(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059534
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】薬品注入支援システム、薬品注入支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20230420BHJP
【FI】
C02F1/00 K
C02F1/00 T
C02F1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169601
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】有村 良一
(72)【発明者】
【氏名】穂刈 啓志
(72)【発明者】
【氏名】荻野 翼
(72)【発明者】
【氏名】米元 亮馬
(57)【要約】
【課題】 水処理プラントにおいて薬品をより適量に注入するための支援を行うこと。
【解決手段】 実施形態によれば、原水の水質情報と、前記原水に注入される薬品の注入情報とを用いて、前記原水に注入される薬品による反応をモデル化した水質反応モデルにより、処理水の水質を予測する水質反応モデル予測部と、前記水質反応モデル予測部により予測された前記処理水の水質の予測値と、前記処理水の水質の実績値とを用いて、前記水質反応モデルに適用されるモデルパラメータを調整するパラメータ調整部と、を具備し、前記パラメータ調整部が調整する前記モデルパラメータは、前記薬品の単位注入率あたりの前記処理水の水質の変化量に相当するパラメータを含む、薬品注入支援システムが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水の水質情報と、前記原水に注入される薬品の注入情報とを用いて、前記原水に注入される薬品による反応をモデル化した水質反応モデルにより、処理水の水質を予測する水質反応モデル予測部と、
前記水質反応モデル予測部により予測された前記処理水の水質の予測値と、前記処理水の水質の実績値とを用いて、前記水質反応モデルに適用されるモデルパラメータを調整するパラメータ調整部と、
を具備し、
前記パラメータ調整部が調整する前記モデルパラメータは、前記薬品の単位注入率あたりの前記処理水の水質の変化量に相当するパラメータを含む、薬品注入支援システム。
【請求項2】
前記薬品の単位注入率あたりの前記処理水の水質の変化量は、アルカリ度の低下量を含む、
請求項1に記載の薬品注入支援システム。
【請求項3】
前記薬品の単位注入率あたりの前記処理水の水質の変化量は、凝集剤1mg/Lの注入率あたりのアルカリ度の変化量、次亜塩素酸ナトリウム1mg/Lの注入率あたりのアルカリ度の変化量、硫酸1mg/Lの注入率あたりのアルカリ度の変化量、苛性ソーダ1mg/Lの注入率あたりのpHの変化量、の少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載の薬品注入支援システム。
【請求項4】
前記パラメータ調整部は、前記水質反応モデル予測部により予測された前記処理水の水質の予測値と前記処理水の水質の実績値との差分が、あらかじめ設定した閾値を超過している場合に、差分が小さくなるように前記モデルパラメータを変更する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薬品注入支援システム。
【請求項5】
前記原水水質情報は、前記原水の濁度、pH、水温、及びアルカリ度を示す情報を含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薬品注入支援システム。
【請求項6】
前記薬品注入情報は、凝集剤の注入率、苛性ソーダの注入率、硫酸の注入率、及び塩素の注入率を示す情報を含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の薬品注入支援システム。
【請求項7】
前記処理水の水質の実績値は、薬品添加後のアルカリ度の実績値及び薬品添加後のpHの実績値を含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の薬品注入支援システム。
【請求項8】
水質反応モデル予測部により、原水の水質情報と、前記原水に注入される薬品の注入情報とを用いて、前記原水に注入される薬品による反応をモデル化した水質反応モデルにより、処理水の水質を予測することと、
パラメータ調整部により、前記予測された前記処理水の水質の予測値と、前記処理水の水質の実績値とを用いて、前記水質反応モデルに適用されるモデルパラメータを調整することと、
を含み、前記パラメータ調整部により調整される前記モデルパラメータは、前記薬品の単位注入率あたりの前記処理水の水質の変化量に相当するパラメータを含む、薬品注入支援方法。
【請求項9】
コンピュータに、
原水の水質情報と、前記原水に注入される薬品の注入情報とを用いて、前記原水に注入される薬品による反応をモデル化した水質反応モデルにより、処理水の水質を予測する機能と、
前記予測された前記処理水の水質の予測値と、前記処理水の水質の実績値とを用いて、前記水質反応モデルに適用されるモデルパラメータを調整する機能と
を実現させるためのプログラムであって、前記調整される前記モデルパラメータは、前記薬品の単位注入率あたりの前記処理水の水質の変化量に相当するパラメータを含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、薬品注入支援システム、薬品注入支援方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場における浄水処理プロセスの運転管理は、水道水の水質基準を達成するよう浄水処理後の水の水質を維持することが主な目的である。そして、各浄水場は、一般的に、その水質基準よりも高いレベルの管理目標水質を設定したうえで、洗浄や汚泥処分にかかる費用やエネルギーについて省コスト・省エネルギーを達成するよう努力している。特に、近年においては水道事業体の運営基盤の強化の観点から低コストの運転管理技術が、要求されている。
【0003】
一般的に、浄水場などの水処理プラントでは、原水に含まれる懸濁浮遊物などを沈降除去するためのプロセスがある。これは固液分離プロセスと呼ばれている。この固液分離プロセスは、懸濁浮遊物などの水中からの除去効率を高めるために、凝集剤と称する薬品を注入して、フロックを形成して沈降速度を上げる凝集プロセスを含む。フロックとは、懸濁浮遊物と凝集剤が集塊化して形成されるものである。フロックは、目視では確認できない数十マイクロメートルのマイクロフロックと呼ばれるものから、肉眼でも観察できるようになるまで成長した数ミリメートルから数センチメートル程度の巨大フロックと呼ばれるものまで様々な大きさのものがある。良い凝集プロセスは、良好なフロックを形成するプロセスのことで、良好なフロックを形成するには、懸濁浮遊物に対する凝集剤の注入量を適切に管理するのみでなく、その原水のpHやアルカリ度、水温といった水質パラメータをも考慮することが大切である。特に、凝集剤を注入した後のpHを適切な範囲に維持することが、良好なフロックの形成につながる。良好なフロックが形成されると、フロックの密度が高く、粒径が大きくなるので、沈降性が良くなり、固液分離が促進される。
【0004】
浄水場等で用いられている凝集剤やpH調整剤等の薬品の注入率の決定は、熟練員の経験やノウハウに基づいて調整されている場合が多く、技術の継承が難しい。この対策として、過去の水質データや薬品注入の実績データを統計学的に処理したり、または機械的に学習したりして、薬品の注入率を予測しガイダンスするという技術の開発が進んでいる。近年では、AIや機械学習といった手法を用いて薬品注入と水質との関係を分析する技術も提案されている。しかしながら、浄水場における薬品注入は、その時の運用に無駄がある場合や、浄水場の事情で過剰気味に薬品を注入している場合があり、必要以上に注入されていることも多い。このため、過去のデータに基づいて機械学習等の解析を行い薬品の注入率を予測したとしても、予測した注入率は、上述した無駄や過剰分を含んだ値となってしまう恐れがある。そして、必要以上に薬品を注入することは、浄水場の運転管理を低コスト化する際の阻害要因となる。
【0005】
これに対して、水処理反応を取り込んだ物理モデルを用いて、薬品の注入率を含む薬品注入情報を用いて処理水の水質をシミュレーションする手法も考案されている。この手法であれば、過去に経験したことの無い水質や薬品注入率を用いたシミュレーションも可能となる場合がある。しかしながら、薬品注入情報は各浄水場によって異なり、そのため物理モデルによるシミュレーションに実用的な精度を求めためには、モデルの内部パラメータを常に調整する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、水処理プラントにおいて薬品をより適量に注入するための支援を行うことができる薬品注入支援システム、薬品注入支援方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、原水の水質情報と、前記原水に注入される薬品の注入情報とを用いて、前記原水に注入される薬品による反応をモデル化した水質反応モデルにより、処理水の水質を予測する水質反応モデル予測部と、前記水質反応モデル予測部により予測された前記処理水の水質の予測値と、前記処理水の水質の実績値とを用いて、前記水質反応モデルに適用されるモデルパラメータを調整するパラメータ調整部と、を具備し、前記パラメータ調整部が調整する前記モデルパラメータは、前記薬品の単位注入率あたりの前記処理水の水質の変化量に相当するパラメータを含む、薬品注入支援システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る薬品注入支援システムを備えた浄水場の構成の一例を示す図。
【
図2】
図1中に示されるデータ収集・保存部21及び薬品注入支援システムの主要部の詳細な構成の一例を示す図。
【
図3】同実施形態におけるデータ収集・保存部及び薬品注入支援システムの主要部の動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。
【0011】
[全体の構成]
図1は、実施形態に係る薬品注入支援システムを備えた浄水場の構成の一例を示す図である。また、
図2は、
図1中に示されるデータ収集・保存部21及び薬品注入支援システム20の主要部の詳細な構成の一例を示す図である。
【0012】
まず、
図1を参照して、本実施形態における浄水場及び浄水場の薬品注入支援システムの概略について説明する。
【0013】
図1に示されるように、浄水場1は、原水を処理するための貯水設備として、着水井3、活性炭接触池4、混和池5、フロック形成池6、沈澱池7、砂ろ過池8及び浄水池9を備える。浄水場1は、さらに、流量計2a~2dと、サンプリングポンプ4aと、原水水温計10と、原水アルカリ度計11と、原水pH計12と、流量計13と、沈澱池出口濁度計14と、凝集剤注入量制御部15と、凝集剤注入設備16と、pH調整剤注入設備17と、混和池pH計18と、混和池アルカリ度計19と、プラント操作部26とを備える。
【0014】
薬品注入支援システム20は、水質反応モデル予測部23と、パラメータ調整部24と、運転薬品注入支援部25とを備える。この薬品注入支援システム20は、データ収集・保存部21のデータを常時利用可能である。
【0015】
データ収集・保存部21は、流量計2a~2d、原水水温計10、原水アルカリ度計11、原水pH計12、流量計13、混和池pH計18、及び混和池アルカリ度計19でそれぞれ計測されたデータなど(以下、プラントデータという)を収集し保存する。すなわち、データ収集・保存部21は、浄水場などにおけるプロセスデータの保存データベースに相当するものであり、分単位の時系列データや、時単位の時系列データ、その他の設定値データといったプラントの情報を保存する。
【0016】
薬品注入支援システム20は、データ収集・保存部21に収集されたプラントデータに基づいて、凝集剤等の薬品の注入率を示す情報をプラント操作部26に送信する機能を有し、例えば1台または複数台のコンピュータで構成される。
【0017】
浄水場1では、着水井3を用いた取水プロセス、活性炭接触池4を用いた活性炭吸着プロセス、混和池5を用いた凝集剤注入プロセス、フロック形成池6を用いたフロック形成プロセス、沈澱池7を用いた沈澱ろ過プロセス、砂ろ過池8を用いた砂ろ過プロセスなどの複数の浄水プロセスが行なわれる。
【0018】
取水プロセスでは、例えば、複数の取水源A系~D系から原水が取水されて、それぞれ配管を通じて着水井3に流入される。各取水源A系~D系からの原水は、それぞれの配管に設けられた流量計2a~2dにより取水流量が測定されている。流量計2a~2dにより測定された流量のデータは、プラントデータの一部としてデータ収集・保存部21に送られる。浄水場によっては取水源が1系統の場合もあり、その際は、流量計も1系統分が設置される。
【0019】
着水井3では、サンプリングポンプ4aにより原水サンプルが取り出されて、原水水温計10、原水アルカリ度計11、原水pH計12により原水の水温、アルカリ度、及びpHが、原水の水質を示す原水水質情報として測定される。これらの測定値は、プラントデータの一部としてデータ収集・保存部21に送られる。原水水質情報が測定された後に、着水井3に取水された原水に対して、pH調整剤注入設備17からpH調整剤が注入され、凝集沈澱処理を良好に進めるのに適したpHに調整される。pH調整剤とは、例えば、アルカリ側に調整する場合には苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)、酸性側に調整する場合には硫酸が使用される。このpH調整剤注入設備17は、後述するように、運転薬品注入支援部25により、プラント操作部26を介して、pH調整剤の注入率が制御される。
【0020】
また、原水は、配管を通じて活性炭接触池4に流入される。流入された原水は、活性炭接触池4において活性炭吸着プロセスにより、消臭などの処理が行われる。ここで、活性炭が投入されるケースは、カビ臭などの臭気対策や、色度などの色の除去が必要となった場合である。活性炭設備を備えていても、常時注入していない浄水場もある。
【0021】
活性炭接触池4からは、消臭などの処理が行われた原水が、配管を通じて混和池5に流入される。配管に設けられた流量計13により測定された流量のデータは、プラントデータの一部としてデータ収集・保存部21に送られる。混和池5では、凝集剤注入設備16から凝集剤(例えばポリ塩化アルミニウム(PAC))が注入される凝集剤注入プロセスが実行される。この凝集剤注入設備16は、注入量制御部15及びプラント操作部26介して、後述するように、運転薬品注入支援部25により、プラント操作部26を介して、凝集剤の注入率が制御される。
【0022】
混和池5の出口では、サンプリングポンプ等により(図示せず)混和水サンプルが取り出されて、混和池pH計18により混和水のpHが、また混和池アルカリ度計19により混和池のアルカリ度が、処理水の水質を示す処理水水質情報として計測される。これらの測定値は、プラントデータの一部としてデータ収集・保存部21に送られる。混和池5で凝集剤が注入された原水は、原水中の濁質と凝集剤が衝突しあい、また電荷的に引き合うことで集塊化しマイクロフロックを形成する。その後はフロック形成池6に送られる。フロック形成池6では、原水中に含まれるマイクロフロックや残留凝集剤、および残留濁質等が凝集することでフロック化されるフロック形成プロセスが行われる。さらに、沈澱池7では、沈澱ろ過プロセスにより、沈降分離により原水の濁質除去が行なわれる。
【0023】
[データ収集・保存部21の構成]
図2に示されるように、データ収集・保存部21には、プラントの原水水質情報(原水の水質情報)、薬品注入情報(原水に注入される薬品の注入情報)、及び処理水水質情報(処理水の水質情報)が、時系列データとして保存される。
【0024】
原水水質情報は、原水の水質を示す情報として、原水のpH、水温、アルカリ度といった情報を含む。薬品注入情報は、原水への薬品の注入率を示す情報として、PACなどの凝集剤の注入率[mg/L]、苛性ソーダなどのpH調整剤の注入率[mg/L]といった薬品の注入率を示す情報を含む。また、この薬品注入情報は、凝集剤の種類やアルミ系の凝集剤であればアルミニウムの塩基度といった情報や、pH調整剤の種類やその濃度の情報を含む。処理水水質情報は、薬品注入情報に応じて注入された薬品による処理後の処理水の水質の実績値を示す情報として、薬品添加後の混和池のpH、薬品添加後の混和池のアルカリ度といった情報を含む。
【0025】
データ収集・保存部21には、プラントの構造的な情報(固定値情報)として、各池の容積を示す情報がそれぞれ保存されている。構造的な情報は、可変である場合は少ないので、更新等の工事が行われない限り一定の値となっていることが多い。
【0026】
また、データ収集・保存部21は、流量計2a~2d及び流量計13から収集した原水の流量を示す情報も保存する。浄水場における原水の流量は、24時間一定である場合もあれば、水道水の需要に応じて変動する場合もある。原水の流量と、プラントの構造的な容積とを用いることで、各池における原水の滞留時間を算出することができる。
【0027】
前述したデータ収集部・保存部21には、処理水水質情報として薬品注入後のアルカリ度の実績値や薬品注入後のpHの実績値を示す情報が、時系列に保存されるようになっている。処理水水質情報である薬品注入後のアルカリ度の実績値や、薬品注入後のpHの実績値は、水質反応モデル予測部23が出力した薬品添加後のアルカリ度やpHの予測値と対をなすデータである。前者は実績値であり、後者はモデル値である。ここで、処理水水質情報や出力情報には時刻情報が付随する。このため、両者を同一時刻で比較したり、水が流下する流下時間分だけデータをずらして検討したりすることができる。処理水の水質の実績値は、水の流下時間分だけ遅れた時刻に計測されることになる。
【0028】
[水質反応モデル予測部23の構成]
水質反応モデル予測部23は、データ収集部・保存部21に格納される原水水質情報と薬品注入情報とを用いて、原水に注入される薬品による反応をモデル化した水質反応モデルにより、処理水の水質を予測するものである。
【0029】
この水質反応モデル予測部23は、例えば浄水場における水質反応をより具体的に数式化したモデルに基づいて処理水の水質を予測する。そのために、水質反応モデル予測部23は、水処理プロセスの水質反応モデルを定義しておき、データ収集・保存部21に保存された薬品注入情報を用いて、凝集剤やpH調整剤の任意の薬品注入率を選んだ際の、処理水の水質の結果を予測する。例えば、水質反応モデル予測部23は、原水水質情報と薬品注入情報とを入力とし、原水水質情報及び薬品注入情報に基づいて予測した、混和水のpHおよび混和水のアルカリ度を出力とする。また、水質反応モデル予測部23は、任意に設定した原水水質情報と任意に設定した薬品注入情報とを入力とし、原水水質情報及び薬品注入情報に基づいて予測した、混和水のpHおよび混和水のアルカリ度を出力とすることもできる。水質反応モデルは、例えば、水中の全炭酸濃度や炭酸イオンの平衡定数を用いたモデルであってもよい。
【0030】
[パラメータ調整部24の構成]
パラメータ調整部24は、水質反応モデル予測部23により予測された処理水の水質の予測値と、データ収集・保存部21から得られる処理水の水質の実績値とを用いて、水質反応モデル予測部23において使用される前記水質反応モデルに適用されるモデルパラメータを調整するものである。
【0031】
このパラメータ調整部24は、水質反応モデル予測部23が処理水の水質を予測する際に利用した入力情報(原水水質情報及び薬品注入情報)を用いて、水質反応モデル予測部23が予測した処理水の水質の予測値(混和池のpHや混和池のアルカリ度の予測値)と、データ収集・保存部21に保存された処理水水質情報が示す処理水の水質の実績値(具体的には、水質反応モデル予測部23が処理水の水質を予測する際に利用した入力情報(原水水質情報及び薬品注入情報)に基づき原水に対して実際に処理が行われた後に得られる処理水水質情報が示す処理水の水質の実績値(混和池のpHや混和池のアルカリ度の実績値))とを比較し、比較した結果を示すデータを保存する。
【0032】
また、パラメータ調整部24は、比較結果を示すデータにおいて、双方が乖離しているか否かを判断する。パラメータ調整部24は、例えば、水質反応モデル予測部23が予測した処理水の水質の予測値(混和池のpHや混和池のアルカリ度の予測値)と、データ収集・保存部21に保存された処理水水質情報が示す処理水の水質の実績値(具体的には、水質反応モデル予測部23が処理水の水質を予測する際に利用した入力情報(原水水質情報及び薬品注入情報)に基づき原水に対して実際に処理が行われた後に得られる処理水水質情報が示す処理水の水質の実績値(混和池のpHや混和池のアルカリ度の実績値))との差分が、所定の閾値を超過しているか否かを判断する。
【0033】
また、パラメータ調整部24は、上記した差分が閾値を超過していると判断した場合に、データ収集・保存部21のデータを使って水質反応モデル予測部23で用いるパラメータ(状態変数)を変更し、新たなパラメータを水質反応モデル予測部23に設定する。その場合、パラメータ調整部24は、水質反応モデル予測部23が予測した処理水の水質の予測値(混和池のpHや混和池のアルカリ度の予測値)と、データ収集・保存部21に保存された処理水水質情報が示す処理水の水質の実績値(具体的には、水質反応モデル予測部23が処理水の水質を予測する際に利用した入力情報(原水水質情報及び薬品注入情報)に基づき原水に対して実際に処理が行われた後に得られる処理水水質情報が示す処理水の水質の実績値(混和池のpHや混和池のアルカリ度の実績値)との差分が、閾値を超過していない、と判断されるパラメータを得るまで、差分が閾値を下回るようにパラメータ調整を行ってもよい。
【0034】
パラメータ調整部24において、差分が閾値を超過しているかを判断して上述したパラメータ調整の動作を行うタイミングは、周期的に行うようにしてもよい。また、周期的に動作する構成に限らず、データ収集・保存部21に保存される処理水水質情報の変化を監視し、処理水水質情報が大きく変化した場合に、上述したパラメータ調整の動作を行うようにしてもよい。また、オペレータの入力指示に基づいて、上述したパラメータ調整の動作を行うようにしてもよい。
【0035】
[運転管理支援部25の構成]
運転管理支援部25は、処理水の水質の目標とする水質レベルを取得する機能を有する。処理水の水質の目標とする水質レベルはオペレータから設定されるものでもあってもよいし、薬品コストや電力コストが最小となるような水質レベルを別途算出して、その水質レベルが自動で設定されるものであってもよい。この運転管理支援部25は、水質反応モデル予測部23からの操作条件に基づいて、目標とする水質を達成する範囲で最適な操作条件を生成し、生成した操作条件を示す情報をプラント操作部26へ出力する。
【0036】
[プラント操作部26の構成]
図1に示されるプラント操作部26は、運転管理支援部25からの操作条件に応じて凝集剤の注入率やpH調整剤の注入率を制御する。具体的には、プラント操作部26は、運転管理支援部25からの操作条件に含まれる注入率に応じて注入量制御部15に対して凝集剤の注入率を制御する制御信号を出力する。
【0037】
注入量制御部15は、プラント操作部26から受信した制御信号に応じて、凝集剤注入設備16において混和池5に注入する凝集剤の注入量を制御する。また、pH調整剤注入設備17は、プラント操作部26から受信した制御信号に応じて、着水井3に注入するpH調整剤の注入量を制御する。プラント操作部26は、従来から水処理プラントに設置されているものでよい。
【0038】
運転管理支援部25とプラント操作部26との間は、ネットワークを介して通信可能に接続される構成である。なお、運転管理支援部25とプラント操作部26との間は、ネットワークを介して通信可能とする構成に限られるものではない。運転管理支援部25から、プラント操作部26を操作する操作員に対して操作条件を提示する(例えば、操作員が所持する携帯端末に表示させる)構成であってもよい。これにより、運転管理支援部25とプラント操作部26との間をネットワーク等で接続しない構成であっても、操作員は、提示された操作条件に応じた操作をプラント操作部26に対して行うことができる。
【0039】
このような構成により、薬品注入支援システム20は、浄水場1において凝集剤やpH調整剤を注入する際に、より処理水の水質の目標とする水質レベルを維持するのに適した注入の支援を行うことができる。水質反応モデル予測部23は、より処理対象とする原水の水質に適したパラメータを用いた水質反応モデルに基づいて、目標とする水質レベルとなる凝集剤の注入率やpH調整剤の注入率を求めることができる。薬品注入支援システム20は、水質反応モデル予測部23で求めた注入率を考慮した凝集剤やpH調整剤の注入率を浄水場1のプラント操作部26に指示することができる。
【0040】
[水質反応モデル予測部23の構成の具体例]
図2に示されるように、水質反応モデル予測部23は、モデル演算を行うためのモデル演算部201を有する。水質反応モデル予測部23は、入力情報としてデータ収集部・保存部21に蓄積されたデータを用いて、モデル演算部201により演算を行って出力情報を生成する。
【0041】
入力情報は、原水濁度、原水pH、原水水温、原水アルカリ度といった原水水質情報であったり、凝集剤の注入率やpH調整剤として注入する苛性ソーダや硫酸の注入率、消毒のために注入する塩素の注入率といった薬品注入情報であったり、その他、流量や躯体の容積などを示す情報であったりする。なお、入力情報は、一時的にデータ収集部・保存部に蓄積されていればよく、ほぼリアルタイムのプラントのデータを用いることもできる。また、プラントの実績のデータだけでなく、オペレータが別途入力情報を作成して与えることもできる。出力情報は、薬品添加後の混和池のアルカリ度や薬品添加後の混和池のpHといった、処理水水質情報を含む。
【0042】
また、
図2に示されるように、水質反応モデル予測部23には、モデル演算に使用するモデルパラメータを格納するモデルパラメータ格納部202が設けられる。モデル演算においては、モデルパラメータ格納部202に格納されているモデルパラメータを使用して計算を行う。
【0043】
ここで使用されるモデルパラメータは、薬品の単位注入率あたりの処理水の水質の変化量に相当するパラメータを含む。これにより予測精度が高められる。薬品は、データ収集部・保存部に蓄積された薬品注入率に対応する薬品であり、処理水の水質は、出力情報として出力されるpHやアルカリ度といった項目である。薬品の単位注入率あたりの処理水の水質の変化量として、特に薬品の単位注入率あたりのアルカリ度の低下量(アルカリ度低下係数)を適用することにより、予測精度をより一層高められることを発明者は見出した。予測精度を高めることができる具体的なパラメータの例については後で述べる。
【0044】
モデル演算の出力情報は、運転管理支援部25に出力されるのと同時に、パラメータ調整部24にも保存される。パラメータ調整部24は、水質反応モデル演算部201内のモデルパラメータ格納部202にモデルパラメータを出力する機能を有する。出力されるモデルパラメータは、パラメータ調整部24で、新たに調整されたものであってもよいし、オペレータからの入力値を受けて、出力されるものであってもよい。オペレータはオフラインでのデータ分析によって、新たに求めたパラメータを設定することもできる。
【0045】
[パラメータ調整部24の構成の具体例]
図2に示されるように、パラメータ調整部24は、データ調整部203と再演算部204とを有する。データ調整部203には、処理水水質情報として薬品注入後のアルカリ度の実績値や、薬品注入後のpHの実績値、それと対をなす水質反応モデル予測部23が出力した薬品添加後のアルカリ度及びpHの情報、および時刻情報が保存される。また流下時間を調整するための躯体容積や流量のデータをデータ収集・保存部21から入手する。再演算部204では、データ調整部203に保存された前記情報を用いて、モデルパラメータが再演算される。再演算されたパラメータは、水質反応モデル予測部23のモデルパラメータ格納部202に出力され、モデルで使用するパラメータが更新される。
【0046】
[モデルパラメータの具体例]
水質反応モデル予測部23においてモデル演算を行うにあたっては、前述したように、薬品の単位注入率あたりの処理水の水質の変化量に相当するパラメータを使用する。
【0047】
一方で、薬品の単位注入率あたりの処理水の水質の変化量は、対象とする原水の水質に大きな変化があったり、また、異なる浄水場における原水への対応を考えたりする場合、その都度、適用先の原水に対して調整しなければ、モデルの予測精度を維持することができない。異なる浄水場であれば適用のたびに調整が必要であるし、同一浄水場においても季節的に原水の水質は変動するため、これにモデル精度を適応させるために都度調整が必要である。望ましくは、数日から1週間単位で常時更新していくと予測精度を上げることができる。また、使用する薬品の劣化度合いも長期的には変動する可能性がある。そのため、同一薬品を同一注入率で注入した場合でも、処理水の水質の変動幅が同じにならないことがある。これに対して、短い期間で薬品の単位注入率あたりの処理水の水質の変化量を実績に応じて調整することでモデルの精度を高めることができる。
【0048】
薬品の単位注入率あたりの処理水の水質の変化量とは、例えば、PACなどの凝集剤1mg/Lの注入率あたりのアルカリ度の変化量であったり、次亜塩素酸ナトリウム1mg/Lの注入率あたりのアルカリ度の変化量であったりする。これらは、各薬品において固有に持っているパラメータである。その他、苛性ソーダ1mg/Lの注入率あたりのpH変化量や、硫酸1mg/Lの注入率あたりのアルカリ度変化量であってもよい。このような種類のパラメータをモデルパラメータとして採用することにより、予測精度を高めることができる。
【0049】
[データ調整の具体例]
次に、データ調整部203における具体的なデータ調整の例を説明する。複数の薬品を同時に注入している場合、所定の薬品の単位注入率あたりの処理水の水質の変化量を正確に求めることができない。そこで、求めようとする薬品以外の薬品の注入率がほぼ変化していない時刻のデータだけを抽出することで、求めようとする薬品以外の薬品の影響を小さくすることができる。具体的には、夜間の時間帯では塩素の注入率はほとんど変更しない。これは、夜間は日射が無く、残留塩素濃度の変動が小さいからである。この際、この期間に、凝集剤の注入率に変化があり、その結果、処理水の水質に変動があれば、この処理水の水質の変動は、凝集剤の注入率の変更幅が寄与したと想定することができる。
【0050】
また、原水水質情報がほぼ変動していない時間帯のデータのみから上記のデータ抽出を行うことで、上記したような処理水の水質の変動は、その期間の凝集剤の注入率の変更幅のみが寄与したと想定することができる。ほぼ変動していないデータの範囲としては任意に設定できれば良い。例えば、原水pHが7.3~7.4のデータのみの時間帯のデータを採用するといったようにすれば、入力情報が異なることによる処理水の水質の変動への影響を小さくすることができる。原水水質情報としては複数の項目が変動していない時間帯を採用してもよい。
【0051】
このようにして、特定の薬品の注入率における処理水の水質の変化量を算出することが可能となる。このほか、昼間と夜間で注入率に差がみられる塩素の場合においては、塩素以外の薬品の注入率において、昼間と夜間の注入率に差がみられなければ、処理水の水質の変動幅は、昼間と夜間の塩素の注入率の変更幅に起因すると見なすことができる。このようにして、特定の薬品の変更幅の影響だけが現れる時間帯を抽出して、データ加工を行うのがデータ調整部203の役割となる。
【0052】
データ調整部203で使用するデータについては、分単位のデータを基本とするが、時単位のデータでも可能である。また、センサのメンテナンス期間などによる異常値が検出されている場合は、データフィルター機能を設けて、これらのデータを採用しないようにすればよい。また、データのばらつきの影響を抑制するために、移動平均をとったり、上下10%値を除外するといったトリム平均の機能(除外範囲は任意に調整可能)を設けたりしてもよい。データ調整部203でのデータ加工は、リアルタイム性が強く求められるものではなく、保存された過去のデータを用いて行うものであるので、これらのデータ加工を行うのに充分な時間が確保されている。
【0053】
[データ収集・保存部21及び薬品注入支援システム20の動作の一例]
次に、
図3のフローチャートを参照して、本実施形態におけるデータ収集・保存部21及び薬品注入支援システム20の主要部の動作の一例について説明する。
【0054】
まず、データ収集・保存部21は、原水水質情報、薬品注入情報、及び処理水水質情報を取得する(ステップS71)。
【0055】
次に、水質反応モデル予測部23は、データ収集・保存部21から、薬品注入情報及び処理水水質情報を、最新のモデルパラメータとして読み出す(ステップS72)。薬品注入情報には、凝集剤の注入率[mg/L]、pH調整剤の注入率[mg/L]といった薬品注入率情報が含まれている。処理水水質情報には、薬品添加後の混和池のアルカリ度や薬品添加後の混和池のpHといった情報が含まれている。そして、水質反応モデル予測部23は、データ収集・保存部21から得た薬品注入情報及び薬品の注入率、モデルパラメータを用いて、モデルによる処理水の水質の予測を行う(ステップS73)。同時に、予測した処理水水質情報は運転管理支援部25に送られる。
【0056】
次に、パラメータ調整部24は、水質反応モデル予測部23が処理水の水質を予測する際に利用した入力情報(原水水質情報及び薬品注入情報)を用いて、該当原水が所定の流下時間を経た後の処理水の水質の情報を、データ収集・保存部21から入手する。そして、パラメータ調整部24は、設定した周期やオペレータからの指示に応じて、水質反応モデル予測部23が予測した処理水の水質の予測値と、流下時間を経た後の処理水の水質の実績値との差分が、あらかじめ設定した閾値を超過しているか否かを判断する(ステップS74)。
【0057】
ここで、パラメータ調整部24は、水質反応モデル予測部23が予測した処理水の水質の予測値と、流下時間を経た後の処理水の水質の実績値との差分が、閾値を超過していると判断した場合(ステップS74のYES)、その差分を使って水質反応モデル予測部23で用いるパラメータを調整し(ステップS75)、新たなパラメータを水質反応モデル予測部23に設定する。パラメータ調整部24が、ステップS75の処理を終えると、ステップS73の処理に移行する。
【0058】
一方、パラメータ調整部24は、水質反応モデル予測部23が予測した処理水の水質の予測値と、流下時間を経た後の処理水の水質の実績値との差分が、閾値を超過していないと判断した場合(ステップS74のNO)、パラメータ調整は行われない。
【0059】
運転薬品注入支援部25は、水質反応モデル予測部23が予測に用いた薬品注入情報に基づいて、水処理プラントにおける薬品の注入率を制御するための操作条件を生成し、生成した操作条件をプラント操作部26へ出力する(ステップS76)。
【0060】
なお、
図3に示した動作例は一例であって、この例に限定されるものではない。例えば、水質反応モデル予測部23が予測した処理水の水質の値と、流下時間を経た後の処理水の水質の実績値との比較の際は、積算されたデータを用いてもよく、例えば、両者の24時間分のデータを用いて乖離を判断してもよい。また閾値で判断するのではなく、あらかじめ設定した数日から1週間のスパンで定期的に更新する形としてもよい。
【0061】
本実施形態によれば、薬品注入支援システム20は、浄水場1において薬品を注入する際に、目標とする処理水の水質を達成することができるとともに、より適量な薬品を注入するための支援を行うことができる。薬品注入率を適切に行うことで、以下の4点の理由により、浄水場1の水質管理を安全に行い、薬品注入を低コスト化することができる。
【0062】
(1)浄水場内の所定の管理地点でのpHやアルカリ度を、目標とする管理値に調整するためのアルカリ剤注入率を予測して設定することができる。
【0063】
(2)任意の薬品注入率を設定した際の、所定の管理地点におけるpHやアルカリ度の変化を薬品注入率設定の前段階で知ることができる。
【0064】
(3)複数の薬品の注入後の処理水の水質の変化を検討している水質担当者において、注入パターンを変えた実際のジャーテスト等での検討時間を短縮し、水質変動に遅れの無い対応を行うことができる。
【0065】
(4)原水の水質特性や薬品の劣化が起きた場合でも、短期間のスパンで、水質反応モデルで使用するパラメータを、実績値と予測値との乖離によって再調整することで、長期的にも精度の高い水質反応モデルを利用することができる。
【0066】
また、薬品注入支援システム20内のデータ収集・保存部21が、流量計2a~2d、水温計10、アルカリ度計11、PH計12、流量計13、沈澱池出口濁度計14、混和池pH計18、及び混和池アルカリ度計19で計測されたデータを収集する構成としては、どのような構成であってもよい。データ収集・保存部21は、例えば、有線又は無線通信により計測されたデータを収集する構成であって、インターネット等のネットワークを介して通信する構成や、専用回線を用いて通信する構成等が考えられる。例えば、データ収集・保存部21は、クラウドコンピューティング等のインターネットをベースとした構成としてもよい。この場合、薬品注入支援システム20は、例えば、水質反応モデル予測部23と、パラメータ調整部24と、運転薬品注入支援部25とを備える薬品注入支援装置を設置し、その薬品注入支援装置からクラウド上のデータ収集・保存部21を利用する構成としてもよい。
【0067】
上述した実施形態において、薬品注入支援システム20内の各機能部は、ソフトウェア機能部として構成してもよいが、LSI等のハードウェア機能部であってもよい。また、薬品注入支援システム20内の各機能部は、PCL(programmable logic controller)を用いて構成してもよい。上述した実施形態において、薬品注入支援システム20が支援の対象とするプロセスとして、浄水場プロセスの一例を示しているが、原水に対して薬品を用いて浄化するプロセスであれば適用できる。
【0068】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、水処理プラントにおいて薬品をより適量に注入するための支援を行うことを可能とする。
【0069】
また、以上に説明した薬品注入支援システム20内の機能をソフトウェアによって実現する場合は、それらの機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリー(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0070】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0071】
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0072】
以上詳述したように、実施形態によれば、水処理プラントにおいて薬品をより適量に注入するための支援を行うことができる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1…浄水場、3…着水井、4…活性炭接触池、5…混和池、6…フロック形成池、7…沈澱池、8…砂ろ過池、9…浄水池、10…原水水温計、11…原水アルカリ度計、12…原水PH計、13…流量計、14…沈澱池出口濁度計、15…凝集剤注入量制御部、16…凝集剤注入設備、17…pH調整剤注入設備、18…混和池pH計、19…混和池アルカリ度計、20…薬品注入支援システム、21…データ収集・保存部、23…水質反応モデル予測部、24…パラメータ調整部、25…運転薬品注入支援部、26…プラント操作部、201…モデル演算部、202…モデルパラメータ格納部、203…データ調整部、204…再演算部。