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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059548
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】ドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/614 20150101AFI20230420BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20230420BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
E05F15/614
B60J5/04 C
B60J5/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169625
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一幸
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴一
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DA04
2E052DA08
2E052DB03
2E052DB04
2E052DB08
2E052EA03
2E052EB01
2E052EC01
2E052HA05
2E052KA13
2E052KA14
2E052KA15
2E052KA16
2E052KA17
(57)【要約】
【課題】小型化が可能であり、しかも安定して動作することのできるドア開閉装置を提供する。
【解決手段】ドア開閉装置10は車両におけるドアの開閉操作を行う。ドア開閉装置10は、モータ30と、入力された回転動力を同軸上で調整するクラッチ44、減速機48を含む動力調整部24と、モータ30の回転を動力調整部24に伝達する回転伝達部22と、動力調整部24と同軸上に設けられ該動力調整部24によって回転駆動される円柱体60、および該円柱体60と一体的に動作してドア14を操作するレバー62を備える出力部26と、回転伝達部22と動力調整部24とが接続される部分を軸支する基端側軸受け40と、出力部26における先端部を軸支する先端側軸受け64とを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるドアの開閉操作を行うドア開閉装置において、
モータと、
入力された回転動力を同軸上で調整する1以上の調整機を含む動力調整部と、
前記モータの回転を前記動力調整部に伝達する回転伝達部と、
前記動力調整部と同軸上に設けられ該動力調整部によって回転駆動される回転体、および該回転体と一体的に動作して前記ドアを操作する操作部を備える出力部と、
前記回転伝達部と前記動力調整部とが接続される部分を軸支する基端側軸受けと、
前記出力部を軸支する先端側軸受けと、
を有することを特徴とするドア開閉装置。
【請求項2】
前記先端側軸受けは、前記出力部における前記動力調整部と接続される側と反対側の端部を軸支する
ことを特徴とする請求項1に記載のドア開閉装置。
【請求項3】
前記先端側軸受けは、前記出力部における前記動力調整部と接続される側と反対側の端面に当接する鍔部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載のドア開閉装置。
【請求項4】
前記先端側軸受けは、前記出力部の少なくとも一部を覆う先端側カバーによって支持され、または該先端側カバーと一体構成である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のドア開閉装置。
【請求項5】
前記基端側軸受けは、前記回転伝達部を覆う基端側カバーによって支持され、または該基端側カバーと一体構成である
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のドア開閉装置。
【請求項6】
前記先端側軸受けは、車体に対して取り付ける取付ブラケットに固定されている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のドア開閉装置。
【請求項7】
前記基端側軸受けは、車体に対して取り付ける取付ブラケットに固定されている
ことを特徴とする請求項1~6いずれか1項に記載のドア開閉装置。
【請求項8】
前記モータと前記動力調整部とは、互いの中心軸が平行となるように配置されている
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるドアの開閉操作を行うドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両におけるドア開閉装置では、ドアの開閉に大きな力を要するためモータの動力を減速機で減速してトルクを増加させている。ドア開閉装置はドアのヒンジ近傍などの狭所に設けるためになるべく小型であることが望ましい。ドア開閉装置ではモータおよび減速機が比較的大きい構成要素であり、相互の配置に工夫が求められる。
【0003】
特許文献1に記載の装置ではモータと減速機とを並列させ、その間を回転伝達機構によって接続している。つまり、回転伝達機構からモータと減速機部分とが並列的に突出しており、高さ寸法を抑制することができる。また、特許文献2に記載の装置では、軸受け部材よりも先端にドアの操作をする出力アームが連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-193559号公報
【特許文献2】特開2017-223110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置は、回転伝達機構から減速機部分が突出している構成であり、概念的には片持ち形状であることから先端部を支持するものがない。しかも先端部はドアと接続されて開閉時に大きな力が作用するため不安定となりやすい。したがって、装置の安定のためには筐体を大型化しまたは厚くするなどの対策が必要であり、小型・軽量化の要請に反する。
【0006】
特許文献2に記載の装置は、ドアに連結される出力アームが軸受け部材よりも先端側に設けられており、出力アームに大きな力が作用すると軸振れなどが生じる懸念がある。軸の振れを抑えるには、装置をより強固に構成する必要があり、装置の大型化に繋がっていた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、小型化が可能であり、しかも安定して動作することのできるドア開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるドア開閉装置は、車両におけるドアの開閉操作を行うドア開閉装置において、モータと、入力された回転動力を同軸上で調整する1以上の調整機を含む動力調整部と、前記モータの回転を前記動力調整部に伝達する回転伝達部と、前記動力調整部と同軸上に設けられ該動力調整部によって回転駆動される回転体、および該回転体と一体的に動作して前記ドアを操作する操作部を備える出力部と、前記回転伝達部と前記動力調整部とが接続される部分を軸支する基端側軸受けと、前記出力部を軸支する先端側軸受けと、を有することを特徴とする。
【0009】
前記先端側軸受けは、前記出力部における前記動力調整部と接続される側と反対側の端部を軸支してもよい。これにより動力調整部および出力部の一層の安定を図ることができる。
【0010】
前記先端側軸受けは、前記出力部における前記動力調整部と接続される側と反対側の端面に接する鍔部を有してもよい。この鍔部により出力部をスラスト方向について安定させることができる。
【0011】
前記先端側軸受けは、前記出力部の少なくとも一部を覆う先端側カバーによって支持され、または該先端側カバーと一体構成であってもよい。
【0012】
前記基端側軸受けは、前記回転伝達部を覆う基端側カバーによって支持され、または該基端側カバーと一体構成であってもよい。
【0013】
前記先端側軸受けは、車体に対して取り付ける取付ブラケットに固定されていてもよい。十分な強度の剛体である車体に対して取り付ける事で一層安定した動作を行うことができる。
【0014】
前記基端側軸受けは、車体に対して取り付ける取付ブラケットに固定されていてもよい。十分な強度の剛体である車体に対して取り付ける事で一層安定した動作を行うことができる。
【0015】
前記モータと前記動力調整部とは、互いの中心軸が平行となるように配置されていてもよい。これにより、バランスのよいレイアウトが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるドア開閉装置は、回転伝達部と動力調整部とが接続される部分を軸支する基端側軸受けと、動力調整部によって駆動されて実質的に動力調整部の先端である出力部を軸支する先端側軸受けとを有している。すなわち、動力調整部は基端が基端側軸受けで軸支され、実質的な先端である回転体が先端側軸受けで軸支されていることから、両端支持構造となっていて安定する。また、このように基端部だけではなく先端部を支持していることから、装置の安定のために筐体を大型化し又は厚くするなどの必要がなく、小型化・軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態であるドア開閉装置が搭載された車両の模式側面図である。
図2図2は、車両に取り付けられた状態のドア開閉装置の平面図である。
図3図3は、ドア開閉装置の平面図である。
図4図4は、ドア開閉装置の一部分解斜視図である。
図5図5は、図4と逆側から見たドア開閉装置の分解斜視図である。
図6図6は、ハウジングの斜視図である。
図7図7は、モータユニットの分解斜視図である。
図8図8は、ドア開閉装置における結線を示す図である。
図9図9は、回転伝達部の模式断面平面図である。
図10図10は、出力部、ブッシュ、先端側カバーおよびその周辺部の一部断面側面図である。
図11図11は、ブッシュが取り付けられた先端側カバー斜視図である。
図12図12は、変形例にかかる先端側カバーおよび先端側軸受けとその周辺部の断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかるドア開閉装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態であるドア開閉装置10が搭載された車両12の模式側面図である。ドア開閉装置10は、車両12におけるフロント側およびリア側のドア14,14の開閉を行うものである。ドア14は、フロントドアおよびリアドアのいずれか一方でもよい。ドア開閉装置10は車体とドア14との境部で、ヒンジ16と並列的な位置に設けられている。図1では、ドア開閉装置10が車両12における右側のドア14を開閉する例を示しているが、左側のドアについては左右対称形状に構成すればよい。ドア開閉装置10は、車両12のバックドアなどの開閉にも適用可能である。
【0020】
図2は、車両12に取り付けられた状態のドア開閉装置10の平面図である。ドア開閉装置10は車両12の車体フレーム12aに取り付けられており、ドア14のドアフレーム14aに作用してドア14の開閉を行う。車体フレーム12aおよびドアフレーム14aは充分な強度を有する剛体である。ドア開閉装置10はヒンジ16の近傍などの狭所に配置可能な程度にコンパクトに構成されている。ドア開閉装置10はハーネス18によって図示しないECUに接続されており、該ECUの制御下に動作する。
【0021】
図3は、ドア開閉装置10の平面図である。図4は、ドア開閉装置10の一部分解斜視図である。図5は、図4と逆側から見たドア開閉装置10の分解斜視図である。ドア開閉装置10はモータユニット20と、回転伝達部22と、動力調整部24と、出力部26と、ハウジング28とに区分される。この区分は理解を容易にするため便宜上のものである。概念的に、モータユニット20は動力を発生する部分であり、回転伝達部22はモータユニット20から動力調整部24に回転を伝達する部分であり、動力調整部24は動力の調整をして出力部26を駆動する部分であり、出力部26は、動力調整部24によって駆動されてドア14の開閉操作を行う部分である。
【0022】
モータユニット20と動力調整部24とは並列に配置されている。つまりモータ30と動力調整部24とは、互いの中心軸(図3図5において符号J1およびJ2で示す)が平行となるように配置されている。このような構成により、ドア開閉装置10はX方向長さが抑制されてコンパクトになり、狭所の適用が可能である。
【0023】
図6は、ハウジング28の斜視図である。ハウジング28は概略的に、基端板28aと、該基端板28aから一方(先端側)に突出した2つの筒28b,28cを有する形状である。筒28bは後述するモータ30が挿入・配置される部分である。筒28cは後述するクラッチ44および回転センサ46が挿入・配置される部分である。設計条件により筒28cは後述する減速機48を覆っていてもよい。筒28bと筒28cとの間には電線を通す切欠28dが形成されている。以下の説明では、筒28b,28cの延在方向をX方向(図3参照)とも呼び、その一方(基端板28aの側)を基端、他方(筒28b,28cの突出側)を先端と呼ぶ。X方向は後述する回転軸30b、クラッチ44、減速機48の軸方向である。各図では適宜、基端側をX1、先端側をX2として矢印で示す。
【0024】
筒28bは、筒28cよりも小径であり、且つX方向にやや長く突出している。ハウジング28は減速機48の外側筐体とともに、ドア開閉装置10の筐体を構成している。ハウジング28は樹脂材で構成されている。
【0025】
図7は、モータユニット20の分解斜視図である。モータユニット20はモータ30と、電線中継部32とを有する。モータ30は円柱形状の本体30aと、該本体30aの中心に設けられた回転軸30bと、本体30aの端部30cに設けられた複数の電力端子30dとを備える。端部30cは先端側である。回転軸30bは基端側端面から突出している。モータ30は、ドア14を開閉させるために十分な動力を発生させるために、ドア開閉装置10における最も大きい要素の1つとなっている。特に、構造上の理由からモータ30のX方向の長さL1(図3参照)は、ドア開閉装置10の要素で最も長い。
【0026】
ただし、回転軸30bは仕様によって変化するものである。また、回転軸30bの露呈部は回転伝達部22の一部とも見做されるものであり、レイアウト設計上、動力調整部24との長さを比較検討する上では考慮されないことがある。そのため、ここでは長さL1に回転軸30bは含まないものとする。
【0027】
図8は、ドア開閉装置10における結線を示す図である。図8では結線が理解されやすいようにハウジング28などを省略しており、電線中継部32は仮想線で示している。電線中継部32は、レセプタクル32aでハーネス18のハーネスコネクタ18aと接続され、装置内側ではモータ30、後述するクラッチ44および後述する回転センサ46と電線33で接続されている。電線33の数は、例えばモータ30が2本、クラッチ44が2本、回転センサ46が4本である。電線33は、例えば被覆銅線やアルミニウム合金で固定経路上に形成されたターミナルなどである。電線中継部32は外部と接続されるハーネス18を中継して結線している。ドア開閉装置10では、内部の相当数の電線33が全て電線中継部32を介してハーネス18と接続されるため、該ハーネス18は1本で足りる。なお、図面の簡略化のため図8以外では電線33を省略している。
【0028】
また、モータ30では電力端子30dが端面に設けられていることから、これに対応して、電線中継部32はモータ30の回転軸30bに沿い、端部30cと対面する位置に配置されている。これにより、モータ30と電線中継部32とは径方向寸法が抑制され、X方向に沿った一体的構成のモータユニット20として扱うことができる。電線中継部32は基本的には電線を中継するだけの機能部であり、X方向の長さL2(図3参照)は、モータ30の長さL1より十分小さい(図3参照)。電線中継部32は、レセプタクル32a以外の箇所がハウジング28とデザイン上で連続的な一体感のあるカバーで覆われている。つまり、電線中継部32とハウジング28の筒28bとは隙間や段差がほぼなく接続されるデザインとなっている。
【0029】
上記のとおり、モータ30の長さL1はドア開閉装置10の構成要素中で最も長い。したがって、モータ30に対して電線中継部32を繋げたモータユニット20のX方向の長さL(L1+L2)は、ドア開閉装置10のレイアウト設計上における1つの重要パラメータとなる。
【0030】
図9は、回転伝達部22の模式断面平面図である。図4図5図9を参照しながら回転伝達部22について説明する。回転伝達部22は3つの歯車34a,34b,34cと、歯車34a~34cの基端側を覆う基端カバー36とを有する。1段目の歯車34aはモータ30の回転軸30bに固定されている。2断面の歯車34bは歯車34aによって減速して回転駆動され、さらに3段目の歯車34cを減速して回転駆動する。
【0031】
基端カバー36は歯車34a~34cを収納してその基端側を覆っている。基端カバー36は、金属材または樹脂材などで構成されている。基端カバー36には強度維持と軽量化のためにリブや肉抜き部が設けられている。基端カバー36の内側には、歯車34bの中心孔34baに嵌合されて該歯車34bを軸支する中間軸受け38と、歯車34cの中心孔34caに嵌合されて該歯車34cを軸支する基端側軸受け40と、回転軸30bの基端部が嵌合される軸孔41とが設けられている。中間軸受け38および基端側軸受け40は基端カバー36の基端面壁36aから先端に向かって突出する棒状体であって、基端カバー36と一体構成である。中間軸受け38および基端側軸受け40は、基端カバー36に固定・支持されるものであってもよい。
【0032】
中間軸受け38、基端側軸受け40および後述する先端側軸受け64はいわゆる滑り軸受けである。一般的な軸受けは環状であってその内空部で回転体を支持するが、中間軸受け38、基端側軸受け40および先端側軸受け64は、逆に回転体の内空部に挿入されて支持している。このような形態の軸受けは、軽量かつ省スペースに構成することができる。なお、軸受けとは運動部分を他の部分に対し、位置決めをし、支持又は案内する機械要素と定義することができる(JIS B-0162)。滑り軸受けは、長寿命、小型、簡易構造、低コスト、静粛性に優れるなどの特徴がある。
【0033】
歯車34a~34cは、X方向に直交する方向に並列している(図9参照)。したがって、歯車34aと歯車34cとは軸心間距離(図9におけるJ1~J2)が適度に離れている。これにより、モータユニット20と動力調整部24とを適正位置に離間して配置することができる。回転伝達部22は、モータユニット20から適正距離だけ離れた動力調整部24に回転を伝達することを主目的としており、設計条件によってはこの部分で必ずしも減速させなくてもよい。つまり減速機48の減速比R1は歯車34a~34cによる減速比R2よりも相当に大きく設定されており、条件によっては減速比R1をさらに大きくして減速比R2の分をカバーすることも可能である。減速比R2を減速比R1よりも小さく設定することで、クラッチ44の伝達トルク容量も小さくでき、装置の小型化にも繋がる。回転伝達部22は歯車による回転伝達以外にも、例えばベルト、チェーンおよび回転ロッドなどによって構成してもよい。
【0034】
図4図5に示すように、回転伝達部22の先端側には基端側取付ブラケット42が設けられている。基端側取付ブラケット42は、後述する先端側取付ブラケット58とともにドア開閉装置10を車体フレーム12aに取り付ける部材である。基端側取付ブラケット42は、十分な強度を有する厚さの金属板から構成されており、断面がL字形状となるように屈曲した取付片42aと壁片42bとからなる。取付片42aは壁片42bの端部から先端側に突出しており、後述する取付片58aと対向する向きとなっている。取付片42aには両端にボルト孔が設けられており、該ボルト孔にボルトを挿通させて車体フレーム12aに取り付けられる。取付片42aにはクラッチ44の外周面に当接する円弧状の凹部42aaが設けられている。
【0035】
壁片42bは回転伝達部22の先端側壁を兼ねている。歯車34a~34cは基端カバー36と壁片42bとによって形成される空間内に収納される。壁片42bには、回転軸30b、歯車34b,34cの一部およびビスBが通る孔が形成されている。壁片42bは基端カバー36と、ハウジング28の基端板28aとによって挟持され、基端側から複数のビスBによって共締めされる。なお、煩雑となることを避けるためビス類については種類、長さ、径の相違にかかわらず全てビスBと記す。
【0036】
上記のとおり基端側軸受け40は基端カバー36と一体構成になっている。そして基端カバー36は基端側取付ブラケット42にビス止め固定されているため、基端側軸受け40は実質的に基端側取付ブラケット42に固定されていることになる。基端側取付ブラケット42は車体フレーム12aに安定かつ確実に固定されている。また、基端側軸受け40は、回転伝達部22と動力調整部24の基端部との接続される部分を軸支している。結局、基端側軸受け40は基端側取付ブラケット42を介して車体フレーム12aにほぼ直接的に固定されて安定しており、該基端側軸受け40によって軸支される動力調整部24の一端が安定する。基端側軸受け40は基端カバー36と別体であって、該基端カバー36に支持される構成としてもよい。
【0037】
また、中間軸受け38も基端側軸受け40と同様に安定している。モータ30は、基端面が複数のビスBによってハウジング28の基端板28aに固定されるとともに、周面がハウジング28の内周面によって支持されており、回転軸30bが安定して回転する。したがって、3つの歯車34a~34cはそれぞれ安定した回転が可能であり、動力伝達のロスが少ない。
【0038】
動力調整部24は、上記のとおり、回転伝達部22を介して入力される動力を調整して出力部26を駆動する部分である。動力の調整とは広義であって、動力の接続・切断や減速などによる調整である。動力調整部24には、1以上の動力の調整機が設けられているものとする。本実施の形態では、動力調整部24には2つの調整機、すなわちクラッチ44および減速機48が設けられている。動力の調整機としては、これら以外にブレーキやトルクリミッタなどが挙げられる。調整機が複数の場合には基本的に同軸上の直列接続とする。
【0039】
動力調整部24は、基端から先端に向かって順に、クラッチ44、回転センサ46、減速機48、中間カバー50および出力前段軸受け52を有する。本実施の形態では、動力調整部24はヒンジ16(図2参照)と同軸上になっている。動力調整部24の先端側にはブッシュ54および先端側カバー56が設けられている。
【0040】
クラッチ44は電磁式であり、回転伝達部22の終段の歯車34cとセレーション接続されており、該歯車34cの回転を回転センサ46および減速機48に対して接続・切断を行う。クラッチ44は減速機48よりも前段側であり、伝達トルク容量が比較的小さくて済む。クラッチ44は、基端面が複数のビスBによってハウジング28の基端板28aに固定されるとともに、周面がハウジング28における筒28cの内周面によって支持されていて安定している。クラッチ44は動力の調整機であり、機能および構造上の理由からX方向にやや長いが、モータ30の長さL1よりは短い。
【0041】
回転センサ46は、クラッチ44と減速機48との間に設けられており、この間における回転数を計測する。回転センサ46は周面に段差部を有しており、該段差部がハウジング28の内周段差部28ca(図6参照)に係合することによって回り止めがなされている。回転センサ46は、電気的な要素であり機械的に動力調整を行うものではないため、X方向に十分短い構造となっている。回転センサ46は短いことからレイアウト上の自由度が比較的大きく、例えばモータ30の出力段や、回転伝達部22の内部に配置してもよい。
【0042】
減速機48は、回転センサ46の回転軸の回転を減速して出力部26を駆動する。減速機48は、2段の遊星歯車機構で構成されており十分な減速が行われる。公知のとおり、遊星歯車機構はサンギアとアウターギアとの間に複数のプラネタリギアが介在されており、該プラネタリギアをプラネタリキャリアが自転および公転可能に支持している。そして、サンギアとプラネタリキャリアが同軸上の入出力軸となる。
【0043】
減速機48の筐体は内周部がアウターギアを形成している。減速機48の筐体は適度な大きさと強度とを有しており、ドア開閉装置10における本体筐体の一部を兼ねている。減速機48の筐体は、ハウジング28の、筒28cとデザイン上で連続的な一体感のある形状となっている(図3参照)。つまり、減速機48の筐体とハウジング28の筒28cとは隙間や段差がほぼなく接続されるデザインとなっている。減速機48は動力の調整機であって大きいトルクを発生させることから各歯車の歯幅はある程度厚く、しかも複数段の遊星歯車機構を有している構造上の理由からX方向にやや長いが、モータ30の長さL1よりは短い。
【0044】
本実施の形態におけるドア開閉装置10では、動力の調整機(本実施の形態ではクラッチ44および減速機48)は全て動力調整部24に含まれるものとする。上記のとおり、モータ30を含むモータユニット20の長さLはドア開閉装置10のレイアウト設計上における1つの重要パラメータとなっていることから、モータ30以外で比較的大きい構成要素である調整機は、モータユニット20とは別軸上にレイアウトすることが望ましいためである。また、動力の調整は出力部26の前段階で1つの軸上でまとめて行うことが望ましいためである。さらに、設計思想上において機械的要素である調整機は、電気的要素であるモータ30とは別にすることが望ましいためである。ただし、電気的要素である回転センサ46はX寸法が短いため動力調整部24に含めることにより、ドア開閉装置10における支配的パラメータであるモータユニット20の長さLが一層長くなることを防ぎ、動力調整部24とモータユニット20とのバランスをとることができる。
【0045】
中間カバー50は減速機48の先端側を覆うとともに、出力前段軸受け52を支持している。出力前段軸受け52は、深溝玉型の転がり軸受けであり、外周面が中間カバー50の前筒部50b(図10参照)によって支持されている。中間カバー50と減速機48の先端面との間には、先端側取付ブラケット58の壁片58bが介在している。
【0046】
先端側取付ブラケット58は、上記の基端側取付ブラケット42とともにドア開閉装置10を車体フレーム12aに取り付ける部材である。先端側取付ブラケット58は、十分な強度を有する厚さの金属板から構成されており、断面がL字形状となるように屈曲した取付片58aと壁片58bとからなる。取付片58aは壁片58bの端部から基端側に突出しており、上記の取付片42aと対向する向きとなっている。取付片58aには両端にボルト孔が設けられており、該ボルト孔にボルトを挿通させて車体フレーム12aに取り付けられる。
【0047】
壁片58bには、中間カバー50の後筒50a(図10参照)およびビスBが通る孔が形成されている。壁片58bは中間カバー50と、減速機48の先端面とによって挟持され、先端側から4本のビスBによって共締めされる(図5参照)。これらの4本のビスBは比較的長く、減速機48の四隅近傍部を貫通してハウジング28に達している。したがって、減速機48はハウジング28と壁片58bおよび中間カバー50とによって挟持されて安定する。基端側取付ブラケット42と先端側取付ブラケット58とは別体構成であることからドア開閉装置10の組み立てが容易となるが、設計条件および組み立て工程の条件によっては一体化してもよい。
【0048】
図10は、出力部26、ブッシュ54、先端側カバー56およびその周辺部の一部断面側面図である。図10では回転軸より下側を断面で示している。図4図10に示すように、出力部26は円柱体(回転体)60およびレバー(操作部)62を有する。円柱体60は金属材であり中空部60aと、段差内周面60bとを有する。中空部60aには減速機48の軸48aが挿入され、互いにセレーション接続されている。つまり、円柱体60は、動力調整部24と同軸上に設けられ該動力調整部24によって回転駆動される回転体である。段差内周面60bは先端に形成されており、中空部60aよりもやや大径の周面である。
【0049】
レバー62は、円柱体60の外周面に対して略180度に亘って溶接された固定部62aと、該固定部62aから側方に突出する突出部62bとを有する。突出部62bは、アタッチメント65を介してドアフレーム14a(図2参照)に取り付けられる。つまり、レバー62は、円柱体60と一体的に動作してドア14を操作する操作部である。出力部26はドアフレーム14aに対して直接的に接続するものでなく、他の動力伝達手段(例えば、ワイヤやロッドなど)を介して接続してもよい。
【0050】
出力部26は適用対象車種に応じてレバー62が異なるものに交換が可能となっているが、円柱体60は軸48aとセレーションで確実に接続されており、実質的には動力調整部24における最終段の軸端部と見做すことができる。
【0051】
図11は、ブッシュ54が取り付けられた先端側カバー56の斜視図である。図10図11に示すように、先端側カバー56は、取付片56aと、筒半体56bと、端面板56cと、軸支持突起56dとを有する。先端側カバー56は、金属材または硬質樹脂などの高強度材で構成されている。取付片56aは、複数のビスBによって中間カバー50、壁片58bを介して減速機48の先端側に固定される(図4参照)。筒半体56bは、断面が略180の円弧形状であって、取付片56aから先端に向かって突出しており、出力部26における円柱体60の略半分を覆う。なお、筒半体56bによって覆われていない箇所は、出力部26におけるレバー62の稼働範囲である。筒半体56bは、レバー62の稼働範囲については覆うことができないため、該稼働範囲を除き、出力部26の少なくとも一部を覆うように構成するとよい。端面板56cは、筒半体56bの先端に設けられた円板であり、円柱体60の先端側を覆っている。軸支持突起56dは、端面板56cの中心から基端側に突出している。軸支持突起56dには中空部が形成されている。
【0052】
ブッシュ54は、例えば銅系の焼結金属部品であり、潤滑性や耐摩耗性に優れる。ブッシュ54は、いわゆる鍔付き型であり、鍔部54aと、該鍔部54aから基端側に突出する第1突出部54bと、第1突出部54bより小径で基端側にさらに突出する第2突出部54cとを有する。ブッシュ54には中空部54dが形成されている。ブッシュ54は、中空部54dに軸支持突起56dが隙間なく嵌合することによって支持される。鍔部54aの先端側面は端面板56cに対して当接して安定する。鍔部54aの基端側面は円柱体60の先端側面に対して当接して安定する。第1突出部54bは円柱体60に対して先端側から挿入され、その外周面54baが段差内周面60bに隙間なく当接する。第2突出部54cはセレーションが形成されている中空部60aにまで挿入されており、ブッシュ54を一層安定させている。
【0053】
軸支持突起56dに支持されたブッシュ54と出力部26の円柱体60とは、外周面54baと段差内周面60bとの間で摺動する。このようにして、軸支持突起56dおよびブッシュ54は出力部26を軸支する先端側軸受け64を構成している。先端側軸受け64は滑り軸受けである。先端側軸受け64は、段差内周面60bとの間でラジアル軸受けの作用があるが、鍔部54aの基端側面と円柱体60の先端側面との間での摺動によりスラスト軸受の作用をも有する。つまり、先端側軸受け64は出力部26を軸方向についても安定して支持することができる。出力部26はドア14を開閉駆動する部分であって相当に大きい力が加わるが、先端部が先端側軸受け64で軸支されることから安定した動作が可能である。
【0054】
先端側軸受け64の軸支持突起56dは先端側カバー56と一体構成になっている。そして高強度の先端側カバー56は先端側取付ブラケット58にビス止め固定されているため、先端側軸受け64は実質的に先端側取付ブラケット58に固定されていることになる。先端側取付ブラケット58は車体フレーム12aに安定かつ確実に固定されている。また、先端側軸受け64は、出力部26の先端を軸支しているが、該出力部26は実質的に動力調整部24の先端部である。結局、先端側軸受け64は先端側取付ブラケット58を介して車体フレーム12aにほぼ直接的に固定された安定しており、該先端側軸受け64によって軸支される動力調整部24の一端が安定する。
【0055】
軸受けは、円柱体60の軸方向中間位置に設けられていても相応の効果が得られるが、先端に設けた方が支持の効果が高い。また、軸受けを円柱体60の軸方向中間位置に設けるには、スラスト方向の支持が困難であり、しかもレバー62との干渉回避の工夫が必要となるため、先端側軸受け64のように先端に設けることが望ましい。
【0056】
また、円柱体60は基端部が出力前段軸受け52で支持されていることから、出力部26は両端が軸支されており動作が一層安定する。ブッシュ54と先端側カバー56とは一体構成であってもよいが、別体として構成することにより製造が容易になるとともに、個別に適した材料を選択することができる。また、ブッシュ54には汎用品を用いることもできる。
【0057】
図12は、変形例にかかる先端側カバー56Aおよび先端側軸受け64Aとその周辺部の断面平面図である。先端側カバー56Aおよび先端側軸受け64Aは、上記の先端側カバー56および先端側軸受け64に相当する部品である。
【0058】
ドア開閉装置10は、適用対象に基づく仕様によっては出力部26にラジアル方向のみ高負荷が掛かり、スラスト方向の加重が掛からないことも想定される。例えば、車両上下方向の上側に出力部26が位置する場合には、該出力部26にスラスト方向の加重は掛からない。そのような場合には、出力部26の先端を軸支する手段としては上記のような滑り軸受けの先端側軸受け64ではなく、転がり軸受けである先端側軸受け64Aを設けてもよい。この場合、先端側カバー56Aの突起56Aaは先端側軸受け64Aの内輪内周部に嵌合する径としておく。
【0059】
上記のような構成のドア開閉装置10では、回転伝達部22と動力調整部24とが接続される部分を軸支する基端側軸受け40と、動力調整部24によって駆動されて実質的に動力調整部24の先端である出力部26を軸支する先端側軸受け64とを有している。すなわち、動力調整部24は基端が基端側軸受け40で軸支され、実質的な先端である円柱体60が先端側軸受け64で軸支されていることから、両端支持構造となっていて安定する。また、このような両端支持構造では、いわゆる片持ち構造(例えば、特許文献1のような回転伝達機構からお吐出している減速機部分)とは異なり、基端部だけではなく先端部を支持していることから、装置の安定のために筐体を大型化し又は厚くするなどの必要がなく、小型化・軽量化を図ることができる。
【0060】
また、特許文献1に記載の装置は、片持ち構造であることから不安定でかつ重い構造であって、しかも基端側の1つのL字の据え付けブラケットによって固定されており、L字の屈曲部に撓みが生じて振動や内部の軸の振れが増大する懸念がある。そして、軸の振れを抑えるには装置をより強固に構成する必要があり、装置の大型化に繋がっていた。これに対して、ドア開閉装置10では、両端軸支構造であって安定かつ軽量であり、しかも基端側の基端側取付ブラケット42と先端側の先端側取付ブラケット58とによって固定されており安定度が高く、振動や内部の軸の振れを抑制することができる。
【0061】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
10 ドア開閉装置
12 車両
14 ドア
20 モータユニット
22 回転伝達部
24 動力調整部
26 出力部
28 ハウジング
30 モータ
30b 回転軸
30c 端部
30d 電力端子
32 電線中継部
34a,34b,34c 歯車
36 基端カバー
38 中間軸受け
40 基端側軸受け
42 基端側取付ブラケット
44 クラッチ(調整機)
46 回転センサ
48 減速機(調整機)
50 中間カバー
52 出力前段軸受け
54 ブッシュ(先端側軸受け)
54a 鍔部
56,56A 先端側カバー
56d 軸支持突起(先端側軸受け)
58 先端側取付ブラケット
60 円柱体(回転体)
62 レバー(操作部)
64 先端側軸受け
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12