線部と、各直線部の端部と当該直線部に隣接する直線部の端部とを接続する折り返し部とを有しており、当接面側から見た平面視において、蛇行するように配置されていてもよいが、これ以外の配置も取り得る。
【0024】
MEA2におけるカソード23を有する側の面上には、カソード側セパレータ4が設けられている。カソード側セパレータ4は、アノード側セパレータ3と同様に、金メッキが施されたステンレス鋼等の金属材料や、導電性カーボンなどの導電性非金属材料、導電性複合材料等の電気伝導体から構成されていてもよい。電気伝導性を有するカソード側セパレータ4は、MEA2での電極反応によって生じた電子を集める集電体として機能し、MEA2で発電した電力を外部へ導くことができる。
【0025】
カソード側セパレータ4におけるカソード拡散層25と当接する電極当接面41には、酸化剤流路42が設けられている。酸化剤流路42の形状や配置などは、燃料流路32と同様に種々の態様をとり得る。例えば、酸化剤流路42は、矩形状、三角形状及び半円状などの断面形状を有し、カソード側セパレータ4に設けられた溝であってもよい。また、酸化剤流路42は、例えば、互いに平行に並んだ複数の直線部と、各直線部の端部と当該直線部に隣接する直線部の端部とを接続する折り返し部とを有しており、当接面側から見た平面視において、蛇行するように配置されていてもよいが、これ以外の配置も取り得る。
【0026】
MEA2の電解質膜21とアノード側セパレータ3との間には、アノード側シール材5が設けられている。また、単セル11における、MEA2、アノード側セパレータ3及びアノード側シール材5によって囲まれた部分はアノード側内部空間50を構成している。
【0027】
本実施形態におけるアノード側シール材5は、図3に示すように、アノード側セパレータ3と接する側から見た平面視において四角形状を有している。また、アノード側シール材5の中央にはアノード22及びアノード拡散層24を配置するための開口部52が設けられている。図1及び図2に示すように、アノード側シール材5は、MEA2のバリア材26及びアノード側セパレータ3のそれぞれと密着しており、アノード側内部空間50から外部空間への意図しない燃料の漏出を抑制することができるように構成されている。
【0028】
また、図3に示すように、アノード側シール材5の開口部52の内寸法は、アノード22の外寸法よりもわずかに大きくなっている。これにより、アノード側シール材5とアノード22との間に隙間500が形成されている。アノード側シール材5とアノード22との間の隙間500は、アノード側内部空間50の一部を構成している。
【0029】
本実施形態のアノード側シール材5は、エラストマーから構成されている。アノード側シール材5をエラストマーから構成することにより、アノード側シール材5とMEA2との密着性及びアノード側シール材5とアノード側セパレータ3との密着性をより向上させることができる。その結果、アノード側内部空間50から外部空間への意図しない燃料の漏出を抑制することができる。アノード側シール材5に用いられるエラストマーとしては、例えば、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(つまり、EPDM)などの、ゴム弾性を有する高分子材料を使用することができる。
【0030】
アノード側シール材5には、図1図3に示すように、アノード側内部空間50及び外部空間のうち少なくとも一方に開口し、アノード側内部空間50と外部空間とを連通可能に構成された圧力解放孔51が設けられている。圧力解放孔51を介してアノード側内部空間50と外部空間とを連通させることにより、アノード側内部空間50内に滞留した物質のうち、主に二酸化炭素を外部空間に放出することができる。それ故、アノード22において生じた二酸化炭素によってアノード側内部空間50の内圧が上昇した場合においても、アノード側内部空間50と外部空間とを圧力解放孔51を介して連通させることにより、アノード側内部空間50内の圧力を解放することができる。
【0031】
アノード側シール材5に設けられる圧力解放孔51の数、位置及び形状等は、種々の態様をとり得る。例えば、本実施形態においては、図3に示すように、アノード側シール材5における互いに対向する辺の中央にそれぞれ1つの圧力解放孔51が設けられている。本実施形態の圧力解放孔51は、具体的には、アノード側シール材5におけるアノード側セパレータ3と接する面に設けられた溝である。また、圧力解放孔51は、四角形状の断面形状を有している。圧力解放孔51の内側開口511は、アノード22及びアノード拡散層24に対面している。
【0032】
なお、圧力解放孔51の数は、1つであってもよいし、本実施形態のように2つであってもよい。さらに、アノード側シール材5に3つ以上の圧力解放孔51を設けることもできる。また、圧力解放孔51の位置は、アノード側内部空間50や燃料流路32内の圧力分布等に応じて適宜設定することができる。燃料流路32内の圧力分布の偏りをより低減する観点からは、圧力解放孔51は、少なくとも燃料流路32における燃料の流入口の近傍に配置されていることが好ましい。また、アノード側シール材5が複数の圧力解放孔51を有する場合には、複数の圧力解放孔51は、アノード側セパレータ3と接触する側から見た平面視におけるアノード側シール材5の中央に対して点対称な位置に設けられていることが好ましい。
【0033】
圧力解放孔51の断面形状は、本実施形態のような四角形状に限定されることはなく、三角形状や円形状、半円形状などの種々の態様をとり得る。圧力解放孔51は、内側開口511から外部空間側の先端に至るまで一定の断面形状を有していてもよいし、内側開口511の近傍における断面形状と、先端近傍の断面形状とが異なっていてもよい。
【0034】
アノード側シール材5の厚み方向における圧力解放孔51の位置は、本実施形態のようにアノード側シール材5とアノード側セパレータ3との間であってもよいし、アノード側シール材5とMEA2との間であってもよい。また、圧力解放孔51を、アノード側シール材5の内部、つまり、アノード側セパレータ3及びMEA2のいずれからも離間した位置に設けることもできる。
【0035】
しかし、圧力解放孔51内には燃料が流入することがあるため、圧力解放孔51をアノード側シール材5とMEA2との間に設けると、圧力解放孔51内に流入した燃料が電解質膜21と接触し、燃料クロスオーバが起こりやすくなるおそれがある。また、圧力解放孔51の周辺は、アノード側内部空間50内の圧力が上昇した際に応力が集中しやすいため、圧力解放孔51をアノード側シール材5とMEA2との間に設けると、電解質膜21に加わる応力が増大しやすくなる。従って、これらの問題を確実に回避する観点からは、圧力解放孔51をMEA2から離隔した位置に設け、アノード側シール材5の全面をMEA2と接触させることが好ましい。
【0036】
また、前述した問題を回避しつつアノード側シール材5の形状を単純化し、アノード側シール材5の生産性を向上させる観点からは、図1及び図2に示すように、圧力解放孔51をアノード側シール材5とアノード側セパレータ3との間に設けることがより好ましい。
【0037】
図には示さないが、圧力解放孔51は、アノード側内部空間50と外部空間とが常時連通するように構成されていてもよい。例えば、圧力解放孔51は、アノード側内部空間50に開口した内側開口511と、外部空間に開口した外側開口(図示略)とを有し、アノード側内部空間50と外部空間とが常時連通するように構成されていてもよい。
【0038】
また、圧力解放孔51は、可撓性を有する可撓性蓋部512を有しており、可撓性蓋部512は、アノード側内部空間50と外部空間とが連通した解放状態と、アノード側内部空間50が外部空間に対して閉鎖された閉鎖状態とをアノード側内部空間50の内圧に応じて切り替えることができるように構成されていてもよい。
【0039】
可撓性蓋部512の配置は、種々の態様をとりうる。例えば、本実施形態の圧力解放孔51は、図1図3に示すように、アノード側内部空間50側に開口した内側開口511を有するとともに、外部空間側の先端に可撓性を有する可撓性蓋部512を有している。
【0040】
また、図には示さないが、圧力解放孔が外部空間に開口した外側開口を有している場合、可撓性蓋部はアノード側内部空間側の端部に配置されていてもよい。また、圧力解放孔が内側開口及び外側開口の両方を有している場合、可撓性蓋部は圧力解放孔における内側開口と外側開口との間に配置されていてもよい。
【0041】
可撓性蓋部512は、アノード側内部空間50の内圧と外部空間の圧力との圧力差が比較的小さく、可撓性蓋部512が自然状態、つまり、アノード側内部空間50と外部空間との間に圧力差がほとんどない状態の形状を維持できる場合には、図2に示すように可撓性蓋部512がアノード側セパレータ3と密着する。この状態においては、アノード側内部空間50を外部空間に対して閉鎖することができる。
【0042】
また、可撓性蓋部512は、その周辺部よりも厚みが薄く、低い剛性を有しているため、アノード側内部空間50の内圧と外部空間の圧力との圧力差に応じて可撓性蓋部512の周辺部よりも容易に変形することができる。そのため、アノード側内部空間50の内圧が外部空間の圧力に対してある程度上昇し、可撓性蓋部512の剛性が圧力差に抗しきれなくなると、可撓性蓋部512が変形して可撓性蓋部512とアノード側セパレータ3との間に隙間が生じる。その結果、圧力解放孔51の外部空間側の先端が外部空間に対して開口する。これにより、圧力解放孔51を介してアノード側内部空間50と外部空間とが連通し、アノード側内部空間50内の二酸化炭素等を外部空間に放出することができる。
【0043】
このように、可撓性蓋部512は、アノード側内部空間50と外部空間との圧力差に応じて解放状態と閉鎖状態とを切り替えることができる。そのため、圧力解放孔51に可撓性蓋部512を設けることにより、アノード側内部空間50と外部空間との圧力差が比較的低い状態においてはアノード側内部空間50から外部空間への意図しない燃料の漏出を抑制することができる。また、アノード側内部空間50と外部空間との圧力差が上昇した場合においては、アノード側内部空間50から外部空間に主に二酸化炭素を排出し、アノード側内部空間50の圧力を解放することができる。従って、可撓性蓋部512を備えた圧力解放孔51によれば、意図しない燃料の漏出を抑制するとともに、アノード側内部空間50の内圧の過度の上昇を抑制することができる。
【0044】
前述した作用効果をより確実に得る観点からは、可撓性蓋部512はエラストマーから構成されていることが好ましい。可撓性蓋部512を構成するエラストマーは、アノード側シール材5を構成するエラストマーと同一のエラストマーであってもよいし、異なるエラストマーであってもよい。可撓性蓋部512をより容易に変形させる観点からは、可撓性蓋部512を構成するエラストマーの弾性率が、アノード側シール材5を構成するエラストマーの弾性率よりも低いことが好ましい。本実施形態の可撓性蓋部512は、アノード側シール材5と一体的に形成されており、アノード側シール材5と同一のエラストマーから構成されている。
【0045】
図1及び図2に示すように、MEA2の電解質膜21とカソード側セパレータ4との間には、カソード側シール材6が設けられていてもよい。本実施形態におけるカソード側シール材6は、圧力解放孔51を有しない以外はアノード側シール材5と同様の構成を有している。MEA2とカソード側セパレータ4との間にカソード側シール材6を設け、カソード側シール材6をMEA2及びカソード側セパレータ4にそれぞれ密着させることにより、カソード23側の内部空間、つまり、MEA2と、カソード側セパレータ4と、カソード側シール材6とによって囲まれた空間からの酸化剤の漏出を抑制することができる。
【0046】
次に、本実施形態の燃料電池1の動作について説明する。燃料電池1の燃料流路32に燃料を供給すると、燃料流路32内の燃料がアノード拡散層24を通過してアノード22に供給される。また、酸化剤流路42に酸化剤を供給すると、酸化剤流路42内の酸化剤がカソード拡散層25を通過してカソード23に供給される。そして、アノード22及びカソード23においてそれぞれ電極反応が起きることにより、発電を行うことができる。
【0047】
この際、アノード拡散層24及びアノード22に供給された燃料の一部は、アノード拡散層24及びアノード22からアノード22とアノード側シール材5との隙間500に流出する。さらに、電極反応によってアノード22から生じた二酸化炭素の一部も、アノード拡散層24及びアノード22を介してアノード22とアノード側シール材5との隙間500に進入する。従って、アノード側シール材5とアノード22との間の隙間500を含むアノード側内部空間50には、燃料及び二酸化炭素が存在している。
【0048】
アノード22から発生した二酸化炭素の量が比較的少ない間は、アノード22側のアノード側内部空間50と外部空間との圧力差が比較的小さい。そのため、圧力解放孔51に設けられた可撓性蓋部512が自然状態の形状を維持することができる。従って、アノード22から発生した二酸化炭素の量が比較的少ない間は、図2に示すように可撓性蓋部512がアノード側セパレータ3と密着し、アノード側内部空間50が外部空間に対して閉鎖されている。
【0049】
一方、アノード側内部空間50内に滞留する二酸化炭素の量が増加し、アノード側内部空間50の内圧が外部空間の圧力に対して上昇すると、アノード側内部空間50と外部空間との圧力差によって可撓性蓋部512に応力が加わる。可撓性蓋部512の剛性が圧力差に抗しきれなくなると、可撓性蓋部512が変形し、圧力解放孔51の外部空間側の先端が外部空間に対して開口する。その結果、圧力解放孔51を介してアノード側内部空間50と外部空間とが連通する。アノード側内部空間50内に存在する二酸化炭素は、燃料に比べて粘性が低いため、圧力解放孔51が外部空間に対して開口すると、主にアノード側内部空間50内の二酸化炭素等が外部空間に放出される。
【0050】
以上のように、アノード側シール材5に燃料流路32と外部空間とを連通可能に構成された圧力解放孔51を設けることにより、アノード22から発生した二酸化炭素を外部空間に容易に放出することができる。
【0051】
(実施形態2)
本実施形態においては、圧力解放孔の他の態様の例を説明する。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。アノード側シール材に設けられた圧力解放孔は、内側開口から外部空間側の先端に至るまで一定の断面形状を有していてもよいが、可撓性蓋部が内側開口よりも外部空間に近い位置に設けられている場合には、内側開口から可撓性蓋部までの範囲において、可撓性蓋部側の端部における圧力解放孔の断面積が内側開口の開口面積よりも狭くなっていることが好ましい。このように、圧力解放孔における可撓性蓋部側の端部の断面積を狭くすることにより、アノード側内部空間の内圧が上昇した際に、可撓性蓋部に応力が集中しやすくなる。その結果、可撓性蓋部をより容易に変形させ、二酸化炭素をより容易にアノード側内部空間から外部空間へ排出することができる。
【0052】
より具体的には、アノード側シール材5には、図4及び図5に示すように、アノード側内部空間50に開口した内側開口531と、内側開口531よりも外部空間に近い位置に設けられた可撓性蓋部532とを備え、内側開口531から可撓性蓋部532側の端部に向かうにつれて断面積が狭くなるテーパ形状を有する圧力解放孔53が設けられていてもよい。
【0053】
図4及び図5に示す圧力解放孔53は、四角形状の断面形状を有しており、内側開口531から可撓性蓋部532に近づくほど、アノード側セパレータ3からの深さと幅との両方が小さくなっている。また、可撓性蓋部532は、圧力解放孔53における外部空間側の先端に設けられており、アノード側内部空間50の内圧に応じて、アノード側内部空間50と外部空間とが連通した連通状態と、アノード側内部空間50が外部空間に対して閉鎖された閉鎖状態とを切り替えることができるように構成されている。
【0054】
なお、図4及び図5においては、深さ及び幅の両方が可撓性蓋部532に近づくほど小さくなるテーパ形状の例を説明したが、圧力解放孔53は、内側開口531から可撓性蓋部532までの全体に亘ってアノード側セパレータ3からの深さが一定であり、内側開口531から可撓性蓋部532に近づくほど幅が小さくなるテーパ形状(図示略)を有していてもよい。また、圧力解放孔53は、内側開口531から可撓性蓋部532までの全体に亘って幅が一定であり、内側開口531から可撓性蓋部532に近づくほどアノード側セパレータ3からの深さが小さくなるテーパ形状(図示略)を有していてもよい。
【0055】
また、アノード側シール材5には、図6及び図7に示すように、アノード側内部空間50に開口した内側開口541と、内側開口541よりも外部空間に近い位置に設けられた可撓性蓋部542と、内側開口541から可撓性蓋部542側の端部までの間に設けられた1か所以上の段部543とを備え、段部543よりも可撓性蓋部542側の部分の断面積が段部543よりも内側開口541側の部分の断面積よりも狭くなるステップ形状を有する圧力解放孔54が設けられていてもよい。
【0056】
図6及び図7に示す圧力解放孔54は、四角形状の断面形状を有しており、内側開口541から可撓性蓋部542までの間に1か所の段部543を有している。また、圧力解放孔54は、内側開口541から可撓性蓋部542までの全体に亘って幅が一定であり、段部543よりも可撓性蓋部542側の部分におけるアノード側セパレータ3からの深さが、段部543よりも内側開口541側の部分における深さよりも浅くなっている。また、可撓性蓋部542は、圧力解放孔54における外部空間側の先端に設けられており、アノード側内部空間50の内圧に応じて、アノード側内部空間50と外部空間とが連通した連通状態と、アノード側内部空間50が外部空間に対して閉鎖された閉鎖状態とを切り替えることができるように構成されている。
【0057】
なお、図6及び図7においては、幅が一定であり、段部543よりも可撓性蓋部542側の部分におけるアノード側セパレータ3からの深さが段部543よりも内側開口541側の部分における深さよりも浅いステップ形状の例を説明したが、圧力解放孔54は、アノード側セパレータ3からの深さが一定であり、段部543よりも可撓性蓋部542側の部分における幅が段部543よりも内側開口541側の部分における幅よりも小さいステップ形状(図示略)を有していてもよい。また、圧力解放孔54は、段部543よりも可撓性蓋部542側の部分における幅及び深さが段部543よりも内側開口541側の部分における幅及び深さよりも小さいステップ形状(図示略)を有していてもよい。
【0058】
(実施形態3)
本実施形態においては、外部空間に対して常時開口した圧力解放孔を有する燃料電池102の例を説明する。本実施形態の燃料電池102は、図8に示すように、MEA2と、アノード側セパレータ3と、カソード側セパレータ4と、アノード側シール材5と、カソード側シール材6と、を有している。燃料電池102におけるMEA2、アノード側セパレータ3、カソード側セパレータ4及びカソード側シール材6の構成は、それぞれ、実施形態1の燃料電池1における対応する部分の構成と同様である。
【0059】
すなわち、MEA2は、電解質膜21と、電解質膜21上に設けられたアノード22及びカソード23と、アノード22上に設けられたアノード拡散層24と、カソード23上に設けられたカソード拡散層25と、を有している。また、アノード22の周囲の電解質膜21はバリア材26により覆われている。また、カソード側シール材6はMEA2の電解質膜21とカソード側セパレータ4との間に介在している。
【0060】
アノード側シール材5は、エラストマーから構成されており、図8に示すように、MEA2の電解質膜21とアノード側セパレータ3との間に設けられている。また、アノード側シール材5は、第1圧力解放孔55と、第2圧力解放孔56との2つの圧力解放孔を有している。
【0061】
第1圧力解放孔55は、実施形態1の圧力解放孔51と同様に、アノード側シール材5とアノード側セパレータ3との間に設けられている。図には示さないが、第1圧力解放孔55は、内側開口551から外部空間側の先端までの全体に亘って四角形状の断面形状を有している。図8及び図10に示すように、第1圧力解放孔55の外部空間側の先端には、アノード側シール材5と同一のエラストマーからなる可撓性蓋部552が設けられている。
【0062】
第1圧力解放孔55は、第2圧力解放孔56を上方に向けた状態において、第2圧力解放孔56よりも下方となる位置に設けられている。より具体的には、図10に示すように、第1圧力解放孔55は、アノード側シール材5における、第2圧力解放孔56が設けられた辺に対して対向する辺に設けられている。また、第1圧力解放孔55及び第2圧力解放孔56は、それぞれ、アノード側シール材5の辺の中央に設けられている。それ故、第2圧力解放孔56が上方を向くようにして燃料電池102を設置した場合、第1圧力解放孔55は第2圧力解放孔56の鉛直下方に配置される。
【0063】
図9に示すように、第2圧力解放孔56は、アノード側シール材5とアノード側セパレータ3との間に設けられている。図9及び図10に示すように、第2圧力解放孔56は、アノード側内部空間50における、アノード22とアノード側シール材5との隙間500に開口した第2内側開口561と、外部空間に開口した第2外側開口562とを有している。つまり、本実施形態の燃料電池102においては、アノード側内部空間50と外部空間とが第2圧力解放孔56を介して常に連通している。また、第2圧力解放孔56は、第2内側開口561から第2外側開口562までの全体に亘って四角形状の断面形状を有している。
【0064】
本実施形態の燃料電池102におけるアノード側シール材5は、可撓性蓋部552を備えた第1圧力解放孔55と、外部空間に開口した第2外側開口562を備えた第2圧力解放孔56との2つの圧力解放孔を有しており、第1圧力解放孔55は、第2圧力解放孔56を上方に向けた状態において第2圧力解放孔56よりも下方となる位置に配置されている。
【0065】
燃料電池102の内部空間内に滞留した二酸化炭素は燃料よりも上方に浮上する。そのため、第1圧力解放孔55及び第2圧力解放孔56を有する燃料電池102においては、第2圧力解放孔56が上方となるように燃料電池102を設置することにより、内部空間内に滞留した二酸化炭素を第2圧力解放孔56からより容易に外部空間に排出することができる。また、例えばアノードから急激に二酸化炭素が発生し、内部空間の圧力が急上昇した場合であっても、第1圧力解放孔55の可撓性蓋部552が変形することにより、第1圧力解放孔55と第2圧力解放孔56との両方から二酸化炭素を排出することができる。それ故、燃料電池102によれば、燃料の漏出を抑制しつつ、内部空間の圧力の過度の上昇をより確実に回避することができる。
【0066】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。例えば、実施形態1~3においては、アノード側シール材5が単一のエラストマーから構成されている例を示したが、アノード側シール材5は、2種類以上のエラストマーから構成されていてもよい。より具体的には、アノード側シール材に、第1エラストマーからなるシール材基部と、第1エラストマーよりも弾性率の低い第2エラストマーからなる低弾性部とを設け、低弾性部に可撓性蓋部を備えた圧力解放孔を設ける構成が考えられる。このように、圧力解放孔の周辺を比較的弾性率の低い第2エラストマーから構成することにより、可撓性蓋部をより容易に変形させることができる。
【符号の説明】
【0067】
1、102 燃料電池
2 膜電極接合体
21 電解質膜
22 アノード
23 カソード
3 アノード側セパレータ
4 カソード側セパレータ
5 アノード側シール材
50 アノード側内部空間
51 圧力解放孔
511 内側開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10