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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059733
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
E02F9/26 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169904
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】593053988
【氏名又は名称】東起業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】田口 雅邦
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】建設機械により地面を掘削する際に、作業装置から埋設物及び地上の固定障害物までの距離を高精度で検知する。
【解決手段】建設機械1は試験掘により露出した埋設物304,305の三次元絶対位置データ、及び図示されていない地上の固定障害物の三次元絶対位置データを入力する。建設機械1はバケット73の三次元相対位置の検出データと自己の三次元絶対位置の測定データとに基づいて、バケット73の三次元絶対位置データを算出する。建設機械1はバケット73の三次元絶対位置データと、埋設物304,305の三次元絶対位置データに基づいて、バケット73と埋設物304,305との間の距離を算出し、バケット73の三次元絶対位置データと、地上の固定障害物の三次元絶対位置データに基づいて、バケット73と地上の固定障害物との間の距離を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験掘の際に三次元測量機により取得された埋設物の三次元絶対位置データ、及び三次元測量機により取得された地上の固定障害物の三次元絶対位置データを入力するデータ入力手段と、
自己の三次元絶対位置を測定する手段と、
自己の作業装置の三次元相対位置を検出する手段と、
自己の三次元絶対位置の測定データ及び自己の作業装置の三次元相対位置の検出データに基づいて、自己の作業装置の三次元絶対位置データを算出する手段と、
前記作業装置の三次元絶対位置データと前記埋設物の三次元絶対位置データとに基づき、前記作業装置と前記埋設物との間の距離を算出する埋設物離間距離算出手段と、
前記作業装置の三次元絶対位置データと前記地上の固定障害物の三次元絶対位置データとに基づき、前記作業装置と前記地上の固定障害物との間の距離を算出する地上固定障害物離間距離算出手段と、
を有する建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載された建設機械において、
前記作業装置と前記埋設物との間の距離の算出値が所定の安全離隔距離になったとき、及び前記作業装置と前記地上の固定障害物との間の距離の算出値が所定の安全離隔距離になったとき、警報を出力する手段を有する建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載された建設機械において、
前記作業装置と前記埋設物との間の距離の算出値が所定の安全離隔距離になったとき、及び前記作業装置と前記地上の固定障害物との間の距離の算出値が所定の安全離隔距離になったとき、前記作業装置を停止させる手段を有する建設機械。
【請求項4】
請求項2又は3に記載された建設機械において、
前記作業装置の三次元絶対位置データを含む稼働履歴データを保存する保存手段を有する建設機械。
【請求項5】
請求項4に記載された建設機械において、
前記稼働履歴データは、前記作業装置が前記埋設物から前記安全離隔距離以内の位置で停止した時の履歴、及び前記作業装置が前記地上の固定障害物から前記安全離隔距離以内の位置で停止した時の履歴を含む建設機械。
【請求項6】
請求項4に記載された建設機械において、
前記保存手段は、前記稼働履歴データを埋設物管理データ、及び地上の固定障害物の管理データに紐付けて保存する建設機械。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載された建設機械において、
自己の作業装置の三次元相対位置を検出する手段は、レーザスキャナ装置と、当該レーザスキャナ装置から周辺空間内に周期的に放射された光の当該周辺空間内での反射光に基づいて、前記周辺空間内のスキャン位置毎の距離データを取得する手段と、を有する建設機械。
【請求項8】
三次元測量機と、建設機械とを有する掘削システムであって、
前記三次元測量機は、
自己の三次元絶対位置を測定する手段と、
試験掘により露出した埋設物の三次元相対位置を測定する手段と、
自己の三次元絶対位置の測定データ及び埋設物の三次元相対位置の測定データに基づいて、埋設物の三次元絶対位置データを算出する埋設物三次元絶対位置データ算出手段と、
地上の固定障害物の三次元相対位置を測定する手段と、
自己の三次元絶対位置の測定データ及び地上の固定障害物の三次元相対位置の測定データに基づいて、地上の固定障害物の三次元絶対位置データを算出する地上固定障害物三次元絶対位置データ算出手段と、を有し、
前記建設機械は、
前記埋設物の三次元絶対位置データ、及び前記地上の固定障害物の三次元絶対位置データを入力するデータ入力手段と、
自己の三次元絶対位置を測定する手段と、
自己の作業装置の三次元相対位置を検出する手段と、
自己の三次元絶対位置の測定データ及び自己の作業装置の三次元相対位置の検出データに基づいて、自己の作業装置の三次元絶対位置データを算出する手段と、
前記作業装置の三次元絶対位置データと前記埋設物の三次元絶対位置データとに基づき、前記作業装置と前記埋設物との間の距離を算出する埋設物離間距離算出手段と、
前記作業装置の三次元絶対位置データと前記地上の固定障害物の三次元絶対位置データとに基づき、前記作業装置と前記地上の固定障害物との間の距離を算出する地上固定障害物離間距離算出手段と、
を有する掘削システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械及び掘削システムに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーショベル、バックホウ等の建設機械の安全性を確保するため、超音波センサやマイクロ波センサ等により建設機械周辺に存在する様々な地上障害物(作業者等の移動障害物、電柱、架空線、樹木等の固定障害物)の正確な位置を検出し、建設機械が障害物に接近した際に警報を出力し、接触防止を図る公知技術が存在する(例えば特許文献1、2)。
【0003】
一方、水道管、ガス管、通信ケーブル等の地下埋設物については、地中レーダを使用して探知する公知技術があるものの、精度が低いため、正確な位置の把握や、石や木材との判別が困難なことが多い。
【0004】
すなわち、例えば特許文献3に記載された地下埋設物掘削システムは、地中レーダにより埋設物の三次元絶対位置を測定し、GPS受信機付き建設機械へ送り、GPS受信機付き建設機械は、自己の基準点の三次元絶対位置を測定するとともに、基準点に対する作業装置(バケット等)の三次元相対位置を検出し、作業装置の三次元絶対位置を算出する。そして、作業装置の三次元絶対位置が埋設物の三次元絶対位置に接近したときに警報を出力する。
【0005】
しかし、この埋設物掘削システムでは、埋設物の詳細なデータ(数cm単位の土被り、正確な管径、管種、条数等)を把握することは困難であるため、建設機械により地面を掘削する際に作業装置であるバケットが埋設物に対して接近したことを高精度で検知することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-112977号公報
【特許文献2】特許第2955078公報
【特許文献3】特開2003-56010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、建設機械により地面を掘削する際に、建設機械の作業装置から埋設物及び地上の固定障害物までの距離を高精度で検知できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、試験掘の際に三次元測量機により取得された埋設物の三次元絶対位置データ、及び三次元測量機により取得された地上の固定障害物の三次元絶対位置データを入力するデータ入力手段と、自己の三次元絶対位置を測定する手段と、自己の作業装置の三次元相対位置を検出する手段と、自己の三次元絶対位置の測定データ及び自己の作業装置の三次元相対位置の検出データに基づいて、自己の作業装置の三次元絶対位置データを算出する手段と、前記作業装置の三次元絶対位置データと前記埋設物の三次元絶対位置データとに基づき、前記作業装置と前記埋設物との間の距離を算出する埋設物離間距離算出手段と、前記作業装置の三次元絶対位置データと前記地上の固定障害物の三次元絶対位置データとに基づき、前記作業装置と前記地上の固定障害物との間の距離を算出する地上固定障害物離間距離算出手段と、を有する建設機械である。
また、本発明は、三次元測量機と、建設機械とを有する掘削システムであって、前記三次元測量機は、自己の三次元絶対位置を測定する手段と、試験掘により露出した埋設物の三次元相対位置を測定する手段と、自己の三次元絶対位置の測定データ及び埋設物の三次元相対位置の測定データに基づいて、埋設物の三次元絶対位置データを算出する埋設物三次元絶対位置データ算出手段と、地上の固定障害物の三次元相対位置を測定する手段と、自己の三次元絶対位置の測定データ及び地上の固定障害物の三次元相対位置の測定データに基づいて、地上の固定障害物の三次元絶対位置データを算出する地上固定障害物三次元絶対位置データ算出手段と、を有し、前記建設機械は、前記埋設物の三次元絶対位置データ及び前記地上の固定障害物の三次元絶対位置データを入力するデータ入力手段と、自己の三次元絶対位置を測定する手段と、自己の作業装置の三次元相対位置を検出する手段と、自己の三次元絶対位置の測定データ及び自己の作業装置の三次元相対位置の検出データに基づいて、自己の作業装置の三次元絶対位置データを算出する手段と、前記作業装置の三次元絶対位置データと前記埋設物の三次元絶対位置データとに基づき、前記作業装置と前記埋設物との間の距離を算出する埋設物離間距離算出手段と、前記作業装置の三次元絶対位置データと前記地上の固定障害物の三次元絶対位置データとに基づき、前記作業装置と前記地上の固定障害物との間の距離を算出する地上固定障害物離間距離算出手段と、を有する掘削システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、建設機械により地面を掘削する際に、建設機械の作業装置から埋設物及び地上の固定障害物までの距離を高精度で検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る建設機械による掘削作業の概要について説明するための図である。
図2】本発明の実施形態に係る建設機械の電気的構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る三次元測量機の電気的構成を示すブロック図である。
図4】予め掘削作業の前に実行する作業から掘削作業までの流れの概要を示す図である。
図5】三次元測量機により埋設物の三次元絶対位置データを含む埋設物管理データを取得する作業の概要について説明するための図である。
図6】三次元測量機により埋設物の三次元絶対位置データを含む埋設物管理データを取得する手順を示すフローチャートである。
図7】三次元測量機により地上の固定障害物の三次元絶対位置データを含む地上固定障害物管理データを取得する作業の概要について説明するための図である。
図8】三次元測量機により地上の固定障害物の三次元絶対位置データを含む地上固定障害物管理データを取得する手順を示すフローチャートである。
図9】建設機械の掘削作業時の動作手順を示すフローチャートである。
図10】建設機械の作業装置と埋設物との間の必要離隔距離及び安全離隔距離の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
〈建設機械による掘削作業〉
図1は、本発明の実施形態に係る建設機械による掘削作業の概要について説明するための図である。
【0012】
本発明の実施形態に係る建設機械1は、ICT(Information and Communication Technology)重機であり、複数(ここでは4個)のGPS衛星Saから送信されるGPS信号を受信し、自己の三次元絶対位置、すなわち地球に設定された絶対座標系における三次元位置である緯度、経度、及び高度(標高)を測定することができる。
【0013】
また、建設機械1は、自己の作業装置7のバケット73の三次元相対位置、すなわち建設機械1に設定された相対座標系における三次元位置(方位角、俯仰角、距離)を検出する機能、並びに、測定した自己の三次元絶対位置及び検出した自己のバケット73の三次元相対位置から、自己のバケット73の三次元絶対位置を算出する機能を備えている。
【0014】
また、建設機械1は、掘削作業時に、予め三次元測量機2(図3)により取得した埋設物304,305の三次元絶対位置データを入力し、バケット73の三次元絶対位置が埋設物の三次元絶対位置から所定の安全離隔距離に接近した時、警報を出力する機能を備えている。なお、安全離隔距離については後述する。
【0015】
また、建設機械1は、予め三次元測量機2により取得した図示されていない地上の固定障害物である電柱(電力柱、電信柱)、架空線(低圧横断)、信号機、自動車ナンバー自動読取装置(通称:Nシステム)、家屋、塀、看板、屋外用配電盤、道路にはみ出した樹木等の三次元絶対位置データを入力し、バケット73の三次元絶対位置が地上の固定障害物の三次元絶対位置から所定の安全離隔距離に接近した時に警報を出力する機能を備えている。
【0016】
また、建設機械1は、作業装置7の稼働履歴(例えば、埋設物に対して安全離隔距離まで接近して停止した状態、地上の固定障害物に対して安全離隔距離まで接近して停止した状態)を記録する機能を備えている。
【0017】
以上、建設機械1の機能について説明した。次に建設機械1の概略構造について説明する。建設機械1は、移動自在な下部走行体3と、下部走行体3上に設けられた旋回自在な車体5と、車体5の前部に設けられた俯仰動自在な作業装置7とを有する。
【0018】
下部走行体3は、左右一対のクローラ31を有しており、クローラ31を回転させて進行(前進・後進)する。また、左右のクローラ31の回転速度差により進行方向(左・右)を変えることができる。
【0019】
車体5は、ターンテーブル(旋回サークル:図示せず)を介して、下部走行体3に対して旋回自在に装着されている。車体5は、運転室51と、エンジン収納部52とを有する。
【0020】
作業装置7は、ブーム71と、アーム72と、バケット73とを有する。ブーム71は、その基端部が車体5の前部に俯仰動自在に装着されており、車体5とブーム71との間に装着されたブームシリンダ74の伸縮により俯仰動する。アーム72は、その基端部がブーム71の先端部に俯仰動自在に装着されており、ブーム71とアーム72との間に装着されたアームシリンダ75の伸縮により俯仰動する。バケット73は、その基端部がアーム72の先端部に俯仰動自在に装着されており、アーム72とバケット73の間に装着されたバケットシリンダ76の伸縮により俯仰動する。
【0021】
次に建設機械1に設けられた各種センサについて説明する。建設機械1に設けられたセンサには、建設機械1が掘削作業中の地中の埋設物、周辺空間内に存在する様々な地上障害物、例えば作業者等の移動障害物、及び電柱、架空線、樹木等の固定障害物に接近したことを検出するための接近センサがある。
【0022】
接近センサとしては、ブーム71の左側面に設けられた前方左側探査用レーザスキャナ装置106(図2参照。以下、同じ)、ブーム71の右側面に設けられた前方右側探査用レーザスキャナ装置107、アーム72の左側面に設けられた側方左側探査用レーザスキャナ装置108、アーム72の右側面に設けられた側方右側探査用レーザスキャナ装置109、車体5におけるブーム71の基端付近に設けられたバケット位置検出用レーザスキャナ装置110、及び車体5の後部に設けられた後方探査用レーザスキャナ装置111、作業者311が所持しているID発信手段としてのビーコン発信器から送信されるビーコン信号を受信するビーコン受信機114がある。
【0023】
これらのレーザスキャナ装置は、本願の出願人が先に出願した特願2018-185605号(特開2020-56169号公報)における同名のレーザスキャナ装置と同様の構成及び配置を有するものであり、それぞれの探査範囲(水平方向、垂直方向)に対して数十フレーム/秒の速度で周期的にレーザ光を放射し、その反射光を検出し、スキャン位置毎の反射光の強度データ、及び放射から反射光の検出までの時間差に基づくスキャン位置毎の距離データを取得する機能を有する三次元レーザスキャナ装置である。
【0024】
また、建設機械1はGPS受信機112及び無線通信機113を備えている。GPS受信機112、無線通信機113、及び前述したビーコン受信機114は、それぞれのアンテナが例えば運転室51の屋根上に設けられ、本体が運転室51の内部に設けられている。また、図2を用いて後述する各センサの検出信号の処理や各センサの設定等を行う制御部、周辺空間に存在する物体に接近したことを警報音で報知する音声出力部等が運転室51の内部に設けられている。
【0025】
〈建設機械の電気的構成〉
図2は、本発明の実施形態に係る建設機械の電気的構成を示すブロック図である。
図示のように、建設機械1は、制御部101と、それぞれが制御部101に接続された前述した各種センサとしての前方左側探査用レーザスキャナ装置106、前方右側探査用レーザスキャナ装置107、側方左側探査用レーザスキャナ装置108、側方右側探査用レーザスキャナ装置109、バケット位置検出用レーザスキャナ装置110、後方探査用レーザスキャナ装置111を備えている。
【0026】
また、建設機械1は、記憶部102、操作入力部103、音声出力部104、表示部105を備えている。
【0027】
制御部101は、例えばマイクロプロセッサ及びその周辺回路等で構成され、記憶部102に格納されたプログラムやデータを用いて各部を制御して、建設機械1全体の制御や演算処理等を行う。
【0028】
記憶部102は、ROM等の不揮発性メモリ、フラッシュメモリ等の書換可能な不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリ、及びハードディスクからなる。そして、ROMには建設機械1を動作させるために必要な制御プログラムが格納されている。また、RAMは制御部101が実行中の各プログラムや、それらの実行に必要なデータのワークエリアとなる。また、書換可能な不揮発性メモリには、建設機械1における各種設定データ等が格納される。また、ハードディスクには、建設機械1の稼働履歴情報等が記憶される。
【0029】
操作入力部103は、ボタンやスイッチ、タッチパネルからなり、建設機械1に対する所定の設定を入力するためのユーザI/F(インタフェース)である。音声出力部104はスピーカ及びその駆動回路により構成されており、警報音を含む各種音声を出力する。表示部105は、LCD等で構成されており、建設機械1の動作状態等を表示するユーザI/Fである。
【0030】
また、建設機械1は、GPS受信機112、無線通信機113、及びビーコン受信機114を備えている。GPS受信機112は、GPS衛星SaからのGPS信号を受信し、建設機械1(正確にはGPS受信機112のアンテナ)の緯度、経度、高度(標高)を算出する。
【0031】
無線通信機113は、4G、5G等を使用する携帯電話通信手段、Wi-Fi(登録商標)等を使用する近距離無線通信手段であり、試験掘の際に三次元測量機2が取得した埋設物の三次元絶対位置データを含む埋設物管理データの入力手段、及び地上の固定障害物の三次元絶対位置データを含む地上固定障害物管理データの入力手段として機能する。埋設物管理データ及び地上固定障害物管理データの内容については後述する。ビーコン受信機114は、作業者311が所持しているビーコン発信器から送信されるビーコン信号を受信する。
【0032】
〈三次元測量機の電気的構成〉
図3は、本発明の実施形態に係る三次元測量機の電気的構成を示すブロック図である。図示のように、三次元測量機2は、制御部201と、それぞれが制御部201に接続された記憶部202、操作入力部203、表示部204、距離測定部205、GPS受信機206、無線通信機207を備えている。
【0033】
制御部201は、例えばマイクロプロセッサ及びその周辺回路等で構成され、記憶部202に格納されたプログラムやデータを用いて各部を制御して、三次元測量機2全体の制御や演算処理等を行う。
【0034】
記憶部202は、ROM等の不揮発性メモリ、フラッシュメモリ等の書換可能な不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリからなる。そして、ROMには三次元測量機2を動作させるために必要な制御プログラムが格納されている。また、RAMは制御部201が実行中の各プログラムや、それらの実行に必要なデータのワークエリアとなる。また、書換可能な不揮発性メモリには、三次元測量機2における各種設定データ(例えば、スキャン角度、スキャン速度)等が格納される。
【0035】
操作入力部203は、ボタンやスイッチ、タッチパネルからなり、三次元測量機2に対する所定の設定を入力するためのユーザI/Fである。表示部204は、LCD等で構成されており、三次元測量機2の動作状態等を表示するユーザI/Fである。
【0036】
距離測定部205は、レーザ光の発光部、受光部、それらの水平方向(方位角方向)、垂直方向(俯仰角方向)の駆動部等からなる。本実施形態では、試験掘時に埋設物の三次元相対位置(方位角、俯仰角、距離)を測定し、掘削作業の前に地上の固定障害物の三次元相対位置(方位角、俯仰角、距離)を測定する。
【0037】
GPS受信機206は、GPS衛星SaからのGPS信号を受信し、三次元測量機2(正確にはGPS受信機206のアンテナ)の緯度、経度、高度(標高)を算出する。無線通信機207は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等を使用する近距離無線通信手段であり、図示されていないタブレット端末等の携帯情報通信端末、及び建設機械1の無線通信機113との間でデータ通信が可能である。
【0038】
〈掘削作業の前に実行する作業から掘削作業までの流れ〉
図4は、掘削作業の前に実行する作業から掘削作業までの流れの概要を示す図である。なお、これらの作業の詳細については図5図10を参照して後述する。
【0039】
図示のように、まず掘削予定箇所を試験掘りし、埋設物の三次元絶対位置データを含む埋設物管理データを三次元測量機により取得する(ステップS1)。次に、掘削予定箇所の周辺の地上の固定障害物の三次元絶対位置データを含む地上の固定障害物管理データを三次元測量機により取得する(ステップS2)。以上のステップが、予め掘削作業を実行する前に実行する作業である。
【0040】
次いで、埋設物の三次元絶対位置データを含む埋設物管理データ及び地上の固定障害物の三次元絶対位置データを含む地上固定障害物管理データを建設機械に入力する(ステップS3)。すなわち、ステップS1で取得した埋設物管理データ、及びステップS2で取得した地上固定障害物管理データを建設機械に入力する。次に、埋設物、地上の固定障害物、及び作業者に対する接触防止処理を実行しながら、掘削作業を実行する(ステップS4)。
【0041】
〈埋設物管理データの取得〉
図5は、三次元測量機により埋設物の三次元絶対位置データを含む埋設物管理データを取得する作業の概要について説明するための図であり、図6は、三次元測量機により埋設物の三次元絶対位置データを含む埋設物管理データを取得する手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、図4におけるステップS1の内容である。なお、図5では、便宜上、地上の固定障害物を省略した。以下、これらの図を参照して、埋設物の三次元絶対位置データを含む埋設物管理データを取得する方法について説明する。
【0042】
図5に示されているように、まず既設埋設物を調査するため、地面301を試験掘し、布掘り又はつぼ掘りを行って掘削溝303を形成し、既設埋設物である埋設物304,305を露出させ、三次元測量機2を地面301から掘削溝303内に移動させる。なお、この試験掘は、例えば埋設物304,305と交差する方向に新たに電線ケーブルを埋設する際、埋設物304,305の図面情報に基づいて埋設物304,305の正確な位置などを調査するために行うものである。
【0043】
次に、三次元測量機2は、GPS衛星SaからのGPS信号を受信して、自己の三次元絶対位置を測定する(図6のステップS11)。次いで、三次元測量機2は、埋設物304,305の三次元相対位置(自己位置に対する方位角、俯角、距離)を測定する(ステップS12)。ここで、測定により取得する三次元相対位置のデータは、埋設物の表面の位置に対応する点群座標からなるデータである。
【0044】
次に、三次元測量機2は、ステップS11で取得した自己の三次元絶対位置の測定データと、ステップS12で取得した自己位置に対する埋設物304,305の三次元相対位置の測定データに基づいて、埋設物304,305の三次元絶対位置(緯度、経度、標高)を算出する(ステップS13)。そして、算出された埋設物304,305の三次元絶対位置データに、目視により確認した埋設物304,305の埋設企業、管種、管径、条数を付加した埋設物管理データを記憶部202に保存し(ステップS14)、この図に示されているフローを終了させる。
【0045】
ここで、ステップS3で三次元埋設物304,305の三次元絶対位置を算出する際、三次元測量機2の正確な三次元絶対位置であるGPS受信機206のアンテナの位置と、埋設物304,305の三次元相対位置の測定の基準位置(例えば距離測定部205の位置)とのオフセットを必要に応じて補正する。
【0046】
なお、図5に示されているように、複数の埋設物が存在する場合は、それぞれに対してステップS12,S13,S14を実行する。また、複数の埋設物の位置を測定する際、三次元測量機2の掘削溝303内の設置位置を変えた場合は、ステップS11も実行する。掘削溝303内に存在する全ての埋設物の三次元絶対位置データを含む埋設物管理データの記憶が終了したら、三次元測量機2を掘削溝303内から地面301に戻し、他の場所を試験掘する場合は、その場所へ移動させる。
【0047】
〈地上の固定障害物管理データの取得〉
図7は、三次元測量機により地上の固定障害物の三次元絶対位置データを含む地上固定障害物管理データを取得する作業の概要について説明するための図であり、図8は、三次元測量機により地上の固定障害物の三次元絶対位置データを含む地上固定障害物管理データを取得する手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、図4におけるステップS2の内容である。以下、これらの図を参照して、地上の固定障害物の三次元絶対位置データを取得する方法について説明する。
【0048】
この手順は、三次元測量機2が、前述した埋設物の三次元絶対位置データを取得する手順(図5図6)を実行する前又は後に地面301に設置されている状態で実行される。
【0049】
まず三次元測量機2は、GPS衛星SaからのGPS信号を受信して、自己の三次元絶対位置を測定する(図8のステップS21)。次いで、三次元測量機2は、地上の固定障害物の三次元相対位置(自己位置に対する方位角、俯角、距離)を測定する(ステップS22)。ここでは、地上の固定障害物として、電柱401、信号機402、架空線403、及び架空線(低圧横断)404を図示した。また、掘削溝303、埋設物304,305を点線で図示した。ここで、測定により取得する三次元相対位置のデータは、地上の固定障害物の表面の位置に対応する点群座標からなるデータである。
【0050】
次に、三次元測量機2は、ステップS21で取得した自己の三次元絶対位置の測定データと、ステップS22で取得した自己位置に対する地上の固定障害物の三次元相対位置の測定データに基づいて、地上の固定障害物の三次元絶対位置(緯度、経度、標高)を算出する(ステップS33)。そして、算出された地上の固定障害物の三次元絶対位置データに、目視により確認した地上の固定障害物の名称(東電電力柱、NTT電信柱、信号機、自動車ナンバー自動読取装置等)等を付加した地上固定障害物管理データを記憶部202に保存し、この図に示されているフローを終了させる。
【0051】
〈建設機械による掘削作業〉
図9は建設機械の掘削作業時の動作を示すフローチャートである。このフローチャートは、図4におけるステップS3、S4の内容である。図1図2及び図9を参照して、建設機械の掘削作業時の動作について説明する。なお、建設機械1がこのフローチャートに示されている動作を開始する際、建設機械1が掘削作業開始位置に停止しているものとする。また、建設機械1の記憶部102には予め作成された掘削作業現場周辺のマップが格納されており、建設機械1は掘削作業を行う際、このマップを参照する。
【0052】
まず建設機械1は、埋設物304,305の三次元絶対位置データを含む埋設物管理データ、及び図示されていない地上の固定障害物の三次元絶対位置データを含む地上固定障害物管理データを入力する(ステップS31)。これらのデータは、例えば現場職員312が所持する図示されていないタブレット端末から建設機械1の無線通信機113に入力され、記憶部102に記憶される。
【0053】
次に建設機械1は、掘削作業開始位置における自己の三次元絶対位置を測定して現在時刻と共に記憶する(ステップS32)。より詳しくは、建設機械1はGPS衛星SaからのGPS信号を受信して、三次元絶対位置を測定し、測定データに現在時刻データを付加して記憶部102に記憶する。
【0054】
次いで建設機械1は、バケット73の三次元絶対位置を算出し、現在時刻と共に記憶する(ステップS33)。より詳しくは、バケット位置検出用レーザスキャナ装置110により、バケット73の三次元相対位置(自己位置に対する方位角、俯仰角、距離)を検出し、自己の三次元絶対位置の測定データと、バケット73の三次元相対位置の検出データとに基づき、バケット73の三次元絶対位置を算出し、算出データに現在時刻データを付加して記憶部102に記憶する。すなわち、建設機械1は、後述するステップS36と同じ手順で掘削作業開始位置における自己の三次元絶対位置を測定し、後述するステップS37,S38と同じ手順で掘削作業開始位置におけるバケット73の三次元絶対位置を算出する。
【0055】
次に、建設機械1は必要離隔距離及び安全離隔距離を設定する(ステップS34)。ここで、埋設物、地上の固定障害物それぞれの必要離隔距離及び安全離隔距離の設定の例について説明する。
【0056】
埋設物に対する必要離隔距離とは、埋設企業により機械堀りや、杭打ちが容認されている距離であり、埋設物の種類(ガス管、水道管、電線、通信ケーブル)に応じて、埋設企業により0.5m、0.3m等に指定されることがある。そこで、この距離を設定する。また、埋設物に対する安全離隔距離として、警報の出力からオペレータによる停止操作に基づくバケット73の停止までの遅延時間や、バケット73のガタツキなどを考慮してより安全な掘削を確保するために、掘削作業の施工企業が必要離隔距離に所定距離(例えば10cm)加算した距離を設定する。
【0057】
地上の固定障害物に対する必要離隔距離としては、例えば通常の高圧(6000V)の架空線に対して2.0mが東京電力により定められているので、その距離を設定する。必要離隔距離が定められていない固定障害物に対しては独自に設定する。また、地上の固定障害物に対する安全離隔距離として、埋設物に対する安全離隔距離と同様にバケット73・ブーム71の稼働速度やブレを想定し、掘削作業の施工企業が安全な掘削を確保するため、例えば通常の高圧(6000V)の架空線に対しては必要離隔距離に所定距離(例えば0.5m)加算した距離を設定し、必要離隔距離が定められていない固定障害物に対しては1.0m程度に設定する。
【0058】
ここで、埋設物に対する必要離隔距離及び安全離隔距離について具体例を挙げて説明する。図10は、建設機械の作業装置と埋設物との間の必要離隔距離及び安全離隔距離の一例を示す図である。より詳しくは、この図は埋設物304に対する必要離隔距離及び安全離隔距離を示している。
【0059】
図10に示されているように、断面円環状の管体からなる埋設物304(例えば直径200mmのガス管)の場合、必要離隔距離は、第1離隔距離面304aとして、埋設物304の外周面の外側全周(360°)に亘って断面同心円状に三次元絶対位置データとして設定される。また、安全離隔距離は、第2離隔距離面304bとして、第1離隔距離面304aの外側から所定距離(例えば10cm)の全周(360°)に亘って断面同心円状に三次元絶対位置データとして設定される。すなわち、埋設物304の外周面から第1離隔距離面304aまでの距離が必要離隔距離であり、埋設物304の外周面から第2離隔距離面304bまでの距離が安全離隔距離である。なお、図4に示されている2条3段の管体からなる埋設物305の場合、必要離隔距離及び安全離隔距離は、埋設物305の外周面の外側全周(360°)に亘って三次元絶対位置データとして設定される。
【0060】
図9の説明に戻る。次に建設機械1は掘削作業を開始する(ステップS35)。掘削作業を開始した建設機械1は、GPS受信機112により自己の三次元絶対位置をリアルタイムで測定し(ステップS36)、バケット位置検出用レーザスキャナ装置110により、バケット73の三次元相対位置(自己位置に対する方位角、俯仰角、距離)をリアルタイムで検出し(ステップS37)、バケット73の表面の位置に対応する点群座標からなるデータを生成する。
【0061】
ステップS37を実行した後、埋設物及び地上の固定障害物に対する接触防止処理(ステップS38~S44)を実行する。
【0062】
ステップS38では、ステップS36で取得した自己の三次元絶対位置の測定データと、ステップS37で取得したバケット73の三次元相対位置の検出データとに基づき、制御部101によりバケット73の三次元絶対位置をリアルタイムで算出する(ステップS38)。この三次元絶対位置のデータは、バケット73の稼働時の表面の位置に対応する点群座標からなる絶対位置座標データである。
【0063】
次に、建設機械1は、バケット73の三次元絶対位置と埋設物304,305の三次元絶対位置との間の距離、及びバケット73と地上の固定障害物との間の距離を制御部101によりリアルタイムで算出する(ステップS39)。
【0064】
なお、ステップS38でバケット73の三次元絶対位置を算出する際、建設機械1の正確な三次元絶対位置であるGPS受信機112のアンテナの位置と、バケット73の三次元相対位置の測定の基準位置(例えばバケット位置検出用レーザスキャナ装置110の位置)とのオフセットを必要に応じて補正する。
【0065】
次に、算出距離が安全離隔距離より長いか否かを判定する(ステップS40)。より詳しくは、バケット73の三次元絶対位置と埋設物304,305の三次元絶対位置との間の算出距離が安全離隔距離より長いか否か、及びバケット73の三次元絶対位置と地上の固定障害物との間の算出距離が安全離隔距離より長いか否かを判定する。
【0066】
すなわち、例えば図10の場合、バケット73が掘削方向へ進行しているときに第2離隔距離面304bの外側に位置するか否かを判定する。そして、算出距離が安全離隔距離より長い場合は(ステップS40:YES)、掘削作業を継続し(ステップS41)、ステップS36に戻る。また、算出距離が安全離隔距離以下の場合は(ステップS40:NO)、警報を出力する(ステップS42)。このとき、警報は音声出力部104から警報音として出力することで建設機械1のオペレータ及び周辺の作業者311に報知する。
【0067】
警報によりバケット73が埋設物又は地上の固定障害物に接近したことを把握したオペレータの停止操作に基づきバケット73が停止し(ステップS43)、バケット73が停止した位置を表す三次元絶対位置データに現在時刻データを付加し、埋設物管理データ/地上固定障害物管理データに紐付けたバケット稼働履歴データを保存する(ステップS44)。より詳しくは、バケット73が埋設物に接近して停止した場合は埋設物管理データに紐付け、バケット73が地上の固定障害物に接近して停止した場合は地上固定障害物管理データに紐付けて記憶部102に保存する。
【0068】
掘削作業が終了するまで、ステップS36~S40、及びステップS40の判定結果に基づくステップを実行する。なお、図示を省略したが、ステップS38における算出データに対して、定期的に現在時刻データを付加し、バケット稼働履歴データとし、記憶部102に記憶している。
【0069】
ここで、ステップS44でバケット73の三次元絶対位置データと現在時刻データを埋設部管理データ/地上固定障害物管理データに紐付けたバケット稼働履歴データとして保存することの意義を説明する。
【0070】
例えば埋設物304,305が掘削前に損傷していることがある。本実施形態では、例えば図10において、バケット73の先端が第2離隔距離面304bに到達した時点で警報が出力される。バケット73が停止する位置は、警報を聞いたオペレータによる停止操作までの遅延、制御部101の応答遅延、及びバケット73のガタツキ等により、第2離隔距離面304bの内側に入るものの、第1離隔距離面304aの内側には入らないように、所定距離(必要離隔距離に対する加算距離=第1離隔距離面304aと第2離隔距離面304bとの間隔)が設定されているので、バケット73は埋設物304に対して必要離隔距離を確保した状態で停止する。したがって、停止位置を時刻情報ともに埋設物管理データに紐付けて保存しておけば、埋設物304,305が掘削前に損傷していたことの証拠となる。また、地上の固定障害物についても、信号機、自動車ナンバー自動読取装置、家屋、塀等が掘削作業前に損傷していた場合の証拠となる。
【0071】
以上詳細に説明したように、本発明の実施形態に係る掘削システムによれば、下記(1)~(3)の効果が得られる。
(1)建設機械1は、試験掘により正確に測定された埋設物の三次元絶対位置データを参照し、バケット73の三次元絶対位置が埋設物の三次元絶対位置に接近したときに警報を出力するので、バケット73が埋設物に対して接近したことを高精度でオペレータ及び付近の作業者311に報知することができる。このため、建設機械1のオペレータは、作業中にバケット73が埋設物に接近したことを把握することができる。また、作業者311もバケット73が埋設物に接近した危険な状態であることを把握することができる。また、バケット73が埋設物に接触することによる埋設物の損傷を防止することができる。
(2)建設機械1は、バケット73が地上の固定障害物に接近したことを建設機械1のオペレータや付近の作業者311に報知することができる。このため、建設機械1のオペレータは、作業中にバケット73が地上の固定障害物に接近したことを把握でき、接触による被害を防止することができる。また、作業者311もバケット73が地上の固定障害物に接近した危険な状態であることを把握することができる。
(3)建設機械1は、バケット73の稼働履歴を保存するので、その稼働履歴を埋設物、地上の固定障害物が掘削作業開始前に損傷していた場合の証拠として提示することができる。
【0072】
本発明は、上記実施形態に対して下記(i)~(vii)のような変形が可能である。
(i)建設機械1に入力するデータを埋設物及び地上の固定障害物の三次元絶対位置データとする、すなわち、埋設物の埋設企業、管種、管径、条数及び地上の固定障害物の名称等のデータの入力を省略する。これらのデータを省略しても、バケット73と埋設物、地上の固定障害物との接触を防止することは可能である。
(ii)GPS受信機、三次元レーザスキャナ装置、及びカメラを搭載したUAV(Unmanned Aerial Vehicle)により地上の固定障害物及び作業装置7の三次元絶対位置データと画像データを取得し、建設機械1へ送信する。建設機械1はそれらデータを併用して、固定障害物と作業装置7が接近したことを検出する。これにより、より確実な接近検出が可能となる。
(iii)地下の埋設物や地上の固定障害物に接近し、警報を出力したことを作業場所から離れた場所にいる作業会社の現場職員312の携帯端末(タブレット端末、スマートフォン等)に通知する。こうすることで、地上、地下を問わず、警報が出力された場合、作業場所での危険状態を現場関係者の共通情報とすることができる。作業場所から遠く離れた図示されていない作業会社のオフィスに通知してもよい。
(iv)三次元測量機2が取得した埋設物及び地上の固定障害物の三次元絶対位置データを携帯可能なメモリに書き込み、そのメモリを介して建設機械1へ入力する。
(v)バケット73が埋設物304,305に対して安全離隔距離まで接近した時、及び地上の固定障害物に対して安全離隔距離まで接近した時の作業者311に対する警報を打音警報器の装着されたヘルメット、すなわち例えば建設機械1から無線で送信された制御信号の受信手段と、その制御信号により動作し、ヘルメットを叩くことによる打音を発生するハンマーを装着したヘルメットにより行う。作業装置7の旋回範囲内や建設機械1の走行範囲内に作業者311が接近した時にその警報を行ってもよい。
(vi)バケット73が埋設物304,305に対して安全離隔距離まで接近した時、及び地上の固定障害物に対して安全離隔距離まで接近した時に警報を出力すると共にバケット73を自動的に停止させる。
(vii)建設機械1にAI(人工知能)を実装し、下記a~eのように活用する。
a:基本的に数多くの事例(データ)を収集し、AIへ入力する。
b:その中で建設機械1のオペレータの場合と作業員の場合の「危険度」を「その行動や作業状況」から事前判別する。
c:オペレータの場合、建設機械1の取り扱い(旋回やブーム上げ・下げ)速度や警報が鳴るまで動かす頻度が「多」の場合、危険オペレ-タと認識して「設定した安全離隔距離より遠い位置にて警報を出力する。
d:作業員の場合、建設機械1の旋回範囲内、もしくはぎりぎりへの接近頻度が多い場合、もしくは一定距離があっても建設機械1の背後、または停止していない状態での接近などが頻繁にある場合、危険作業員として、設定した安全離隔距離より遠い位置で警報を出力する。
e:以上の状態を「事前確認(データ収集、学習、判別)」をする事で「突然の危険オペレ-タ、危険作業員」の危険行為をその傾向から事前判別する。
【符号の説明】
【0073】
1…建設機械、2…三次元測量機、7…作業装置、73…バケット、101,201…制御部、102,202…記憶部、104…音声出力部、112,206…GPS受信機、113,207…無線通信機、205…距離測定部、304,305…埋設物、304a…第1離隔距離面、304b…第2離隔距離面、401…電柱、402…信号機、403…架空線、404…架空線(低圧横断)、Sa…GPS衛星。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-02-08
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明は、作業装置としてバケットを備えた建設機械であって、試験掘の際に三次元測量機により取得された埋設管の表面の三次元絶対位置に対応する点群座標からなる埋設管三次元絶対位置データ、及び三次元測量機により取得された地上の固定障害物の表面三次元絶対位置に対応する点群座標からなる地上固定障害物三次元絶対位置データを入力するデータ入力手段と、前記バケットの表面の三次元絶対位置に対応する点群座標からなるバケット三次元絶対位置データを算出する手段と、前記バケット三次元絶対位置データと前記埋設三次元絶対位置データとに基づき、前記バケットの表面と前記埋設管の表面との間の距離を算出する埋設物離間距離算出手段と、前記バケット三次元絶対位置データと前記地上固定障害物三次元絶対位置データとに基づき、前記バケットの表面と前記地上の固定障害物の表面との間の距離を算出する地上固定障害物離間距離算出手段と、を有する建設機械である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置としてバケットを備えた建設機械であって、
試験掘の際に三次元測量機により取得された埋設管の表面の三次元絶対位置に対応する点群座標からなる埋設管三次元絶対位置データ、及び三次元測量機により取得された地上の固定障害物の表面三次元絶対位置に対応する点群座標からなる地上固定障害物三次元絶対位置データを入力するデータ入力手段と、
前記バケットの表面の三次元絶対位置に対応する点群座標からなるバケット三次元絶対位置データを算出する手段と、
前記バケット三次元絶対位置データと前記埋設三次元絶対位置データとに基づき、前記バケットの表面と前記埋設管の表面との間の距離を算出する埋設物離間距離算出手段と、
前記バケット三次元絶対位置データと前記地上固定障害物三次元絶対位置データとに基づき、前記バケットの表面と前記地上の固定障害物の表面との間の距離を算出する地上固定障害物離間距離算出手段と、
を有する建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載された建設機械において、
前記データ入力手段は、前記試験掘の際に取得された前記埋設管の埋設企業、管種、管径及び条数のデータが前記埋設物三次元絶対位置データに付加された埋設物管理データ、並びに前記地上固定障害物三次元絶対位置データとともに取得された前記地上の固定障害物の名称及び所有企業のデータが前記地上固定障害物三次元絶対位置データに付加された地上固定障害物管理データを入力し、
前記埋設物管理データに基づき設定された前記埋設管の表面に対する必要離隔距離及び安全離隔距離の設定値を記憶する埋設物離隔距離設定値記憶手段と、
前記地上固定障害物管理データに基づき設定された前記地上の固定障害物の表面に対する必要離隔距離及び安全離隔距離の設定値を記憶する地上固定障害物離隔距離設定値記憶手段と、
前記埋設物離間距離算出手段による距離の算出値が減少して前記埋設物離隔距離設定値記憶手段に記憶された安全離隔距離になったとき、及び前記地上固定障害物離間距離算出手段による距離の算出値が前記地上固定障害物離隔距離設定値記憶手段に記憶された安全離隔距離になったとき警報を出力する手段と、
を有する建設機械(ただし、埋設管の表面に対する必要離隔距離とは、埋設企業により機械掘りや、杭打ちが容認されている距離であり、埋設管の表面に対する安全離隔距離とは、より安全な掘削を確保するために、掘削作業の施工企業が埋設管の表面に対する必要離隔距離に所定距離加算した距離であり、地上の固定障害物の表面に対する必要離隔距離とは、地上の固定障害物の所有企業により定められている距離であり、地上の固定障害物に対する安全離隔距離とは、より安全な掘削を確保するために、掘削作業の施工企業が地上の固定障害物に対する必要離隔距離に所定距離加算した距離である。)。
【請求項3】
請求項2に記載された建設機械において、
前記埋設物離間距離算出手段による距離の算出値が減少して前記埋設物離隔距離設定値記憶手段に記憶された安全離隔距離になったとき、及び前記地上固定障害物離間距離算出手段による距離の算出値が減少して前記地上固定障害物離隔距離設定値記憶手段に記憶された安全離隔距離になったとき、前記バケットを停止させる手段を有する建設機械。
【請求項4】
請求項2又は3に記載された建設機械において、
前記バケット三次元絶対位置データを含む稼働履歴データを保存する保存手段を有する建設機械。
【請求項5】
請求項4に記載された建設機械において、
前記稼働履歴データは、前記バケットの表面が前記埋設管の表面から前記安全離隔距離以内の位置で停止した時の履歴、及び前記バケットの表面が前記地上の固定障害物の表面から前記安全離隔距離以内の位置で停止した時の履歴を含む建設機械。
【請求項6】
請求項4に記載された建設機械において、
前記保存手段は、前記稼働履歴データを前記埋設物管理データ、及び前記上固定障害物管理データに紐付けて保存する建設機械。