(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059692
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】分取用クロマトグラフィ支援装置、分取用クロマトグラフ装置及び分取クロマトグラフィ方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20230420BHJP
G01N 30/80 20060101ALI20230420BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20230420BHJP
G01N 30/34 20060101ALI20230420BHJP
G01N 30/95 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
G01N30/86 Z
G01N30/80 F
G01N30/26 A
G01N30/34 E
G01N30/95 Z
G01N30/86 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169841
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】391048533
【氏名又は名称】山善株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】大倉 喜八郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薄層クロマトグラフィ又はカラムクロマトグラフィの結果を利用して液体クロマトグラフィの結果を幅広い化合物に対して高精度で予測し、最適分離条件を設定することができるような方法を見出すこと。
【解決手段】計算式取得手段を備えた分取用クロマログラフィ支援装置であって、薄層クロマトグラフィ又は液体クロマトグラフィによって測定した特定の2種の溶媒の混合比Bの混合溶媒を使用したときのRf値の実測値に基づいて、カラムクロマトグラフィにおける分取に関する情報を提供するための装置であり、計算式取得手段は、Rf=a
1B+b
1(1)の関係式におけるa
1又は、logk’=a
2logB+b
2(2)(ただし、保持比:k’=(t
R-t
0)/t
0(3)、溶媒比率:B)の関係式におけるa
2をTLCにおける1回の測定結果の実測値であるB及びRfに基づいて取得するものである分取用クロマトグラフィ支援装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算式取得手段を備えた分取用クロマログラフィ支援装置であって、
薄層クロマトグラフィ又は液体クロマトグラフィによって測定した特定の2種の溶媒の混合比Bの混合溶媒を使用したときのRf値の実測値に基づいて、カラムクロマトグラフィにおける分取に関する情報を提供するための装置であり、
計算式取得手段は、
Rf=a1B+b1 (1)
の関係式におけるa1又は
logk’=a2logB+b2 (2)
(ただし、
保持比:k’=(tR-t0)/t0 (3)
溶媒比率:B
の関係式におけるa2
をTLCにおける1回の測定結果の実測値であるB及びRfに基づいて取得するものであることを特徴とする分取用クロマトグラフィ支援装置。
【請求項2】
特定の2種の溶媒の組み合わせについて、多数種の化合物についてのRf値と溶媒の混合比Bとの関係を実測し、これによって得られたデータに基づいて得られた計算式取得手段を有する請求項1記載の分取用クロマトグラフィ支援装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の分取用クロマトグラフィ支援装置を備えることを特徴とする分取用クロマログラフィ装置。
【請求項4】
特定の2種の溶媒の混合比Bの混合溶媒において分取対象化合物の薄層クロマトグラフィを行う工程(1)
工程(1)によって得られたRf値及び混合比Bを請求項1記載の分取用クロマトグラフィ支援装置に入力する工程(2)
工程(2)によって入力されたデータに基づいて、分取用クロマトグラフィ支援装置が
Rf=a1B+b (1)
又は
logk’=a2logB+b (2)
(ただし、
保持比:k’=(tR-t0)/t0 (3)
の関係式におけるa1又はa2を取得する工程(3)
当該関係式に基づいて、分取用クロマトグラフィにおけるグラジエント条件を決定する工程(4)
及び
工程(4)によって決定されたグラジエント条件に従ってクロマトグラフィを行う工程(5)
を有することを特徴とする分取クロマトグラフィ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分取用クロマトグラフィ支援装置、分取用クロマトグラフ装置及び分取クロマトグラフィ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィにおいては、カラム内に充填された固定相内に、試料が溶解した溶液を通過させる。このとき、カラム内に導入された試料内の各成分は固定相との相互作用や移動相との親和性等により、カラムを通過する時間が異なるため、カラムから排出される時点では各成分が分離される。固定相との相互作用が強い、又は移動相との親和性の弱い物質がカラム中に長く留まり、カラムから遅く排出されることとなる。
【0003】
このような液体クロマトグラフィにおいては、溶媒種の選択、カラムサイズの選定が重要であり、試料の溶出時間は、これらの条件と密接に関連する。このため、実際の液体クロマトグラフィを行う前に試験結果を予測することができれば、実験の効率を向上させることができる。
【0004】
上記液体クロマトグラフィと同じ原理により行われる薄層クロマトグラフィ(TLC)がある。薄層クロマトグラフィでは、薄層とされたカラム内の固定相に用いられる物質に試料が垂らされ、この薄層が移動層となる溶離液中に浸漬される。そして、毛管現象により溶離液が薄層に吸い上げられると共に試料が吸い上げられる作用により、試料の溶離液に対する移動度R
fを求めることができる(
図4,5)。このようにして任意の溶媒比の溶離液で行われるTLCにて求められる移動度R
fと、液体クロマトグラフィの溶出時間との間に相関性があることが知られている。
【0005】
このようなTLCの結果と液体クロマトグラフィの分離度との相関性を利用して、液体クロマトグラフィの結果をTLCの結果に基づいて事前に予測し、これによって効率よく液体クロマトグラフィを行う液体クロマトグラフィの制御装置について、本出願人は特許文献1~4を出願した。
【0006】
特許文献1においては、移動度Rfと溶媒の混合比(B/A)との関係について、一次関数に基づく近似的な処理が行われている。このような近似によってTLCの結果から液体クロマトグラフィの結果を予測できる点で、極めて産業的に有用なものである。しかし、分取クロマトグラフィの結果予測と実際の分取結果との間における精度は、高ければ高いほど好ましいものであり、精度が高いことにより、最適条件を設定して分取液体クロマトグラフィーを行うことができる。したがって、より高い精度を得ることができるような分取用クロマトグラフィ支援装置があれば、より好ましいものである。
【0007】
本発明者は、このような点を考慮し、液体クロマトグラフィの機能を、更に高度化し、特許文献1以上に精密に溶出時間を予測し、常に最適分離ができる条件設定をおこなうことができるようなシステムについて検討を行った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003-240765
【特許文献2】特開2017-32403
【特許文献3】特開2017-125686
【特許文献4】特開2007-3398
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記に鑑み、薄層クロマトグラフィ又はカラムクロマトグラフィの結果を利用して液体クロマトグラフィの結果を幅広い化合物に対して高精度で予測し、最適分離条件を設定することができるような方法を見出すことを目的とするものである。
すなわち、これによって、常に最適条件で効率の良い液体クロマトグラフィを行うことができる液体クロマトグラフ方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、計算式取得手段を備えた分取用クロマログラフィ支援装置であって、
薄層クロマトグラフィ又は液体クロマトグラフィによって測定した特定の2種の溶媒の混合比Bの混合溶媒を使用したときのRf値の実測値に基づいて、カラムクロマトグラフィにおける分取に関する情報を提供するための装置であり、
計算式取得手段は、
Rf=a1B+b1 (1)
の関係式におけるa1又は
logk’=a2logB+b2 (2)
(ただし、
保持比:k’=(tR-t0)/t0 (3)
溶媒比率:B
の関係式におけるa2
をTLCにおける1回の測定結果の実測値であるB及びRfに基づいて取得するものであることを特徴とする分取用クロマトグラフィ支援装置である。
【0011】
上記分取用クロマトグラフィ支援装置は、特定の2種の溶媒の組み合わせについて、多数種の化合物についてのRf値と溶媒の混合比Bとの関係を実測し、これによって得られたデータに基づいて得られた計算式取得手段を有することが好ましい。
本発明は、上述した分取用クロマトグラフィ支援装置を備えることを特徴とする分取用クロマログラフィ装置でもある。
【0012】
本発明は、特定の2種の溶媒の混合比Bの混合溶媒において分取対象化合物の薄層クロマトグラフィを行う工程(1)
工程(1)によって得られたRf値及び混合比Bを請求項1記載の分取用クロマトグラフィ支援装置に入力する工程(2)
工程(2)によって入力されたデータに基づいて、分取用クロマトグラフィ支援装置が
Rf=a1B+b (1)
又は
logk’=a2logB+b (2)
(ただし、
保持比:k’=(tR-t0)/t0 (3)
の関係式におけるa1又はa2を取得する工程(3)
当該関係式に基づいて、分取用クロマトグラフィにおけるグラジエント条件を決定する工程(4)
及び
工程(4)によって決定されたグラジエント条件に従ってクロマトグラフィを行う工程(5)
を有することを特徴とする分取クロマトグラフィ方法でもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の分取用クロマトグラフィ支援装置によって、クロマトグラフィの結果についてより精度の高い予測を行うことができ、これによって化学実験の分離作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】多数種の化合物について、Rf値と溶媒混合比Bの実測値における関係を示す図である。
【
図2】
図1に示した関係式において、特定のRf値におけるBと傾きaとの関係を示す図である。
【
図3】
図2に示した特定のRf値におけるBと傾きaとの関係における切片とRfとの関係を示す図である。
【
図4】グラジエントについて説明するための図である。
【
図6】TLCを行う際のシリカゲル薄層板の模式図であり、(a)はTLC前、(b)はTLC後をそれぞれ示している。
【
図7】本発明が適用される液体クロマトグラフ装置を示す模式図である。
【
図8】本発明の方法によって取得した計算式に基づいて得た溶出曲線である。
【
図9】従来の方法によって取得した計算式に基づいて得た溶出曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の分取用クロマトグラフィ支援装置は、分離しようとする対象化合物のTLCの結果に基づいて、分取用クロマトグラフィを行った場合の挙動を予測し、最適なクロマトグラフィ条件を見出したり、クロマトグラフィの結果を作業前に精度よく予測したりすることができる。
【0016】
このような分取用クロマトグラフィ支援装置においては、TLCの結果に基づいて溶媒の混合比とRf値との関係を明らかにして、これに基づいてクロマトグラフィの結果を予測するという手法を採用してきた。ここで、特許文献1においては、溶離液の各成分の混合比と試料の移動度Rfとの関係が比例関係であること、そして、溶離液の各成分の混合比に対する試料の移動度Rfの変化率は、試料の種類が変わっても同じである、との前提に基づいて、予測を行っていた。
【0017】
特許文献2においては、特許文献1とは相違する関係式に基づいて予測を行うものであるが、その関係式における変化率が試料の種類が変わっても同じである、との前提に基づいている。
【0018】
特許文献3においては、溶媒の混合比が異なる少なくとも2点についてのTLCを行うことが開示されている。しかし、1点のTLCによって正確な予測ができることが好ましいものである。
【0019】
特許文献1,2における「溶離液の各成分の混合比に対する試料の移動度Rfの変化率は、試料の種類が変わっても同じ」との前提は、絶対的に正しいものではなく、近似法と考えるものである。すなわち、このような前提に基づいてもある程度正確な予測はできるものの、溶離液の各成分の混合比に対する試料の移動度Rfの関係は、現実には、試料の種類が変わることで、ある程度の変化を生じるものである。
【0020】
このため、より正確な解析を行う必要があるような場合には、特許文献1,2に記載された以上に精度が高い予測を行うことが求められる。このような場面に対応するために、より高い精度でクロマトグラフィの結果を予測する方法を提供することが本発明の目的である。
【0021】
本発明の方法を説明するために、
図1に、多くの化合物について、種々の溶媒混合比でのTLCを行い、溶媒混合比BとRf値の関係をグラフ化したものを示す。この
図1の結果から、化合物によって溶離液の各成分の混合比に対する試料の移動度Rfの変化率の差があることが明らかである。
【0022】
一方、このような差は、非極性溶媒でもRfが大きいような化合物と極性溶媒を使用しなければRfが大きくならないような化合物、すなわち、
図1のグラフ上で左方向に直線が存在するような化合物と、右方向で直線が存在する化合物との間で大きく、グラフ自体の位置が近い化合物においては溶離液の各成分の混合比に対する試料の移動度Rfの変化率の差が比較的類似した値になることが分かる。また、上記一般式(2)に基づいた同様の解析を行った場合にも、同様の傾向がみられる。
【0023】
このような観点に基づいて、本発明は完成されたものである。すなわち、溶離液の各成分の混合比と移動度Rfの関係を
Rf=a1B+b1 (1)
として表したとき、a1が溶離液の各成分の混合比に対する試料の移動度Rfの変化率に該当する。特許文献1においては、このa1が常に一定の値であるとして計算を行っていたが、本発明においては、このようなa1の値の変化に対応して、分離対象となる化合物の特定の溶媒混合比におけるTLCの結果に基づいて当該化合物について、上記一般式のa1の値を取得し、これによって、より高い精度でクロマトグラフィの結果を予測することができる。
【0024】
更に、
logk’=a2logB+b2 (2)
(ただし、
保持比:k’=(tR-t0)/t0 (3)
溶媒比率:B
の関係式におけるa2についても、同様の予測を行うことができる。
この場合も同様の手法によって、多くのTLCの結果を解析することでより高い精度でのクロマトグラフィの結果を予測することができる。
【0025】
このようなa1、a2の算出方法の一例について、以下詳述する。なお、本発明におけるa1、a2の算出方法は以下に例示した方法に限定されるものではない。
以下、式(1)による場合と式(2)による場合のそれぞれについて、詳述する。
【0026】
なお、本明細書において、Bは、溶媒の混合比であり、例えば、X,Yの2種の溶剤の混合系での液体クロマトグラフィを行う場合、いずれか一方の溶媒の割合を示す値である。当該混合比は、モル分率(mol%)、体積比(vol%)、重量比(wt%)等のいずれであっても、一定の相関性を示すため、これらのうち、任意のものを使用することができる。なお、以下の実施例においては、モル分率(mol%)を基準としたものについての実験結果を示した 。
【0027】
(式(1)による近似を行う場合)
まず、特定の混合溶媒において、種々の化合物について、種々の溶媒混合比でのRf値を測定したデータを取得する。この場同一化合物について種々のBに対してRfを得ることができる。
これらの実測データについて、一次式としての近似を行う。すなわち、TLCの実測値について、化合物ごとに
Rf=a
1B+b
1
の関係式を作成する。
そして、このような測定及び数式の作成を多数種の化合物に対して行う。得られた数式をBを横軸、Rfを縦軸としてグラフ化したものが
図1である。
【0028】
図1からも明らかなように、上記一般式の傾きa
1は、溶媒の混合比BとRfで表される2次元の座標のどの位置であるかによって、ある程度一定ものになることが明らかである。
そして、この関係を明らかにするための計算式を提供することができれば、溶媒の混合比BとRfを入力するのみで、実際の値により近い一般式を得ることができ、これを用いたカラムクロマトグラフィを行うと、分離予想と実際の分離との相関性が高いものとなる点で好ましい。
【0029】
更には、Rf/Bの座標において、座標上のそれぞれの位置に対応した計算式をすべて作成し、これを保存することで、必要な計算式を呼びだすことによって、計算式を取得するものであってもよい。
【0030】
図1のような結果から上記a
1を算出する方法としては、特に限定されるものではないが、以下にその一例を詳述する。
【0031】
図1からも明らかなように、傾きaは、グラフの左の領域(すなわち、Bが小さくてもRfが大きい領域)で比較的大きい値となり、グラフの右の領域(すなわち、Bが大きくてもRfが小さい領域)において比較的小さい値となる。
【0032】
このため、たとえば、Rfを固定した場合の値について、それぞれの傾きa
1とBとの関係を表すことができる。これを表したものが
図2である。
図2から明らかなように、特定のRf値において、傾きa
1とBとの間の関係が明らかになる。
【0033】
すなわち、
図2の結果から、
a
1=d×lnB+e (4)
の関係を導き出すことができる。
【0034】
更に、上記一般式(4)におけるdは
図2からわかるようにどのRfにおいても一定である。一方でRfの違いがもたらす変化はeである。Rfと切片eの関係を
図3に示す。
図3からRfとeは、比例関係が存在することが示され、この関係について、
e=g×Rf+h
で表すことができる。
したがって、このような関係に基づいて、一般式(4)を
a
1=d×lnB+g×Rf+h (4―1)
と書き換えることもできる。
d、g、hは、混合溶媒種によって決定される定数であるから、BとRfを測定すれば、これによってa
1を算出することができる。
【0035】
このようにして作成した一般式(4)を利用することで、特定のRf値である場合のBに対してのa1を算出することができる。さらに、多くの種類のRf値についてこのような式を準備することで、任意のRf及びBの組み合わせに対して、a1を算出するものであってもよいし、上記一般式(4-1)によって、Rf及びBの実測値からa1を算出するものであってもよい。
【0036】
種々の化合物に対する実測値に基づいて、上述した一般式(4)(4-1)のような、a1を算出するための計算式をあらかじめ作成し、本発明の分取用クロマトグラフィ支援装置の計算式取得手段によって上述したような計算を行うことで、a1を算出することができる。
【0037】
例えば、分離対象化合物について、特定の溶媒混合比BについてのTLCを行い、Rf値を測定し、そのBとRfとの関係に基づいて上記一般式(4)(4-1)によって、a1を算出することができる。さらに、上記一般式(1)も作成することができる。本発明の分取用クロマトグラフィ支援装置は、このような一般式(1)の作成を行う計算式取得手段を有するものである。
【0038】
このような処理を行うことによって、座標軸上の任意の点に対して、従来よりも実際のカラムクロマトグラフィの結果に近い一般式(1)を得ることができる。更に、このような処理に際して、複数回数のTLCを行う必要もない。
【0039】
また、上述したような計算式又はその他の方法によって、座標軸上の任意の点について、上記式(1)を作成し、これらをすべて計算式取得手段に保存し、入力されたRf値及びBに対応する計算式(1)を呼び出すことによって、計算式を取得するものであってもよい。
【0040】
複数種の化合物が含まれるサンプルについての分取用カラムクロマトグラフィを行う場合、上記計算式取得手段によって、分離対象となる複数の化合物に対してそれぞれの式(1)を作成することができる。このようにして得られた複数の式(1)に基づいて、以下で詳述するようなカラムクロマトグラフィの結果を予測することができる。
【0041】
(式(2)による近似を行う場合)
式(2)に基づく近似を行う場合も、本質的には上述した式(1)と同様の手法での検討を行うことができる。なお、当該近似は、特許文献2に開示されているものと基本的に同一である。
本発明においては、このような式(2)に基づくクロマトグラフィ結果の予測について、傾きa2が常に一定との前提で近似を行うのではなく、TLCの結果に基づいてa2の値を算出する。
【0042】
したがって、上述した一般式(1)に対して行ったものと同様の数学的処理を行い、同様の方法によって、特定のRf値に対応したa2値を算出するための計算式を取得し、これによって実情に近い一般式(2)を作成することができる。
【0043】
本発明の上記態様においては、以下の式(3)
k’=(tR-t0)/t0 (3)
によって保持力k’を定義する。
ここで、t0は溶出溶媒が特定のカラム中を通過するのに必要とされる時間であり、カラムのサイズ、形状等によって決定されるカラム固有の値である。
tR は、対象となるサンプルが特定のカラム中を通過するのに必要とされる溶出時間である。t0はカラム固有の定数であるから、このk’を求めることで特定カラムを使用した場合の溶出時間tR を求めることができる。
【0044】
当該保持力k’は、溶媒比率Bとの間に、以下の式(2)
logk’=alogB+b (2)
で表される関係を有する。
【0045】
このような一般式(2)に基づいた解析を行うには、TLCの結果であるRfと上記k’との関係を明らかにする必要がある。以下、この点を詳述する。
一般に、薄層クロマトグラフィのRfと液体クロマトグラフィにおけるt0とtRの間には 、
tR=t0/Rf
の関係が成立することが知られている。
このため、Rfを測定すれば、これによって、t0とtR との関係が明らかとなり、これを一般式(2)に代入することで、上記一般式のk’が求められる。
【0046】
具体的には、
k’=(1/Rf)-1
である。
当該数式を用い、上述した式(1)に対して行ったものと同様の処理を行うことで、各k’ごとにa2とBとの関係式を作成する。そして、これらを計算式取得手段として保管する。
そして、近似式が異なる以外は、上述した式(1)と同様の手法で、TLCの結果に基づいて適切な式(2)を得ることができる。
【0047】
(TLCと液体クロマトグラフィの差異の補正)
上述したTLCによって得られた上記一般式(1)(2)と、液体クロマトグラフィにおける関係式とは完全には一致しない場合がある。
【0048】
したがって、上述した一般式(1)(2)について、このようなずれを補正するための補正項を更に追加したものであってもよい。このような補正項は、具体的に限定されるものではなく、TLCとカラムクロマトグラフィによる分離のデータを取得し、これらを解析することで、一般式(1)(2)を修正することによって行うことができる。
【0049】
更に、上述したような任意のBとRfの組み合わせに対する一般式(1)(2)を保存する場合においては、これらの計算式において、上述したずれを考慮した計算式を作成し、これを保存するものであってもよい。
【0050】
(混合溶媒の溶媒種について)
分取用カラムクロマトグラフィにおいて、複数種の溶媒を使用した混合溶媒による分取を行う場合、その溶媒種の組み合わせは、幾つかの種類が考えられる。上述したようなBとRfとの関係は、使用する溶媒種に固有のものであり、溶媒種が変われば一般式(1)(2)の算出に際して使用される式も異なる。
【0051】
このため、本発明の分取用クロマトグラフィ支援装置においては、上述したようなa1、a2の計算式取得手段として、複数種の溶媒の組み合わせに対する複数種のデータを保存したものであってもよい。この場合も、それぞれの溶媒の組み合わせに対して、上述したようなTLCの結果に基づく解析を行い、一般式を作成し、これを計算式取得手段中に保存することができる。
このようにすることで、本発明の分取用クロマトグラフィ支援装置によって、支援することができる操作の種類が大幅に増え、有用性が増すこととなる。
【0052】
このような溶媒種の組み合わせとしては特に限定されず、非極性溶媒と極性溶媒との組み合わせであることが好ましい。より好ましくは、例えば、ヘキサン/酢酸エチル、ヘキサン/クロロホルム、クロロホルム/メタノール、酢酸エチル/メタノール、ヘキサン/ジクロロメタン、ジクロロメタン/メタノール等を使用することができる。分取対象化合物の性質に応じて、これらのなかから適切な溶媒種の組み合わせを選択して使用することができる。
【0053】
(グラジエントについて)
クラジエントパターンとは、液体クロマトグラフィを行うに際して、時間とともに溶媒の混合比を変化させて行う場合の変化パターンを指す。例えば、
図4に示したようなものを意味する。グラジエントを行うこと自体は、液体クロマトグラフィにおける汎用的な方法である。
【0054】
上述した一般式(1)又は(2)の関係式が明らかになっていれば、例えば特許文献2,3に記載したような公知の方法によってグラジエントを行った場合の溶出状況を予測することができる。これによって、実際に分取用カラムクロマトグラフィを行った場合の溶出曲線の予想を得ることができる。
【0055】
これによって溶離液の混合比又は溶離液の混合比のグラジエントパターンによる試料の溶出時間を算出することができるため、液体クロマトフラフィによる分離を達成できるかどうかが事前に判断できる。よって、この算出結果に基づいて、充分に分離が行えるような最適な溶離液の混合比又は溶離液の混合比のグラジエントパターンを選択できるようになる 。
【0056】
(本発明の構成について)
本発明は、分取用クロマトグラフィ支援装置であり、上述した計算式取得手段によって、分取用クロマトグラフィの実施において有用な計算式を提供するものである。
このような分取用クロマトグラフィ支援装置を実際に液体クロマトグラフィに適用するに際しては、液体クロマトグラフの制御装置、液体クロマトグラフィの実行方法及び液体クロマトグラフの制御プログラム等の装置の形態とすることが好ましい。
【0057】
このような本発明の分取用クロマトグラフィ支援装置は、コンピュータを使用したものとすることが好ましい。上述した処理を行うための計算式やプログラムを保存したコンピュータであることが好ましい。さらに、ネットワークを利用して、サーバ上にこのような処理を行うためのプログラムを保存し、クライアントよりこのようなプログラムにアクセスして処理を行うものであってもよい。
以下に、これらの各手段について詳述する。
【0058】
(実測値記憶手段)
上記実測値記憶手段は、薄層クロマトグラフィの結果を記憶する手段である。
【0059】
図5において、薄層クロマトグラフィ(TLC)に用いられるTLC装置1を示す。TLC装置1は、試料3が表面に垂らされたシリカゲル薄層板2と、容器5に貯留された溶離液4とを備えている。尚、試料3、シリカゲル薄層板2を形成するシリカゲルは、後述する液体クロマトグラフィに用いられるのと同等のものである。
【0060】
更に、使用する溶離液4は、液体クロマトグラフィにおいて使用するものと同様の溶媒系のものであり、混合溶媒を使用する。
【0061】
TLCでは、まず、
図5に示すように、試料3が垂らされた状態のシリカゲル薄層2が、
図1に示すように溶離液4中に浸漬される。すると、毛管現象により混合溶液4がシリカゲル薄層2に吸い上げられてゆく。これに伴い、試料3も上方に移動する。溶離液4及び試料3の移動が終了すると、
図2(b)に示すように、試料3は試料3’の位置に移動する。このとき、試料3の混合溶液4中に浸漬される前の位置から、溶離液4の上端までの距離を1.0として、その1.0に対する試料3’までの距離が移動度Rfとして求められる(
図6)。
【0062】
この場合、測定後の薄層板から作業者がRf値を読み取り、その値を数値として入力するものであってもよいし、薄層クトマログラフィ板を装置の所定の位置に載置させ、画像解析に基づいてR f 値を自動で読み取るものであってもよい。スポットの解析においては、必要に応じて紫外線等の検出光を当てて、これによる発光を利用してスポット位置を読み取る方法等を採用することができる。
【0063】
実測値記憶手段は、上記薄層クロマトグラフィによって得られたRf値を、溶媒の混合比Bと関連付けて記憶する手段である。このようにして記憶した値を以下の計算式取得手段において利用する。
【0064】
(計算式取得手段)
本発明における計算式取得手段は、上述した薄層クロマトグラフィの結果に基づいて、特定の成分についての特定の溶媒系に対する一般式(1)を作成する手段である。当該計算式については、既に詳細に説明を行った。
【0065】
(液体クロマトグラフィ結果予測手段)
分離が必要なすべてのサンプルについて一般式(1)又は一般式(2)が決定されると、溶離液の混合比及び使用するカラムに対応した溶出時間が予測できる状況ができあがる。これに基づいて作業者は良好な混合溶媒比を容易に推測することができる。
【0066】
更に、具体的な液体クロマトグラフィ条件(例えば、サンプル量等)を入力すると、これに応じた溶出時間を提示することもできる。更に、分離度Rsを表示することや予想される溶出曲線を表示することもできる。作業者は、これらの情報を見ることによって、複数種の液体クロマトグラフィ条件の良否を容易に判断することができる。これによって、容易に最適な液体クロマトグラフィ条件(溶媒混合比、使用するカラム等)を実験前に選択することができることとなる。
【0067】
このような液体クロマトグラフィ結果予測の作成は、通常のコンピュータによって行うことができ、結果の表示は各種ディスプレイに代表される一般的な表示装置上に行うことができる。
【0068】
このような液体クロマトグラフィの溶出時間の算出は、特許文献2~4に記載したような従来技術に記載した方法に従って行うことができる。本発明の方法とこれらの特許文献に記載された方法を組み合わせることで、より正確な予測を行うことができ、好ましいものである。
【0069】
このような液体クロマトグラフィ結果予測の提示としては、具体的な数値として、溶出時間及び分離度を画像に示すものであってもよいし、溶出曲線を表示するものであってもよい。
そして、幾つかの測定条件に対応したこれらの値を比較することで、作業者は最適な液体クロマトグラフィ方法を知ることができる。
【0070】
なお、クロマトグラフィ条件の決定においては、カラムの選定も重要な要素となる。上述したように、カラム選定においては、サンプル負荷量も重要な要素となる。すなわち、分離するサンプルの量が多ければ、より大きなカラムが必要となる。このような目的のために必要な情報を画像に示すものであってもよい。
【0071】
(クロマトグラフィ条件決定手段)
本発明は、このようにして、液体クロマトグラフィ結果予測手段を利用しながら作業者は自らが作成した又は装置によって推奨された液体クロマトグラフィ条件の評価を行い、最終的に液体クロマトグラフィ条件を決定するものである。
【0072】
(混合比制御手段)
本発明は、上述した液体クロマトグラフィ条件決定手段による決定に基づいて、液体クロマトグラフィが行われるものであってもよい。混合比制御手段は、前記液体クロマトグラフィ条件決定手段に基づいて作業者によって選択された液体クロマトグラフィ条件に基づいて、カラムに送液される前記溶離液の混合比又は溶離液の混合比のグラジエントパターンを制御する制御信号を出力するための手段である。なお、当該混合比制御手段は、公知のものを使用することができる。
【0073】
(液体クロマトグラフの制御装置)
以下、図に基づいて本発明の液体クロマトグラフの制御装置の態様の一例を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す図面に記載されたものに限定されるものではない。
本発明は、必要な要素を備えた液体クロマトグラフィ装置及びこれを制御するコンピュータによって、上述したような各手段によって液体クロマトグラフィを制御する制御装置に関するものであってもよい。
上述したような手法を実際の装置として運用する上での態様の一例について、以下詳述する
【0074】
また、本発明においては、汎用される液体クロマトグラフィのグラジエント条件をライブラリーとして保管しておき、成分毎の一般式(1)(2)の結果に基づいて、推奨される溶離液の混合比又は溶離液の混合比のグラジエントパターンをライブラリーからコンピュータが自動的に選択して、作業者に推奨するものであってもよい。作業者は推奨された条件を承認するという形で液体クロマトグラフィ条件を決定するものであってもよい。
【0075】
なお、クロマトグラフィ条件の決定においては、カラムの選定も重要な要素となる。このため、t0についても、液体クロマトグラフにおいて使用されている各カラムに対応したt0を液体クロマトグラフィ結果予測手段中に保管しておき、作業者がカラムを選択した際にこれに対応するt0の値が呼び出されることが好ましい。また、必要に応じて、手入力でt0を入力する機能を有するものであってもよい。
【0076】
本発明は、このようにして、液体クロマトグラフィ結果予測手段を利用しながら作業者は自らが作成した又は装置によって推奨された液体クロマトグラフィ条件の評価を行い、最終的に液体クロマトグラフィ条件を決定するものである。
【0077】
(混合比制御手段)
本発明は、上述した液体クロマトグラフィ条件決定手段による決定に基づいて、液体クロマトグラフィが行われるものである。混合比制御手段は、前記液体クロマトグラフィ条件決定手段に基づいて作業者によって選択された液体クロマトグラフィ条件に基づいて、カラムに送液される前記溶離液の混合比又は溶離液の混合比のグラジエントパターンを制御する制御信号を出力するための手段である。なお、当該混合比制御手段は、公知のものを使用することができ、例えば、特許文献1に開示されたようなものを使用することができる 。
【0078】
(液体クロマトグラフの制御装置)
以下、図に基づいて本発明の液体クロマトグラフの制御装置の態様の一例を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す図面に記載されたものに限定されるものではない。
本発明は、必要な要素を備えた液体クロマトグラフィ装置及びこれを制御するコンピュータによって、上述したような各手段によって液体クロマトグラフィを制御する制御装置に関するものである。
上述したような手法を実際の装置として運用する上での態様の一例について、以下詳述する
【0079】
図6において、液体クロマトグラフ装置11を示す。液体クロマトグラフ装置11は、溶媒Aが貯留された容器12と、溶媒Bが貯留された容器13と、溶媒Aと溶媒Bとが連結された位置に設けられた電磁弁14と、溶離液4が貯留される混合器15と、ポンプ16と、インジェクター17と、カラム18と、検出器19と、フラクションコレクター20とが、この順に配置され経路が形成されている。そして、電磁弁14に液体クロマトグラフ制御装置21が接続されている。
【0080】
容器12には溶媒Aが、容器13には溶媒Bが貯留されている。尚、用いられる溶媒は2種類に限定されず、使用状態・目的に応じて数を増やしてもよい。一般に、溶媒A・溶媒Bには、非極性分子と極性分子との組合せで用いられる。
【0081】
ポンプ16は、液体クロマトグラフ装置11の回路において、容器15・電磁弁14を介して溶媒A・溶媒Bを汲み上げる。電磁弁14は、液体クロマトグラフ制御装置21からの制御信号により、汲み上げられる溶媒を溶媒A又は溶媒Bから選択する。電磁弁14での各溶媒の選択時間に応じて混合器15内での溶媒A、Bの混合比が決定される。混合器15は、汲み上げられた溶媒A及び溶媒Bが一旦貯留され、溶離液10とされる。この溶離液10は、後述するように、算出された混合比を有するものである。
【0082】
インジェクター17は、試料3を有しており、溶離液10が通過することで試料3が送出されるようになっている。尚、インジェクター17は1本に限定されず、選択的に経路を選ぶことができる並設された複数のインジェクターとし、複数の試料について連続的に作業を行うことも可能である。
【0083】
カラム18には固定相が充填されており、混合溶媒10が通過することで液体クロマトグラフが行われる。この固定相としては、
図1におけるシリカゲル薄層板2を形成するシリカゲルが用いられている。尚、カラムは1本に限定されず、選択的に経路を選ぶことができる並設された複数のカラムとし、複数種類の液体クロマトグラフィを行うことも可能である。
【0084】
検知器19は、カラム18にて行われる液体クロマトグラフの結果の検出を行う。そして、フラクションコレクター20は、複数の試験管を有しており、検知器19の分析結果により、試料3に含まれる成分毎に各試験管に分取されるようになっている。
【0085】
本発明の液体クロマトグラフィ制御装置は、
図6に示したような液体クロマトグラフィを制御するための装置であり、上述したような実測値記憶手段、計算式取得手段、液体クロマトグラフィ結果予測手段、液体クロマトグラフィ条件決定手段、混合比制御手段を内部ハードディスクに有するコンピュータであるか、これらの手段を行うために必要な情報が保管されたサーバーに接続するクライアントコンピュータであることが好ましい。
【0086】
これによって、上述したような計算を行い、液体クロマトグラフィを制御することによって、良好な液体クロマトグラフィを行うものである。
【実施例0087】
以下、実施例によって、本発明を更に詳細に説明する。
【0088】
(TLC測定によるa
1算出方法について)
特定の2種の溶媒をXとYの混合重量に対して、XをB重量%含有する複数種の混合溶媒を準備した、更に、12種の化合物について、Bの割合が相違する複数種の混合溶媒に対してTLCを行い、それぞれの化合物に対して、
Rf=a
1B+b
1 (1)
の関係を明らかにした。
このようにして算出した12種の化合物それぞれの一般式(1)をグラフ上に表示したものを
図1に示す。
【0089】
更に、
図1及び一般式に基づいて、Rf=0.1,0.2,0.3、0.35,0.4,0.5,0.6のそれぞれの場合について、a
1を読み取り、このようにして得られた各a
1とLogBとの関係を
図2に示した。
図2から、a
1とlogBとは、直線近似を行うことができ、それぞれのRf値ごとに、a
1とlogBとの関係を示す関係式を得ることができる。
【0090】
このようにして得られたそれぞれのRf値ごとに、上述した方法でa1とlogBとの関係を示す関係式を作成し、コンピュータに保存することによって、Rf及びBを入力するとこれに対応した一般式(1)を呼びだせるようにした。
【0091】
このようにして作成された分取用クロマトグラフィ支援装置を使用した分取クロマトグラフィ実験を行った。
【0092】
実験は、3種の化合物を混合した試験サンプルを用いた。これについて、特定の混合溶媒Bを使用して1点でのTLC測定を行った。そして、これらに基づいて3種の化合物それぞれについての一般式(1)を作成し、これに基づいて、推奨される幾つかのグラジエントパターンに対して溶出曲線の予測を行った。これらの結果から最適なものを選択し、これに従って分取用クロマトグラフィを行った。分取用クロマトグラフィの実施にあたっては、
図7に示した装置を使用した。更に、分取を行うと同時に検出器による検出を行い、分取しながら溶出曲線を作成した。
【0093】
結果を
図8に示した。
図8は横軸が時間(分)縦軸がピーク強度を表すものである。さらに、
図8中に本発明の分取用クロマトグラフィ支援装置によって得られた関係式(1)を用いて予測を行った際の、最終化合物の溶出予測時間を示した。この結果から、予想に近い溶出時間で分離対象化合物が溶出していることが明らかである。
【0094】
特許文献1に記載されたように、固定されたa
1値に基づいてTLCの結果に基づいて同様の実験を行った。結果を
図9に示す。
【0095】
これらの結果を対比すると、溶出時間の予想値に相違がある。そして、実際の分取用カラムクロマトグラフィを行ったところ、本発明の分取用クロマトグラフィ支援装置に基づいた予測結果が実際の分取用カラムクロマトグラフィに近い結果となった。このことから、本発明の分取用クロマトグラフィ支援装置は、従来の同様の装置より優れた性能を有する。