(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059566
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/16 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
C08J3/16 CEV
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169654
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小笹 詩織
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐生
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA22
4F070AC18
4F070AC80
4F070AE30
4F070BA02
4F070DA38
4F070DB01
4F070DC07
4F070DC09
(57)【要約】
【課題】塩化ビニル系樹脂凝集体の形状の制御を行うことができる。
【解決手段】塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法は、塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスに無機塩を添加する工程と、前記無機塩を添加したラテックスに対して、前記塩化ビニル系樹脂粒子が完全凝集しない状態で、せん断応力を加える工程と、を有し、前記せん断応力を加える工程で得られた塩化ビニル系樹脂凝集体の真球度が1.00~1.50である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスに無機塩を添加する工程と、
前記無機塩を添加したラテックスに対して、前記塩化ビニル系樹脂粒子が完全凝集しない状態で、せん断応力を加える工程と、を有し、
前記せん断応力を加える工程で得られた塩化ビニル系樹脂凝集体の真球度が1.00~1.50である、塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法。
【請求項2】
前記無機塩を添加する工程の後に、前記無機塩を添加したラテックスに対して水溶性高分子を添加する工程をさらに有する、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法。
【請求項3】
前記せん断応力を加える工程にて得られた塩化ビニル系樹脂凝集体に対して、Tg+0℃~Tg+80℃の温度にて熱処理を行う熱処理工程を有する、請求項1または2に記載の塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法:
(Tgは、前記塩化ビニル系樹脂粒子を構成する塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度である)。
【請求項4】
前記せん断応力を加える工程で得られた塩化ビニル系樹脂凝集体の体積平均粒子径が1μm~100μmである、請求項1~3の何れか1項に記載の塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩ビペーストは塩化ビニル系樹脂を可塑剤と混練することで製造される。このペーストの重要品質である粘度の制御には、従来、塩化ビニル系樹脂の粒子径を重合により制御する手法がとられてきた。一方、重合の制御は非常に煩雑で時間がかかるという問題があり、他の手法として、塩化ビニル系樹脂を凝集させて得られる凝集体の粒子径を制御する方法が検討されている。
【0003】
塩化ビニル系樹脂を凝集させて得られる凝集体の粒子径を制御する方法として、特許文献1には、塩化ビニル系樹脂のラテックスに無機酸を含む凝固剤を添加することによって、塩化ビニル系樹脂の凝固ラテックスを得る工程を含む、塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においても、塩ビペーストの粘度の制御を行う面で改善の余地がある。
【0006】
本発明者は、塩ビペーストの粘度の制御のためには、特に、塩化ビニル系樹脂凝集体の形状を制御する必要があることを独自に見出した。このような状況下にあって、現在、塩化ビニル系樹脂凝集体の形状を制御する技術の開発が求められている。
【0007】
本発明の一態様は、塩化ビニル系樹脂凝集体の形状を制御する技術を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、無機塩が添加された塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスに対して、塩化ビニル系樹脂粒子が完全凝集しない状態でせん断応力を加えれば、塩化ビニル系樹脂凝集体の形状(特に、真球度)を制御できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
【0009】
〔1〕塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスに無機塩を添加する工程と、前記無機塩を添加したラテックスに対して、前記塩化ビニル系樹脂粒子が完全凝集しない状態で、せん断応力を加える工程と、を有し、前記せん断応力を加える工程で得られた塩化ビニル系樹脂凝集体の真球度が1.00~1.50である、塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法。
【0010】
〔2〕前記無機塩を添加する工程の後に、前記無機塩を添加したラテックスに対して水溶性高分子を添加する工程をさらに有する、〔1〕に記載の塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法。
【0011】
〔3〕前記せん断応力を加える工程にて得られた塩化ビニル系樹脂凝集体に対して、Tg+0℃~Tg+80℃の温度にて熱処理を行う熱処理工程を有する、〔1〕または〔2〕に記載の塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法:(Tgは、前記塩化ビニル系樹脂粒子を構成する塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度である)。
【0012】
〔4〕前記せん断応力を加える工程で得られた塩化ビニル系樹脂凝集体の体積平均粒子径が1μm~100μmである、〔1〕~〔3〕の何れかに記載の塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、塩化ビニル系樹脂凝集体の形状を制御することができる。塩化ビニル系樹脂凝集体の形状の制御により、塩ビペーストの粘度の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例に係る塩化ビニル系樹脂凝集体の粒子径分布およびメジアン径を示す図である。
【
図2】本発明の実施例に係る塩化ビニル系樹脂凝集体のSEM画像を示す図である。
【
図3】本発明の実施例に係る塩化ビニル系樹脂凝集体の粒子径分布を示す図である。
【
図4】加熱処理が施された塩化ビニル系樹脂凝集体、および、加熱処理が施されていない塩化ビニル系樹脂凝集体の粒子径分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0016】
本発明の一実施形態に係る塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法は、塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスに無機塩を添加する工程と、前記無機塩を添加したラテックスに対して、前記塩化ビニル系樹脂粒子が完全凝集しない状態で、せん断応力を加える工程と、を有し、前記せん断応力を加える工程で得られた塩化ビニル系樹脂凝集体の真球度が1.00~1.50である。
【0017】
本塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法によれば、塩化ビニル系樹脂凝集体の形状を制御することができる。本発明者らは、塩ビペーストの粘度を制御する技術を開発するために鋭意検討した結果、粘度を制御するには単に凝集するだけではなく、凝集体の形状制御が重要なことを見出した。本塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法によれば、塩化ビニル系樹脂凝集体の形状を制御することにより、塩ビペーストの粘度の制御を行うことができる。また、本塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法によれば、丸い形状の塩化ビニル系樹脂凝集体を得ることができるので、これを用いて塩ビペーストの粘度を低粘度に制御することができる。
【0018】
(1.塩化ビニル系樹脂粒子)
塩化ビニル系樹脂粒子を構成する塩化ビニル系樹脂は、樹脂を構成する構造単位100モル%中、塩化ビニルに由来する構造単位を50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上有するものである。
【0019】
塩化ビニル系樹脂は、(a)塩化ビニルの単独重合体であってもよく、(b)塩化ビニルと、塩化ビニルと共重合可能な塩化ビニル以外の単量体(以下、「単量体A」とも称する。)との共重合体であってもよい。つまり、塩化ビニル系樹脂は、(a’)塩化ビニルに由来する構造単位のみを有するものであってもよく、(b’)塩化ビニルに由来する構造単位と、単量体Aに由来する構造単位とを有しているものであってもよい。単量体Aは、塩化ビニルとの共重合体だけでなく、単量体Aを含有する重合体を塩化ビニル系樹脂に混合する形で用いることも可能である。
【0020】
単量体Aとしては、限定されず、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、マレイン酸、マレイン酸エステル、アクリロニトリルなどが挙げられる。この場合、塩化ビニル系樹脂は、(i)塩化ビニルと、(ii)酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、マレイン酸、マレイン酸エステル、およびアクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1つの単量体Aとの共重合体であってもよい。
【0021】
上述した単量体Aの中では、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、および、マレイン酸が好ましい。当該構成であれば、共重合体の溶解性向上、ゲル化促進などの有利な効果を得ることがきる。
【0022】
塩化ビニル系樹脂の重合度は、JIS K 7367-2に準拠して算出することができる。例えば、まず、100mLのビーカーに、(1)塩化ビニル系樹脂凝集体2.5mg、または、塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスの乾燥物2.5mg、および、(2)シクロヘキサン50mL(47.1g)を入れ、25℃にて、1時間、(1)および(2)の混合物を撹拌する。これによって、(2)中に(1)が溶解した溶解液を得る。次いで、前記溶解液、および、シクロヘキサンの落下秒数の平均値を求める。次いで、「粘度比(VR)=溶解液の落下秒数/シクロヘキサンの落下秒数」に基づいて、粘度比(VR)を求める。次いで、JIS K 7367-2-1999の換算表に基づいて、粘度比(VR)に基づくK値を測定する。最後に、当該K値に基づいて、重合度を算出することができる。
【0023】
塩化ビニル系樹脂粒子の体積平均粒子径は0.05μm~10μmであることが好ましく、0.05μm~2.0μmであることがより好ましく、0.05μm~1.0μmであることがさらに好ましく、0.1μm~0.5μmであることが最も好ましい。ここで、体積平均粒子径は、体積基準の粒子径分布におけるメジアン径である。
【0024】
塩化ビニル系樹脂粒子のメジアン径が0.05μm以上であると、塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスを移送する時のラテックスの機械安定性が良好になり、当該ラテックスの生産性が向上する。また、前記塩化ビニル系樹脂のメジアン径が10μm以下であると、塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスの保管時に塩化ビニル系樹脂粒子が沈降し難いため、ラテックスの長期保管が可能となり、当該ラテックスの生産性が向上する。さらに、得られた塩化ビニル系樹脂凝集体を用いたゾルの発泡性が良好となる。
【0025】
塩化ビニル系樹脂粒子のメジアン径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。なお、当該レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置としては市販の装置を用いればよく、測定方法としては、当該装置に添付のプロトコールに従えばよい。
【0026】
塩化ビニル系樹脂粒子(塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックス)の製造方法としては、限定されないが、前述の好ましいメジアン径を得られるという観点から、好ましくは、乳化重合法、微細懸濁重合法、シード微細懸濁重合法、および、シード乳化重合法を適用することができる。
【0027】
より具体的に、塩化ビニル系樹脂粒子(塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックス)の製造方法としては、WO2012/165021号公報、特開2009-91423号公報に記載の方法を挙げることができる。なお、当該文献は、本明細書中において参考文献として援用される。
【0028】
一例として、水性媒体中で、(a)塩化ビニル、または、(b)塩化ビニルと、塩化ビニルと共重合可能な塩化ビニル以外の単量体との混合物に、重合開始剤および乳化剤、必要に応じて更に分散助剤(例えば、高級アルコール、または、高級脂肪酸など)を加え、乳化重合、微細懸濁重合、シード微細懸濁重合、または、シード乳化重合を行うことによって、所望のメジアン径を有する塩化ビニル系樹脂粒子(所望のメジアン径を有する塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックス)を製造することができる。
【0029】
重合開始剤としては、限定されず、油溶性重合開始剤、および、水溶性重合開始剤を用いることができる。
【0030】
油溶性重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド類(例えば、ジラウロイルパーオキサイド、ジ-3,5,5,トリメチルヘキサノイルパーオキサイド)、パーオキシジカーボネート類(例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート)、有機過酸化物系開始剤(例えば、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、パーオキシエステル類)、アゾ系開始剤(例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))を挙げることができる。
【0031】
水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素水を挙げることができる。なお、水溶性重合開始剤を用いる場合には、必要に応じて還元剤(例えば、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート二水塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム)を併用してもよい。
【0032】
乳化剤としては、限定されず、アニオン性界面活性剤(例えば、脂肪酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、および、α-オレフィンスルホン酸、アルキルエーテルリン酸エステル等の塩(例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩))を用いることができる。
【0033】
なお、塩化ビニル系樹脂粒子(塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックス)としては、市販のものを用いることも可能である。
【0034】
(2.ラテックス)
本発明に使用されるラテックスは、塩化ビニル系樹脂粒子(例えば、メジアン径が0.05μm~10μmの塩化ビニル系樹脂粒子)を含有するものである。より具体的に、本発明に使用されるラテックスは、塩化ビニル系樹脂粒子が水中にコロイド状に分散したもの(例えば、乳濁液)であり得る。
【0035】
塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスの固形分濃度は、限定されないが、1重量%~60重量%であることが好ましく、1重量%~45重量%であることがより好ましく、1重量%~30重量%であることがより好ましく、1重量%~15重量%であることがより好ましく、1重量%~5重量%であることが最も好ましい。当該構成であれば、塩化ビニル系樹脂凝集体のメジアン径を、より小さく制御することができる。
【0036】
(3.無機塩)
本発明に使用される無機塩の例として、Na+、Mg2+、Ca2+、Al3+、H+等の陽イオンや、Cl-、Br-、SO4
2-、SO3
2-、NO2-、NO3-、PO4
3-、CO3
2-、OH-等の陰イオンに解離する化合物等が挙げられる。無機塩として、具体的には、NaCl、KCl、Na2SO4、CaCl2、AlCl3、Al2(SO4)3等を用いることができる。
【0037】
(4.水溶性高分子)
本発明の一実施形態に係る塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法は、無機塩を添加する工程の後に、無機塩を添加したラテックスに対して水溶性高分子を添加する工程をさらに有してもよい。本発明に使用される水溶性高分子は、ビニル(共)重合体、アクリロイル基含有モノマー(共)重合体、ポリアミジン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、多糖類、蛋白質、セルロースエーテル、およびデンプン誘導体からなる群より選択される少なくとも一つであり得る。
【0038】
(5.塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法)
本発明の一実施形態に係る塩化ビニル系樹脂凝集体の製造方法の各工程について説明する。
【0039】
<無機塩を添加する工程>
無機塩を添加する工程は、塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスに無機塩を添加する工程である。塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスに無機塩を添加することにより、塩化ビニル系樹脂粒子を凝集させることができる。
【0040】
塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスに添加する無機塩は、固体および水溶液のいずれの形態であってもよいが、分散性の観点から、水溶液の形態であることが好ましい。無機塩が添加されるラテックスの形態は、限定されないが、攪拌や混合により流動状態にあるラテックス中に無機塩を添加することが好ましい。無機塩は、塩化ビニル系樹脂の重合終了後に、塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスに添加することが好ましい。
【0041】
塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスに無機塩を添加する際の温度は、特に制限されないが、塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度Tg未満であることが好ましい。
【0042】
塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスに添加する無機塩の添加量は、塩化ビニル系樹脂粒子が完全凝集しない量である。これにより、後に続くせん断応力を加える工程において、塩化ビニル系樹脂粒子が完全凝集しない状態で、ラテックスに対してせん断応力を加えることができる。
【0043】
塩化ビニル系樹脂粒子が完全凝集しない状態を実現するための無機塩の添加量は、塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスに対して無機塩を添加した後、1時間静置して粒度分布を測定した場合に、凝集した塩化ビニル系樹脂粒子の体積に対して、残存する未凝集の塩化ビニル系樹脂粒子の体積の割合が5%以上となる量である。このような無機塩の添加量は、上述した条件を満たす無機塩の添加量を予め調べることにより決定してもよいし、塩化ビニル系樹脂凝集体の製造中に塩化ビニル系樹脂粒子の凝集状態を測定しながら決定してもよい。塩化ビニル樹脂粒子が完全凝集しない無機塩の添加量の一例として、メジアン径が0.09μmである塩化ビニル樹脂粒子を含有するラテックスの凝集後の樹脂固形分濃度が30%である場合、無機塩として用いる硫酸ナトリウムの添加量は、凝集後のラテックスの重量に対して0.1重量%である。
【0044】
<せん断応力を加える工程>
せん断応力を加える工程は、無機塩を添加したラテックスに対して、塩化ビニル系樹脂粒子が完全凝集しない状態で、せん断応力を加える工程である。塩化ビニル系樹脂粒子が完全凝集しない状態で、無機塩を添加したラテックスに対してせん断応力を加えることにより、塩化ビニル系樹脂凝集体の形状を制御することができる。
【0045】
塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスに無機塩を添加することで得られる凝集体は、その表面がなめらかではなく、凹凸を有する不定型な形状となる。このような凝集体をペースト加工すると、粘度の制御が容易ではなく、特に、低粘度に制御することが困難である。
【0046】
せん断応力を加える工程において、塩化ビニル系樹脂粒子が完全凝集しない状態で、無機塩を添加したラテックスに対してせん断応力を加えることにより、塩化ビニル系樹脂凝集体の形状を安定した形状に制御することが可能である。そして、このような安定した形状に制御された塩化ビニル系樹脂凝集体を用いることで、ペースト加工した際の粘度の制御が容易である。
【0047】
また、せん断応力を加える工程で得られた塩化ビニル系樹脂凝集体は、その真球度が1.00~1.50であるが、1.00~1.30であることがより好ましく、1.00~1.25であることがさらに好ましく、1.00~1.20であることが最も好ましい。せん断応力を加える工程によれば、得られる塩化ビニル系樹脂凝集体の真球度が1.00~1.50のように、丸い形状の塩化ビニル系樹脂凝集体を得ることができる。そして、このような丸い形状の塩化ビニル系樹脂凝集体を用いることで、ペースト加工した際の粘度の制御が容易であり、特に、低粘度に制御することができる。すなわち、せん断応力を加える工程で得られる塩化ビニル系樹脂凝集体は、ペースト加工用の塩化ビニル系樹脂凝集体として好適である。
【0048】
塩化ビニル系樹脂凝集体の真球度は、塩化ビニル系樹脂凝集体を撮影したSEM画像中の100個の粒子について、粒子の中心を通る長径の長さと短径の長さとを計測し、「長径の長さ/短径の長さ」の比を求めて、その平均値とする。
【0049】
せん断応力を加える工程で得られた塩化ビニル系樹脂凝集体のメジアン径は、1μm~100μmであり得る。せん断応力を加える工程においては、1μm~100μmの範囲のような広範囲において、種々のメジアン径の塩化ビニル系樹脂凝集体を作り分けることができる。例えば、1μm~80μm、1μm~50μm、1μm~30μm、1μm~10μm、10μm~100μm、30μm~100μm、50μm~100μm、または、70μm~100μmのメジアン径の塩化ビニル系樹脂凝集体を作り分けることができる。
【0050】
せん断応力を加える工程において、無機塩を添加したラテックスに対してせん断応力を加える方法としては、特に限定されず、一例として、公知の高せん断ミキサーを用いる方法が挙げられる。高せん断ミキサーの例として、ホモミキサー、コロイドミル、撹拌翼を上下振動させ混合を行う振動式撹拌機であるバイブロミキサー等が挙げられる。
【0051】
せん断応力を加える工程において、90秒間以上、無機塩を添加したラテックスに対してせん断応力を加えてもよいが、180秒間以上であることがより好ましく、240秒間以上であることがさらに好ましく、300秒間以上であることが最も好ましい。せん断応力を加える時間の上限は、限定されず、例えば、6000秒、1000秒、または500秒であってもよい。せん断応力を加える時間は、せん断ミキサー内においてラテックスを滞留させる時間とすることができる。
【0052】
無機塩を添加したラテックスに対してせん断応力を加える時間が90秒間以上であることによって、塩化ビニル系樹脂粒子に十分にせん断応力を加えることができ、塩化ビニル系樹脂凝集体の形状を制御することができる。一例として、せん断応力を加える時間を上記範囲内でより大きくすることによって、より丸い形状の塩化ビニル系樹脂凝集体を得ることができる。
【0053】
せん断応力を加える工程において、20Hz~60Hzの振動数のせん断ミキサーを用いて、前記無機塩を添加したラテックスに対してせん断応力を加えることが好ましいが、せん断ミキサーの振動数は30Hz~60Hzとすることがより好ましく、30Hz~40Hzとすることが最も好ましい。せん断応力を加えるせん断ミキサーの振動数を20Hz~60Hzとすることによって、種々の粒子径の塩化ビニル系樹脂凝集体を作り分けることができる。一例として、せん断応力を加えるせん断ミキサーの振動数を上記範囲内でより大きくすることによって、加えられるせん断応力が大きくなるので、より粒子径の小さい塩化ビニル系樹脂凝集体を得ることができる。また、せん断ミキサーの振動数を大きくすることによって、得られる塩化ビニル系樹脂凝集体の形状も、より丸い形状に近づく傾向にある。
【0054】
<水溶性高分子を添加する工程>
水溶性高分子を添加する工程は、無機塩を添加する工程の後に、無機塩を添加したラテックスに対して水溶性高分子を添加する工程である。無機塩を添加したラテックスに対して水溶性高分子を添加することにより、塩化ビニル系樹脂凝集体の粒子径を制御することができる。
【0055】
無機塩を添加したラテックスに添加する水溶性高分子は、水溶液の形態であることが好ましい。水溶性高分子を添加する工程は、塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスに無機塩を添加した後であれば、せん断応力を加える工程の前およびせん断応力を加える工程中のいずれにおいて実行してもよい。すなわち、水溶性高分子は、せん断応力を加える前のラテックス中に添加してもよいし、ラテックスにせん断応力を加えながら添加してもよい。
【0056】
無機塩を添加したラテックスに水溶性高分子を添加する際の温度は、特に制限されないが、塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度Tg未満であることが好ましい。
【0057】
無機塩を添加したラテックスに添加する水溶性高分子の添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1重量部~10重量部であることが好ましく、2重量部~5重量部であることがより好ましい。無機塩を添加したラテックスに添加する水溶性高分子の添加量を上記範囲内とすることにより、塩化ビニル系樹脂凝集体の粒子径を1μm~100μmの範囲のような広範囲において、種々のメジアン径の塩化ビニル系樹脂凝集体を作り分けることができる。なお、水溶性高分子の添加量が増加すると、塩化ビニル系樹脂凝集体の粒子径が大きくなる傾向にある。また、水溶性高分子の添加量が増加すると塩化ビニル系樹脂凝集体の形状もより丸い形状に近づく傾向になる。
【0058】
また、後述する実施例に示すように、上述した「水溶性高分子の添加量(添加濃度)」および「せん断応力(例えば、せん断ミキサーの振動数)の条件」を適宜設定することにより、塩化ビニル系樹脂凝集体の粒子径を、好適な範囲(例えば、3μm~100μm)に調整することができる。これにより、塩化ビニル系樹脂凝集体の粒子径をより高精度に制御することが可能となる。上述した「水溶性高分子の添加量(添加濃度)」および「せん断応力(例えば、せん断ミキサーの振動数)の条件」を制御することにより、いずれか一方のみを調整する場合に比べて、塩化ビニル系樹脂凝集体の粒子径の制御できる範囲がより広くなる点で技術的意義がある。
【0059】
<熱処理工程>
熱処理工程は、せん断応力を加える工程にて得られた塩化ビニル系樹脂凝集体に対して、Tg+0℃~Tg+80℃の温度にて熱処理を行う工程である(Tgは、前記塩化ビニル系樹脂粒子を構成する塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度である)。当該構成によれば、塩化ビニル系樹脂粒子同士を融着させることができ、塩化ビニル系樹脂凝集体が崩壊することを防止できるとの利点がある。
【0060】
塩化ビニル系樹脂凝集体が崩壊することをより良く防止するという観点から、熱処理の温度は、Tg+0℃~Tg+80℃が好ましく、Tg+0℃~Tg+60℃がより好ましく、Tg+0℃~Tg+40℃がより好ましく、Tg+0℃~Tg+30℃が最も好ましい。
【0061】
熱処理工程を実施する具体的な方法は、限定されず、適宜、市販の加熱装置を用いて、塩化ビニル系樹脂凝集体に対して熱処理を行えばよい。
【0062】
熱処理工程では、水中に塩化ビニル系樹脂凝集体を分散させた後、当該分散物に対して熱処理を行う方法、あるいは塩化ビニル系樹脂凝集体をそのまま加熱して熱処理を行う方法等を挙げることができる。当該構成によれば、塩化ビニル系樹脂凝集体を均一に加熱することができる。
【0063】
熱処理工程は、熱処理を行った後の塩化ビニル系樹脂凝集体を乾燥させることを包含してもよい。当該構成によれば、塩化ビニル系樹脂凝集体から、不要な溶媒を除去することができる。
【0064】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0065】
以下、実施例および比較例によって本発明の一実施形態をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
(粒子径分布)
粒子径分布は、株式会社堀場製作所のレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950を用いて測定した。
【0067】
(SEM観察)
SEM観察は、株式会社日立ハイテクの電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)S-4800を用いて測定した。
【0068】
(製造例1:塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスの調製)
塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスは、以下の方法を用いて調製した。容器内を予め脱気したジャケット付き300Lステンレス製撹拌機付き耐圧容器に、塩化ビニル単量体100kg、イオン交換水100kg、ラウリル硫酸ナトリウム110g、ナトリウム-ホルムアルデヒド-スルホキシレート(ロンガリット社製)85g、硫酸第一鉄1.5gおよびエチレンジアミン四酢酸-2-ナトリウム2.5gを仕込んだ。その後、混合溶液を49℃に昇温し、予め0.3%(w/w)に調整したtert-ブチルヒドロペルオキシドを混合溶液内に連続追加することにより重合を行った。ここで、単量体から重合体への転化率が5%に到達してから70%に到達するまでの間、10.3wt%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液10.3kgを混合溶液内に連続追加することにより、重合圧力が初期圧(0.67MPa)より0.2MPa低下するまで重合した。その後、混合溶液内に残存する単量体を混合溶液から回収して、塩化ビニル系樹脂粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスにおける塩化ビニル系樹脂粒子のメジアン径は0.09μmであった。
【0069】
(実施例1:バイブロミキサー内の滞留時間)
メジアン径が0.09μmである塩化ビニル系樹脂粒子を含有するラテックスを、塩化ビニル系樹脂粒子が凝集した後の凝集後ラテックスの樹脂固形分濃度が30%になるように純水で希釈して調製した。希釈後のラテックスと、無機塩である硫酸ナトリウム(10%水溶液)と、ポリビニルアルコール(三菱ケミカル社製GH-23、8%水溶液)とを、バイブロミキサー(冷化工業社製、VM-H65-3.7N)に送液し、ミキサー内で混合させた。硫酸ナトリウムは、凝集後ラテックスにおいて0.1重量%となるように添加し、ポリビニルアルコールは、塩化ビニル樹脂100重量部に対して2重量部となるように添加した。当該ラテックスを1時間静置して粒子径分布を測定し、凝集した塩化ビニル系樹脂粒子の体積に対して、残存する未凝集の塩化ビニル系樹脂粒子の体積の割合が、100%であり、完全凝集しない状態であることを確認した。
【0070】
バイブロミキサー内の滞留時間を90~300秒となるように、ラテックス、硫酸ナトリウム、およびポリビニルアルコールを送液し、バイブロミキサーの振動数を20Hzとして、ミキサーの振動によってラテックスにせん断応力を加えて塩化ビニル樹脂凝集体を得た。
【0071】
得られた塩化ビニル樹脂凝集体の粒子径分布を測定した。得られた粒子径分布からメジアン径を算出した。また、SEM観察により、塩化ビニル樹脂凝集体の形状を観察した。結果を
図1および
図2に示す。
【0072】
(実施例2:バイブロミキサー振動数)
実施例1において、バイブロミキサー内の滞留時間を300秒とし、バイブロミキサーの振動数を20、30、および60Hzとして、それぞれ塩化ビニル樹脂凝集体を得た。得られた塩化ビニル樹脂凝集体の粒子径分布を測定し、形状をSEM観察した。
【0073】
(実施例3:ポリビニルアルコールの添加量)
実施例1において、バイブロミキサー内の滞留時間を300秒とし、ポリビニルアルコールの添加量を、塩化ビニル樹脂100重量部に対して0重量部、2重量部、および5重量部として、それぞれ塩化ビニル樹脂凝集体を得た。得られた塩化ビニル樹脂凝集体の粒子径分布を測定し、形状をSEM観察した。
【0074】
(実施例4:バイブロミキサーの振動数およびポリビニルアルコールの添加量)
実施例1において、バイブロミキサー内の滞留時間を300秒とし、バイブロミキサーの振動数を30Hz~60Hzとし、ポリビニルアルコールの添加量を塩化ビニル樹脂100重量部に対して0重量部~5重量部として、それぞれ塩化ビニル樹脂凝集体を得た。得られた塩化ビニル樹脂凝集体の粒子径分布を測定し、形状をSEM観察した。結果を
図3に示す。
【0075】
(実施例5:塩化ビニル樹脂凝集体の形状評価)
実施例1において得られた、バイブロミキサー内の滞留時間が120秒、180秒、および300秒のそれぞれの塩化ビニル樹脂凝集体のSEM画像から、塩化ビニル樹脂凝集体の真球度を算出した。ここにおける真球度は、SEN画像中の100個の塩化ビニル樹脂凝集体について、粒子の中心を通る長径および短径の長さを計測し、長径/短径の比を求め、その平均値として算出した。結果を表1に示す。
【表1】
【0076】
(実施例6:塩化ビニル樹脂凝集体の熱処理)
実施例2において、バイブロミキサーの振動数を60Hzとして得られた塩化ビニル樹脂凝集体(Tg:83℃)を、固形分濃度が5%となるように純水を加えて希釈し、120℃で1時間保持することにより熱処理を行った。
【0077】
得られた熱処理後の塩化ビニル樹脂凝集体を、50℃に設定した定温乾燥機において12時間乾燥させ、乾燥粉体を得た。得られた乾燥粉体に、可塑剤としてフタル酸ジイソノイルを、乾燥粉体100重量部に対して66.7重量部加え、ゾル化させた。得られたゾル中の塩化ビニル樹脂凝集体の粒子径分布を測定した。結果を
図4に示す。
【0078】
(比較例1:熱処理しない塩化ビニル樹脂凝集体)
また、比較例1として、実施例6において熱処理を行わずに同様の方法でゾル化したゾル中の塩化ビニル樹脂凝集体の粒子径分布を測定した。結果を
図4に示す。
【0079】
(試験結果のまとめ)
実施例1により、バイプロミキサー内における滞留時間が長くなるほど、せん断応力が十分に加えられるので、塩化ビニル樹脂凝集体の形状が制御され、より丸い形状の塩化ビニル樹脂凝集体が得られることが明らかになった。
【0080】
実施例2により、バイプロミキサーの振動数が大きくなるほど、塩化ビニル樹脂凝集体の粒子径が小さくなることが明らかになった。
【0081】
より具体的に、(1)振動数が60Hzである場合には、塩化ビニル樹脂凝集体のメジアン径は10μmであるとともに、塩化ビニル樹脂凝集体の形状は略真球であり、(2)振動数が30Hzである場合には、塩化ビニル樹脂凝集体のメジアン径は12μmであるとともに、塩化ビニル樹脂凝集体の形状は略真球であり、(3)振動数が20Hzである場合には、塩化ビニル樹脂凝集体のメジアン径は42μmであるとともに、塩化ビニル樹脂凝集体の形状は略真球であった。
【0082】
実施例3により、ポリビニルアルコールの添加量が増えるほど、塩化ビニル樹脂凝集体の粒子径が大きくなることが明らかになった。
【0083】
より具体的に、(1)ポリビニルアルコールの添加量が塩化ビニル樹脂100重量部に対して0重量部である場合には、塩化ビニル樹脂凝集体のメジアン径は9μmであるとともに、塩化ビニル樹脂凝集体の形状は略真球であり、(2)ポリビニルアルコールの添加量が塩化ビニル樹脂100重量部に対して2重量部である場合には、塩化ビニル樹脂凝集体のメジアン径は10μmであるとともに、塩化ビニル樹脂凝集体の形状は略真球であり、(3)ポリビニルアルコールの添加量が塩化ビニル樹脂100重量部に対して5重量部である場合には、塩化ビニル樹脂凝集体のメジアン径は13μmであるとともに、塩化ビニル樹脂凝集体の形状は略真球であった。
【0084】
実施例4により、バイブロミキサーの振動数およびポリビニルアルコールの添加量を調節することで、例えば、3μm~60μmのような広範囲において、種々のメジアン径の塩化ビニル樹脂凝集体を作り分け可能であることが明らかになった。すなわち、実施例4により、実施例2のようにバイプロミキサーの振動数のみを調整する場合や、実施例3のようにポリビニルアルコールの添加量のみを調整する場合と比較して、これらの両方を調整することで、制御可能な粒子径の範囲が広くなることが明らかになった。
【0085】
実施例5により、バイプロミキサー内における滞留時間が長くなるほど、せん断応力が十分に加えられるので、塩化ビニル樹脂凝集体の真球度が1に近づき、より丸い形状の塩化ビニル樹脂凝集体が得られることが明らかになった。
【0086】
実施例6により、ペーストゾル化の前後において塩化ビニル樹脂凝集体のメジアン径が変化しないこと、換言すれば、加熱処理を行うと、ペースト化時に塩化ビニル樹脂凝集体が崩壊して塩化ビニル樹脂粒子が生じることを防ぐことができること、が明らかになった。
【0087】
比較例1により、加熱処理を行わないと、ペースト化の前後において塩化ビニル樹脂凝集体のメジアン径が変化すること、換言すれば、加熱処理を行わないと、ペースト化時に塩化ビニル樹脂凝集体が崩壊して塩化ビニル樹脂粒子が生じること、が明らかになった。