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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059530
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】除菌液
(51)【国際特許分類】
   A01N 65/36 20090101AFI20230420BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230420BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
A01N65/36
A01P3/00
A01P1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169593
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】520164057
【氏名又は名称】合同会社琉球ワンダー
(71)【出願人】
【識別番号】520160118
【氏名又は名称】ウォーターズ有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新屋 啓太
(72)【発明者】
【氏名】多丸 宏
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AA04
4H011BA02
4H011BB22
4H011BC18
4H011DA13
4H011DF04
(57)【要約】
【課題】各種の細菌類やウイルスに対して、高い除菌力を有し、安全性及び取扱性に優れた除菌液を提供する。
【解決手段】除菌液は、炭酸水と、グレープフルーツ種子抽出物に由来するポリフェノールと、を含む。好ましくは、炭酸水は、微細バブルを含むものであり、除菌成分として、グレープフルーツ種子抽出物に由来するポリフェノールが添加された除菌液は、高い除菌作用及び抗ウイルス作用を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸水と、グレープフルーツ種子抽出物に由来するポリフェノールとを含む、除菌液。
【請求項2】
上記炭酸水は、微細バブルを含む、請求項1に記載の除菌液。
【請求項3】
上記微細バブルは、マイクロバブル又はナノバブルを含む、請求項2に記載の除菌液。
【請求項4】
二酸化炭素濃度が、250mg/L以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の除菌液。
【請求項5】
pHが7未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の除菌液。
【請求項6】
上記グレープフルーツ種子抽出物に由来するクエン酸を、さらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の除菌液。
【請求項7】
上記炭酸水と、上記グレープフルーツ種子抽出物との混合液である、請求項1~6のいずれか1項に記載の除菌液。
【請求項8】
上記炭酸水の二酸化炭素濃度が300mg/L以上である、請求項7に記載の除菌液。
【請求項9】
上記グレープフルーツ種子抽出物の配合割合が、0.1体積%以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の除菌液。
【請求項10】
上記グレープフルーツ種子抽出物の配合割合が、1体積%以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の除菌液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレープフルーツ種子抽出物に由来する除菌成分を含む除菌液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、除菌や消毒用の液剤として、アルコール類又は次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系の除菌成分を含むものが用いられている。一方、これら成分は、人体に接触すると皮膚トラブルの要因となる等、使用時の取り扱いに注意を要することから、植物由来の除菌成分を用いることが検討されている。このような成分として、除菌作用を有するグレープフルーツ種子抽出物(以下、適宜、GSEと称する)が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、GSEを水に溶かし、フィチン酸を加えた上で、醸造用アルコールを加えてなり、GSEが0.07~0.09質量%、フィチン酸が0.04~0.06質量%、醸造用アルコールが58~59.9質量%、残りが水となるように調製された除菌液が開示されている。この除菌液は、ノロウイルスと形態的な特徴が近縁なウイルスであるネコカリシウイルスに対して、醸造用アルコールのみの場合よりも高い不活化効果を示している。
【0004】
また、特許文献2には、GSEの水溶液に、緩衝剤が含有されて、pH8以上に調整されているウイルス不活性化剤が開示されている。緩衝剤としては、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムが用いられ、水溶液が緩衝液となって安定化し、弱アルカリ領域でのウイルス不活性化剤の経時安定性が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-320924号公報
【特許文献2】特開2021-059512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、一般用又は医療用の除菌液の需要が増加しており、より除菌力が高く、安全性及び取扱性にも優れた除菌液が望まれている。しかしながら、特許文献1、2に記載される液剤は、いずれもノロウイルス等のウイルス不活性化に対する効果は示されているものの、より高い除菌力が要求される、例えば、芽胞を形成する細菌(以下、適宜、芽胞菌と称する)に対する効果は確認されていない。また、特許文献1の除菌液は、アルコールを主体とする液剤であり、安全性、取扱性に難がある。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、高い除菌力を有し、安全性及び取扱性に優れた除菌液を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、炭酸水と、グレープフルーツ種子抽出物に由来するポリフェノールと、を含む、除菌液にある。
【発明の効果】
【0009】
炭酸水に、除菌成分として、グレープフルーツ種子抽出物に由来するポリフェノールが添加された除菌液は、一般的な細菌類に対する除菌作用や抗ウイルス作用のみならず、芽胞菌に対しても高い除菌力を示すことが判明した。その理由は、必ずしも明らかではないが、炭酸水に含まれる気泡が、異物である菌やウイルスの表面に付着して破裂する際に、それらの表面を覆う皮膜を破壊する作用を有し、さらに、皮膜破壊された菌やウイルスに、除菌成分が速やかに作用して、除菌が進行するものと考えられる。また、炭酸水が、除菌液のpHを調整する作用を有して、除菌に好適な環境を形成し、炭酸水に含まれる気泡が電荷を帯びて菌やウイルスを吸着しやすくなること等が寄与して、種々の菌やウイルスの除去を可能にするものと推察される。
【0010】
以上のごとく、上記態様によれば、高い除菌力を有し、安全性及び取扱性に優れた除菌液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、除菌液に係る実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態において、除菌液は、炭酸水と、グレープフルーツ種子抽出物に由来する(以下、グレープフルーツ種子抽出物由来と略称する)ポリフェノールとを含む水性液剤である。好適には、炭酸水は、微細バブルを含む。また、好適には、除菌液は、二酸化炭素濃度が、250mg/L以上となるように調製されている。
【0012】
好ましくは、除菌液は、pHが7未満となるように調製されており、より好ましくは、弱酸性水溶液となるように、例えば、pHが4.5以上6以下の範囲に調製されている。除菌液に含まれる炭酸水は、除菌液を弱酸性領域に調整する緩衝作用を有し、微細バブル状の二酸化炭素を所定濃度で含むことにより、除菌液を所定の弱酸性領域に安定して維持する。また、除菌液は、グレープフルーツ種子抽出物由来のクエン酸を、さらに含むことができる。クエン酸は、除菌液のpHを調整する作用を有する。
【0013】
グレープフルーツ種子抽出物(GSE;grapefruit seed extract)は、柑橘類であるグレープフルーツの種子の抽出物であり、例えば、種子の粉砕物から溶媒を用いて抽出される。GSEは、脂肪酸及びフラボノイド(ポリフェノール)を主成分とする食品添加物として知られており、これら成分の他、クエン酸等を含んでいる。クエン酸も、食品添加物として認められている。GSE(原液)は、例えば、1mg/100g以上のポリフェノールを含み、また、30mg/100g以上のクエン酸を含むものが、好適に用いられる。
【0014】
炭酸水は、二酸化炭素(CO)ガスを水に混合して得られる水性液であり、マイクロバブル又はナノバブルのサイズの微細バブルを含むことが好ましい。マイクロバブルは、通常、直径が1μm以上100μm以下の気泡のことであり、ナノバブルは、直径が1μm未満の気泡のことを言う。微細バブルの粒子径及び個数の測定は、例えば、マイクロバブルについては、画像解析式粒子径分布測定装置等によって測定することができる。また、ナノバブルは、レーザ光の散乱を用いた動的光散乱法、粒子追跡法、レーザ回折・散乱法等により測定することができる。
【0015】
このような微細バブルは、除菌液に安定して溶存し、所望の二酸化炭素濃度を維持することができる。また、微細バブルは、除菌液中において、例えば、マイナスに帯電して、菌又はウイルスを吸着しやすくなると共に、それらの表面の皮膜を破壊して、除菌成分が菌又はウイルスに作用するのを補助する機能を有すると考えられる。さらに、微細バブルが除菌液中に安定して存在することにより、除菌液のpHが安定し、除菌液の効果を長期間維持することが可能になる。
【0016】
除菌液は、好適には、二酸化炭素濃度が、250mg/L以上となるように調製されており、より微細なバブル状の二酸化炭素がより多く溶存することにより、菌又はウイルスに対する接触確率が高くなり、除菌又はウイルス不活性化に有利に作用する。二酸化炭素濃度が250mg/L~300mg/L程度ないし以上の炭酸水は、一般に、温泉法による炭酸泉とされる濃度のものであり、常温で天然に存在する濃度よりも高い。
【0017】
二酸化炭素は、予め所定濃度で水に溶存させた炭酸水として、GSEと混合することができる。水は、一般の水道水、天然水、蒸留水等の任意のものを用いることができる。炭酸水の二酸化炭素濃度は、300mg/L以上、好適には、500mg/L以上であることが好ましく、除菌液の二酸化炭素濃度を所望の濃度に調整可能となる。
【0018】
炭酸水の調製方法は、特に制限されず、微細バブルが所望の濃度で含まれるように、二酸化炭素を水に混合して溶解させる方法であればよい。その際、炭酸水に溶存可能な二酸化炭素の量は、圧力によって制限され、例えば、大気圧においては、1000mg/L程度が上限となる。そのため、好適には、炭酸水の製造時の圧力を大気圧よりも高くし、加圧下にて混合を行うことにより、溶存可能な二酸化炭素の量を増加させることができる。通常は、炭酸水の二酸化炭素濃度が、1000mg/L以上1300mg/L以下の範囲となるように調整されることが好ましい。
【0019】
炭酸水とGSEとを混合して除菌液とする際には、その除菌作用を有効に発揮するという観点から、GSEの原液を用い、その配合割合を、0.1体積%以上とすることが望ましい。また、GSEの原液の配合割合の上限は、特に制限されないが、25体積%以下の範囲であれば、実用上十分な効果が得られる。好適には、GSEの配合割合を、1体積%以上10体積%以下の範囲で、所望の除菌効果が得られるように、適宜設定することができる。
【0020】
このようにして得られた除菌液は、天然由来の成分のみを使用した水性液剤であり、安全性が高い。また、取扱性にも優れており、直接使用することもできるが、必要により又は用途に応じて、水道水等の水で希釈して使用することもできる。その場合には、スプレーボトル等に除菌液を入れて所望の希釈率となるように水を追加し、あるいは、加湿器のタンク等に入れた水に除菌液を添加して、ミスト状に噴霧して使用することができる。
【0021】
以上のように、本形態の除菌液は、微細バブル状の二酸化炭素が溶存している炭酸水に、グレープフルーツ種子抽出物由来の除菌成分が添加されたものであり、一般的な細菌類に対する除菌作用や抗ウイルス作用のみならず、芽胞菌に対しても高い除菌力を示す。また、安全性及び取扱性に優れており、除菌液として有用である。
【0022】
このような効果が得られる理由は、必ずしも明らかではないが、除菌液に含まれる微細バブルが、電荷を帯びて菌やウイルスを吸着しやすくなっており、異物である菌やウイルスの表面に付着すると、破裂してそれらの皮膜を破壊する作用を有することが大きく寄与していると考えられる。それにより、皮膜破壊された菌やウイルスに、除菌成分が作用しやすくなり、速やかに除菌が進行するものと考えられる。また、微細バブルが除菌液中に安定して存在し、pHを弱酸性領域でほぼ一定に維持する緩衝作用を有して、除菌に好適な環境を形成していること等が寄与して、種々の菌やウイルスの除去を可能にするものと推察される。
【実施例0023】
以下に、除菌液の実施例と、比較例又は参考例において行った各種菌又はウイルスに対する抗菌試験又はウイルス不活性化試験とその結果を示して、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
(実施例1~3)
以下のようにして、グレープフルーツ種子抽出物の原液(以下、GSE原液)と、微細バブルを含む高濃度炭酸水との混合液からなる除菌液を調製し、得られた除菌液の効果を確認するための試験を行った。GSE原液としては、表1、表2に示す成分組成を有する市販品を用いた。表1に示されるように、GSE原液は、除菌成分としてのポリフェノールと、脂質(脂肪酸)の他に、クエン酸と、フルクトース、タンパク質とを含んでいる。表2は、表1における脂質を構成している脂肪酸組成を示している。
【0025】
微細バブルを含む炭酸水は、水道水と二酸化炭素ガスとを、0.35MPaの圧力下で混合することにより、二酸化炭素濃度が1000mg/Lとなるように調製された高濃度炭酸水を用いた。このようにして調製された炭酸水は、レーザ光の散乱を用いた粒子径測定装置により、粒子径1μm未満のナノバブルを、1.9~2.0×107 個/ml含むことが確認された。
【0026】
また、このようにして調製された炭酸水は、水道水のpH(通常、5.8~8.6の範囲)によらず、高濃度炭酸水のpHが5程度に保たれることが確認された。pH10のアルカリ性水に二酸化炭素を混合した場合も、高濃度炭酸水の緩衝作用により、pHが6前後となることが確認された。
【0027】
上記のようにして得た高濃度炭酸水500mlに、2体積%の含有割合となるように、GSE原液を混合して、試験用の除菌液を得た。この試験用の除菌液を用いて、混釈平板培養法により、芽胞菌に対する除菌効果を確認するための抗菌試験を行った。除菌液に添加される試験菌液は、予め枯草菌(Bacillus subtilis)の培養により得られた枯草菌液を用いて調製し、試験用の除菌液9mlに対して、菌液1mlを接種した。表3に示すように、菌液添加から室温で所定時間作用させた後に、試験液を標準寒天培地にて混釈培養し、菌数を計測した。結果を実施例1~3として、表3に併記する。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
また、比較対照として生理食塩水を用いて、実施例1と同様の操作を行った。結果を、表3中の対照液欄に併記する。表3の結果に示されるように、除菌液を含まない実施例1の対照液では、添加直後の菌数が、1.7×105(/ml)であった。これに対し、実施例1では、対照液と同じ添加直後において、定量下限値未満まで、菌数が低減しており、実施例2、3の1時間後、2時間後についても、同様の結果が得られた。このように、除菌成分としてポリフェノールを含むGSEと、二酸化炭素の微細バブルを含む炭酸水とを混合した除菌液は、芽胞菌に対して高い除菌効果を示すことが確認された。
【0032】
(比較例1~3)
実施例1と同様にして得た高濃度炭酸水500mlに、GSE原液を混合せずに、比較用の試験液とした。この試験液9mlに対して、実施例1と同様に予め調製された菌液1mlを接種し、芽胞菌に対する除菌効果を確認するための抗菌試験を行った。表3に示すように、菌液添加から所定時間作用させた後に、試験液を標準寒天培地にて混釈培養し、菌数を計測した。結果を比較例1~3として、表3に併記する。
【0033】
また、比較対照として生理食塩水を用いて、比較例1と同様の操作を行った。結果を、表3中の対照液欄に併記する。表3の結果に示されるように、比較例1~3は、いずれも菌数が105オーダーで、対照液とほぼ同等であり、高濃度炭酸水のみでは、芽胞菌に対する除菌効果が得られないことが判明した。
【0034】
(比較例4~7)
比較用の試験液として、高濃度炭酸水を混合しないGSE原液を用い、実施例1と同様の芽胞菌に対する抗菌試験を行った。試験液としてのGSE原液30mlに、予め調製された試験菌液0.1mlを加えて混合し、室温で10分、30分、1時間接触後にそのうち1mlを取り、滅菌生理食塩水にて希釈した。この希釈液を、標準寒天培地にて混釈培養し、所定時間後の生菌数を計測した。なお、試験菌液には、枯草菌を培養して芽胞を形成後、加熱により栄養型細菌を死滅させた芽胞菌を使用した。結果を比較例4~7として、表3に併記する。
【0035】
また、比較対照として滅菌精製水を用いて、比較例4、7と同様の操作を行った。結果を、表3中の対照液欄に併記する。表3の結果に示されるように、比較例4~7のGSE原液のみの場合、いずれも菌数が105オーダーと、添加直後又は1時間後の対照液と同等であり、芽胞菌に対する除菌効果は見られないことが判明した。
【0036】
(参考例1~3)
参考のため、実施例1で用いたGSE原液について、濃度を変更した試験液を調整し、3種の食中毒菌に対する抗菌試験を行って、効果の有無と効果が表れる濃度を確認した。表4に示すように、試験液として、GSE原液を滅菌水で希釈して、0.1%、0.01%、0.001%水溶液(体積%)としたものを用い、これら試験液9mlに、それぞれ添加用の試験菌液1mlを、添加撹拌した。試験菌液は、大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ属菌(Salmonella spp)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus)の3種について、予め供試菌株を用いて培養したものを所定の菌数レベルとなるように調製したものを用いた。
【0037】
添加撹拌した直後の試験液について、直ちに標準寒天培地を用いた混釈平板培養法(35±1℃、48時間培養)により、出現した菌数(コロニー数)を計測した。その結果を、表4に併記するように、比較対照となる生理食塩水(対照試料1)については、いずれの菌についても、菌数が105オーダーであった。これに対し、0.1%GSE原液を添加した参考例1は、大腸菌(E.coli)が104オーダーと約一桁の減少を示し、サルモネラ属菌は約二桁の減少を、黄色ブドウ球菌は約五分の一の減少を示した。0.01%、0.001%GSE原液を添加した参考例2、3については、菌数の減少は確認されなかった。
【0038】
【表4】
【0039】
表4の結果を踏まえて、GSE原液の含有量が2.0%(体積%)の試験液を調製し、作用時間を変更した参考例4~6について、同様の抗菌試験を行った。試験液9mlに、3種の菌の添加用の試験菌液1mlを、それぞれ添加撹拌し、添加直後、1時間作用後(室温)、2時間作用後(室温)に、混釈平板培養法により菌数を計測した。結果を、比較対照のための対照試料2~4の結果と共に、表4に併記する。
【0040】
表4に示されるように、対照試料2~4は、いずれの菌についても、菌数が105オーダーで作用時間による変化も見られなかった。これに対し、2.0%GSE原液を添加した参考例4~6は、大腸菌(E.coli)、サルモネラ属菌について、添加直後から菌数が10以下となった。黄色ブドウ球菌は、添加直後の菌数は40(/ml)であったものの、1時間作用後、2時間作用後には10以下となり、菌が検出されなくなった。
【0041】
(参考例7~9)
参考のため、実施例1で用いたGSE原液について、腸管出血性大腸菌O157(以下、O157)に対する抗菌試験を行った。試験液として、GSE原液9mlに、予め保存菌株を用いて調製された添加用の試験菌液1mlを接種して、表5に示すように、菌液添加から所定時間作用させた。その後、試験液を標準寒天培地にて混釈培養し(35℃、24±2時間)、菌数を計測した。結果を参考例7~9として、生理食塩水を用いた対照液の結果と共に、表5に併記する。
【0042】
【表5】
【0043】
表5の結果に示されるように、GSE原液のみの試験液でも、添加直後からO157に対する除菌効果が見られ、定量下限値未満に減少した。
【0044】
(参考例10~12)
参考のため、実施例1で用いたGSE原液について、MRSA(methicillin‐resistant Staphylococcus aureus;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対する抗菌試験を行った。試験液として、GSE原液10mlに、予め調製された試験菌液0.1mlを添加して、表5に示す所定時間反応させた後、LP希釈液で100倍に希釈して反応を停止した。次いで、そのうち1mlを取り出し、9mlの希釈用生理食塩水に混合して、10倍に希釈した。この希釈液を、標準寒天培地にて混釈培養し(37℃で48時間)、コロニー数を計測して生菌数を求めた。なお、試験菌液には、予め保存菌を培養して培地成分を除去し、精製水で所定の菌数範囲に調製されたものを用いた。結果を参考例10~12として、表6に併記する。
【0045】
【表6】
【0046】
また、滅菌精製水を用いた対照液について、同様の試験行った結果を、表6に併記する。対照液については、参考例10~12と同じ所定時間(1分、5分、10分)反応させた場合と共に、接種直後の菌数を対照試料5として併せて示した。
【0047】
表6の結果に示されるように、対照試料2は接種直後からの菌数が大きく変化していないのに比べて、参考例10~12のように、GSE原液を含む試験液では、1分の反応でMRSAに対する明らかな除菌効果が見られ、10分の反応で生菌数が100未満(/ml)に減少した。
【0048】
(参考例13~20)
参考のため、実施例1で用いたGSE原液について、インフルエンザウイルス(Influenza A virus)及びネコカリシウイルス(Feline calicivirus)に対するウイルス不活性化試験を行った。試験液として、GSE原液を用い、ウイルス液を添加混合した作用液について、所定時間後(室温)のウイルス感染価を測定した。表7に示すように、インフルエンザウイルスは、作用開始の直後、10分後、1時間後、3時間後の作用液について、それぞれ測定を行った。また、ネコカリシウイルスは、作用開始の直後、15秒後、1分後、10分後の作用液について、それぞれ測定を行った。これらの結果を、参考例13~16、参考例17~20として、対照液(精製水)の結果と共に、表7に併記する。
【0049】
なお、ネコカリシウイルスは、ノロウイルスの代替ウイルスである。ウイルス液は、細胞培養液のウイルス培養液を遠心分離して得られた上澄み液を、精製水で10倍希釈したものであり、このウイルス液0.1mlを試験液1mlに添加した作用液について、室温で所定時間作用させた後、細胞維持培地で1000倍に希釈した。ウイルス感染価(log TCID50/ml)は、TCID50(median tissue culture infectious dose)法に基づいて測定された、50%組織培養感染量である。
【0050】
【表7】
【0051】
表7に示すように、インフルエンザウイルスは、10分作用後の参考例14において、ウイルス感染価が4.5未満(log TCID50/ml)となり、ネコカリシウイルスは、15秒後の参考例18において、ウイルス感染価が3.5未満(log TCID50/ml)となり、ウイルスが検出されなくなった。
【0052】
(参考例21)
参考のため、実施例1で用いたGSE原液について、OECD化学物質毒性試験指針(1987)に準拠し、マウスにおける急性経口毒性試験(限度試験)を行った。GSE原液を精製水で1000倍に希釈した試験液を用い、試験群となる雌雄マウスに、20ml/kgの用量で単回経口投与したところ、試験後の観察期間において異常は認められず、対照群との体重増加に差は見られなかった。なお、対照群となる雌雄マウスには、試験液に代えて、精製水0.7ml又は0.6mlを投与し、観察期間は14日間とした。
【0053】
また、参考のため、実施例1で用いたGSE原液について、食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について」(平成17年1月24日付食安発第0124001号)に基づく試験を行ったところ、全ての検査項目について、次検出であった。
【0054】
以上の結果から、GSE原液については、動物に対する急性の経口毒性は見られず、残留農薬等も検出されていない。GSE原液を炭酸水と混合して得られる除菌液についても、同様と考えられるから、このような除菌液を、従来の消毒液等に代えて用いることにより、除菌性能と安全性の両立が可能になる。
【0055】
このような除菌液は、天然由来の成分であるGSEと炭酸水のみを含み、人体への影響が少ない弱酸性の水溶液であるので、安全であるのみならず取扱性にも優れている。また、除菌成分を含むGSEと微細バブル状の二酸化炭素が溶存する炭酸水とを組み合わせることにより、種々の菌やウイルスに対して高い除菌効果を示し、しかも、安定した品質を長期間維持するとことが可能になる。
【0056】
本発明は、上記した実施形態や実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。