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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059706
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】泌乳量算出システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
A01K29/00 A
A01K29/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169871
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 誠二
(72)【発明者】
【氏名】蓑島 国彦
(72)【発明者】
【氏名】藤山 広光
(72)【発明者】
【氏名】柴田 泰匡
(57)【要約】
【課題】予測起算日以前のデータに基づいて、前記予測起算日以後の泌乳量を算出する泌乳量算出システム。
【解決手段】前記牧場データを蓄積するメモリと、
前記予測起算日以前の前記牧場データ中の一定期間の前記分娩後日数と前記実乳量の関係を補間する補間式を作成する補間式作成部と、
前記補間式から算出される特定の前記分娩後日数における補間乳量を目的変数とし、前記牧場データから選ばれた少なくとも1つの要因パラメータを説明変数として前記分娩後日数毎に牛群推定泌乳量を算出する回帰式を作成する回帰式作成部と、
前記予測日における前記分娩後日数に対応する前記回帰式に、
前記予測日において想定される前記説明変数の値を代入し、前記牛群推定泌乳量を算出する牛群回帰式演算部を含む牛群推定泌乳量算出部を有する制御装置を有する泌乳量算出システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予測起算日以前の牛群を構成する個体牛ごとの分娩後日数と実乳量、および気候データを含む牧場データに基づいて、前記予測起算日以後の予測日における前記個体牛の泌乳量を牛群推定泌乳量として算出する泌乳量算出システムであって、
前記牧場データを蓄積するメモリと、
前記予測起算日以前の前記牧場データ中の一定期間の前記分娩後日数と前記実乳量の関係を補間する補間式を作成する補間式作成部と、
前記補間式から算出される特定の前記分娩後日数における補間乳量を目的変数とし、前記牧場データから選ばれた少なくとも1つの要因パラメータを説明変数として前記分娩後日数毎に前記牛群推定泌乳量を算出する回帰式を作成する回帰式作成部と、
前記予測日における前記分娩後日数に対応する前記回帰式に、
前記予測日において想定される前記説明変数の値を代入し、前記牛群推定泌乳量を算出する牛群回帰式演算部を含む牛群推定泌乳量算出部を有する制御装置を有する泌乳量算出システム。
【請求項2】
前記牛群推定泌乳量と、前記予測日において想定される牛乳単価に基づいて売上金を算出する牛群予測売上金算出部をさらに有する請求項1に記載された泌乳量算出システム。
【請求項3】
前記牛群予測売上金算出部は、前記予測日の牛群推定泌乳量に前記牛乳単価を乗じて得る牛群推定個体売上金を算出する牛群推定個体売上金算出部を有することを特徴とする請求項2に記載された泌乳量算出システム。
【請求項4】
前記牛群予測売上金算出部は、前記予測日における前記牛群に属する個体牛の牛群推定泌乳量の総和である牛群推定総泌乳量に前記牛乳単価を乗じて得られる牛群推定総売上金を算出する牛群推定総売上金算出部を有することを特徴とする請求項2または3に記載された泌乳量算出システム。
【請求項5】
前記牛群予測売上金算出部は、前記予測日における前記牛群に属する個体牛の前記牛群推定泌乳量に前記牛乳単価を乗じて得られる牛群推定個体売上金の総和を牛群推定総売上金として算出する牛群推定総売上金算出部を有することを特徴とする請求項2または3に記載された泌乳量算出システム。
【請求項6】
前記牛群推定泌乳量と、乾乳基準値に基づいて、前記予測日において前記牛群に属する乳牛のうち、乾乳牛候補を示す牛群乾乳牛判定部をさらに有する請求項1に記載された泌乳量算出システム。
【請求項7】
前記牛群乾乳牛判定部は、前記予測日における前記牛群推定泌乳量が前記乾乳基準値より低い前記個体牛を前記牛群乾乳牛候補として表示することを特徴とする請求項6に記載された泌乳量算出システム。
【請求項8】
前記牛群乾乳牛判定部は、前記予測日における前記牛群推定泌乳量が前記乾乳基準値となる牛群乾乳日より前記分娩後日数が大きくなる前記個体牛を前記牛群乾乳牛候補として表示することを特徴とする請求項6に記載された泌乳量算出システム。
【請求項9】
予測起算日以前の牛群を構成する個体牛ごとの分娩後日数と実乳量、および気候データを含む牧場データに基づいて、前記予測起算日以後の予測日における前記個体牛の推定泌乳量を個体推定泌乳量として算出する泌乳量算出システムであって、
前記牧場データを蓄積するメモリと、
前記予測起算日以前の前記牧場データ中の一定期間の前記分娩後日数と前記実乳量の関係を補間する補間式を作成する補間式作成部と、
前記補間式から算出される特定の前記分娩後日数における補間乳量を目的変数とし、前記牧場データから選ばれた少なくとも1つの要因パラメータを説明変数として前記分娩後日数毎に牛群推定泌乳量を算出する回帰式を作成する回帰式作成部と、
前記予測起算日における前記個体牛の前記分娩後日数に対応する前記回帰式に、
前記予測起算日において想定される前記説明変数の値を代入し、前記牛群推定泌乳量を算出する牛群回帰式演算部と、
前記予測起算日の前記牛群推定泌乳量と、前記予測起算日の特定個体牛の実乳量に基づいて、前記特定個体牛の前記回帰式に対する割合を乳量係数として求める乳量係数算出部と、
前記予測日における前記特定個体牛の分娩後日数に対応する前記回帰式に、
前記予測日において想定される前記説明変数の値を代入し、得られた結果にさらに前記乳量係数を乗じた値を個体推定泌乳量として算出する個体回帰式演算部を含む個体推定泌乳量算出部を有する制御装置を有する泌乳量算出システム。
【請求項10】
前記個体推定泌乳量と、前記予測日において想定される牛乳単価に基づいて売上金を算出する個体予測売上金算出部をさらに有する請求項9に記載された泌乳量算出システム。
【請求項11】
前記個体予測売上金算出部は、前記個体推定泌乳量に、前記牛乳単価を乗じて前記特定個体牛の前記予測日における個体推定売上金を算出する個体推定売上金算出部をさらに有する請求項10に記載された泌乳量算出システム。
【請求項12】
前記個体予測売上金算出部は、前記牛群に属する全ての前記個体牛の前記予定日における前記個体推定泌乳量の合計である個体推定総泌乳量に前記牛乳単価を乗じた額を個体推定売上金として算出する個体推定総売上金算出部をさらに有する請求項10または11に記載された泌乳量算出システム。
【請求項13】
前記個体予測売上金算出部は、前記牛群中の全ての前記個体牛について、前記個体推定泌乳量に前記牛乳単価を乗じて前記個体毎の売上金を算出し、それらの総和を、個体推定総売上金として算出する個体推定総売上金算出部をさらに有する請求項10または11に記載された泌乳量算出システム。
【請求項14】
前記個体推定泌乳量と、乾乳基準値に基づいて、前記予測日において前記牛群に属する乳牛のうち、乾乳牛候補を示す個体乾乳牛判定部をさらに有する請求項9に記載された泌乳量算出システム。
【請求項15】
前記個体乾乳牛判定部は、前記予測日における前記個体推定泌乳量が前記乾乳基準値より低くなる前記個体牛を前記乾乳牛候補として表示することを特徴とする請求項14に記載された泌乳量算出システム。
【請求項16】
前記個体乾乳牛判定部は、前記予測日における前記個体推定泌乳量が前記乾乳基準値となる個体乾乳日より前記分娩後日数が大きくなる前記個体牛を個体乾乳牛候補として表示することを特徴とする請求項14に記載された泌乳量算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分娩後日数に応じた乳牛の搾乳量を、過去のデータに基づいて推定する泌乳量算出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
酪農業にとっては、泌乳量の増減は、牧場経営に直接影響する大きな問題である。より多くの乳量を得るために、飼料の配合を工夫したり、飼育環境を改善し、乳牛のストレスを少なくするといった工夫が行われている。
【0003】
一方、このような改善は、個々の牧場に依存する部分が多いため、他の牧場との比較は行いにくい。一般に乳牛は暑さに弱いため、緯度の高い地方の方が泌乳量は多いと考えられるが、気候の違いがどの程度泌乳量に影響しているのかは明らかになっているわけではない。
【0004】
まして、泌乳量に影響を及ぼす要因は非常に多く考えられるため、どのようなケースの時に、どのような要因が泌乳量に大きく影響を及ぼしているかについては、経験に頼っているのが現状である。
【0005】
したがって、考えられる要因を入力すると泌乳量を推定できるシステムは、酪農経営に大きな指針を与えるものである。
【0006】
特許文献1は、情報端末を用いて、乳牛を泌乳ステージ別若しくは繁殖ステージ別に群で把握するシステムを提供している。
【0007】
また、特許文献2では、牛個体ごとに、過去乳量から回帰式により泌乳曲線を算出するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-156359号公報
【特許文献2】特開2020―020707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、乳牛の現在の状況を把握しようとするものであり、特許文献2は、過去の泌乳量から未来の泌乳量を推定しようとするものである。しかし、乳牛の泌乳量を増加させるための要因を調べることができるものではない。
【0010】
高温やストレスによるオキシトシンの減少とアドレナリンの分泌が泌乳量に影響があるという生理的な理屈は理解されているものの、どういった飼育環境や乳牛自身の状態が、乳牛にとって快適な状況であるのかは、人間には理解しにくい。そのため、多くの事象(情報)を集めて要因分析し、泌乳量を高めようとする方法は有用であると考えられる。
【0011】
ここで、多くの情報とは、できるだけ多くの牧場の、飼育環境や飼料配合、乳牛自身の個別情報が該当する。これらの情報は日々更新されている。また、情報の多様性を確保するには、異なる地域の情報もあれば好ましい。したがって、多くの牧場からのデータを利用できるようにするのが好ましい。
【0012】
しかしながら、規模や事情の異なる複数の牧場からのデータの定期的な収集は困難を極める。牧場によっては、毎日各種データが数値化される場合もあれば、数日毎でなければ、データがそろわない場合もあるからである。
【0013】
特に所謂泌乳曲線は分娩後日数と乳量の関係を表すものであるが、分娩後日数が1日違いでそろっている乳牛がいる牧場はよほど大規模でないかぎり、想定しにくい。したがって、実際に収集できる泌乳量のデータでさえ、抜けが生じたり、情報の範囲(分娩後日数の範囲)が異なり、画一的に分析できないという課題があった。
【0014】
また、酪農経営には、泌乳量の将来予測や、予測売上高が重要となる。しかし、分娩後日数が日々変わっていく複数の乳牛の将来的な泌乳量の推定は、従来あまり行われてこなかった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る泌乳量算出システムは、上記の課題に鑑みて想到されたものであり、収集した泌乳量に係る情報が、同一範囲にそろわない場合であっても、要因分析を可能し、泌乳量の将来予測値を提示するシステムを提供するものである。
【0016】
より具体的に本発明に係る泌乳量算出システムは、
予測起算日以前の牛群を構成する個体牛ごとの分娩後日数と実乳量、および気候データを含む牧場データに基づいて、前記予測起算日以後の予測日における前記個体牛の泌乳量を牛群推定泌乳量として算出する泌乳量算出システムであって、
前記牧場データを蓄積するメモリと、
前記予測起算日以前の前記牧場データ中の一定期間の前記分娩後日数と前記実乳量の関係を補間する補間式を作成する補間式作成部と、
前記補間式から算出される特定の前記分娩後日数における補間乳量を目的変数とし、前記牧場データから選ばれた少なくとも1つの要因パラメータを説明変数として前記分娩後日数毎に前記牛群推定泌乳量を算出する回帰式を作成する回帰式作成部と、
前記予測日における前記分娩後日数に対応する前記回帰式に、
前記予測日において想定される前記説明変数の値を代入し、前記牛群推定泌乳量を算出する牛群回帰式演算部を含む牛群推定泌乳量算出部を有する制御装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る泌乳量算出システムは、収集した泌乳量に関するデータを、補間することで、一定の範囲の泌乳量を1日単位でさえ得ることができるので、泌乳量に影響を及ぼす要因の推定に役立つという効果を与える。
【0018】
また、気温といった予測可能な要因が泌乳量に及ぼす影響が判れば、将来の泌乳量の予測を行うことができ、酪農経営における重要な指針を得ることができるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る泌乳量算出システムの構成を示す図である。
図2】泌乳量算出システムの全体(メイン)フローを示す図である。
図3】泌乳量算出システムの算出する出力を例示する図である。
図4】推定泌乳量を算出する工程のフローを示す図である。
図5】補間式の作成を説明する図である。
図6】補間式を作成するフローを示す図である。
図7】回帰式の作成を説明する図である。
図8】回帰式を作成する工程のフローを示す図である。
図9図3(a)の推定泌乳量に係る曲線を拡大した図である。
図10図4のステップS206の要因分析の工程の処理を示す図である。
図11】要因分析において、一定期間の乳量の実測値と回帰式から求めた推定泌乳量EYを比較する様子を示す図である。
図12】牛群回帰式演算のフローを示す図である。
図13】牛群推定総泌乳量を説明する図である。
図14】牛群総回帰式演算のフローを示す図である。
図15】牛群推定総泌乳量を用いた牛群推定総売上金算出部を有する牛群予測売上金を算出するフローを示す図である。
図16】個体牛毎の牛群推定泌乳量を用いた牛群推定総売上金算出部を有する牛群予測売上金を算出するフローを示す図である。
図17】牛群乾乳日を説明する図である。
図18】個体牛毎の牛群推定泌乳量と乾乳基準値を比較する牛群乾乳牛判定のフローを示す図である。
図19】牛群乾乳日と個体牛毎の分娩後日数を比較する牛群乾乳牛判定のフローを示す図である。
図20】個体推定泌乳量の算出手順を説明する図である。
図21】個体推定総泌乳量を説明する図である。
図22】個体推定泌乳量を算出するフローを示す図である。
図23】個体回帰式演算のフローを示す図である。
図24】個体総回帰式演算のフローを示す図である。
図25】個体推定総泌乳量を用いた個体推定総売上金算出部を有する個体予測売上金を算出するフローを示す図である。
図26】個体牛毎の個体推定泌乳量を用いた個体推定総売上金算出部を有する牛群予測売上金を算出するフローを示す図である。
図27】個体乾乳日を説明する図である。
図28】個体牛毎の個体推定泌乳量と乾乳基準値を比較する個体乾乳牛判定のフローを示す図である。
図29】個体牛毎の個体乾乳日と個体牛毎の分娩後日数を比較する個体乾乳牛判定のフローを示す図である。
図30】泌乳量算出システムを実際の牧場に使用し、推定泌乳量は、THIと日照時間を要因パラメータとして重回帰できることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明に係る泌乳量算出システムについて図面を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0021】
図1に本発明に係る泌乳量算出システムの構成を示す。本発明に係る泌乳量算出システム1は、端末10と本体12およびメモリ14で構成される。端末10は、それ自身がCPU(Central Processor Unit)を有するコンピュータとメモリおよび表示画面で構成することができ、移動通信端末(所謂スマートフォン等)を含めることができる。
【0022】
本体12はCPU(Central Processor Unit)で構成される。1台のCPUであってもよいし、複数のCPUを接続したものであってもよい。本体12はサービスを提供する装置なので、サーバーと呼んでよい。メモリ14は本体12が使用するメモリである。CPUは制御装置と呼んでもよい。したがって、本体12は制御装置である。また、本体12には、端末10からの信号を受けとる入力部12aがあるとしてもよい。すなわち、本体12は入力部12aで指定されたコマンドや数値を受ける。
【0023】
本体12と端末10は、通信可能に接続されている。通信は、有線であっても、無線であってもよい。端末10は、クライアントと呼ぶこともできる。端末10は、実際に乳牛を飼育している牧場16(ここでは牧場16A、16B、16Cを例示した。)に設置されるのが好ましい。ここで、「設置」とは、端末10を牧場16に物理的に設置する意味の他、牧場16の責任者若しくは担当者が移動通信端末を保有することであってもよい。もちろん、端末10は、牧場16以外の場所に設置されてもよい。また、牧場16は、乳牛が飼育されていればよい。
【0024】
本体12には、複数の牧場16が接続されていてもよい。泌乳量算出システム1は、泌乳量に係るデータを多量に集め、これらを分析することで、泌乳量を算出するので、多くのデータが集まるのが望ましいからである。また、本体12は、外部情報18とインターネットを介して接続されていてもよい。牧場16から得られるデータだけでなく、全国的な天気に関する情報をネット経由で取得して利用することもできるからである。
【0025】
このように、泌乳量算出システム1は、多量のデータを様々な場所から収集し、これらを分析することで、泌乳量を算出するので、ネットワーク経由でサービスを提供する形態が好適な実施形態としてあり得る。すなわち、泌乳量算出システム1はクラウドで構成されてもよい。
【0026】
したがって、泌乳量算出システムを実施するクラウドの形態としては、代表的なSaaS(Software as a Service)が好適であるが、PaaS(Platform as a Service)、HaaS(Hardware as a Service)若しくはIaaS(Infrastructure as a Service)といった形態であってもよい。
【0027】
本発明に係る泌乳量算出システム1は、複数頭の乳牛の集合を1つの牛群とし、牛群での乳量の予測を行う。また、牛群に属する個々の乳牛を個体牛(以下単に「個体」とも呼ぶ。)とし、その個体牛の泌乳量予測も行う。さらに、これらの予測される泌乳量から、売上金の推定や、乾乳日および乾乳牛の推定も行うことができる。乳牛は出産によって乳の分泌が始まるが、分娩後日数が相当日経過すると、泌乳量が低下する。このような牛は次の出産までの間休ませる。乾乳日以降その乳牛は、次の出産までの間、泌乳量が期待できなくなるからである。これを「乾乳牛」と呼ぶ。また、「乾乳日」とは、乳牛を乾乳牛扱いとする日のことである。
【0028】
より具体的には、泌乳量算出システム1は、端末10から予測起算日より将来の予測日に想定される要因パラメータP(説明変数)の値を入力すると、予測日若しくは予測期間における分娩後日数N日の乳牛から搾乳できる牛群推定泌乳量EY(kg)または個体推定泌乳量DEY(kg)を得ることができる。また、これらは、分娩後日数Nを省略し、単に牛群推定泌乳量EY、個体推定泌乳量DEYとも呼ぶ。牛群推定泌乳量EYまたは個体推定泌乳量DEYを総称する際には、「牛群推定泌乳量EY(kg)等」若しくは「牛群推定泌乳量EY等」と呼ぶ。
【0029】
なお、牛群推定泌乳量EYは、牛群と冠しているものの1頭の乳牛の推定泌乳量である。牛群に属する個体牛の全ての泌乳量(後述する「牛群推定総泌乳量」)は、各個体牛毎の分娩後日数における牛群推定泌乳量EYの総和を求める必要がある。
【0030】
ここで予測起算日とは、予測を行う日である。また、予測起算日は週や月であることを排除しない。通常予測起算日は予測を行う日であってよいが、過去の日や期間であってもよい。また予測日とは、予測起算日より将来の日であり、牛群推定泌乳量EY(kg)等を予測したい日である。また、予測期間とは、予測起算日より将来の期間であり、牛群推定泌乳量EY(kg)等を予測したい期間である。予測日と言った場合は予測期間を含めてもよい。
【0031】
また、要因パラメータPとは、気候データ、乳牛自体の体重、飼料摂取量といった個別データ、摂取させている飼料の種類といった飼料データ等を含む牧場データの内、泌乳量を最もよく説明することのできる項目である。この要因パラメータPは、直接測定可能な項目以外に、直接測定可能な項目のデータを加工したデータであってもよい。この要因パラメータPは、泌乳量算出システム1内で、探すことができる。
【0032】
気候データは、日の出時刻、日の入り時刻、気温、湿度、日照時間、日射量、風向、風速等である。また、牛舎内温度、牛舎内湿度を含んでもよい。また、THI(Temperature Humidity Index:温度湿度指数)等、これらの加工データを含んでもよい。なお、THIとは一例として(1)式で表される指数である。
【0033】
【数1】
【0034】
また、気候データは、牛舎内、牛舎外の気候だけでなく、牧場の1km四方の気候、地域の気候また全国の天気予報サービスからの気候データであってもよい。
【0035】
個別データは、乳牛自体のデータである。具体的には、登録番号、血統、産次数、分娩後日数、乳量、体重、病歴、所有者、飼育場所等である。
【0036】
飼料データは、過去に摂取させた飼料の種類や配合、回数などが含まれる。
【0037】
[基本データ]
このように要因パラメータPは、予測起算日以前のデータを含む概念である。推定のために用いる予測起算日以前のデータを「基本データ」と呼ぶ。「基本データ」は予測のための回帰式を作成するためのデータである。また牧場データの一部といってもよい。本発明に係る泌乳量算出システム1は、予測起算日以前の要因パラメータPに基づいて一定の乳牛群若しくは個体牛の乳牛の泌乳量を目的変数として説明できる回帰式を求め、その回帰式に予測起算日以降の予測日に想定される要因パラメータP(説明変数)を当てはめることで、予測起算日以降の予測日若しくは予測期間における分娩後日数N日の乳牛から搾乳できる牛群推定泌乳量EY(kg)等を得ることができるものと言い換えることもできる。
【0038】
牧場16に設置された端末10は、牧場の乳牛に係る個別データ、実際に摂取させた飼料データ、日々の気候データを牧場データFDとして本体12に送信する。本体12はこれらの牧場データをメモリ14に蓄積しておく。そして、予測起算日が端末10から入力されると、予測起算日より以前の要因パラメータPに基づいて牛群推定泌乳量等を算出する式を求める。続いて入力される予測日若しくは予測期間において想定される要因パラメータPに従って、分娩後日数Nに応じた牛群推定泌乳量EY等を算出し、端末10に表示させる。
【0039】
なお、分娩後日数Nに応じた牛群推定泌乳量EY等の算出の際に入力される予測起算日以降の予測日において想定される要因パラメータP(説明変数)は、上記の回帰式に入力される要因パラメータPの値であり、回帰式の説明変数の値である。この要因パラメータP(説明変数)の値は、天気予報等で公表される値だけでなく、例年若しくは過去の該当する日若しくは期間の値および、それらに基づいて算出した何らかの値であってもよい。
【0040】
つまり、説明変数となる要因パラメータPは過去の値を使い得る。毎年の気候は四季を通じてそれほど大きくは変化しないと考えられるので、予測起算日以降の予測日や予測期間は、昨年若しくはそれ以前の予測日に相当する日や期間と大きくは変わらないからである。
【0041】
なお、本体12は、気候データを外部情報18から取得してもよい。クローズタイプの牛舎であれば、牛舎内の環境は管理されており、データも送信しやすい。しかし、オープンタイプの牛舎の場合、その日の牛舎内の風速は取得しにくい。そのような場合は、外部の気候データを参考にできるからである。
【0042】
気候に関するデータは、さまざまな物が提供されており、それらも有効に使用することができる。また、牧場データFDは端末10以外の方法で本体12に送信されてもよい。もちろん、牧場データFDを本体12に送信する端末10と、要因パラメータPを入力し、泌乳量を算出させる端末10が別々であってもよい。
【0043】
図2に泌乳量算出システム1の全体(メイン)フローを示す。なお、牧場データFDを本体12に送信するのは、各牧場が適宜行うとする。また、扱いの単位となる牛群に属する乳牛は予め登録されているとする。
【0044】
泌乳量算出システム1は、計算条件や要因パラメータP(説明変数を含む)といった端末10等から入力された入力に対して、牛群推定泌乳量EYを算出する工程、牛群予測売上金E$を算出する工程、牛群乾乳牛DCを判定する工程、個体推定泌乳量DEYを算出する工程、個体予測売上金DE$を算出する工程、個体乾乳牛DDCを判定する工程による結果を返すことができる。
【0045】
また、牛群推定総泌乳量SUMEYや個体推定総泌乳量SUMDEYを算出する工程があってもよい。また、牛群予測売上金E$を算出する工程や個体予測売上金DE$を算出する工程には、それぞれ牛群推定個体売上金EI$を算出する工程、牛群推定総売上金ΣE$を算出する工程や、個体推定売上金DEI$を算出する工程、個体推定総売上金ΣDE$を算出する工程などを含むことができる。
【0046】
これらの結果は端末10に返してよい。また、これらの結果は、ネット上の特定のメモリ上に置いてもよい。端末10はこれらの結果を表示することができる。これらを算出する工程は、メインフローのメニューと呼ぶことができる。すなわち、端末10からはこれらの算出を指示することができる。
【0047】
なお、本発明は構成の大部分がソフト的に実施される。そこで、処理の「工程」とは、処理のまとまりをいい、本体12には、「工程」を実行する「部」が存在すると考えてよい。具体的には、本体12(制御装置)には、牛群推定泌乳量算出部、牛群予測売上金算出部、牛群乾乳牛判定部、個体推定泌乳量算出部、個体予測売上金算出部、個体乾乳牛判定部が存在すると言える。また、牛群推定総泌乳量算出部、個体推定総泌乳量算出部、牛群推定個体売上金算出部、牛群推定総売上金算出部、個体推定売上金算出部、個体推定総売上金算出部が存在すると言える。
【0048】
また、これらの処理工程の中に下位の処理のまとまりがある場合は、それも「部」と呼んでよい。例えば、牛群推定泌乳量算出部には、補間式を作成する工程や回帰式を作成する工程が含まれ、それぞれ「補間式作成部」、「回帰式作成部」と呼ぶことができる。また、得られた回帰式に要因パラメータP(説明変数)の値が代入された際に、牛群推定泌乳量を具体的に算出する工程(ステップS210)があり、牛群回帰式演算部と呼ぶことができる。なお、泌乳量算出システム1は少なくとも牛群推定泌乳量EYを算出する工程(牛群推定泌乳量算出部)を有していればよい。
【0049】
<泌乳量算出システム>
図2を参照して、泌乳量算出システム1がスタートすると(ステップS100)、終了判断を行う(ステップS102)。終了判断は、端末10からの終了指示や、本体12と端末10の通信の切断であってよい。終了する場合(ステップS102のY分岐)は、終了する(ステップS104)。終了しない場合(ステップS102のN分岐)は、次に処理を進める。
【0050】
次に牛群推定泌乳量EYを算出するか、個体推定泌乳量DEYを算出するかを選択する(ステップS106、ステップS108)。それぞれの選択肢では、選択する場合(Y分岐)は、それぞれの処理に移り、選択しない場合(N分岐)は処理を次に移す。ステップS108の個体推定泌乳量DEYの算出を行わない場合(ステップS108のN分岐)は、終了判断(ステップS102)に戻る。
【0051】
牛群推定泌乳量EYを選択した場合(ステップS106のY分岐)は、牛群推定泌乳量EYが算出される(ステップS110)。そして、その後牛群予測売上金E$の算出を行うか(ステップS112)、牛群乾乳牛DCを判定するか(ステップS114)が選択される。それぞれの処理が選択された場合(ステップS112およびステップS114でのY分岐)は、それぞれ牛群予測売上金E$が算出され、牛群乾乳牛DCが判定される(ステップS116およびステップS118)。その後処理は、個体推定泌乳量DEYの選択(ステップS108)に処理が移される。
【0052】
個体推定泌乳量DEYを選択した場合(ステップS108のY分岐)は、個体推定泌乳量DEYが算出される(ステップS120)。そして、その後個体予測売上金DE$の算出を行うか(ステップS122)、個体乾乳牛DDCを判定するか(ステップS124)が選択される。それぞれの処理が選択された場合(ステップS122およびステップS124でのY分岐)は、それぞれ個体予測売上金DE$が算出され、個体乾乳牛DDCが判定される(ステップS126およびステップS128)。その後処理は、終了判定(ステップS102)に処理が移される。
【0053】
図3には、それぞれの出力例を示す。図3(a)は牛群推定泌乳量EYの出力例である。横軸は分娩後日数(日)であり、縦軸は乳量(ここでは単位を「kg」とする)である。特定の要因パラメータP(例えば温度)の下で、分娩後日数に対する牛群推定泌乳量EYを示すことができる。図では温度がT1℃の時と、T2℃の時の牛群推定泌乳曲線Mが示されている。なお、本発明の泌乳量算出システム1が提供する牛群推定泌乳曲線Mは、最小で1日単位の算出値(牛群推定泌乳量EY)の集合である。これらの算出値は直線もしくは曲線で結ばれていてもよい。牛群推定泌乳量EYで形成した牛群推定泌乳曲線を符号Mで表す。言い換えると、牛群推定泌乳曲線Mは牛群推定泌乳量EYを適当な分娩後日数N毎にプロットし、直線若しくは曲線で繋げたものである。
【0054】
図3(b)は、牛群予測売上金E$の出力例である。横軸は予測日であり、縦軸は売上金(ここでは単位を「円」とする。)である。牛群推定泌乳量EYが求められるので、牛乳の単価(円/kg)を乗ずることで、予測日における牛群予測売上金E$を算出することができる。なお、牛群予測売上金E$を算出する工程には、個体牛毎の売上金である牛群推定個体売上金EI$と牛群を構成する全乳牛による売上金である牛群推定総売上金ΣE$を求める様にしてもよい。
【0055】
図3(c)は、牛群乾乳牛DCの判定結果を示すものである。横軸は分娩後日数(日)であり、縦軸は乳量(ここでは単位を「kg」とする)である。ある予測日ηにおける牛群推定泌乳量EY(牛群推定泌乳曲線M)を算出し、乾乳牛と判定する乾乳基準値DYTH以下となるのは、分娩後日数が何日目以降となるかを求める。この日を牛群乾乳日DYdayと呼ぶ。牛群乾乳日DYdayは、減少する牛群推定泌乳量が乾乳基準値となる日といってもよい。
【0056】
したがって、分娩後日数が牛群乾乳日DYdayより大きい個体牛は牛群乾乳牛DCと判定される。図3(c)で、符号DC(黒三角)は、DYdayより分娩後日数が大きいので牛群乾乳牛DCである。一方、NOTDC(黒丸)は、DYdayより分娩後日数が小さいので牛群乾乳牛DCではない。
【0057】
図3(d)は、個体推定泌乳量DEYの出力例である。横軸は分娩後日数(日)であり、縦軸は乳量(ここでは単位を「kg」とする)である。個体推定泌乳量DEYは、牛群推定泌乳量EYに対する割合として求められる。個体推定泌乳量DEYを表した曲線を個体推定泌乳曲線DMとする。図3(d)では、牛群推定泌乳量EYを表す牛群推定泌乳曲線Mより下方に個体推定泌乳量DEYを表す曲線DMがある。これは、この特定個体牛は牛群として推定された泌乳量よりも少ない乳を分泌する乳牛であることを表している。したがって、他の個体牛では、曲線DMが曲線Mより上に描かれる場合もある。
【0058】
図3(e)は、個体予測売上金DE$を表すグラフである。横軸は予測日であり、縦軸は売上金(例えば円である。)ここで例示した個体牛は、図3(d)で示したように牛群推定泌乳量EYより産出量が少ないので、個体予測売上金DE$も牛群予測売上金E$よりも少ない。個体予測売上金DE$も、個体牛毎の売上金である個体推定売上金DEI$と個体推定総売上金ΣDE$を算出するようにしてもよい。
【0059】
図3(f)は、個体乾乳牛DDCを表すグラフである。横軸は分娩後日数(日)であり、縦軸は乳量(ここでは単位を「kg」とする)である。例示した個体牛は、牛群として求めた推定泌乳量EYより乳量が少ないので、個体乾乳日DDYdayも牛群乾乳日DYdayよりも早まることとなる。図3(f)では、予測日ηにおいて、この個体牛の分娩後日数が個体乾乳日DDYday以上であれば個体乾乳牛DDCと判定され、個体乾乳日DDYdayより小さければ個体乾乳牛DDCと判定されない(NOTDDC)。産次数が少ないうちは乳量が少ない個体牛も牛群として扱うことができるが、産次数が多くなり、除籍を検討する場合は、個体乾乳牛DDCの判定は有用である。
【0060】
図2を再度参照する。以上の全体フローは、本体12と端末10の間で分担して行ってよい。例えば、各処理の選択および最終結果の表示は端末10で行い、各処理は本体12で行うなどである。以下、各工程を詳説する。
【0061】
<牛群推定泌乳量EY>
図4に牛群推定泌乳量EYの算出工程のフローを示す。牛群推定泌乳量EYの算出工程が始まったら(ステップS110)、母集団データの選択と作成条件を決める(ステップS200)。図1で示したメモリ14中には、多数の牧場データが蓄積されている。その中で、必要な場所(牛群を構成する個体牛の特定を含む。)および基本データの期間を選択する。また、牛群推定泌乳量EYを算出する条件もここで入力する。
【0062】
例えば、場所は、自分の牧場で、牛群は全ての飼育乳牛とし、基本データ期間は昨年度1年等である。また、条件とは、牛群推定泌乳量EYを算出するための条件すべてを含んでよい。例えば、牧場データを参照する際にまとめる期間の長さを決める等である。より具体的にいうと、実乳量は1日毎の乳量にするか、3日毎、1週間毎、1か月毎の平均乳量であるとか、1か月の最大乳量値である等である。また、これに伴い、その他の変数も同様に一定期間毎に代表値を決めてよい。
【0063】
また、予測起算日と予測日を入力する。予測起算日は通常「予測操作を行おうとしている本日」であるが、本日より過去の日であってもよい。また、予測日とは、実質的には予測日に想定される要因パラメータPである。すでに述べたように、過去の予測日に相当する日(若しくは期間)の実績値を予測日に想定される要因パラメータPとして用いてもよい。したがって、要因パラメータPを気候データ由来のものにしておけば、長期にわたる予測をすることができる。
【0064】
次に補間式を作成する(ステップS202)。図5に補間式について説明する。図5は横軸が分娩後日数N(日)であり、縦軸は実乳量RY(kg)である。例えば、ある牧場の複数の乳牛の、ある期間(例えば2020年8月1日)のデータである。ここでプロットされた各点は、個体牛毎の実乳量RYなので、散布図となる。しかし、実乳量であるために、プロットできない範囲も生じる。該当する分娩後日数の乳牛がいない場合である。図5では、無データ領域VRで表した。
【0065】
このように、牧場データに抜けがあると後の回帰式を作成する際のデータに不足が生じ、回帰の精度が低下する。そこで、この散布図を適当な関数で近似する。好適に利用できるのはWOOD曲線である。WOOD曲線は、(2)式で表される曲線で、分娩後日数Nに対する泌乳量Yを表す曲線としてよく知られている。なお、実際の散布図を補間するには、WOOD曲線に限定される必要はなく他の関数であってもよい。
【0066】
【数2】
【0067】
なお、ここでA、B、Cは定数であり、Yは乳量、Nは分娩後日数、eはネイピア数である。このWOOD曲線を最小二乗法で散布図にフィットするように定数A、B、Cを決めることができる。このように、分娩後日数Nと乳量Yの関係を連続関数でフィッテングさせることを「補間式を作成する」という。散布図を補間した式をより一般化して(3)式と表す。
【0068】
【数3】
【0069】
つまり(3)式の補間式は、乳量Yは分娩後日数Nの関数として表される。関数の形としては、WOOD曲線は好適に利用できるが、これに限定されるものではない。図4の補間式作成工程(ステップS202)は、上記の様に実乳量RYの散布図から補間式(3)を決める工程である。
【0070】
[補間式作成]
図6図4の補間式を作成する工程(ステップS202)の処理を示す。補間式を作成する工程が始まると(ステップS202)、図4(EY算出フロー)のステップS200で決めた母集団と条件より分娩後日数Nと実乳量RYのデータを取り出す(ステップS230)。これらは実データと呼ぶことができる。具体的に散布図を描いてもよい。実データとは、各乳牛毎の分娩後日数Nと実乳量RYの組である。
【0071】
次に分娩後日数Nと乳量Yの実データを最もよく反映する補間式を求める。例えば、上記に示した、WOOD曲線を使った最小二乗法を適用して、定数A、B、Cを決定する(ステップS232)(図5も参照)工程である。これは、実乳量RYにフィッテングさせる関数を求めると言える。そして、(3)式の補間式を得る(ステップS234)。その後EY算出ルーチン(図4)に戻る(ステップS236)。
【0072】
補間式は、毎日分作成することができる。搾乳はほぼ毎日行われるからである。しかし、環境や各個体牛について、大きな変化がない場合は、3日毎や、1週間毎の実データの平均を実データとみなして補間式(3)を作成してもよい。
【0073】
また、時間軸を大きくとらえ、1か月の実データの平均値を実データとみなして補間式を作成してもよい。より具体的には、ある個体牛の1か月の乳量の平均をその乳牛の実乳量RYとする。またその乳牛の分娩後日数はその1か月の平均(つまり、月初めにN=10日であれば、その月の分娩後日数を25日とする)とする等である。これらは、図4の「母集団データ、作成条件」(ステップS200)で決められていても良い。
【0074】
引き続き図4を参照する。補間式を作成したら要因分析を行うか否か判断する(ステップS204)。この判断は泌乳量算出システム1の利用者が端末10から指示することができる。要因分析とは、牧場データの中から(2)式の補間式から得られる乳量Yを最もよく説明できる要因パラメータPを調べるか否かの判断である。例えば、泌乳量算出システム1を初めて使用する場合や、母集団を大きく変える場合等に利用する。
【0075】
要因分析を行う場合(ステップS204のY分岐)は、要因分析の工程を行う(ステップS206)。要因分析工程の詳細は後述する。行わない場合(ステップS204のN分岐)は、処理を次に移す。要因分析については、図10で詳説する。
【0076】
次に回帰式を作成する(ステップS208)。図7に回帰式の作成について説明する。図5図6で示した補間式(3)(図7(a))によって、例えば各月毎の分娩後日数Nの乳牛の補間乳量が算出できる。ここでは補間式を一般形Fw()で表し、乳量Yは月ごとの平均泌乳量とする。したがって、Y1月は1月の補間乳量を表し、分娩後日数Nの乳牛の補間式(3)を求める式をFw1月(N)と表す。
【0077】
ここで、分娩後日数が50日後をN50と表す。1月から12月までの各月における分娩後日数が50日後の乳牛の補間乳量は、Fw1月(N50)、Fw2月(N50)、・・・、Fw12月(N50)で算出される。もちろんFw(N)は、各月毎に補間式が作成されている(「m」は「月」を表す。)。
【0078】
この各月の補間乳量を最もよく説明することのできる因子を要因パラメータPとして決める。どのような要因パラメータPがよいのかは、ステップS206の要因分析の工程を行って知ることになる。たとえば、温度、湿度、日照時間等である。すでに牛群推定泌乳量EYを求めるために使用する要因パラメータPが決まっている場合は、それを使用する。要因パラメータPは1つでなくてもよい。すなわち、これは各月ごとの補間乳量Yを1以上の因子によって最小二乗法等により回帰式を求めることである。
【0079】
よく知られているように回帰式は(4)式のように表される。
【0080】
【数4】
【0081】
ここで、EYは牛群推定泌乳量であり、x、x、・・・、xは因子(要因パラメータP)であり、a、a、・・・、a、cは定数である。
【0082】
図7(c)には、因子が1つの場合の回帰式の例を示す。図7(a)で示す補間式(3)から、分娩後日数50日の乳牛の各月毎の補間乳量Yを算出する(図7(b)参照。)。ここで、mは月を表す。各月毎の補間乳量とは、月初めの3日間の平均とするなどであってもよい。特定の1日だけのデータにその月の補間乳量を代表させてもよい。
【0083】
次に、これら月ごとの補間乳量を要因パラメータP(ここでは、例えば正午の温度)で整理すると図7(c)のグラフを得ることができる。なおここでは、各月の分娩後50日の乳牛の牛群推定泌乳量EYは、正午の気温でよく説明できるとした場合の結果を例示する。回帰式は、(5)式で表される。
【0084】
【数5】
【0085】
ここで、xは、正午の温度であり、EYは牛群推定泌乳量である。なお、このような回帰式は分娩後日数分だけ作成される。つまり、分娩後日数Nの最終日を300日とすると、1日から300日後までの回帰式を得ることができる(図7(e)参照。)。
【0086】
因子が複数ある場合は、図7(c)のように2次元では記載できなくなるが、複数の要因パラメータPによる重回帰式を得れば、分娩後日数Nと補間乳量Yの関係をよく近似することができる場合がある。このようにして求めた回帰式を(6)式と表す(図7(d)参照。)。
【0087】
【数6】
【0088】
ここで、EYは、分娩後日数Nの乳牛が要因パラメータPの時の牛群推定泌乳量EYと呼ぶ。また、(6)式に要因パラメータPを代入し結果を求めることを「牛群推定泌乳量を算出する」と言ってもよい。算出した推定泌乳量は牛群推定泌乳量EYである。なお、要因パラメータPの時の分娩後日数Nの牛群推定泌乳量をEY(P)と表す(Nは省略する場合もある。)。また、牛群に属するi番目の個体牛CWの牛群推定泌乳量を表す場合は、EY[CW]等と[](カギカッコ)を用いて表す。
【0089】
[回帰式作成]
図8に回帰式を作成する工程のフローを示す。図4で示したEY算出フローで回帰式を作成する工程(ステップS208)が開始されると、図8に飛び、まず要因パラメータPが入力される(ステップS250)。要因パラメータPは、端末10から入力することができる。つまり、泌乳量算出システム1の利用者が入力する。ここでは仮に要因パラメータPがp(温度)であったとする。
【0090】
次に要因パラメータpについて指定された一定期間m(これはステップS200で定められる)毎に、分娩後日数N毎の推定泌乳量Ymを、補間式(3)によって求める(ステップS252)。つまり、図7(b)の補間乳量Ymを求める。これによって、図7(c)の散布図を描くことができる。
【0091】
次に要因パラメータpを説明変数、補間乳量Ymを目標変数として、回帰式を求める(ステップS254)。すなわち、この時要因パラメータpについて、分娩後日数Nが同じ場合の乳量の関係(6)式(図7(d))を得ることができる。回帰式の求め方は公知の方法でよい。
【0092】
このように本発明では、要因パラメータPを使って牛群推定泌乳量を算出する際に、実乳量RYを直接使用するのではなく、実乳量RYを補間する補間式から算出した補間乳量を利用する。そのため、実乳量RYにデータの抜けがあっても、妥当な値を平均的な乳量として算出することができる。
【0093】
(6)式は、分娩後日数Nが1から最終日(ここで最終日は、分娩後日数の最長日の意味)までの数を作ることができる(図7(e)参照。)。回帰式(6)は、図7(e)をまとめて表している。回帰式が求まったら、図4の牛群推定泌乳量EYを求めるルーチンに戻る(ステップS256)。
【0094】
図4を再び参照し、牛群推定泌乳量EYを求める回帰式(6)が求められれば、回帰式(6)に要因パラメータPを入力すれば牛群推定泌乳量EYを求めることができる(ステップS210)。
【0095】
[牛群回帰式演算EYI]
図12には回帰式(6)を実際に演算し、牛群推定泌乳量EYを求めるフローを示す。これは牛群回帰式演算(EYI)工程である。牛群回帰式演算が開始されたら(ステップS210)、分娩後日数Nと要因パラメータPの入力を行う(ステップS280)。次に入力された分娩後日数Nと要因パラメータPと(6)式を用いて要因パラメータPの時の分娩後日数Nにおける牛群推定泌乳量EYを算出する(ステップS282)。算出後表示してもよい。
【0096】
次に、再入力を確認する(ステップS284)。再入力をして他の分娩後日数Nや要因パラメータPの時の牛群推定泌乳量EYを求めたい場合(ステップS284のY分岐)は、入力(ステップS280)に戻る。そうでない場合は、EYルーチンに戻る(ステップS286)。
【0097】
分娩後日数Nに対応する回帰式(6)は要因パラメータP(説明変数)の値を入力すると、牛群推定泌乳量EYを算出する。したがって、分娩後日数N毎を表す回帰式(6)に順次同一の要因パラメータPの値を入力することで、同一の要因パラメータPの値における分娩後日数Nと牛群推定泌乳量EYのデータセットを得ることができる。図3(a)の牛群推定泌乳量に係る曲線は、このようにして得られた分娩後日数Nと牛群推定泌乳量EYのデータセット(データの対)をプロットし、若しくはこの点同士を直線でつないだものである。
【0098】
図9図3(a)の牛群推定泌乳量EYをプロットした牛群推定泌乳曲線Mを拡大した図を示す。分娩後日数毎に牛群推定泌乳量EYをプロットしたものである。要因パラメータPは、pとpの2つの要因で重回帰式を求めた場合を示している。したがって、説明変数もpとpの2つの要因パラメータPである。分娩後日数Nは、飛び飛びの値(10日、20日、30日、50日、80日、100日、150日、200日、250日)で求めたが、1日単位で求めることもできる。各牛群推定泌乳量EYは、(6)式が表す別々の回帰式(分娩後日数違い。図7(e)参照。)から求められたものである。すなわち、これらの式の定数(例えば(5)式におけるaやc等)は異なる。
【0099】
牛群回帰式を演算するステップS210(図4参照)は、クライアント側が端末10から予測日に想定される要因パラメータP(説明変数)の値と、所望する分娩後日数Nを入力し、本体12が牛群推定泌乳量EYを返す。クライアント側は、少なくとも1つの牛群推定泌乳量EYを返せば本発明に係る泌乳量算出システム1としての要件を満たす。複数の分娩後日数Nに対して牛群推定泌乳量EYを求め、図9のようにグラフにしてもよい。
【0100】
次に牛群総回帰式演算EYSを実行し牛群推定総泌乳量SUMEYを求める(ステップS212)。図13に牛群推定総泌乳量SUMEYの算出の概念図を示す。横軸は分娩後日数(日)であり、縦軸は牛群推定泌乳量(kg)である。牛群推定泌乳量EYが求まるので、牛群推定泌乳曲線Mを描くことができる。具体的には予測日に想定される要因パラメータPを(6)式の全ての回帰式に代入することで、全ての分娩後日数Nに対する牛群推定泌乳量EYをプロットすることができる。ここで、牛群は9頭の乳牛から構成されているとする。
【0101】
そして、予測日の要因パラメータP(説明変数)がp1であるとし、予測日における各乳牛の分娩後日数がN1、N2、N3、N4、N5日であるとする。また、各分娩後日数における乳牛の頭数は、それぞれ1頭、2頭、4頭、1頭、1頭であるとする。図13では、横軸の分娩後日数に括弧をつけてその中に頭数を表示した。
【0102】
すると牛群推定総泌乳量SUMEYは、各乳牛の各分娩後日数Nから求められる牛群推定泌乳量EYの総和として求められる。
【0103】
すなわち、一般的に牛群推定総泌乳量SUMEYは、各分娩後日数k日の乳牛がそれぞれCk頭いるとすると(7)式のように表される。
【0104】
【数7】
【0105】
また、各乳牛の分娩後日数Nから牛群推定泌乳量EYを求め、その牛群推定泌乳量EYをその乳牛の乳量とし、全乳牛について加算することで牛群推定総泌乳量SUMEYとしてもよい。(7)式と同じ結果である。
【0106】
なお、牛群推定泌乳量EYが一定期間(例えば1週間、1か月等)の単位で求められている場合は、(7)式にさらに期間(日数)を乗じてもよい。
【0107】
[牛群総回帰式演算]
図14に牛群推定総泌乳量を求めるフローを示す。これは牛群総回帰式演算工程である。牛群総回帰式演算が開始されたら(ステップS212)、初期設定が行われる(ステップS300)。初期設定としては、牛群推定総泌乳量SUMEYと、個体牛の識別指標iを初期化し、識別指標の最後の値(END)をn+1にセットする。ここでnは牛群に属する個体牛の頭数である。
【0108】
次にi番目の個体牛CWの分娩後日数Niを取得する(ステップS302)。そして、(6)式の回帰式を用いて牛群推定泌乳量NiEYを算出し、牛群推定総泌乳量SUMEYに加える(ステップS304)。なお、要因パラメータP(説明変数)は、ステップS210(牛群回帰式演算工程:図12参照)の際に用いた値を使ってもよいし、初期設定(ステップS300)の前後に利用者に問い合わせてもよい。
【0109】
全ての個体牛についての演算が終了したかを判断しテップS306)、まだ残っていれば(ステップS306のN分岐)、識別指標iをインクリメントし(ステップS310)、個体牛CWの分娩後日数Niを取得するステップ(ステップS302)に戻る。全ての個体牛についての牛群推定泌乳量の総和が終了したら(ステップS306のY分岐)、結果を表示し(ステップS308)、EYルーチンに戻る(ステップS312)。
【0110】
図4を再度参照し、牛群回帰式演算若しくは牛群総回帰式演算を繰り返す場合(ステップS214のY分岐)は、再びステップS210を行う。繰り返しを行わない場合(ステップS214のN分岐)は、終了判定を行う(ステップS216)。終了する場合(ステップS216のY分岐)は、メインルーチンへ戻る(ステップS218)。終了しない場合(ステップS216のN分岐)は、ステップS200に戻り、EY算出工程を再実行する。
【0111】
[要因分析]
図10には、図4のステップS206の要因分析の工程の処理を示す。要因分析の工程は、回帰式の作成(ステップS208)と途中までは同じである。具体的には、図8で示すステップS250、ステップS252、ステップS254は、図8の場合と同じである。したがって、ステップ番号も同じ番号を用いる。
【0112】
したがって、要因パラメータPを入力し(ステップS250)、要因パラメータPについて指定された一定期間m(これはステップS200で定められる)毎に、分娩後日数N毎の乳量Ymを、補間式(3)によって求め(ステップS252)、要因パラメータPを説明変数、乳量Ymを目標変数として、回帰式を求める(ステップS254)工程が行われる。
【0113】
要因分析では、一定期間mの乳量の実乳量RYと回帰式から求めた牛群推定泌乳量EYを比較する(ステップS260)。図11はこの様子を図にしたものである。要因パラメータとしては、pとpの2つを選んだ場合を示す。例えば、温度と風速等である。一定期間は異なる4日の場合を示した。例えば、春夏秋冬の代表的な1日としてよい。具体的には、m1月n1日、m2月n2日、m3月n3日およびm4月n4日とする。これらの日の具体的な要因パラメータp、pは記録として残っている。要因パラメータの選択は、別途主要因分析を行ってもよいし、試行錯誤によって選択してもよい。要因パラメータp、pを入力すれば回帰式(6)から牛群推定泌乳量EYを算出することができる。
【0114】
分娩後日数Nは1から最大日まで求めることができるが、ここでは、30日、50日、100日、150日の4種について求めた状態を示している。これらの値をそれぞれの日時の実乳量RYとの差の絶対値ERRとする。なお、図1130RYは、分娩後日数が30日の乳牛の実乳量である。また、30ERRは、分娩後日数が30日の場合の牛群推定泌乳量EYと実乳量RYの差の絶対値を示す。このERRは、分娩後日数が50日、100日、150日の場合も算出している。なお、後述する実施例では、分娩後日数が50日の場合について、牛群推定泌乳量EYと実乳量RYの比較を行った例を示した。
【0115】
4日分について、牛群推定泌乳量EYと実乳量RYの差の絶対値ERRを合計したものを総誤差TΣで表す。このようにステップS260では、牛群推定泌乳量EYと実乳量RYを比較する。
【0116】
再度図10を参照して、牛群推定泌乳量EYと実乳量RYを比較した後は、終了判定を行う(ステップS262)。終了判定は、ステップS250で入力した要因パラメータPが牛群推定泌乳量EYと実乳量RYの差の絶対値ERRが妥当であるか否かで決める。ERRが妥当であるか否かについては、予め値を決めておいてもよいし、利用者が判断してもよい。また、最適値を選択するようにプログラム(所謂「AI」を含んでよい。)を設定してもよい。また、牛群推定泌乳量EYと実乳量RYの差は絶対値として説明したが、2乗値を用いてもよい。
【0117】
終了する場合(ステップS262のY分岐)は、EY算出フローに戻る(ステップS264)。継続する場合(ステップS262のN分岐)は、再びステップS250に戻り、要因パラメータPを入力しなおす。
【0118】
再度図4を参照する。要因分析(ステップS206)を抜けたら、牛群回帰式演算の工程(ステップS210)に処理を移す。要因分析の工程(ステップS206)を抜けたら、回帰式および好適な要因パラメータPを見つけていると考えられるので、牛群推定泌乳量EYを算出する牛群回帰式演算の工程(ステップS210)を行ってよいと考えられるからである。牛群回帰式演算の工程(ステップS210)では、すでに述べたように、予想日に想定される要因パラメータPの値(説明変数)と所望の分娩後日数Nから(6)式の回帰式を使って牛群推定泌乳量EYを演算し求める。これ以降の工程は上記に説明した通りである。
【0119】
[回帰式構成工程]
なお、本発明に係る泌乳量算出システム1においては、回帰式(6)を求める工程は、いずれのメニューでも利用される。したがって、ステップS200、ステップS202、ステップS204、ステップS206、ステップS208までをまとめてステップS290とする。ステップS290は、回帰式構成工程と呼んでもよい。
【0120】
牛群推定泌乳量EYの算出(ステップS110)は、要因パラメータP(説明変数)の値を入力すると、牛群推定泌乳量EYを算出する。特に指定されなければ、全ての分娩後日数について牛群推定泌乳量EYを算出する。もちろん、特定の分娩後日数についてだけ算出してもよい。この場合の要因パラメータPの値は、予測日において想定される要因パラメータPである。予測日において想定される要因パラメータPは、母集団データ作成条件(ステップS200)の設定の際に入力されていてもよい。また、牛群推定泌乳量EYを算出する工程であるステップS210で入力されてもよい。また、要因パラメータPの再入力を行う際(ステップS214のY分岐でステップS210に戻った際)にも、再度入力してよい。
【0121】
以上のように牛群推定泌乳量算出は、特定の母集団に対して、要因パラメータPが、ある値の時の牛群に属する乳牛の平均的な乳量を推定した値を返す。言い返すと、牛群推定泌乳量値とは、要因パラメータPが、ある値の時のその母集団に属する乳牛から見込める予測乳量である。
【0122】
<牛群予測売上金E$>
図2を再度参照する。牛群推定泌乳量EYを算出していると(ステップS110)、そこから牛群予測売上金E$を求めることができる。牛群予測売上金E$を算出すると選択された場合(ステップS112のY分岐)は、牛群予測売上金E$を算出する(ステップS116)工程を実施する。牛群予測売上金E$を算出する工程では、牛群推定個体売上金EI$と、牛群推定総売上金ΣE$が算出可能である。牛群推定個体売上金EI$は、牛群推定泌乳量EYに基づいて算出される個体牛の予測売上金である。また、牛群推定総売上金ΣE$は、牛群推定泌乳量EYに基づいて算出される牛群に属する全ての個体牛の総売上金である。
【0123】
牛群推定個体売上金EI$は、特定の個体牛CWの牛群推定泌乳量EY[CW]を(6)式から算出し牛乳単価q(円/kg)を乗ずることで得ることができる。また、牛群推定総売上金ΣE$は個体牛CWの牛群推定泌乳量EY[CW]を全個体牛分加算するか、牛群推定総泌乳量SUMEYに牛乳単価q(円/kg)を乗ずることで得ることができる。なお、牛乳単価qは予測日において想定される金額であるが、特に根拠は必要とせず、季節ごとの過去の実績であってもよい。
【0124】
[牛群予測売上金算出1]
図15には、牛群推定総売上金ΣE$を牛群推定総泌乳量SUMEYに牛乳単価q(円/kg)を乗ずることで得る場合のフローを示す。
【0125】
牛群予測売上金E$の工程がスタートしたら(ステップS116A)、牛群推定個体売上金EI$の演算を行うか(ステップS330)、牛群推定総売上金ΣE$の演算を行うか(ステップS332)を選択する。
【0126】
牛群推定個体売上金EI$の演算を行う場合(ステップS330のY分岐)は、特定の個体牛CWの分娩後日数Niと要因パラメータP(説明変数)を入力し、牛群推定泌乳量NiEYを算出し、牛乳単価q(円/kg)を乗じ、牛群推定個体売上金EI$を演算する(ステップS340)。結果は表示してもよい。
【0127】
そして繰り返す場合(ステップS342のY分岐)は、再びステップS340を繰り返し、そうでない場合(ステップS342のN分岐)は、処理を牛群推定総売上金ΣE$の算出工程(ステップS332)に移す。
【0128】
牛群推定総売上金ΣE$の演算を行う場合(ステップS332のY分岐)は、まず、牛群推定総泌乳量SUMEYを算出する(ステップS212)。なお、牛群推定泌乳量EYを算出する工程(ステップS110:図2参照)において、すでに牛群推定総泌乳量SUMEYを算出していて、その値を使う場合は、このステップは飛ばしてもよい。
【0129】
次に牛群推定総泌乳量SUMEYに牛乳単価q(円/kg)を乗じ、牛群推定総売上金ΣE$を演算する(ステップS350)。結果は表示してもよい。
【0130】
繰り返しを行う場合(ステップS352のY分岐)は、ステップS212に戻る。そうでない場合(ステップS352のN分岐)は、牛群予測売上金E$の工程に戻る(ステップS354)。
【0131】
以上の工程により、予測日における牛群に属する個体牛の牛群推定泌乳量EYの総和である牛群推定総泌乳量SUMEYに牛乳単価qを乗じて得られる牛群推定総売上金ΣE$を算出することができる。
【0132】
[牛群予測売上金算出2]
図16には、牛群推定総売上金ΣE$を個体牛CWの牛群推定泌乳量EY[CW]に牛乳単価qを乗じたものを全個体牛分加算することで得る場合のフローを示す。
【0133】
牛群予測売上金E$の工程がスタートしたら(ステップS116B)、牛群推定個体売上金EI$の演算を行うか(ステップS330)、牛群推定総売上金ΣE$の演算を行うか(ステップS334)を選択する。
【0134】
牛群推定個体売上金EI$の演算については(ステップS330のY分岐)、図15の場合と同じであるので省略する。牛群推定総売上金ΣE$の演算を行う場合(ステップS334のY分岐)は、牛群推定総売上金ΣE$および個体牛の識別指標iを初期化し、識別指標の最後の値(END)をn+1にセットする(ステップS360)。ここでnは牛群に属する個体牛の頭数である。また、予測日の要因パラメータP(説明変数)の値を取得する。これは別途入力され、若しくは牛群推定泌乳量を求めた際(ステップS110)に用いた値を用いてもよい。
【0135】
次に予測日のi番目の個体牛CWの分娩後日数Niを取得する(ステップS362)。これは予測起算日における分娩後日数に予測日までの日数を加えることで得ることができる。
【0136】
そして、個体牛の牛群推定泌乳量NiEYを算出し、牛乳単価q(円/kg)を乗じ、牛群推定総売上金ΣE$に加える(ステップS364)。つまり個体牛CWの牛群推定個体売上金EI$を求めて牛群推定総売上金ΣE$に加える。
【0137】
全ての個体牛についての加算が終了していなければ(ステップS366のN分岐)、識別指数iをインクリメントし(ステップS370)、予測日の個体牛CWiの分娩後日数Niを取得する工程(ステップS362)に戻る。
【0138】
全ての個体牛について加算が終了したら(ステップS366のY分岐)、結果を表示し、再入力を問い合わせる(ステップS368)。要因パラメータPの値を変更したい(予測日を変更する)場合は再入力を行い(ステップS368のY分岐)、初期設定(ステップS360)に戻る。繰り返さない場合(ステップS368のN分岐)は、牛群予測売上金E$に戻る(ステップS372)。
【0139】
以上の工程により、予測日における牛群に属する個体牛の牛群推定泌乳量EYに牛乳単価qを乗じて得られる牛群推定個体売上金EI$の総和として牛群推定総売上金ΣE$を算出することができる。
【0140】
なお、上記のステップS116のAおよびBはどちらも図2の牛群予測売上金を算出する工程(ステップS116)とすることができる。
【0141】
<牛群乾乳牛DCの判定>
図2を参照する。牛群推定泌乳量EYを算出していると(ステップS110)、牛群乾乳牛DCを判定することができる。図17を用いて牛群乾乳牛DCの判定を説明する。図17は、横軸が分娩後日数(日)であり、縦軸は牛群推定泌乳量EY(kg)である。牛群推定泌乳量EYを算出しているので、牛群推定泌乳曲線Mを描くことができる。
【0142】
牛群乾乳牛DCは、牛群推定泌乳曲線Mに対して、乾乳牛候補と判定できる乾乳基準値DYTHを適用することで決めることができる。乾乳基準値DYTHは、分娩後日数が一定期間を過ぎた後の乳牛を乾乳牛候補と判断する泌乳量である。図17では、分娩後日数N5の個体牛は、牛群推定泌乳量EYが乾乳基準値DYTHより低いので、牛群乾乳牛DCの候補と決めることができる。一方、分娩後日数N4より少ない乳牛は、牛群推定泌乳量EYが乾乳基準値DYTHより高いので牛群乾乳牛DCの候補にはならない(NOTDC)。
【0143】
なお、牛群推定泌乳曲線Mと乾乳基準値DYTHとの交点の日は、牛群乾乳日DYdayである。また、乾乳基準値DYTHは、経験値的に求められるもので、図4のステップS200の際に入力しておくなどする。また、出産後直後で泌乳量が少ない個体牛は乾乳牛の候補からは外される。
【0144】
[牛群乾乳牛判定1]
図18に牛群推定泌乳量EYと乾乳基準値DYTHを直接比較して牛群乾乳牛DCの候補を表示するフローを示す。牛群乾乳牛DC判定の工程が開始されると(ステップS118A)、初期設定を行う(ステップS400)。初期設定としては、個体識別指標iを初期化(i=1)し、識別指標の最終の値(END)をn+1にセットする。ここでnは牛群に属する乳牛の頭数である。
【0145】
次にi番目の個体牛CWの予測日における分娩後日数Niを取得する(ステップS402)。これは、個体牛CWの予測起算日における分別後日数に予測日までの日数を加算することで得られる。そして、分娩後日数Niの時の牛群推定泌乳量NiEYを求め、乾乳基準値DYTHと比較する(ステップS404)。
【0146】
牛群泌乳量NiEYが乾乳基準値DYTHより少なければ(ステップS404のY分岐)、個体牛CWを牛群乾乳牛DCの候補として表示し(ステップS406)、CWが最後の個体牛か否かを判断する(ステップS408)。牛群推定泌乳量NiEYが乾乳基準値DYTHより少なくなければ(ステップS404のN分岐)、ステップS406をスキップする。
【0147】
CWが最後の個体牛でなければ(ステップS408のN分岐)識別指標iをインクリメントし(ステップS410)、i番目の個体牛CWの予測日における分娩後日数Niを取得するステップ(ステップS402)に戻る。最後の個体牛まで判定が終了したら(ステップS408のY分岐)、DC判定に戻る(ステップS412)。
【0148】
以上の工程により、予測日における牛群推定泌乳量EYが乾乳基準値DYTHより低い個体牛を牛群乾乳牛候補として表示することができる。
【0149】
[牛群乾乳牛判定2]
また、牛群乾乳牛の判定は、予測日の牛群推定泌乳曲線Mにおいて、牛群乾乳日DYdayを求め、分娩後日数がその牛群乾乳日DYday以上の個体牛を表示することでも得ることができる。また、牛群に属する全ての個体牛の予測日における牛群推定泌乳量が乾乳基準値DYTHより少ない個体牛を表示することでも得ることができる。
【0150】
図19には、牛群乾乳牛DCを牛群乾乳日から判定するフローを示す。牛群乾乳牛DC判定が実行されると(ステップS118B)、分娩後日数Nにa日を入れる(ステップS430)。a日は、牛群推定泌乳量EYが最初に乾乳基準値DYTHを超える日(DC図17参照)以降の日を入れる。a日は、通常30日~50日を設定すればよい。「a日」を早期日数と呼ぶ。
【0151】
次に分娩後日数Nは最終日か否かを判断する(ステップS432)。最終日であれば(ステップS432のY分岐)、「DCは該当なし」として(ステップS442)、DC判定ステップ(S118B)に戻る(ステップS444)。
【0152】
分娩後日数Nが最終日でない場合(ステップS432のN分岐)は、分娩後日数がNの時の牛群推定泌乳量EYが乾乳基準値DYTH以下であるか否かを判断する(ステップS434)。
【0153】
分娩後日数がNの時の牛群推定泌乳量EYが乾乳基準値DYTH以下であった場合(ステップS434のY分岐)、牛群乾乳日DYdayをN日とし(ステップS436)、牛群乾乳日DYdayより分娩後日数Niが大きくなる個体牛iを牛群乾乳牛DC候補として表示する(ステップS438)。その後DC算出ステップ(S118)に戻る(ステップS444)。
【0154】
分娩後日数がNの時の牛群推定泌乳量EYが乾乳基準値DYTH以下でなかった場合(ステップS434のN分岐)は、分娩後日数Nをインクリメントし(ステップS440)、ステップS432に処理を戻す。
【0155】
以上の工程によって、記予測日における牛群推定泌乳量EYが乾乳基準値DYTHとなる牛群乾乳日DYdayより分娩後日数が多くなる個体牛を牛群乾乳牛DC候補として表示することができる。
【0156】
なお、上記のステップS118のAおよびBはどちらも図2の牛群乾乳牛を判定する工程(ステップS118)とすることができる。
【0157】
<個体推定泌乳量DEY>
再度図2を参照する。次に個体推定泌乳量DEYについて説明する。牛群推定泌乳量EYでは、全ての乳牛が同一の牛群推定泌乳量EYに従うとした。しかし、個体推定泌乳量DEYは、個体牛毎に泌乳量を推定するものである。個体推定泌乳量DEYは、個体牛毎に算出された乳量係数を牛群推定泌乳量EYに乗じたものとして得られる。
【0158】
図20に個体推定泌乳量DEYを求める様子を示す。牛群中のi番目の個体牛を個体牛CWiとする。個体牛CWiが牛群推定泌乳量EYに対してどの程度の乳量係数を持つかを算出する日を「個体特定日」と呼ぶ。個体特定日は、予測起算日以前の日であればよく、個体牛CWiの実乳量RY[CWi]が決定している最新の日でよい。なお、RY[CWi]は、個体牛CWiの実乳量である。
【0159】
図20(a)は個体特定日(この日の要因パラメータはp)における牛群推定泌乳量EYを表す。牛群推定泌乳量EYは牛群推定泌乳曲線Mで表している。横軸は分娩後日数であり、縦軸は牛群推定泌乳量EYである。個体特定日の個体牛CWiは分娩後日数がNrで、実乳量がRY[CWi]であったとする。なお、分娩後日数がNrの個体牛CWiの実乳量はNrRY[CWi]と表す。また、分娩後日数Nrの時の牛群推定泌乳量は、NrEYで表される。
【0160】
なお、ここでは個体牛CWiの実乳量NrRY[CWi]が牛群推定泌乳量NrEYより大きいとした。もちろん逆であってもよい。そして、個体牛CWiの乳量係数αを(8)式のように求める。このようなステップは乳量係数算出工程と言える。
【0161】
【数8】
【0162】
αは、各個体牛毎に決まる値となる。αを算出する対象となる個体牛CWを特定個体牛とも呼ぶ。なお、乳量係数αは、実乳量NrRY[CWi]および牛群推定泌乳量NrEYともに、一定期間の平均値であってもよい。また、連続する一定期間の泌乳量係数を平均してもよい。例えば、予測起案日の直近の3か月において、1か月毎の実乳量NrRY[CWi]および牛群推定泌乳量NrEYから各月の乳量係数αを求め、3か月分の乳量係数を平均することで乳量係数αとするなどである。なお、予測起算日は当日だけでなく、予測起算日以前の一定期間を含めることができるので、このような算出をしても乳量係数αiは予測起算日における値と言ってもよい。
【0163】
図20(b)を参照して、次に予測日(この日の要因パラメータはp)の牛群推定泌乳量EYを算出する。図20(b)では、牛群推定泌乳曲線Mとして表されている。図20(a)の牛群推定泌乳曲線Mと図20(b)の牛群推定泌乳曲線Mは要因パラメータPの値が異なっていれば、異なる曲線となる。個体牛CWの個体推定泌乳量DEY[CWi]は、牛群推定泌乳量EYのα倍として求める。
【0164】
牛群推定泌乳量EYは(6)式の回帰式で表される。したがって、個体推定泌乳量DEYを求める工程は、(6)式の回帰式をα倍して求められる個体回帰式を算出する工程と言ってもよい。なお、個体推定泌乳量DEY[CWi]は個体推定泌乳曲線DMとして描くこともできる。したがって、個体推定泌乳曲線DMは、牛群推定泌乳曲線Mのα倍である(図20(b)参照)。
【0165】
次に予測日の個体牛CWの分娩後日数Nr+Xを求める。これは予測日において個体牛CWの分娩後日数が何日になるかで求めることができる。ここでXは個体特定日から予測日までの日数である。そして、個体推定泌乳量Nr+XDEY[CW]を求める。これはαNr+XEY)を求めることに等しい。なお、Nr+XDEY[CW]は、分娩後日数がNr+X(日)の個体牛CWの個体推定泌乳量である。また、Nr+XEYは、分娩後日数がNr+X(日)の牛群推定泌乳量である。
【0166】
つまり、予測日における個体推定泌乳量DEYは、予測日における分娩後日数がNr+X(日)の牛群泌乳量EYのα倍である。この工程は個体推定泌乳量を算出する工程である。
【0167】
図21を参照して、個体推定総泌乳量SUMDEYについて説明する。個体推定泌乳量DEYは、図20のようにして求めることとした。したがって、牛群に属する全ての乳牛について個々に個体推定泌乳量DEYが求められる。予測日における個体推定泌乳量DEYの総和が個体推定総泌乳量SUMDEYである。
【0168】
図21は横軸が分娩後日数(日)であり、縦軸は乳量(kg)である。簡単な説明のため、今牛群は個体牛Aおよび個体牛Bで構成されているとする。グラフ中には、予測日における牛群推定泌乳量EY(牛群推定泌乳曲線M)と個体牛Aおよび個体牛Bの個体推定泌乳量NADEY[A]、NBDEY[B]を示した。NA、NBは個体牛Aおよび個体牛Bの予測日における分娩後日数である。なお、個体推定泌乳量DEY[A]、DEY[B]は、個体推定泌乳曲線DM、DMとして表した。また、個体牛Aおよび個体牛Bの乳量係数をそれぞれα、αとした。
【0169】
また、個体牛Aの個体推定泌乳量DEY[A]は牛群推定泌乳量EYより多く、個体牛Bの個体推定泌乳量DEY[B]は牛群推定泌乳量EYより少ないとした。また、個体牛Aおよび個体牛Bの予測日の分娩後日数は予測日においてそれぞれNA(日)とNB(日)とした。
【0170】
個体推定総泌乳量SUMDEYは、個体牛Aの分娩後日数NAでの個体推定泌乳量NADEY[A]と個体牛Bの分娩後日数NBでの個体推定泌乳量NBDEY[B]の和として求めることができる。この工程は個体推定泌乳量を算出する工程である。
【0171】
図22に個体推定泌乳量DEY算出のフローを示す。図2の個体推定泌乳量DEY算出の工程がスタートしたら(ステップS120)、個体特定日の回帰式構成の工程を行う(ステップS500)。これは、図4のステップS290を実行し、個体特定日(乳量係数αを決める日)における(6)式の回帰式を得ることである。個体特定日における牛群泌乳量EYを求めると言ってもよい。
【0172】
次に個体回帰式演算DEYIの工程を行う(ステップS502)。ステップS500で、(6)式の回帰式が得られたので、個体特定日の実乳量RYを用いることで乳量係数αを決定することができる。その結果、予測日における個体牛CWの個体推定泌乳量DEYを算出することができる。個体回帰式演算DEYIの工程は結果としてCWの個体推定泌乳量DEYを算出する。
【0173】
次に個体総回帰式演算DEYSの工程(ステップS504)を行う。予測日における個体推定泌乳量DEYの算出が可能となったので、牛群に属する全ての個体牛についての個体推定泌乳量DEYを加算することで、個体推定総泌乳量SUMDEYを求める。個体総回帰式演算DEYSの工程は結果として個体推定総泌乳量SUMDEYを算出する。
【0174】
そして、再入力の有無を問う(ステップS506)。再入力を行う場合(ステップS506のY分岐)は、個体特定日の回帰式構成の工程(ステップS500)に戻り、個体特定日の変更などで繰り返し処理を実行できる。また、再入力を行わない場合(ステップS506のN分岐)は、処理をDEY算出工程(ステップS120)に戻す(ステップS508)。
【0175】
[個体回帰式演算]
図23に個体回帰式演算の工程のフローを示す。個体回帰式演算のフローがスタートしたら(ステップS502)、個体特定日の個体牛CWの分娩後日数Nr(日)と個体特定日の実乳量NrRY[CW]を取得する(ステップS520)。これは基本データ中に記録されている。
【0176】
次に個体特定日の牛群推定泌乳量NrEYを算出する(ステップS522)。具体的には(6)式が求められる。これは図22のステップS500で求めた結果をそのまま用いてもよい。
【0177】
次に実乳量NrRY[CW]と牛群推定泌乳量EYから(8)式に基づいて乳量係数αを算出する(ステップS524)。そして、予測日における牛群推定泌乳量Nr+XEYを算出し(ステップS526)、それをα倍することで、個体推定泌乳量DEYを得る(ステップS528)。Xは個体特定日から予測日までの日数である。その後個体回帰式演算の工程に戻る(ステップS530)。ステップS528は(9)式の演算が行われる。
【0178】
【数9】
【0179】
なお、ここで得られる個体推定泌乳量DEYは、露わに書くとNr+XDEY[CW]である。これは牛群中のi番目の個体牛CWの分娩後日数がNr+X(日)の推定泌乳量を意味する。算出された個体推定泌乳量DEYは端末等に表示することができる。また、Nr(日)は個体特定日の個体牛CWの分娩後日数であり、X(日)は個体特定日から予測日までの日数である。
【0180】
[個体総回帰式演算]
図24に個体総回帰式演算の工程のフローを示す。個体総回帰式演算の工程がスタートすると(ステップS504)、まず初期設定が行われる(ステップS540)。初期設定は、識別指標iと、個体推定総泌乳量SUMDEYの初期化(i=1、SUMDEY=0)および個体数の最終の値(END)の設定である。最終の値(END)はn+1に設定し、「n」は牛群中の乳牛の個体数である。
【0181】
次に予測日の個体推定泌乳量DEY(より正確には「Nr+XDEY[CW]」)を算出する(ステップS542)。Nr(日)は個体特定日の分娩後日数であり、Nr+X(日)で予測日の分娩後日数となる。そして、個体推定泌乳量DEYと個体推定総泌乳量SUMDEYを加算し、新たな個体推定総泌乳量SUMDEYとする(ステップS544)。
【0182】
全ての個体牛についての加算が終了したかを判定し(ステップS546)、終了してなければ(ステップS546のN分岐)、識別指標iをインクリメントし(ステップS548)、ステップS542に処理を戻す。終了していれば(ステップS546のY分岐)、処理を個体総回帰式演算の工程に戻す(ステップS550)。
【0183】
なお、ここで得られる個体推定総泌乳量SUMDEYは、予測日における個体推定泌乳量の総和である。算出された個体推定総泌乳量SUMDEYは、端末等に表示することができる。
【0184】
<個体予測売上金DE$>
図2を参照して、個体推定泌乳量DEYが求まったら、個体予測売上金DE$を算出することができる。個体予測売上金DE$を算出すると選択された場合(ステップS122のY分岐)は、個体予測売上金DE$を算出する(ステップS126)。個体予測売上金DE$は、各個体牛の推定売上金である個体推定売上金DEI$と、牛群に属する全ての個体牛による推定売上金である個体推定総売上金ΣDE$を求めることができる。
【0185】
個体推定売上金DEI$は、ステップS120(図2参照)で求めた個体推定泌乳量DEYに牛乳の単価q(円/kg)を乗じることで得ることができる。一方、個体推定総売上金ΣDE$は、個体推定泌乳量DEYに牛乳単価qを乗じて、個体牛毎の個体推定売上金を算出し、その総和を求める方法と、個体推定総泌乳量SUMDEYに牛乳単価qを乗じて求める方法がある。個体推定総売上金ΣDE$を求める工程としてはどちらの工程であってもよい。
【0186】
以下の図25および図26にそれぞれのフローを例示する。それぞれステップS126AおよびステップS126Bと呼ぶ。いずれの工程も図2のステップS126とすることができる。
【0187】
[個体推定総売上金算出1]
図25には、個体予測売上金DE$算出工程のフローを示す。なおこのフローは個体推定総売上金ΣDE$を求めるのに、個体推定総泌乳量SUMDEYを用いる。個体予測売上金DE$を算出する工程がスタートしたら(ステップS126A)、個体推定売上金DEI$の算出か、個体推定総売上金ΣDE$の算出かを選択する(ステップS560、562)。それぞれ選択しない場合は処理を次に移す。つまりステップS560のN分岐では、ステップS562に処理が移り、ステップS562のN分岐では、処理を個体予測売上金DE$算出工程に戻す。
【0188】
個体推定売上金DEI$を選択すると(ステップS560のY分岐)、予測日における個体牛CWiの個体推定泌乳量を算出し、牛乳単価qを乗じて個体推定泌乳量DEI$とする(ステップS570)。どの個体牛にするかはこのステップの始めに入力されているとする。次に再入力の確認を行い(ステップS572)、再入力を行う場合(ステップS572のY分岐)は、個体牛の変更などを行い、再度ステップS570を実行する。再入力を行わない場合(ステップS572のN分岐)は、処理を次に移す(ステップS562)。
【0189】
個体推定総売上金ΣDE$を選択すると(ステップS562のY分岐)、まず。個体推定総泌乳量SUMDEYを算出する(ステップS504)。これは図24のステップS504を実行することで求められる。しかし、個体推定総泌乳量SUMDEYがすでに算出されている場合は、その値を用いてもよい。
【0190】
そして、個体推定総泌乳量SUMDEYに牛乳単価qを乗じた値を個体推定総売上金ΣDE$とする(ステップS580)。算出された個体推定総売上金ΣDE$は端末等に表示してもよい。
【0191】
次に再入力の確認を行い(ステップS582)、再入力を行う場合(ステップS582のY分岐)は、予測日等の変更などを行い、再度ステップS504を実行する。再入力を行わない場合(ステップS582のN分岐)は、処理を個体予測売上金DE$の工程に戻す(ステップS584)。
【0192】
以上の工程により牛群に属する全ての個体牛の予定日における個体推定泌乳量DEYの合計である個体推定総泌乳量SUMDEYに牛乳単価qを乗じた額を個体推定総売上金ΣDE$として算出することができる。
【0193】
[個体推定総売上金算出2]
図26には、個体推定総売上金ΣDE$を、各個体牛の推定売上金の総和として求める方法の場合のフローを示す。個体予測売上金DE$を算出する工程がスタートしたら(ステップS126B)、個体推定売上金DEI$の算出か、個体推定総売上金ΣDE$の算出かを選択する(ステップS560、564)。それぞれ選択しない場合は処理を次に移す。つまりステップS560のN分岐では、ステップS564に処理が移り、ステップS564のN分岐では、処理を個体予測売上金DE$算出工程に戻す(ステップS600)。
【0194】
個体推定売上金DEI$の算出フローは、図25の場合と同様であるので省略する。個体推定総売上金ΣDE$の算出が選択されたら(ステップS564のY分岐)、初期設定を行う(ステップS590)。初期設定は、識別指標iと、個体推定総売上金ΣDE$の初期化(i=1、ΣDE$=0)および個体数の最終の値(END)の設定である。最終値ENDはn+1に設定し、「n」は牛群中の乳牛の個体数である。
【0195】
次に予測日の個体推定泌乳量DEYを求め、牛乳単価qを乗じて、個体推定総売上金ΣDE$に加え、新たな個体推定総売上金ΣDE$とする(ステップS592)。最後の個体牛までの加算が終了したかを確認し(ステップS594)、終わってなければ(ステップS594のN分岐)、識別指標iをインクリメントし(ステップS598)、個体推定総売上金ΣDE$の加算(ステップS592)を繰り返す。
【0196】
最後の個体牛まで算出が終了したら(ステップS594のY分岐)、再入力の有無を確認する(ステップS596)。この際、得られた個体推定総売上金ΣDE$を端末などに表示してもよい。再入力を行う場合(ステップS596のY分岐)は、予測日などを変更し、初期化工程(ステップS590)から処理を繰り返す。再入力しない場合(ステップS596のN分岐)は、処理を個体予測売上金DE$に戻す(ステップS600)。
【0197】
以上の工程によって、牛群中の全ての個体牛について、個体推定泌乳量に牛乳単価qを乗じて個体毎の売上金を算出し、それらの総和を、個体推定総売上金DE$として算出することができる。
【0198】
なお、上記のステップS126のAおよびBはどちらも図2の個体予測売上金DE$を算出する工程(ステップS126)とすることができる。
【0199】
<個体乾乳牛DDCの判定>
図2を参照する。個体推定泌乳量DEYを算出していると(ステップS120)、個体乾乳牛DDCも判定することができる。図27を用いて個体乾乳牛DDCの判定を説明する。図27は、横軸が分娩後日数(日)であり、縦軸は個体推定泌乳量DEY(kg)である。なお、牛群推定泌乳量EYも、牛群推定泌乳曲線Mとして描いてある。
【0200】
個体乾乳牛DDCは、個体推定泌乳曲線DMに対して、乾乳牛と判断できる乾乳基準値DYTHを適用することで求めることができる。図27は、この個体牛の予測日における分娩後日数がN6より多ければ、この個体牛は個体乾乳牛DDCの候補となる。分娩後日数がN6より少なければ、この個体牛は個体乾乳牛ではない(NOTDDC)。なお、個体推定泌乳曲線DMと乾乳基準値DYTHの交点の日(N6)は個体乾乳日DDYdayである。
【0201】
また、乾乳基準値DYTHは、経験値的に求められるもので、図4のステップS200の実行若しくは図22のステップS500実行の際(いずれも回帰式構成の工程(ステップS290)内)に入力しておくなどする。
【0202】
個体乾牛の判別は2通りの方法が考えられる。個体牛毎に個体推定泌乳量DEYを算出し、それを乾乳基準値DYTHと比較する方法と、各個体牛毎に個体推定泌乳量DEYと乾乳基準値DYTHから個体乾乳日DDYdayを求め、予測日におけるその個体の分娩後日数と個体乾乳日DDYdayを比較する方法である。いずれの方法も図2の個体乾乳牛判別の工程(ステップS128)となり得る。
【0203】
[個体乾乳牛判定1]
図28には、個体牛毎に個体推定泌乳量DEYを算出し、それを乾乳基準値DYTHと比較する方法の場合のフローを示す。個体乾乳牛判断の工程がスタートしたら(ステップS128A)、初期設定を行う(ステップS610)。初期設定は、識別指標iの初期化および個体数の最終の値(END)の設定である。識別指標iはi=1に設定し、最終の値(END)はn+1に設定する。「n」は牛群中の乳牛の個体数である。
【0204】
次に、予測日におけるi番目の個体牛CWの分娩後日数Nr+Xを取得する(ステップS612)。ここでNrは個体特定日の分娩後日数であり、Xは個体特定日から予測日までの日数である。
【0205】
そして、予測日における分娩後日数Nr+Xが個体早期日数Da以下であるか否かを判断する(ステップS614)。個体早期日数Daは、牛群推定泌乳量EYが最初に乾乳基準値DYTHを超える日(DC図13参照)である早期日数aに対応する日であり、個体牛CWiの個体推定泌乳量DEYが最初に乾乳基準値DYTHを超える日である。通常30日~50日を設定すればよい。
【0206】
分娩後日数Nr+Xが個体早期日数Da以下であれば、識別指標iをインクリメントし別の個体牛で分娩後日数Nr+Xを取得する工程を繰り返す(ステップS612)。分娩後間もない個体牛は、乾乳牛の判断から外すためである。
【0207】
そして、個体牛CWの個体推定泌乳量DEYが乾乳基準値DYTH以下か否かを判断する(ステップS616)。個体牛CWの個体推定泌乳量DEYが乾乳基準値DYTH以下であったら(ステップS616のY分岐)、個体牛CWを個体乾乳牛の候補として表示し(ステップS618)、全ての個体牛についての判断が終了したか否かを判断する(ステップS620)。個体牛CWの個体推定泌乳量DEYが乾乳基準値DYTH以下でなければ(ステップS616のN分岐)、ステップS618をスキップし、ステップS620に処理を移す。
【0208】
最後の個体牛まで判断が終了してなかった(ステップS620のN分岐)、識別指標iをインクリメントし、予測日におけるi番目の個体牛CWの分娩後日数Nr+Xを取得するステップ(ステップS612)まで戻る。最後の個体牛まで判断が終了していたら(ステップS620のY分岐)、個体乾乳牛判断の工程に戻る(ステップS624)。
【0209】
以上の工程によって、予測日における個体推定泌乳量DEYが乾乳基準値DYTHより低くなる個体牛を乾乳牛候補として表示することができる。
【0210】
[個体乾乳牛判定2]
図29には、個体乾乳日DDYdayを用いて個体乾乳牛を判断する場合のフローを示す。個体乾乳牛判断の工程がスタートしたら(ステップS128B)、初期設定を行う(ステップS640)。初期設定は、識別指標iの初期化および個体数の最終の値(END)の設定である。識別指標iはi=1に設定し、最終の値(END)はn+1に設定する。「n」は牛群中の乳牛の個体数である。
【0211】
次に分娩後日数Nを個体早期日数Daに設定する(ステップS642)。そして牛群に属する全ての個体牛についての判定が終了したかを判断する(ステップS644)。終了した場合(ステップS644のY分岐)は、処理を個体乾乳牛判断工程に戻す(ステップS660)。まだ判定する個体牛が残っている場合(ステップS644のN分岐)は処理を次に移す。
【0212】
次の処理では、分娩後日数Nが最終か否かを判断する(ステップS646)。分娩後日数Nの最終値は、予め設定されているとする。通常は260日以降の日数で設定される。Nが最終値でなければ(ステップS646のN分岐)、処理を次の処理(ステップS648)に移し、Nが最終値であった場合(ステップS646のY分岐)は、識別指標iをインクリメントし(ステップS658)、分娩後日数Nの設定ステップ(ステップS642)に戻る。
【0213】
Nが最終値でない場合(ステップS646のN分岐)は、i番目の個体の予測日の個体推定泌乳量DEYにおいて、分娩後日数がNの時の個体推定泌乳量DEYが乾乳基準値DYTH以下であるか否かを判断する(ステップS648)。これは、個体牛CWの予測日における個体回帰式から求めることができる。個体牛CWの予測日における個体回帰式は(6)式に個体牛CWの乳量係数αを乗じて得られ、その個体回帰式の分娩後日数がNの場合を求めればよいからである。
【0214】
個体推定泌乳量DEYが乾乳基準値DYTH以下とならなかったら(ステップS648のN分岐)、Nをインクリメントし(ステップS656)、Nが最終日か否かの判断に戻る(ステップS646)。個体推定泌乳量DEYが乾乳基準値DYTH以下となったら、その分別後日数Nがこの個体牛にとっての個体乾乳日DDYdayであるとする(ステップS650)。
【0215】
そして、予測日における個体牛CWの分娩後日数が個体乾乳日DDYdayより大きいかを判断する(ステップS652)。なお、Nr[CW]は個体特定日における個体牛CWの分娩後日数であり、Xは個体特定日から予測日までの日数である。予測日における個体牛CWの分娩後日数が個体乾乳日DDYdayより大きければ(ステップS652のY分岐)、個体牛CWiを個体乾乳牛DDCとして表示する(ステップS654)。
【0216】
予測日における個体牛CWの分娩後日数が個体乾乳日DDYdayより大きくなければ(ステップS652のN分岐)、識別指標iをインクリメントし、分娩後日数Nの設定ステップ(ステップS642)に戻る。このように、牛群に属する全ての個体牛について、それぞれの個体乾乳日DDYdayを求め、予測日におけるその個体牛の分娩後日数と比較することで個体乾乳牛DDCか否かを判断することができる。
【0217】
以上の工程により、予測日における個体推定泌乳量DEYが乾乳基準値DYTHとなる個体乾乳日DDYdayより分娩後日数Nr+X(日)が多くなる個体牛を個体乾乳牛候補として表示することができる。
【0218】
なお、上記のステップS128のAおよびBはどちらも図2の個体乾乳牛を判定する工程(ステップS128)とすることができる。
【0219】
以上のように本発明に係る泌乳量算出システムは、過去の基本データに基づいて将来の乳量を予測する。将来の乳量が予測できれば、その量に基づいて売上高を予測することができる。
【0220】
また、売上高が予測できると、飼料費用(これが経費となる。)との比較が可能となり、生産性を見積もることができる。例えば、飼料費用をユーザーが入力することで、予測した売上金と比較し、飼料費用が予測売上金の3割となるなどの表示をすることも可能となる。その結果、飼料のロスや効率的な飼料配合を検討することができる。特に濃厚飼料の配合の検討なども可能となる。
【0221】
また、脂肪やタンパク質などの含有量を表す乳成分についても同様に予測し表示させてもよい。所定濃度以上時の乳量単価増加、所定濃度未満時の乳量単価減少の取引を行う場合は、所定濃度に応じた乳量単価増減を考慮した売上金を表示させてもよい。
【実施例0222】
日本国内の牧場で得たデータを用いて本発明に係る泌乳量算出システムを実施した。この牧場は、ある地方の複数の牧場で乳牛数は、およそ5000頭ほどのデータである。母集団は、2019年の月毎のデータである。要因パラメータPは、THIと日照時間である。THIは月の平均温度と平均湿度の値を用いた。日照時間は月合計値である。結果を図30に示す。
【0223】
図30(a)は、2019年の2月、5月、8月、11月の5か月のTHIと日照時間の値である。対象の牧場の平均実乳量(kg/日)と分娩後日数NをWOOD曲線で近似し、そこから得た値を用いて推定泌乳量EYを要因パラメータPとしてTHIだけを用いた単回帰で求めた結果を図30(b)に示す。また、要因パラメータPとして、THIに日照時間(月合計)の2つを用いた重回帰によって推定泌乳量EYを求めた結果を図30(c)に示す。なお、いずれも分娩後日数が50日の場合である。
【0224】
要因パラメータPとしてTHIだけを用いると、標準誤差が0.65とかなりばらついた。しかし、要因パラメータPとしてTHIと日照時間を用いると、標準誤差が0.17
となり、かなり実乳量を推定できていることが分かった。
【0225】
泌乳量がTHIと日照時間で推定できる点は、これまで知られることがなく、今後の泌乳量の増加に対する対応に大きなインパクトを与えるものである。
【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明は、酪農の情報化のために、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0227】
1 泌乳量算出システム
10 端末
12 本体
14 メモリ
16 牧場
18 外部情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
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図28
図29
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