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特開2023-59640自然発火性あるいは禁水性物質の無害化処理方法
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  • 特開-自然発火性あるいは禁水性物質の無害化処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059640
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】自然発火性あるいは禁水性物質の無害化処理方法
(51)【国際特許分類】
   A62D 3/36 20070101AFI20230420BHJP
   A62D 101/06 20070101ALN20230420BHJP
   A62D 101/20 20070101ALN20230420BHJP
   A62D 101/26 20070101ALN20230420BHJP
   A62D 101/40 20070101ALN20230420BHJP
【FI】
A62D3/36
A62D101:06
A62D101:20
A62D101:26
A62D101:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169754
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】松尾 啓史
(72)【発明者】
【氏名】原田 恒夫
(72)【発明者】
【氏名】西村 忠夫
(72)【発明者】
【氏名】宮木 勝芳
(72)【発明者】
【氏名】岡野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】岡嶌 健吾
(57)【要約】
【課題】 本発明は、自然発火性あるいは禁水性物質の無害化処理方法、並びにその方法に利用するためのシステムを提供する。
【解決手段】有機金属化合物及び/又は金属化合物の無害化処理方法であって、
(1)有機溶剤を含む有機金属化合物及び/又は金属化合物を酸水溶液と接触させる工程;そして
(2)(1)で得られた工程液を有機層と水性層とに層分離し、有機層は回収して工程(1)にリサイクルし、任意に 水性層はアルカリ水溶液で中和する工程;
を含む方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属化合物及び/又は金属化合物の無害化処理方法であって、
(1)有機溶剤を含む有機金属化合物及び/又は金属化合物を酸水溶液と接触させる工程;そして
(2)(1)で得られた工程液を有機層と水性層とに層分離し、有機層は回収して工程(1)にリサイクルし、任意に 水性層はアルカリ水溶液で中和する工程;
を含む方法。
【請求項2】
前記有機金属化合物がアルキルアルミニウム、アルキル亜鉛及びアルキルマグネシウムから成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属合物が金属アルミニウム、金属亜鉛及びアルミニウムマグネシウム合金から成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルキルアルミニウムがトリエチルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウムから成る群から選ばれる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記有機溶剤が石油系炭化水素、脂肪族炭化水素又は脂環式炭化水素溶媒である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶剤がケロシンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記有機溶剤を含む有機金属化合物及び/又は金属化合物を、有機溶剤に前記有機金属化合物及び/又は金属化合物が0.1~5重量%の濃度となるように希釈する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸水溶液が塩酸水溶液である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記塩酸水溶液の塩酸濃度が15~25重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(1)において、有機溶剤を含む有機金属化合物及び/又は金属化合物と酸水溶 液とを10:1~1:1の容積比で接触させる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
有機溶剤を含む有機金属化合物及び/又は金属化合物と酸水溶液とを5:1~2:1の容積比で接触させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(1)において、有機溶剤を含む有機金属化合物及び/又は金属化合物と酸水溶液とを40~60℃の温度で接触させる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(2)において、水性層をアルカリ水溶液で中和する工程をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記アルカリ水溶液が水酸化カルシウムである、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然発火性あるいは禁水性物質の無害化処理方法、並びにその方法に利用するためのシステムを提供する。
【背景技術】
【0002】
アルキルアルミニウムをはじめとする有機金属化合物や金属亜鉛をはじめとする金属化合物などの自然発火性あるいは禁水性物質は、化学工場や半導体工場などにおいてプラスチックや合成ゴムの重合助触媒、ポリエチレン、ポリプロピレンといった樹脂の重合触媒、さらには太陽電池の絶縁膜や有機半導体等の製造に欠かせない物質である。これらの有機金属化合物や金属化合物が抱える問題は、取り扱う上でそれらが非常に危険な性質を持つことにある。例えば、アルキルアルミニウムなどは空気に触れただけ自然発火し、水に触れたりすると爆発的に反応して発熱し、また200℃といった高温になると熱分解して連鎖爆発が起こることがあり、重大な事故や災害につながりかねない。
【0003】
アルキルアルミニウムによる火災などの消火にアルキルフォームなどが使用されている(非特許文献1)。また、アルキルアルミニウムなどは炭化水素といった有機溶剤で希釈することによってその爆発性を減ずることができることも知られている(非特許文献2)。しかしながら、後者の場合、工場など大規模な量のこのような危険物質を取り扱う施設では、大量の有機溶剤の使用を必要とし、使用済みの有機溶剤の廃液などは環境問題につながる。
【0004】
このような背景からアルキルアルミニウムを固体塩基で処理する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、金属アルミニウムを含む場合は処理速度が遅く長時間を要すること、さらに、反応生成物のアルミニウム由来の固体を除去する必要があり、固体除去におけるろ過性が悪いことが課題である。
したがって、このような自然発火性あるいは禁水性物質を安全かつ効率的に処理して無害化する方法が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4018867号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Safety & Tomorrow No.166 (2016.3), pp.49-57
【非特許文献2】安全工学、vol.6, No.2(1967). pp.155-159
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は自然発火性あるいは禁水性物質を安全かつ効率的に処理して無害化する方法を見出した。したがって、本発明はこのような無害化処理方法及びそれに利用されるシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の発明を包含する。
1.有機金属化合物及び/又は金属化合物の無害化処理方法であって、
(1)有機溶剤を含む有機金属化合物及び/又は金属化合物を酸水溶液と接触させる工程;そして
(2)(1)で得られた工程液を有機層と水性層とに層分離し、有機層は回収して工程(1)にリサイクルし、任意に 水性層はアルカリ水溶液で中和する工程;
を含む方法。
2.前記有機金属化合物がアルキルアルミニウム、アルキル亜鉛及びアルキルマグネシウムから成る群から選ばれる、1に記載の方法。
3.前記金属合物が金属アルミニウム、金属亜鉛及びアルミニウムマグネシウム合金から成る群から選ばれる、1に記載の方法。
4.前記アルキルアルミニウムがトリエチルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウムから成る群から選ばれる、1~3のいずれか1項に記載の方法。
5.前記有機溶剤が石油系炭化水素、脂肪族炭化水素又は脂環式炭化水素溶媒である、1または2に記載の方法。
6.前記有機溶剤がケロシンである、1または2に記載の方法。
7.前記有機溶剤を含む有機金属化合物及び/又は金属化合物を、有機溶剤に前記有機金属化合物及び/又は金属化合物が0.1~5重量%の濃度となるように希釈する、1~6のいずれか1項に記載の方法。
8.前記酸水溶液が塩酸水溶液である、1~7のいずれか1項に記載の方法。
9.前記塩酸水溶液の塩酸濃度が15~25重量%である、8に記載の方法。
10.前記工程(1)において、有機溶剤を含む有機金属化合物及び/又は金属化合物と酸水溶液とを10:1~1:1の容積比で接触させる、1~9のいずれか1項に記載の方法。
11.有機溶剤を含む有機金属化合物及び/又は金属化合物と酸水溶液とを5:1~2:1の容積比で接触させる、10に記載の方法。
12.前記工程(1)において、有機溶剤を含む有機金属化合物及び/又は金属化合物と酸水溶液とを40~60℃の温度で接触させる、1~11のいずれか1項に記載の方法。
13.前記工程(2)において、水性層をアルカリ水溶液で中和する工程をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
14.前記アルカリ水溶液が水酸化カルシウムである、13に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
自然発火性・禁水性物質の無害化処理が安全且つ効率的に実施可能となる。本発明によれば、無害化処理により発生した有機溶剤を回収し、さらなる無害化処理に再利用されるといった効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の無害化方法に利用されるためのシステム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、有機金属化合物及び/又は金属化合物の無害化処理方法を提供する。当該方法は、
(1)有機溶剤を含む有機金属化合物及び/又は金属化合物を酸水溶液と接触させる工程;そして
(2)(1)で得られた工程液を有機層と水性層とに層分離し、有機層は回収して工程(1)にリサイクルし、任意に水性層はアルカリ水溶液で中和する工程;
を含む。
【0012】
本発明で無害化される有機金属化合物や金属化合物は、自然発火性や禁水性の物質を意味する。自然発火性物質には、空気中で自然発火しやすい固体または液体の物質が含まれる。また、「禁水性物質」には、水に触れると発火したり可燃性ガスを発生する固体または液体の物質が含まれる。本願において「無害化」とは、得られる上記有機層が無色透明であるかまたは無色透明に近く、その水分含量が所定値以下、例えば100ppm以下であるような場合をいう。
【0013】
自然発火性又は禁水性の有機金属化合物の例として、アルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物、ジエチル亜鉛などが挙げられるが、それらに限定されるものではない。アルキルアルミニウム化合物としては、例えば、トリアルキルアルミニウム、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチルアルミニウム、ジエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムや、アルキルアルミニウムクロライド、例えば、エチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジメチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、メツルアルミニウムジクロライドが挙げられる。アルキルリチウム化合物としては、例えばメチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムなどが挙げられる。
【0014】
自然発火性又は禁水性の金属化合物の例として、金属アルミニウム、金属亜鉛、金属カリウム、金属ナトリウム、金属リチウム、金属カルシウム、金属バリウム、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム、炭化アルミニウム、炭化カルシウムなどが挙げられる。
【0015】
上記工程(1)で利用される有機溶剤は、無害化すべき有機金属化合物や金属化合物と実質的に反応しない溶剤から選択される。例えば、有機金属化合物がアルキルアルミニウムの場合、石油系炭化水素類、例えば特に限定するものではなく、原油、灯軽油、ナフサ、ブタン、ケロシン等が挙げられる。その他にも、無害化すべきは有機金属化合物及び/又は金属化合物と実質的に反応しないことを条件に、脂肪族炭化水素、例えば、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルノナン、ノルマルデカン、ノルマルウンデカン、ノルマルドデカン、ノルマルトリデカン、ノルマルテトラデカン等の直鎖飽和脂肪族炭化水素類、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,3-ジメチルブタン、2,2,4-トリメチルペンタン等の分岐鎖飽和脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、イソプロピルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘキシル、1,3,5,7-シクロオクタテトラエン等の環状飽和脂肪族炭化水素、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン等の直鎖不飽和脂肪族炭化水素類、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン等の分岐鎖不飽和脂肪族炭化水素類、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、エチルシクロペンテン,イソプロピルシクロペンテン、ジメチルソクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、エチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン等の環状不飽和脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、tert-ブチルメチルベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、フェニルシクロヘキサン等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0016】
有機金属化合物及び/又は金属化合物に含まれる有機溶剤の濃度は、特に限定するものではないが、有機金属化合物及び/又は金属化合物は有機溶剤に対し0.1~5重量%、好ましくは0.1~2重量%の濃度となるように有機溶剤は使用される。
【0017】
上記工程(1)で利用される酸水溶液は、無害化すべきは有機金属化合物及び/又は金属化合物を含む溶液状態または懸濁状態を呈する前記調整液を、溶液状態に維持する又は懸濁状態から溶液状態にする酸水溶液から選択される。例えば低分子量のアルキルアルミニウムは常温・常圧で無色透明な液体であり、希釈されても無色透明な状態を維持する酸使用液が選定される。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸や、クエン酸、シュウ酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸が選ばれる。アルキルアルミニウムとの関係で特に好ましいのは塩酸水溶液であり、5~40重量%、特に好ましくは10~30重量%、最も好ましくは20重量%のものが使用される。
【0018】
有機溶剤を含む有機金属化合物及び/又は金属化合物と酸水溶液との混合も、特に限定されるものでなく、過剰量の酸水溶液を使用するのが理想的であるが、その後の処理工程を鑑みれば、酸水溶液の使用量には上限を設けて方が好ましい。特に限定するものではないが、有機溶剤を含む有機金属化合物及び/又は金属化合物と酸水溶液との混合は10:1~1:1、好ましくは5:1~2:1の容積比で接触させる。
【0019】
工程(1)で得られた工程液は、容量に応じ、数時間、例えば0.5~10時間、好ましくは1~5時間かけて定常化させる。ここでいう定常化とは、例えば連続槽型反応器の場合、槽内の成分組成が一定になるような状態をいう。次いで、この定常化した工程液を分離器に送り、有機層と水性層とに分配する。分離器には例えばセトラーなどが使用される。有機層は回収し、再利用される。水性層は必要に応じ、アルカリ水溶液などで中和されてから廃棄される。アルカリ水溶液には例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどが使用される。
【0020】
本発明の方法では各工程の溶液が高温、好ましくは20~80℃、より好ましくは30~70℃、さらに好ましくは40~60℃に保たれるように実施する。そのためにも、本発明の方法は冷却手段の備わった反応層などの設備で実施するのが好ましい。
【0021】
本発明はさらに、上記無害化処理工程を実施するためのシステムを提供する。当該システムの模式図を図1に示す。
有機金属化合物及び/又は金属化合物を含む有機溶剤は調整を行うこともでき、これは調整槽1内で行われる。調整液はフィードポンプ8を介し、酸水溶液はフィードポンプ9を介し、第一反応器3へと送り込まれ、調整液と酸水溶液との混合がその中で行われる。同図のシステムでは、第一反応器3で混合が行われ、ある程度定常化された混合液をさらに第二反応器4送り込み、定常化を確実にする。必要であれば、第三、第四等々といったさらなる定常化のための反応器が後続してもよい。第一反応器と第二反応器の容量は同じも、異なるものでよい。例えば、第二反応器の容量は第一反応器の容量の半分であってもよい。定常化された反応液はセトラー5に送り込まれ、そこで有機層6と水性層7とに分配される。図示してないが、有機層6は回収し再利用される。有機層6は追加で塩基処理や活性炭処理などの吸着処理をして純度の向上を行っても良い。水性層7はアルカリ使用液など処理され、廃棄されてよい。
【0022】
本発明によれば、無害化処理により発生した有機溶剤を回収し、再利用されるといった効果が奏される。本発明の方法は、連続式にもバッチ方式にも利用される。
【0023】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【0024】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例0025】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0026】
<実施例1>
1Lのセパラブルフラスコ(第1反応器)に20wt%塩酸水溶液(61.0g、0.33mol)、ケロシン(150g)を投入した。次に、無害化する物質としてのトリエチルアルミニウム(87.7g、0.77mol)及び金属アルミニウム(20.6g、0.76mol)をケロシン(4893g)にて希釈し、Al濃度1.0wt%の調整液とした。その調整液を強攪拌状態の第1反応器内へ、フィードポンプにて連続的に内温を50℃に保つように約800ml/hrで供給しつつ、同様に、20wt%塩酸水溶液(1542g、HClとして8.45mol)を約200ml/hrにて供給した。HCl/Alのモル比は6となるように調整した。1Lセパラブルフラスコ(第1反応器)から0.5Lセパラブルフラスコ(第2反応器)、0.5Lセパラブルフラスコ(第2反応器)から1Lセトラーへの移送も同様にフィードポンプを用いて1L/hrを目安に行い、3時間かけて定常化を行った。その後、定常化と同じ条件で調整液を処理しつつ、セトラーより有機層、水層を連続的に回収し、定常化後の留出液として有機層2274g、水層1021gを得た。
【0027】
有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は87.2ppmであった。
水層側の留出液を10g採取し20gの純水で希釈を行った、この希釈液を30wt%水酸化カルシウム水溶液(5.9g、Ca(OH)2として24.0mmol)にて中和しpH4.2の処理液を得た。この処理液の粘度を測定したところ3.4cPであり、フィードポンプでの移送性は問題なかった。
【0028】
<実施例2>
実施例1の工程を、無害化する物質としてトリエチルアルミニウムのみを用い、実施した。有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は85.5ppmであった。
【0029】
<実施例3>
実施例1の工程を、無害化する物質としてトリイソブチルアルミニウムのみを用い、実施した。有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は88.6ppmであった。
【0030】
<実施例4>
実施例1の工程を、無害化する物質としてジエチル亜鉛のみを用い、実施した。有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は75.7ppmであった。
【0031】
<実施例5>
実施例1と同じ工程を、無害化する物質として金属アルミニウムを用い、実施した。有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は68.2ppmであった。
【0032】
<実施例6>
実施例1と同じ工程を、Al濃度が2.0wt%の調整液となるようにして、実施した。有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は46.8ppmであった。
【0033】
<実施例7>
実施例1と同じ工程を、Al濃度が3.0wt%の調整液となるようにして、実施した。有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は33.2ppmであった。
【0034】
<実施例8>
実施例1と同じ工程を、15wt%塩酸水溶液を使用して、実施した。有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は75.4ppmであった。
【0035】
<実施例9>
実施例1と同じ工程を、25wt%塩酸水溶液を使用して、実施した。有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は60.7ppmであった。
【0036】
<実施例10>
実施例1と同じ工程を、HCl/Alのモル比が4となるようにして、実施した。有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は89.2ppmであった。
【0037】
<実施例11>
実施例1と同じ工程を、HCl/Alのモル比が9となるようにして、実施した。有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は88.4ppmであった。
【0038】
<実施例12>
実施例1と同じ工程を、反応容器お内温を40℃に保つようにして、実施した。有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は63.6ppmであった。
【0039】
<実施例13>
実施例1と同じ工程を、反応容器お内温を60℃に保つようにして、実施した。有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は68.1ppmであった。
【0040】
<実施例14>
実施例1と同じ工程を実施した。ただし、ケロシンとして、実施例2の工程を5回行い、回収したものを使用した。有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は57.9ppmであった。
【0041】
<実施例15>
実施例1の工程を、無害化する物質としてトリエチルアルミニウム、金属アルミニウム及びジエチル亜鉛、金属亜鉛の混合物を用い、実施した。有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は89.2ppmであった。
【0042】
<実施例16>
0.5Lのセパラブルフラスコ(第1反応器)に3.6wt%塩酸水溶液(61.0g、0.060mol)を投入した。次に、無害化する物質としてのアルミニウムマグネシウム合金(3.16g、0.025mol)及び構造不明のアルキルアルミニウム(アルミニウムに換算して1.17g、0.044mol)及び塩化マグネシウム(19.3g、0.20mol)を含むドデカン(13.2g、0.077mol)スラリーをスクリューフィーダーにて連続的に内温を50℃に保つように約37g/hrで供給しつつ、同様に、3.6wt%塩酸水溶液(437g、HClとして0.43mol)を約437g/hrにて供給した。HCl/Alのモル比は9.1となるように調整した。0.5Lセパラブルフラスコ(第1反応器)から0.3Lセパラブルフラスコ(第2反応器)、0.3Lセパラブルフラスコ(第2反応器)から0.5Lセトラーへの移送も同様にフィードポンプを用いて約0.5L/hrを目安に行い、3時間かけて定常化を行った。その後、定常化と同じ条件で調整液を処理しつつ、セトラーより有機層、水層を連続的に回収し、定常化後の留出液として有機層29.4g、水層1374gを得た。
【0043】
有機層側の回収溶液は無色の清澄液で、水分値は60.5ppmであった。
水層側の留出液を10g採取し30wt%水酸化カルシウム水溶液(2.2g、Ca(OH)2として20.1mmol)にて中和しpH4.0の処理液を得た。この処理液の粘度を測定したところ2.0cPであり、フィードポンプでの移送性は問題なかった。
【0044】
実施例1~16の工程及び結果以下の表にまとめた。
【表1】
【0045】
以上、本発明の実施の形態について説明してきた。しかしながら、本発明はこれらに限定されるものではなく、使用する材料や各種条件等は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 調製槽
2 酸水溶液槽
3 第一反応器
4 第二反応器
5 セトラー
6 有機層
7 水性層
8 フィードポンプ
9 フィードポンプ
10 フィードポンプ
11 フィードポンプ
図1