(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059539
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】ポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物用の分散剤
(51)【国際特許分類】
C04B 24/26 20060101AFI20230420BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20230420BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20230420BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20230420BHJP
C08F 220/04 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
C04B24/26 E
C04B24/26 H
C04B28/02
C04B18/08 Z
C04B18/14 A
C08F220/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169609
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】新井 太一朗
【テーマコード(参考)】
4G112
4J100
【Fターム(参考)】
4G112PA27
4G112PA29
4G112PB31
4G112PB32
4J100AE18Q
4J100AJ02P
4J100AJ08P
4J100AJ08Q
4J100AJ09P
4J100AJ09Q
4J100AJ10P
4J100AJ10Q
4J100BA02Q
4J100BA03Q
4J100BA56Q
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100HA31
4J100HB39
4J100HE12
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】ポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物の流動性を向上する技術を提供すること。
【解決手段】不飽和ジカルボン酸系単量体由来の構造単位(I)を21.0質量%以上の割合で含むポリカルボン酸系共重合体を含むものである、ポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物用の分散剤を提供する。前記組成物は固形分の総質量に対してポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を41.0質量%以上の割合で含むものであることがより望ましい。また当該ポリカルボン酸系共重合体は、不飽和モノカルボン酸系単量体由来の構造単位(II)を更に含むことがより望ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造単位(I)を21.0質量%以上の割合で含むポリカルボン酸系共重合体を含むものである、
ポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物用の分散剤。
【化1】
(構造単位(I)中、R
1~R
3のいずれか一つが、-(CH
2)p-COOM
2基であり、pは0~5の整数であり、M
1及びM
2は同一又は異なって水素原子又はカチオン種を表し、それ以外のR
1~R
3が水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記組成物が固形分の総質量に対してポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を41.0質量%以上の割合で含むものである、請求項1に記載の分散剤。
【請求項3】
前記ポリカルボン酸系共重合体が下記構造単位(II)を含むものである、請求項1又は2に記載の分散剤。
【化2】
(構造単位(II)中、R
1~R
3は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を表し、Mは水素原子又はカチオン種を表す。)
【請求項4】
前記ポリカルボン酸系共重合体が、スルホン酸又は其の塩である、不飽和単量体(c)に由来して形成される構造単位(III)を含むものである、請求項1~3のいずれかに記載の分散剤。
【請求項5】
前記組成物が固形分の総質量に対して水硬性物質を5.0~40.0質量%の割合で含む、請求項1~4のいずれかに記載の分散剤。
【請求項6】
前記ポリカルボン酸系共重合体中の前記構造単位(I)の含有割合が30.0質量%以上であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の分散剤。
【請求項7】
前記組成物が総重量に対して水を20.0~75.0質量%の割合で含む、請求項1~6のいずれかに記載の分散剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の分散剤、及びポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物。
【請求項9】
ポゾラン反応性物質若しくは潜在水硬性物質、又はポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物、と請求項1~8のいずれかに記載の分散剤を混和することを特徴とする分散剤の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤、分散剤を含む組成物、又は分散剤の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、セメントを含むモルタルやコンクリートにおいて、セメントの一部を、石炭火力発電等によって発生するフライアッシュ、スラグ、シリカフューム等のポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質に置き換える傾向がある。
これら物質は産業副産物として一般に知られる物質であり、コンクリートの製造原料などとして活用されることが積極的に望まれるものである。
【0003】
しかしながらセメントの一部をポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質に置き換えると流動性が悪化するという問題が生じる。この点、特許文献1や2ではポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質とポリカルボン酸系重合体を含む組成物の紹介があり、ポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物の流動性の改善に関する知見の蓄積はいくらか見られるものの、いまだ上記問題が満足に解決されたとは言い難いのが現状である。産業副産物として多量に排出されるこれら物質の活用促進のため、上記問題を解決する技術の創出は早急に望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-220739号公報
【特許文献2】特開平7-291691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題はポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物の分散性を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物の分散性を改善する技術を鋭意検討した結果、特定のポリカルボン酸系共重合体はポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物に対して優れた分散性を付与することを見出した。本発明者はその知見に基づいて、下記の本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、ポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物用の特定のポリカルボン酸系共重合体である分散剤、ポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質と特定のポリカルボン酸系共重合体である分散剤を含む組成物、又はポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物についての特定のポリカルボン酸系共重合体である分散剤の使用方法(以下、「本発明の分散剤等」と呼ぶ。)に関するものであり、その好ましい構成は以下(1)~(9)において記述されるものである。
(1)下記構造単位(I)を21.0質量%以上の割合で含むポリカルボン酸系共重合体を含むものである、
ポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物用の分散剤。
【0008】
【化1】
(構造単位(I)中、R
1~R
3のいずれか一つが、-(CH
2)p-COOM
2基であり、pは0~5の整数であり、M
1及びM
2は同一又は異なって水素原子又はカチオン種を表し、それ以外のR
1~R
3が水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を表す。)
(2)前記組成物が固形分の総質量に対してポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を41.0質量%以上の割合で含むものである、前記(1)に記載の分散剤。
(3)前記ポリカルボン酸系共重合体が下記構造単位(II)を含むものである、前記(1)又は(2)に記載の分散剤。
【0009】
【化2】
(構造単位(II)中、R
1~R
3は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を表し、Mは水素原子又はカチオン種を表す。)
(4)前記ポリカルボン酸系共重合体が、スルホン酸又は其の塩である、不飽和単量体(c)に由来して形成される構造単位(III)を含むものである、前記(1)~(3)のいずれかに記載の分散剤。
(5)前記組成物が固形分の総質量に対して水硬性物質を5.0~40.0質量%の割合で含む、前記(1)~(4)のいずれかに記載の分散剤。
(6)前記ポリカルボン酸系共重合体中の前記構造単位(I)の含有割合が30.0質量%以上であることを特徴とする、前記(1)~(5)のいずれかに記載の分散剤。
(7)前記組成物が総重量に対して水を20.0~75.0質量%の割合で含む、前記(1)~(6)のいずれかに記載の分散剤。
(8)前記(1)~(7)のいずれかに記載の分散剤、及びポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物。
(9)ポゾラン反応性物質若しくは潜在水硬性物質、又はポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物、と前記(1)~(8)のいずれかに記載の分散剤を混和することを特徴とする分散剤の使用方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物の分散性を向上する効果を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下で本発明の分散剤等の其々に係る事項を詳細に説明する。但し以下の記載は本発明を説明するための例示であり、本発明をこの記載範囲にのみ特別限定する趣旨ではない。
【0012】
(用語の定義)
本明細書中で「(メタ)アクリル」とは、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。また「質量」、「重量」はお互いに同義である。
【0013】
(ポリカルボン酸系共重合体)
本発明の分散剤等は、特定のポリカルボン酸系共重合体を含むものである。該特定のポリカルボン酸系共重合体を含有することで分散性に優れた特性を有する。
【0014】
本発明の分散剤等には、下記構成を満足する本発明におけるポリカルボン酸系共重合体が含まれていれば上記効果を奏する。また本発明の分散剤等に1種または2種以上の本発明におけるポリカルボン酸系共重合体が含まれていてもよい。
【0015】
本発明におけるポリカルボン酸系共重合体は、より具体的には後述するような、構造単位(I)を特定の割合で含む共重合体であって、好ましくは構造単位(II)及び/又は構造単位(III)を含む共重合体である。当該ポリカルボン酸系共重合体中に当該構造単位(I)~(III)は其々1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
本願明細書中の「単量体由来の構造単位」とは、単量体が重合して形成される構造単位の意味であり、より詳細には、単量体が有する炭素-炭素二重結合が開裂して形成される構造を意味している。
【0016】
(構造単位(I))
【0017】
【0018】
上記構造単位(I)は上記式(I)で表現されるものである。
上記構造単位(I)中、R1~R3のいずれか一つが、-(CH2)p-COOM2基であり、pは0~5の整数であり、M1及びM2は同一又は異なって水素原子又はカチオン種を表し、それ以外のR1~R3が水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を表す。
【0019】
上記R1~R3のうち、より好ましくはR2又はR3に-(CH2)p-COOM2基を有する。
上記pは、より好ましくは0~2の整数であり、更により好ましくは0である。
【0020】
上記M1及びM2は、より好ましくはいずれも水素原子である。
上記カチオン種として、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、又は有機アミンのカチオンが挙げられ、好ましくはアルカリ金属のカチオンである。
上記アルカリ金属のカチオンとして、好ましくはリチウム、ナトリウム又はカリウムのカチオンが挙げられ、それらは1価のカチオンである。
上記アルカリ土類金属のカチオンとして、好ましくはマグネシウム又はカルシウムのカチオンが挙げられ、それらは2価のカチオンである。
上記アンモニアのカチオンは、「NH4
+」で表されるアンモニウムイオンである。
上記有機アミン基のカチオンとしては、プロトン化された有機アミンであれば任意の適切な有機アミン基を採用し得るが、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン;エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等のポリアミンなどが挙げられる。
【0021】
上記それ以外のR1~R3は、より好ましくはいずれも水素原子である。
上記炭素数1~8のアルキル基として、直鎖、分岐、または環状のアルキル基のいずれでもよく、置換されたアルキル基であっても良いが好ましくは無置換のアルキル基である。炭素数1~8のアルキル基として、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基が挙げられ、好ましくはメチル基又はエチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0022】
上記構造単位(I)は、より具体的には、不飽和ジカルボン酸系単量体由来の構造単位であり、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、2-メチレングルタル酸又はこれらの塩若しくは酸無水物から選ばれる1種類又は2種類以上である単量体由来の構造単位が挙げられ、好ましくはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2-メチレングルタル酸又は其の塩である単量体由来の構造単位であり、より好ましくはマレイン酸である単量体由来の構造単位である。
【0023】
(構造単位(II))
【0024】
【0025】
上記構造単位(II)は上記式(II)で表現されるものである。
上記構造単位(II)中、R1~R3は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を表し、Mは水素原子又はカチオン種を表す。
【0026】
上記R1~R3は、より好ましくはいずれも水素原子である。
上記炭素数1~8のアルキル基として、直鎖、分岐、または環状のアルキル基のいずれでもよく、置換されたアルキル基であっても良いが好ましくは無置換のアルキル基である。炭素数1~8のアルキル基として、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基が挙げられ、好ましくはメチル基又はエチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0027】
上記Mは、より好ましくはいずれも水素原子である。
上記カチオン種として、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、又は有機アミンのカチオンが挙げられ、好ましくはアルカリ金属のカチオンである。
上記アルカリ金属のカチオンとして、好ましくはリチウム、ナトリウム又はカリウムのカチオンが挙げられ、それらは1価のカチオンである。
上記アルカリ土類金属のカチオンとして、好ましくはマグネシウム又はカルシウムのカチオンが挙げられ、それらは2価のカチオンである。
上記アンモニアのカチオンは、「NH4
+」で表されるアンモニウムイオンである。
上記有機アミン基のカチオンとしては、プロトン化された有機アミンであれば任意の適切な有機アミン基を採用し得るが、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン;エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等のポリアミンなどが挙げられる。
【0028】
上記構造単位(II)は、より具体的には、不飽和モノカルボン酸系単量体由来の構造単位であり、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、3-メチルクロトン酸、2-メチル-2-ペンテン酸又はこれらの塩から選ばれる1種類又は2種類以上である単量体由来の構造単位が挙げられ、より好ましくはアクリル酸、メタクリル酸又はその塩である単量体由来の構造単位であり、最も好ましくはアクリル酸である。
【0029】
(構造単位(III))
上記構造単位(III)は、スルホン酸又は其の塩である、不飽和単量体由来の構造単位である。
【0030】
当該不飽和単量体は、炭素-炭素二重結合を含むスルホン酸又は其の塩であるが、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、下記式(III)で表されるスルホン酸又はこれらの塩が挙げられ、より好ましくは2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、下記式(III)で表されるスルホン酸又はそれらの塩であり、最も好ましくは3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムである。
【0031】
【0032】
構造単位(III)中、pは1~4の整数であり、q及びrは同一又は異なって0~100の整数であり、R1,R2は炭素数2~4のアルキル基であり、Y及びZは同一又は異なってヒドロキシ基、炭素数2~4のアルコキシル基、1価のリン酸基又は1価のスルホン酸基であり、Y及びZのうち少なくとも1つはスルホン酸基を表す。)
【0033】
(その他構造単位)
本発明におけるポリカルボン酸系共重合体中には、上記構造単位(I)~(III)以外に、その他構造単位が含まれていてもよい。当該その他構造単位は任意の不飽和単量体由来の構造単位であり、1種、または2種以上含まれていてもよい。
【0034】
上記その他構造単位としては、好ましくは以下の単量体由来の構造単位である。
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の各種(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;(メタ)アクリル(アルキル)アミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのアミド類;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族類;1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;などが挙げられる。
【0035】
(ポリカルボン酸系共重合体の構成)
本発明におけるポリカルボン酸系共重合体中に含まれる構造単位(I)の含有割合は、当該共重合体全質量に対して21.0質量%以上であり、好ましくは30.0質量%以上であり、より好ましくは35.0質量%以上であり、更により好ましくは40.0質量%以上であり、最も好ましくは50.0質量%以上である。構造単位(I)の含有割合が上記であれば本発明の効果は発揮されるため、当該含有割合の上限を、例えば90.0質量%以下、80.0質量%以下又は70.0質量%以下とすることも任意で可能である。
本発明におけるポリカルボン酸系共重合体中に構造単位(II)が含まれる場合、当該構造単位(II)の含有割合は、当該共重合体全質量に対して好ましくは5.0~79.0質量%であり、より好ましくは30.0~70.0質量%であり、最も好ましくは40.0~60.0質量%である。
本発明におけるポリカルボン酸系共重合体中に構造単位(III)が含まれる場合、当該構造単位(III)の含有割合は、当該共重合体全質量に対して好ましくは5.0~79.0質量%であり、より好ましくは20.0~50.0質量%である。
本発明におけるポリカルボン酸系共重合体中にその他構造単位が含まれる場合、その他構造単位の含有割合は、例えば0.1~79.0質量%であり、好ましくは0.1~50.0質量%、より好ましくは0.1~30.0質量%であり、更により好ましくは0.1~10.0質量%である。また、本発明におけるポリカルボン酸系共重合体が、構造単位(I)及びその他構造単位からなるものである場合、当該その他構造単位はオレフィン(CnH2n)でないことが特に望ましい。
【0036】
本発明におけるポリカルボン酸系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリアクリル酸換算による重量平均分子量(Mw)として、1,000~100,000であり、好ましくは5,000~80,000、より好ましくは20,000~50,000である。
【0037】
(他の成分)
本発明における分散剤や分散剤を含む組成物には上記ポリカルボン酸系共重合体以外の成分を含むことが可能であり、例えばセメント分散剤(上記ポリカルボン酸系共重合体以外のもの)、AE剤、消泡剤、凝結遅延剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材等のセメント用添加剤が挙げられ、これらは1種又は2種以上添加されていてもよい。
【0038】
上記凝結遅延剤、硬化遅延剤としては、例えばオキシカルボン酸類もしくはその塩や糖類が挙げられる。オキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、エチレンジアミン四酢酸、3-ヒドロキシ-2,2‘-イミノジコハク酸4ナトリウムなどが挙げられ、本発明の効果がより発現し得る点で、好ましくは、グルコン酸、エチレンジアミン四酢酸、3-ヒドロキシ-2,2‘-イミノジコハク酸4ナトリウムから選ばれる少なくとも1種である。オキシカルボン酸の塩として採用し得る塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の、無機塩または有機塩が挙げられる。糖としては、任意の適切な糖を採用し得る。このような糖としては、例えば、グルコース、フラクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、リボース、ソルビトール、異性化糖などの単糖類;マルトース、スクロース(シュークロースともいう)、ラクトースなどの二糖類;ラフィノースなどの三糖類;デキストリンなどのオリゴ糖;などが挙げられ、本発明の効果がより発現し得る点で、好ましくは、グルコース、スクロースである。
【0039】
(分散剤の形態)
本発明における分散剤は、溶液又は粉末の形態で使用されるものである。
【0040】
(ポリカルボン酸系共重合体の製造方法)
本発明ポリカルボン酸系共重合体を得る製造方法は一般的な手法を用いれば特に限定されないが、好ましくは、不飽和ジカルボン酸系単量体を含む2種以上の単量体成分の重合(単量体の炭素‐炭素二重結合が開裂しながら進行していくもの)を重合開始剤の存在下で行って製造し得る。
単量体成分の重合は、任意の適切な重合法で行い得る。例えば、溶液重合、塊状重合が挙げられる。溶液重合の方式としては、例えば、回分式、連続式が挙げられる。溶液重合で使用し得る溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等が挙げられる。
単量体成分の重合を行う場合は、重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2′-アゾビス-2-メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2′-アゾビス-2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2-カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤;等を使用し得る。これらの重合開始剤は、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩
、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L-アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。重合開始剤の中では、過硫酸塩や過酸化水素が好ましい。促進剤の中では、モール塩等のFe(II)塩やL-アスコルビン酸(塩)が好ましい。これらの重合開始剤や促進剤は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物、またはケトン化合物を溶媒とする溶液重合を行う場合、または、塊状重合を行う場合には、重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t-ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;などを用い得る。このような重合開始剤を用いる場合、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水-低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤または重合
開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
単量体成分の重合の際の反応温度としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められる。このような反応温度としては、好ましくは0℃以上、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは50℃以上、また、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
【0041】
(潜在水硬性物質)
本発明における組成物の一つとして、潜在水硬性物質を含む組成物が挙げられる。
本発明における潜在水硬性物質は、単に水を混ぜただけでは硬化は起さないが、刺激剤と呼ばれる少量の物質が存在するときに硬化する物質であり、例えばスラグ(高炉スラグ・高炉徐冷スラグ・製鋼スラグ等)である。潜在水硬性物質は粒径が0.01~10mmの粒状物となっていることが望ましい。
刺激剤としては、アルカリ金属炭酸塩の水溶液、アルカリ金属フッ化物の水溶液、アルカリ金属水酸化物の水溶液、アルカリ金属アルミン酸塩の水溶液、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液(例えば水ガラス)及び/又はそれらの混合物が挙げられ、本発明における潜在水硬性物質を含む組成物に添加することができる。
【0042】
(ポゾラン反応性物質)
本発明における組成物の一つとして、ポゾラン反応性物質を含む組成物が挙げられる。
本発明におけるポゾラン反応性物質は、それ自体水硬性はないが、コンクリート中の成分(例えば、セメントの水和により生成した水酸化カルシウム)と徐々に化合して不溶性の化合物(例えばカルシウムシリケート水和物)をつくる物質であり、天然ポゾラン、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、メタカオリン又はシリカフュームが挙げられ、好ましくはフライアッシュである。フライアッシュはI、II、III、IV種があるが、好ましくはII種である。ポゾラン反応性物質は粒径が0.01~10mmの粒状物となっていることが望ましい。
【0043】
(水硬性物質)
本発明における水硬性物質とは所謂セメントであり、セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント
、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)が挙げられる。本発明におけるセメントは、1種、または2種以上であってもよい。
【0044】
(ポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物)
本発明におけるポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物は、ポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質及びその他の成分を含むものであって、当該その他の成分として、例えば水硬性物質、水、粗骨材及び細骨材が挙げられる。本発明におけるポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物はスラリーであって良い。
本発明におけるポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物は、ポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を2種類以上(例えば、上記で挙げられる物質(スラグ、フライアッシュ、シリカフューム等)の中から選ばれる2種類以上)含む組成物であっても良く、1種類のみ(例えばフライアッシュ又はスラグのいずれか1種)含む組成物であっても良い。
【0045】
本発明におけるポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物は、其の固形分の総質量に対して、好ましくはポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を41.0質量%以上、より好ましくは50.0質量%以上、更により好ましくは60.0質量%以上、最も好ましくは80.0質量%以上の割合で含むものであり、95.0~100.0質量%の割合とすることも可能である。一方、当該含有割合の上限を、例えば90.0質量%以下とすることも任意で可能である。
また、当該組成物は水硬性物質を更に含むことが望ましく、当該組成物の固形分の総質量に対して水硬性物質を好ましくは5.0~59.0質量%、より好ましくは5.0~40.0質量%、更により好ましくは10.0~30.0質量%含む。
また、当該組成物は水を更に含むことが望ましく、当該組成物の固形分の総質量に対して水を好ましくは20.0~75.0質量%、より好ましくは30.0~60.0質量%含む。
【0046】
本発明におけるポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物中の本発明における分散剤は目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。例えば、当該組成物の総質量に対して、本発明におけるポリカルボン酸系共重合体は、好ましくは0.01~5.0質量%、より好ましくは0.05~3.0質量%、さらにより好ましくは0.1~1.0質量%、最も好ましくは0.1~0.5質量%である。
【0047】
本発明の組成物は、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり得る。本発明のセメント組成物は、中流動コンクリート(スランプ値が22~25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50~70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効であり得る。
【0048】
本発明の組成物は、構成成分を任意の適切な方法で配合して調整すればよい。例えば、構成成分をミキサー中で混練する方法などが挙げられる。
【0049】
(使用方法)
本発明は、上記ポリカルボン酸系共重合体を含む分散剤の使用方法を含むものであるが、より具体的には、ポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質又はポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物と上記ポリカルボン酸系共重合体を含む分散剤を混和する使用方法である。
当該混和後の組成物は水を含んでスラリーを形成していることが望ましい。
当該使用方法に関わるその他事項(ポリカルボン酸系共重合体の構成、上記分散剤と混和前又は混和後の組成物等)は、上記で説明した内容を適用することが勿論可能である。
【実施例0050】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、特に明記しない限り、%とある場合は質量%を意味する。
【0051】
(重量平均分子量(Mw)の測定条件)
本願の明細書の以下において製造される重合体の重量平均分子量は以下の条件に従ってGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されたものである。
・カラム;G-3000PWXL (東ソー製)
・移動相(溶離液);リン酸水素二ナトリウム12水和物34.5g及びリン酸二水素ナトリウム2水和物46.2g(何れも試薬特級、以下測定に用いる試薬は全て特級を使用)に純水を加えて全量を5000gとし、その後0.45ミクロンのメンブランフィルターで濾過した水溶液。
・検出器;UV 214nm (ウォーターズ製 モデル481型)
・ポンプ;L-7110(日立製)
・流量;0.5ml/min
・カラム温度;35℃
・試料注入量:100μL(試料濃度:0.1質量%の溶離液溶液)
・検量線;ポリアクリル酸標準サンプル(創和科学製)
【0052】
実施例に係る各重合体の製造方法について以下で説明する。
【0053】
[重合体1の合成]
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水145gを初期仕込し、攪拌下、90℃まで昇温した。次いで、攪拌下、90℃を維持しながら、405gの80%アクリル酸水溶液、及び127.0gの37%アクリル酸ナトリウム水溶液を重合開始から240分間に渡って、80.0gの25%過硫酸ナトリウム(以下NaPSと称する)、85.7gの35%亜硫酸水素Naを重合開始から250分間に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに全ての滴下終了後30分間に渡って、90℃を維持して、重合を完了した後、48%NaOHを333g加え、重量平均分子量(Mw)5,000の重合体1を得た。
【0054】
[重合体2の合成]
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水145gを初期仕込し、攪拌下、90℃まで昇温した。次いで、攪拌下、90℃を維持しながら、405gの80%アクリル酸水溶液、及び127.0gの37%アクリル酸ナトリウムを重合開始から240分間に渡って、50.0gの25%NaPSを重合開始から250分間に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに全ての滴下終了後30分間に渡って、90℃を維持し、重量平均分子量29,000の重合体2を得た。
【0055】
[重合体3の合成]
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水を35.7g、40%マレイン酸二ナトリウム溶液を490g初期仕込し、攪拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%アクリル酸水溶液700.0g、35%過酸化水素73.0gを重合開始から240分間に渡って、15%NaPS85.5gを重合開始から245分間に渡って、純水220.5gを重合開始90分から150分間に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに全ての滴下終了後30分間に渡って、沸点還流状態を維持し、重量平均分子量11,000の重合体3を得た。
【0056】
[重合体4の合成]
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水を35.7g、40%マレイン酸二ナトリウム溶液を630.0g初期仕込し、攪拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%アクリル酸水溶液535.2g、35%過酸化水素10.0gを重合開始から240分間に渡って、純水160.5gを重合開始90分から150分間に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに全ての滴下終了後30分間に渡って、沸点還流状態を維持し、重量平均分子量50,000の重合体4を得た。
【0057】
[重合体5の合成]
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水を35.7g、40%マレイン酸二ナトリウム溶液を750.0g初期仕込し、攪拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%アクリル酸水溶液400.0g、35%過酸化水素80.0gを重合開始から240分間に渡って、15%NaPS100.5gを重合開始から245分間に渡って、純水320.5gを重合開始90分から150分間に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに全ての滴下終了後30分間に渡って、沸点還流状態を維持し、重量平均分子量4,800の重合体5を得た。
【0058】
[重合体6の合成]
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水を35.7g、40%マレイン酸二ナトリウム溶液を750.0g初期仕込し、攪拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%アクリル酸水溶液400.0g、35%過酸化水素80.0gを重合開始から240分間に渡って、15%NaPS50.5gを重合開始から245分間に渡って、純水320.5gを重合開始90分から150分間に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに全ての滴下終了後30分間に渡って、沸点還流状態を維持し、重量平均分子量32,000の重合体6を得た。
【0059】
[重合体7の合成]
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水を35.7g、40%マレイン酸二ナトリウム溶液を750.0g初期仕込し、攪拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%アクリル酸水溶液400.0g、35%過酸化水素40.0gを重合開始から240分間に渡って、純水320.5gを重合開始90分から150分間に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに全ての滴下終了後30分間に渡って、沸点還流状態を維持し、重量平均分子量62,000の重合体7を得た。
【0060】
[重合体8の合成]
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水を34.5g、40%マレイン酸二ナトリウム水溶液を1155.7gを初期仕込し、攪拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%アクリル酸水溶液287.1g、35%過酸化水素73gを重合開始から264分間に渡って、15%NaPS85.5gを重合開始から275分間に渡って、純水137.9gを重合開始95分から180分間に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに全ての滴下終了後30分間に渡って、沸点還流状態を維持し、重量平均分子量21,000の重合体8を得た。
【0061】
[重合体9の合成]
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水を64.8g、48%NaOH260g、40%マレイン酸二ナトリウム水溶液260.0g、及び25%3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム(HAPS)水溶液350.0gを初期仕込し、攪拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%アクリル酸水溶液130gを重合開始から120分間に渡って、35%過酸化水素40.8gを重合開始から50分間に渡って、15%NaPS 38.0g、及び純水24.3gを重合開始50分後から130分後まで80分間に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに全ての滴下終了後30分間に渡って、沸点還流状態を維持し、重量平均分子量5,000の重合体9を得た。
【0062】
[重合体10の合成]
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水を35.7g、40%イタコン酸溶液を530.0g初期仕込し、攪拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%アクリル酸水溶液400.0g、35%過酸化水素62.0gを重合開始から240分間に渡って、15%NaPS40.5gを重合開始から245分間に渡って、純水320.5gを重合開始90分から150分間に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに全ての滴下終了後30分間に渡って、沸点還流状態を維持し、重量平均分子量16,000の重合体10を得た。
【0063】
[重合体11の合成]
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水を35.7g、40%イタコン酸溶液800.0g初期仕込し、攪拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%アクリル酸水溶液215.0g、35%過酸化水素62.0gを重合開始から240分間に渡って、15%NaPS30.5gを重合開始から245分間に渡って、純水320.5gを重合開始90分から150分間に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに全ての滴下終了後30分間に渡って、沸点還流状態を維持し、重量平均分子量22,000の重合体11を得た。
【0064】
[重合体12の合成]
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水を35.7g、40%2-メチレングルタル酸溶液330.0g初期仕込し、攪拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%アクリル酸水溶液305.0g、35%過酸化水素62.0gを重合開始から240分間に渡って、15%NaPS30.5gを重合開始から245分間に渡って、純水320.5gを重合開始90分から150分間に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに全ての滴下終了後30分間に渡って、沸点還流状態を維持し、重量平均分子量21,000の重合体12を得た。
【0065】
[試験例1]ペーストフロー試験
ペーストフロー試験用の組成物は以下で説明するように調整した。まず、ホバートミキサー(ホバート社製)を用い、混練容器へセメント及び/又はフライアッシュ若しくは高炉スラグを投入し、低速で10秒間混錬した。そして低速で混練しながら、水溶液(上記重合体1~12のいずれかがイオン交換水中に充分に均一溶解させられたもの)を15秒間かけて投入した。混練を始めてから60秒後にミキサーを停止し、60秒間かけて容器の壁に付着したペースト状の組成物のかき落としを行った。その後、さらに低速で180秒間混練を行い、試験用の各ペースト状組成物(実施例1~15、比較例1~5)を調整した。尚、上記各成分の投入量は下記の表1に記載の組成となるように行っており、各実施例・比較例の組成物に含まれる重合体の種類は下記の表2に参照の通りである。
上記で得られたペースト状組成物を、水平に設置したフロー測定板(鋼製平板、60cm×60cm)上に置かれたコーン(上端内径50mm、下端内径50mm、高さ50mm)にすりきりいっぱいまで詰めて表面をならした。その後、最初にミキサーを始動させてから5分後にコーンを垂直に引き上げ、広がったペーストの直径(最も長い部分の直径(長径)および該長径に対して90度をなす部分の直径)を2箇所測定し、その平均値をフロー値とした(下記表2参照)。なお、フロー値は、数値が大きいほど分散性能が優れていることを示す。上記試験(調整~フロー測定)は、温度が20℃±1℃、相対湿度が60%±15%の環境下で行った。
【0066】
【表1】
表中、重合体とあるのは上記重合体(1)~(12)のいずれかのことである。
【0067】
【表2】
上記表2中、AA:アクリル酸、MA:マレイン酸、ITA:イタコン酸、MG:2-メチレングルタル酸、PAA:ポリアクリル酸を表す。尚、組成比は質量比である。
尚、実施例10に係る配合4には3-ヒドロキシ-2,2‘-イミノジコハク酸4ナトリウム(HIDS)が0.76g、上記の水溶液中に溶解された上で添加されている
【0068】
表2より、本発明に係る共重合体(重合体4~12)が使用された実施例は、ポリアクリル酸である重合体1、2や構造単位(I)の割合が低い共重合体3が使用された比較例よりも、セメントやフライアッシュ若しくはスラグ等の配合が同様であったとしても、フロー値が有意に高いことが示され、本発明に係る共重合体はフライアッシュやスラグ等を含む組成物(好ましくはフライアッシュやスラグ等を高い割合で含む組成物)の流動性を向上させる効果が顕著に高いことが分かった。
従って本発明は、ポゾラン反応性物質または潜在水硬性物質を含む組成物の流動性(分散性)を向上する効果を顕著に有するものであることが理解される。