(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005956
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】摩擦係数測定方法およびシミュレーション方法、摩擦係数測定装置およびシミュレーション装置、摩擦係数測定プログラムおよびシミュレーションプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 19/02 20060101AFI20230111BHJP
G01N 3/18 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G01N19/02 Z
G01N3/18
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108277
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】590002389
【氏名又は名称】静岡県
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】是永 宗祐
(72)【発明者】
【氏名】本多 正計
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA02
2G061AB01
2G061AC03
2G061BA18
2G061BA20
2G061CA01
2G061CB03
2G061EA02
2G061EA10
2G061EC02
2G061EC10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】正確な摩擦係数を測定し、シミュレーション精度の向上を図る。
【解決手段】摩擦係数測定方法1には試料形状と摩擦係数との関係式が用いられている。この関係式は、摩擦係数を変えて高温圧縮試験のシミュレーションAを実行して構築されるS01,S02。また、実際に高温圧縮試験を実施し、圧縮前後における試料の任意寸法に基づき形状パラメータを求めS03、前記関係式に代入して塑性変形中の試料・金型間の摩擦係数を算出するS04。測定された摩擦係数を実製品の熱間圧縮加工シミュレーションBの条件として設定するS05。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と部材との間の摩擦係数を測定する方法であって、
前記試料の圧縮前後の形状を測定し、圧縮前後における前記試料の任意寸法に基づき形状パラメータを求めるパラメータ測定ステップと、
前記形状パラメータと、前記試料の種類(材料の種類、材質)・ひずみ・ひずみ速度・試料温度に依存するパラメータとを用いて前記摩擦係数を算出する摩擦係数算出ステップと、
を有することを特徴とする摩擦係数測定方法。
【請求項2】
熱間圧縮加工のシミュレーションにより塑性変形中の前記試料・金型間の摩擦係数を測定する方法であって、
前記パラメータ測定ステップは、式(1)により前記形状パラメータを求める一方、
前記摩擦係数算出ステップは、前記第1ステップで求められた前記形状パラメータを式(3)に代入することで前記摩擦係数を算出する
ことを特徴とする請求項1記載の摩擦係数測定方法。
式(1):P=(Rm×H)/(Rt×H0)
式(3):f1+f2m+f3m2=P
m:摩擦係数[-]
P:形状パラメータ[-]
Rm:圧縮後の試料の最大半径[mm]
Rt:圧縮前の端面から膨張した半径[mm]
H:圧縮後の試料の高さ[mm]
H0:圧縮前の試料の高さ[mm]
f1,f2,f3:試料の種類,ひずみ,ひずみ速度,試料温度に依存するパラメータ
【請求項3】
前記試料は、金属材料であることを特徴とする請求項2記載の摩擦係数測定方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか記載の方法による前記摩擦係数を用いて前記熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする方法であって、
前記摩擦係数は、前記熱間圧縮加工中に変化せず、一定であると仮定してシミュレーションを実行する
ことを特徴とするシミュレーション方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか記載の方法による前記摩擦係数を用いて前記熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする方法であって、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度を変化させた複数の条件下で試料を圧縮したときの前記摩擦係数を測定するステップと、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度のうち少なくとも1つ以上のパラメータを用いた多項式で前記摩擦係数を表すステップと、
前記シミュレーションのステップ毎に前記多項式を用いて前記摩擦係数を計算し、前記試料・前記金型間の接触点毎に前記摩擦係数を設定するステップと、
を有することを特徴とするシミュレーション方法。
【請求項6】
前記多項式は、式(4)からなることを特徴とする請求項5記載のシミュレーション方法。
式(4):m=f(ε,dε/dt,T)
m:摩擦係数[-]
ε:ひずみ[-]
dε/dt:ひずみ速度[s-1]
T:試料温度[°C]
【請求項7】
熱間圧縮加工のシミュレーションにより塑性変形中の試料・金型間の摩擦係数を測定する装置であって、
前記試料の圧縮前後の形状を測定し、圧縮前後における前記試料の任意寸法に基づき形状パラメータを求めるパラメータ測定部と、
前記形状パラメータと、前記試料の種類・ひずみ・ひずみ速度・試料温度に依存するパラメータとを用いて前記摩擦係数を算出する摩擦係数算出部と、
を備えることを特徴とする摩擦係数測定装置。
【請求項8】
請求項7記載の摩擦係数測定装置による前記摩擦係数を用いて前記熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする装置であって、
前記摩擦係数が前記熱間圧縮加工中に変化せず、一定であると仮定して前記シミュレーションを実行する
ことを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項9】
請求項7記載の前記摩擦係数測定装置による前記摩擦係数を用いて前記熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする装置であって、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度を変化させた複数の条件下で試料を圧縮したときの前記摩擦係数を測定し、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度のうち少なくとも1つ以上のパラメータを用いた多項式で前記摩擦係数を表して設定する摩擦係数設定部を備え、
前記摩擦係数設定部は、前記シミュレーションのステップ毎に前記多項式を用いて前記摩擦係数を計算し、前記試料・前記金型間の接触点毎に前記摩擦係数を設定する
ことを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか記載の前記摩擦係数測定方法をコンピュータに実行させることを特徴とする摩擦係数測定プログラム。
【請求項11】
請求項4~6のいずれか記載のシミュレーション方法をコンピュータに実行させることを特徴とするシミュレーションプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の試料を高温領域で塑性変形させる熱間圧縮加工のプロセスにおいて試料・金型間の摩擦係数を測定し、前記熱間圧縮加工のシミュレーションに反映させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように輸送機器や医療機器・航空機器の部品の多くは、塑性加工によって製造されている。これらの製品においては、量産化までの加工プロセスの決定に多くの時間と費用を要するため、量産化までの開発コストが大きいことが問題となっている。
【0003】
このような問題の解決に向けて、近年では加工プロセスの最適化にシミュレーションの技術が盛んに活用され始めている。このシミュレーションでは、パラメータとして金型と材料とが接触する箇所の摩擦係数が必要となる。この摩擦係数は、シミュレーション精度に大きな影響を及ぼす重要なパラメータであるため、信頼性の高い正確な摩擦係数を入力することが求められている。
【0004】
このような背景から正確な摩擦係数を求め、シミュレーションに活用する技術が研究・提案されている。概略を説明すれば、まず摩擦係数の測定方法により、材料と金型との間の摩擦係数を測定する。
【0005】
その際、従来は、加工条件に近い条件で測定した1点の摩擦係数データをシミュレーションのソフトウェア(以下、シミュレーションソフトとする。)に入力し、加工中に摩擦係数は変化しないと仮定してシミュレーションを実行している。
【0006】
ところが、実際の加工では、面圧やひずみ等のパラメータが時々刻々と変化し、これによって摩擦係数が変化する。そのため、摩擦係数を一定とするシミュレーション方法では、十分な予測精度が得られないおそれがある。
【0007】
そこで、近年は、予測精度の向上のため、加工中の摩擦係数の変化を反映させたシミュレーションが実施されている。具体的にはシミュレーションを実施する際、まず面圧やひずみ等のパラメータを変化させた複数の測定条件の下、摩擦係数を測定する。つぎに得られた摩擦係数のデータを基に面圧やひずみ等のパラメータを用いた多項式で摩擦係数を表し、該多項式をシミュレーションソフトに入力する。
【0008】
そして、材料と金型とが接触する各点で面圧やひずみ等のパラメータを算出し、算出された値を前記多項式に入力することによって各接触点の摩擦係数を算出する。これによりシミュレーションのステップごとに各接触点の摩擦係数を設定することが可能となる。以下、このような摩擦係数の測定およびシミュレーションの公知例を説明する。
【0009】
(1)一般的な摩擦係数測定方法
一般的な摩擦係数の測定方法として、摩擦摩耗試験機を用いた測定方法が公知となっている。この測定方法は、試料に一定の圧力を加えた状態で摺動させたときの摩擦力と垂直分力とを測定することで摩擦係数を測定する手法であるが、試料が塑性変形を生じる高圧下での摩擦係数を求めることができない欠点を有している。
【0010】
試料が塑性変形を生じる状態で摩擦係数を求める一般的な手法として、リング圧縮試験が公知となっている。この手法は、リング状の柱体形状の試料を圧縮し、圧縮後の形状から摩擦係数を測定する。
【0011】
この手法によれば、摩擦係数が高い場合には外向きの流動に対して摩擦拘束が大きくなるため、材料の一部が内向きに流動し、内径が小さくなる。そのため、リングの内径と高さとを測定することによって、摩擦係数を求めることが可能となる。
【0012】
もっとも、リング状の試料を製作する必要があるため、板材や円柱等の単純形状の試料に比べて試料作製の工程が煩雑になり、また外径の小さい丸棒からの試料作製が困難な問題がある。そこで、特許文献1の手法が提案されている。
【0013】
(2)特許文献1
特許文献1では、単純形状の円柱試料を用いて摩擦係数を測定する方法が提案されている。すなわち、まず有限要素法(FEM:Finite Element Method)のシミュレーションを活用し、円柱試料を圧縮した時の摩擦係数と圧縮後の試料形状との関係を求め、式(1)(2)を構築する。つぎに実際の圧縮試験で得られた試料形状とひずみに基づき式(1)(2)を用いて摩擦係数を算出する。
式(1):P=(Rm×H)/(Rt×H0)
式(2):(a´+a´´ε+a´´´ε2-P)+(b´+b´´ε+b´´´ε2)m+(c´+c´´ε+c´´´ε2)m2=0
m:せん断摩擦係数[-]
Rm:圧縮後の試料の最大半径[mm]
Rt:圧縮前の端面から膨張した半径[mm]
H:圧縮後の試料の高さ[mm]
H0:圧縮前の試料の高さ[mm]
ε:真ひずみ[-]
a´~c´´´:材料の種類によらない定数
(3)特許文献2
特許文献2には、平板引き抜き試験等の一般的な摩擦係数測定方法により測定された摩擦係数のデータを基に面圧・摩擦仕事量・塑性ひずみを用いた多項式で金属板の摩擦係数を表し、該摩擦係数を用いたシミュレーションが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2011-196758号公報
【特許文献2】特許第4231426号公報
【特許文献3】特開2011-115805号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Y.P.Li,E.Onodera and A.chiba "Evaluation of Friction Coefficient by Simulation in Bulk Metal Forming Process"Metallurgical and Materials Transactions A,41,pp.224-232(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1,2の技術は、以下の問題を生じるおそれがあった。
【0017】
(1)特許文献1の問題点
チタン合金等の難加工材では、600°C以上の温度域に加熱し、材料を軟化させた状態で塑性変形させる熱間圧縮加工が行われている。この熱間圧縮加工では、試料と金型との接触によって試料温度が低下し易いため、加工中の温度変化に対応すべく試料温度を変化させたときの摩擦係数を測定する必要がある。
【0018】
ところが、特許文献1の式(2)に示す摩擦係数算出式には温度のパラメータが含まれていないため、かかる試料温度を変化させたときの摩擦係数を測定できず、正確な摩擦係数の測定が困難である。
【0019】
また、特許文献1によれば、式(2)の摩擦係数算出式は「材料の種類によらない」と記載されている([請求項1],段落[0015]参照)。この式(2)の導出方法は非特許文献1に記載されている。
【0020】
非特許文献では、式(2)を単一の材料(鉄鋼)かつ単一の圧縮条件で実験した結果から求めており、式(2)が「材料の種類によらない。」と断言することはできない。
【0021】
(2)特許文献2の問題点
特許文献2で提案されている多項式は、測定した摩擦係数のデータを基に生成されるが、該多項式の基となる摩擦係数のデータをどのように測定するべきかについて特に指定されていない。
【0022】
そうすると公知の測定方法を用いることとなるが、一般的な摩擦係数測定方法・特許文献1の摩擦係数測定方法には前述の問題があるので、多項式の基となる摩擦係数のデータが不正確となるおそれがあり、この点でシミュレーション時に正確な摩擦係数を設定することが難しい。
【0023】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、正確な摩擦係数を測定し、シミュレーション精度の向上を図ることを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
(1)本発明の一態様は、試料と部材との間の摩擦係数を測定する方法であって、
前記試料の圧縮前後の形状を測定し、圧縮前後における前記試料の任意寸法に基づき形状パラメータを求めるパラメータ測定ステップと、
前記形状パラメータと、前記試料の種類(材料の種類、材質)・ひずみ・ひずみ速度・試料温度に依存するパラメータとを用いて前記摩擦係数を算出する摩擦係数算出ステップと、を有することを特徴としている。
【0025】
(2)前記方法は、熱間圧縮加工のシミュレーションにより塑性変形中の前記試料・金型間の摩擦係数の測定に用いることができる。この場合に前記パラメータ測定ステップは、式(1)により前記形状パラメータを求める一方、
前記摩擦係数算出ステップは、前記第1ステップで求められた前記形状パラメータを式(3)に代入することで前記摩擦係数を算出する。
【0026】
式(1):P=(Rm×H)/(Rt×H0)
式(3):f1+f2m+f3m2=P
m:摩擦係数[-]
P:形状パラメータ[-]
Rm:圧縮後の試料の最大半径[mm]
Rt:圧縮前の端面から膨張した半径[mm]
H:圧縮後の試料の高さ[mm]
H0:圧縮前の試料の高さ[mm]
f1,f2,f3:試料の種類,ひずみ,ひずみ速度,試料温度に依存するパラメータ
(3)本発明の他の態様は、前記摩擦係数を用いて前記熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする方法であって、
前記摩擦係数は、前記熱間圧縮加工中に変化せず、一定であると仮定してシミュレーションを実行することを特徴としている。
【0027】
(4)本発明のさらに他の態様は、前記摩擦係数を用いて前記熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする方法であって、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度を変化させた複数の条件下で試料を圧縮したときの前記摩擦係数を測定するステップと、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度のうち少なくとも1つ以上のパラメータを用いた多項式で前記摩擦係数を表すステップと、
前記シミュレーションのステップ毎に前記多項式を用いて前記摩擦係数を計算し、前記試料・前記金型間の接触点毎に前記摩擦係数を設定するステップと、を有することを特徴としている。
【0028】
(5)本発明のさらに他の態様は、熱間圧縮加工のシミュレーションにより塑性変形中の試料・金型間の摩擦係数を測定する装置であって、
前記試料の圧縮前後の形状を測定し、圧縮前後における前記試料の任意寸法に基づき形状パラメータを求めるパラメータ測定部と、
前記形状パラメータと、前記試料の種類・ひずみ・ひずみ速度・試料温度に依存するパラメータとを用いて前記摩擦係数を算出する摩擦係数算出部と、を備えることを特徴としている。
【0029】
(6)本発明のさらに他の態様は、前記摩擦係数を用いて前記熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする装置であって、
前記摩擦係数が前記熱間圧縮加工中に変化せず、一定であると仮定して前記シミュレーションを実行することを特徴としている。
【0030】
(7)本発明のさらに他の態様は、前記摩擦係数測定装置による前記摩擦係数を用いて前記熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする装置であって、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度を変化させた複数の条件下で試料を圧縮したときの前記摩擦係数を測定し、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度のうち少なくとも1つ以上のパラメータを用いた多項式で前記摩擦係数を表して設定する摩擦係数設定部を備え、
前記摩擦係数設定部は、前記シミュレーションのステップ毎に前記多項式を用いて前記摩擦係数を計算し、前記試料・前記金型間の接触点毎に前記摩擦係数を設定することを特徴としている。
【0031】
(8)なお、本発明は、前記摩擦係数測定方法/前記シミュレーション方法をコンピュータに実行させるプログラムとして構成することもできる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、正確な摩擦係数が測定されるため、シミュレーション精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態に係る摩擦係数測定方法およびシミュレーション方法の概略図。
【
図2】同 摩擦係数測定方法およびシミュレーション方法と従来技術との比較図。
【
図3】同 摩擦係数測定方法およびシミュレーション方法を実行するシステム構成図。
【
図4】同 シミュレーション方法の処理ステップを示すフローチャート。
【
図5】(a)は圧縮前の試料形状を示す縦断面図、(b)は圧縮後の試料形状を示す縦断面図。
【
図6】試料の種類を変化させたときの試料形状とせん断摩擦係数との関係を示すグラフ。
【
図7】試料温度を変化させたときの試料形状とせん断摩擦係数との関係を示すグラフ。
【
図8】ひずみ速度を変化させたときの試料形状とせん断摩擦係数との関係を示すグラフ。
【
図9】(a)は実際に熱間圧縮で試作したときの試料形状図、(b)は実施例の試料形状図、(c)は比較例1(せん断摩擦係数=0.3 一定)の試料形状図、(d)は比較例2(せん断摩擦係数=0.1 一定)の試料形状図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を説明する。ここでは熱間圧縮加工の高温圧縮試験により塑性変形中の試料・金型間の摩擦係数を測定し、測定された摩擦係数を実製品の熱間圧縮加工シミュレーションに利用する。なお、試料の種類としては、主にチタン合金・インコネル・鉄鋼・ハステロイ等の金属材料が用いられる。
【0035】
≪全体説明≫
図1中のAは前記高温圧縮試験(シミュレーション)を示し、Bは実製品の熱間圧縮加工シミュレーションを示し、S01~S06のステップを実行する。
【0036】
S01:摩擦係数mを変えながら(m=0~1)試料についてシミュレーションAを実行する。
【0037】
S02:シミュレーションA上で圧縮後の試料形状と摩擦係数との関係を解析し、両者の関係式を構築する。この関係式には、試料の種類・ひずみ・ひずみ速度・試料温度に依存するパラメータが用いられる。
【0038】
S03:実際に試料の高温圧縮試験を実施し、圧縮後の試料形状を測定して圧縮前後の試料形状から形状パラメータを求める。
【0039】
S04:S02の関係式にS03の形状パラメータを代入し、摩擦係数を算出する。
【0040】
S05,S06:算出された摩擦係数を熱間圧縮加工シミュレーションBのシミュレーション条件に設定し(S05)、実製品の熱間圧縮加工シミュレーションBを実行する(S06)。
【0041】
このときS03,S04により本実施形態の摩擦係数測定方法が実行され、S05,S06により同シミュレーション方法が実行される。このような摩擦係数測定方法およびシミュレーション方法は、
図2に示すように、従来技術と比較して、それぞれ次の特徴を有している。
【0042】
(1)前記摩擦係数測定方法
図2中の1は、前記摩擦係数測定方法を示している。この摩擦係数測定方法1は、塑性変形中の摩擦係数を取得できる点で前述の摩擦摩耗試験・特許文献2の平板引き抜き試験と相違する。
【0043】
また、前記関係式のパラメータに「試料温度」を用いることで熱間圧縮加工に対応でき、この点で特許文献1の摩擦係数測定方法と相違する。なお、摩擦係数測定方法1では、加工条件に近い一つの測定条件で摩擦係数を測定してもよく、複数の測定条件で摩擦係数を測定してもよいものとする。
【0044】
(2)前記シミュレーション方法
図2中の2(2-1,2-2)は、前記シミュレーション方法を示している。このシミュレーション方法2は、摩擦係数測定方法1で得られた摩擦係数を用いて熱間圧縮加工プロセスをシミュレーションする。その際、加工条件に近い一つの測定条件で摩擦係数を測定した場合、加工中の摩擦係数は常に一定であると仮定し、シミュレーションを実行する(2-1)。
【0045】
また、複数の測定条件で摩擦係数を測定した場合には、ひずみ・ひずみ速度・試料温度のうち少なくとも1つ以上のパラメータを用いた多項式で摩擦係数を表し、熱間圧縮加工プロセスのステップ毎に金型・試料の各接触点に個別の摩擦係数を設定する(2-2)。
【0046】
(3)システム構成例
図3中の11は摩擦係数測定方法1を実行する摩擦係数測定装置(高温圧縮試験装置)を示し、12はシミュレーション方法2を実行する熱間圧縮加工シミュレーション装置を示している。
【0047】
前記装置11,12はコンピュータにより構成され、それぞれを同じコンピュータに構成してもよく、あるいは別々のコンピュータに構成してもよい。ここではハードウェアリソース(CPU,RAM,ROM等)とソフトウェアリソース(アプリケーション,OS等)との協働の結果、摩擦係数測定装置11はパラメータ測定部13,摩擦係数算出部14を実装し、熱間圧縮加工シミュレーション装置12は摩擦係数設定部15,シミュレーション実行部16を実装する。以下、各部13~16により実行される前記各方法1,2の詳細を説明する。
【0048】
≪摩擦係数測定方法1の詳細≫
摩擦係数測定方法1は、高温領域(600°C以上)で試料を塑性変形させる熱間圧縮加工のプロセスにおける試料・金型間の摩擦係数を測定し、S11,S12のステップを有している。なお、S11は前述したS03の詳細を示し、S12は同S04の詳細を示している。
【0049】
S11:パラメータ測定部13により試料の圧縮前後の形状を測定し、特許文献1と同様に式(1)の関係式を用いて圧縮前後における試料の任意寸法に基づき形状パラメータPを求める。
【0050】
S12:摩擦係数算出部14は、形状パラメータPを式(3)に代入することにより摩擦係数を間接的に測定する。
式(3):f1+f2m+f3m2=P
m:摩擦係数[-]
f1,f2,f3:試料の種類,ひずみ,ひずみ速度,試料温度に依存するパラメータ
このような摩擦係数測定方法1は、S11で特許文献1と同様に式(1)を用いているものの、S12で式(3)を用いている点で相違する。すなわち、特許文献1の式(2)は試料の種類・試料温度・ひずみ速度の影響が考慮されていないが、これらの影響を考慮した式(3)を用いることで正確な摩擦係数の算出を図っている。
【0051】
特に試料温度に依存するパラメータを式(3)に加えたため、該試料温度を変化させたときの摩擦係数が算出可能となり、この点で熱間圧縮加工における摩擦係数の測定精度を向上させることができる。
【0052】
このとき式(3)は、摩擦係数mの2次方程式であり、摩擦係数mの解が二つ得られる。ここでは「f3>0」のときは大きい方の解を摩擦係数mの値とする一方、「f3<0」のときは小さい方の解を摩擦係数mの値とする。言い換えれば、後述のように摩擦係数mの増加に伴って形状パラメータPが増加するため、「f(m)=f1+f2m+f3m2」で示す2次曲線のうち、導関数が正「f´(m)>0」の領域のみを用いる。
【0053】
式(3)中のパラメータ「f1~f3」は、「試料の種類」,「ひずみ」,「ひずみ速度」,「試料温度」に依存するパラメータを示し、FEMのシミュレーションにより算出される。
【0054】
すなわち、シミュレーションにより摩擦係数を変化させたときの試料形状(形状パラメータP)を求め、形状パラメータPを摩擦係数mの2次式で回帰することによって前記パラメータ「f1~f3」を算出する。
【0055】
表1は、「直径=8mm,長さ(高さ)=12mm,面取りC(C面取り)=0.5mm」の円柱形状のチタン合金について算出した前記パラメータ「f1~f3」の値を示している。
【0056】
【0057】
ただし、前記パラメータ「f1~f3」は、表1の値に限定されるものではなく、試料の種類や加工条件に応じてシミュレーションを行い、その都度決定されるものとする。例えば鉄鋼やインコネル等の金属材料においても同様の手法でパラメータ「f1~f3」を求めることができる。
【0058】
また、S11の形状パラメータPも、式(1)の算出方法に限定されるものではなく、摩擦係数の大きさによって変化する任意の試料形状(寸法)を用いて表すことによって同様の効果が得られる。なお、S11,S12の処理結果(測定結果)は、モニタなどに出力することで試料の摩擦係数の値をユーザに提示することができる。
【0059】
≪シミュレーション方法2の詳細≫
(1)シミュレーション方法2は、S11,S12の処理を経て提示された摩擦係数の値を実製品の熱間圧縮加工シミュレーションの条件に設定し、該熱間圧縮加工シミュレーションを実行する。
【0060】
このとき実製品の加工条件に近い測定条件(ひずみ・ひずみ速度・試料温度)で摩擦係数を測定した場合、シミュレーション実行部16は加工中の摩擦係数は常に一定であると仮定し、シミュレーションを実行すればよい。
【0061】
一方、複数の測定条件で摩擦係数を測定する場合には、ひずみ・ひずみ速度・試料温度のうち少なくとも1つ以上のパラメータを用いた多項式で摩擦係数を表し、該多項式をシミュレーションソフト(シミュレーションのアプリケーションソフト)に入力することによってシミュレーションのステップ毎に各接触点の摩擦係数を設定する。
【0062】
この場合、まず摩擦係数測定方法1によって、ひずみ・ひずみ速度・試料温度を変化させた複数の測定条件下で試料を圧縮したときの摩擦係数を測定する。表2は、チタン合金製の円柱試料について、複数の測定条件で摩擦係数を測定したデータを示している。
【0063】
【0064】
つぎに摩擦係数設定部15は、前記データを回帰分析することによって、ひずみ・ひずみ速度・試料温度のうち少なくとも1つ以上のパラメータを用いた式(4)の多項式で摩擦係数を表す。
式(4):m=f(ε,dε/dt,T)
m:摩擦係数[-]
ε:ひずみ[-]
dε/dt:ひずみ速度[s-1]
T:試料温度[°C]
その後、前記多項式をFEMのソフトウェアに入力し、シミュレーション実行部16により熱間圧縮加工シミュレーションBを実行する。
【0065】
(2)
図4に基づき熱間圧縮加工シミュレーションB実行時における摩擦係数設定部15の処理ステップ(S21~S26)を説明する。ここでは熱間圧縮加工シミュレーションBにおける現ステップを「nステップ」と呼び、一つ前のステップを「n-1」ステップと呼ぶ。
【0066】
S21:熱間圧縮加工シミュレーションの処理を開始されると、1ステップ目について「摩擦係数m=0」に設定する。
【0067】
S22:FEMで「n-1」ステップのひずみ(ε)・ひずみ速度(dε/dt)・試料温度(T)の値を算出する。
【0068】
S23:S22で算出された値と式(4)の多項式とにより、「nステップ」の摩擦係数を算出する。
【0069】
S24,S25:S23で算出された摩擦係数を試料と金型とが接触している各接触点に設定し(S24)、「nステップ」のひずみ(ε)・ひずみ速度(dε/dt)・試料温度(T)を計算する(S25)。
【0070】
S26:「nステップ」が最終ステップか否かを確認する。確認の結果、最終ステップであれば熱間圧縮加工シミュレーションの処理を終了する一方、最終ステップでなければS22に戻って最終ステップまでS22~S25の処理を繰り返す。
【0071】
これにより熱間圧縮加工シミュレーションBのステップ毎に各接触点に適切な摩擦係数を設定することが可能となり、熱間圧縮加工シミュレーションBにおける形状予測の予測精度が向上する。
【0072】
≪実験例≫
前述のように摩擦係数測定方法1は、式(3)を用いることにより摩擦係数mを間接的に測定する。なお、実験例では、摩擦係数mをせん断摩擦係数として扱った。
【0073】
式(3)中の「パラメータf1~f3」は、前述のように特許文献1で用いられている式(2)のような「ひずみ」のみに依存するパラメータではなく、「試料の種類」,「ひずみ速度」,「試料温度」にも依存するパラメータである。この点を実験データに基づき説明する。
【0074】
ここでは「直径8mm,高さ12mm,C面取り0.5mm」のチタン合金製の円柱試料を「高さ6mm」まで圧縮したときの試料形状をシミュレーションにより解析し、摩擦係数mが変化したときの試料形状の変化を調査した。
【0075】
図5(a)は圧縮前の試料形状を示し、
図5(b)は圧縮後の試料形状を示している。ここでは圧縮前の試料20aの半径「R
mo」に対する圧縮後の試料20bの最大半径「R
m」と、圧縮前の試料20aの端面「R
t0」から膨張した半径「R
t」とを求め、前述の式(1)により形状パラメータPを算出した。なお、圧縮前の試料20aは「高さH
0=12mm」である一方、圧縮後の試料20bは「高さH=6mm」となっている。
【0076】
図6~
図8は、それぞれ試料の種類・試料温度・ひずみ速度が異なる複数の条件下での「形状パラメータP」と「摩擦係数m」との関係を調査した結果を示している。このとき各図中のプロットはシミュレーションによる計算結果を示し、同曲線は前記プロットを摩擦係数mの2次式で近似した結果を示し(以下、近似曲線と呼ぶ。)、試料の種類・試料温度・ひずみ速度を変化させると近似曲線の形も変化している。
【0077】
これは式(3)の「パラメータf1~f3」が試料の種類・試料温度・ひずみ速度によって変化することを意味する。実際に近似曲線から「パラメータf1~f3」を求めると、前記表1に示す値が得られ、試料の種類・試料温度・ひずみ速度に依存するパラメータであることが確認された。
【0078】
特に試料がチタン合金の場合には、
図8に示すように、ひずみ速度の影響が大きいことが判明した。前記摩擦係数測定方法1では、実際に高温圧縮試験を行って得られた形状パラメータPから摩擦係数mを算出しているが、形状パラメータPの値が同じだとしても、ひずみ速度の違いによって、算出される摩擦係数mが最大で「0.3」程度変化する。
【0079】
その結果、正確な摩擦係数mを求めるためには特許文献1で用いる「ひずみ」のみならず、試料の種類・試料温度・ひずみ速度の影響を考慮した式(3)が必要なことが明らかとなった。
【0080】
≪実施例≫
摩擦係数測定方法1およびシミュレーション方法2の有効性を検証した実施例を説明する。なお、実施例でも、摩擦係数mをせん断摩擦係数として扱った。
【0081】
ここでは摩擦係数測定方法1により、ひずみ速度・試料温度を変化させ、複数の条件下でチタン合金を高温圧縮したときの摩擦係数mを算出した(表2参照)。
【0082】
算出された摩擦係数mのデータを用いてシミュレーション方法2により、熱間圧縮加工シミュレーションを実施した。この熱間圧縮加工シミュレーションにより予測された実施例の試料形状(予測形状)について比較検証を行った。
【0083】
図9(a)は実際に熱間圧縮加工で試作したときの試料形状(実形状)を示し、同(b)は実施例の試料形状を示し、同(c)(d)は根拠の無い摩擦係数値「0.3」,「0.1」に設定して前記熱間圧縮加工シミュレーションを実施した比較例1,2の試料形状(予測形状)を示している。
【0084】
図9(b)~(d)中の破線は、
図9(a)から求めた実形状の輪郭を示し、比較例1,2のように根拠の無い数値を用いると、実形状と予測形状の差が大きく、熱間圧縮加工シミュレーションの精度が低くなっている。
【0085】
一方、実施例の場合には実形状と予測形状がほぼ一致しており、鍛造後の形状が高精度で予測されている。この点で摩擦係数測定方法1およびシミュレーション方法2の手法を実施することで熱間圧縮加工シミュレーションの精度を飛躍的に向上させることが確認できた。なお、本実施例では、チタン合金を用いたが、鉄鋼などの他の金属材料の試料についても同様の効果が得られている。
【0086】
≪その他・他例≫
本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、各請求項に記載された範囲内で変形して実施することができる。以下に一例を示す。
【0087】
(1)試料が円柱の場合、式(1)の「Rt」は、圧縮後の試料の上端面の半径と読み替えてもよい。また、試料は、円柱形状だけでなく、正角柱などの角柱であってもよい。この場合、試料が正角柱であれば、式(1)の「Rm」・「Rt」の半径を「底面辺の長さ/2」と読み替えればよい。
【0088】
(2)本発明の摩擦係数測定方法は、実施形態で示した塑性変形中の試料・金型間の摩擦係数だけでなく、例えば表面処理層や潤滑剤などの材料の種類を変化させて、摩擦係数を測定することによって、低摩擦係数が実現できる表面処理層や潤滑剤の選定が可能となる。
【0089】
(3)材料の変形抵抗を調査する際には、材料の圧縮試験を行い、力と変形量との関係を示す“応力-ひずみ曲線”を取得する。その際、試料と金型との間に生じる摩擦の影響によって、真の応力値よりも大きな値が測定される。
【0090】
測定値から摩擦の影響を補正し、真の応力を求めるためには摩擦係数の値が必要となる(特許文献3参照)。本発明は、摩擦補正に必要な摩擦係数を求める手段としても使用することができる。
【0091】
(4)本発明は、コンピュータに摩擦係数数測定方法1またはシミュレーション方法2を実行させるプログラムとして構成することもできる。これによりコンピュータが摩擦係数測定装置11,熱間圧縮加工シミュレーション装置12として機能し、S01~S05,S11~S12,S21~S26等のステップが実行される。
【符号の説明】
【0092】
1…摩擦係数測定方法
2(2-1,2-2)…シミュレーション方法
11…摩擦係数測定装置
12…熱間圧縮加工シミュレーション装置
13…パラメータ測定部
14…摩擦係数算出部
15…摩擦係数設定部
16…シミュレーション実行部
【手続補正書】
【提出日】2022-10-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と部材との間の摩擦係数を測定する方法であって、
前記試料の圧縮前後の形状を測定し、圧縮前後における前記試料の任意寸法に基づき形状パラメータ求めるパラメータ測定ステップと、
前記形状パラメータと、前記試料の種類(材料の種類、材質)・ひずみ・ひずみ速度・試料温度のすべてに依存するパラメータとを用いて前記摩擦係数を算出する摩擦係数算出ステップと、
を有し、
前記パラメータ測定ステップは、式(1)により前記形状パラメータを求める一方、
前記摩擦係数算出ステップは、前記パラメータ測定ステップで求められた前記形状パラメータを式(3)に代入することで前記摩擦係数を算出する
ことを特徴とする摩擦係数測定方法。
式(1):P=(R
m
×H)/(R
t
×H
0
)
式(3):f
1
+f
2
m+f
3
m
2
=P
m:摩擦係数[-]
P:形状パラメータ[-]
R
m
:圧縮後の試料の最大半径[mm]
R
t
:圧縮前の端面から膨張した半径[mm]
H:圧縮後の試料の高さ[mm]
H
0
:圧縮前の試料の高さ[mm]
f
1
,f
2
,f
3
:試料の種類,ひずみ,ひずみ速度,試料温度のすべてに依存するパラメータ
【請求項2】
熱間圧縮加工のシミュレーションにより塑性変形中の前記試料・金型間の摩擦係数を計測する
ことを特徴とする請求項1記載の摩擦係数測定方法。
【請求項3】
前記試料は、金属材料であること特徴とする請求項2記載の摩擦係数測定方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか記載の方法による前記摩擦係数を用いて熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする方法であって、
前記摩擦係数は、前記熱間圧縮加工中に変化せず、一定であると仮定してシミュレーションを実行する
ことを特徴とするシミュレーション方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか記載の方法による前記摩擦係数を用いて熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする方法であって、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度を変化させた複数の条件下で試料を圧縮したときの前記摩擦係数を測定するステップと、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度のすべてのパラメータを用いた多項式で前記摩擦係数を表すステップと、
前記シミュレーションのステップ毎に前記多項式を用いて前記摩擦係数を計算し、前記試料・前記金型間の接触点毎に前記摩擦係数を設定するステップと、
を有することを特徴とするシミュレーション方法。
【請求項6】
前記多項式は、式(4)からなることを特徴とする請求項5記載のシミュレーション方法。
式(4):m=f(ε,dε/dt,T)
m:摩擦係数[-]
ε:ひずみ[-]
dε/dt:ひずみ速度[s-1]
T:試料温度[°C]
【請求項7】
試料と部材との間の摩擦係数を測定する装置であって、
前記試料の圧縮前後の形状を測定し、圧縮前後における前記試料の任意寸法に基づき形状パラメータ求めるパラメータ測定部と、
前記形状パラメータと、前記試料の種類(材料の種類、材質)・ひずみ・ひずみ速度・試料温度のすべてに依存するパラメータとを用いて前記摩擦係数を算出する摩擦係数算出部と、
を備え、
前記パラメータ測定部は、式(1)により前記形状パラメータを求める一方、
前記摩擦係数算出部は、前記パラメータ測定部で求められた前記形状パラメータを式(3)に代入することで前記摩擦係数を算出する
ことを特徴とする摩擦係数測定装置。
式(1):P=(R
m
×H)/(R
t
×H
0
)
式(3):f
1
+f
2
m+f
3
m
2
=P
m:摩擦係数[-]
P:形状パラメータ[-]
R
m
:圧縮後の試料の最大半径[mm]
R
t
:圧縮前の端面から膨張した半径[mm]
H:圧縮後の試料の高さ[mm]
H
0
:圧縮前の試料の高さ[mm]
f
1
,f
2
,f
3
:試料の種類,ひずみ,ひずみ速度,試料温度のすべてに依存するパラメータ
【請求項8】
請求項7記載の摩擦係数測定装置による前記摩擦係数を用いて熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする装置であって、
前記摩擦係数が前記熱間圧縮加工中に変化せず、一定であると仮定して前記シミュレーションを実行する
ことを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項9】
請求項7記載の前記摩擦係数測定装置による前記摩擦係数を用いて熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする装置であって、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度を変化させた複数の条件下で試料を圧縮したときの前記摩擦係数を測定し、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度のすべてのパラメータを用いた多項式で前記摩擦係数を表して設定する摩擦係数設定部を備え、
前記摩擦係数設定部は、前記シミュレーションのステップ毎に前記多項式を用いて前記摩擦係数を計算し、前記試料・前記金型間の接触点毎に前記摩擦係数を設定する
ことを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか記載の前記摩擦係数測定方法をコンピュータに実行させることを特徴とする摩擦係数測定プログラム。
【請求項11】
請求項4~6のいずれか記載のシミュレーション方法をコンピュータに実行させることを特徴とするシミュレーションプログラム。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と部材との間の摩擦係数を測定する方法であって、
前記試料の圧縮前後の形状を測定し、圧縮前後における前記試料の任意寸法に基づき形状パラメータを求めるパラメータ測定ステップと、
前記形状パラメータと、前記試料の種類(材料の種類、材質)・ひずみ・ひずみ速度・試料温度のすべてに依存するパラメータとを用いて前記摩擦係数を算出する摩擦係数算出ステップと、
を有し、
前記パラメータ測定ステップは、式(1)により前記形状パラメータを求める一方、
前記摩擦係数算出ステップは、前記パラメータ測定ステップで求められた前記形状パラメータを式(3)に代入することで前記摩擦係数を算出する
ことを特徴とする摩擦係数測定方法。
式(1):P=(Rm×H)/(Rt×H0)
式(3):f1+f2m+f3m2=P
m:摩擦係数[-]
P:形状パラメータ[-]
Rm:圧縮後の試料の最大半径[mm]
Rt:圧縮前の端面から膨張した半径[mm]
H:圧縮後の試料の高さ[mm]
H0:圧縮前の試料の高さ[mm]
f1,f2,f3:試料の種類,ひずみ,ひずみ速度,試料温度のすべてに依存するパラメータ
【請求項2】
熱間圧縮加工のシミュレーションにより塑性変形中の前記試料・金型間の摩擦係数を計測する
ことを特徴とする請求項1記載の摩擦係数測定方法。
【請求項3】
前記試料は、金属材料であること特徴とする請求項2記載の摩擦係数測定方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか記載の方法による前記摩擦係数を用いて熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする方法であって、
前記摩擦係数は、前記熱間圧縮加工中に変化せず、一定であると仮定してシミュレーションを実行する
ことを特徴とするシミュレーション方法。
【請求項5】
請求項2または3記載の方法による前記摩擦係数を用いて熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする方法であって、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度を変化させた複数の条件下で試料を圧縮したときの前記摩擦係数を測定するステップと、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度のすべてのパラメータを用いた多項式で前記摩擦係数を表すステップと、
前記シミュレーションのステップ毎に前記多項式を用いて前記摩擦係数を計算し、前記試料・前記金型間の接触点毎に前記摩擦係数を設定するステップと、
を有することを特徴とするシミュレーション方法。
【請求項6】
前記多項式は、式(4)からなることを特徴とする請求項5記載のシミュレーション方法。
式(4):m=f(ε,dε/dt,T)
m:摩擦係数[-]
ε:ひずみ[-]
dε/dt:ひずみ速度[s-1]
T:試料温度[°C]
【請求項7】
試料と部材との間の摩擦係数を測定する装置であって、
前記試料の圧縮前後の形状を測定し、圧縮前後における前記試料の任意寸法に基づき形状パラメータを求めるパラメータ測定部と、
前記形状パラメータと、前記試料の種類(材料の種類、材質)・ひずみ・ひずみ速度・試料温度のすべてに依存するパラメータとを用いて前記摩擦係数を算出する摩擦係数算出部と、
を備え、
前記パラメータ測定部は、式(1)により前記形状パラメータを求める一方、
前記摩擦係数算出部は、前記パラメータ測定部で求められた前記形状パラメータを式(3)に代入することで前記摩擦係数を算出する
ことを特徴とする摩擦係数測定装置。
式(1):P=(Rm×H)/(Rt×H0)
式(3):f1+f2m+f3m2=P
m:摩擦係数[-]
P:形状パラメータ[-]
Rm:圧縮後の試料の最大半径[mm]
Rt:圧縮前の端面から膨張した半径[mm]
H:圧縮後の試料の高さ[mm]
H0:圧縮前の試料の高さ[mm]
f1,f2,f3:試料の種類,ひずみ,ひずみ速度,試料温度のすべてに依存するパラメータ
【請求項8】
請求項7記載の摩擦係数測定装置による前記摩擦係数を用いて熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする装置であって、
前記摩擦係数が前記熱間圧縮加工中に変化せず、一定であると仮定して前記シミュレーションを実行する
ことを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項9】
請求項7記載の前記摩擦係数測定装置による前記摩擦係数を用いて熱間圧縮加工のプロセスをシミュレーションする装置であって、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度を変化させた複数の条件下で試料を圧縮したときの前記摩擦係数を測定し、
前記ひずみ・前記ひずみ速度・前記試料温度のすべてのパラメータを用いた多項式で前記摩擦係数を表して設定する摩擦係数設定部を備え、
前記摩擦係数設定部は、前記シミュレーションのステップ毎に前記多項式を用いて前記摩擦係数を計算し、前記試料・金型間の接触点毎に前記摩擦係数を設定する
ことを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか記載の前記摩擦係数測定方法をコンピュータに実行させることを特徴とする摩擦係数測定プログラム。
【請求項11】
請求項4~6のいずれか記載のシミュレーション方法をコンピュータに実行させることを特徴とするシミュレーションプログラム。