(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059646
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】昇降装置及び衣類処理装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/07 20060101AFI20230420BHJP
B66F 19/00 20060101ALI20230420BHJP
D06F 89/00 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B66F9/07 A
B66F19/00 R
D06F89/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169762
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】大賀 荘平
(72)【発明者】
【氏名】反田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】細川 明宏
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA04
3F333AB07
3F333AE21
3F333BD05
3F333BD06
3F333BE05
3F333BE06
(57)【要約】
【課題】昇降装置のサイズや製造コストなどを低減させる。
【解決手段】昇降装置の一例である高さ方向移動機構340Aは、幅方向移動機構330Aを昇降させるために駆動されるモータ駆動部341と、モータ駆動部341の回転運動を直線運動に変換して幅方向移動機構330Aに伝達する変換機構374A、374Bと、幅方向移動機構330Aを上昇させる方向に付勢する付勢部379と、幅方向移動機構330Aの位置を検出するためのエンコーダ392と、エンコーダ392により検出された幅方向移動機構330Aの位置に基づいてモータ駆動部341を制御するモータ制御部と、を備える。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を昇降させるために駆動されるモータ駆動部と、
前記モータ駆動部の回転運動を直線運動に変換して前記対象物に伝達する変換機構と、
前記対象物を上昇させる方向に付勢する付勢部と、
前記対象物の位置を検出するための位置検出装置と、
前記位置検出装置により検出された前記対象物の位置に基づいて前記モータ駆動部を制御する制御部と、
を備える
昇降装置。
【請求項2】
前記モータ駆動部及び前記付勢部は、前記昇降装置内の昇降方向に対して固定され、
前記変換機構は、プーリと、前記プーリに巻くことが可能な紐状又は帯状の伝達部とを含む
請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記変換機構を複数備える
請求項2に記載の昇降装置。
【請求項4】
複数の前記変換機構のうち少なくとも1つの前記伝達部が前記対象物から外れたときに前記対象物の負荷が変化するように構成される
請求項3に記載の昇降装置。
【請求項5】
複数の前記変換機構のうち少なくとも1つの前記伝達部が前記対象物から外れたときに前記対象物の位置又は姿勢の変化を抑えるための支持部を備える
請求項3又は4に記載の昇降装置。
【請求項6】
前記モータ駆動部は、前記対象物側から負荷がかかったときに前記モータ駆動部を減速又は停止させるためのブレーキ機構を備える
請求項1から5のいずれかに記載の昇降装置。
【請求項7】
前記昇降装置内の昇降方向に沿って固定されたラックと、
前記対象物の昇降とともに前記ラックに沿って回転しながら昇降するピニオンと、
を含むラック・アンド・ピニオンを備え、
前記位置検出装置は、前記ピニオン又は前記ピニオンとともに回転する部材の回転位置を検出する
請求項1から6のいずれかに記載の昇降装置。
【請求項8】
前記ラック・アンド・ピニオンを複数備える
請求項7に記載の昇降装置。
【請求項9】
前記付勢部は、
トーションばねと、
前記トーションばねを保持する保持部と、
を備え、
前記トーションばねは、前記トーションばねが巻かれたときにうねりが発生しないような長さを有する
請求項1から8のいずれかに記載の昇降装置。
【請求項10】
前記付勢部は、前記トーションばねが巻かれたときに前記保持部の長さを変化させる機構を含む
請求項9に記載の昇降装置。
【請求項11】
前記付勢部は、前記トーションばねの回転を制限するための機構を含む
請求項9又は10に記載の昇降装置。
【請求項12】
処理対象物を保持するための保持装置と、
前記保持装置を昇降させるための昇降装置と、
を備え、
前記昇降装置は、
前記保持装置を昇降させるために駆動されるモータ駆動部と、
前記モータ駆動部の回転運動を直線運動に変換して前記保持装置に伝達する変換機構と、
前記保持装置を上昇させる方向に付勢する付勢部と、
前記保持装置の位置を検出するための位置検出装置と、
前記位置検出装置により検出された前記保持装置の位置に基づいて前記モータ駆動部を制御する制御部と、
を備える
衣類処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物を昇降させる昇降装置、及び昇降装置を利用可能な衣類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を昇降させる昇降装置として、特許文献1には、電動モータを備えた電動式のシャッター装置や、巻き上げ力補助用のスプリングにて付勢されたホイールを回動自在に固定シャフトに支持した手動開閉式のシャッター装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象物の重量が大きい場合は、重量に見合ったモータの選定が必要となるので、昇降装置のサイズや製造コストなどが増大しうる。
【0005】
本開示は、昇降装置のサイズや製造コストなどを低減させるための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における昇降装置は、対象物を昇降させるために駆動されるモータ駆動部と、モータ駆動部の回転運動を直線運動に変換して対象物に伝達する変換機構と、対象物を上昇させる方向に付勢する付勢部と、対象物の位置を検出するための位置検出装置と、位置検出装置により検出された対象物の位置に基づいてモータ駆動部を制御する制御部と、を備える。
【0007】
本開示における衣類処理装置は、処理対象物を保持するための保持装置と、保持装置を昇降させるための昇降装置と、を備える。昇降装置は、保持装置を昇降させるために駆動されるモータ駆動部と、モータ駆動部の回転運動を直線運動に変換して保持装置に伝達する変換機構と、保持装置を上昇させる方向に付勢する付勢部と、保持装置の位置を検出するための位置検出装置と、位置検出装置により検出された保持装置の位置に基づいてモータ駆動部を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、対象物を昇降させる昇降装置のサイズや製造コストなどを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施の形態1における衣類処理装置の正面概略構成図
【
図3】実施の形態1における衣類処理装置の側面概略構成図
【
図4A】実施の形態1における保持装置の概略正面図
【
図4B】実施の形態1における保持装置の概略断面図
【
図4C】実施の形態1における保持装置の概略側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見等)
本開示に係る衣類処理装置は、衣類などの処理対象物を保持する保持部を昇降させるための昇降装置を備える。昇降装置が、保持部を幅方向に移動させるための移動機構ごと保持部を昇降させる場合は、昇降の対象物の重量が大きくなる。
【0011】
このような課題を発明者らは発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。本開示に係る衣類処理装置及び昇降装置は、対象物を昇降させるための駆動されるモータ駆動部と並列に、対象物を上昇させる方向に付勢する付勢部を備える。これにより、構成の追加によるサイズや重量の増大を抑えつつ、モータ駆動部の出力を低減させることができる。
【0012】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0013】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0014】
(実施の形態1)
以下、
図1~
図7を用いて、実施の形態1を説明する。なお、衣類処理装置1の3方向について、前側正面から見て、左右の幅方向を矢印で示すX方向(左方向X1、右方向X2)、前後の奥行き方向を矢印で示すY方向(前方向Y1、後方向Y2)、上下の高さ方向を矢印で示すZ方向(上方向Z1、下方向Z2)として説明する。
【0015】
[1-1.構成]
[1-1-1.衣類処理装置の全体構成]
衣類処理装置1は、変形性薄物としての処理対象物Tを保持、認識、折り畳み、及び、収納する装置である。
図1に示されるように、衣類処理装置1は、筐体100、及び、筐体100内に構成される、受入部200と、保持装置300と、作業板装置400と、撮像装置500と、支持部600と、収納装置700と、制御装置900と、を備える。なお、受入部200及びその上方の処理空間が1つの筐体に構成され、収納装置700などは別の筐体内に構成されて、それぞれの筐体が連結されて一体となるように構成されてもよい。
【0016】
処理対象物Tは、例えば、衣類及びタオル類などの布地、フィルム、紙ならびにシートなどに代表される変形性薄物である。その形状は、タオル類のように矩形であってもよいし、Tシャツやランニングシャツ、長袖シャツ、ズボンのような略矩形であってもよい。
【0017】
筐体100は、直方体の枠を形成するフレーム110と、直方体の所定の面に外郭120が設けられて構成される。フレーム110と外郭120とは、一体に形成されてもよい。
【0018】
受入部200は、処理対象物Tを外部から受け入れる収容部である。
図1から
図3に示されるように、受入部200は、上面が開口した箱型形状を有する。受入部200は、ユーザがアクセスし易いように、衣類処理装置1における底部に配設され、奥行き方向(Y方向)に出し入れ可能に配設される。例えば、受入部200は、下部にガイドレール210が設けられ、前方向Y1に引き出される。処理対象物Tは、引き出された受入部200に上方から入れられる。受入部200は、処理対象物Tが入れられると、ガイドレール210に沿って後方向Y2に戻され、筐体100内に収められる。
【0019】
保持装置300は、処理対象物Tを処理するために、処理対象物Tを保持する装置である。保持装置300は、処理対象物Tを保持する保持部310と、保持部310を幅方向(X方向)、奥行き方向(Y方向)、高さ方向(Z方向)の3方向に移動させる移動機構320と、を含む。保持装置300は、複数設けられ、受入部200内に入れられた処理対象物Tを保持して持ち上げるとともに、処理対象物Tを一時的に載置できる作業板装置400と協働して、処理対象物Tを持ち替えながら展開及び折り畳みを行う。
【0020】
衣類処理装置1は、
図1から
図3に示されるように、保持装置300として2基の保持装置300A,300Bを備える。保持装置300Aは、保持部310として1つの保持部310Aを有し、保持部310Aを3方向に移動させる移動機構320Aを有する。保持装置300Bは、保持部310として2基の保持部310B,311Bを有し、保持部310B,311Bをそれぞれ3方向に移動させる移動機構320Bを有する。
【0021】
保持部310A,310B,311Bは、後述する作業板装置400の作業板410に対して、幅方向、奥行き方向、高さ方向にそれぞれ相対移動可能である。例えば、移動機構320A、320Bは、保持部310A,310B,311Bが作業板410の縁部に沿って一列に並ぶように位置させることができる。
【0022】
保持装置300A、300Bは、後述する制御装置900と有線又は無線により通信可能に接続される。そして、制御装置900により、保持部310A、310B,311B及び移動機構320A、320Bの動作が制御される。
【0023】
保持装置300A,300Bに用いられる移動機構320A,320Bについて、保持装置300Aの移動機構320Aの構成を用いて説明する。保持装置300Bの移動機構320Bの構成は、保持部の数を除いて保持装置300Aの構成と基本的に同じである。よって、保持装置300Bは、保持装置300Aの符号中「A」を「B」に置き換えた符号を用いればよく、その説明を省略する。
【0024】
移動機構320Aは、
図2に示されるように、幅方向移動機構330Aと、高さ方向移動機構340Aと、奥行き方向移動機構350Aと、を備える。
【0025】
幅方向移動機構330Aは、保持部310Aを幅方向(X方向)に移動させる。幅方向移動機構330Aは、保持部310Aを移動させるための駆動力源となる幅方向駆動部332A、及び、移動のガイドとなるXガイド334Aを有する。詳細は図示しないが、幅方向駆動部332Aは、正転及び逆転が可能なモータであり、ピニオンギアを有する。Xガイド334Aは、幅方向駆動部332Aの動力がピニオンギアを介して伝達されるラックギア及びレールであり、その長手方向が幅方向に沿うように配置される。幅方向駆動部332Aは、通電により、Xガイド334Aに沿ってスライド移動する。幅方向駆動部332AがXガイド334Aに沿って幅方向に移動すると、幅方向駆動部332Aに固定された保持部310Aも幅方向に移動する。
【0026】
高さ方向移動機構340Aは、幅方向移動機構330Aとともに保持部310Aを高さ方向(Z方向)に移動させる。高さ方向移動機構340Aは、幅方向移動機構330Aを移動させるための駆動力源となる高さ方向駆動部342A、及び、移動のガイドとなるZガイド344Aを有する。高さ方向駆動部342Aは、正転及び逆転が可能なモータである。詳細は図示しないが、高さ方向駆動部342Aは、幅方向移動機構330Aの枠体の左端に固定され、右端へ駆動力を伝達する伝動シャフトを有する。左右2本のZガイド344Aは、ラック・アンド・ピニオンを含み、その長手方向が高さ方向に沿うようにして配置される。左右2本のZガイド344Aは、上端で連結され、アーチ型に構成される。高さ方向駆動部342Aへの通電により、幅方向移動機構330Aが高さ方向に沿って移動する。
【0027】
奥行き方向移動機構350Aは、保持装置300A全体(高さ方向移動機構340A、幅方向移動機構330A及び保持部310A)を奥行き方向(Y方向)に移動させる。奥行き方向移動機構350Aは、高さ方向移動機構340Aを移動させるための動力源となる奥行き方向駆動部352A、及び、移動のガイドとなる複数のYガイド354を有する。詳細は図示しないが、奥行き方向駆動部352Aは、正転及び逆転が可能なモータであり、ピニオンギアを有する。奥行き方向駆動部352Aは、高さ方向移動機構340Aの枠体上部の連結部左端に固定され、右端へ駆動力を伝達する伝動シャフトを有する。Yガイド354は、奥行き方向駆動部352Aの動力が伝達されるラックギア及びレールであり、その長手方向が奥行き方向に沿うようにして、左右のZガイド344Aそれぞれの上下端に配置される。
【0028】
Yガイド354への駆動力の伝達について、上部のYガイド354には、上述したように、奥行き方向駆動部352Aの動力が伝動シャフトで伝達される。そして、下部のYガイド354には、高さ方向移動機構340Aの枠体内に設けられるギアベルトを介して上部に設けられる伝動シャフトから駆動力が伝達される。奥行き方向駆動部352Aへの通電により、アーチ型の高さ方向移動機構340Aが奥行き方向に沿って平行に移動し、幅方向移動機構330A及び保持部310Aも同じく移動する。
【0029】
なお、本実施の形態において、2基の保持装置300A,300Bは、奥行き方向(Y方向)に移動するために上下左右4本のYガイド354を共用する。このため、常に保持装置300Aは保持装置300Bより後側に位置する。また、保持装置300Bにおいて、2つの保持部310B,311Bは幅方向(X方向)に移動するためにXガイド334Bを共用する。このため、常に保持部310Bは保持部311Bより左側に位置する。
【0030】
本実施の形態では、移動機構としてラック&ピニオン式で、駆動部のモータも移動する構成としたが、これに限られない。例えば、ボールねじを利用したり、ワイヤによる懸架を利用したりして、モータは移動しない構成などでもよい。本願は、モータは移動しない構成を利用した発明に係り、詳細はあらためて後述する。
【0031】
作業板装置400は、認識処理や折り畳み処理の際に処理対象物Tを載置する作業板410を回転及び移動させる装置である。作業板装置400は、移動機構320と同様の移動機構を備える。作業板410は、
図2に示されるように、作業平面の角部を面取りされた略矩形の板材である。作業板410は、角部の角がないように形成されることにより、布類などの処理対象物Tが引っ掛かる不具合が抑制される。作業板410は、作業板410の長手方向、つまり、長辺の2つの縁部がそれぞれ回転軸と平行になるように回転軸に固定される。
【0032】
撮像装置500は、処理対象物Tを受け入れた後の掴み処理、認識処理及び折り畳み処理する際に、当該処理対象物Tの端点等を検出する装置である。
図2及び
図3に示されるように、撮像装置500は、第1撮像部510と、第2撮像部520と、第3撮像部530と、を含む。第1撮像部510及び第2撮像部520は、例えばデジタルスチルカメラが使用され、端点検出や、処理対象物Tの種類の判別などに使用される。第3撮像部530は、例えばステレオカメラが使用され、端点検出のための奥行き方向の距離や処理対象物Tの幅を測定するために使用される。いずれの撮像部も正面内壁側のフレームに設けられ、レンズの向きは後方向Y2である。
【0033】
支持部600は、処理対象物Tの折り畳みの際に、折り畳みラインを押さえておいたり、処理対象物Tの皺を伸ばしたりなど、処理対象物Tを支持する壁面である。例えば、支持部600は、作業板410の前方に設けられる正面側支持部610及び後方に設けられる背面側支持部620のうち少なくともいずれか一方を含む。
【0034】
収納装置700は、処理された処理対象物Tを保持装置300から受け取って収納する。収納装置700は、
図1及び
図2に示されるように、複数の収納部710を備える。収納装置700は、処理対象物Tを受け取り各収納部710に格納する運搬部を含んでもよい。収納装置700は、受入部200及び保持装置300などが収納される処理空間の横に隣接して配設されており、処理空間と収納装置700とを合わせて、衣類処理装置1が構成される。
【0035】
制御装置900は、衣類処理装置1における各部の制御を統括する。制御装置900は、主として、ROM、RAM、演算装置、及び入出力インターフェイスから構成される。ROMには、オペレーティングシステム、衣類処理装置1の各部を制御するための制御プログラム、及び、制御プログラムの実行に必要なデータが格納されている。また、演算装置は、ROMに格納されている制御プログラムをRAMにロードしたり、ROMから直接実行したりするために設けられる。つまり、制御装置900は、演算装置が制御プログラムを実行することにより、衣類処理装置1を制御できる。そして、演算装置が処理したデータは、入出力インターフェイスを介して、衣類処理装置1の各部(保持装置300、作業板装置400等)へ送信される。演算装置の処理に必要なデータは、衣類処理装置1の各部(撮像装置500等)から入出力インターフェイスを介して受信される。
【0036】
[1-1-2.高さ方向移動機構の詳細]
上述した高さ方向移動機構340の詳細について説明する。
図4Aは、保持装置300Aの概略正面図である。
図4Bは、保持装置300Aの概略断面図である。
図4Cは、保持装置300Aの概略側面図である。
図4A、
図4B、及び
図4Cでは、保持部310A及び奥行き方向移動機構350Aを省略している。
【0037】
高さ方向移動機構340Aは、本開示の昇降装置の一例であり、対象物である幅方向移動機構330Aを昇降させる。高さ方向移動機構340Aは、モータ駆動部341、変換機構374A,374B、付勢部379、Zガイド344、エンコーダ392などを備える。
【0038】
モータ駆動部341は、幅方向移動機構330Aを昇降させるために駆動される。モータ駆動部341は、制御装置900により制御されるモータ343と、モータ343の回転を減速して変換機構374A,374Bに伝達する減速機構345を含む。モータ駆動部341は、門型の保持装置300Aの冠木部分の一端側に設けられ、昇降方向に対して固定される。モータ駆動部341の出力は、伝達シャフト349を介して他端側に伝達される。
【0039】
変換機構374A,374Bは、モータ駆動部341の回転運動を直線運動に変換して幅方向移動機構330Aに伝達する。変換機構374A,374Bは、それぞれ、プーリ375A,375Bと、ワイヤガイド376A,376Bと、ワイヤ377A,377Bを含む。プーリ375A,375Bは、ワイヤ377A,377Bを巻き取り可能に構成された円盤状の部材であり、モータ駆動部341により回転可能に設けられる。ワイヤ377A,377Bは、本開示の伝達部の一例であり、プーリ375A,375Bに巻くことが可能な紐状又は帯状の部材である。ワイヤガイド376A,376Bは、ワイヤ377A,377Bがプーリ375A,375Bに巻き取られるように案内する。ワイヤ377A,377Bは、幅方向移動機構330Aの両端を吊持する。これにより、幅方向移動機構330Aを水平に維持したまま昇降させることができる。本実施の形態では、幅方向移動機構330Aの両端をZガイド344により支持しているので、1本のワイヤ377を用いて幅方向移動機構330Aを昇降させてもよい。また、3本以上のワイヤ377を用いて幅方向移動機構330Aを昇降させてもよい。
【0040】
付勢部379は、トーションばね347と、トーションばね347を保持するパイプ348を備える。トーションばね347は、モータ駆動部341と並列にプーリ375A,375Bに接続され、幅方向移動機構330Aを上昇させる方向、すなわちワイヤ377A,377Bを巻き取る方向にプーリ375A,375Bを付勢する。これにより、幅方向移動機構330Aを上昇させるときに、モータ駆動部341の出力を補助することができるので、重量やサイズの増大を抑えつつ、モータ343の出力を低減させることができる。
【0041】
トーションばね347のピッチ間に隙間があると、
図5に示すように、トーションばね347を巻いたときにうねりが発生し、トーションばね347がパイプ348に接触して摩擦が起こる。これにより、所望のばね特性が得られなくなったり、出力付近のトーションばね347しか回らなくなって応力が集中し、寿命が短くなったりする場合がある。したがって、トーションばね347の巻き方は、素線同士を密着させる密着巻きの方が好ましい。トーションばね347は、トーションばね347が巻かれたときにうねりが発生しないような長さとされる。
【0042】
付勢部379は、トーションばね347が巻かれたときにパイプ348の長さを変化させる機構を含んでもよい。例えば、
図6に示すように、パイプ348の一端に対して摺動可能に設けられた摺動部394と、トーションばね347を巻いたときに摺動部394を摺動させる送りねじ393とが設けられてもよい。これにより、広い範囲の巻数で所望のばね特性を維持することができる。
【0043】
付勢部379は、トーションばね347の回転を制限するための機構であるラチェット346を備える。ラチェット346は、通常は開かれ、トーションばね347の回転を制限しないが、衣類処理装置1のメンテナンスや組み立ての際には閉じられ、トーションばね347の回転を制限する。これにより、メンテナンスや組み立ての作業性や安全性を向上させることができる。
【0044】
モータ駆動部341、付勢部379、及びプーリ375A,375Bは、門型の保持装置300Aの冠木部分に設けられる。これにより、これらの構成を、幅方向移動機構330Aの可動領域外にまとめることができるので、幅方向移動機構330Aの可動領域を確保することができる。
【0045】
Zガイド344は、門型の保持装置300Aの両端の門柱部分のそれぞれに設けられる。Zガイド344は、高さ方向に沿って固定されたラックギア390と、幅方向移動機構330Aの昇降とともにラックギア390に沿って回転しながら昇降するピニオンギア391を含む。これにより、水平方向に長い幅方向移動機構330Aを水平に維持したまま昇降させることができる。また、ワイヤ377A,377Bのテンションに差が生じたり、一方が切断したりしても、幅方向移動機構330Aを水平に維持することができる。Zガイド344は、いずれか一方の門柱部分のみに設けられてもよい。また、3つ以上のZガイド344が設けられてもよい。
【0046】
エンコーダ392は、本開示の位置検出装置の一例であり、幅方向移動機構330Aの位置を検出するために、ピニオンギア391又はピニオンギア391とともに回転する部材の回転位置を検出する。これにより、安価な構成により幅方向移動機構330Aの位置を検知することができる。また、幅方向移動機構330A側の構成により幅方向移動機構330Aの位置を検知するので、位置検知の精度を向上させることができ、ひいては、位置制御の精度を向上させることができる。なお、別の例では、モータ343、減速機構345、プーリ375A,375Bなどの回転位置や、ワイヤ377A,377Bの長さなどから幅方向移動機構330Aの位置を検知してもよい。
【0047】
軸受378は、複数の変換機構374A,374Bのうち少なくとも1つのワイヤ377A,377Bが幅方向移動機構330Aから外れたり切断したりしたときに、幅方向移動機構330Aの位置又は姿勢の変化を抑えるための支持部として機能する。これにより、幅方向移動機構330Aが他の構成に接触したりして他の構成が損傷するのを防ぐことができる。
【0048】
複数の変換機構374A,374Bのうち少なくとも1つのワイヤ377A,377Bが幅方向移動機構330Aから外れたり切断したりしたときに、幅方向移動機構330Aの負荷が変化するように構成されてもよい。例えば、幅方向移動機構330Aの位置や姿勢が変化したときに幅方向移動機構330Aが接触する位置にリブが設けられてもよい。このとき、制御装置900は、モータ343に流れる電流の値や、エンコーダ392により検出される回転位置などに基づいて、幅方向移動機構330Aの負荷が変化したことを検知してもよい。これにより、ワイヤ377A,377Bが幅方向移動機構330Aから外れたり切断したりしたことを検知することができる。
【0049】
モータ駆動部341は、幅方向移動機構330A側から負荷がかかったときに、モータ駆動部341を減速又は停止させるための図示しないブレーキ機構を備える。ブレーキ機構は、例えば、ウォームギヤのセルフロック機構などであってもよい。トーションばね347は、巻き位置によって応力が変化するが、モータ駆動部341がブレーキ機構を有することにより、電源を切ったときや、幅方向移動機構330A側から負荷がかかったときなどに、プーリ375A,375Bが回転して幅方向移動機構330Aが移動してしまうのを防ぐことができる。
【0050】
図7は、実施の形態1に係る昇降制御部990の構成を示す。昇降制御部990は、制御装置900に備えられ、保持部310の昇降を制御する。昇降制御部990は、指示取得部991、位置取得部992、モータ制御部993、及び異常検知部994を備える。
【0051】
指示取得部991は、制御装置900から保持部310の昇降に関する指示を取得する。昇降に関する指示は、保持部310を昇降させる方向、高さ位置、昇降速度などの指示を含んでもよい。
【0052】
位置取得部992は、エンコーダ392により検出された幅方向移動機構330の位置を取得する。位置取得部992は、エンコーダ392により検出された信号を取得して、幅方向移動機構330の位置を算出してもよい。
【0053】
モータ制御部993は、指示取得部991により取得された指示と、位置取得部992により取得された位置に基づいて、モータ343を制御する。モータ制御部993は、指示取得部991により取得された高さ位置に保持部310を移動させるために必要なモータ343の駆動量を、幅方向移動機構330の高さ位置に基づいて算出する。幅方向移動機構330が下方に移動されるほどトーションばね347による応力が大きくなるが、トーションばね347による応力が幅方向移動機構330にかかる重力と釣り合うと、幅方向移動機構330の自重でその位置よりも下降させることができない。このような場合は、モータ制御部993は、幅方向移動機構330を下降させる方向にモータ343を駆動してもよい。
【0054】
異常検知部994は、幅方向移動機構330の異常を検知する。異常検知部994は、モータ343に流れる電流の値や、エンコーダ392により検出された幅方向移動機構330の位置や位置の変化率などに基づいて、幅方向移動機構330が水平から傾いていたり、幅方向移動機構330が他の部材に接触していたり、幅方向移動機構330に負荷がかかっていたりする異常状態を検知する。
【0055】
[1-2.動作]
以上のように構成された衣類処理装置1について、以下その動作、作用を説明する。
【0056】
制御装置900は、保持部310を制御して、処理対象物Tの展開や折り畳みなどの処理を進める。保持部310を昇降させるとき、制御装置900は、昇降制御部990に、保持部310の高さ方向の位置を指示する。指示取得部991は、制御装置900から保持部310の昇降に関する指示を取得する。位置取得部992は、エンコーダ392により検出された幅方向移動機構330の位置を取得する。モータ制御部993は、指示取得部991により取得された指示と、位置取得部992により取得された位置に基づいて、モータ343を制御する。
【0057】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、高さ方向移動機構340は、幅方向移動機構330を昇降させるために駆動されるモータ駆動部341と、モータ駆動部341の回転運動を直線運動に変換して幅方向移動機構330に伝達する変換機構374と、幅方向移動機構330を上昇させる方向に付勢する付勢部379と、幅方向移動機構330の位置を検出するためのエンコーダ392と、エンコーダ392により検出された幅方向移動機構330の位置に基づいてモータ駆動部341を制御するモータ制御部993と、を備える。これにより、重量やサイズの増大を抑えつつ、モータ343の出力を低減させることができる。また、位置検知の精度を向上させることができ、ひいては、位置制御の精度を向上させることができる。
【0058】
また、本実施の形態において、モータ駆動部341及び付勢部379は、高さ方向移動機構340内の昇降方向に対して固定され、変換機構374は、プーリ375と、プーリ375に巻くことが可能な紐状又は帯状のワイヤ377とを含む。これにより、これらの構成を、幅方向移動機構330の可動領域外にまとめることができるので、幅方向移動機構330の可動領域を確保することができる。
【0059】
また、本実施の形態において、高さ方向移動機構340は、変換機構374を複数備える。これにより、高さ方向移動機構340を水平に維持しながら昇降させることができる。
【0060】
また、本実施の形態において、高さ方向移動機構340は、複数の変換機構374のうち少なくとも1つのワイヤ377が幅方向移動機構330から外れたときに幅方向移動機構330の負荷が変化するように構成される。これにより、ワイヤ377A,377Bが幅方向移動機構330から外れたり切断したりしたことを検知することができる。
【0061】
また、本実施の形態において、高さ方向移動機構340は、複数の変換機構374のうち少なくとも1つのワイヤ377が幅方向移動機構330から外れたときに幅方向移動機構330の位置又は姿勢の変化を抑えるための軸受378を備える。これにより、幅方向移動機構330が他の構成に接触したりして他の構成が損傷するのを防ぐことができる。
【0062】
また、本実施の形態において、モータ駆動部341は、幅方向移動機構330側から負荷がかかったときにモータ駆動部341を減速又は停止させるためのブレーキ機構を備える。これにより、電源を切ったときや、幅方向移動機構330側から負荷がかかったときなどに、プーリ375A,375Bが回転して幅方向移動機構330が移動してしまうのを防ぐことができる。
【0063】
また、本実施の形態において、高さ方向移動機構340は、高さ方向移動機構340内の昇降方向に沿って固定されたラックギア390と、幅方向移動機構330の昇降とともにラックギア390に沿って回転しながら昇降するピニオンギア391と、を含むラック・アンド・ピニオンを備え、エンコーダ392は、ピニオンギア391又はピニオンギア391とともに回転する部材の回転位置を検出する。これにより、高さ方向移動機構340を水平に維持しながら昇降させることができる。また、安価な構成により幅方向移動機構330の位置を検知することができる。
【0064】
また、本実施の形態において、高さ方向移動機構340は、ラック・アンド・ピニオンを複数備える。これにより、高さ方向移動機構340を水平に維持しながら昇降させることができる。
【0065】
また、本実施の形態において、付勢部379は、トーションばね347と、トーションばね347を保持するパイプ348と、を備え、トーションばね347は、トーションばね347が巻かれたときにうねりが発生しないような長さを有する。これにより、広い範囲の巻数で所望のばね特性を維持することができる。また、トーションばね347の寿命を長くすることができる。
【0066】
また、本実施の形態において、付勢部379は、トーションばね347が巻かれたときにパイプ348の長さを変化させる機構を含む。これにより、広い範囲の巻数で所望のばね特性を維持することができる。
【0067】
また、本実施の形態において、付勢部379は、トーションばね347の回転を制限するための機構を含む。これにより、メンテナンスや組み立ての作業性や安全性を向上させることができる。
【0068】
また、本実施の形態において、衣類処理装置1は、処理対象物を保持するための保持部310と、保持部310を昇降させるための高さ方向移動機構340と、を備え、高さ方向移動機構340は、保持部310とともに幅方向移動機構330を昇降させるために駆動されるモータ駆動部341と、モータ駆動部341の回転運動を直線運動に変換して幅方向移動機構330に伝達する変換機構374と、幅方向移動機構330を上昇させる方向に付勢する付勢部379と、幅方向移動機構330の位置を検出するためのエンコーダ392と、エンコーダ392により検出された幅方向移動機構330の位置に基づいてモータ駆動部341を制御するモータ制御部993と、を備える。これにより、重量やサイズの増大を抑えつつ、モータ343の出力を低減させることができる。また、位置検知の精度を向上させることができ、ひいては、位置制御の精度を向上させることができる。
【0069】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0070】
例えば、実施の形態1の技術は、任意の対象物を昇降させるための昇降装置に適用可能である。
【0071】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本開示は、対象物を昇降させる昇降装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 衣類処理装置
T 処理対象物
100 筐体
110 フレーム
120 外郭
200 受入部
210 ガイドレール
300、300A、300B 保持装置
310、310A、310B、311B 保持部
320、320A、320B 移動機構
330、330A、330B 幅方向移動機構
332A、332B 幅方向駆動部
334A、334B Xガイド
340A、340B 高さ方向移動機構
341 モータ駆動部
342A、342B 高さ方向駆動部
343 モータ
344A、344B Zガイド
345 減速機構
346 ラチェット
348 パイプ
349 伝達シャフト
350A、350B 奥行き方向移動機構
352A、352B 奥行き方向駆動部
354A、354B Yガイド
374、374A、374B 変換機構
375、375A、375B プーリ
376A、376B ワイヤガイド
377、377A、377B ワイヤ
378 軸受
379 付勢部
390 ラックギア
391 ピニオンギア
392 エンコーダ
394 摺動部
400 作業板装置
410 作業板
400 作業板装置
410 作業板
500 撮像装置
510 第1撮像部
520 第2撮像部
530 第3撮像部
600 支持部
610 正面側支持部
620 背面側支持部
700 収納装置
710 収納部
900 制御装置
990 昇降制御部
991 指示取得部
992 位置取得部
993 モータ制御部
994 異常検知部
X1 左方向
X2 右方向
Y1 前方向
Y2 後方向
Z1 上方向
Z2 下方向