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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005959
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】流路型デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/10 20060101AFI20230111BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230111BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20230111BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20230111BHJP
   G01M 3/16 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G01N27/10
C12M1/34 B
C12M1/42
G01N37/00 101
G01M3/16 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108281
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(71)【出願人】
【識別番号】515279762
【氏名又は名称】株式会社AFIテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】浦川 哲
(72)【発明者】
【氏名】大代 京一
【テーマコード(参考)】
2G060
2G067
4B029
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AE11
2G060AF03
2G060AF06
2G060AG10
2G060FA01
2G060FA10
2G060FA15
2G060HC15
2G060KA05
2G067AA21
2G067BB02
2G067CC01
2G067DD23
2G067DD24
4B029AA07
4B029CC01
4B029FA15
4B029GB10
(57)【要約】
【課題】流路からの液漏れを有効に検出することができる技術を提供する。
【解決手段】流路型デバイスは、基板21と、流路カバー25と、一対の検出用電極41a,41bとを備える。流路カバー25は、基板21に取り付けられている。流路カバー25は、基板21とともに、液体を流通させることが可能な流路31を形成する。検出用電極41a,41bは、基板21と流路カバー25との間に配置されている。検出用電極41a,41bは、基板21の上面211において、流路31よりも外側に配置されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路型デバイスであって、
基板と、
前記基板に取り付けられており、前記基板とともに、液体を流通させることが可能な流路を形成する流路カバーと、
前記基板と前記流路カバーとの間に配置されており、前記基板の上面において、前記流路よりも外側に配置されている一対の検出用電極と、
を備える、流路型デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の流路型デバイスであって、
前記一対の検出用電極が、前記流路に沿って配置されている、流路型デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の流路型デバイスであって、
前記流路は、液体を注入するための開口を有しており、
前記一対の検出用電極が、前記開口の周囲に配置されている、流路型デバイス。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流路型デバイスであって、
前記一対の検出用電極は、櫛歯状電極をそれぞれ有し、
前記一対の検出用電極の一方の前記櫛歯状電極が、前記一対の検出用電極の他方の前記櫛歯状電極とかみ合うように配置されている、流路型デバイス。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の流路型デバイスであって、
前記流路は、
第1方向に延びる第1流路と、
前記第1方向と交差する方向に延びており、前記第1流路と合流する第2流路とを有し、
前記一対の検出用電極が、前記第1流路と前記第2流路との合流地点の周囲であって、前記第1流路と前記第2流路との間に配置されている、流路型デバイス。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の流路型デバイスであって、
前記基板と前記流路カバーとの間に配置され、少なくとも一部が前記流路と重なる一対の主電極、
をさらに備える、流路型デバイス。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の流路型デバイスであって、
前記一対の検出用電極間の抵抗成分を測定する測定部、
をさらに備える、流路型デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の流路型デバイスであって、
前記一対の検出用電極間に交流電圧を印加する交流電源、
をさらに備える、流路型デバイス。
【請求項9】
請求項8に記載の流路型デバイスであって、
前記交流電源は、前記一対の検出用電極間に100Hz以下の交流電圧を印加可能である、流路型デバイス。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の流路型デバイスであって、
前記流路に液体を供給する送液ポンプ、
をさらに備える、流路型デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路型デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ライフサイエンス分野においては、流路型デバイス、特に、マイクロスケールの流路型デバイスが注目されている。流路型デバイスは、例えばマイクロリアクターなどの微小空間での化学合成を行うものから、微小電極を複合した遺伝子解析を行うもの、電気的に細胞・菌などを分離して捕集するものなど、様々な用途で利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1のマイクロ流路型デバイスは、マイクロスケールの溝が形成された流路カバーと、基板とで構成されている。流路カバーは、例えば、PDMS(ジメチルポリシロキサン)で構成されている。基板の表面には、微小電極が配置されている。上記溝が形成された流路カバーが基板に接着されることによって、基板上に流路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-134020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、流路に液体を注入した際、流路内に異物が混入することによって、流路が詰まる場合がある。流路が詰まると、流路内の圧力増加によって、流路カバーが基板から剥がれ、液漏れが発生する場合がある。液漏れが発生した場合、流路の送液性能(流速または流量)が低下し得る。また、その液漏れ箇所が上記微小電極付近である場合には、電流リークが発生したり、電極性能(例えば、誘電泳動力)自体の低下が発生し得る。このため、流路からの液漏れを有効に検出する技術が求められている。
【0006】
本発明の目的は、流路からの液漏れを有効に検出することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1態様は、流路型デバイスであって、基板と、前記基板に取り付けられており、前記基板とともに、液体を流通させることが可能な流路を形成する流路カバーと、前記基板と前記流路カバーとの間に配置されており、前記基板の上面において、前記流路よりも外側に配置されている一対の検出用電極とを備える。
【0008】
第2態様は、第1態様の流路型デバイスであって、前記一対の検出用電極が、前記流路に沿って配置されている。
【0009】
第3態様は、第1態様または第2態様の流路型デバイスであって、前記流路は、液体を注入するための開口を有しており、前記一対の検出用電極が、前記開口の周囲に配置されている。
【0010】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか1つの流路型デバイスであって、前記一対の検出用電極は、櫛歯状電極をそれぞれ有し、前記一対の検出用電極の一方の前記櫛歯状電極が、前記一対の検出用電極の他方の前記櫛歯状電極とかみ合うように配置されている。
【0011】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか1つの流路型デバイスであって、前記流路は、第1方向に延びる第1流路と、前記第1方向と交差する方向に延びており、前記第1流路と合流する第2流路とを有し、前記一対の検出用電極が、前記第1流路と前記第2流路との合流地点の周囲であって、前記第1流路と前記第2流路との間に配置されている。
【0012】
第6態様は、第1態様から第5態様のいずれか1つの流路型デバイスであって、前記基板と前記流路カバーとの間に配置され、少なくとも一部が前記流路と重なる一対の主電極をさらに備える。
【0013】
第7態様は、第1態様から第6態様のいずれか1つの流路型デバイスであって、前記一対の検出用電極間の抵抗成分を測定する測定部をさらに備える。
【0014】
第8態様は、第7態様の流路型デバイスであって、前記一対の検出用電極間に交流電圧を印加する交流電源をさらに備える。
【0015】
第9態様は、第8態様の流路型デバイスであって、前記交流電源は、前記一対の検出用電極間に100Hz以下の交流電圧を印加可能である。
【0016】
第10態様は、第1態様から第9態様のいずれか1つの流路型デバイスであって、前記流路に液体を供給する送液ポンプをさらに備える。
【発明の効果】
【0017】
第1態様の流路型デバイスによると、一対の検出用電極が、流路よりも外側に配置されている。このため、流路に注入された液体が流路カバーと基板との間に漏れた場合に、その液漏れを一対の検出用電極によって電気的に検出できる。
【0018】
第2態様の流路型デバイスによると、一対の検出用電極が流路に沿って配置されていることにより、流路からの液漏れを検出できる。
【0019】
第3態様の流路型デバイスによると、内部圧力が高くなる開口の周囲に一対の検出用電極を配置することによって、開口の周囲で発生した液漏れを検出できる。
【0020】
第4態様の流路型デバイスによると、検出用電極が櫛歯状電極を有することにより、電圧を印加した場合における、電極上への液体の到達の検出感度を向上させることができる。これにより、液漏れを適切に検出できる。
【0021】
第5態様の流路型デバイスによると、内部圧力増加による液漏れが懸念される第1流路と第2流路との合流地点において、液漏れを適切に検出できる。
の液漏れを検出できる。
【0022】
第6態様の流路型デバイスによると、一対の主電極によって、流路内に電界を発生させることができる。したがって、流路に注入された液体中の対象物に、引力または斥力を作用させることができる。
【0023】
第7態様の流路型デバイスによると、一対の検出用電極間の抵抗成分の変動に基づいて、液漏れの発生を検出できる。
【0024】
第8態様の流路型デバイスによると、一対の検出用電極間に交流電圧を印加することによって、抵抗成分を測定できる。
【0025】
第9態様の流路型デバイスによると、低周波帯の交流電圧を印加することによって、低周波側で現れる液体由来のレジスタンスを早期に検出できる。
【0026】
第10態様の流路型デバイスによると、送液ポンプによって流路に液体を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る流路型デバイスを示す平面図である。
図2図1に示すA-A線に沿う位置における流路型デバイスの概略断面図である。
図3図1に示す流路型デバイスの供給口とその周辺を示す部分拡大平面図である。
図4図3に示すB-B線に沿う位置における流路型デバイスの概略断面図である。
図5図1に示す流路型デバイスの分離流路とその周辺を示す部分拡大平面図である。
図6図5に示すC-C線に沿う位置における流路型デバイスの概略断面図である。
図7】インピーダンスの測定例を示す図である。
図8】第2実施形態に係る流路型デバイスを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0029】
<1. 第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る流路型デバイス1を示す平面図である。図2は、図1に示すA-A線に沿う位置における流路型デバイス1の概略断面図である。流路型デバイス1は、試料である液体に含まれる回収対象を電気的に分離して捕集する装置である。液体は、例えば、血液などの体液や、生理食塩水などが想定される。また、回収対象としては、液体中に存在する物質であって、具体的には、細胞、微生物、タンパク質、核酸などが想定される。
【0030】
図1に示すように、流路型デバイス1は、基板21と、流路カバー25と、一対の検出用電極41a,41bを備える。また、流路型デバイス1は、一対の主電極33a,33bを備える。
【0031】
基板21は、例えば石英ガラス製である。ただし、基板21の材料は、石英ガラスに限定されるものではなく、適宜選択し得る。基板21は、略矩形の平板状を有している。ただし、基板21の形状は、適宜変更し得る。
【0032】
流路カバー25は、例えばPDMS(ジメチルポリシロキサン)により形成される。流路カバー25は、例えば略直方体状である。図2に示すように、流路カバー25は、下面に、細長に延びる凹状の流路溝251を有する。流路溝251の幅は、例えばマイクロスケールであって、1mm以下である。図1および図2に示すように、流路カバー25の流路溝251は、基板21とともに、流路31を形成する。
【0033】
図1に示すように、流路31は、分離流路311と、回収流路313a,313bとを有する。分離流路311および回収流路313a,313bは、直線状に延びる管状の流路である。分離流路311の一端は、供給口315に接続されている。供給口315は、流路31に液体を注入するための開口である。図1に示すように、供給口315は、平面視において円形を有する。供給口315は、流路カバー25に設けられた円形の貫通孔によって構成されている。流路31に液体を流す場合、供給口315に供給チューブ316が接続される。
【0034】
流路31は、分離流路311の他端において、回収流路313aと、回収流路313bとに分岐している。回収流路313aは、分離流路311を流れた回収対象を回収するための流路である。回収流路313bは、分離流路311を流れた非回収対象を回収するための流路である。回収流路313bは、回収流路313aとは異なる方向に延びている。回収流路313a,313bの各一端は、分離流路311の他端に接続されている。回収流路313aの他端は回収口317aに、回収流路313bの他端は回収口317bに、それぞれ接続されている。回収口317a,317bは、回収流路313a,313bを流れた液体を回収するための開口である。回収口317a,317bは、流路カバー25に設けられた貫通孔によってそれぞれ構成されている。回収口317a,317bには、回収チューブ318a,318bがそれぞれ接続される。
【0035】
図2に示すように、主電極33a,33bは、基板21の上面211に配置されている。主電極33a,33bの上面は、絶縁保護膜23で覆われている。絶縁保護膜23は、例えば酸化膜(シリコン酸化膜(SiOx)など)である。なお、絶縁保護膜23は、窒化膜(シリコン窒化膜など)であってもよい。主電極33a,33bを絶縁保護膜23で覆うことによって、主電極33a,33bを絶縁しつつ保護できる。
【0036】
図2に示すように、流路カバー25は、絶縁保護膜23の上面に配置されている。流路カバー25の流路溝251が、基板21(より詳細には、絶縁保護膜23)で塞がれる。これにより、基板21の上面211(一方側の主面)に流路31が配置される。
【0037】
図2に示すように、主電極33a,33bは、基板21と流路カバー25との間に配置されている。主電極33a,33bは、第1櫛歯状電極331a,331bをそれぞれ有する。第1櫛歯状電極331a,331bは、流路31の分離流路311と上下に重なるように配置されている。第1櫛歯状電極331a,331bは、等間隔に配置された複数の第1細線部333a,333bをそれぞれ有する。
【0038】
図1に示すように、第1細線部333a,333bは、分離流路311の延びる方向と交差する方向に延びている。具体的には、第1細線部333a,333bは、分離流路311の延びる方向に対して例えば10°以上60°以下の鋭角な角度をなすように、分離流路311と斜めに交差する方向に延びている。
【0039】
図2に示すように、第1細線部333a,333bは、分離流路311の延びる方向において等間隔に配置されている。また、分離流路311の延びる方向において、第1細線部333aと第1細線部333bとが、間隔をあけて1本ずつ交互に配置されている。第1細線部333aおよび第1細線部333bは、L/S(Line&Space)=100μm/50μmとなるように配置されている。なお、第1細線部333a,333bのL/Sは、任意に設定し得る。
【0040】
<検出用電極>
図3は、図1に示す流路型デバイス1の供給口315とその周辺を示す部分拡大平面図である。図4は、図3に示すB-B線に沿う位置における流路型デバイス1の概略断面図である。
【0041】
図3に示すように、検出用電極41a,41bは、流路31の供給口315(開口)の周囲に配置されている。また、検出用電極41a,41bは、流路31の供給口315の縁に沿って配置されている。
【0042】
検出用電極41a,41bは、第2櫛歯状電極411a,411bをそれぞれ有する。第2櫛歯状電極411a,411bは、供給口315に沿って配置されており、供給口315の縁に沿って円弧状に湾曲した形状を有する。第2櫛歯状電極411a,411bは、互いに間隔をあけつつ、互いにかみ合うように配置されている。
【0043】
より詳細には、第2櫛歯状電極411a,411bは、複数の第2細線部413a,413bをそれぞれ有する。複数の第2細線部413a,413bは、流路31の供給口315のまわりに、等間隔に配置されている。また、第2細線部413a,と第2細線部413bとは、供給口315の縁に沿って、1本ずつ交互に配列されている。第2細線部413a,と第2細線部413bは、例えばL/S=100μm/50μmとなるように、交互に配置されている。なお、第2細線部413a,413bのL/Sは、任意に設定し得る。
【0044】
図4に示すように、検出用電極41a,41bは、基板21の上面211に配置されている。検出用電極41a,41bは、基板21と流路カバー25との間に配置されている。また、検出用電極41a,41bは、基板21の上面211において、流路31(特に、供給口315)よりも外側に配置されている。すなわち、検出用電極41a,41bは、流路31とは上下に重ならないように配置されている。
【0045】
図1に示すように、流路型デバイス1は、一対の検出用電極41c,41dを2組備える。2組の検出用電極41c,41dのうち、1組は、分離流路311に対して、分離流路311の延びる方向に垂直な幅方向の一方側に配置されており、もう1組は、分離流路311に対して幅方向の他方側に配置されている。
【0046】
図5は、図1に示す流路型デバイス1の分離流路311とその周辺を示す部分拡大平面図である。また、図6は、図5に示すC-C線に沿う位置における流路型デバイス1の概略断面図である。図5に示すように、検出用電極41c,41dは、櫛歯状を有する。より具体的には、検出用電極41c,41dは、複数の第2細線部413c,413dをそれぞれ有する。第2細線部413c,413dは、分離流路311の延びる方向に沿って延びている。第2細線部413cと第2細線部413dは、幅方向に1本ずつ交互に配列されている。第2細線部413cと第2細線部413dは、例えばL/S=100μm/50μmとなるように、交互に配置されている。なお、第2細線部413c,413dのL/Sは、任意に設定し得る。
【0047】
図6に示すように、検出用電極41c,41dは、基板21の上面211に配置されている。検出用電極41c,41dは、基板21と流路カバー25との間に配置されている。また、検出用電極41c,41dは、基板21の上面211において、分離流路311よりも外側に配置されている。すなわち、検出用電極41c,41dは、分離流路311とは上下に重ならないように配置されている。
【0048】
なお、検出用電極41c,41dの形状は、図5に示すものに限定されない。例えば、第2細線部413c,413dが、分離流路311に沿って延びていることは必須ではなく、分離流路311の延びる方向と交差する方向(例えば、幅方向)に延びていてもよい。また、検出用電極41c,41dが櫛歯状を有することは必須ではなく、適宜変更し得る。
【0049】
流路31からの液漏れを早期に検出するため、検出用電極41c,41dと流路31(分離流路311)との間の距離はできるだけ小さいことが望ましい。基板21に対して流路カバー25を貼り合わせる際の、流路カバー25の位置決め精度を考慮して、検出用電極41c,41dと流路31との間の距離は、100μm以上200μm以下であることが好ましい。これと同様に、検出用電極41a,41bと、流路31の供給口315との間の距離についても、100μm以上200m以下とすることが好ましい。
【0050】
<流路型デバイス1の製造方法について>
流路型デバイス1の製造方法について説明する。まず、真空蒸着によって、基板21の上面211に所定の厚さ(例えば、100nm)を有する電極金属の膜が成膜される。そして、フォトリソグラフィとウェットエッチングにより、電極金属の膜に所定のパターンが形成される。このパターンの形成によって、基板21の上面211に、主電極33a,33bと、検出用電極41a,41bと、2組の検出用電極41c,41dとが、それぞれ形成される。電極のパターン形成の後、絶縁保護膜23の形成が行われる。具体的には、スパッタリングにより、基板21の上面211および電極(主電極33a,33b、検出用電極41a,41b,41c,41d)の上面に、所定の厚さ(例えば、200nm)の絶縁保護膜23であるシリコン酸化膜(SiOx)が成膜される。
【0051】
絶縁保護膜23が形成されると、フォトリソグラフィとドライエッチングとにより、主電極33a,33b、検出用電極41a,41b,41c,41dと電気的に接続されるパッド部が基板21上にそれぞれ形成される。そして、流路カバー25が、基板21に取り付けられる。具体的には、流路カバー25と、各電極が形成された基板21とがプラズマ処理され、両者が貼り合わされる。流路カバー25には、流路31に対応する流路溝251が形成されている。したがって、流路カバー25の取り付けによって、基板21上に流路31が形成される。流路カバー25の幅は、基板21の幅よりも小さい(図1)。このため、各電極のパッド部は、流路カバー25の外側に露出される。したがって、流路カバー25に妨げられることなく、パッド部を介して各電極を外部機器と電気的に接続できる。
【0052】
<流路型デバイス1の使用例>
次に、流路型デバイス1を使用例について説明する。図1に示すように、供給口315に供給チューブ316が接続され、回収口317a,317bに回収チューブ318a,318bがそれぞれ接続される。供給チューブ316は、回収対象を含む液体(試料)の供給源に接続されている。
【0053】
供給チューブ316の途中には、供給ポンプ35(送液ポンプ)が取り付けられている。また、回収チューブ318a,318bには、回収ポンプ37a,37bがそれぞれ取り付けられている。供給ポンプ35および回収ポンプ37a,37bは、例えばチューブポンプ(ペリスタポンプ)である。供給ポンプ35は、分離流路311に液体を供給する。回収ポンプ37a,37bは、回収流路313a,313bを流れた液体を回収する。
【0054】
また、図1に示すように、主電極33aに電源部13が接続されるとともに、主電極33bが接地される。そして、電源部13が、主電極33a,33b間に、回収対象に応じた交流電圧を印加する。回収対象に応じた交流電圧は、具体的には、回収対象に対して特異的に誘電泳動力(引力)が作用する電場を発生させる周波数の電圧であって、回収対象を破壊しない程度の大きさの電圧である。
【0055】
主電極33a,33b間に電圧が印加されると、流路31に注入された液体中の回収対象が、主電極33a,33bの第1細線部333に引きつけられながら、流路31を流れることにより、回収流路313aへ回収される。これに対して、誘電泳動力が作用しないか、もしくは微弱な誘電泳動力しか作用しない非回収対象は、回収流路313bへ回収される。
【0056】
検出用電極41a,41bによって液漏れを検出する場合、図3に示すように、検出用電極41a,41bに交流電圧を印加する電源部13が接続される。電源部13が印加する交流電圧は、例えば周波数が100Hz以下(好ましくは、10Hz)、振幅が1V以下(好ましくは、0.3V)である。なお、交流電圧の条件は、これに限定されるものではなく、任意に設定し得る。
【0057】
また、図1に示すように、検出用電極41a,41bには、測定部15が接続される。測定部15は、検出用電極41a,41b間を流れる電流と、検出用電極41a,41b間の電圧とを検出することにより、抵抗成分を測定する。抵抗成分は、具体的にはレジスタンス、インピーダンス、またはそれらからなるインピーダンスである。測定部15は、検出用電極41c,41dにも電気的に接続されており、検出用電極41c,41d間のインピーダンスを測定することが可能である。
【0058】
<インピーダンス測定>
図7は、インピーダンスの測定例を示す図である。図7に示すインピーダンスの測定は、送液時に液漏れを起こすように構成された流路型デバイス1を用いて行われたものである。
【0059】
図7中右側に示すグラフG10は、検出用電極41a,41bに印加される交流電圧の周波数を10Hz、振幅を0.3Vとしたときの、時間(横軸)とインピーダンス(縦軸)の関係を示している。図7に示す時刻T1は、送液前(すなわち、液漏れが起きる前)の時間であり、時刻T2~T5は、送液開始後の液漏れが発生した段階の時間に相当する。
【0060】
図7中右側のグラフG10が示すように、時刻T1における初期インピーダンスは、高抵抗(例えば、1GΩ)である。しかしながら、液漏れが発生する時刻T2前後で、インピーダンスが急速に低下している。そして、インピーダンスは、時刻T5以降には、最終的に数百kΩに達している。グラフG10から、検出用電極41a,41b間のインピーダンスの低下を検出することによって、液漏れを適切に検出できることが分かる。
【0061】
図7中左側のグラフG1~G5は、時刻T1~T5における、交流電圧の周波数(横軸)と測定されたインピーダンス(縦軸)の関係をそれぞれ示している。グラフG1~G5が示すように、液漏れの発生により、インピーダンス特性もそれぞれ著しく変化する。例えば、グラフG1が示すように、液漏れ前では、インピーダンスは、略斜線形状を示している。これは、インピーダンスの大部分がリアクタンスで構成されていることを示している。すなわち、時刻T1に測定されるインピーダンスは、検出用電極41a,41bの直上の流路カバー25および検出用電極41a,41bの直下の基板21の充電性能で構成されていると考えられる。
【0062】
グラフG2が示すように、液漏れが発生した初期段階(時刻T2)では、インピーダンスに水平形状が現れている。これは、検出用電極41a,41b(第2櫛歯状電極411a,411b)上に液体が到達したことを示している。このインピーダンスの水平形状は、主にレジスタンスによって構成される。レジスタンスの大きさは、液体の抵抗や液体を内包する流路内容積によって上下し得る。さらに、グラフG3~G5が示すように、時間が経過するに連れて、インピーダンスの水平部分の大きさ(レジスタンス)が低下している。これは、液漏れしている箇所(面積)増大していることを示している。
【0063】
このように、検出用電極41a,41bを用いてインピーダンスを測定することによって、流路31(供給口315)からの液漏れを電気的に検出できる。また、検出用電極41a,41bと同様に、検出用電極41c,41dについても、インピーダンスを測定することによって、流路31(分離流路311)からの液漏れを検出可能である。流路型デバイス1によれば、液漏れを有効に検出できるため、流路型デバイス1を用いた処理(具体的には、回収対象の分離および捕集)において、液漏れが検出されなかった場合には、処理結果の信頼性を保証できる。
【0064】
なお、測定部15は、液漏れを判定する判定部を備えていてもよい。判定部は、例えば、測定されたインピーダンスが所定の閾値Th1(図7右側参照)よりも小さくなったかを判定することによって、液漏れの発生を判定してもよい。また、測定部15は、判定部によって液漏れが発生したと判定した場合、供給ポンプ35の動作を停止させてもよい。これにより、液漏れが発生した場合に、試料が流路31に供給されることを停止できるため、試料が無駄に消費されることを抑制できる。
【0065】
<効果>
以上のように、流路型デバイス1によると、検出用電極41a,41b、または、検出用電極41c,41dが、流路31の外側に配置されている。このため、流路31内の液体が基板21と流路カバー25との間に漏れた場合に、その液漏れを検出用電極41a,41b、または、検出用電極41c,41dによって電気的に検出できる。
【0066】
また、検出用電極41a,41bが櫛歯状電極411a,411bを有することにより、検出用電極41a,41bに電圧を印加した場合における、検出用電極41a,41b上への液体の到達の検出感度を向上させることができる。これにより、液漏れを適切に検出できる。
【0067】
また、図1および図3に示すように、検出用電極41a,41bの第2櫛歯状電極411a,411bが流路31の供給口315に沿って配置されている。このため、供給口315からの液漏れを有効に検出できる。供給口315は、供給ポンプ35による送液時に内部圧力が増加する。このため、供給口315の周辺は、流路カバー25が基板21から剥がれやすい領域であるため、液漏れが懸念される。このような領域に検出用電極41a,41b(第2櫛歯状電極411a,411b)を配置することによって、液漏れを早期かつ適切に検出できる。
【0068】
また、図1および図5に示すように、検出用電極41c,41dは、流路31の分離流路311の延びる方向に沿って配置されている。このため、分離流路311に沿った長い範囲で、液漏れを検出できる。
【0069】
<2. 第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、以降の説明において、既に説明した要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号又はアルファベット文字を追加した符号を付して、詳細な説明を省略する場合がある。
【0070】
図8は、第2実施形態に係る流路型デバイス1aを示す平面図である。流路型デバイス1aは、基板21と流路カバー25aとを有する。流路カバー25aは、基板21とともに、流路31aを形成する。流路31aは、一対の供給流路51a,51b(第1流路および第2流路)と、1つの回収流路53とを有する。供給流路51a,51bの一端は、供給口511a,511bにそれぞれ接続されている。供給口511a,511bは、供給流路51a,51bに液体をそれぞれ供給するための開口である。供給流路51a,51bの他端は、合流地点55にて合流し、回収流路53の一端に接続されている。回収流路53の他端は、回収口531に接続されている。回収口531は、回収流路53を流れた液体を回収するための開口である。供給口511a,511bに供給された各液体は、それぞれ供給流路51a,51bを流れたあと、合流地点55にて合流する。そして、回収流路53を流れた後に回収口531から回収される。
【0071】
図8に示すように、流路型デバイス1aは、一対の検出用電極41e,41fを備える。検出用電極41e,41fは、例えば、供給流路51a,51bの間に配置されている。より詳細には、合流地点55を中心とする周方向において、供給流路51a,51bの間に配置されている。検出用電極41e,41fは、図3に示す検出用電極41a,41bまたは図5に示す検出用電極41c,41dと同様に、櫛歯状を有する一対の電極である。
【0072】
流路31aの合流地点55は、供給流路51a,51bを流れた液体が合流することによって、流路内部の圧力が高く、液漏れが発生しやすい。このため、供給流路51a,51bの間に検出用電極41e,41fを配置し、そして検出用電極41e,41f間のインピーダンスを測定することによって、液漏れを早期に検出できる。
【0073】
図8に示すように、上記周方向において、供給流路51bと回収流路53との間、および、回収流路53と供給流路51aとの間に、検出用電極41e,41fがそれぞれ配置されていてもよい。このように、合流地点55の周囲に複数組の検出用電極41e,41fを配置することによって、合流地点55およびその周辺での液漏れを早期に検出できる。
【0074】
図8に示すように、流路型デバイス1aは、供給口511a,511bの周囲に、検出用電極41a,41bをそれぞれ備えていてもよい。これにより、供給口511a,511bにおける液漏れを有効に検出できる。
【0075】
<3. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0076】
例えば、液体の漏出を検出する検出用電極41a,41bの部分が、第2櫛歯状電極411a,411bのように櫛歯状であることは必須ではない。検出用電極41a,41bは、櫛歯状とは異なる形状の電極部分を有していてもよい。
【0077】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0078】
1,1a 流路型デバイス
13 電源部
15 測定部
21 基板
211 上面(主面)
23 絶縁保護膜
25,25a 流路カバー
251 流路溝
31,31a 流路
311 分離流路
315 供給口(開口)
35 供給ポンプ(送液ポンプ)
411a,411b 第2櫛歯状電極
413a,413b 第2細線部
413c,413d 第2細線部
41a,41b 検出用電極
41c,41d 検出用電極
41e,41f 検出用電極
51a,51b 供給流路(第1流路、第2流路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8