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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059628
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】水膨張性止水組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20230420BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230420BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20230420BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20230420BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20230420BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/013
C08L1/00
C08L33/02
C08L71/02
C09K3/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169735
(22)【出願日】2021-10-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127247
【弁理士】
【氏名又は名称】赤堀 龍吾
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】高津 知道
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
【Fターム(参考)】
4H017AA01
4H017AA03
4H017AA36
4H017AB01
4H017AB08
4H017AC06
4H017AE03
4J002AB03X
4J002AC01W
4J002AC06W
4J002AC08W
4J002AC09W
4J002AC11W
4J002BB15W
4J002BB17W
4J002BF02X
4J002BG01X
4J002BG10X
4J002BG12X
4J002BN01X
4J002CH03X
4J002DA036
4J002DE086
4J002DE136
4J002DE226
4J002DE266
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002FD016
4J002GJ02
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】水膨張性と形状保持性に優れたシール材を製造可能な水膨張性止水組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 ゴム成分100質量部と、吸水性樹脂10~200質量部と、を含有し、前記ゴム成分のゲル分率が、10~70質量%である、水膨張性止水組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量部と、
吸水性樹脂10~200質量部と、を含有し、
前記ゴム成分のゲル分率が、10~70質量%である、
水膨張性止水組成物。
【請求項2】
前記吸水性樹脂が、アクリル系重合体、アルキレンオキサイド系重合体、及び、セルロース系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、
請求項1に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分のムーニー粘度(ML(1+3)127℃)が、20~100Mである、
請求項1又は2に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項4】
架橋剤及び/又は架橋促進剤を実質的に含有しない、
請求項1~3のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項5】
充填材をさらに含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項6】
シール材として用いられる、
請求項1~5のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材を製造可能な水膨張性止水組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
土木・建築分野では、トンネル内セグメントや地下ヒューム管あるいは上下水道用U字溝など様々な管の接続部に、漏水防止や止水の目的でテープ状やフィルム状等に成形された水膨張性止水材が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、水、および海水等のイオン水に対して良好な膨張性を示し、かつ、水中への溶出量が少なく、軽量で施工作業が容易な水膨張性発泡シール材を提供することを目的として、加硫可能なゴムにポリアクリル酸ソーダ架橋体を含む高吸水性樹脂、シリカ、ノニオン系界面活性剤、加硫剤および加硫促進剤、熱分解性発泡剤を含有させ、加硫および発泡処理して得られる水膨張性発泡シール材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-063450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水膨張性止水組成物を用いて製造されたシール材は、水に接すると水を吸収して体積が膨張することによって止水性を発揮する。このようなシール材には、水膨張性、吸水して膨張した際でも崩壊しない形状保持性が望まれている。しかしながら、通常は膨潤するほど崩壊しやすくなるため、水による膨張性に優れることと、膨潤した場合でも崩壊しにくく形状保持性に優れること、という相反する性質を共に達成することは困難である。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、水膨張性と形状保持性に優れたシール材を製造可能な水膨張性止水組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、所定量のゲル分率を有するゴム成分を用いることにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
ゴム成分100質量部と、
吸水性樹脂10~200質量部と、を含有し、
前記ゴム成分のゲル分率が、10~70質量%である、
水膨張性止水組成物。
〔2〕
前記吸水性樹脂が、アクリル系重合体、アルキレンオキサイド系重合体、及び、セルロース系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、
〔1〕に記載の水膨張性止水組成物。
〔3〕
前記ゴム成分のムーニー粘度(ML(1+3)127℃)が、20~100Mである、
〔1〕又は〔2〕に記載の水膨張性止水組成物。
〔4〕
架橋剤及び/又は架橋促進剤を実質的に含有しない、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
〔5〕
充填材をさらに含む、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
〔6〕
シール材として用いられる、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水膨張性と形状保持性に優れたシール材を製造可能な水膨張性止水組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
1.水膨張性止水組成物
本実施形態の水膨張性止水組成物は、ゴム成分100質量部と、吸水性樹脂10~200質量部と、を含有し、ゴム成分のゲル分率が、10~70質量%である。
【0012】
従来の水膨張性止水組成物は、マトリクスとして架橋可能なゴムを含み、架橋に用いられる架橋剤や架橋促進剤を含み、所定の架橋条件下で架橋して、膨張性止水シール材として用いられる。このように従来の膨張性止水シール材には膨張時に崩壊しないようにするために、架橋が必須であった。そのため従来の水膨張性止水組成物は、架橋処理にかかる時間が長く、架橋剤などの組成物に添加する成分が多くなるという問題がある。また、適切な耐崩壊性を得るためには、組成に応じて適切な架橋条件を選択する必要があるという点も問題である。
【0013】
これに対して、本実施形態の水膨張性止水組成物は、所定量の吸水性樹脂と、マトリクスとしてゴム成分を用い、そのゲル分率を所定範囲内に調整することによって、架橋せずとも、水膨張性と形状保持性を両立することができ、また、架橋剤などにより架橋する場合にも、その架橋処理時間を短くすることができる。これは、ゴム成分のゲル分率が所定の範囲内であるような予め部分架橋された成分を使用することにより、水膨張性と水膨張時の形状保持性が共に向上するものと推察されるが、上記理由はこれに限定されるものではない。
【0014】
1.1.ゴム成分
ゴム成分は、水膨張性止水組成物のマトリクスとして機能し、主に形状保持性の向上に寄与する。
【0015】
ゴム成分としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム等のジエン系ゴムや、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム等の主鎖中に少量の二重結合を導入したゴム(例えば、エチレン-プロピレン-ジエンゴム)が挙げられる。ゴム成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
ゴム成分は、再生ゴム、部分架橋ゴムを含むことが好ましい。再生ゴムとは、加硫ゴムに熱、圧力及び物理的に処理を加え、再び粘着性、可塑性を与えて原料ゴムと同様の目的で利用できるようにしたものである。また、部分架橋ゴムとは、未架橋のゴムを架橋剤および架橋助剤によって部分的に架橋したものである。
【0017】
ゴム成分のゲル分率は、10~70質量%であり、好ましくは12~58質量%であり、より好ましくは22~50質量%である。ゲル分率が10質量%以上であることにより、形状保持性がより向上する。また、ゲル分率が70質量%以下であることにより、水膨張性がより向上する。なお、本実施形態において、ゴム成分のゲル分率は、1種のゴム成分を用いる場合にはそのゲル分率をいい、複数のゴム成分を用いる場合には、複数のゴム成分の混合物のゲル分率をいう。
【0018】
ゲル分は主にゴム成分の架橋によって生成し、ゲル分率はゴム成分の架橋の程度によって増減することができる。架橋の程度を変化させる方法としては、ゴム成分の硫黄加硫架橋や過酸化物架橋の程度を調整したり、ゲル分率が比較的高い再生ゴムの添加量を調整したりする方法が挙げられる。
【0019】
本実施形態においてゲル分はトルエンに不溶な成分をいい、ゲル分率は以下の方法で測定することができる。まず、ゴム成分をトルエンに室温で7日間浸漬し、SUS304の#40メッシュによりゲル分を濾別し、メッシュ上に残ったゲル分を室温で7日間乾燥し、さらに80℃にて1日間乾燥し、下記式により算出することができる。
ゲル分率=((W3-W2)/(W1))×100(%)
W1=トルエン浸漬前のゴム成分の質量
W2=濾別前のSUS304の#40メッシュの質量
W3=80℃にて1日間乾燥した後のゲル分とメッシュの合計質量
【0020】
また、ゴム成分のムーニー粘度(ML(1+3)127℃)は、好ましくは20~100Mであり、より好ましくは30~95Mであり、さらに好ましくは40~90Mである。ムーニー粘度(ML(1+3)127℃)が20M以上であることにより、形状保持性がより向上する傾向にある。また、ムーニー粘度(ML(1+3)127℃)が100M以下であることにより、水膨張性がより向上する傾向にある。ムーニー粘度(ML(1+3)127℃)は、127℃のロータの測定条件で、ロータ回転開始後3分時の粘度であり、JIS K6300-1に準じて測定することができる。また、ムーニー粘度(ML(1+3)127℃)は、ゴム成分のモノマー組成や分子量や分子量分布により調整することができる。
【0021】
1.2.吸水性樹脂
吸水性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩やその架橋体、アクリル酸グラフト重合体部分ナトリウム塩やその架橋体、澱粉-アクリル酸グラフト重合体塩やその架橋体、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物やその架橋体、2ーアクリルアミドー2ーメチルプロパンスルホン酸-アクリル酸共重合体塩やその架橋体などのアクリル系重合体;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウムなどのセルロース系化合物;ポリアルキレンオキサイドや、変性ポリアルキレンオキサイド等のアルキレンオキサイド系重合体;澱粉-アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体、架橋イソブチレンーマレイン酸共重合体、体等が知られている。吸水性樹脂は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
このなかでも、アクリル系重合体、アルキレンオキサイド系重合体、及びセルロース系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含むことが好ましく、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩やその架橋体、アクリル酸グラフト重合体部分ナトリウム塩やその架橋体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、変性ポリアルキレンオキサイドがより好ましい。このような吸水性樹脂を用いることにより、水膨張性がより向上する傾向にある。
【0023】
吸水性樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10~200質量部であり、好ましくは20~190質量部であり、より好ましくは40~170質量部である。吸水性樹脂の含有量が10質量部以上であることにより、水膨張性がより向上する傾向にある。また、吸水性樹脂の含有量が200質量部以下であることにより、亀裂の発生がより抑制され、形状保持性がより向上する傾向にある。
【0024】
1.3.充填材
本実施形態の水膨張性止水組成物は、充填材をさらに含んでいてもよい。充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、タルク、クレーおよびカーボンブラックが挙げられる。充填材は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
このなかでも、シリカが好ましい。このような充填材を用いることにより、水膨張性がより向上する傾向にある。
【0026】
充填材の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20~80質量部であり、より好ましくは30~70質量部であり、さらに好ましくは40~60質量部である。充填材の含有量が上記範囲内であることにより、水膨張性がより向上する傾向にある。
【0027】
1.4.軟化剤
本実施形態の水膨張性止水組成物は、軟化剤をさらに含んでいてもよい。これにより、各成分の相溶性、成形加工性、及び使用感がより向上する傾向にある。
【0028】
軟化剤としては、特に限定されないが、例えば、菜種油、綿実油、パーム油、やし油、落花生油、トール油、パインタール、プロセスオイル(パラフィン系オイル、ナフテン系オイルおよび芳香族系プロセスオイル)、カルボン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、トリメリット酸エステル、クエン酸エステル、オレイン酸エステル、リシノール酸エステル、ステアリン酸エステル、グリコール酸エステル等)、リン酸エステル系可塑剤(トリイソプロピルフェニルホスフェート等)が挙げられる。軟化剤は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
軟化剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10~70質量部であり、より好ましくは20~60質量部であり、さらに好ましくは30~50質量部である。軟化剤の含有量が上記範囲内であることにより、相溶性、成形加工性、使用感がより向上する傾向にある。
【0030】
1.5.架橋剤及び架橋促進剤
本実施形態の水膨張性止水組成物は、架橋処理を要しない態様とする場合には、架橋剤及び/又は架橋促進剤を実質的に含有しないことが好ましい。また、架橋処理を要する態様とする場合には、架橋剤及び/又は架橋促進剤を含有していてもよい。
【0031】
ここで、架橋剤は、ゴムを架橋できる架橋剤であれば特に制限されるものではないが、例えば、硫黄、ポリスルフィド等の硫黄系化合物;p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンオキシム等のオキシム化合物;t-ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系化合物などが挙げられる。
【0032】
また、架橋促進剤は、ゴムの架橋の促進を目的に使用される架橋促進剤であれば、特に制限されるものではないが、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィドやテトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系化合物;2-メルカプトベンゾチアゾールやジベンゾチアゾールジスルフィド等のチアゾール系化合物;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛やジブチルジチオカルバミン酸亜鉛等のカルバミン酸塩系化合物;n-ブチルアルデヒドアニリン等のアルデヒドアミン系化合物;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系化合物;ジオルソトリルグアニジンやジオルソニトリルグアニジン等のグアニジン系化合物;チオカルバニリドやジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア、エチレンチオウレア等のチオウレア系化合物;酸化亜鉛などの化合物が挙げられる
【0033】
架橋処理を要しない態様とする場合において、架橋剤などを「実質的に含有しない」とは、架橋剤及び架橋促進剤のいずれかが少なくとも、水膨張性止水組成物の総量に対して、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以下であることをいう。また、架橋剤及び架橋促進剤の含有量の下限値は、特に限定されないが、検出限界以下とすることができる。
【0034】
1.6.その他添加剤
本実施形態の水膨張性止水組成物は、上記成分の他に必要に応じて、通常のゴムに使用される酸化防止剤、紫外線防止剤、粘着付与樹脂、滑剤、分散剤などの各種の添加剤も併用することができる。
【0035】
1.7.態様
本実施形態の水膨張性止水組成物は、シール材として用いられることが好ましい。本実施形態の水膨張性止水組成物を用いて製造されたシール材は、シールド工法セグメント、ボックスカルバート、フリューム(鉄骨・ベンチ)、ヒューム管、マンホールの継手、貯水池、水路、プール等の目地、コンクリート打ち継ぎの止水板などの土木関係の止水部材としての用途;各種水槽、H鋼廻り、各種打ち継ぎなどの建築関係の止水部材としての用途;浄水槽、受水槽、ユニットバスなどの住宅機器関係の止水部材としての用途に好適に用いることができる。また、本実施形態の水膨張性止水組成物を用いて製造されたシール材は、淡水のみならず海水などの通水路に使用されるコンクリート製品等の接続部分に使用される場合においても、十分な止水効果を発揮することができる。
【0036】
2.水膨張性止水組成物の製造方法及び用途
本実施形態の水膨張性止水組成物は、必要な成分を混練することにより製造することができる。また、水膨張性止水組成物を用いた成形体は、水膨張性止水組成物をプレス等によって成形することによって製造することができる。この成形体は、シール材として利用することができる。なお、本実施形態の水膨張性止水組成物は、シール材の形成にあたり、架橋処理を行う必要がなく、架橋処理を行わずに用いることができる。
【0037】
また、本実施形態の水膨張性止水組成物は、シール材の形成にあたり架橋処理を行ってもよい。本実施形態の水膨張性止水組成物を用いることにより、架橋処理時間を短くすることができる。なお、架橋処理を行う場合には、本実施形態の水膨張性止水組成物は、上記架橋剤及び/又は架橋促進剤を含有していてもよく、その含有量は1.0質量%超過であってもよい。
【0038】
配合物を混練する装置としては、従来公知のミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、二本ロール等の混練装置がある。混練した配合物を成形する装置としては、従来公知のプレス成形、押出成形、カレンダー成形等の成形装置がある。また、成形体の形状は、シート状やテープ状など適宜用途に合わせて設計すればよい。
【0039】
本発明の水膨張性止水組成物を用いて製造されたシール材は、通水部分に使用される管パイプ等およびコンクリート製品を用いる土木・建築等の分野において極めて有用である。また、本発明の水膨張性止水組成物を用いて製造されたシール材は、淡水のみならず海水などの通水路に使用されるコンクリート製品等の接続部分に使用される場合においても、十分な止水効果を発揮することができる。
【実施例0040】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、以下、各物質の使用量の単位は質量部である。
【0041】
1.水膨張性止水組成物の調整
表1に記載の各成分を、3L加圧ニーダー(モリヤマ社製、型式:DS3-10MWB-S)を用いて、100℃で10分間混練することによって、実施例及び比較例の水膨張性止水組成物を得た。なお、表1に記載する各物質の使用量の単位は特に断りがない限り質量部である。
【0042】
【表1】
【0043】
表1中の各成分の詳細は、以下のとおりである。
<ゴム成分>
・再生ゴム (縣護謨工業株式会社製、「IIR-S」)
・部分架橋ブチルゴム1(Royal Elastomers社製、「KALAR5215」)
・部分架橋ブチルゴム2(Royal Elastomers社製、「KALAR5275」)
・部分架橋ブチルゴム3(Royal Elastomers社製、「KALAR5280」)
・部分架橋ブチルゴム4(Royal Elastomers社製、「KALAR5246」)
・クロロプレンゴム (デンカ株式会社製、「ES-70」)
・ブチルゴム (JSR株式会社製、「ブチル268」)
<吸水性樹脂>
・アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物:株式会社日本触媒製、「アクアリックCS-6S」
・アクリル酸グラフト重合体部分ナトリウム塩:三洋化成工業株式会社、「IM-930NP」
・変性ポリアルキレンオキサイド:住友精化株式会社製、「アクアコークTWB」
・カルボキシメチルセルロースナトリウム:林純薬工業株式会社製
<無機充填材>
・シリカ:東ソー・シリカ株式会社製、「Nipsil VN3」
・炭酸カルシウム:秩父石灰工業株式会社製、「TA-044」
<軟化剤>
・菜種油系軟化剤:株式会社J-オイルミルズ製、「J菜種白絞油」
【0044】
<ゲル分率>
ゴム成分をトルエンに室温で7日間浸漬し、SUS304の#40メッシュによりゲル分を濾別し、メッシュ上に残ったゲル分を室温で7日間乾燥し、さらに80℃にて1日間乾燥し、下記式により上記ゴム成分のゲル分率を算出した。
ゲル分率=((W3-W2)/(W1))×100(%)
W1=トルエン浸漬前のゴム成分の質量
W2=濾別前のSUS304の#40メッシュの質量
W3=80℃にて1日間乾燥した後のゲル分とメッシュの合計質量
【0045】
2.評価
実施例及び比較例により得られた水膨張性止水組成物をプレス機(温度:80℃、時間:1分)で厚さ2mmのシート状の成形体に加工し、得られた成形体を用いて、以下に示す各種評価を行った。
【0046】
2.1.水膨張後形状保持性
20mm×20mm×2mmtの成形体を23℃にて水に7日間浸漬後、成形体の形状保持性を目視にて観察し、以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
◎:水膨張後の成形体に亀裂の発生は認められない
○:水膨張後の成形体に亀裂の発生は認められるが水中から取り出しても崩れない
×:水膨張後の成形体を水中から取り出すと崩れる
【0047】
2.2.水膨張性
JIS K-6258に準じ、20mm×20mm×2mmtの成形体を23℃にて水に7日間浸漬後、以下の式にて浸漬前後における体積変化率を算出した。浸漬前後における体積変化率が、成形体の給水量、すなわち体積変化量を示しているものとして、水膨張性を以下の評価基準で評価した。
体積変化率(%)=((c-d)-(a-b))/(a-b)×100
a:水浸漬前の空中重量、b:水浸漬前の水中重量
c:水浸漬後の空中重量、d:水浸漬後の水中重量
(評価基準)
◎:体積変化率が100%以上
○:体積変化率が70%以上100%未満
×:体積変化率が70%未満
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、水膨張性止水組成物として産業上の利用可能性を有する。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量部と、
吸水性樹脂10~200質量部と、を含有し、
前記ゴム成分のゲル分率が、10~70質量%であり、
前記吸水性樹脂が、アクリル系重合体、セルロース系化合物、アルキレンオキサイド系重合体、澱粉-アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体、及び架橋イソブチレンーマレイン酸共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む
水膨張性止水組成物。
【請求項2】
前記吸水性樹脂が、アクリル系重合体、アルキレンオキサイド系重合体、及び、セルロース系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、
請求項1に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分のムーニー粘度(ML(1+3)127℃)が、20~100Mである、
請求項1又は2に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項4】
架橋剤及び/又は架橋促進剤を実質的に含有しない、
請求項1~3のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項5】
充填材をさらに含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項6】
シール材として用いられる、
請求項1~5のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
ゴム成分100質量部と、
吸水性樹脂10~200質量部と、を含有し、
前記ゴム成分のゲル分率が、10~70質量%であり、
前記吸水性樹脂が、アクリル系重合体、セルロース系化合物、アルキレンオキサイド系重合体、澱粉-アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体、及び架橋イソブチレンーマレイン酸共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む
水膨張性止水組成物。
〔2〕
前記吸水性樹脂が、アクリル系重合体、アルキレンオキサイド系重合体、及び、セルロース系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、
〔1〕に記載の水膨張性止水組成物。
〔3〕
前記ゴム成分のムーニー粘度(ML(1+3)127℃)が、20~100Mである、
〔1〕又は〔2〕に記載の水膨張性止水組成物。
〔4〕
架橋剤及び/又は架橋促進剤を実質的に含有しない、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
〔5〕
充填材をさらに含む、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
〔6〕
シール材として用いられる、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量部と、
吸水性樹脂10~200質量部と、を含有し、
前記ゴム成分のゲル分率が、10~70質量%であり、
前記吸水性樹脂が、アクリル系重合体、セルロース系化合物、アルキレンオキサイド系重合体、澱粉-アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体、及び架橋イソブチレンーマレイン酸共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、
水膨張性止水組成物。
【請求項2】
前記吸水性樹脂が、アクリル系重合体、アルキレンオキサイド系重合体、及び、セルロース系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、
請求項1に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分のムーニー粘度(ML(1+3)127℃)が、20~100Mである、
請求項1又は2に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項4】
架橋剤及び架橋促進剤のいずれかが、水膨張性止水組成物の総量に対して、1.0質量%以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項5】
充填材をさらに含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
【請求項6】
シール材として用いられる、
請求項1~5のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
ゴム成分100質量部と、
吸水性樹脂10~200質量部と、を含有し、
前記ゴム成分のゲル分率が、10~70質量%であり、
前記吸水性樹脂が、アクリル系重合体、セルロース系化合物、アルキレンオキサイド系重合体、澱粉-アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体、及び架橋イソブチレンーマレイン酸共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、
水膨張性止水組成物。
〔2〕
前記吸水性樹脂が、アクリル系重合体、アルキレンオキサイド系重合体、及び、セルロース系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、
〔1〕に記載の水膨張性止水組成物。
〔3〕
前記ゴム成分のムーニー粘度(ML(1+3)127℃)が、20~100Mである、
〔1〕又は〔2〕に記載の水膨張性止水組成物。
〔4〕
架橋剤及び架橋促進剤のいずれかが、水膨張性止水組成物の総量に対して、1.0質量%以下である、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
〔5〕
充填材をさらに含む、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。
〔6〕
シール材として用いられる、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の水膨張性止水組成物。