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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059652
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】食品用電子レンジ対応包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169769
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】520495906
【氏名又は名称】株式会社カナオカホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100081949
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 欣正
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 孝行
(72)【発明者】
【氏名】森園 栞那
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA21
3E013BB12
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF03
3E013BF08
3E013BF23
3E013BF27
3E013BG15
3E013BG16
(57)【要約】
【課題】 電子レンジにかけて内部の食品を加熱した場合の袋体の破裂を防止する。
【解決手段】 耐熱性がある基材層P2とシーラント層P1を有する2層以上の積層フィルムからなる背面側のフィルム10と、同じく互いの折り曲げ片同士を合掌状に突き合わせた2枚のフィルムの接合からなる表面側のフィルム11と、底部に底材として挟み込まれる二つ折りしたガゼットフィルム20からなり、合掌箇所1における対向するフィルム同士のヒ-トシ-ル部と、背面側の合成樹脂フィルムと正面側の合成樹脂フィルムの3辺のヒ-トシ-ル部およびこれらに挟み込まれるガゼットフィルムを設け、内部に食品を収容した後に開口部を封止する食品用電子レンジ対応包装袋において、ヒ-トシ-ル部の特定領域において、包装袋の内側から外側に向かって横断するようにヒートシール時の熱により発泡する熱膨張性マイクロカプセルを含有した発泡インキ層5をシーラント層の基材層側に設ける。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも耐熱性がある基材層とシーラント層を有する2層以上の積層フィルムからなる裏面側のフィルムと、同じく互いの折り曲げ片同士を合掌状に突き合わせた2枚のフィルムの接合からなる正面側のフィルムと、底部に底材として挟み込まれる二つ折りしたガゼットフィルムからなり、合掌箇所における対向するフィルム同士のヒ-トシ-ル部と、背面側の合成樹脂フィルムと正面側の合成樹脂フィルムの3辺およびこれらに挟み込まれるガゼットフィルムのヒ-トシ-ル部を設け、内部に食品を収容した後に開口部を封止する食品用電子レンジ対応包装袋において、ヒ-トシ-ル部の特定領域において、包装袋の内側から外側に向かって横断するようにヒートシール時の熱により発泡する熱膨張性マイクロカプセルを含有した発泡インキ層をシーラント層の基材層側に設けたことを特徴とする食品用電子レンジ対応包装袋。
【請求項2】
発泡インキ層は合掌箇所における対向するフィルム同士のヒ-トシ-ル部の特定領域において、包装袋の内側から外側に向かって横断するように設けられる請求項1記載の食品用電子レンジ対応包装袋。
【請求項3】
マイクロカプセル含有発泡インキ層が100℃30~60秒、150℃1秒、160℃0. 5秒程度の温度で20~100μmに発泡する請求項1から3のいずれかに記載の食品用電子レンジ対応包装袋。
【請求項4】
マイクロカプセル含有発泡インキ層がグラビア印刷によって設けられる請求項1から4のいずれかに記載の食品用電子レンジ対応包装袋。
【請求項5】
シーラント層として易裂き性のある脆いタイプのフィルムを使用する請求項1から5のいずれかに記載の食品用電子レンジ対応包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、プラスチックフィルムからなる包装袋に関し、より詳細には電子レンジで加熱可能な食品を包装袋内に収容した状態で流通に供する際に使用される食品用電子レンジ対応包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジに対応するプラスチックフィルムからなる包装袋に食品を収容した後に密封し、密封した状態で流通に供される包装詰め食品が公知である。この場合、食品を購入した消費者は包装袋を開封しないで密封した状態でそのまま電子レンジにかけて内部の食品を加熱する。そのため、加熱により食品から蒸散される水蒸気や、包装袋内の空気の熱膨張により包装袋の内圧が高まって膨らみ、遂には破裂して、レンジ内に食品等が散乱する事故の危険があった。
【0003】
この事故を防止するためには、予め包装袋に前記加熱で発生する圧力を逃がすための弁体を装着する発明(特許文献1)や、包装体のヒートシールによる接合部の一部のヒートシール強度を弱くすることにより加熱により蒸散される水蒸気による内圧の上昇により剥離しやすくして、ここから蒸通により圧力を逃がす発明が提案されていた(特許文献2)。
【特許文献1】特許第3006528号公報
【特許文献2】特開2000-025848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者の公知発明は弁体を装着する手間、工程、材料費により、包装袋の製造コストが嵩む問題があった。
【0005】
一方、後者の公知発明においては、ヒートシール強度の設定が難しく、電子レンジのマグネトロンの出力が大きかったり、食品の含水量が多いなどの理由により急激に内圧が上昇した場合には、弱ヒートシール部分による逃圧が機能する前に他の部分も同時に剥離して包装体が破壊するおそれがあった。
【0006】
また、急激に剥離して蒸通した場合に破裂音が発生するおそれがあった。
【0007】
食品用電子レンジ対応包装袋はイージーピールフィルムや特殊形状のシールバーを使用しなければ製袋出来ないという課題があり、イージーピールフィルムを使用するとイージーピールフィルムの品質のバラつきによるシール強度のコントロール性に難があり、イージーピールを使用した面のシール強度が弱くなり破袋しやすいといった欠点があった。
【0008】
一方、特殊形状のシールバーを使用する場合、袋のサイズ毎に一点一様のシールバーを作らなければならないので、シールを袋の内側に張り出したものにしなければならず、どうしても外圧がかかった際にシール後退が起きやすいといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は前記の問題を解消した食品用電子レンジ対応包装袋を提供することを目的として創作されたものである。
【0010】
すなわち、本願発明の食品用電子レンジ対応包装袋は、少なくとも耐熱性がある基材層とシーラント層を有する2層以上の積層フィルムからなる裏面側のフィルムと、同じく互いの折り曲げ片同士を合掌状に突き合わせた2枚のフィルムの接合からなる正面側のフィルムと、底部に底材として挟み込まれる二つ折りしたガゼットフィルムからなり、合掌箇所における対向するフィルム同士のヒ-トシ-ル部と、背面側の合成樹脂フィルムと正面側の合成樹脂フィルムの3辺およびこれらに挟み込まれるガゼットフィルムのヒ-トシ-ル部を設け、内部に食品を収容した後に開口部を封止する食品用電子レンジ対応包装袋において、ヒ-トシ-ル部の特定領域において、包装袋の内側から外側に向かって横断するようにヒートシール時の熱により発泡する熱膨張性マイクロカプセルを含有した発泡インキ層をシーラント層の基材層側に設けたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2記載の発明は前記の食品用電子レンジ対応包装袋において、発泡インキ層は合掌箇所における対向するフィルム同士のヒ-トシ-ル部の特定領域において、包装袋の内側から外側に向かって横断するように設けられることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3記載の発明は前記の食品用電子レンジ対応包装袋において、マイクロカプセル含有発泡インキ層が100℃30~60秒、150℃1秒、160℃0. 5秒程度の温度で20~100μmに発泡することを特徴とする。
【0013】
また、請求項4記載の発明は前記の食品用電子レンジ対応包装袋において、マイクロカプセル含有発泡インキ層がグラビア印刷によって設けられることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5記載の発明は前記の食品用電子レンジ対応包装袋において、シーラント層として易裂き性のある脆いタイプのフィルムを使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
発泡インキ層に含有される熱膨張性マイクロカプセルは、ヒートシール時の熱により発泡するのでその箇所でのラミネートを阻害する。
【0016】
よって、本願発明の食品用電子レンジ対応包装袋においては、電子レンジ加熱時に圧力がかかる部分となる合掌箇所における対向するフィルム同士のヒ-トシ-ル部と、筒の両開口端における対向するフィルム同士のヒ-トシ-ル部にヒ-トシ-ルの熱で発泡する発泡インキ層を部分的に設けることにより、部分的に積層フィルムの層間強度を弱くすることにより、そこから内圧を発生させる蒸気を逃がすので、ヒートシール部分が剥離するような内圧が発生する前に蒸気を所定箇所から逃がすことができ、不規則な破裂を防止することができる。
【0017】
この場合、層間強度を弱くするための層は発泡インキ層として印刷により施されるので、特別な別部材や切り込み加工を要することなく、低コストで食品用電子レンジ対応包装袋を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本願発明の食品用電子レンジ対応包装袋の製袋前の斜視図。
図2】同上、正面側の斜視図。
図3】同上、内部に食品を収容した状態の斜視図。
図4】同上、加熱した状態の斜視図。
図5】同上、合掌箇所の断面図。
図6】同上、異なる実施例の合掌箇所の断面図。
図7】同上、蒸通を示す模式図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本願発明の具体的実施例を添付図面に基づいて説明する。図1は本願発明の食品用電子レンジ対応包装袋の袋体Pの開封前の状態を示す斜視図である。この袋体Pは背面側のフィルム10と、同じく互いの折り曲げ片1A、1B同士を合掌状に突き合わせた2枚のフィルム11A、11Bの接合からなる正面側のフィルム11と、底部に底材として挟み込まれる二つ折りしたガゼットフィルム20からなり、合掌箇所1における対向するフィルム同士のヒ-トシ-ル部Hと、背面側の合成樹脂フィルムと正面側の合成樹脂フィルムの3辺のヒ-トシ-ル部Hおよびこれらに挟み込まれるガゼットフィルムのヒ-トシ-ル部Hを設け、内部に食品を収容した後に開口部Kを封止する公知の袋体をベースとしている(図1図2参照)。
【0020】
袋体Pを構成するプラスチックフィルムは、少なくとも耐熱性がある基材層とシーラント層を有する2層以上の積層フィルムからなり、合掌箇所1における対向するフィルム同士のヒ-トシ-ル部H、背面側の合成樹脂フィルムと正面側の合成樹脂フィルムの3辺における対向するフィルム同士のヒ-トシ-ル部Hおよびこれらに挟み込まれるガゼットフィルム20のヒ-トシ-ル部Hをヒートシールする。
【0021】
図5は袋体Pを構成するプラスチックフィルムの積層例を示すものであり、ここでは耐熱性がある基材層P2にシーラント層P1を積層した2層構造としている。
【0022】
基材層P2を構成するフィルムとしては例えばOPP、PET、ONYなどが、シーラント層P1を構成するフィルムとしては例えばCPP、LLなどが想定される。
【0023】
なお、シーラント層として易裂き性のある脆いタイプのフィルムを使用してもよい。
【0024】
図中符号5は本願発明の要旨となる発泡インキ層であり、合掌箇所1における対向するフィルム同士のヒ-トシ-ル部の特定領域において、包装袋の内側から外側に向かって横断するように設けられる。より具体的には発泡インキ層5は合掌箇所1の中央付近にして、シーラント層P1の基材層P2側に設けられる。
【0025】
発泡インキ層5はヒートシール時の熱により発泡する熱膨張性マイクロカプセルを含有したインキであり、例えば塩化ビニル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂を基材としたマイクロカプセルに、イソブタン、ブタン、イソペンタン、n-ペンタンなどの脂肪族炭化水素を内包したものなどが想定され(具体的な商品としては東京インキ製、LG-MCバブル剤E)、ここでは100℃30~60秒、150℃1秒、160℃0. 5秒程度の温度で20~100μmに発泡するものを採用している。
【0026】
図6は袋体Pを構成するプラスチックフィルムを3層構造とした例を示すものであり、ここでは耐熱性がある基材層P2、P3にシーラント層P1を積層している。
【0027】
基材層P2を構成するフィルムとしては例えばOPP、PET、ONYなどが、基材層P3を構成するフィルムとしては例えばOPP、PET、ONYなどが、シーラント層P1を構成するフィルムとしては例えばCPP、LLなどが想定される。
【0028】
(実験例)
PET#12/接着剤/ONY#15-発泡インキ/接着剤/レトルトCPP#60構成のフィルムを用いて、本袋の形状を作成。
合掌箇所の中央に40mm幅にて発泡インキ部を設け実験を開始。
発泡インキ部のシール強度は役30N/15mm、その他シール部は役60N/15mmとなり、電子レンジ加熱により発生した水蒸気を発泡インキ部が破壊されることにより袋外に逃がすことができた。
PETは東洋紡社のE5102、ONYはユニチカ社のONMBC-RT、レトルトCPPは東レフィルム加工のZK207を使用。
【0029】
以上において発泡インキ層5はグラビア印刷によって施される。また、図示しないが層間には白抑えやデザインのための印刷が施される。
【0030】
図7は本願発明の作用、すなわち蒸通の過程を示す模式図である。包装袋Pに密封状態で収容された食品Fからは電子レンジで加熱されることにより水蒸気が蒸散し、その圧力と空気の熱膨張により包装袋は内圧が高まって膨らみ(図3参照)、そのままでは破裂してしまうが、3点交差部Xに配置した発泡インキ部でシーラントがエッジ切れして積層間から蒸気が抜けて破裂が防止される(図4参照)。
【0031】
なお、本願発明者は実験の結果、次のことを知見した。
・2層でも3層でも発泡インキはシーラントフィルム側のラミネート層側に配置される。
・発泡インキを蒸気口に部分的に配置することで簡単に蒸気口を作ることができる。
・これまでの様にイージーオープンフィルムを使用しないことで袋の強度を保ちながら安全に蒸気を逃がす事ができる。
・製袋時に特殊なヒートシール形状、切欠きといった特殊加工をする必要がなく簡単に加工できる。
・PETやONYは透明蒸着やバリアコートがあるバリアフィルムに変更することでバリア性を持った製品を作ることができる。
・レトルトCPPは今回東レフィルム加工株式会社のZK207を使用して上手く蒸通できているが、他タイプに関しても検証が必要。
・レトルトCPPの代わりにLLフィルムを使用しても対応はできると思われるが未検証。
【符号の説明】
【0032】
P 袋体
H ヒートシール部
K 開口
P1 シーラント層
P2 基材層
P3 基材層
F 食品
1 合掌箇所
1A 折り曲げ片
1B 折り曲げ片
5 発泡インキ層
10 背面側のフィルム
11 正面側のフィルム
11A 正面側のフィルムを構成するフィルム
11B 正面側のフィルムを構成するフィルム
20 ガゼットフィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7