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特開2023-59595熱間プレス成形品、テーラードブランク、熱間プレス成形品の製造方法、及びテーラードブランクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059595
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】熱間プレス成形品、テーラードブランク、熱間プレス成形品の製造方法、及びテーラードブランクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/20 20060101AFI20230420BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20230420BHJP
   B21D 22/26 20060101ALI20230420BHJP
   C22C 21/02 20060101ALN20230420BHJP
   C22C 38/58 20060101ALN20230420BHJP
   C21D 9/00 20060101ALN20230420BHJP
   C21D 1/18 20060101ALN20230420BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20230420BHJP
【FI】
B21D22/20 G
B32B15/01 B
B21D22/26 D
B21D22/20 H
C22C21/02
C22C38/58
C21D9/00 A
C21D1/18 C
C22C38/00 301T
C22C38/00 301W
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169691
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】巽 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利哉
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 幸一
【テーマコード(参考)】
4E137
4F100
4K042
【Fターム(参考)】
4E137AA08
4E137BA01
4E137BA09
4E137BB01
4E137BC02
4E137BC07
4E137CA09
4E137CA21
4E137CA26
4E137DA03
4E137DA10
4E137EA01
4E137EA25
4E137FA10
4E137FA15
4E137FA16
4E137FA25
4E137FA26
4E137FA27
4E137GA03
4E137GA15
4E137GB01
4F100AB01B
4F100AB03A
4F100AB03C
4F100AB10A
4F100AB10B
4F100AB10C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DB02A
4F100DB02C
4F100EH71A
4F100EH71C
4F100EJ17
4F100JK12A
4F100JK12C
4F100YY00B
4K042AA24
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA02
4K042BA03
4K042BA05
4K042BA06
4K042BA11
4K042CA02
4K042CA03
4K042CA05
4K042CA06
4K042CA08
4K042CA09
4K042CA10
4K042CA12
4K042CA13
4K042CA14
4K042DA01
4K042DC01
4K042DC02
4K042DC03
4K042DD01
4K042DD02
4K042DD04
4K042DE02
4K042DE05
4K042DE06
(57)【要約】
【課題】溶接金属部で破断するのを抑制した熱間プレス成形品を提供する。
【解決手段】第1部材10Aと、第1部材と突合う第2部材30Aと、第1部材と第2部材とを接合する溶接金属部50Aとを備える熱間プレス成形品1Aであって、熱間プレス成形品を平面状に展開し、溶接金属部の近傍部分における長手方向Xを規定したときに、第2部第1片36の第2部第1稜線41Aとは反対側の熱間プレス成形品の外縁36dと溶接金属部との第1交点Q1に連なる部分と、第1交点を通る長手方向との二つのなす角θ11と、第2部第2片37の第2部第1稜線とは反対側の熱間プレス成形品の外縁37dと溶接金属部との第2交点Q2に連なる部分と第2交点を通る長手方向の二つのなす角θ12と、第2部第1稜線と溶接金属部との第3交点Q3に連なる部分と、第3交点を通る長手方向との四つのなす角θ21のうち、少なくとも一つのなす角が80°以下である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、
端部が前記第1部材の端部と突合うように配置された第2部材と、
前記第1部材の前記端部と前記第2部材の前記端部とを接合する溶接金属部と、
を備える熱間プレス成形品であって、
前記第1部材及び前記第2部材のうち、少なくとも一方がアルミニウムめっき部材であり、
前記第1部材は、
第1部第1片と、
前記第1部第1片と第1部第1稜線を介して連結された第1部第2片と、
を有し、
前記第2部材は、
前記第1部第1片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第1片と、
前記第1部第1稜線と前記溶接金属部を介して接合された第2部第1稜線と、
前記第2部第1片と前記第2部第1稜線を介して連結され、前記第1部第2片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第2片と、
を有し、
前記熱間プレス成形品を平面状に展開したときにおける、前記溶接金属部の近傍部分についての前記熱間プレス成形品の長手方向を規定し、
前記熱間プレス成形品を平面状に展開して前記第2部材の厚さ方向に見たときに、
前記第2部第1片を基準としたときの、前記第2部第1片の前記第2部第1稜線とは反対側の前記熱間プレス成形品の外縁と前記溶接金属部との交点である第1交点において、前記溶接金属部の前記第1交点に連なる部分と、前記第1交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、
前記第2部第2片を基準としたときの、前記第2部第2片の前記第2部第1稜線とは反対側の前記熱間プレス成形品の外縁と前記溶接金属部との交点である第2交点において、前記溶接金属部の前記第2交点に連なる部分と、前記第2交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、
前記第2部第1稜線と前記溶接金属部との交点である第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角と、を含む八つの前記なす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下である、熱間プレス成形品。
【請求項2】
前記熱間プレス成形品は、前記溶接金属部、前記溶接金属部に連なる前記第1部材の少なくとも一部、及び前記溶接金属部に連なる前記第2部材の少なくとも一部を有し、所定の方向に延びる軸部を備え、
前記長手方向は前記所定の方向に相当する、請求項1に記載の熱間プレス成形品。
【請求項3】
(1)式を満たす、請求項1又は2に記載の熱間プレス成形品。
<T<T ・・(1)
ただし、T:前記第1部材の厚さ(mm)、H:前記第1部材のビッカース硬さ(HV)、T:前記第2部材の厚さ(mm)、H:前記第2部材のビッカース硬さ(HV)、T:前記溶接金属部の厚さ(前記厚さT及び前記厚さTのうち、薄い方の厚さ)(mm)、H:前記溶接金属部のビッカース硬さ(HV)である。
【請求項4】
前記熱間プレス成形品を平面状に展開して前記第2部材の厚さ方向に見たときに、
前記第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が60°以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱間プレス成形品。
【請求項5】
前記溶接金属部は、溶接始端及び溶接終端を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱間プレス成形品。
【請求項6】
前記溶接金属部が含有するアルミニウムの濃度が、0.3質量%以上2.5質量%以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱間プレス成形品。
【請求項7】
前記熱間プレス成形品を平面状に展開したときにおける、前記溶接金属部は折線状又は曲線状である、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱間プレス成形品。
【請求項8】
前記第1部材は、
前記第1部第1片とは前記第1部第1稜線を介して連結され、前記第1部第2片とは第1部第2稜線を介して連結された第1部第3片を有し、
前記第2部材は、
前記第1部第2稜線と前記溶接金属部を介して接合された第2部第2稜線と、
前記第2部第1片とは前記第2部第1稜線を介して連結され、前記第2部第2片とは前記第2部第2稜線を介して連結され、前記第1部第3片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第3片と、を有し、
前記熱間プレス成形品を平面状に展開して前記厚さ方向に見たときに、
前記第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下であり、
前記第2部第2稜線と前記溶接金属部との交点である第4交点において、前記溶接金属部の前記第4交点に連なる部分と、前記第4交点を通る前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱間プレス成形品。
【請求項9】
前記第2部第1稜線と前記第2部第2稜線との間の全長にわたって、前記溶接金属部と、前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下である、請求項8に記載の熱間プレス成形品。
【請求項10】
自動車用の部品である、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱間プレス成形品。
【請求項11】
第1鋼板と、
端部が前記第1鋼板の端部と突合うように配置された第2鋼板と、
前記第1鋼板の前記端部と前記第2鋼板の前記端部とを接合する溶接金属部と、
を備えるテーラードブランクであって、
前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうち、少なくとも一方がアルミニウムめっき鋼板であり、
前記第1鋼板は、
第1部第1片と、
前記第1部第1片と第1部第1稜線予定部を介して連結された第1部第2片と、
を有し、
前記第2鋼板は、
前記第1部第1片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第1片と、
前記第1部第1稜線予定部と前記溶接金属部を介して接合された第2部第1稜線予定部と、
前記第2部第1片と前記第2部第1稜線予定部を介して連結され、前記第1部第2片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第2片と、
を有し、
前記テーラードブランクにおける、前記溶接金属部の近傍部分における長手方向を規定したときに、
前記第2部第1片を基準としたときの、前記第2部第1片の前記第2部第1稜線予定部とは反対側の前記テーラードブランクの外縁と前記溶接金属部との交点である第1交点において、前記溶接金属部の前記第1交点に連なる部分と、前記第1交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、
前記第2部第2片を基準としたときの、前記第2部第2片の前記第2部第1稜線予定部とは反対側の前記テーラードブランクの外縁と前記溶接金属部との交点である第2交点において、前記溶接金属部の前記第2交点に連なる部分と、前記第2交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、
前記第2部第1稜線予定部と前記溶接金属部との交点である第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角と、を含む八つの前記なす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下である、テーラードブランク。
【請求項12】
第1鋼板の端部と第2鋼板の端部とを突合うように配置する配置工程と、
前記第1鋼板の前記端部と前記第2鋼板の前記端部とを溶接により接合して、溶接金属部を形成してテーラードブランクを製造する溶接工程と、
前記テーラードブランクを熱間プレス成形して、前記第1鋼板から得られる第1部材に第1部第1稜線を形成するとともに、前記第2鋼板から得られる第2部材に第2部第1稜線を形成する成形工程と、
を行い、熱間プレス成形品を製造する熱間プレス成形品の製造方法であって、
前記第1部材及び前記第2部材のうち、少なくとも一方がアルミニウムめっき部材であり、
前記第1部材は、
第1部第1片と、
前記第1部第1片と前記第1部第1稜線を介して連結された第1部第2片と、
を有し、
前記第2部材は、
前記第1部第1片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第1片と、
前記第1部第1稜線と前記溶接金属部を介して接合された前記第2部第1稜線と、
前記第2部第1片と前記第2部第1稜線を介して連結され、前記第1部第2片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第2片と、
を有し、
前記熱間プレス成形品を平面状に展開したときにおける、前記溶接金属部の近傍部分における前記熱間プレス成形品の長手方向を規定したときに、
前記第2部第1片を基準としたときの、前記第2部第1片の前記第2部第1稜線とは反対側の前記熱間プレス成形品の外縁と前記溶接金属部との交点である第1交点において、前記溶接金属部の前記第1交点に連なる部分と、前記第1交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、
前記第2部第2片を基準としたときの、前記第2部第2片の前記第2部第1稜線とは反対側の前記熱間プレス成形品の外縁と前記溶接金属部との交点である第2交点において、前記溶接金属部の前記第2交点に連なる部分と、前記第2交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、
前記第2部第1稜線と前記溶接金属部との交点である第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角と、を含む八つの前記なす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が、前記熱間プレス成形品を平面状に展開して前記第2部材の厚さ方向に見たときに、80°以下となるように前記熱間プレス成形品を製造する、熱間プレス成形品の製造方法。
【請求項13】
前記熱間プレス成形品は、前記溶接金属部、前記溶接金属部に連なる前記第1部材の少なくとも一部、及び前記溶接金属部に連なる前記第2部材の少なくとも一部を有し、所定の方向に延びる軸部を備え、
前記長手方向は前記所定の方向に相当する、請求項12に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
【請求項14】
(2)式を満たす、請求項12又は13に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
<T<T ・・(2)
ただし、T:前記第1部材の厚さ(mm)、H:前記熱間プレス成形品の前記第1部材のビッカース硬さ(HV)、T:前記第2部材の厚さ(mm)、H:前記熱間プレス成形品の前記第2部材のビッカース硬さ(HV)、T:前記溶接金属部の厚さ(前記厚さT及び前記厚さTのうち、薄い方の厚さ)(mm)、H:前記熱間プレス成形品の前記溶接金属部のビッカース硬さ(HV)である。
【請求項15】
前記第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が、前記熱間プレス成形品を平面状に展開して前記第2部材の厚さ方向に見たときに、60°以下であるように前記熱間プレス成形品を製造する、請求項12から14のいずれか一項に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
【請求項16】
前記溶接金属部は、溶接始端及び溶接終端を有する、請求項12から15のいずれか一項に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
【請求項17】
熱間プレス成形後の前記溶接金属部が含有するアルミニウムの濃度が、0.3質量%以上2.5質量%以下である、請求項12から16のいずれか一項に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
【請求項18】
前記熱間プレス成形品を平面状に展開したときにおける、前記溶接金属部は折線状又は曲線状である、請求項12から17のいずれか一項に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
【請求項19】
前記熱間プレス成形品の前記第1部材は、
前記第1部第1片とは前記第1部第1稜線を介して連結され、前記第1部第2片とは第1部第2稜線を介して連結された第1部第3片を有し、
前記熱間プレス成形品の前記第2部材は、
前記第1部第2稜線と前記溶接金属部を介して接合された第2部第2稜線と、
前記第2部第1片とは前記第2部第1稜線を介して連結され、前記第2部第2片とは前記第2部第2稜線を介して連結され、前記第1部第3片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第3片と、を有し、
前記熱間プレス成形品を平面状に展開して前記厚さ方向に見たときに、
前記第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つのなす角の角度が80°以下であり、前記第2部第2稜線と前記溶接金属部との交点である第4交点において、前記溶接金属部の前記第4交点に連なる部分と、前記第4交点を通る前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下となるように前記熱間プレス成形品を製造する、請求項12から18のいずれか一項に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
【請求項20】
前記第2部第1稜線と前記第2部第2稜線との間の全長にわたって、前記溶接金属部と、前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下となるように前記熱間プレス成形品を製造する、請求項19に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
【請求項21】
前記熱間プレス成形品は自動車用の部品である、請求項12から20のいずれか一項に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
【請求項22】
第1鋼板の端部と第2鋼板の端部とを突合うように配置する配置工程と、
前記第1鋼板の前記端部と前記第2鋼板の前記端部とを溶接により接合して、溶接金属部を形成する溶接工程と、
を行い、テーラードブランクを製造するテーラードブランクの製造方法であって、
前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうち、少なくとも一方がアルミニウムめっき鋼板であり、
前記第1鋼板は、
第1部第1片と、
前記第1部第1片と第1部第1稜線予定部を介して連結された第1部第2片と、
を有し、
前記第2鋼板は、
前記第1部第1片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第1片と、
前記第1部第1稜線予定部と前記溶接金属部を介して接合された第2部第1稜線予定部と、
前記第2部第1片と前記第2部第1稜線予定部を介して連結され、前記第1部第2片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第2片と、
を有し、
前記テーラードブランクにおける、前記溶接金属部の近傍部分における長手方向を規定したときに、
前記第2部第1片を基準としたときの、前記第2部第1片の前記第2部第1稜線予定部とは反対側の前記テーラードブランクの外縁と前記溶接金属部との交点である第1交点において、前記溶接金属部の前記第1交点に連なる部分と前記第1交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、
前記第2部第2片を基準としたときの、前記第2部第2片の前記第2部第1稜線予定部とは反対側の前記テーラードブランクの外縁と前記溶接金属部との交点である第2交点において、前記溶接金属部の前記第2交点に連なる部分と、前記第2交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、
前記第2部第1稜線予定部と前記溶接金属部との交点である第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角と、を含む八つの前記なす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下となるように前記テーラードブランクを製造する、テーラードブランクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間プレス成形品、テーラードブランク、熱間プレス成形品の製造方法、及びテーラードブランクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウムめっき鋼板を用いた熱間プレス成形品では、アルミニウムが溶接金属部に混入し、熱間プレス成形する際に溶接金属部を焼入れできない場合がある(例えば、特許文献1、2参照)。この問題に対して、2種類の対策が提案されている。
【0003】
1つ目の対策は、アルミニウムめっき鋼板同士を溶接する前に、アルミニウムめっき鋼板のアルミニウムめっき層を除去することにより、溶接金属部にアルミニウムが混入するのを抑制する方法である。
2つ目の対策は、溶接時にオーステナイト系の溶接材料を供給する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5237263号公報
【特許文献2】国際公開第2013/045497号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記1つ目の対策には、アルミニウムめっき層を除去する工程が必要になる。前記2つ目の対策では、溶融した溶接金属部の攪拌が起こり難い溶接エッジ(溶接止端)で、アルミニウムが濃化する虞がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、溶接金属部で破断するのを抑制することが可能な熱間プレス成形品、テーラードブランク、熱間プレス成形品の製造方法、及びテーラードブランクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の第1態様は、第1部材と、端部が前記第1部材の端部と突合うように配置された第2部材と、前記第1部材の前記端部と前記第2部材の前記端部とを接合する溶接金属部と、を備える熱間プレス成形品であって、前記第1部材及び前記第2部材のうち、少なくとも一方がアルミニウムめっき部材であり、前記第1部材は、第1部第1片と、前記第1部第1片と第1部第1稜線を介して連結された第1部第2片と、を有し、前記第2部材は、前記第1部第1片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第1片と、前記第1部第1稜線と前記溶接金属部を介して接合された第2部第1稜線と、前記第2部第1片と前記第2部第1稜線を介して連結され、前記第1部第2片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第2片と、を有し、前記熱間プレス成形品を平面状に展開したときにおける、前記溶接金属部の近傍部分についての前記熱間プレス成形品の長手方向を規定し、前記熱間プレス成形品を平面状に展開して前記第2部材の厚さ方向に見たときに、前記第2部第1片を基準としたときの、前記第2部第1片の前記第2部第1稜線とは反対側の前記熱間プレス成形品の外縁と前記溶接金属部との交点である第1交点において、前記溶接金属部の前記第1交点に連なる部分と、前記第1交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、前記第2部第2片を基準としたときの、前記第2部第2片の前記第2部第1稜線とは反対側の前記熱間プレス成形品の外縁と前記溶接金属部との交点である第2交点において、前記溶接金属部の前記第2交点に連なる部分と、前記第2交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、前記第2部第1稜線と前記溶接金属部との交点である第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角と、を含む八つの前記なす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下である。
【0008】
(12)本発明の第2態様は、第1鋼板の端部と第2鋼板の端部とを突合うように配置する配置工程と、前記第1鋼板の前記端部と前記第2鋼板の前記端部とを溶接により接合して、溶接金属部を形成してテーラードブランクを製造する溶接工程と、前記テーラードブランクを熱間プレス成形して、前記第1鋼板から得られる第1部材に第1部第1稜線を形成するとともに、前記第2鋼板から得られる第2部材に第2部第1稜線を形成する成形工程と、を行い、熱間プレス成形品を製造する熱間プレス成形品の製造方法であって、前記第1部材及び前記第2部材のうち、少なくとも一方がアルミニウムめっき部材であり、前記第1部材は、第1部第1片と、前記第1部第1片と前記第1部第1稜線を介して連結された第1部第2片と、を有し、前記第2部材は、前記第1部第1片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第1片と、前記第1部第1稜線と前記溶接金属部を介して接合された前記第2部第1稜線と、前記第2部第1片と前記第2部第1稜線を介して連結され、前記第1部第2片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第2片と、を有し、前記熱間プレス成形品を平面状に展開したときにおける、前記溶接金属部の近傍部分における前記熱間プレス成形品の長手方向を規定したときに、前記第2部第1片を基準としたときの、前記第2部第1片の前記第2部第1稜線とは反対側の前記熱間プレス成形品の外縁と前記溶接金属部との交点である第1交点において、前記溶接金属部の前記第1交点に連なる部分と、前記第1交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、前記第2部第2片を基準としたときの、前記第2部第2片の前記第2部第1稜線とは反対側の前記熱間プレス成形品の外縁と前記溶接金属部との交点である第2交点において、前記溶接金属部の前記第2交点に連なる部分と、前記第2交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、前記第2部第1稜線と前記溶接金属部との交点である第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角と、を含む八つの前記なす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が、前記熱間プレス成形品を平面状に展開して前記第2部材の厚さ方向に見たときに、80°以下となるように前記熱間プレス成形品を製造する。
【0009】
これらの発明では、熱間プレス成形品に対して、発明者らは鋭意検討の結果、以下のことを見出した。すなわち、例えば、熱間プレス成形品に対して長手方向に引張り力が作用したときに、溶接金属部の第1交点に連なる部分、溶接金属部の第2交点に連なる部分、及び溶接金属部の第3交点に連なる部分には、割れの起点が生じやすい。このため、第1交点における溶接金属部の第1交点に連なる部分と第1交点を通る長手方向との二つのなす角、第2交点における溶接金属部の第2交点に連なる部分と第2交点を通る長手方向との二つのなす角、及び第3交点における溶接金属部の第3交点に連なる部分と第3交点を通る長手方向との四つのなす角と、を含む八つのなす角の少なくとも一つのなす角の角度が、熱間プレス成形品を平面状に展開して第2部材の厚さ方向に見たときに、80°以下となるように熱間プレス成形品を構成(製造)することにより、前記少なくとも一つのなす角を有する部分に作用した前記引張り力により生じる、溶接金属部が開く方向に作用する外力が抑えられる。従って、熱間プレス成形品が溶接金属部で破断するのを抑制することができる。
【0010】
(2)前記(1)に記載の熱間プレス成形品では、前記熱間プレス成形品は、前記溶接金属部、前記溶接金属部に連なる前記第1部材の少なくとも一部、及び前記溶接金属部に連なる前記第2部材の少なくとも一部を有し、所定の方向に延びる軸部を備え、前記長手方向は前記所定の方向に相当してもよい。
(13)前記(12)に記載の熱間プレス成形品の製造方法では、前記熱間プレス成形品は、前記溶接金属部、前記溶接金属部に連なる前記第1部材の少なくとも一部、及び前記溶接金属部に連なる前記第2部材の少なくとも一部を有し、所定の方向に延びる軸部を備え、前記長手方向は前記所定の方向に相当してもよい。
これらの発明では、例えば、軸部が延びる所定の方向に引張り力が作用したときに、熱間プレス成形品が溶接金属部で破断するのを抑制することができる。
【0011】
(3)前記(1)又は(2)に記載の熱間プレス成形品では、(1)式を満たしてもよい。
<T<T ・・(1)
ただし、T:前記第1部材の厚さ(mm)、H:前記第1部材のビッカース硬さ(HV)、T:前記第2部材の厚さ(mm)、H:前記第2部材のビッカース硬さ(HV)、T:前記溶接金属部の厚さ(前記厚さT及び前記厚さTのうち、薄い方の厚さ)(mm)、H:前記溶接金属部のビッカース硬さ(HV)である。
(14)前記(12)又は(13)に記載の熱間プレス成形品の製造方法では、(2)式を満たしてもよい。
<T<T ・・(2)
ただし、T:前記第1部材の厚さ(mm)、H:前記熱間プレス成形品の前記第1部材のビッカース硬さ(HV)、T:前記第2部材の厚さ(mm)、H:前記熱間プレス成形品の前記第2部材のビッカース硬さ(HV)、T:前記溶接金属部の厚さ(前記厚さT及び前記厚さTのうち、薄い方の厚さ)(mm)、H:前記熱間プレス成形品の前記溶接金属部のビッカース硬さ(HV)である。
【0012】
なお、(2)式は(1)式と同一である。
これらの発明では、熱間プレス成形品において、厚さ及びビッカース硬さの積、すなわち剛性が、溶接金属部、第2部材、第1部材の順で大きくなる。一般的に、アルミニウムめっき部材を含む熱間プレス成形品において、部材の剛性よりも溶接金属部の剛性が小さい。
(1)式の左側の不等式を満たして、部材の剛性よりも溶接金属部の剛性が小さいと、より溶接金属部に応力が集中しやすくなるが、第1交点における溶接金属部の第1交点に連なる部分と第1交点を通る長手方向との二つのなす角、第2交点における溶接金属部の第2交点に連なる部分と第2交点を通る長手方向との二つのなす角、及び第3交点における溶接金属部の第3交点に連なる部分と第3交点を通る長手方向との四つのなす角を含む八つのなす角の少なくとも一つのなす角の角度が、熱間プレス成形品を平面状に展開して第2部材の厚さ方向に見たときに、80°以下となるように熱間プレス成形品を構成(製造)することにより、前記少なくとも一つのなす角を有する部分に作用した前記引張り力により生じる、溶接金属部が開く方向に作用する外力が抑えられる。従って、本願発明の効果を顕著に発現することができるため、部材の剛性よりも溶接金属部の剛性が小さいことが好ましい。
また、(1)式の右側の不等式を満たして、第1部材よりも第2部材の剛性を小さくすることで、第1部材及び第2部材のうち、第2部材に応力を集中させることができ、第2部材で破断しやすくなる。これにより、熱間プレス成形品における破断対策を、第2部材に集中させることができる。
【0013】
(4)前記(1)から(3)のいずれか1つに記載の熱間プレス成形品では、前記熱間プレス成形品を平面状に展開して前記第2部材の厚さ方向に見たときに、前記第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が60°以下であってもよい。
(15)前記(12)から(14)のいずれか1つに記載の熱間プレス成形品の製造方法では、前記第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が、前記熱間プレス成形品を平面状に展開して前記第2部材の厚さ方向に見たときに、60°以下であるように前記熱間プレス成形品を製造してもよい。
これらの発明では、例えば、熱間プレス成形品に対して長手方向に引張り力が作用したときに、溶接金属部の第3交点に連なる部分において、溶接金属部が開く方向に作用する外力をより抑えることができる。
【0014】
(5)前記(1)から(4)のいずれか1つに記載の熱間プレス成形品では、前記溶接金属部は、溶接始端及び溶接終端を有してもよい。
(16)前記(12)から(15)のいずれか1つに記載の熱間プレス成形品の製造方法では、前記溶接金属部は、溶接始端及び溶接終端を有してもよい。
これらの発明では、熱間プレス成形品が溶接始端及び溶接終端を有する場合であっても、溶接金属部で破断するのを抑制することができる。
【0015】
(6)前記(1)から(5)のいずれか1つに記載の熱間プレス成形品では、前記溶接金属部が含有するアルミニウムの濃度が、0.3質量%以上2.5質量%以下であってもよい。
(17)前記(12)から(16)のいずれか1つに記載の熱間プレス成形品の製造方法では、熱間プレス成形後の前記溶接金属部が含有するアルミニウムの濃度が、0.3質量%以上2.5質量%以下であってもよい。
これらの発明では、熱間プレス成形品の溶接金属部のアルミニウム濃度が大きいため、溶接金属部の耐食性を向上させることができる。
【0016】
(7)前記(1)から(6)のいずれか1つに記載の熱間プレス成形品では、前記熱間プレス成形品を平面状に展開したときにおける、前記溶接金属部は折線状又は曲線状であってもよい。
(18)前記(12)から(17)のいずれか1つに記載の熱間プレス成形品の製造方法では、前記熱間プレス成形品を平面状に展開したときにおける、前記溶接金属部は折線状又は曲線状であってもよい。
これらの発明では、溶接金属部が直線状である場合に比べて、溶接金属部が一度に破断し難くなる。
【0017】
(8)前記(1)から(7)のいずれか1つに記載の熱間プレス成形品では、前記第1部材は、前記第1部第1片とは前記第1部第1稜線を介して連結され、前記第1部第2片とは第1部第2稜線を介して連結された第1部第3片を有し、前記第2部材は、前記第1部第2稜線と前記溶接金属部を介して接合された第2部第2稜線と、前記第2部第1片とは前記第2部第1稜線を介して連結され、前記第2部第2片とは前記第2部第2稜線を介して連結され、前記第1部第3片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第3片と、を有し、前記熱間プレス成形品を平面状に展開して前記厚さ方向に見たときに、前記第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下であり、前記第2部第2稜線と前記溶接金属部との交点である第4交点において、前記溶接金属部の前記第4交点に連なる部分と、前記第4交点を通る前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下であってもよい。
(19)前記(12)から(18)のいずれか1つに記載の熱間プレス成形品の製造方法では、前記熱間プレス成形品の前記第1部材は、前記第1部第1片とは前記第1部第1稜線を介して連結され、前記第1部第2片とは第1部第2稜線を介して連結された第1部第3片を有し、前記熱間プレス成形品の前記第2部材は、前記第1部第2稜線と前記溶接金属部を介して接合された第2部第2稜線と、前記第2部第1片とは前記第2部第1稜線を介して連結され、前記第2部第2片とは前記第2部第2稜線を介して連結され、前記第1部第3片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第3片と、を有し、前記熱間プレス成形品を平面状に展開して前記厚さ方向に見たときに、前記第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つのなす角の角度が80°以下であり、前記第2部第2稜線と前記溶接金属部との交点である第4交点において、前記溶接金属部の前記第4交点に連なる部分と、前記第4交点を通る前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下となるように前記熱間プレス成形品を製造してもよい。
これらの発明では、第3交点と第4交点の双方において溶接金属部と長手方向とのなす角の角度が80°以下のなす角を有するため、熱間プレス成形品が溶接金属部で破断するのをより抑制することができる。
【0018】
(9)前記(8)に記載の熱間プレス成形品では、前記第2部第1稜線と前記第2部第2稜線との間の全長にわたって、前記溶接金属部と、前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下であってもよい。
(20)前記(19)に記載の熱間プレス成形品の製造方法では、前記第2部第1稜線と前記第2部第2稜線との間の全長にわたって、前記溶接金属部と、前記長手方向との四つのなす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下となるように前記熱間プレス成形品を製造してもよい。
これらの発明では、第2部第1稜線と第2部第2稜線との間の全長にわたって、熱間プレス成形品が溶接金属部で破断するのを抑制することができる。
【0019】
(10)前記(1)から(9)のいずれか1つに記載の熱間プレス成形品では、自動車用の部品であってもよい。
(21)前記(12)から(20)のいずれか1つに記載の熱間プレス成形品の製造方法では、前記熱間プレス成形品は自動車用の部品であってもよい。
これらの発明では、溶接金属部で破断するのを抑制した熱間プレス成形品を、自動車用の部品として好ましく用いることができる。
【0020】
(11)本発明の第3態様は、第1鋼板と、端部が前記第1鋼板の端部と突合うように配置された第2鋼板と、前記第1鋼板の前記端部と前記第2鋼板の前記端部とを接合する溶接金属部と、を備えるテーラードブランクであって、前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうち、少なくとも一方がアルミニウムめっき鋼板であり、前記第1鋼板は、第1部第1片と、前記第1部第1片と第1部第1稜線予定部を介して連結された第1部第2片と、を有し、前記第2鋼板は、前記第1部第1片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第1片と、前記第1部第1稜線予定部と前記溶接金属部を介して接合された第2部第1稜線予定部と、前記第2部第1片と前記第2部第1稜線予定部を介して連結され、前記第1部第2片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第2片と、を有し、前記テーラードブランクにおける、前記溶接金属部の近傍部分における長手方向を規定したときに、前記第2部第1片を基準としたときの、前記第2部第1片の前記第2部第1稜線予定部とは反対側の前記テーラードブランクの外縁と前記溶接金属部との交点である第1交点において、前記溶接金属部の前記第1交点に連なる部分と、前記第1交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、前記第2部第2片を基準としたときの、前記第2部第2片の前記第2部第1稜線予定部とは反対側の前記テーラードブランクの外縁と前記溶接金属部との交点である第2交点において、前記溶接金属部の前記第2交点に連なる部分と、前記第2交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、前記第2部第1稜線予定部と前記溶接金属部との交点である第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角と、を含む八つの前記なす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下である。
【0021】
(22)本発明の第4態様は、第1鋼板の端部と第2鋼板の端部とを突合うように配置する配置工程と、前記第1鋼板の前記端部と前記第2鋼板の前記端部とを溶接により接合して、溶接金属部を形成する溶接工程と、を行い、テーラードブランクを製造するテーラードブランクの製造方法であって、前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうち、少なくとも一方がアルミニウムめっき鋼板であり、前記第1鋼板は、第1部第1片と、前記第1部第1片と第1部第1稜線予定部を介して連結された第1部第2片と、を有し、前記第2鋼板は、前記第1部第1片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第1片と、前記第1部第1稜線予定部と前記溶接金属部を介して接合された第2部第1稜線予定部と、前記第2部第1片と前記第2部第1稜線予定部を介して連結され、前記第1部第2片と前記溶接金属部を介して接合された第2部第2片と、を有し、前記テーラードブランクにおける、前記溶接金属部の近傍部分における長手方向を規定したときに、前記第2部第1片を基準としたときの、前記第2部第1片の前記第2部第1稜線予定部とは反対側の前記テーラードブランクの外縁と前記溶接金属部との交点である第1交点において、前記溶接金属部の前記第1交点に連なる部分と前記第1交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、前記第2部第2片を基準としたときの、前記第2部第2片の前記第2部第1稜線予定部とは反対側の前記テーラードブランクの外縁と前記溶接金属部との交点である第2交点において、前記溶接金属部の前記第2交点に連なる部分と、前記第2交点を通る前記長手方向との二つのなす角と、前記第2部第1稜線予定部と前記溶接金属部との交点である第3交点において、前記溶接金属部の前記第3交点に連なる部分と、前記第3交点を通る前記長手方向との四つのなす角と、を含む八つの前記なす角のうち、少なくとも一つの前記なす角の角度が80°以下となるように前記テーラードブランクを製造する。
【0022】
これらの発明では、テーラードブランクに対して、発明者らは鋭意検討の結果、以下のことを見出した。すなわち、例えば、テーラードブランクを熱間プレス成形した熱間プレス成形品に対して長手方向に引張り力が作用したときに、溶接金属部の第1交点に連なる部分、溶接金属部の第2交点に連なる部分、及び溶接金属部の第3交点に連なる部分には、割れの起点が生じやすい。このため、テーラードブランクにおいて、第1交点における溶接金属部の第1交点に連なる部分と第1交点を通る長手方向との二つのなす角、第2交点における溶接金属部の第2交点に連なる部分と第2交点を通る長手方向との二つのなす角、及び第3交点における溶接金属部の第3交点に連なる部分と第3交点を通る長手方向との四つのなす角と、を含む八つのなす角の少なくとも一つのなす角の角度が、熱間プレス成形品を平面状に展開して第2部材の厚さ方向に見たときに、80°以下となるように熱間プレス成形品を構成(製造)する。すると、このテーラードブランクを熱間プレス成形して熱間プレス成形品としたときに、前記少なくとも一つのなす角を有する部分に作用した前記引張り力により生じる、溶接金属部が開く方向に作用する外力が抑えられる。従って、テーラードブランクを熱間プレス成形した熱間プレス成形品が溶接金属部で破断するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の熱間プレス成形品、テーラードブランク、熱間プレス成形品の製造方法、及びテーラードブランクの製造方法では、溶接金属部で破断するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態のテーラードブランクの平面図である。
図2図1中の切断線A1-A1の断面図である。
図3】本発明の一実施形態の熱間プレス成形品の平面図である。
図4図3におけるB1方向矢視図である。
図5】同熱間プレス成形品を平面状に展開したとき形状を示す図である。
図6】本発明の一実施形態の熱間プレス成形品の製造方法を示すフローチャートである。
図7】同熱間プレス成形品の製造方法における配置工程を説明する図である。
図8】本発明の一実施形態の第1変形例における熱間プレス成形品を平面状に展開したとき形状を示す図である。
図9】本発明の一実施形態の第2変形例における熱間プレス成形品を平面状に展開したとき形状を示す図である。
図10】実験例の熱間プレス成形品を用いた引張試験を説明する写真である。
図11】実験例の熱間プレス成形品を用いた引張試験を説明する写真である。
図12】実験例の熱間プレス成形品を用いた引張試験を説明する写真である。
図13】実験例の熱間プレス成形品を用いた引張試験において、ストロークと荷重との関係を表す図である。
図14】サンプルNo.1の熱間プレス成形品を平面状に展開したときの形状を示す図である。
図15】サンプルNo.2の熱間プレス成形品を平面状に展開したときの形状を示す図である。
図16】サンプルNo.3の熱間プレス成形品を平面状に展開したときの形状を示す図である。
図17】サンプルNo.4の熱間プレス成形品を平面状に展開したときの形状を示す図である。
図18】サンプルNo.5の熱間プレス成形品を平面状に展開したときの形状を示す図である。
図19】サンプルNo.6の熱間プレス成形品を平面状に展開したときの形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るテーラードブランク及び熱間プレス成形品の一実施形態を、図1から図19を参照しながら説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態のテーラードブランク(突合わせ鋼板)1は、第1鋼板10と、第2鋼板30と、溶接金属部50と、を備えている。第1鋼板10及び第2鋼板30は、それぞれ平板状に形成されている。なお、第1鋼板10及び第2鋼板30のうち、少なくとも一方がアルミニウムめっき鋼板である。
第2鋼板30の端部は、第1鋼板10の端部と突合うように配置されている。溶接金属部50は、第1鋼板10の端部と第2鋼板30の端部とを接合している。
【0026】
図3及び図4に、テーラードブランク1を熱間プレス成形した熱間プレス成形品1Aを示す。熱間プレス成形品1Aは、第1部材10Aと、第2部材30Aと、溶接金属部50Aと、を備えている。なお、第1部材10A及び第2部材30Aのうち、少なくとも一方は、アルミニウムめっき部材である。アルミニウムめっき部材は、アルミニウムめっき鋼板を熱間プレス成形したものである。
なお、アルミニウムめっき部材が熱間プレス成形されたとする判定基準は、マルテンサイト面積率が、80%以上となったときである。熱間プレス成形品のマルテンサイト面積率を80%以上とするには、例えば、テーラードブランクに対して、以下のホットスタンプ条件を適用することができる。
【0027】
まず、テーラードブランクを850~1000℃の温度域に加熱し、当該温度域にて0.1~30.0分間保持した後、速やかに金型上に搬送して、プレス成形(ホットスタンプ)を行う。その後、テーラードブランクを加圧して、鋼板と金型との熱伝達により、プレス成形後の鋼板を金型内で250℃以下の温度域まで冷却する。850~1000℃の温度域までの平均加熱速度は、0.1~200℃/sとすればよい。金型内での平均冷却速度は、マルテンサイト面積率が80%以上の熱間プレス成形品を得るためには、マルテンサイト変態が生じる臨界冷却速度以上とすることが必要である。従って、金型内での平均冷却速度は、20~200℃/sとすればよい。850~1000℃の温度域では、温度を変動させてもよく、一定としてもよい。また、マルテンサイト面積率が80%以上の熱間プレス成形品を得るためには、加熱炉から金型までの搬送時間は、フェライト-パーライト変態、ベイナイト変態が開始するよりも早く、金型上に搬送してプレス成形を行う必要がある。フェライト-パーライト変態、ベイナイト変態は、テーラードブランクに熱電対をつけて温度測定を行い、変態発熱を観測することにより上記変態が生じる時間を調べることができる。
【0028】
マルテンサイトの面積率の測定方法は、熱間プレス成形品の溶接熱影響を受けていない位置の組織を顕微鏡観察することにより確認することができる。具体的には、熱間プレス成形品の厚さ方向断面の、表面から板厚の1/8の位置、3/8の位置、5/8の位置、7/8の位置の各5ヶ所から採取したサンプルについて、レペラ腐食液を用いてエッチング処理し、光学顕微鏡により1000倍の倍率で100μm四方の視野を観察し、観察視野内で、白色~赤褐色に見えるものがマルテンサイトであるとしてマルテンサイトの面積率を測定し、観察した20視野のマルテンサイトの面積率の平均値を熱間プレス成形品のマルテンサイト面積率とすることができる。
第1部材10Aは、第1鋼板10を熱間プレス成形したものである。同様に、第2部材30A、溶接金属部50Aは、第2鋼板30、溶接金属部50をそれぞれ熱間プレス成形したものである。
第2部材30Aの端部は、第1部材10Aの端部と突合うように配置されている。溶接金属部50Aは、第1部材10Aの端部と第2部材30Aの端部とを接合している。
【0029】
熱間プレス成形品1Aは、溶接金属部50A、溶接金属部50Aに連なる第1部材10A、及び溶接金属部50Aに連なる第2部材30Aを有し、所定の方向Uに延びる軸部1Bを備えている。
仮に、第2部材30Aが、第2部材30Aにおける溶接金属部50Aとは反対側の端部から所定の方向Uに交差する方向に延びる延長形状30Bを有する場合について説明する。なお、延長形状30Bは、第2部材の一部が延長されたものでも良いし、第2部材に別部材が連結されたものでもよい。軸部1Bを規定する際には、第2部材30Aにおける延長形状30Bを考慮せずに、溶接金属部50A、第1部材10A、及び第2部材30Aにより、所定の方向Uに延びる軸部1Bを認定する。
すなわち、軸部は、溶接金属部、溶接金属部に連なる第1部材の少なくとも一部、及び溶接金属部に連なる第2部材の少なくとも一部を有し、所定の方向に延びる部材として、認定される。
【0030】
図1に示すテーラードブランク1においても、熱間プレス成形品1Aの延長形状30Bに対応する延長形状30Cは、考慮しない。
図1において、溶接金属部50の近傍部分についての熱間プレス成形品1Aの長手方向を、長手方向Xと規定する。ここで言う溶接金属部50の近傍部分とは、例えば、テーラードブランク1(熱間プレス成形品1A)を平面視したときに、溶接金属部50の幅方向の中心を中心として、溶接金属部50の幅の20倍の範囲のことを意味する。
長手方向Xは、前記所定の方向Uに相当する(平行である)。
【0031】
以下では、まず、テーラードブランク1の第1鋼板10及び第2鋼板30の構成について説明する。
【0032】
<アルミニウムめっき鋼板>
第1鋼板10及び第2鋼板30のうち、少なくとも一方がアルミニウムめっき鋼板である。図2では、第1鋼板10及び第2鋼板30の双方がアルミニウムめっき鋼板である例を示す。図2に示すように、第1鋼板10では、母材鋼板11の厚さ方向Zの各表面11a,11b上に、母材鋼板11側から順に金属間化合物層12、アルミニウムめっき層13がそれぞれ設けられている。なお、図1は、テーラードブランク1を厚さ方向Zに見た平面図である。
図2に示すように、表面11aは、母材鋼板11の厚さ方向Zの第1側を向く面である。表面11bは、母材鋼板11の厚さ方向Zにおける第1側とは反対側の第2側を向く面である。母材鋼板11の表面11a上に、母材鋼板11側から順に金属間化合物層12、アルミニウムめっき層13が設けられている。母材鋼板11の表面11b上に、母材鋼板11側から順に金属間化合物層12、アルミニウムめっき層13が設けられている。
【0033】
第2鋼板30は、第1鋼板10と同様に構成されている。すなわち、第2鋼板30では、母材鋼板31の厚さ方向Zの各表面31a,31b上に、母材鋼板31側から順に金属間化合物層32、アルミニウムめっき層33がそれぞれ設けられている。第2鋼板30の母材鋼板31の厚さ方向は、第1鋼板10の母材鋼板11の厚さ方向Zに沿う。
【0034】
熱間プレス成形品1Aは、テーラードブランク1を熱間プレス成形したものである。
以下では、熱間プレス成形した第1鋼板10、第2鋼板30、溶接金属部50を、第1部材10A、第2部材30A、及び溶接金属部50Aと言う。熱間プレス成形品1Aは、第1部材10Aと、第2部材30Aと、溶接金属部50Aと、を備えている。
【0035】
<母材鋼板>
母材鋼板は、アルミニウムめっき層を設ける前の鋼板である。母材鋼板は、通常の方法により得られたものであればよく、特に限定されるものではない。母材鋼板は、熱延鋼板又は冷延鋼板のいずれでもよい。また、母材鋼板の厚さは目的に応じた厚さとすればよく、特に限定されるものではない。例えば、母材鋼板の厚さは、アルミニウムめっき層を設けた後の鋼板全体の厚さとして、0.8mm~4.0mmとなるような厚さが挙げられ、さらに、1.0mm~3.0mmとなるような厚さが挙げられる。
【0036】
母材鋼板の一例としては、例えば、高い機械的強度(例えば、引張強さ、降伏点、伸び、絞り、硬さ、衝撃値、疲れ強さ、等の機械的な変形、及び破壊に関する諸性質を意味する。)を有するように形成された鋼板を使用することがよい。
【0037】
母材鋼板の好ましい化学組成の一例としては、例えば、以下の化学組成が挙げられる。
質量%で、C:0.02%~0.58%、Mn:0.20%~3.00%、Al:0.005%~0.06%、Ti:0%~0.20%、Nb:0%~0.20%、V:0%~1.0%、W:0%~1.0%、Cr:0%~1.0%、Mo:0%~1.0%、Cu:0%~1.0%、Ni:0%~1.0%、B:0%~0.0100%、Mg:0%~0.05%、Ca:0%~0.05%、REM:0%~0.05%、Sn;0%~0.5%、Bi:0%~0.05%、Si:0%~2.00%、P:0.03%以下、S:0.010%以下、N:0.010%以下、並びに残部:Fe及び不純物からなる化学組成を有する。
なお、以下、成分(元素)の含有量を示す「%」は、「質量%」を意味する。「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載されている数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0038】
<アルミニウムめっき層>
アルミニウムめっき層は、母材鋼板の両面に形成される。アルミニウムめっき層を形成する方法は、特に限定されるものではない。例えば、アルミニウムめっき層は、アルミニウムを主体として含む溶融金属浴中に母材鋼板を浸漬させ、アルミニウムめっき層を形成させる、溶融めっき法により母材鋼板の各表面に形成してもよい。
【0039】
ここで、アルミニウムめっき層とは、アルミニウムを主体として含むめっき層であり、アルミニウムを50質量%以上含有していればよい。目的に応じて、アルミニウム以外の元素(例えば、Si等)を含んでいてもよく、製造の過程等で混入してしまう不純物を含んでいてもよい。アルミニウムめっき層は、具体的には、例えば、質量%で、Si(シリコン)を5%~12%含み、残部はアルミニウム及び不純物からなる化学組成を有していてもよい。また、質量%で、Si(シリコン)を5%~12%、Fe(鉄)を2%~4%を含み、残部はアルミニウム及び不純物からなる化学組成を有していてもよい。
上記範囲でSiを含有させると、加工性及び耐食性の低下が抑制され得る。また、金属間化合物層の厚さを低減し得る。
【0040】
アルミニウムめっき層の厚さは、特に限定されるものではない。例えば、平均厚さで8μm(マイクロメートル)~35μmの範囲であることがよく、15μm~30μmの範囲であることが好ましい。なお、アルミニウムめっき層の厚さは、平均厚さを表す。
【0041】
アルミニウムめっき層は、鋼板の腐食を防止する(耐食性を向上させる)。また、アルミニウムめっき層は、鋼板を熱間プレス成形により加工する場合に、高温に加熱されても、表面が酸化することによるスケール(鉄の化合物)の発生を防止する。また、アルミニウムめっき層は、有機系材料によるめっき被覆や他の金属系材料(例えば、亜鉛系材料)によるめっき被覆よりも沸点及び融点が高い。
従って、熱間プレス成形により鋼板を成形する際に、被覆が蒸発することがないため、表面の保護効果が高い。
【0042】
溶融めっき時及び熱間プレス成形時における加熱により、アルミニウムめっき層は、鋼板中の鉄(Fe)と合金化し得る。よって、アルミニウムめっき層は、必ずしも成分組成が一定な単一の層で形成されるとは限らず、部分的に合金化した層(合金層)を含むものとなる。
【0043】
<金属間化合物層>
金属間化合物層は、母材鋼板上にアルミニウムめっき層を設ける際に、母材鋼板とアルミニウムめっき層との間の境界部に形成される層である。具体的には、金属間化合物層は、アルミニウムを主体として含む溶融金属浴中での母材鋼板の鉄(Fe)とアルミニウム(Al)を含む金属との反応によって形成される。金属間化合物層は、主にFeAl(x、yは1以上を表す)で表される化合物の複数種で形成されている。アルミニウムめっき層がSi(シリコン)を含む場合は、FeAl及びFeAlSi(x、y、zは1以上を表す)で表される化合物の複数種で形成されている。
【0044】
金属間化合物層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、平均厚さで3μm~10μmの範囲であることがよく、4μm~8μmの範囲であることが好ましい。なお、金属間化合物層の厚さは、平均厚さを表す。
なお、金属間化合物層の厚さは、アルミニウムを主体として含む溶融金属浴の温度と浸漬時間によって制御し得る。
【0045】
ここで、母材鋼板、金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層の確認、並びに、金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層の厚さの測定については、以下のような方法によって行う。
【0046】
鋼板の断面が露出するように切断を行い、鋼板の断面を研磨する。研磨した鋼板の断面を、電子線マイクロアナライザ(Electron Probe MicroAnalyser:FE-EPMA)により、鋼板の表面から母材鋼板までを線分析し、アルミニウム濃度及び鉄濃度を測定する。測定条件は、加速電圧15kv、ビーム径100nm程度、1点あたりの照射時間1000ms、測定ピッチ60nm、及び測定距離はめっき層の厚さが測定できるようにすればよく、例えば厚さ方向に30μm~80μm程度とする。
母材鋼板の厚さ、及びアルミニウムめっき鋼板の厚さは、光学顕微鏡又はマイクロメータで測定するほうが好ましい。
【0047】
鋼板の断面のアルミニウム濃度の測定値として、アルミニウム(Al)濃度が2.0質量%未満である領域を母材鋼板、アルミニウム濃度が2.0質量%以上である領域を金属間化合物層又はアルミニウムめっき層と判断する。また、金属間化合物層及びアルミニウムめっき層のうち、鉄(Fe)濃度が4.0質量%超である領域を金属間化合物層、鉄濃度が4.0質量%以下である領域をアルミニウムめっき層と判断する。
なお、母材鋼板の境界からアルミニウムめっき層までの境界の距離を金属間化合物層の厚さとする。また、金属間化合物層とアルミニウムめっき層との境界からアルミニウムめっき層が形成された鋼板表面までの距離をアルミニウムめっき層の厚さとする。
【0048】
アルミニウムめっき層の厚さ、及び金属間化合物層の厚さは、鋼板の表面から母材鋼板の表面(母材鋼板及び金属間化合物層の境界)までを線分析し、次のようにして測定する。
アルミニウムめっき層の厚さは、前述の判断基準にしたがって、アルミニウムめっき層を有する鋼板表面から金属間化合物層までの厚さを、任意の5箇所の位置で求め、求めた値を平均した値をアルミニウムめっき層の厚さとする。
金属間化合物層の厚さは、前述の判断基準にしたがって、金属間化合物層とアルミニウムめっき層との境界から金属間化合物層と母材鋼板との境界までの厚さを、任意の5箇所の位置で求め、求めた値を平均した値を金属間化合物層の厚さとする。
【0049】
次に、テーラードブランク1の形状等の詳細について説明する。
図1及び図2に示すように、以下では、長手方向Xのうち、第2鋼板30に対する第1鋼板10側を第1側X1と言う。第1鋼板10に対する第2鋼板30側を第2側X2と言う。第2側X2は、長手方向Xに沿って第1鋼板10から第2鋼板30に向かう側である。
長手方向X及び厚さ方向Zにそれぞれ直交する方向を、直交方向Yと言う。直交方向Yのうちの一方を第1側Y1と言い、直交方向Yのうち、第1側Y1とは反対側を第2側Y2と言う。
前記厚さ方向Zは、第1鋼板10の厚さ方向、及び第2鋼板30の厚さ方向である。
【0050】
図1に示すように、第1鋼板10は、第1部第1片16と、第1部第2片17と、第1部第3片18と、を有している。
第1部第1片16、第1部第2片17、及び第1部第3片18は、それぞれ平板状である。
第1部第1片16における第2側X2の外縁であって、第1側Y1の部分の外縁16aは、第1側Y1に向かうに従い漸次、第1側X1に向かうように傾斜している。
第1部第3片18は、第1部第1片16よりも第2側Y2に配置されている。第1部第3片18は、第1部第1片16と第1部第1稜線予定部21を介して連結されている。なお、ここで言う連結とは、他の部材を介さずに直接連結されていることを意味する。ただし、同部材、例えば、第1鋼板10の一部を介す場合であれば、その他の片や稜線を介して間接的に連結されていてもよい。
第1部第1稜線予定部21は、第1鋼板10を折って、後述する第1部第1稜線21Aを形成する予定の部分である。第1部第1稜線予定部21は、長手方向Xに沿って延びている。第1鋼板10は、第1部第1稜線予定部21では折れていない。
なお、第1部第1稜線予定部21に、けがき線等の指標を設けてもよい。
【0051】
前記第1部第1片16における第1部第1稜線予定部21とは反対側の外縁16bは、第1側Y1に向かうに従い漸次、第1側X1に向かうように傾斜している。外縁16bは、外縁16aよりも長手方向Xに沿っている。
第1部第1片16の第2側Y2の端における長手方向Xの中心、及び第1部第3片18の長手方向Xの中心は、互いに一致している。
【0052】
第1部第2片17における第2側X2の外縁であって、第2側Y2の部分の外縁17aは、第2側Y2に向かうに従い漸次、第1側X1に向かうように傾斜している。第1部第2片17は、第1部第3片18よりも第2側Y2に配置されている。第1部第2片17は、第1部第3片18と第1部第2稜線予定部22を介して連結されている。第1部第2稜線予定部22は、第1鋼板10を折って、後述する第1部第2稜線22Aを形成する予定の部分である。第1部第2稜線予定部22は、第1部第1稜線予定部21よりも第2側Y2に配置され、長手方向Xに沿って延びている。第1鋼板10は、第1部第2稜線予定部22では折れていない。
【0053】
第1部第2片17における第1部第2稜線予定部22とは反対側の外縁17bは、第2側Y2に向かうに従い漸次、第1側X1に向かうように傾斜している。外縁17bは、外縁17aよりも長手方向Xに沿っている。
第1部第2片17の第1側Y1の端における長手方向Xの中心、及び第1部第3片18の長手方向Xの中心は、互いに一致している。
以上のように、第1部第2片17は、第1部第1片16と、第1部第1稜線予定部21、第1部第3片18、及び第1部第2稜線予定部22を介して連結されている。
【0054】
第2鋼板30は、第2部第1片36と、第2部第2片37と、第2部第3片38と、を有している。
第2部第1片36は、本体36aと、突出部36bとを有している。本体36aは、厚さ方向Zに見たときに台形状を呈している。突出部36bは、本体36aの第1側X1の外縁であって第1側Y1の部分から、第1側X1に向かって突出している。突出部36bは、厚さ方向Zに見たときに三角形状を呈している。突出部36bにおける第1側X1の外縁36cは、第1側Y1に向かうに従い漸次、第1側X1に向かうように傾斜している。
第2部第1片36は、第1鋼板10の第1部第1片16よりも第2側X2に配置されている。第2部第1片36は、第1部第1片16と溶接金属部50を介して接合されている。第2部第1片36の外縁36d及び第1部第1片16の外縁16bは、同一直線上に配置されている。
【0055】
第2部第3片38は、厚さ方向Zに見たときに矩形状を呈している。第2部第3片38は、第2部第1片36よりも第2側Y2に配置されている。第2部第3片38は、第2部第1片36の本体36aと第2部第1稜線予定部41を介して連結されている。第2部第1稜線予定部41は、第2鋼板30を折って、後述する第2部第1稜線41Aを形成する予定の部分である。第2部第1稜線予定部41は、長手方向Xに沿って延びている。第2鋼板30は、第2部第1稜線予定部41では折れていない。第2部第1稜線予定部41は、第1部第1稜線予定部21と溶接金属部50を介して接合されている。
第2部第3片38は、第1鋼板10の第1部第3片18よりも第2側X2に配置されている。第2部第3片38は、第1部第3片18と溶接金属部50を介して接合されている。
【0056】
前記第2部第1片36の第2部第1稜線予定部41とは反対側の外縁36dは、第1側Y1に向かうに従い漸次、第1側X1に向かうように傾斜している。外縁36dは、外縁36cよりも長手方向Xに沿っている。
第2部第1片36の本体36aの第2側Y2の端における長手方向Xの中心、及び第2部第3片38の長手方向Xの中心は、互いに一致している。
第2部第1片36の外縁36d及び第1部第1片16の外縁16bは、同一直線上に配置されている。第2部第1稜線予定部41、及び第1鋼板10の第1部第1稜線予定部21は、溶接金属部50を介して接合されており、同一直線上に配置されている。
【0057】
第2部第2片37は、本体37aと、突出部37bとを有している。本体37aは、厚さ方向Zに見たときに台形状を呈している。突出部37bは、本体37aの第1側X1の外縁であって第2側Y2の部分から、第1側X1に向かって突出している。突出部37bは、厚さ方向Zに見たときに三角形状を呈している。突出部37bにおける第1側X1の外縁37cは、第2側Y2に向かうに従い漸次、第1側X1に向かうように傾斜している。
第2部第2片37の第2部第2稜線予定部42(第2部第1稜線予定部41)とは反対側の外縁37dは、第2側Y2に向かうに従い漸次、第1側X1に向かうように傾斜している。外縁37dは、外縁37cよりも長手方向Xに沿っている。
【0058】
第2部第2片37は、第2部第3片38よりも第2側Y2に配置されている。第2部第2片37の本体37aは、第2部第3片38と第2部第2稜線予定部42を介して連結されている。第2部第2稜線予定部42は、第2鋼板30を折って、後述する第2部第2稜線42Aを形成する予定の部分である。第2部第2稜線予定部42は、第2部第1稜線予定部41よりも第2側Y2に配置され、長手方向Xに沿って延びている。第2鋼板30は、第2部第2稜線予定部42では折れていない。第2部第2稜線予定部42は、第1部第2稜線予定部22と溶接金属部50を介して接合されている。
第2部第2片37の第2部第2稜線予定部42(第2部第1稜線予定部41)とは反対側の外縁37dは、第2側Y2に向かうに従い漸次、第1側X1に向かうように傾斜している。外縁37dは、外縁37cよりも長手方向Xに沿っている。
以上のように、第2部第2片37は、第2部第1片36と、第2部第1稜線予定部41、第2部第3片38、及び第2部第2稜線予定部42を介して連結されている。
【0059】
第2部第2片37は、第1部第2片17と溶接金属部50を介して接合されている。第2部第2片37の外縁37d及び第1部第2片17の外縁17bは、同一直線上に配置されている。第2部第2稜線予定部42、及び第1鋼板10の第1部第2稜線予定部22は、溶接金属部50を介して接合されており、同一直線上に配置されている。
【0060】
溶接金属部50は、折線状である。溶接金属部50は、第1片51と、第2片52と、第3片53と、を有している。なお、溶接金属部は、曲線状や直線状であってもよい。
第1片51は、第1部第1片16の外縁16aと第2部第1片36の外縁36cとを接合している。第1片51は、第1側Y1に向かうに従い漸次、第1側X1に向かうように延びている。第1片51の第1側Y1の端部は、溶接金属部50における、第2部第1片36の外縁36dに連なる部分である。外縁36d及び外縁16bは、第2部第1片36を基準としたときの第2部第1稜線41Aとは反対側の、テーラードブランク1(熱間プレス成形品の1A)の外縁である。
第2片52は、第1部第2片17の外縁17aと第2部第2片37の外縁37cとを接合している。第2片52は、第2側Y2に向かうに従い漸次、第1側X1に向かうように延びている。第2片52の第2側Y2の端部は、溶接金属部50における、第2部第2片37の外縁37dに連なる部分である。
【0061】
第3片53は、第1部第3片18の第2側X2の外縁と第2部第3片38の第1側X1の外縁とを接合している。さらに、第3片53は、第1部第1片16における第2側X2の外縁であって第2側Y2の部分と、第2部第1片36の本体36aにおける第1側X1の外縁であって第2側Y2の部分とを接合している。第3片53は、第1部第2片17における第2側X2の外縁であって第1側Y1の部分と、第2部第2片37の本体37aにおける第1側X1の外縁であって第1側Y1の部分とを接合している。
第3片53の第1側Y1の部分は、溶接金属部50における第2部第1稜線予定部41に連なる部分である。第3片53の第2側Y2の部分は、溶接金属部50における第2部第2稜線予定部42に連なる部分である。
【0062】
溶接金属部50は、溶接始端56及び溶接終端57を有している。例えば、溶接始端56は、第1片51の第1側Y1の端部に設けられている。溶接終端57は、第2片52の第2側Y2の端部に設けられている。
一般的に、溶接始端及び溶接終端は、熱間プレス成形後に切落とされる(トリミングされる)場合がある。本実施形態では、溶接始端56及び溶接終端57は、熱間プレス成形品1Aから切落とされずに残っている。なお、溶接金属部50は、溶接始端56及び溶接終端57を有さなくてもよい。
一般的に、溶接金属部における溶接始端及び溶接終端以外の部分は、溶接が安定している。溶接始端及び溶接終端は、溶接を開始及び終了する部分で、例えばこれらの部分にクレータ(窪み)が形成される。
熱間プレス成形後の溶接金属部50Aが含有するアルミニウムの濃度は、0.3質量%以上2.5質量%以下であることが好ましい。なお、溶接金属部50Aの減肉を抑制するため、必要に応じて、フィラーワイヤを供給しながら、溶接を行ってもよい。
【0063】
溶接金属部50Aのアルミニウムの濃度の測定は以下のようにして行う。
溶接金属部50Aに直交する方向で熱間プレス成形品1Aを切断し、溶接金属部50Aの断面が残るようにトリミングして、樹脂に埋め込む。埋め込んだ熱間プレス成形品1Aの研磨を行い、電子線マイクロアナライザ(FE-EPMA)により、熱間プレス成形品1Aの表面から母材鋼板11、31までをマッピング分析し、アルミニウム濃度を測定する。測定条件は、加速電圧15kV、ビーム径100nm程度、照射時間1000msとする。測定ピッチは、格子状に5μmピッチとする。溶接金属部のアルミニウム濃度の測定値を平均化して、平均濃度を求める。
【0064】
図1の実施形態では、第2部第1片36を基準としたときの、テーラードブランク1(熱間プレス成形品1A)の第1側Y1の外縁(36d及び16b)と第1片51との交点である第1交点Q1において、第1片51の第1交点Q1に連なる部分と、第1交点Q1を通る長手方向Xとにより形成される二つのなす角を、以下ではそれぞれ第1外縁角度θ11と言う。この例では、二つの第1外縁角度θ11のうち、最小の第1外縁角度θ11(以下、最小第1外縁角度θ11と言う)は、第1交点Q1を通る長手方向Xの第1交点Q1より第2側X2と第1片51との間に形成される第1外縁角度θ11である。最小第1外縁角度θ11は、0°よりも大きく90°以下である。本実施形態では、最小第1外縁角度θ11は80°以下である。
ここで、具体的な第1外縁角度θ11の測定方法は、第1交点Q1から第2側Y2へ20mmの範囲の第1片51と第1交点Q1を通る長手方向との二つのなす角をそれぞれ測定する。第1片51が折れ線や曲線の場合は、第1交点Q1から第2側Y2へ20mm離れた位置において、長手方向Xと第1片51とが交差する点と第1交点Q1を結んだ線と第1交点Q1を通る長手方向とにより形成される二つのなす角を、第1外縁角度θ11とする。
【0065】
第2部第2片37を基準としたときの、テーラードブランク1の第2側Y2の外縁(37d及び17b)と第2片52との交点である第2交点Q2において、第2片52の第2交点Q2に連なる部分と、第2交点Q2を通る長手方向Xとの二つのなす角を、以下ではそれぞれ第2外縁角度θ12と言う。この例では、二つの第2外縁角度θ12のうち、最小の第2外縁角度θ12(以下、最小第2外縁角度θ12と言う)は、第2交点Q2を通る長手方向Xの第2交点Q2より第2側X2と第2片52との間に形成される第2外縁角度θ12であり、最小第2外縁角度θ12の角度は80°以下である。最小第2外縁角度θ12は、0°よりも大きく90°以下である。本実施形態では、最小第2外縁角度θ12は80°以下である。
ここで、具体的な第2外縁角度θ12の測定方法は、第2交点Q2から第1側Y1へ20mmの範囲の第2片52と第2交点Q2を通る長手方向とにより形成される二つのなす角をそれぞれ測定する。第2片52が折れ線や曲線の場合は、第2交点Q2から第1側Y1へ20mm離れた位置において、長手方向Xと第2片52とが交差する点と第2交点Q2を結んだ線と第2交点Q2を通る長手方向との二つのなす角を、第2外縁角度θ12とする。
【0066】
第3片53と第1部第1稜線予定部21または第2部第1稜線予定部41の延長線との交点である第3交点Q3において、第3片53の第3交点Q3に連なる部分と、第3交点Q3を通る長手方向Xとにより形成される四つのなす角を、以下ではそれぞれ第1稜線角度θ21と言う。この例では、4つの第1稜線角度θ21のうち、最小の第1稜線角度θ21(以下、最小第1稜線角度θ21と言う)の角度は、90°である。
ここで、具体的な第1稜線角度θ21の測定方法は、第3交点Q3から第1側Y1及び第2側Y2へ、それぞれ20mmの範囲の第3片53と第3交点Q3を通る長手方向との四つのなす角をそれぞれ測定する。第3片53が折れ線や曲線の場合は、第3交点Q3から第1側Y1及び第2側Y2へ、それぞれ20mm離れた位置において、長手方向Xと第3片53とが交差する点と第3交点Q3を結んだ線と第3交点Q3を通る長手方向とにより形成される四つのなす角を、第1稜線角度θ21とする。
最小第1稜線角度θ21は、75°以下であることが好ましく、60°以下であることがより好ましい。
【0067】
第3片53と第1部第2稜線予定部22または第2部第2稜線予定部42の延長線との交点である第4交点Q4において、第3片53の第4交点Q4に連なる部分と、第4交点Q4を通る長手方向Xとの四つのなす角を、以下ではそれぞれ第2稜線角度θ22と言う。この例では、4つの第2稜線角度θ22のうち、最小の第2稜線角度θ22(以下、最小第2稜線角度θ22と言う)の角度は、90°である。
ここで、具体的な第2稜線角度θ22の測定方法は、第4交点Q4から第1側Y1及び第2側Y2へ、それぞれ20mmの範囲の第3片53と第4交点Q4を通る長手方向との四つのなす角をそれぞれ測定する。第3片53が折れ線や曲線の場合は、第4交点Q4から第1側Y1及び第2側Y2へ、それぞれ20mm離れた位置において、長手方向Xと第3片53とが交差する点と第4交点Q4を結んだ線と第4交点Q4を通る長手方向との四つのなす角を、第2稜線角度θ22とする。
最小第2稜線角度θ22は、75°以下であることが好ましく、60°以下であることがより好ましい。
【0068】
図1の実施形態では、二つの第1外縁角度θ11、二つの第2外縁角度θ12、四つの第1稜線角度θ21、及び四つの第2稜線角度θ22を含む十二のなす角度のうち、少なくとも一つの角度が、80°以下である。より詳しく説明すると、最小第1外縁角度θ11は、80°以下であり、最小第2外縁角度θ12は、80°以下である。最小第1稜線角度θ21は、90°であり、最小第2稜線角度θ22は、90°である。
また、溶接金属部50は、テーラードブランク1の直交方向Yの中央を基準としたときの、線対称な折線状である。溶接金属部50の形状は、限定されないが、応力を分散する観点から、テーラードブランク1の直交方向Yの中央を基準としたときの、線対称な形状とすることが好ましい。
テーラードブランク1(熱間プレス成形品1A)では、四つの第1稜線角度θ21のうち少なくとも一つが60°以下であることが好ましく、四つの第2稜線角度θ22のうち少なくとも一つが60°以下であることが好ましい。
【0069】
次に、熱間プレス成形品1Aの形状等の詳細について説明する。
図4に示すように、熱間プレス成形品1Aは、長手方向Xに見たときに、下方が開口するU字状である。ただし、熱間プレス成形品の形状は、U字状に限定されず、例えば、U字状の形状の両側にフランジを有するハット形状でもよい。図3及び図4に示すように、第1部材10Aは、前記第1部第1片16と、前記第1部第2片17と、前記第1部第3片18と、を有している。
第1部第3片18は、第1部第1片16と第1部第1稜線21Aを介して連結されている。第1部第2片17は、第1部第3片18と第1部第2稜線22Aを介して連結されている。すなわち、第1部第3片18は、第1部第1稜線21Aと第1部第2片17との間に配置されている。第1部第3片18は、第1部第2片17とは第1部第2稜線22Aを介して連結されている。
以上のように、第1部第2片17は、第1部第1片16と、第1部第1稜線21A、第1部第3片18、及び第1部第2稜線22Aを介して連結されている。第1部第1稜線21A、第1部第2稜線22Aは、第1鋼板10において第1部第1稜線予定部21、第1部第2稜線予定部22が形成された位置にそれぞれ形成される。
【0070】
第2部材30Aは、前記第2部第1片36と、前記第2部第2片37と、前記第2部第3片38と、を有している。
第2部第1片36は、第1部第1片16と溶接金属部50Aを介して接合されている。
第2部第3片38は、第2部第1片36と第2部第1稜線41Aを介して連結されている。第2部第2片37は、第2部第3片38と第2部第2稜線42Aを介して連結されている。すなわち、第2部第3片38は、第2部第1稜線41Aと第2部第2片37との間に配置されている。第2部第3片38は、第2部第2片37とは第2部第2稜線42Aを介して連結されている。
【0071】
以上のように、第2部第2片37は、第2部第1片36と、第2部第1稜線41A、第2部第3片38、及び第2部第2稜線42Aを介して連結されている。第2部第1稜線41A、第2部第2稜線42Aは、第2鋼板30において第2部第1稜線予定部41、第2部第2稜線予定部42が形成された位置にそれぞれ形成される。
第2部第3片38は、第1部第3片18と溶接金属部50Aを介して接合されている。第2部第2片37は、第1部第2片17と溶接金属部50Aを介して接合されている。
溶接金属部50Aは、折線状である。溶接金属部50Aは、図示しない溶接始端56及び溶接終端57を有している。
【0072】
図5に、熱間プレス成形品1Aを平面状に展開したときの形状を示す。例えば、熱間プレス成形品1Aの展開は、後述する熱間プレス成形品の製造方法S10の成形工程S16における加熱条件と同様の条件において、熱間プレス成形品1Aを変形させることで行うことができる。熱間プレス成形品1Aの展開は、片16,17,18,36,37,38それぞれの形状は変えず、例えば、第3片18,38に対して片16,17,36,37を稜線21A,22A,41A,42A周りに回転させることにより行う。
また、各片16,17,18,36,37,38の写真を取得したり、各片16,17,18,36,37,38をスキャンしたりすること等により、各片16,17,18,36,37,38の形状を取得する。そして、取得した各片16,17,18,36,37,38の形状に基づいて、熱間プレス成形品1Aを展開したときの形状を推定してもよい。
【0073】
熱間プレス成形品1Aの第1外縁角度θ11、第2外縁角度θ12、第1稜線角度θ21、第2稜線角度θ22等の定め方は、上述したテーラードブランク1におけるそれぞれの定め方と同様である。熱間プレス成形品1Aを平面状に展開して厚さ方向Zに見たときに、最小第1外縁角度θ11は、80°以下であり、最小第2外縁角度θ12は、80°以下であり、最小第1稜線角度θ21は、90°であり、最小第2稜線角度θ22は、90°である。
【0074】
第1部材10AのJIS Z 2244:2009 ビッカース硬さ試験-試験方法 に基づくビッカース硬さ(以下では、単にビッカース硬さと言う。)は、第1鋼板10のビッカース硬さよりも大きい(硬い)。同様に、第2部材30A、溶接金属部50Aのビッカース硬さは、第2鋼板30と、溶接金属部50のビッカース硬さよりもそれぞれ大きい。
なお、ビッカース硬さを測定する際の試験力は、2.94N(ニュートン)である。
【0075】
ここで、熱間プレス成形品1Aにおいて、以下のように規定する。なお、図2は、図3中の切断線A2-A2の断面図でもある。
図2に示すように、第1部材10Aの厚さを、T(mm)と規定する。ここで、第1部材10Aの厚さTは、マイクロメータ等により任意の5箇所の位置で第1部材10Aの厚さを求め、求めた値を平均した値を第1部材10Aの厚さとする。
第1部材10Aのビッカース硬さを、H(HV)と規定する。ここで、第1部材10Aのビッカース硬さHは、第1部材10Aの厚さ方向Zの中央で、第1鋼板10の突合せ方向Xの全長を3等分した領域の各中央の3箇所で求められる。求めた値を平均した値を、ビッカース硬さHとする。
第2部材30Aの厚さを、T(mm)と規定する。第2部材30Aのビッカース硬さを、H(HV)と規定する。溶接金属部50Aの厚さを、T(mm)と規定し、厚さTは、厚さT及び厚さTのうち薄い方(厚くない方)に等しい。第2部材30Aの厚さ及びビッカース硬さについても、第1部材10Aと同様の方法で求める。
溶接金属部50Aのビッカース硬さを、H(HV)と規定する。
第1部材10Aの厚さTは、第1鋼板10の厚さに等しい。同様に、第2部材30Aの厚さT、溶接金属部50Aの厚さTは、第2鋼板30の厚さ、溶接金属部50の厚さにそれぞれ等しい。
【0076】
このとき、熱間プレス成形品1Aは、(1)式を満たす。
<T<T ・・(1)
ここで、厚さ及びビッカース硬さの積は、剛性に相当する。
溶接金属部50Aが含有するアルミニウムの濃度は、0.3質量%以上2.5質量%以下であることが好ましい。
熱間プレス成形品1Aは、例えばBピラー等の自動車用の部品に用いられる。
なお、図1に示すテーラードブランク1の形状は、熱間プレス成形品1Aを平面状に展開して厚さ方向Zに見たときの形状でもある。
【0077】
ここで、溶接金属部50Aにおける直交方向Yの中心を通り、直交方向Yに直交する面を、基準面と言う。図2に示すように、溶接金属部50Aのビッカース硬さHは、前記基準面上の6箇所の位置P1で測定される。6箇所の位置P1のうちの3箇所は、溶接金属部50Aの長手方向Xの中心で測定される。6箇所の位置P1のうちの他の3箇所は、溶接金属部50Aの長手方向Xの中心よりも、部材10A,30Aのうち厚さが薄い部材(第2部材30A)寄りの位置で測定される。
3箇所の位置P1は、溶接金属部50Aにおける厚さ方向Zの各表層、及び各表層間の中心である。6箇所求めた値を平均した値を、ビッカース硬さHとする。
【0078】
次に、以上のように構成された熱間プレス成形品1Aを製造する、本実施形態の熱間プレス成形品の製造方法について説明する。図6は、熱間プレス成形品の製造方法S10を示すフローチャートである。
まず、テーラードブランク1を製造する、本実施形態のテーラードブランクの製造方法(図6に示すステップS11)を行う。テーラードブランクの製造方法S11では、配置工程(ステップS12)を行う。配置工程S12では、図7に示すように、第1鋼板10の端部と第2鋼板30の端部とを、長手方向Xに突合うように配置する。鋼板10,30では、端部における金属間化合物層12,32及びアルミニウムめっき層13,33が除去されていない。
配置工程S12が終了すると、ステップS13に移行する。
【0079】
次に、溶接工程(ステップS13)において、図1に示すように、第1鋼板10の端部と第2鋼板30の端部とを溶接により接合して、溶接金属部50を形成してテーラードブランク1を製造する。溶接には、レーザー溶接、プラズマ溶接等を用いることができる。
テーラードブランクの製造方法S11では、図1に示された形態を例として挙げると、二つの第1外縁角度θ11、二つの第2外縁角度θ12、四つの第1稜線角度θ21、及び四つの第2稜線角度θ22を含む十二のなす角度のうち、少なくとも一つが、80°以下であるように、テーラードブランク1を製造する。より詳しく説明すると、最小第1外縁角度θ11が80°以下であり、最小第2外縁角度θ12が80°以下となるようにテーラードブランク1を製造する。最小第1稜線角度θ21が90°であり、最小第2稜線角度θ22が90°となるように、テーラードブランク1を製造する。
溶接工程S13が終了すると、テーラードブランクの製造方法S11の全工程が終了し、ステップS16に移行する。
【0080】
次に、成形工程(ステップS16)において、テーラードブランク1を熱間プレス成形して、第1鋼板10から得られる第1部材10Aに、第1部第1稜線21A及び第1部第2稜線22Aを形成する。第2鋼板30から得られる第2部材30Aに、第2部第1稜線41A及び第2部第2稜線42Aを形成する。
例えば、熱間プレス成形は、テーラードブランク1を加熱した状態で所定の形状に成形するとともに、所定の形状に成形したテーラードブランク1を焼入れすることで行われる。例えば、加熱・成形工程における加熱条件は、最高到達温度が850℃~1000℃である。最高到達温度は、900℃~950℃であることがより好ましい。焼入れ工程は、プレス成形する金型を冷却したり、テーラードブランク1に直接水を噴霧して冷却したりすること等により行われる。
第1部第1稜線21A、第1部第2稜線22Aは、第1部第1稜線予定部21、第1部第2稜線予定部22の位置における第1鋼板10を折ることにより形成される。第2部第1稜線41A、第2部第2稜線42Aは、第2部第1稜線予定部41、第2部第2稜線予定部42の位置における第2鋼板30を折ることにより形成される。
【0081】
熱間プレス成形品の製造方法S10では、図5に示された形態を例として挙げると、熱間プレス成形品1Aを平面状に展開して厚さ方向Zに見たときに、最小第1外縁角度θ11が80°以下であり、最小第2外縁角度θ12が80°以下となるように熱間プレス成形品を製造する。最小第1稜線角度θ21が90°であり、最小第2稜線角度θ22が90°となるように熱間プレス成形品を製造する。
なお、熱間プレス成形品の製造方法S10では、熱間プレス成形品1Aを平面状に展開して厚さ方向Zに見たときに、四つの第1稜線角度θ21のうち少なくとも一つが60°以下であるように熱間プレス成形品1Aを製造してもよく、四つの第2稜線角度θ22のうち少なくとも一つが60°以下であるように熱間プレス成形品1Aを製造してもよい。より詳しく説明すると、最小第1稜線角度θ21及び最小第2稜線角度θ22の一方または双方が60°以下であるように熱間プレス成形品1Aを製造してもよい。
【0082】
成形工程S16が終了すると、熱間プレス成形品の製造方法S10の全工程が終了し、熱間プレス成形品1Aが製造される。
【0083】
以上説明したように、本実施形態の熱間プレス成形品1A及び熱間プレス成形品の製造方法S10では、発明者らは鋭意検討の結果、以下のことを見出した。すなわち、例えば、熱間プレス成形品1Aに対して長手方向に引張り力が作用したときに、溶接金属部50の第1交点Q1に連なる部分、溶接金属部50の第2交点Q2に連なる部分、溶接金属部50の第3交点Q3に連なる部分、及び溶接金属部50の第4交点Q4に連なる部分には、割れの起点が生じやすい。このため、二つの第1外縁角度θ11、二つの第2外縁角度θ12、四つの第1稜線角度θ21、及び四つの第2稜線角度θ22を含む十二のなす角のうち、少なくとも一つのなす角の角度が、熱間プレス成形品を平面状に展開して第2部材の厚さ方向に見たときに、80°以下となるように熱間プレス成形品を構成(製造)することにより、前記少なくとも一つのなす角を有する部分に作用した前記引張り力により生じる、溶接金属部が開く方向に作用する外力が抑えられる。従って、熱間プレス成形品1Aが溶接金属部50Aで破断するのを抑制することができる。
【0084】
熱間プレス成形品1Aは、溶接金属部50A、溶接金属部50Aに連なる第1部材10Aの少なくとも一部、及び溶接金属部に連なる第2部材30Aの少なくとも一部を有し、所定の方向に延びる軸部1Bを備えることが好ましい。熱間プレス成形品1Aが備える軸部1Bは所定の方向Uに延び、長手方向Xは所定の方向Uに相当する。このため、例えば、軸部1Bが延びる所定の方向Uに引張り力が作用したときに、熱間プレス成形品1Aが溶接金属部50Aで破断するのを抑制することができる。
【0085】
熱間プレス成形品1Aは、(1)式を満たすことが好ましい。熱間プレス成形品1Aにおいて、厚さ及びビッカース硬さの積、すなわち剛性が、溶接金属部50A、第2部材30A、第1部材10Aの順で大きくなる。一般的に、熱間プレス成形品において、(1)式の左側の不等式を満たして、部材の剛性よりも溶接金属部の剛性が小さい。部材の剛性よりも溶接金属部の剛性が小さいと、より溶接金属部に応力が集中しやすくなるが、二つの第1外縁角度θ11、二つの第2外縁角度θ12、四つの第1稜線角度θ21、及び四つの第2稜線角度θ22を含む十二のなす角のうち、少なくとも一つのなす角の角度が、熱間プレス成形品を平面状に展開して第2部材の厚さ方向に見たときに、80°以下となるように熱間プレス成形品を構成(製造)することにより、前記少なくとも一つのなす角を有する部分に作用した前記引張り力により生じる、溶接金属部が開く方向に作用する外力が抑えられる。従って、本願発明の効果を顕著に発現することができるため、部材の剛性よりも溶接金属部の剛性が小さいことが好ましい。
また、(1)式の右側の不等式を満たして、第1部材よりも第2部材の剛性を小さくすることで、第1部材10A及び第2部材30Aのうち、第2部材30Aに応力を集中させることができ、第2部材30Aで破断しやすくなる。これにより、熱間プレス成形品1Aにおける破断対策を、第2部材30Aに集中させることができる。
【0086】
熱間プレス成形品1Aを平面状に展開して、第2部材30Aの厚さ方向に見たときに、四つの第1稜線角度θ21のうち少なくとも一つの角度(最小第1稜線角度θ21)が、60°以下であることが好ましい。例えば、熱間プレス成形品1Aに対して長手方向Xに引張り力が作用したときに、溶接金属部の第3交点Q3に連なる部分において、溶接金属部50Aが開く方向に作用する外力をより抑えることができる。同様に、第2稜線角度θ22が存在する場合は、最小第2稜線角度θ22は、75°以下であることが好ましく、60°以下であることがより好ましい。さらに、最小第1稜線角度θ21及び最小第2稜線角度θ22の双方が60°以下であることが最も好ましい。
【0087】
溶接金属部50Aは、溶接始端56及び溶接終端57を有していることが好ましい。熱間プレス成形品1Aが溶接始端56及び溶接終端57を有する場合であっても、溶接金属部50Aで破断するのを抑制することができ、本願の溶接金属部での破断抑制効果をより効果的に発現することができる。
【0088】
溶接金属部50Aが含有するアルミニウムの濃度が、0.3質量%以上2.5質量%以下であることが好ましい。溶接金属部50Aのアルミニウム濃度が係る範囲であると、溶接金属部のアルミニウム濃度が大きいため、溶接金属部の耐食性を向上させることができる。
【0089】
溶接金属部50Aは、折線状又は曲線状であることが好ましい。溶接金属部50Aを折線状又は曲線状とすることで、溶接金属部が直線状である場合に比べて、溶接金属部50Aが一度に破断し難くなる。
【0090】
熱間プレス成形品1Aは、自動車用の部品に用いられることが好ましい。自動車用の部品は、信頼性が求められるため、溶接金属部50Aで破断するのを抑制できる本発明に好適である。
【0091】
また、本実施形態のテーラードブランク1及びテーラードブランクの製造方法S11では、発明者らは鋭意検討の結果、以下のことを見出した。すなわち、例えば、テーラードブランク1を熱間プレス成形した熱間プレス成形品1Aに対して長手方向Xに引張り力が作用したときに、溶接金属部の第1交点Q1に連なる部分、溶接金属部の第2交点Q2に連なる部分、溶接金属部の第3交点Q3に連なる部分、及び溶接金属部50の第4交点Q4に連なる部分には、割れの起点が生じやすい。このため、テーラードブランクにおいて、二つの第1外縁角度θ11、二つの第2外縁角度θ12、四つの第1稜線角度θ21、及び四つの第2稜線角度θ22を含む十二のなす角のうち、少なくとも一つのなす角の角度が、熱間プレス成形品を平面状に展開して第2部材の厚さ方向に見たときに、80°以下となるように熱間プレス成形品を構成(製造)する。すると、このテーラードブランク1を熱間プレス成形して熱間プレス成形品としたときに、前記少なくとも一つのなす角を有する部分に作用した前記引張り力により生じる、溶接金属部50Aが開く方向に作用する外力が抑えられる。従って、テーラードブランク1を熱間プレス成形した熱間プレス成形品1Aが溶接金属部50Aで破断するのを抑制することができる。
【0092】
本実施形態の熱間プレス成形品1Aは、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
図8に示す第1変形例の熱間プレス成形品2Aは、本実施形態の熱間プレス成形品1Aにおける溶接金属部50Aに代えて、溶接金属部60Aを備えている。なお、熱間プレス成形品2Aは、テーラードブランク2を熱間プレス成形したものである。
溶接金属部60Aでは、最小第1外縁角度θ11及び最小第2外縁角度θ12は、それぞれ90°である。最小第1稜線角度θ21及び最小第2稜線角度θ22は、それぞれ80°以下である。また、溶接金属部60Aは、熱間プレス成形品1Aの直交方向Yの中央を基準としたときの、線対称な折線状である。
【0093】
図9に示す第2変形例の熱間プレス成形品3Aは、本実施形態の熱間プレス成形品1Aにおける溶接金属部50Aに代えて、溶接金属部70Aを備えている。なお、熱間プレス成形品3Aは、テーラードブランク3を熱間プレス成形したものである。
溶接金属部70Aでは、最小第1外縁角度θ11及び最小第2外縁角度θ12は、それぞれ90°である。最小第1稜線角度θ21及び最小第2稜線角度θ22は、80°以下である。また、溶接金属部70Aは、熱間プレス成形品1Aの直交方向Yの中央を基準としたときの、非線対称な折線状である。
熱間プレス成形品3Aを平面状に展開して厚さ方向Zに見たときに、溶接金属部70Aは、第2部第1稜線41Aと第2部第2稜線42Aとの間の全長にわたって、溶接金属部70Aと長手方向Xとの四つのなす角のうち、少なくとも一つのなす角の角度は、80°以下である。
熱間プレス成形品3Aを製造する熱間プレス成形品の製造方法では、成形工程において、熱間プレス成形品3Aを平面状に展開して厚さ方向Zに見たときに、溶接金属部70Aは、第2部第1稜線41Aと第2部第2稜線42Aとの間の全長にわたって、溶接金属部70Aと長手方向Xとの四つのなす角のうち、少なくとも一つのなす角の角度が80°以下となるように熱間プレス成形品3Aを製造する。
【0094】
第2,第3変形例の熱間プレス成形品2A,3Aは、溶接金属部60A,70Aで破断するのを抑制することができる。
さらに、熱間プレス成形品3A及び熱間プレス成形品の製造方法では、第2部第1稜線41Aと第2部第2稜線42Aとの間の全長にわたって、熱間プレス成形品3Aが溶接金属部70Aで破断するのを抑制することができる。
【0095】
(実験例)
次に、稜線を備えない熱間プレス成形品を用いて引張試験を行った結果について説明する。なお、第1部材、第2部材ともにアルミニウムめっき部材を用いた。
図10に示す実験例の熱間プレス成形品4Aでは、溶接金属部50Aに対する第1外縁角度θ11及び第2外縁角度θ12は、それぞれ90°である。
図11に示す実験例の熱間プレス成形品5Aでは、溶接金属部50Aに対する第1外縁角度θ11は60°であり、第2外縁角度θ12は60°である。
図12に示す実験例の熱間プレス成形品6Aでは、溶接金属部50Aに対する第1外縁角度θ11は45°であり、第2外縁角度θ12は45°である。
熱間プレス成形品5A,6Aには稜線は形成されていないが、熱間プレス成形品4Aよりも実施例に近い。
【0096】
熱間プレス成形品4A,5A,6Aを長手方向に引張る引張試験を行い、引張荷重に対する、熱間プレス成形品4A,5A,6Aのストローク(伸び)との関係を調べた。
図10から図12に示すように、熱間プレス成形品4A,5A,6Aそれぞれ3本ずつ試験を行った。熱間プレス成形品4A,5A,6Aは、破断位置P4,P5,P6でそれぞれ破断した。熱間プレス成形品4Aでは、一部は溶接金属部50Aで破断した。熱間プレス成形品5A,6Aでは、第2部材で破断した。
【0097】
試験結果を、図13に示す。図13において、横軸は熱間プレス成形品4A,5A,6Aのストローク(mm)を表し、縦軸は熱間プレス成形品4A,5A,6Aに作用させた引張荷重(kN)を表す。図13において、一点鎖線による線L4は、熱間プレス成形品4Aの試験結果を表す。同様に、実線による線L5は、熱間プレス成形品5Aの試験結果を表し、点線による線L6は、熱間プレス成形品6Aの試験結果を表す。
熱間プレス成形品4A,5A,6Aの破断荷重は、互いにほぼ同等である。熱間プレス成形品4Aに比べて、熱間プレス成形品5A,6Aでは、破断時のストロークが大きい。このため、破断までのエネルギー吸収量は、熱間プレス成形品4Aよりも熱間プレス成形品5A,6Aが多くなる。
この試験結果から、熱間プレス成形品において、第1外縁角度θ11及び第2外縁角度θ12の少なくとも一方を80°以下にすることにより、第1外縁角度θ11及び第2外縁角度θ12がそれぞれ90°の場合に比べて、熱間プレス成形品が破断するまでのエネルギー吸収量が多くなると考えられる。
【0098】
(実施例)
次に、熱間プレス成形品を用いて引張試験を行った結果について説明する。
表1及び図14から図19に示す諸元の、サンプルNo.1~6の熱間プレス成形品に対して引張試験を行った。なお、第1部材、第2部材ともにアルミニウムめっき部材を用いた。
【0099】
【表1】
【0100】
なお、図14から図19は、熱間プレス成形品を平面状に展開したときの形状を示す。
サンプルNo.1~6の熱間プレス成形品において、熱間プレス成形品の直交方向Yの負側(第1側Y1)の端を、直交方向Yの原点とした。部材10A,30Aの幅(直交方向Yの長さ)を、400mmとした。第2部第1稜線41Aの直交方向Yの位置を、100mmとした。なお、図14から図19は、溶接金属部50A近傍を抽出した図であり、各サンプルの長手方向はX方向である。
【0101】
サンプルNo.1~6において、以下のように厚さ及びビッカース硬さを設定した。
第1部材10Aの厚さTを、1.6mmとした。第1部材10Aのビッカース硬さHを、500HVとした。第2部材30Aの厚さTを、1.2mmとした。第2部材30Aのビッカース硬さHを、400HVとした。溶接金属部50Aの厚さTを、1.2mmとした。溶接金属部50Aのビッカース硬さHを、300HVとした。
【0102】
例えば、サンプルNo.1の熱間プレス成形品において、最小第1外縁角度θ11を、30°とした。最小第1稜線角度θ21を、90°とした。最小第2稜線角度θ22を、90°とした。最小第2外縁角度θ12を、30°とした。溶接金属部50Aの形状を、長手方向Xに平行な所定の軸線に対して線対称の折線状とした。
サンプルNo.1の熱間プレス成形品を用いて引張試験を行った。その結果、第2部材30Aで破断し、破断荷重は565kNであった。
【0103】
同様に、サンプルNo.2~6の熱間プレス成形品に対しても、引張試験を行った。
サンプルNo.1~4,6の熱間プレス成形品が実施例であり、サンプルNo.5の熱間プレス成形品が比較例である。サンプルNo.1~4,6の熱間プレス成形品では、サンプルNo.5の熱間プレス成形品に比べて、溶接金属部50Aで破断するのが抑制され、破断荷重が大きくなることが分かった。
【0104】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、テーラードブランクにおいて、第1鋼板10は、第1部第3片18及び第1部第2稜線予定部22を有さなくてもよい。
【0105】
第1鋼板10は、4つ以上の片から構成されてもよい。第2鋼板30は、第2部第3片38及び第2部第2稜線予定部42を有さなくてもよい。鋼板30は、4つ以上の片から構成されてもよい。
熱間プレス成形品における第1部材10A及び第2部材30Aについても、同様である。
【符号の説明】
【0106】
1,2,3 テーラードブランク
1A,2A,3A,4A,5A,6A 熱間プレス成形品
1B 軸部
10 第1鋼板
10A 第1部材
16 第1部第1片
17 第1部第2片
18 第1部第3片
21 第1部第1稜線予定部
21A 第1部第1稜線
22 第1部第2稜線予定部
22A 第1部第2稜線
30 第2鋼板
30A 第2部材
36 第2部第1片
36d,37d 外縁
37 第2部第2片
38 第2部第3片
41 第2部第1稜線予定部
41A 第2部第1稜線
42 第2部第2稜線予定部
42A 第2部第2稜線
50,50A,60A,70A 溶接金属部
56 溶接始端
57 溶接終端
Q1 第1交点
Q2 第2交点
Q3 第3交点
Q4 第4交点
θ11 最小第1外縁角度
θ12 最小第2稜線角度
θ21 最小第1稜線角度
θ22 最小第2稜線角度
S10 熱間プレス成形品の製造方法
S11 テーラードブランクの製造方法
S12 配置工程
S13 溶接工程
S16 成形工程
U 所定の方向
X 長手方向
Y 直交方向
Z 厚さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19