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特開2023-59726レトルト食品包装容器用シーラントフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059726
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】レトルト食品包装容器用シーラントフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20230420BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230420BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
B32B27/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169894
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 裕史
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086AD04
3E086AD05
3E086AD06
3E086AD23
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB51
3E086BB85
3E086CA03
3E086DA08
4F100AK05A
4F100AK05B
4F100AK05C
4F100AK63A
4F100AK63B
4F100AK63C
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100EH20
4F100GB16
4F100JA04A
4F100JA04B
4F100JA04C
4F100JJ03
4F100JK10
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】従来技術の限界を超えて高いレベルで広い加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とがバランスしたレトルト食品包装容器用シーラントフィルムを提供する。
【解決手段】それぞれ直鎖状ポリエチレンを含有する(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有するレトルト食品包装容器用シーラントフィルムであって、(B)コア層及び(C)ラミネート層の121℃における熱融解率が30~95質量%であり、(A)シール層の121℃における熱融解率が5~50質量%である、レトルト食品包装容器用シーラントフィルム。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ直鎖状ポリエチレンを含有する(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有するレトルト食品包装容器用シーラントフィルムであって、
(B)コア層及び(C)ラミネート層の121℃における熱融解率が30~95質量%であり、
(A)シール層の121℃における熱融解率が5~50質量%である、
レトルト食品包装容器用シーラントフィルム。
【請求項2】
(A)シール層の121℃における熱融解率が5~35質量%である、請求項1に記載のレトルト食品包装容器用シーラントフィルム。
【請求項3】
(B)コア層及び(C)ラミネート層を構成する直鎖状ポリエチレンが、いずれもメタロセン触媒を用いて重合されたものである、請求項1又は2に記載のレトルト食品包装容器用シーラントフィルム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムと基材フィルムとを有し、前記基材フィルムが、(C)ラミネート層において前記レトルト食品包装容器用シーラントフィルムと積層されている、レトルト食品包装容器用フィルム。
【請求項5】
請求項4に記載のレトルト食品包装容器用フィルムを含む、レトルト食品包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト食品包装容器用シーラントフィルムに関し、より具体的には広い加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とが高いレベルでバランスしたレトルト食品包装容器用シーラントフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年ますます需要の増大するレトルト食品の包装容器分野において、常温保存/流通のみならず、低温保存/流通(冷凍~チルド)に適したレトルト食品包装容器が求められている。したがってその様なレトルト食品包装容器用シーラントフィルムには、従来から求められていたヒートシール性、高温耐熱性等に加えて、低温での耐衝撃性が求められている。
【0003】
低温耐衝撃性と高温耐熱性等とを両立させるため、少なくとも第1層、第2層および第3層をこの順に積層した積層体であって、第1層が特定のエチレン・α-オレフィン共重合体を含み、かつ、第2層が特定のエチレン・α-オレフィン共重合体を含み、かつ、第3層が特定のエチレン・α-オレフィン共重合体と高密度ポリエチレンを含むことを特徴とする積層体からなるレトルト食品用シーラントフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
同じく耐衝撃性と耐熱性等とを兼ね備えた、調理済食品などを包装する為のフィルム、シートに好適な積層体として、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレン(A)及びエチレンの単独重合体またはエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体からなる高密度ポリエチレン(B)を含む第1層と、エチレンの単独重合体またはエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体であり、かつメタロセン触媒またはシングルサイト系触媒により製造された高密度ポリエチレン(C)を含む第2層との少なくとも2層からなることを特徴とする積層体が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
上述の様に、レトルト食品包装容器には従来からヒートシール性、高温耐熱性等が求められていたが、特にレトルト処理プロセスや収納する食品の自由度等の観点から、所定のレトルト温度でレトルト処理を行った後に、包装容器が大きく変形したりすることなく容易に開封できる温度(加工可能温度)の範囲が広いことがますます重要になってきている。この観点から、広い加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とが高いレベルでバランスしたレトルト食品包装容器用シーラントフィルムが求められるに至っている。例えば、シール層同士が接する様に包装容器を形成し、所定のレトルト温度でレトルト処理を行った後に、包装容器が大きく変形したりすることなく容易に開封できる温度(加工可能温度)の範囲が広く、かつ包装容器形成後低温での落下試験を繰り返しても容易には破袋しない、レトルト食品包装容器用シーラントフィルムが求められている。
【0006】
【特許文献1】特開2019-131271号公報
【特許文献1】特開2002-361811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記技術背景に鑑み、本発明の目的は、従来技術の限界を超えて高いレベルで広い加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とがバランスしたレトルト食品包装容器用シーラントフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、それぞれ直鎖状ポリエチレンを含有する(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有するレトルト食品包装容器用シーラントフィルムにおいて、各層の所定温度における熱融解率をそれぞれ特定の範囲内とすることで、従来技術の限界を超えて高いレベルで広い加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とを両立させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
[1]
それぞれ直鎖状ポリエチレンを含有する(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有するレトルト食品包装容器用シーラントフィルムであって、
(B)コア層及び(C)ラミネート層の121℃における熱融解率が30~95質量%であり、
(A)シール層の121℃における熱融解率が5~50質量%である、
レトルト食品包装容器用シーラントフィルム、
である。
【0009】
以下、[2]から[5]は、いずれも本発明の好ましい一態様又は一実施形態である。
[2]
(A)シール層の121℃における熱融解率が5~35質量%である、[1]に記載のレトルト食品包装容器用シーラントフィルム。
[3]
(B)コア層及び(C)ラミネート層を構成する直鎖状ポリエチレンが、いずれもメタロセン触媒を用いて重合されたものである、[1]又は[2]に記載のレトルト食品包装容器用シーラントフィルム。
[4]
[1]から[3]のいずれか一項に記載のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムと基材フィルムとを有し、前記基材フィルムが、(C)ラミネート層において前記レトルト食品包装容器用シーラントフィルムと積層されている、レトルト食品包装容器用フィルム。
[5]
[4]に記載のレトルト食品包装容器用フィルムを含む、レトルト食品包装容器。
【発明の効果】
【0010】
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムは、従来技術の限界を超えて高いレベルで広い加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とを両立させることができ、例えばシール層同士が接する様に包装容器を形成し、所定のレトルト温度でレトルト処理を行った後に、包装容器が大きく変形したりすることなく容易に開封できる温度(加工可能温度)の範囲が広く、かつ包装容器形成後低温での落下試験を繰り返しても容易には破袋しない、等の顕著な技術的効果を実現するものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、それぞれ直鎖状ポリエチレンを含有する(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層を有するレトルト食品包装容器用シーラントフィルムであって、
(B)コア層及び(C)ラミネート層の121℃における熱融解率が30~95質量%であり、
(A)シール層の121℃における熱融解率が5~50質量%である、
レトルト食品包装容器用シーラントフィルム、である。
すなわち、本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムは、シール層(A)、コア層(B)、及びラミネート層(C)を有する。
【0012】
シール層(A)
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムを構成するシール層(A)は、直鎖状ポリエチレンを含有する。したがって、シール層(A)は直鎖状ポリエチレンのみで構成されていてもよく、直鎖状ポリエチレンに加えて他の成分、例えば他の樹脂や、アンチブロッキング剤、スリッピング剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
シール層(A)直鎖状ポリエチレンを含有することで、本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムは、広い加工温度範囲と低温での耐衝撃性とを高いレベルでバランスさせることができ、またヒートシール性、柔軟性、可撓性、気密性等の、シーラントフィルム一般に求められる物性を適切に具備することができる。
【0013】
シール層(A)は、その121℃における熱融解率が5~50質量%である。
シール層(A)の121℃における熱融解率が5~50質量%の範囲内にあることで、、それ以外の本発明の要件と相俟って、本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムの加工可能温度範囲を拡大することができる。
シール層(A)の121℃における融解率は、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが特に好ましい。
シール層(A)の熱融解率は、シール層(A)を構成する材料の種類や量、シール層(A)又はシール層(A)を含む本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムの製造条件を調整することで、適宜調整することができる。
【0014】
シール層(A)の密度には特に制限は無いが、915kg/m以上960kg/m以下であることが好ましい。シール層(A)の密度が915kg/m以上960kg/m以下であることは、本発明の食品包装容器用シーラントフィルムの加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とを高いレベルで両立させるのに有利である。
シール層(A)の密度は、925kg/m以上960kg/m以下であることが好ましく、930kg/m以上955kg/m以下であることがより好ましく、940kg/m以上953kg/m以下であることが特に好ましい。
シール層(A)の密度は、シール層(A)を構成する材料の種類や量、シール層(A)又はシール層(A)を含む本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムの製造条件を調整することで、適宜調整することができる。
シール層(A)が直鎖状ポリエチレンのみで構成され、あるいは直鎖状ポリエチレンと少量の添加剤のみで構成される場合には、シール層(A)の密度は当該直鎖状ポリエチレンの密度でほぼ決定されるので、その様な場合には、密度が915kg/m以上960kg/m以下、好ましくは930kg/m以上955kg/m以下、より好ましくは940kg/m以上953kg/m以下である直鎖状ポリエチレンを使用することで、シール層(A)の密度を上記範囲内とすることができる。
【0015】
シール層(A)の融点には特に制限は無く、レトルト食品包装容器用シーラントフィルムの用途や使用形態に応じて適宜設定すればよいが、120~135℃であることが好ましい。
シール層(A)の融点が上記範囲内にあることで、本発明の食品包装容器用シーラントフィルムの加工可能温度範囲を一層拡大することができる。
シール層(A)の融点は、122~134℃であることがより好ましく、125~133℃であることが特に好ましい。
シール層(A)の融点は、シール層(A)を構成する材料の種類や量、シール層(A)又はシール層(A)を含む本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムの製造条件を調整することで、適宜調整することができる。
シール層(A)が直鎖状ポリエチレンのみで構成され、あるいは直鎖状ポリエチレンと少量の添加剤のみで構成される場合には、シール層(A)の融点は当該直鎖状ポリエチレンの融点でほぼ決定されるので、その様な場合には、融点が120~135℃、好ましくは125~133℃である直鎖状ポリエチレンを使用することで、シール層(A)の融点を上記好ましい範囲内とすることができる。
【0016】
シール層(A)のMFR(メルトフローレート)には特に制限は無く、シール層(A)又はシール層(A)を含むレトルト食品包装容器用シーラントフィルムの製造条件や、レトルト食品包装容器用シーラントフィルムに求められる物性等に応じて適宜設定すればよいが、MFR(190℃、2160g荷重)が、0.1~15g/10minであることが好ましい。
シール層(A)のMFRが上記範囲内にあることで、本発明の食品包装容器用シーラントフィルムの製造が一層容易となり、押出時の樹脂圧が適切な範囲となる等の好ましい効果が実現できる。
シール層(A)のMFR(190℃、2160g荷重)は、0.5~12g/10minであることがより好ましく、0.7~11g/10minであることが特に好ましい。
シール層(A)のMFRは、シール層(A)を構成する材料の種類や量を選択、調整することで適宜調整することができる。
シール層(A)が直鎖状ポリエチレンのみで構成され、あるいは直鎖状ポリエチレンと少量の添加剤のみで構成される場合には、シール層(A)のMFRは当該直鎖状ポリエチレンの融点でほぼ決定されるので、その様な場合にはMFR(190℃、2160g荷重)が0.1~15g/10min、より好ましくは0.5~12g/10minである直鎖状ポリエチレンを使用することで、シール層(A)MFRを上記好ましい範囲内とすることができる。
【0017】
直鎖状ポリエチレン
シール層(A)を構成する直鎖状ポリエチレンは、実質的に直鎖状である主鎖を有するエチレンの単独重合体又はエチレンと他の単量体との共重合体であればよく、それ以外の制限は存在しない。直鎖状ポリエチレンの代表的な形態として、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを挙げることがでる。
シール層(A)においては、シール層(A)の密度を好ましい範囲、例えば915kg/m以上960kg/m以下とすることができる直鎖状ポリエチレンを使用することが好ましい。
シール層(A)の直鎖状ポリエチレン含有量は、20質量%以上であることが好ましく、25~100質量%であることがより好ましく、30~100質量%であることが特に好ましい。
シール層(A)においては、直鎖状ポリエチレン1種類のみを使用してもよく、2種類以上の直鎖状ポリエチレンを組み合わせて使用してもよい。2種類以上の直鎖状ポリエチレンを組み合わせて使用する場合には、上述の直鎖状ポリエチレン含有量は、当該2種類以上の直鎖状ポリエチレンの質量の合計に基づいて計算する。
【0018】
高密度ポリエチレン
直鎖状ポリエチレンの代表的な一形態である高密度ポリエチレンとしては、当該技術分野において一般に高密度ポリエチレンとして知られているものを適宜使用することができる。
高密度ポリエチレン(HDPE)は、エチレン単独重合体であってもよく、またはエチレンとα-オレフィンの共重合体であってもよい。
【0019】
上記高密度ポリエチレンは、JIS K6922-1に準拠し、190℃、荷重2160gで測定したメルトフローレート(以下、MFRという)が0.1~15g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.5~12.0g/10分、さらに好ましくは0.7~11.0g/10分である。
MFRが上記範囲にあることで、成形加工時に押出機の負荷が低くなるとともに、成形安定性が向上するので、好ましい。
【0020】
本実施形態において好ましく用いられる高密度ポリエチレンは、JIS K6922-1に準拠した密度が940~975kg/mであることが好ましく、より好ましくは945~965kg/m、更に好ましくは950~960kg/mである。
密度が上記範囲にあることで、シール層(A)の密度を好ましい範囲、例えば915kg/m以上960kg/m以下とすることが容易となる。
【0021】
本実施形態で好ましく用いられる高密度ポリエチレンとしては、市販品として入手したものであってもよく、例えば、東ソー(株)製(商品名)ニポロンハード5700、8500、8022、株式会社プライムポリマー製ハイゼックス(登録商標)3300F等を挙げることができる。
【0022】
また、本実施形態で好ましく用いられる高密度ポリエチレンは、例えばスラリー法、溶液法、気相法等の製造法により製造することが可能である。該高密度ポリエチレンを製造する際には、一般的にマグネシウムとチタンを含有する固体触媒成分及び有機アルミニウム化合物からなるチーグラー触媒、シクロペンタジエニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物と、これと反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び/又は有機金属化合物からなるメタロセン触媒、バナジウム系触媒等を用いることができ、該触媒によりエチレンを単独重合またはエチレンとα-オレフィンを共重合することにより製造可能である。α-オレフィンとしては、一般にα-オレフィンと称されているものでよく、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数3~12のα-オレフィンであることが好ましい。エチレンとα-オレフィンの共重合体としては、例えばエチレン・ヘキセン-1共重合体、エチレン・ブテン-1共重合体、エチレン・オクテン-1共重合体等が挙げられる。
【0023】
直鎖状低密度ポリエチレン
直鎖状ポリエチレンの代表的な一形態である直鎖状低密度ポリエチレンとしては、当該技術分野において一般に直鎖状低密度ポリエチレンとして知られているものを適宜使用することができる。その様な直鎖状低密度ポリエチレンとして、エチレンと、αーオレフィンとの共重合体を用いることができ、チーグラー触媒、メタロセン触媒等の公知の触媒を用いた製造方法により合成したものを用いることができる。
【0024】
α-オレフィンとしては、炭素数が3~20の化合物を用いることができ、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。α-オレフィンは、好ましくは、炭素数4、6又は8の化合物若しくはこれらの混合物であり、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン若しくはこれらの混合物である。
尤も、重合の工程でエチレンを多量化してα-オレフィンを生成させることもでき、この場合は実質的にエチレンのみを原料として製造することもできる。
【0025】
直鎖状低密度ポリエチレンは、市販品であってもよく、例えば、宇部丸善ポリエチレン株式会社製2040F(C-LLDPE、MFR;4.0、密度;0.918g/cm)、株式会社プライムポリマー製エボリュー(登録商標)SP2040等を用いることができる。
【0026】
直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは、890~940kg/mであり、より好ましくは、900~930kg/mである。シール層(A)の密度を好ましい範囲、例えば915kg/m以上960kg/m以下とする観点からは、上記密度範囲のうち比較的高密度のものを使用することが特に好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、コモノマー含量を調整することで適宜調整することができ、また触媒や重合温度等の重合条件を選択、調製することでも適宜調整することができる。
【0027】
シール層(A)のMFR(190℃、2160g荷重)を上記の好ましい範囲とする観点から、直鎖状低密度ポリエチレンのMFR(190℃、2160g荷重)は、0.1~15g/10分であることが好ましく、0.5~12g/10minであることがより好ましく、0.7~11g/10minであることが特に好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレンのMFR(190℃、2160g荷重)は、従来公知の方法により適宜調整することが可能であり、重合温度等の重合条件を調整したり、分子量調整剤を導入すること等で調整することが可能である。
【0028】
直鎖状低密度ポリエチレンは、チーグラー触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒をはじめとする従来公知の触媒を用いた従来公知の製造法により製造することができる。分子量分布が狭く、高強度のフィルムを形成し得る直鎖状低密度ポリエチレンを得る観点からは、シングルサイト触媒を用いることが好ましい。
【0029】
上記のシングルサイト触媒とは、均一な活性種を形成しうる触媒であり、通常、メタロセン系遷移金属化合物や非メタロセン系遷移金属化合物と活性化用助触媒とを接触させることにより、調整される。シングルサイト触媒は、マルチサイト触媒に比べて、活性点構造が均一であるため、高分子量かつ均一度の高い構造の重合体を重合することができるため好ましい。シングルサイト触媒としては、特に、メタロセン系触媒を用いることが好ましい。メタロセン系触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒と、必要により有機金属化合物と、担体の各触媒成分とを含む触媒である。
【0030】
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、そのシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基等である。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1~30の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基等から選ばれた少なくとも一種の置換基を有するものである。その置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また置換基同士が互いに結合して環を形成し、インデニル環、フルオレニル環、アズレニル環、その水添体等を形成してもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環がさらに互いに置換基を有していてもよい。
【0031】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、その遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム等が挙げられ、特にジルコニウム、ハフニウムが好ましい。該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常2個を有し、各々のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は架橋基により互いに結合しているものが好ましい。なお、架橋基としては炭素数1~4のアルキレン基、シリレン基、ジアルキルシリレン基、ジアリールシリレン基等の置換シリレン基、ジアルキルゲルミレン基、ジアリールゲルミレン基等の置換ゲルミレン基等が挙げられる。好ましくは、置換シリレン基である。
【0032】
周期律表第IV族の遷移金属化合物において、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、代表的なものとして、水素、炭素数1~20の炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、ポリエニル基等)、ハロゲン、メタアルキル基、メタアリール基等が挙げられる。
【0033】
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、一種または二種以上の混合物を触媒成分とすることができる。
【0034】
助触媒としては、上記の周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、または触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させうるものをいう。助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、活性水素基含有あるいは非含有のカチオンと非配位性アニオンからなるイオン性化合物、酸化ランタン等のランタノイド塩、酸化スズ、フルオロ基を含有するフェノキシ化合物等が挙げられる。
【0035】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機または有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、モンモリロナイト等のイオン交換性
層状珪酸塩、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等またはこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
また更に必要により使用される有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物等が例示される。このうち有機アルミニウムが好適に使用される。
【0037】
分子量分布が広く柔軟性や成形性に優れた線状低密度ポリエチレンを得る観点からは、チーグラー触媒、フィリップス触媒等のマルチサイト触媒を用いることが好ましい。
好ましいチーグラー触媒としては、エチレン、α-オレフィンの配位重合に用いるチーグラー触媒として一般的に知られているものでよく、例えばチタン化合物および有機アルミニウム化合物を含む触媒であり、ハロゲン化チタン化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒、チタニウム、マグネシム、塩素等からなる固体触媒成分と有機アルミニウム化合物からなる触媒等を例示することができる。このような触媒としては、より具体的には、無水マグネシウムジハロゲン化物のアルコール予備処理物と有機金属化合物との反応生成物にチタン化合物を反応させて得られる触媒成分(ai)と有機金属化合物(bi)からなる触媒、マグネシウム金属と水酸化有機化合物またはマグネシウムなどの酸素含有有機化合物、遷移金属の酸素含有有機化合物、およびアルミニウムハロゲン化物を反応させて得られる触媒成分(aii)と有機金属化合物の触媒成分(bii)とからなる触媒、(i)金属マグネシウムと水酸化有機化合物、マグネシウムの酸素含有有機化合物、およびハロゲン含有化合物から選んだ少なくとも一員、(ii)遷移金属の酸素含有有機化合物およびハロゲン含有化合物から選ばれた少なくとも一員、(iii)ケイ素化合物を反応させて得られる反応物と、(iv)ハロゲン化アルミニウム化合物を反応させて得られる固体触媒成分(aiii)と有機金属化合物の触媒成分(biii)とからなる触媒等を例示することができる。
【0038】
また、フィリップス触媒としては、エチレン、α-オレフィンの配位重合に用いるフィリップス触媒として一般的に知られているものでよく、たとえば酸化クロム等のクロム化合物を含む触媒系であり、具体的には、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア等の固体酸化物に、三酸化クロム、クロム酸エステル等のクロム化合物を担持した触媒を例示することができる。
【0039】
シール層(A)は、上記直鎖状ポリエチレン以外の成分を含んでいてもよく、例えば、直鎖状ポリエチレン以外のポリマー、オリゴマー、ブロッキング防止剤、スリップ剤、耐熱安定剤(酸化防止剤)、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、核剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の他、タルク、シリカ、珪藻土などの各種フィラー類等を、必要に応じて、又は本発明の目的に反しない限りにおいて、配合することができる。
これらの添加成分は、あらかじめ直鎖状ポリエチレンに配合されていてもよく、また直鎖状ポリエチレンから中間層(A)を形成するにあたって添加してもよい。
【0040】
シール層(A)の厚みには特に制限はないが、良好なシール特性等の観点からは、3μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが特に好ましい。
一方、可撓性や経済性等の観点からは、シール層(A)の厚みは30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。
本発明の積層フィルムの製造にあたって延伸を行う場合には、延伸倍率は、面積倍率で1~100倍であることが好ましく、4~80倍であることが特に好ましい。延伸前のシール層(A)にあたる層の厚みは、0.3~12mmであることが好ましく、0.5~4mmであることが特に好ましい。
シール層(A)の厚みは、延伸倍率等の延伸条件や、延伸前の層厚み、当該延伸前の層を形成する際のダイのリップ間隔等を調整することで、適宜調整することができる。
【0041】
コア層(B)
コア層(B)は、直鎖状ポリエチレンを含有する層であって、その121℃における熱融解率が30~95質量である層である。
コア層(B)の121℃における融解率が上記範囲内にあることで、、それ以外の本発明の要件と相俟って、本発明の食品包装容器用シーラントフィルムは、広い加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とを高いレベルでバランスさせることができる。
コア層(B)の121℃における融解率は、45~95質量%であることがより好ましく、47~93質量%であることが特に好ましい。
コア層(B)の121℃における融解率は、コア層(B)を構成する材料の種類や量、コア層(B)又はコア層(B)を含む本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムの製造条件を調整することで、適宜調整することができる。
【0042】
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムを構成するコア層(B)は、メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンを含有することが好ましい。したがって、コア層(B)はメタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンのみで構成されていてもよく、メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンに加えて他の成分、例えば他の樹脂や、アンチブロッキング剤、スリッピング剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンは耐衝撃性に優れるので、コア層(B)がメタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンを含有することで、本実施形態のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムは、加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とを高いレベルでバランスさせることができ、またヒートシール性、柔軟性、可撓性、密閉性等の、シーラントフィルム一般に求められる物性を適切に具備することができる。
【0043】
コア層(B)の密度には特に制限は無いが、932kg/m以上940kg/m未満であることが好ましい。コア層(B)の密度が932kg/m以上940kg/m以下であることは、本発明の食品包装容器用シーラントフィルムの加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とを高いレベルでバランスさせるのに有利である。
コア層(B)の密度は、934kg/m以上940kg/m未満であることがより好ましく、936kg/m以上940kg/m未満であることが特に好ましい。
コア層(B)の密度は、コア層(B)を構成する材料の種類や量、コア層(B)又はコア層(B)を含む本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムの製造条件を調整することで、適宜調整することができる。
コア層(B)が直鎖状ポリエチレンのみで構成され、あるいは直鎖状ポリエチレンと少量の添加剤のみで構成される場合には、コア層(B)の密度は当該直鎖状ポリエチレンの密度でほぼ決定されるので、その様な場合には、密度が932kg/m以上940kg/m未満、好ましくは934kg/m以上940kg/m未満である直鎖状ポリエチレンを使用することで、コア層(B)の密度を上記の好ましい範囲内とすることができる。
【0044】
コア層(B)の融点には特に制限は無く、レトルト食品包装容器用シーラントフィルムの用途や使用形態に応じて適宜設定すればよいが、120~135℃であることが好ましい。
コア層(B)の融点が上記範囲内にあることで、本発明の食品包装容器用シーラントフィルムの加工可能温度範囲を一層拡大することができる。
コア層(B)の融点は、122~134℃であることがより好ましく、125~133℃であることが特に好ましい。
コア層(B)の融点は、コア層(B)を構成する材料の種類や量、コア層(B)又はコア層(B)を含む本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムの製造条件を調整することで、適宜調整することができる。
コア層(B)が直鎖状ポリエチレンのみで構成され、あるいは直鎖状ポリエチレンと少量の添加剤のみで構成される場合には、コア層(B)の融点は当該直鎖状ポリエチレンの融点でほぼ決定されるので、その様な場合には、融点が120~135℃、好ましくは122~134℃である直鎖状ポリエチレンを使用することで、コア層(B)の融点を上記好ましい範囲内とすることができる。
【0045】
コア層(B)のMFR(メルトフローレート)には特に制限は無く、コア層(B)又はコア層(B)を含むレトルト食品包装容器用シーラントフィルムの製造条件や、レトルト食品包装容器用シーラントフィルムに求められる物性等に応じて適宜設定すればよいが、MFR(190℃、2160g荷重)が、6.0g/10min以下であることが好ましい。
コア層(B)のMFRが6.0g/10min以下であることで、本発明の食品包装容器用シーラントフィルムの加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とを一層高いレベルで両立させることができ、耐衝撃性の向上等の好ましい効果が実現できる。
コア層(B)のMFR(190℃、2160g荷重)は、0.1~15g/10minであることがより好ましく、0.7~11g/10minであることが特に好ましい。
コア層(B)のMFRは、コア層(B)を構成する材料の種類や量を選択、調整することで適宜調整することができる。
コア層(B)が直鎖状ポリエチレンのみで構成され、あるいは直鎖状ポリエチレンと少量の添加剤のみで構成される場合には、コア層(B)のMFRは当該直鎖状ポリエチレンの融点でほぼ決定されるので、その様な場合にはMFR(190℃、2160g荷重)が0.1~15g/10min、より好ましくは0.7~11g/10minである直鎖状ポリエチレンを使用することで、コア層(B)MFRを上記好ましい範囲内とすることができる。
【0046】
コア層(B)にはメタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンを用いることが好ましく、この場合の直鎖状ポリエチレンは、上記にて説明したシール層(A)を構成する直鎖状ポリエチレンと基本的には同種の樹脂であるが、上記説明のうち、メタロセン触媒以外の触媒による直鎖状ポリエチレンの製造に関する記載は、メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンには適用されない。
【0047】
コア層(B)を構成する直鎖状ポリエチレンの密度は、コア層(B)の密度が好ましい範囲内、例えば932kg/m以上940kg/m未満となる様に設定することが好ましい。
より具体的には、コア層(B)を構成する直鎖状ポリエチレンの密度は、932kg/m以上940kg/m未満の範囲内であることが好ましく、934kg/m以上940kg/m未満の範囲内であることがより好ましく、936kg/m以上940kg/m未満の範囲内であることが特に好ましい。
この観点から、コア層(B)を構成する直鎖状ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)よりも直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンのみを使用するか、直鎖状低密度ポリエチレンが大半を占める組み合わせで使用することが好ましい。
【0048】
コア層(B)の直鎖状ポリエチレン含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、90~98質量%であることが特に好ましい。
コア層(B)においては、直鎖状ポリエチレン1種類のみを使用してもよく、2種類以上の直鎖状ポリエチレンを組み合わせて使用してもよい。2種類以上の直鎖状ポリエチレンを組み合わせて使用する場合には、上述の直鎖状ポリエチレン含有量は、当該2種類以上の直鎖状ポリエチレンの質量の合計に基づいて計算される。
【0049】
コア層(B)の厚みには特に限定は無いが、シール層(A)の厚み及びラミネート層(C)の厚みよりも大きなものとすることが好ましく、シール層(A)の厚み及びラミネート層(C)の厚みの和よりも大きなものとすることが特に好ましい。
より具体的には、コア層(B)の厚みは、9μm以上であることが好ましく、15μm以上であることが特に好ましい。
一方、原料コスト等の観点からは、コア層(B)の厚みは、90μm以下であることが好ましく、60μm以下であることが特に好ましい。
【0050】
ラミネート層(C)
ラミネート層(C)は、直鎖状ポリエチレンを含有する層であって、その121℃における熱融解率が30~95質量である層である。
ラミネート層(C)の121℃における融解率が上記範囲内にあることで、、それ以外の本発明の要件と相俟って、本発明の食品包装容器用シーラントフィルムは、広い加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とを高いレベルでバランスさせることができる。
ラミネート層(C)の121℃における融解率は、45~95質量%であることがより好ましく、47~93質量%であることが特に好ましい。
ラミネート層(C)の121℃における融解率は、ラミネート層(C)を構成する材料の種類や量、ラミネート層(C)又はコア層ラミネート層(C)を含む本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムの製造条件を調整することで、適宜調整することができる。
【0051】
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムを構成するラミネート層(C)は、メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンを含有することが好ましい。したがって、ラミネート層(C)はメタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンのみで構成されていてもよく、メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンに加えて他の成分、例えば他の樹脂や、アンチブロッキング剤、スリッピング剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンは耐衝撃性に優れるので、ラミネート層(C)がメタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンを含有することで、本実施形態のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムは、加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とを高いレベルでバランスさせることができ、またヒートシール性、柔軟性、可撓性、密閉性等の、シーラントフィルム一般に求められる物性を適切に具備することができる。
【0052】
ラミネート層(C)の密度荷が特に制限は無いが、932kg/m以上940kg/m未満である。ラミネート層(C)の密度が932kg/m以上940kg/m以下であることは、本発明の食品包装容器用シーラントフィルムの加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とを高いレベルでバランスさせるうえで有利である。
ラミネート層(C)の密度は、934kg/m以上940kg/m未満であることがより好ましく、936kg/m以上940kg/m未満であることが特に好ましい。
ラミネート層(C)の密度は、ラミネート層(C)を構成する材料の種類や量、ラミネート層(C)又はラミネート層(C)を含む本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムの製造条件を調整することで、適宜調整することができる。
ラミネート層(C)が直鎖状ポリエチレンのみで構成され、あるいは直鎖状ポリエチレンと少量の添加剤のみで構成される場合には、ラミネート層(C)の密度は当該直鎖状ポリエチレンの密度でほぼ決定されるので、その様な場合には、密度が932kg/m以上940kg/m未満、好ましくは934kg/m以上940kg/m未満である直鎖状ポリエチレンを使用することで、ラミネート層(C)の密度を上記の好ましい範囲内とすることができる。
【0053】
ラミネート層(C)の融点には特に制限は無く、レトルト食品包装容器用シーラントフィルムの用途や使用形態に応じて適宜設定すればよいが、120~135℃であることが好ましい。
ラミネート層(C)の融点が上記範囲内にあることで、本発明の食品包装容器用シーラントフィルムの加工可能温度範囲を一層拡大することができる。
ラミネート層(C)の融点は、122~134℃であることがより好ましく、125~133℃であることが特に好ましい。
ラミネート層(C)の融点は、ラミネート層(C)を構成する材料の種類や量、ラミネート層(C)又はラミネート層(C)を含む本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムの製造条件を調整することで、適宜調整することができる。
ラミネート層(C)が直鎖状ポリエチレンのみで構成され、あるいは直鎖状ポリエチレンと少量の添加剤のみで構成される場合には、ラミネート層(C)の融点は当該直鎖状ポリエチレンの融点でほぼ決定されるので、その様な場合には、融点が120~135℃、好ましくは122~134℃である直鎖状ポリエチレンを使用することで、ラミネート層(C)の融点を上記好ましい範囲内とすることができる。
【0054】
ラミネート層(C)のMFR(メルトフローレート)には特に制限は無く、ラミネート層(C)又はラミネート層(C)を含むレトルト食品包装容器用シーラントフィルムの製造条件や、レトルト食品包装容器用シーラントフィルムに求められる物性等に応じて適宜設定すればよいが、MFR(190℃、2160g荷重)が、6.0g/10min以下であることが好ましい。
ラミネート層(C)のMFRが6.0g/10min以下であることで、本発明の食品包装容器用シーラントフィルムの加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とを一層高いレベルで両立させることができ、耐衝撃性の向上等の好ましい効果が実現できる。
ラミネート層(C)のMFR(190℃、2160g荷重)は、0.1~15g/10minであることがより好ましく、0.7~11g/10minであることが特に好ましい。
ラミネート層(C)のMFRは、ラミネート層(C)を構成する材料の種類や量を選択、調整することで適宜調整することができる。
ラミネート層(C)が直鎖状ポリエチレンのみで構成され、あるいは直鎖状ポリエチレンと少量の添加剤のみで構成される場合には、ラミネート層(C)のMFRは当該直鎖状ポリエチレンの融点でほぼ決定されるので、その様な場合にはMFR(190℃、2160g荷重)が0.1~15g/10min、より好ましくは0.7~11g/10minである直鎖状ポリエチレンを使用することで、ラミネート層(C)MFRを上記好ましい範囲内とすることができる。
【0055】
ラミネート層(C)にはメタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンを用いることが好ましく、この場合の直鎖状ポリエチレンは、上記にて説明したシール層(A)を構成する直鎖状ポリエチレンと基本的には同種の樹脂であるが、上記説明のうち、メタロセン触媒以外の触媒による直鎖状ポリエチレンの製造に関する記載は、メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンには適用されない。
【0056】
ラミネート層(C)を構成する直鎖状ポリエチレンの密度は、ラミネート層(C)の密度が好ましい範囲内、例えば932kg/m以上940kg/m未満、となる様に設定することが好ましい。
より具体的には、ラミネート層(C)を構成する直鎖状ポリエチレンの密度は、932kg/m以上940kg/m未満の範囲内であることが好ましく、934kg/m以上940kg/m未満の範囲内であることがより好ましく、936kg/m以上940kg/m未満の範囲内であることが特に好ましい。
この観点から、ラミネート層(C)を構成する直鎖状ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)よりも直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンのみを使用するか、直鎖状低密度ポリエチレンが大半を占める組み合わせで使用することが好ましい。
【0057】
ラミネート層(C)の直鎖状ポリエチレン含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、90~98質量%であることが特に好ましい。
ラミネート層(C)においては、直鎖状ポリエチレン1種類のみを使用してもよく、2種類以上の直鎖状ポリエチレンを組み合わせて使用してもよい。2種類以上の直鎖状ポリエチレンを組み合わせて使用する場合には、上述の直鎖状ポリエチレン含有量は、当該2種類以上の直鎖状ポリエチレンの質量の合計に基づいて計算される。
【0058】
ラミネート層(C)は、必要又は所望に応じて、後述の基材層(D)をはじめとする他の層と積層することができる。
従って、ラミネート層(C)は、基材層(D)をはじめとする他の層との間のラミネート強度等を考慮して設計することが好ましい。
ラミネート層(C)には、コロナ処理等の表面処理を行って他の層との接着性を向上してもよい。
【0059】
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムを保管等する際のブロッキング防止の観点からは、ラミネート層(C)は、ブロキング防止剤を含んでいてもよい。
ブロッキング防止剤としては、粉末状のシリカ、好ましくは合成シリカ、等を好適に使用することができる。粉末状のシリカをラミネート層(C)中に均一に分散させる観点からは、粉末状のシリカを、ラミネート層(C)を構成する樹脂との混和性に優れた樹脂中に分散してマスターバッチを形成し、次いでマスターバッチをラミネート層(C)に添加してもよい。
【0060】
ラミネート層(C)の厚みには特に制限はないが、フィルムカールを抑制する等の観点から、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることが特に好ましい。
一方、原料コスト等の観点からは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。
【0061】
シール層(A)、コア層(B)、及びラミネート層(C)のいずれも、本発明の目的に反しない限りにおいて、上記以外の、各種添加材、充填材、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、染料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク、クレー、抗菌剤、防曇剤等を添加することができる。さらにまた、その他の(上記にて説明した以外の)熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム類等を本発明の目的に反しない範囲で配合してもよい。
各種添加剤は、マスターバッチ形式で添加してもよい。
【0062】
レトルト食品包装容器用シーラントフィルム(積層フィルム)
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムは、シール層(A)、コア層(B)、及びラミネート層(C)を有する。本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムにおいては、好ましくはコア層(B)を介して、ラミネート層(C)とシール層(A)とが直接積層されるが、それ以外の層が間に存在していてもよい。
【0063】
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムは、種々公知のフィルム成形方法で製造することができる。例えば、予め、ラミネート層(C)、コア層(B)、及びシール層(A)となるフィルムをそれぞれ成形した後、当該フィルムを貼り合せてレトルト食品包装容器用シーラントフィルムとする方法、多層ダイを用いてコア層(B)及びシール層(A)からなる複層フィルムを得た後、当該コア層(B)の表面上に、ラミネート層(C)を押出してレトルト食品包装容器用シーラントフィルムとする方法、多層ダイを用いてラミネート層(C)及びコア層(B)からなる複層フィルムを得た後、当該コア層(B)の表面上に、シール層(A)を押出してレトルト食品包装容器用シーラントフィルムとする方法、あるいは、多層ダイを用いてラミネート層(C)、コア層(B)及びシール層(A)からなるレトルト食品包装容器用シーラントフィルムを得る方法などを採用することができる。
【0064】
また、フィルム成形方法として、種々公知のフィルム成形方法、具体的には、T-ダイキャストフィルム成形方法、インフレーションフィルム成形方法等を採用し得る。
【0065】
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムの厚さには特に限定はされないが、実用的な強度を確保する等の観点から、通常20μm以上であり、好ましくは30μm以上、より好ましくは40μm以上である。一方、例えば基材層(D)と積層された後においても実用的な可撓性を有する等の観点からは、通常200μm以下であり、好ましくは170μm以下、より好ましくは150μm以下である。
【0066】
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムは延伸フィルムであっても無延伸フィルムであってもよいが、製造の簡便さやしなやかさ等の観点からは無延伸フィルムであることが好ましい。
一方、機械的物性の向上の観点からは、延伸フィルムであることが好ましく、二軸延伸フィルムであることが特に好ましい。
二軸延伸は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、多段延伸等の方法が適宜採用される。
二軸延伸の条件としては、公知の二軸延伸フィルムの製造条件、例えば、逐次二軸延伸法では、縦延伸温度を100℃~145℃、延伸倍率を4~7倍の範囲、横延伸温度を150~190℃、延伸倍率を8~11倍の範囲とすることが挙げられる。
【0067】
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムは、(A)シール層、(B)コア層、及び(C)ラミネート層がそれぞれ所定の熱融解率を有することで、従来技術の限界を超えて高いレベルで広い加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とを両立させることができる。
ここで、加工可能温度範囲とは、シール層(A)同士が接する様に包装容器を形成し、所定のレトルト温度でレトルト処理を行った後に、包装容器が大きく変形したりすることなく容易に開封できるレトルト温度の範囲をいう。
【0068】
レトルト食品包装容器用シーラントフィルムの加工可能温度範囲は、レトルト食品包装容器用シーラントフィルムを用いて、そのシール層(A)同士が接する様に包装容器を形成し、所定の複数のレトルト温度でレトルト処理を行った後に、シール層(A)同士の融着の有無や程度を判定することで評価することができ、より具体的には例えば本願実施例に記載の方法により評価することができる。
本願実施例に記載の方法により評価した場合、本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムを用いて形成した包装容器は、少なくとも115℃~117℃で45分間レトルト処理した場合、融着が発生しないか非常に軽い融着で容易に剥離できる等、融着を効果的に防止し得ること、すなわち115~117℃の加工可能温度範囲を有することが好ましい。この場合の加工可能温度範囲は、115~120℃であることがより好ましく、115~121℃であることが更に好ましい。
本発明においては、樹脂組成を更に最適化する等して加工可能温度範囲を更に拡大することができる。例えば、各層の密度、特にシール層(A)の密度を高く設定することや、融解率を低く設定することで、加工可能温度範囲を更に拡大することができる。
【0069】
ここで低温での耐衝撃性は落下破袋性により評価することができ、より具体的にはレトルト食品包装容器用シーラントフィルムを用いて水を充填した袋状の包装容器を形成し、5℃に冷却後所定の高さから落下を繰り返した時に破袋するまでの回数により価することができ、さらに具体的には本願実施例記載の方法により評価することができる。
本願実施例に記載の方法により評価した場合、本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムを用いて形成した包装容器は、通常破袋までに15回以上の落下を要し、好ましくは20回以上の落下を要し、更に好ましくは25回以上の落下を要する。
本発明においては、樹脂組成を更に最適化する等して低温での耐衝撃性をさらに向上することができる。例えば、各層の密度を低く設定することで、低温での耐衝撃性を一層向上することができる。
【0070】
基材層(D)
所望に応じて、本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムを、そのラミネート層(C)において、基材層(D)と積層することができる。
【0071】
基材層(D)には特に制限はないが、通常レトルト食品包装容器に使用される耐熱性やガスバリア性に優れたフィルムを、好適に使用することができる。
好ましい基材層(D)の材質としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、パラまたはメタキシリレンアジパミドの如きポリアミド類;結晶性ポリプロピレン、結晶性プロピレン-エチレン共重合体、結晶性ポリブテン-1、結晶性ポリ4-メチルペンテン-1、低-、中-、或いは高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂から構成されたプラスチックフィルムを挙げることができる。また、包装する内容物が酸素に敏感なものの場合には、上記フィルムに金属、金属酸化物等を蒸着したフィルム、或いは有機化合物を被覆したフィルムや、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂からなる層を設けてもよい。
これらの材料からなるプラスチックフィルムは、未延伸で用いてもよく、一軸延伸、或いは二軸延伸して用いてもよい。
【0072】
基材層(D)として、これらのプラスチックフィルムを単層で、或いは、2種以上を積層したものとして使用することができ、また、これらのプラスチックフィルムの一種、或いは、2種以上と、アルミニウム等の金属箔、紙、セロファン等を貼合わせて構成することもできる。
好ましい基材層(D)として、例えば、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリエステルフィルムからなる単層フィルム、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムとPETを積層した二層構成のフィルム、PET/ナイロン/ポリエチレンを積層した三層構成のフィルム等が挙げられる。これらの積層フィルムの製造に際しては、各層間に必要に応じて接着剤、アンカー剤を介在させることもできる。また、デザインを表現するインキ層を設けてもよい。
【0073】
基材層(D)をラミネート層(C)に積層する方法には特に制限はないが、例えば押出しラミネート等によりラミネート層(C)に基材層(D)を直接積層することができる。また、ドライラミネート等により接着剤層を介してラミネート層(C)に基材層(D)を積層してもよい。接着剤としては、ウレタン系接着剤、酸変性ポリオレフィン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリアミド系接着剤等、通常のものを使用することができる。
基材層(D)の厚さは任意に設定することができるが、通常は、5~1000μm、好ましくは9~100μmの範囲から選択される。
【0074】
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルム、及び本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムのラミネート層(C)に基材層(D)を積層した積層フィルムは、レトルト食品包装容器の全体または一部を構成するのに好適なフィルムである。
レトルト食品包装容器の形状には特に制限は無く、袋状の包装容器、蓋材とカップ等の本体とならなる包装容器等を好適な例として挙げることができる。
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムをレトルト食品包装容器に使用する場合、例えば、レトルト食品包装容器用シーラントフィルムそのもの又はこれを基材層(D)と積層した積層フィルムを、折りたたんで三方シールしたり、2枚のレトルト食品包装容器用シーラントフィルム又は上記積層フィルムを四方シールして袋状の包装容器としてもよい。あるいは、レトルト食品包装容器用シーラントフィルム又はそれを基材層(D)と貼り合せた蓋材とカップ等の容器本体とを熱シールして包装容器を形成してもよい。その様な包装体の好適な一例として、上記蓋材とポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのうち少なくとも1種を含む容器本体部からなる包装容器を挙げることができる。
【0075】
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルム又はそれを基材層(D)と貼り合せた蓋材は、シール層(A)において各種容器本体に熱融着させることにより熱シールを形成することができる。このような容器本体の材質としてプロピレン系重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等を例示することができる。これら容器本体は、フィルム、シート、トレー、カップ、ボトル等、種々の形状のものであることができる。
【0076】
レトルト食品包装容器へ収納する食品には特に制限はなく、従来よりレトルト食品として提供されている各種食品を収納することができる。
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムは、広い加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とを従来技術の限界を超えた高いレベルで兼ね備えているので、これを用いたレトルト食品包装容器はレトルト処理プロセスや収納する食品の自由度等が高く、例えば100~135℃、好ましくは121℃以下での加熱加圧殺菌処理用途に好適に使用できる。また、低温での耐衝撃性を活用して、低温保存/流通(冷凍~チルド)において好適に使用される。
【実施例0077】
以下、実施例/比較例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0078】
実施例/比較例における物性、特性の評価は、以下の方法により行った。
(1)加工可能温度範囲
基材(厚み15μmのナイロンフィルム)上に各実施例/比較例のシーラントフィルムのラミネート層(C)をラミネート加工して積層フィルムを作製した。
上記積層フィルム2枚のシール層(A)側を重ね合わせ、3辺をヒートシールして、三方袋を作製した。
上記三方袋の内部が接するように脱気した後に、三方袋の残る1辺をヒートシールした後、115℃から121℃の範囲内で選択された所定温度で、45分間レトルト処理した。
三方袋の内部の融着の有無、程度を、以下の基準に基づき官能検査で評価した。4点以上を合格(〇)と判定し、合格(〇)となる温度範囲を加工可能温度範囲とした。
5:融着なし
4:非常に軽い融着で容易に剥離できる
3:部分的に融着し剥離は可能
2:全体的に融着し剥離困難
1:剥離不可なレベルで融着が発生
【0079】
(2)低温耐衝撃性(落下破袋)
基材(厚み15μmのナイロンフィルム)上に各実施例/比較例のシーラントフィルムのラミネート層(C)をラミネート加工して積層フィルムを作製した。
上記積層フィルム2枚のシール層(A)側を重ね合わせ、3辺をヒートシールして、三方袋を作製した。
上記三方袋内に水300mlを充填し、残る1辺をヒートシールして密閉された袋を形成した後、121℃でレトルト処理した。
次いで、袋を5℃冷蔵庫内に24時間蔵置した後、5℃冷蔵庫内で破袋するまで繰り返し落下し、破袋時の落下回数を記録した。袋の上に1.0kgの重りを置いて、重りとともに60cmの高さから落下させた。
サンプル数Nは10とし、破袋時の落下回数の平均値を、当該実施例/比較例の評価値とした。
【0080】
(3)融点
示差走査熱量計(DSC)(TAインスツルメント社製、「Q200」、ソフト:「TA Universal Analysis」で、昇温速度10℃/分で昇温させた時の融点を測定した。
【0081】
(4)121℃での融解率
示差走査熱量計(DSC)(TAインスツルメント社製、「Q200」、ソフト:「TA Universal Analysis」で、昇温速度10℃/分で昇温させた時の融解熱量(J/g)を測定し、その融解熱量を原料固有の融解熱量とした。融解開始温度から121℃までの融解熱量を原料固有の融解熱量で除した際の比率を121℃での融解率[%]とした。
【0082】
実施例/比較例で用いた樹脂等の各構成成分の詳細は、以下のとおりである。

・LLDPE-1
メタロセンLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)
組成:エチレン-C6共重合体
融点:130℃
密度:937kg/m
融解率(121℃):50質量%
MFR(2.16kg、190℃):1.8g/10分

・LLDPE-2
メタロセンLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)
組成:エチレン-C6共重合体
融点:129℃
密度:938kg/m
融解率(121℃):39質量%
MFR(2.16kg、190℃):3.8g/10分

・LLDPE-3
非メタロセンLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)
組成:エチレン-αオレフィン共重合体
融点:127℃
密度:941kg/m
融解率(121℃):28質量%
MFR(2.16kg、190℃):4.0g/10分

・LLDPE-4
メタロセンLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)
組成:エチレン-C6共重合体
融点:94℃
密度: 904kg/m
融解率(121℃):98質量%
MFR(2.16kg、190℃):1.2g/10分

・LLDPE-5
メタロセンLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)
組成:エチレン-αオレフィン共重合体
融点:130℃
密度: 946kg/m
融解率(121℃):9質量%
MFR(2.16kg、190℃):2.8g/10分

・HDPE-1
HDPE(高密度ポリエチレン)
組成:エチレン系共重合体
融点:131℃
密度: 949kg/m
融解率(121℃):22質量%
MFR(2.16kg、190℃):1.1g/10分

・アンチブロッキング剤マスターバッチ
(商品名:EAZ-30、株式会社プライムポリマー製)
アンチブロッキング剤として合成ゼオライトを30質量%、ベース樹脂として低密度ポリエチレンを70質量%配合した組成物

・スリッピング剤マスターバッチ
(商品名:ESQ-4、株式会社プライムポリマー製)
スリッピング剤としてエルカ酸アミド4質量%、ベース樹脂として低密度ポリエチレンを96質量%配合した組成物
【0083】
(実施例1)
表1に記載の各層の樹脂をそれぞれ別の押出機に供給し、Tダイ法によって、厚み比率15:65:20で、シール層(A)、コア層(B)、およびラミネート層(C)の三層共押出フィルムからなる総厚み50μm積層フィルムであるレトルト食品包装容器用シーラントフィルムを成形した。
なお、表1に記載の各層の樹脂に加えて、シール層(A)にはアンチブロッキング剤マスターバッチを6質量%、スリッピング剤マスターバッチを1.5質量%それぞれ添加し、ラミネート層(C)には、アンチブロッキング剤マスターバッチを1質量%添加した。
得られたレトルト食品包装容器用シーラントフィルムについて、上記の方法にしたがい加工可能温度範囲、低温耐衝撃性(落下破袋)、及びインパクト強度を評価した。
結果を表1に示す。
【0084】
(実施例2から5、及び比較例1から2)
各層の樹脂をそれぞれ表1に記載のとおり変更したことを除くほか、実施例1と同様にしてレトルト食品包装容器用シーラントフィルムを作製して、評価した。
結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のレトルト食品包装容器用シーラントフィルムは、広い加工可能温度範囲と低温での耐衝撃性とを従来技術の限界を超えた高いレベルで兼ね備えたものであり、常温保存のみならず低温流通(冷凍~チルド)にも好適に使用できるレトルト食品包装容器を提供することができるので、食品加工業、流通、外食、観光、ヘルスケアなどの産業の各分野において高い利用可能性を有する。