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特開2023-59618保護ガラス汚れ検知装置及び保護ガラス汚れ検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059618
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】保護ガラス汚れ検知装置及び保護ガラス汚れ検知方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20230420BHJP
【FI】
B23K26/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169725
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】天野 達也
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA00
4E168CA01
4E168CB03
4E168CB08
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA26
4E168DA28
4E168DA29
4E168EA17
4E168EA24
(57)【要約】
【課題】レーザ加工機の加工条件に応じて保護ガラスの汚れの度合いを適切に検知する。
【解決手段】レーザ光LBを集光させて被加工物Wに照射するための集光レンズ19を汚れから保護するための保護ガラス25の汚れを検知する保護ガラス汚れ検知装置は、散乱光検出部27と、情報取得部35と、汚れ閾値設定部37と、汚れ判定部39とを備える。散乱光検出部27は、保護ガラス25に付着した汚れ51によって生じる散乱光SLを検出する。情報取得部35は、レーザ加工機の加工条件に関する情報を取得する。汚れ閾値設定部37は、レーザ加工機の加工条件に基づいて、散乱光検出部により検出された検出値Xから保護ガラス25の汚れを検知するための汚れ閾値を設定する。汚れ判定部39は、検出値Xと汚れ閾値とに基づいて、保護ガラス25の汚れの度合いを判定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工機において、レーザ光を集光させて被加工物に照射するための集光レンズを汚れから保護するための保護ガラスの汚れを検知する保護ガラス汚れ検知装置であって、
前記保護ガラスに付着した汚れによって生じる散乱光を検出するための散乱光検出部と、
前記レーザ加工機の加工条件に関する情報を取得する情報取得部と、
前記レーザ加工機の加工条件に基づいて、前記散乱光検出部により検出された検出値から前記保護ガラスの汚れを検知するための汚れ閾値を設定する汚れ閾値設定部と、
前記検出値と前記汚れ閾値とに基づいて、前記保護ガラスの汚れの度合いを判定する汚れ判定部と、
を備える保護ガラス汚れ検知装置。
【請求項2】
前記レーザ加工機の加工条件は、加工中に射出される前記レーザ光の単位時間当たりの平均出力を調整する項目を含む
請求項1に記載の保護ガラス汚れ検知装置。
【請求項3】
前記レーザ加工機の加工条件は、加工中に前記保護ガラスへ照射される前記レーザ光の照射面積を調整する項目を含む
請求項1に記載の保護ガラス汚れ検知装置。
【請求項4】
前記レーザ加工機の加工条件は、加工中に射出される前記レーザ光のレーザ条件を含む
請求項1~3のいずれか1項に記載の保護ガラス汚れ検知装置。
【請求項5】
前記レーザ加工機の加工条件は、前記散乱光検出部のセンサ特性を含む
請求項1~4のいずれか1項に記載の保護ガラス汚れ検知装置。
【請求項6】
前記レーザ加工機の加工条件は、前記レーザ光を射出する前記レーザ加工機の機械仕様を含む
請求項1~5のいずれか1項に記載の保護ガラス汚れ検知装置。
【請求項7】
前記汚れ閾値設定部は、
前記レーザ加工機の加工条件に基づいて、前記汚れ閾値を設定するための汚れ閾値の算出式を選択し、
選択した前記汚れ閾値の算出式に基づいて、前記汚れ閾値を算出する
請求項1~6のいずれか1項に記載の保護ガラス汚れ検知装置。
【請求項8】
前記レーザ光のレーザ条件は、加工中に射出される前記レーザ光のレーザピーク出力値と、前記レーザ光のパルス周波数と、前記レーザ光のデューティ比と、を含む
請求項4に記載の保護ガラス汚れ検知装置。
【請求項9】
前記レーザ光を被加工物の上面に照射するときの前記レーザ光のビーム径は、光学系要素によるビーム径変更や焦点位置変更によって、ビームウエスト径からビームウエスト径よりも大きいビーム径まで可変であって、
前記レーザ光のレーザ条件は、前記レーザ光のビーム径が、ビームウエスト径である場合からビームウエスト径よりも大きいビーム径となる場合までのビーム径の変化度を示すゲイン補正値を含む
請求項4又は8に記載の保護ガラス汚れ検知装置。
【請求項10】
前記散乱光検出部のセンサ特性は、前記散乱光検出部の検出信号が初期電圧からピーク値に達するまでに要する時間であるセンサ立上り時間と、前記検出信号がピーク値から初期電圧に下がるまでに要する時間であるセンサ立下り時間と、前記検出信号のサンプリング周波数とを含む
請求項5に記載の保護ガラス汚れ検知装置。
【請求項11】
前記レーザ光を射出する前記レーザ加工機の機械仕様は、前記レーザ光を射出する前記レーザ加工機の機械仕様と前記散乱光検出部のセンサ仕様よって定まる任意変数と、前記保護ガラスの特性によって定まる任意変数とを含む
請求項6に記載の保護ガラス汚れ検知装置。
【請求項12】
レーザ加工機において、レーザ光を集光させて被加工物に照射するための集光レンズを、レーザ加工により前記被加工物から飛んでくる汚れから保護するための保護ガラスの汚れを検知する保護ガラス汚れ検知方法であって、
前記保護ガラスに付着した汚れによって生じる散乱光を検出し、
前記レーザ加工機の加工条件に関する情報を取得し、
前記レーザ加工機の加工条件に基づいて、検出された前記散乱光の検出値から前記保護ガラスの汚れを検知するための汚れ閾値を設定し、
前記散乱光の検出値と前記汚れ閾値とに基づいて、前記保護ガラスの汚れの度合いを判定する
保護ガラス汚れ検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護ガラス汚れ検知装置及び保護ガラス汚れ検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーザ加工機におけるレーザ加工ヘッドのレーザ射出口には、レーザ加工において被加工物から飛んでくるスパッタ(スプラッシュ)又は金属ヒューム、埃等の汚れから集光レンズを保護するための保護ガラスが設けられている。
【0003】
このレーザ加工ヘッドの保護ガラスは、保護ガラス表面上に汚れが付着することとなり、その汚れにより、レーザ光の照射量が低下し、加工品質に悪影響を及ぼすことがある。そのため、汚れの状態に応じて保護ガラスを清掃したり、交換したりする必要がある。
【0004】
特許文献1には、保護ガラス表面上に付着した汚れの粒子によって保護ガラスの縁に散乱される散乱光や保護ガラスの発光を感知する光検出器を配置し、光検出器の検出信号がある一定のレベル(閾値)に達した時に、保護ガラスが汚れていると判断し、保護ガラスの交換を表示する保護ガラス汚れ検知装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001-509889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の保護ガラス汚れ検知装置は、保護ガラス表面上の汚れの量に応じて散乱される散乱光の量が大きくなり、光検出器の検出信号のレベルが大きくなることを利用して、保護ガラスの汚れを検知する。
【0007】
ここで、保護ガラスへ入射するレーザ光の入射光強度に対する、保護ガラスの散乱光の強度は、汚れの無い保護ガラスであっても一定の散乱光の強度が存在する。保護ガラスに異物が付着すれば、散乱光の強度も増す。よって、レーザ光の入射光強度が2倍になれば、散乱光の強度も2倍になる。保護ガラスへ入射するレーザ光の入射光強度に関係するレーザ光の出力、デューティ比、パルス周波数、ビーム径などの条件は、加工条件に応じて変更されるため、保護ガラス表面上の汚れの量に応じて散乱される散乱光の量は、加工条件によって変化する。例えば、加工条件によってレーザ出力が2倍になれば、散乱光の量も2倍になり、光検出器の検出信号のレベルも2倍になる。したがって、加工条件が変化するにもかかわらず汚れ検出の閾値が一定の固定値である場合には、保護ガラスの汚れの度合いを適切に検知できないことがある。
【0008】
本発明は、レーザ加工機の加工条件に応じて保護ガラスの汚れの度合いを適切に検知できる保護ガラス汚れ検知装置及び保護ガラス汚れ検知方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る保護ガラス検知装置は、レーザ加工機において、レーザ光を集光させて被加工物に照射するための集光レンズを汚れから保護するための保護ガラスの汚れを検知する保護ガラス汚れ検知装置であって、保護ガラスに付着した汚れによって生じる散乱光を検出するための散乱光検出部と、レーザ加工機の加工条件に関する情報を取得する情報取得部と、レーザ加工機の加工条件に基づいて、散乱光検出部により検出された散乱光の検出値から保護ガラスの汚れを検知するための汚れ閾値を設定する汚れ閾値設定部と、検出値と汚れ閾値とに基づいて、保護ガラスの汚れの度合いを判定する汚れ判定部と、を備える。
【0010】
汚れ閾値設定部は、レーザ加工機の加工条件に基づいて、保護ガラス汚れを検知するための汚れ閾値を設定する。保護ガラス表面上の汚れの量に応じて散乱される散乱光の量が、加工条件によって変化する場合であっても、加工条件に適した汚れ閾値を設定できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、加工条件に応じてレーザ加工機の保護ガラスの汚れの度合いを適切に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明を実施した汚れ検知装置を備えたレーザ加工機の概略構成図である。
図2図2は、図1に示した加工ヘッド21に設けられた保護ガラス25の概略構成図である。
図3図3は、レーザ光を照射している状態での、汚れ51の付着した保護ガラス25の端面からの散乱光を検出する様子を示した説明図である。
図4図4は、本発明を実施した保護ガラス汚れ検知装置及びNC装置23の構成例を説明するブロック図である。
図5図5は、本発明を実施した保護ガラス汚れ検知装置の動作のフローチャートである。
図6図6は、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式の選択方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、レーザ光LBのパルス周波数F及びデューティ比Dの関係に基づくワーニング閾値Wpk(N)の算出式の選択方法の一例を示す説明図である。
図8図8は、センサ27の検出値Xの変化とワーニング閾値Wpk(1)とを示すグラフであり、レーザ光のデューティ比が30%、パルス周波数が10Hzの場合である。
図9図9は、センサ27の検出値Xの変化とワーニング閾値Wpk(2)とを示すグラフであり、レーザ光のデューティ比が40%、パルス周波数が5000Hzの場合である。
図10図10は、センサ27の検出値Xの変化とワーニング閾値Wpk(3)とを示すグラフであり、レーザ光のデューティ比が20%、パルス周波数が100Hzの場合である。
図11図11は、センサ27の検出値Xの変化とワーニング閾値Wpk(4)とを示すグラフであり、レーザ光のデューティ比が40%、パルス周波数が500Hzの場合である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、一実施形態の保護ガラス汚れ検出装置及び保護ガラス汚れ検知方法について説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0014】
[レーザ加工機の構成]
図1は、本発明を実施した汚れ検知装置を備えたレーザ加工機の概略構成図である。
図1に示すように、このレーザ加工機は、レーザ光LBを生成するレーザ発振器1により生成されたレーザ光LBが、プロセスファイバ3を介してレーザ加工ユニット5へ送られ、レーザ加工ユニット5が、レーザ光LBを高エネルギー密度に集光させて、種々の材料からなる被加工物(ワーク)Wに照射して加工を行うようになっている。被加工物Wは、例えば軟鋼板である。被加工物Wは、例えばステンレス鋼等の、軟鋼板以外の鉄系の板金であっても構わないし、アルミニウム、アルミニウム合金、銅鋼などの板金であっても構わない。なお、本実施形態においては、本発明を実施した汚れ検知装置を備えたレーザ加工機は、レーザ光LBにより被加工物Wを溶接する溶接機を例として説明しているが、レーザ加工機は、レーザ光LBにより被加工物Wを切断する切断加工機であってもよい。レーザ加工機の種類は特に限定されない。
【0015】
レーザ発振器1は、レーザ光LBを生成して射出する。レーザ発振器1としては、レーザダイオードより発せられる励起光を増幅して所定の波長のレーザ光を射出するレーザ発振器、又はレーザダイオードより発せられるレーザ光を直接利用するレーザ発振器が好適である。レーザ発振器1は、例えば、固体レーザ発振器、ファイバレーザ発振器、ディスクレーザ発振器、ダイレクトダイオードレーザ発振器(DDL発振器)である。
【0016】
レーザダイオードビームの具体的なレーザ波長は、例えば、ファイバレーザ発振器、ディスクレーザ発振器が射出するレーザビームのレーザ波長は、代表的には1060nm~1080nmであり、DDL発振器が射出するレーザビームのレーザ波長は、300nm~1000nmの範囲の何れかである。
【0017】
プロセスファイバ3は、レーザ発振器1より射出されたレーザ光LBをレーザ加工ユニット5へと伝送する。
【0018】
レーザ加工ユニット5は、プロセスファイバ3によって伝送されたレーザ光LBを用いて、被加工物Wを溶接する。レーザ加工ユニット5は、被加工物Wが載せられる加工テーブル7と、ロボット11とコリメータユニット13とを有する。ロボット11は多軸(6軸)で構成され、コリメータユニット13をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動自在に構成しており、またコリメータユニット13の向きを角度自在に構成している。
【0019】
コリメータユニット13は、プロセスファイバ3によって伝送されたレーザ光LBを被加工物Wに照射する。コリメータユニット13には、プロセスファイバ3から射出されたレーザ光LBを略平行光束に変換するコリメータレンズ15と、略平行光束に変換されたレーザ光LBを集光する集光レンズ19を有している。コリメータレンズ15及び集光レンズ19は、予め光軸が調整された状態で配置されている。なお、レーザ光LBを被加工物Wの上面に照射するときのレーザ光LBのビーム径は、光学系要素によるビーム径変更や焦点位置変更によって、ビームウエスト径から、ビームウエスト径よりも大きいビーム径まで可変である。
【0020】
コリメータユニット13は、被加工物Wにレーザ光LBを射出する加工ヘッド21を有している。コリメータユニット13は、ロボット11に固定され、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動自在に構成され、且つ加工ヘッド21の向きを角度自在に構成している。よって、加工ヘッド21、すなわち、レーザ光LBを被加工物Wに照射する位置を、被加工物Wの面(X軸方向及びY軸方向)に沿って移動させることができる。なお、加工ヘッド21を被加工物Wの面に沿って移動させる構成に代えて、加工ヘッド21の位置を固定したまま、被加工物Wを移動する構成であってもよい。すなわち、被加工物Wの面に対して加工ヘッド21を相対的に移動させる構成を備えていればよい。
【0021】
なお、レーザ加工機は、後述するNC(Numerical Control)装置23およびPLC(Programmable Logic Controller)29により駆動制御される。
【0022】
図2は、図1に示した加工ヘッド21に設けられた保護ガラス25の概略構成図である。
図1および図2に示すように、加工ヘッド21は、その加工内容に合わせて、窒化や酸化を防ぐためにシールドガスを供給する機構を選択可能に構成しており、また、その加工ヘッド21における集光レンズ19と被加工物Wとの間に、レーザ加工において被加工物Wから飛んでくるスパッタ(スプラッシュ)や金属ヒューム、埃等の汚れから集光レンズ19を保護するための保護ガラス25が設けられている。さらに、レーザ加工において被加工物Wから飛んでくるスパッタ(スプラッシュ)や金属ヒューム、埃等の汚れが加工ヘッド21への侵入しないように、エアーナイフ機構を構成してもよい。
【0023】
この保護ガラス25は、保護ガラス25を収納する保護ガラスフォルダ内に収納された状態で、加工ヘッド21へ着脱自在に取り付けられる構成となっており、保護ガラスフォルダを加工ヘッド21から取り出すことにより、簡単に保護ガラス25を交換できるようになっている。
【0024】
そして、この保護ガラス25の端部には、加工ヘッド21に取り付けられた状態の保護ガラス25の端面からの散乱光SLを受光するセンサ27が設けられる。すなわち、センサ27は、保護ガラス25に付着した汚れ51によって生じる散乱光SLを検出する。センサ27からの検出信号は、保護ガラス25の汚れのレベルを判定する処理をシーケンス的に制御するPLC29へ送られる。
【0025】
図3は、レーザ光を照射している状態での、汚れ51の付着した保護ガラス25の端面からの散乱光SLを検出する様子を示した説明図である。
図3に示すように、レーザ光LBを照射してレーザ加工を行っている時に、保護ガラス25の下面25bに汚れ51が付着すると、集光レンズ19からのレーザ光LBが汚れ35に当たって散乱光SLが発生する。センサ27は、この散乱光SLのうちの保護ガラス25の端面から出射したものを検出する。すなわち、センサ27は、保護ガラス25の端面から出射した散乱光量を検出する。なお、センサ27は、レーザ加工において継続して散乱光量を検出する。
【0026】
図4は、本発明を実施した保護ガラス汚れ検知装置及びNC装置23の構成例を説明するブロック図である。
本実施形態においては、保護ガラス検知装置は、センサ27とPLC29とを備え、PLC29はNC装置23に接続されている。保護ガラス検知装置は、レーザ加工機において、レーザ光LBを集光させて被加工物に照射するための集光レンズ19を汚れから保護するための保護ガラス25の汚れ51を検知する。
【0027】
図4に示すように、PLC29は、アナログI/F回路31と、ADコンバータ33と、情報取得部35と、汚れ閾値設定部37と、汚れ判定部39とを備える。
【0028】
アナログI/F回路31は、センサ27からの検出信号を増幅して高周波成分(ノイズ)をカットする。ADコンバータ33は、アナログI/F回路31からのアナログ信号をデジタル信号へ変換し、検出値Xとして出力する。
【0029】
情報取得部35は、ADコンバータ33から検出値Xを取得する。情報取得部35は、NC装置23から、NC装置23がレーザ加工を開始したか否か及びレーザ加工を終了したか否かの情報を取得する。また、情報取得部35は、NC装置23から、レーザ加工機の加工条件に関する情報を取得する。レーザ加工機の加工条件は、加工中に射出されるレーザ光LBの単位時間当たりの平均出力Pavと、加工中に保護ガラス25へ照射されるレーザ光LBの照射面積を調整する項目を含む。なお、単位時間当たりの平均出力Pavは、加工中に射出されるレーザ光LBのレーザ出力と、パルス周波数と、パルス幅をパルス期間で割ったデューティ比とによって決定される、単位時間で被加工物Wへ照射されるレーザ光LBの出力を指し示す。
【0030】
単位時間当たりのレーザ光LBの平均出力Pavだけが変化した場合、保護ガラス25に照射されるレーザエネルギ量と被加工物Wへ照射されるレーザエネルギ量とが比例関係にあるのに対し、保護ガラス25へ照射されるレーザ光LBの照射面積の変化と被加工物Wへ照射されるレーザ光LBの照射面積の変化とは、例えば被加工物Wの上方でビームウエストを設定した場合を想定した場合に理解されるように、必ずしも比例関係にはない。このため、レーザ光LBのレーザ出力の変化と保護ガラス25へ照射されるレーザ光LBの照射面積とは、別々に調整して保護ガラス汚れ検知に採用されるべきである。よって、保護ガラス25へ照射されるレーザ光LBの照射面積の調整とは、そのようなレーザ光LBの被加工物Wへの照射面積と保護ガラス25への照射面積の異なりを鑑みた、保護ガラス25へ照射されるレーザ光LBの照射面積をどのように取り扱うのかという調整を指し示す。
【0031】
情報取得部35が取得するレーザ加工機の加工条件は、加工中に射出されるレーザ光LBのレーザ条件を含む。レーザ条件には、レーザ光LBのレーザピーク出力値P(kW)と、パルス周波数Fと、デューティ比Dと、レーザ光LBのビーム径により定まるゲイン補正値Gとが含まれる。レーザピーク出力値P、パルス周波数F、デューティ比D、ゲイン補正値Gの値は一定ではなく、レーザ条件によって変更される。なお、レーザ光LBのビーム径により定まるゲイン補正値Gとは、レーザ光LBを被加工物Wの上面に照射するときのレーザ光LBのビーム径が、ビームウエスト径である場合から、光学系要素によるビーム径変更や焦点位置変更によってビームウエスト径よりも大きいビーム径となる場合までの、ビーム径の変化度を係数として指し示したものである。ゲイン補正値Gは、物理量と直接的に関連する必然性は持たなくても良い値である。
【0032】
レーザ光LBのビーム径により定まるゲイン補正値Gに起因する保護ガラス25へ照射されるレーザ光LBの照射面積とは、次のように理解される。つまり、ゲイン補正値Gは被加工物Wに照射されるビーム径の変化度を係数として指し示したものであり、そのビーム径の変化度は、BPP(ビーム・パラメータ積)を変化させる光学系要素を含むものでビーム径を変化させてもよいし、BPPを変化させずにビーム径を変化させる光学系要素を含むものでビーム径を変化させてもよいし、その複合でビーム径を変化させてもよい。そのようなゲイン補正値Gの変化は、被加工物Wに照射されるレーザ光LBの照射面積と、保護ガラス25へ照射されるレーザ光LBの照射面積とが、必ずしも一定の法則(例えば、比例関係であるような法則)に基づくとは限らず、場合分けして保護ガラス25へ照射されるレーザ光LBの照射面積をどのように取り扱うのかを調整して得られる場合もある。
【0033】
また、情報取得部35が取得するレーザ加工機の加工条件は、センサ27のセンサ特性を含む。センサ27のセンサ特性には、センサ27の初期電圧V0(V)と、センサ立上り時間tr(msec)と、センサ立下り時間tf(msec)と、センサ27の応答時間及びセンサ27の検出信号のサンプリング周波数により定まる変数sとが含まれる。センサ立上り時間tr(msec)は、センサ27の検出信号が初期電圧V0からピーク値に達するまでに要する時間である。センサ立下り時間tfは、センサ27の検出信号がピーク値から初期電圧V0(V)に下がるまでに要する時間である。初期電圧V0、センサ立上り時間tr、センサ立下り時間tf、変数sの値は一定ではなく、センサ特性によって変更される。なお、例えばPD(Photo Diode)チップの応答が高速であったとしても、センサ27が信号を安定的に出力できる能力は、オペアンプなどの各部品のリード線のインダクタンスや帰還抵抗による寄生容量や浮遊容量などを考慮した応答可能速度がある。したがって、センサ立上り時間tr及びセンサ立下り時間tfは、その仕様やコストに合わせて、一定程度掛かるものである。
【0034】
さらに、情報取得部35が取得するレーザ加工機の加工条件は、レーザ光LBを射出するレーザ加工機の機械仕様の情報を含む。レーザ加工機の機械仕様の情報には、用いる保護ガラス25の特性によって定まる任意変数aと、機械仕様とセンサ27のセンサ仕様により定まる任意変数bとが含まれる。任意変数a、bの値は一定ではなく、レーザ加工機の機械仕様とセンサ27のセンサ仕様によって変更される。なお、任意変数bは、後述する汚れ閾値の算出式Wpk(3)とWpk(4)の切り替えタイミングを指定する変数である。
【0035】
汚れ閾値設定部37は、NC装置23から取得したレーザ加工機の加工条件に基づいて、センサ27により検出された散乱光SLの検出値Xから保護ガラス25の汚れ51を検知するための汚れ閾値を設定する。汚れ閾値設定部37は、レーザ加工機の加工条件に基づいて、汚れ閾値を設定するための汚れ閾値の算出式を選択し、選択した汚れ閾値の算出式に基づいて、汚れ閾値を算出する。そして、保護ガラス25の汚れのレベルを判定するための汚れ閾値を設定する。
【0036】
ここで、レーザ加工機の加工条件に基づいて汚れ閾値を設定する意義について説明する。
保護ガラス25の汚れ51を検知する際、例えばレーザ条件が変更され、レーザ光LBのパルス周波数F及びデューティ比Dが変化すると、レーザ光LBの平均出力Pavも変化する。レーザ光LBの平均出力Pavが変化すると、保護ガラス25へ入射するレーザ光LBの入射光強度が変化し、汚れ51の量に応じて散乱される散乱光SLの量も変化する。この場合、保護ガラス25の表面上の汚れ51が同一であっても、レーザ条件によってセンサ27の検出値Xが変化してしまう。したがって、レーザ条件に基づいて保護ガラス25の汚れ閾値を設定することで、保護ガラス汚れ検知を一定感度に補正でき、保護ガラス25の汚れの度合いを適切に検知することができる。
【0037】
また、例えばセンサ27のセンサ特性が変更され、センサ27の出力電圧のピーク値が変化する場合、レーザ加工機の機械仕様が変更され、保護ガラス25の特性及び加工ヘッド21のノズル径等が変化する場合等にも、保護ガラス25の表面上の汚れ51が同一であっても、センサ特性及びレーザ加工機の機械仕様によってセンサ27の検出値Xが変化してしまう。したがって、センサ27のセンサ特性及びレーザ加工機の機械仕様に基づいて保護ガラス25の汚れ閾値を設定することにより、保護ガラス汚れ検知を一定感度に補正でき、保護ガラスの汚れの度合いをより適切に検知することができる。レーザ加工機の加工条件に基づいて汚れ閾値を設定することにより、保護ガラスの汚れの度合いを適切に検知することができる。
【0038】
具体的には、汚れ閾値設定部37は、NC装置23から取得したレーザ加工機の加工条件が、予め記憶された判定式を満たすか否かを判定することにより、汚れ閾値の算出式を選択する。そして、選択した汚れ閾値の算出式に基づいて、保護ガラス25の汚れ51を検知するための汚れ閾値を算出する。
【0039】
本実施形態では、汚れ閾値設定部37は、汚れ閾値としてワーニング閾値Wpk(N)及びアラーム閾値Apk(N)とを設定する。ワーニング閾値Wpk(N)は、レーザ加工に明らかな支障は起こらないが、加工の種類によっては、加工品質に影響が出てしまうような汚れを判定するための汚れ閾値である。また、アラーム閾値Apk(N)は、レーザ加工に支障が出てしまうため、保護ガラス25を要交換とするような汚れを判定するための汚れ閾値であり、ワーニング閾値Wpk(N)に任意の変数cを乗じて、アラーム閾値Apk(N)を算出する。ワーニング閾値Wpk(N)の算出式の選択方法及びワーニング閾値Wpk(N)の算出方法の詳細については、後述する。
【0040】
汚れ判定部39は、センサ27の検出値Xと、汚れ閾値設定部37により設定された汚れ閾値とに基づいて、保護ガラス25の汚れの度合いを判定する。具体的には、汚れ判定部39は、検出値Xが、汚れ閾値設定部37により設定されたワーニング閾値Wpk(N)を超えたか否かを判定する。汚れ判定部39は、検出値Xがワーニング閾値Wpk(N)を超えた場合に、検出値Xがアラーム閾値Apk(N)を超えたか否かを判定する。
【0041】
汚れ判定部39は、検出値Xがワーニング閾値Wpk(N)を超え、且つアラーム閾値Apk(N)以下の場合には、保護ガラス25の汚れの度合いが注意を要するレベルであると判定し、NC装置23にワーニング判定信号を送信する。汚れ判定部39は、検出値Xがワーニング閾値Wpk(N)を超え、且つアラーム閾値Apk(N)を超える場合には、保護ガラス25の汚れの度合いが保護ガラス25を要交換とするレベルであると判定し、NC装置23にアラーム判定信号を送信する。
【0042】
続いて、NC装置23について説明する。NC装置23は、レーザ加工機の各部を制御する制御装置である。NC装置23は、コンピュータから構成されており、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)及びRAM(Random-Access Memory)を有している。NC装置23は、種々の情報を表示する表示部23aを有しており、レーザ加工機の駆動制御と共に、後述するように、その表示部23aを介して、保護ガラス25の汚れ検知に関する情報等を表示するようになっている。
【0043】
NC装置23は、CPUがROMから各種プログラムを読み出し、RAMに展開し、展開したプログラムを実行することにより、各種の機能を実現する。図4に示すように、NC装置23は、加工条件保持部41、加工プログラム保持部43、情報出力部45、加工制御部47、表示制御部49としての機能を有している。
【0044】
加工条件保持部41は、レーザ加工機の加工条件を保持する。加工条件保持部41が保持するレーザ加工機の加工条件には、加工中に射出されるレーザ光LBのレーザ条件と、センサ27のセンサ特性と、レーザ光LBを射出するレーザ加工機の機械仕様の情報が含まれる。
【0045】
情報出力部45は、NC装置23がレーザ加工を開始したか否か及びレーザ加工を終了したか否かの情報を、PLC29に出力する。また、情報出力部45は、加工条件保持部41が保持するレーザ加工機の加工条件に関する各種の情報を、PLC29に出力する。
【0046】
加工プログラム保持部43は、加工プログラムを保持する。なお、ロボット11の動作をティーチングによって定義し、加工ヘッド21の振る舞いを設定し加工プログラムを作成する。さらに、加工プログラム保持部43が保持する加工プログラムを、CAM(Computer-Aided Manufacturing)などの外部装置によって作成してもよく、加工プログラム保持部43は、外部装置から加工プログラムを取得してもよい。外部装置は、作成した加工プログラムを、図示しないデータ管理サーバ内のデータベースに格納してもよい。この場合、加工プログラム保持部43は、データ管理サーバのデータベースに格納された加工プログラムを読み出すことで、加工プログラムを取得する。
【0047】
加工プログラムは、被加工物Wを複数の経路に沿って順番に溶接して製品を溶接するために必要なレーザ加工機本体50の動作を定義するコードを含んでいる。
【0048】
加工プログラムには、加工条件の設定、レーザ光LBの射出開始及びレーザ光LBの射出停止、要素毎の加工ヘッド21の移動、経路から経路への移動といった、製品を溶接するために必要なレーザ加工機の一連の動作を規定するコードが記述されている。製品を溶接する場合、製品の特定スポット、内周及び外周に応じた溶接加工軌跡に沿って加工ヘッド21(レーザ光LB)を移動させることで行われる。また、被加工物Wから複数の製品を溶接する場合、加工プログラムには、複数の製品毎にコードが記述されている。
【0049】
加工制御部47は、加工プログラムを実行して、レーザ加工機を制御する。また、加工制御部47は、PLC29からアラーム判定信号を受信した場合に、レーザ加工機の加工を停止させる。
【0050】
表示制御部49は、PCL29からの判定信号に基づいて、保護ガラス25の汚れの度合いの判定結果に基づく情報を表示部23aに表示させる。表示制御部49は、PCL29からのワーニング判定信号に基づいて、汚れ注意等のワーニング表示を表示部23aに表示させる。また、表示制御部49は、PCL29からのアラーム判定信号に基づいて、保護ガラス交換等のアラーム表示を表示部23aに表示させる。これにより、オペレータは、レーザ加工において保護ガラス25の汚れにより保護ガラス交換が必要になったことを瞬時に簡単に判断することができ、保護ガラス25を交換することにより、加工品質の悪化を未然に防ぐことができる。
【0051】
[保護ガラス汚れ検知装置の動作]
次に、図5を参照して、本発明を実施した保護ガラス汚れ検知装置の動作について説明する。
【0052】
図5は、本発明を実施した保護ガラス汚れ検知装置の動作のフローチャートである。
図5のステップS10において、情報取得部35は、NC装置23から、加工中に射出されるレーザ光LBのレーザ条件を取得する。情報取得部35は、レーザ光LBのレーザ条件として加工中に射出されるレーザ光LBのレーザピーク出力値Pと、レーザ光LBのパルス周波数Fと、レーザ光LBのデューティ比Dと、レーザ光LBのビーム径により定まるゲイン補正値Gとを取得する。
【0053】
ステップS11に進み、情報取得部35は、NC装置23から、センサ27のセンサ特性の情報を取得する。情報取得部35は、センサ27のセンサ特性の情報として、センサ27の初期電圧V0と、センサ立上り時間trと、センサ立下り時間tfと、センサ27の応答時間と検出信号のサンプリング周波数により定まる変数sとを取得する。
【0054】
ステップS12に進み、情報取得部35は、NC装置23から、レーザ光LBを射出するレーザ加工機の機械仕様の情報を取得する。情報取得部35は、レーザ加工機の機械仕様の情報として、保護ガラス25の特性によって定まる任意変数aと、機械仕様とセンサ27のセンサ仕様によって定まる任意変数bとを取得する。
【0055】
ステップS13に進み、汚れ閾値設定部37は、加工中に射出されるレーザ光LBのレーザ条件と、センサ27のセンサ特性の情報と、レーザ加工機の機械仕様の情報とに基づいて、汚れ閾値を設定するための汚れ閾値の算出式を選択する。汚れ閾値設定部37は、汚れ閾値として、ワーニング閾値Wpk(N)及びアラーム閾値Apk(N)を設定する。
【0056】
(汚れ閾値の算出式の選択方法)
ここで、図6及び図7を参照して、汚れ閾値の算出式の選択方法の一例について説明する。
【0057】
図6は、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式の選択方法の一例を示すフローチャートである。また、図7は、レーザ光LBのパルス周波数F及びデューティ比Dとの関係に基づくワーニング閾値Wpk(N)の算出式の選択方法の一例を示す図である。本実施形態において、汚れ閾値設定部37は、レーザ光LBのパルス周波数Fと、レーザ光LBのデューティ比Dの関係に基づいて、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式を選択する。
【0058】
汚れ閾値設定部37は、レーザ加工機の加工条件が5つの判定式L0、L1A、L1B、L2、L3を満たすか否かを順に判定していくことにより、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式を、予め記憶された4パターンの算出式であるWpk(1)~Wpk(4)中から選択する。なお、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式であるWpk(1)~Wpk(4)の詳細については、後述する。
【0059】
まず、ステップS1301において、汚れ閾値設定部37は、取得したレーザ条件のうちのデューティ比Dの値が、下記の(1)式に示す判定式L0を満たすか否かを判定する。
【0060】
[数1]
D=100・・・(1)
【0061】
レーザ条件が判定式L0を満たす場合(ステップS1301でYES)、すなわちレーザ光LBのデューティ比Dが100の場合には、ステップS1304に進み、汚れ閾値設定部37は、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式としてWpk(1)を選択する。一方、レーザ条件が判定式L0を満たさない場合、すなわちレーザ光LBのデューティ比Dが100でない場合(ステップS1301でNO)には、ステップS1302に進む。
【0062】
ステップS1302において、汚れ閾値設定部37は、取得したレーザ条件及びセンサ27のセンサ特性のうち、レーザ光LBのパルス周波数F、レーザ光LBのデューティ比D、センサ立ち上がり時間trが下記の(2)式に示す判定式L1Aを満たすか否かを判定する。
【0063】
[数2]
F≦D×10/tr・・・(2)
【0064】
レーザ条件及びセンサ27のセンサ特性が判定式L1Aを満たす場合(ステップS1302でYES)には、ステップS1304に進み、汚れ閾値設定部37は、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式としてWpk(1)を選択する。一方、レーザ条件及びセンサ27のセンサ特性が判定式L1Aを満たさない場合(ステップS1302でNO)には、ステップS1303に進む。
【0065】
ステップS1303において、汚れ閾値設定部37は、取得したレーザ条件、センサ27のセンサ特性及びレーザ加工機の機械仕様のうち、レーザ光LBのパルス周波数F、レーザ光LBのデューティ比D、センサ立上り時間tr、センサ立下り時間tf、任意変数bが下記の(3)式に示す判定式L1Bを満たすか否かを判定する。
【0066】
[数3]
F≦{10×D(tr+tf)-1000×tr}/{tf×(tr-b)}・・・(3)
【0067】
レーザ条件、センサ27のセンサ特性及びレーザ加工機の機械仕様が判定式L1Bを満たす場合(ステップS1303でYES)には、ステップS1304に進み、汚れ閾値設定部37は、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式としてWpk(1)を選択する。一方、センサ27のセンサ特性及びレーザ加工機の機械仕様が判定式L1Bを満たさない場合(ステップS1303でNO)には、ステップS1305に進む。
【0068】
すなわち、図7に示すように、レーザ光LBのパルス周波数F及びレーザ光LBのデューティ比Dの関係が、判定式L0、L1A又はL1Bを満たす範囲では、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式はWpk(1)となる。なお、レーザ光LBのパルス周波数F及びレーザ光LBのデューティ比Dの関係が判定式L0、L1A又はL1Bを満たす場合には、保護ガラス25に付着した汚れ51を検出するセンサ27の検出値Xのパルスオン時間t_on(msec)が、センサ立上り時間trに対して十分に長くなる。
【0069】
ステップS1305において、汚れ閾値設定部37は、取得したレーザ条件及びセンサ27のセンサ特性のうち、レーザ光LBのパルス周波数F、レーザ光LBのデューティ比D、変数sが下記の(4)式に示す判定式L2を満たすか否かを判定する。
【0070】
[数4]
F≧D×10/s・・・(4)
【0071】
レーザ条件及びセンサ27のセンサ特性が判定式L2を満たす場合(ステップS1305でYES)には、ステップS1306に進み、汚れ閾値設定部37は、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式として、Wpk(2)を選択する。一方、レーザ条件及びセンサ27のセンサ特性が判定式L2を満たさない場合(ステップS1305でNO)には、ステップS1307に進む。
【0072】
すなわち、図7に示すように、レーザ光LBのパルス周波数F及びレーザ光LBのデューティ比Dの関係が、判定式L0、L1A、1Bを満たさず、判定式L2満たす範囲では、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式はWpk(2)となる。なお、レーザ光LBのパルス周波数F及びレーザ光LBのデューティ比Dの関係が判定式L0、L1A、L1Bを満たさず、判定式L2満たす場合には、保護ガラス25に付着した汚れ51を検出するセンサ27の検出値Xのパルスオン時間t_onがセンサ立上り時間trに対して短くなる。
【0073】
ステップS1307において、汚れ閾値設定部37は、取得したレーザ条件、センサ27のセンサ特性及びレーザ加工機の機械仕様のうち、レーザ光LBのパルス周波数F、レーザ光LBのデューティ比D、任意変数bが下記の(5)式に示す判定式L3を満たすか否かを判定する。
【0074】
[数5]
F≧(1000―D×10)/b・・・(5)
【0075】
レーザ条件、センサ27のセンサ特性及びレーザ加工機の機械仕様が判定式L3を満たす場合(ステップS1307でYES)には、ステップS1308に進み、汚れ閾値設定部37は、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式としてWpk(3)を選択する。一方、センサ27のセンサ特性及びレーザ加工機の機械仕様が判定式L3を満たさない場合(ステップS1307でNO)には、ステップS1309に進む。
【0076】
すなわち、図7に示すように、レーザ光LBのパルス周波数F及びレーザ光LBのデューティ比Dの関係が、判定式L0、L1A、L1B、L2を満たさず、且つ判定式L3を満たす範囲では、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式はWpk(3)となる。なお、レーザ光LBのパルス周波数F及びレーザ光LBのデューティ比Dの関係が、判定式L0、L1A、L1B、L2を満たさず、且つ判定式L3を満たす場合には、保護ガラス25に付着した汚れ51を検出するセンサ27の検出値Xのパルスオン時間t_onがセンサ立上り時間trに対して短く、パルスオフ時間t_offが長くなる。
【0077】
ステップS1309において、汚れ閾値設定部37は、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式として、Wpk(4)を選択する。
【0078】
すなわち、図7に示すように、レーザ光LBのパルス周波数F及びレーザ光LBのデューティ比Dの関係が、判定式L0、L1A、L1B、L2、L3のいずれも満たさない範囲では、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式はWpk(4)となる。なお、レーザ光LBのパルス周波数F及びレーザ光LBのデューティ比Dの関係が、判定式L0、L1A、L1B、L2、L3のいずれも満たさない場合には、保護ガラス25に付着した汚れ51を検出するセンサ27の検出値Xのパルスオン時間t_onがセンサ立上り時間trに対して短く、パルスオフ時間t_offも短くなる。
【0079】
図5のステップS14に戻り、汚れ閾値設定部37は、ステップS13で選択された算出式を用いて、ワーニング閾値Wpk(N)及びアラーム閾値Apk(N)を算出し、汚れ閾値として設定する。
【0080】
ワーニング閾値Wpk(N)及びアラーム閾値Apk(N)の算出方法について、図8図11を参照して説明する。図8図11は、センサ27の検出値X(センサ出力電圧)の変化と、ワーニング閾値Wpk(N)とを示すグラフである。図8図11においては、レーザ光LBの平均出力Pav、レーザ光LBのビーム径、センサ27のセンサ特性及び機械仕様は同一であるものとする。
【0081】
本実施形態においては、ワーニング閾値Wpk(N)は下記の(6)式に示される共通式に基づいて算出される。すなわち、Wpk(1)~Wpk(4)は、(6)式に示される共通式のk(N)のみ異なる。
【0082】
[数6]
Wpk(N)=P×a×k(N)×G+V0・・・(6)
【0083】
また、アラーム閾値Apk(N)は、下記の(7)式に示すように、Wpk(N)に任意の変数cを乗じて算出される。任意の変数cは、1より大きい値であればよく、例えば1.5に設定される。
【0084】
[数7]
Apk(N)=Wpk(N)×c・・・(7)
【0085】
図8は、センサ27の検出値X(センサ出力電圧)の変化とワーニング閾値Wpk(1)とを示すグラフであり、レーザ光のデューティ比が30%、パルス周波数が10Hzの場合である。図8においては、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式としてWpk(1)が選択される。
【0086】
図8においては、保護ガラス25の汚れ51を検知する際のセンサ27の検出値Xである汚染時検出値のパルスオン時間t_onは、センサ立上り時間trに対して十分に長くなっている。この場合、下記の(8)式に示すWpk(1)により、レーザ光LBのパルス周波数F及びデューティ比Dを変更して得られる最大電圧の値がワーニング閾値Wpk(N)として算出される。Wpk(1)は、共通式におけるK(1)が1となった算出式である。
【0087】
[数8]
Wpk(1)=P×a×1×G+V0・・・(8)
【0088】
図9は、センサ27の検出値X(センサ出力電圧)の変化とワーニング閾値Wpk(2)とを示すグラフであり、レーザ光のデューティ比が40%、パルス周波数が5000Hzの場合である。図9においては、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式としてWpk(2)が選択されている。
【0089】
図9においては、汚染時検出値のパルスオン時間t_onがセンサ立上り時間trに対して短くなっており、汚染時検出値が最大電圧まで上昇しない。この場合、下記の(9)式に示すWpk(2)により、平均出力に比例した電圧の値がワーニング閾値Wpk(N)として算出される。Wpk(2)は、共通式におけるK(2)がD/100となった算出式である。
【0090】
[数9]
Wpk(2)=P×a×(D/100)×G+V0・・・(9)
【0091】
図10は、センサ27の検出値X(センサ出力電圧)の変化とワーニング閾値Wpk(3)とを示すグラフであり、レーザ光のデューティ比が20%、パルス周波数が100Hzの場合である。図10においては、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式としてWpk(3)が選択されている。
【0092】
図10においては、汚染検出値のパルスオン時間t_onがセンサ立上り時間trに対して短く、パルスオフ時間t_offが長くなっている。この場合、下記の(10)式に示すWpk(3)により、パルスオン時間t_onに比例した電圧の値がワーニング閾値Wpk(N)として算出される。Wpk(3)は、共通式におけるK(3)がt_on/trとなった算出式である。
【0093】
[数10]
Wpk(3)=P×a×(t_on/tr)×G+V0・・・(10)
【0094】
なお、パルスオン時間t_onは、下記の(11)式により求められる。
【0095】
[数11]
t_on=(D/100)×(1000/F)=D×10/F・・・(11)
【0096】
図11は、センサ27の検出値X(センサ出力電圧)の変化とワーニング閾値Wpk(4)とを示すグラフであり、レーザ光のデューティ比が40%、パルス周波数が500Hzの場合である。図11においては、ワーニング閾値Wpk(N)の算出式としてWpk(4)が選択されている。
【0097】
図11においては、汚染検出値のパルスオン時間t_onがセンサ立上り時間trに対して短く、パルスオフ時間t_offも短くなっている。この場合、下記の(12)式に示すWpk(4)により、パルスオン時間t_onと負のパルスオフ時間t_offに比例した電圧の値がワーニング閾値Wpk(N)として算出される。Wpk(4)は、共通式におけるK(4)がt_on/tr-t_off/tf+b/trとなった算出式である。
【0098】
[数12]
Wpk(4)=P×a×(t_on/tr-t_off/tf+b/tr)×G+V0・・・(12)
【0099】
なお、パルスオフ時間t_offは、下記の(13)式及び(14)式により求められる。
【0100】
[数13]
t_off=T-t_on・・・(13)
【0101】
[数14]
T=1000/F・・・(14)
【0102】
上述した方法で、汚れ閾値設定部37は、NC装置23から取得したレーザ加工機の加工条件に基づいて、センサ27により検出された散乱光SLの検出値Xから保護ガラス25の汚れ51を検知するための汚れ閾値として、ワーニング閾値Wpk(N)及びアラーム閾値Apk(N)を設定する。これにより、保護ガラス25の表面上の汚れ51の量に応じて散乱される散乱光SLの量が、レーザ加工機の加工条件によって変化する場合であっても、レーザ加工機の加工条件に適した汚れ閾値を設定できる。
【0103】
ステップS15に進み、情報取得部35は、NC装置23から、NC装置23がレーザ加工を開始したか否かの情報を取得する。NC装置23がレーザ加工を開始した場合(ステップS15でYES)には、ステップS16に進む。一方、NC装置23がレーザ加工を開始していない場合(ステップS15でNO)には、ステップS15に戻る。
【0104】
ステップS16において、センサ27は、レーザ光LBを照射している状態での、加工ヘッド21に取付けられた保護ガラス25の端面からの散乱光SLを検出する。センサ27により検出された散乱光SLの検出信号は、アナログI/F回路31により増幅され、高周波成分(ノイズ)がカットされ、ADコンバータ33により、アナログ信号からデジタル信号へ変換され、センサ27の検出値Xとして情報取得部35へ出力される。情報取得部35は、ADコンバータ33から検出値Xを取得する。
【0105】
ステップS17に進み、汚れ判定部39は、検出値XがステップS14で算出したワーニング閾値Wpk(N)を超えたか否かを判定する。検出値Xがワーニング閾値Wpk(N)を超えた場合(ステップS17でYES)、すなわち検出値Xがワーニング閾値Wpk(N)より大きい場合には、ステップS18に進む。一方、検出値Xがワーニング閾値Wpk(N)以下の場合(ステップS17でNO)には、ステップS21に進む。
【0106】
ステップS18において、汚れ判定部39は、検出値XがステップS14で算出したアラーム閾値Apk(N)を超えたか否かを判定する。検出値Xがアラーム閾値Apk(N)を超えた場合(ステップS18でYES)、すなわち検出値Xがアラーム閾値Apk(N)より大きい場合には、ステップS20に進む。一方、検出値Xがアラーム閾値Apk(N)以下の場合(ステップS18でNO)には、ステップS19に進む。
【0107】
ステップS19において、汚れ判定部39は、NC装置23に、ワーニング判定信号を送信する。この場合、NC装置23は、表示部23aに、ワーニング表示を表示させる。そして、ステップS21に進む。
【0108】
ステップS20において、汚れ判定部39は、NC装置23に、アラーム判定信号を送信する。この場合、NC装置23は、表示部23aに、アラーム表示を表示させる。また、NC装置23は、レーザ加工機の加工を停止させる。そして、ステップS21に進む。
【0109】
ステップS21において、情報取得部35は、NC装置23から、NC装置23がレーザ加工を終了したか否かの情報を取得する。NC装置23がレーザ加工を終了した場合(ステップS21でYES)には、保護ガラス検知装置は図5のフローを終了する。一方、NC装置23がレーザ加工を終了していない場合(ステップS21でNO)には、ステップS16に戻る。
【0110】
[作用効果]
以上説明したように、本発明の一態様によれば、以下の作用効果が得られる。
【0111】
レーザ加工機において、レーザ光LBを集光させて被加工物Wに照射するための集光レンズ19を汚れから保護するための保護ガラス25の汚れを検知する保護ガラス汚れ検知装置は、散乱光検出部(センサ27)と、情報取得部35と、汚れ閾値設定部37と、汚れ判定部39とを備える。散乱光検出部は、保護ガラス25に付着した汚れ51によって生じる散乱光SLを検出する。情報取得部35は、レーザ加工機の加工条件に関する情報を取得する。汚れ閾値設定部37は、レーザ加工機の加工条件に基づいて、散乱光検出部により検出された検出値Xから保護ガラス25の汚れを検知するための汚れ閾値を設定する。汚れ判定部39は、検出値Xと汚れ閾値とに基づいて、保護ガラス25の汚れの度合いを判定する。
【0112】
汚れ閾値設定部37は、レーザ加工機の加工条件に基づいて、保護ガラス汚れを検知するための汚れ閾値を設定する。保護ガラス25の表面上の汚れ51の量に応じて散乱される散乱光SLの量が、加工条件によって変化する場合であっても、加工条件に適した汚れ閾値を設定できる。これにより、加工条件に応じてレーザ加工機の保護ガラス25の汚れを適切に検知できる。レーザ加工時の不良品を抑制できる。
【0113】
レーザ加工機の加工条件は、加工中に射出されるレーザ光LBの単位時間当たりの平均出力Pavを調整する項目を含む。加工中に射出されるレーザ光LBの平均出力Pavが変化した場合、保護ガラス25に照射されるレーザエネルギ量が変化する。レーザ加工機の加工条件に、レーザ光LBの平均出力Pavを調整する項目を含むことにより、保護ガラス25の表面上の汚れ51の量に応じて散乱される散乱光SLの量が、加工時に保護ガラス25に射出されるレーザ光LBの平均出力Pavによって変化する場合であっても、加工条件に適した汚れ閾値を設定できる。
【0114】
レーザ加工機の加工条件は、加工中に保護ガラス25へ照射されるレーザ光LBの照射面積を調整する項目を含む。レーザ光LBの保護ガラス25への照射面積が変化した場合、保護ガラス25に照射されるレーザエネルギ量が変化する。これにより、保護ガラス25の表面上の汚れ51の量に応じて散乱される散乱光SLの量が、保護ガラス25へ照射されるレーザ光LBの照射面積によって変化する場合であっても、加工条件に適した汚れ閾値を設定できる。
【0115】
情報取得部35が取得するレーザ加工機の加工条件は、加工中に射出されるレーザ光LBのレーザ条件を含む。また、レーザ光LBのレーザ条件は、加工中に射出されるレーザ光LBのレーザピーク出力値Pと、レーザ光LBのパルス周波数Fと、レーザ光LBのデューティ比Dと、を含む。また、レーザ光LBを被加工物Wに照射するときのレーザ光LBのビーム径は、光学系要素によるビーム径変更や焦点位置変更によって、ビームウエスト径からビームウエスト径よりも大きいビーム径まで可変であって、レーザ光LBのレーザ条件は、レーザ光LBのビーム径が、ビームウエスト径である場合からビームウエスト径よりも大きいビーム径となる場合までのビーム径の変化度を示すゲイン補正値Gを含む。
【0116】
汚れ閾値設定部37は、加工中に射出されるレーザ光LBのレーザピーク出力値P、パルス周波数F、デューティ比D、ゲイン補正値G等のレーザ条件に基づいて、保護ガラス25の汚れを検知するための汚れ閾値を設定できる。保護ガラス25の表面上の汚れ51の量に応じて散乱される散乱光SLの量が、加工時のレーザ条件によって変化する場合であっても、レーザ条件に適した汚れ閾値を設定できる。
【0117】
情報取得部35が取得するレーザ加工機の加工条件は、散乱光検出部のセンサ特性を含む。また、散乱光検出部のセンサ特性は、散乱光検出部の検出信号が初期電圧からピーク値に達するまでに要する時間であるセンサ立上り時間trと、検出信号がピーク値から初期電圧に下がるまでに要する時間であるセンサ立下り時間tfと、検出信号のサンプリング周波数とを含む。
【0118】
汚れ閾値設定部37は、散乱光検出部のセンサ立上り時間trと、センサ立下り時間tfと、検出信号のサンプリング周波数等のセンサ特性に基づいて、保護ガラス25の汚れを検知するための汚れ閾値を設定できる。保護ガラス25の表面上の汚れ51の量に応じて散乱される散乱光SLの量が、散乱光検出部のセンサ特性によって変化する場合であっても、センサ特性に適した汚れ閾値を設定できる。
【0119】
情報取得部35が取得するレーザ加工機の加工条件は、レーザ光LBを射出するレーザ加工機の機械仕様を含む。また、レーザ光LBを射出するレーザ加工機の機械仕様は、機械仕様とセンサ27のセンサ仕様によって定まる任意変数bと、保護ガラス25の特性によって定まる任意変数aとを含む。なお、任意変数bは、算出式Wpk(3)とWpk(4)の切り替えタイミングを指定する変数である。
【0120】
汚れ閾値設定部37は、機械仕様とセンサ27のセンサ仕様によって定まり、算出式Wpk(3)とWpk(4)の切り替えタイミングを指定する任意変数bと、保護ガラス25の特性によって定まる任意変数aなどのレーザ加工機の機械仕様に基づいて、保護ガラス25の汚れを検知するための汚れ閾値を設定できる。保護ガラス25の表面上の汚れ51の量に応じて散乱される散乱光SLの量が、レーザ加工機の機械仕様によって変化する場合であっても、レーザ加工機の機械仕様に適した汚れ閾値を設定できる。機械仕様を変更した場合であっても、保護ガラス25の汚れを適切に検知できる。
【0121】
汚れ閾値設定部37は、レーザ加工機の加工条件に基づいて、汚れ閾値を設定するための汚れ閾値の算出式を選択し、選択した汚れ閾値の算出式に基づいて、汚れ閾値を算出する。
【0122】
汚れ閾値設定部37は、レーザ加工機の加工条件に基づいて、加工条件に適した汚れ閾値を算出するための汚れ閾値の算出式を選択する。選択した汚れ閾値算出式に基づいて、汚れ閾値を算出する。これにより、レーザ加工機の加工条件に基づいて、加工条件に適した汚れ閾値を設定できる。
【0123】
この発明は前述の発明の実施の形態に限定されることなく、適宜な変更を行うことにより、その他の態様で実施し得るものである。
【0124】
例えば、上記実施形態においてPLC29、NC装置23により実現された機能は、ロボットコントローラ等のその他の装置により実現されてもよい。
【0125】
また、上記実施形態においては、センサ27は、保護ガラス25の端面からの散乱光SLを受光する位置に単数搭載されていたが、センサ27の位置は、保護ガラス25の側面以外の位置でもよい。また、例えば保護ガラス25の側面円周上に配置する等、複数搭載されてもよい。この場合、複数のセンサ27は、センサ特性が異なるセンサを組み合わせてもよく、複数のセンサ27を、例えばワーニング用とアラーム用に分けて使用してもよい。また、保護ガラス25の近傍にファイバーを取り付け、保護ガラス25から離れた位置のセンサ27まで散乱光SLをファイバーにより伝送してもよい。
【0126】
また、センサ27のセンサゲインは、外部から変更してもよい。例えば、加工条件に基づいて算出された汚れ閾値がセンサ27の測定範囲内から外れる場合に、算出した汚れ閾値がセンサ27の測定範囲内となるよう、センサ27のセンサゲインを外部から変更してもよい。
【0127】
また、上記実施形態において用いたレーザ加工機の加工条件のパラメータとは異なるパラメータに基づいて、汚れ閾値を設定してもよい。例えば、レーザ光LBのデューティ比Dに代えてレーザ光LBのパルス幅を用いてもよい。加工ヘッド21のビーム径により定まるゲイン補正値Gに代えて、レーザ加工機のDefocusを用いてもよい。
【0128】
また、上記実施形態の保護ガラス汚れ検知装置及び保護ガラス汚れ検知方法は、ウォブリング動作によりレーザ加工を行う場合に適用してもよく、レーザ光LBが保護ガラス25に複数入射する場合に適用してもよい。ハイブリッドレーザによりレーザ加工を行う場合に適用してもよい。また、レーザ切断加工機で切断加工を行う場合に適用してもよい。
【符号の説明】
【0129】
19 集光レンズ
25 保護ガラス
27 散乱光検出部(センサ)
35 情報取得部
37 汚れ閾値設定部
39 汚れ判定部
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