(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059737
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】内装部材、および、内装部材を備えた車両
(51)【国際特許分類】
B60R 13/08 20060101AFI20230420BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20230420BHJP
B62D 25/04 20060101ALI20230420BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B60R13/08
B60R13/02 B
B62D25/04 E
G10K11/16 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169920
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】丹下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】杉本 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】笹澤 和也
【テーマコード(参考)】
3D023
3D203
5D061
【Fターム(参考)】
3D023BA02
3D023BB07
3D023BB30
3D023BC01
3D023BD18
3D023BE19
3D203BB57
3D203CB09
3D203CB10
3D203DA18
3D203DA22
3D203DA66
5D061BB02
5D061BB12
(57)【要約】
【課題】車両の室内に伝わる騒音を十分に低減することができる新規の内装部材を提供する。
【解決手段】内装部材は、車両の室内の気体を外部に排出するベント孔を有するボデー部材に取り付け可能である。内装部材は、立壁と、連通孔と、を備える。立壁は、ボデー部材と対向する対向面からボデー部材に向かって立設するとともに、ボデー部材に当接して、対向面とボデー部材との間に空間を形成する。連通孔は、対向面に設けられ、空間と車両の室内とを連通する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室内の気体を外部に排出するベント孔を有するボデー部材に取り付け可能な内装部材であって、
前記ボデー部材と対向する対向面から前記ボデー部材に向かって立設するとともに、前記対向面と前記ボデー部材との間に閉空間を形成する立壁と、
前記対向面に設けられ、前記空間と前記車両の室内とを連通する連通孔と、
を備える、内装部材。
【請求項2】
前記立壁は、前記車両の上下方向に延びる第1立壁および第2立壁と、を含み、
前記第1立壁と前記第2立壁は、前記連通孔を挟んで配置される、
請求項1に記載の内装部材。
【請求項3】
前記連通孔は、前記対向面の下部に配置されるとともに、前記立壁と前記連通孔は前記空間の縁部を形成する、
請求項1または2に記載の内装部材。
【請求項4】
前記連通孔は、前記ベント孔に対向して配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の内装部材。
【請求項5】
前記連通孔において前記気体が流通する面積である流通面積は、ベント孔において前記気体が流通する面積である流通面積と同じ、もしくはより大きい
請求項1から4のいずれか1項に記載の内装部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の内装部材を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内装部材、および、内装部材を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベント孔を有するボデー部材に取り付けられ、ベント孔を覆う内装部材が知られている。ベント孔は、ボデー部材の外部と車室内を貫通し、車両の室内の気体を外部に排出する。
【0003】
このような内装部材では、気体が流通するベント孔の周辺に吸音材を配置している(例えば特許文献1参照)。特許文献1の内装部材では、車両の外部からベント孔を介して伝わる騒音を吸音材が吸収し、車両の室内に伝わる騒音を低減している。
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような内装部材では、車両の外部からベント孔を介して伝わる騒音を、吸音材が吸収する。このため、配置される吸音材の大きさによって、吸収可能な騒音の大きさが制限される場合がある。この結果、車両の外部からベント孔を介して伝わる騒音を十分に低減できないおそれがある。
【0006】
本開示の課題は、車両の室内に伝わる騒音を低減しやすい新規の内装部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る内装部材は、車両の室内の気体を外部に排出するベント孔を有するボデー部材に取り付け可能である。内装部材は、立壁と、連通孔と、を備える。立壁は、ボデー部材と対向する対向面からボデー部材に向かって立設するとともに、ボデー部材に当接して、対向面とボデー部材との間に空間を形成する。連通孔は、対向面に設けられ、空間と車両の室内とを連通する。
【0008】
この内装部材によれば、内装部材の対向面とボデー部材との間に立壁で仕切られた空間が形成される。これにより、車両の外部からベント孔を介して伝わる騒音を、空間の内部で低減することができる。この結果、車両の室内に伝わる騒音を低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、車両の室内に伝わる騒音を低減しやすい新規の内装部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本開示の一実施形態における内装部材の概略図。
【
図4】本開示の一実施形態における内装部材の側面図。
【
図5】本開示の他の実施形態における内装部材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について、図を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態における車両Cを示す概略図である。
図2は、本実施形態における内装部材1がボデー部材Bに取り付けられた状態を示す概略図である。
図1から
図4に示す上下方向Gは、必ずしも重力方向と一致しない。
【0012】
図1、
図2および
図3に示すように、本実施形態の内装部材1は、車両Cのボデー部材Bに取り付け可能な樹脂製の成形部材である。車両Cのボデー部材Bは、ベントダクト(ベント孔の一例)Viを有する。ベントダクトViは、車両Cの室内Rの気体を外部に排出する。本実施形態では、ボデー部材Bは、車両Cの後方側部の車体を構成する。ベントダクトViは、ボデー部材Bの幅方向Wの内側と、外側、すなわち車両Cの室内Rと外部とを連通する。ベントダクトViは、開閉軸Voを中心に外側に向けて回転する扉(例えば、ゴム製のバタフライ弁)Vdを含み、室内Rの内圧と車両C外部の大気圧との差によって開閉する。ベントダクトViは、図示しない車両Cのドアの開閉等により、室内Rの内圧が車両C外部の大気圧より大きくなると扉Vdが開放されて、室内Rの気体を車両Cの外部に排出する。一方で、特にベントダクトViが開放状態の場合に、車両Cの外部の環境音や車両Cの排気音等が、ベントダクトViを介して室内Rに伝わりやすい。
【0013】
内装部材1は、立壁2と、連通孔4と、対向面6と、を備える。本実施形態の内装部材1は、車両Cの室内Rにおいて、後部側面にとりつけられるクォータートリムである。内装部材1は、所定の厚みを有して成形される樹脂製の成形部材であり、車両Cのボデー部材Bに取り付けられて、室内Rの意匠面を構成する。内装部材1の室内Rと反対側の表面とボデー部材Bの表面とは、離間して配置される。従って、内装部材1とボデー部材Bとの間には、取付位置を除いて空間が形成される。
【0014】
本実施形態の内装部材1は、車両Cの室内Rの側面に配置される。内装部材1は、車幅方向Wに拡がるボデー部材Bの床部分B1と、上下方向Gに拡がるボデー部材Bの側壁部分B2と、にまたがって配置される。内装部材1の下部は、対向面6の下端に形成されたフランジ8が床部分B1に当接した状態で固定される。また、内装部材1の上部は、ボデー部材Bよりも室内R側に配置されるインナーパネルIと嵌合し、固定される。内装部材1の取付位置および形状は、ボデー部材Bの形状および室内Rのデザインによって種々に変更可能である。また、内装部材1の固定は、ボルト、クリップ、またはタッピングスクリュー等によって固定されればよい。
【0015】
図3は、本実施形態における
図2のA-A断面を示す断面図である。
図2および
図3に示すように、立壁2は、ボデー部材Bの室内R側の表面と対向する対向面6からボデー部材Bに向かって立設する。本実施形態では、立壁2は、車両Cの車幅方向Wの外側へ向かって立設するリブである。さらに、立壁2は、内装部材1がボデー部材Bに取り付けられた状態で、端部20がボデー部材Bに当接する。これにより、立壁2は、対向面6とボデー部材Bとの間に空間Sを形成する。本実施形態では、立壁2は、内装部材1に一体に形成され、対向面6からボデー部材Bに向かって概ね垂直に立設し、端部20がボデー部材Bに対して面接触する。また、立壁2がボデー部材Bに向かって立設する長さは、対向面6とボデー部材Bとの間の距離によって変更されてもよい。
【0016】
図4は、車幅方向Wにおける立壁2および連通孔4の形状を示した概略図である。
図2、
図3および
図4に示すように、立壁2は、第1立壁21と、第2立壁22と、第3立壁23と、を含む。第1立壁21と第2立壁22は、後述する連通孔4を挟んで配置される一対の立壁である。本実施形態では、第1立壁21および第2立壁22は、内装部材1の下部から上下方向Gに延設される。第3立壁23は、車両Cの前後方向Fに延設され、第1立壁21と第2立壁22とを接続する。すなわち、本実施形態では、立壁2は、第1立壁21、第2立壁22、および第3立壁23によって対向面6に形成される、概ねコの字形状の立壁である。
【0017】
連通孔4は、対向面6の下部に設けられ、空間Sと車両Cの室内Rとを連通する。本実施形態では、連通孔4は、図示しないルーバーを含んで形成され、前後方向Fに延びる概ね長方形の形状である。連通孔4の形状は、内装部材1や室内Rの意匠により、種々に変更されてもよい。連通孔4は、内装部材1の下方の端部付近に配置される。
【0018】
また、本実施形態の内装部材1は、連通孔4の外周縁にボデー部材Bに向かって立設する開口壁4aを備える。開口壁4aは、立壁2とは異なりボデー部材Bには当接しない位置まで延びて形成され、連通孔4の前後上下に立設して連通孔4を囲う。
【0019】
連通孔4の下側の端部は、上下方向Gにおいて、第1立壁21および第2立壁22の下端と同じ高さ、または、より上方に配置される。第1立壁21および第2立壁22の下端は、連通孔4の下縁よりも下方に配置され、少なくともフランジ8と同じ高さまで延び、ボデー部材Bの床部分B1に当接する。
図2に示すように、連通孔4は、ベントダクトViに対向して配置される。すなわち、連通孔4とベントダクトViとは、車両Cの車幅方向Wにおいてオーバーラップして配置される。本実施形態では、連通孔4とベントダクトViとは、車両Cの車幅方向Wにおいて、概ね重複して配置される。なお連通孔4の下側端部が、上下方向Gにおいて、第1立壁21および第2立壁22の下端と同じ高さであってもよい。この場合、開口壁4aのうち下側に位置する壁は設けなくてもよい。この場合は、床部分B1が、連通孔4の下側に位置する開口壁4aとして機能する。
【0020】
このように形成された内装部材1は、立壁2、床部分B1、およびボデー部材Bによって囲まれた領域に空間Sを形成する。空間Sは、ベントダクトViが閉じた状態では、連通孔4を除く部分が閉じた空間となる。空間Sは、ベントダクトViが閉状態の場合は、連通孔4以外が立壁2および床部分B1によって閉じた状態になっており、ベントダクトViと連通孔4との間に所定の容積の空間Sが形成される。空間Sは、連通孔4を介して室内Rと連通する。空間Sは、ベントダクトViが開状態の場合は、ベントダクトViを介して車両Cの外部と連通するとともに、連通孔4を介して室内Rと連通する。言い換えると、空間Sは、車両Cの室内Rおよび外部と連通する通路が下方に設けられ、通路の上方に延びるとともに通路の周囲を閉じた空間で囲む膨張室(チャンバー)として機能する。すなわち、内装部材1は、立壁2と、ボデー部材Bと、床部分B1とによって空間Sを形成することで、意匠面と反対側にベントダクトViと連通孔4とを連通する通路と、この通路と一体で形成される拡張型の消音器を形成している。なお、連通孔4には、より高い消音効果を得るために、本実施形態のように開口壁4aを設けてもよい。
【0021】
これにより、車両Cの外部からベントダクトViを通じて伝播した騒音は、ベントダクトViから空間Sを介して連通孔4へと伝わる。このとき、ベントダクトViから伝わった騒音は、空間Sに入り込み立壁2で反射する。反射した騒音は、空間Sに入る騒音と干渉し減衰する。このため、空間Sに入り込んだ騒音が連通孔4に到達するまでに減衰する。この結果、内装部材1は、車両Cの室内Rに伝わる騒音を低減することができる。本実施形態では、立壁2で反射した騒音がさらに開口壁4aにおいても反射する。これによって、消音効果がさらに高くなる。なお、空間Sの容積および後述する連通孔4の流通面積C2は、騒音の周波数に基づいて定めてもよい。
【0022】
さらに、本実施形態では連通孔4において気体が流通する面積である流通面積C1は、ベントダクトViにおいて気体が流通する面積である流通面積C2と同じ、もしくは、より大きい。これにより、車両Cの室内Rと外部との間の気体の流れを阻害することなく、騒音を低減することができる。
【0023】
以上説明した通り、本開示によれば、車両Cの室内Rに伝わる騒音を低減しやすい新規の内装部材1を提供することができる。
【0024】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0025】
(a)上記実施形態では、内装部材1は車両Cのクォータートリムであったが、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、内装部材1が取り付けられる位置は、車両Cの室内Rの内部で種々に変更可能である。例えば、内装部材1は、車両Cの荷室の意匠を構成する内装部材であってもよい。ベントダクトViは、ボデー部材Bと、車両Cの後部に取り付けられる樹脂製のバンパーとの間の空間に開口して、車両Cの外部と連通してもよい。
【0026】
(b)上記実施形態では、立壁2は、内装部材1の対向面6からボデー部材Bに向かって連続して立設されたが、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、
図5に示すように、立壁2のボデー部材B側の端部は、発泡材料等で形成された成形部材24が取り付けられて、ボデー部材Bに当接してもよい。
【0027】
(c)上記実施形態では、立壁2は、第1立壁21から第3立壁23によって形成される概ねコの字形状であったが、本開示はこれに限定されない。すなわち、立壁2は、連通孔4を囲んで、内装部材1とボデー部材Bとの間に形成される空間を区画してもよい。例えば、連通孔4の下に車両Cの前後方向Fに延設され、第1立壁21および第2立壁22に接続する第4立壁を設け、連通孔4を囲うようにしてもよい。
【0028】
(d)上記実施形態では、空間Sは、立壁2と床部分B1とで仕切られた概ね直方体の形状の空間であったが、本開示はこれに限定されない。すなわち、空間Sは、立壁2とボデー部材Bによって閉じた空間に区画されればよく、その形状は、内装部材1およびボデー部材Bの形状によって種々に変更可能である。
【0029】
(e)上記実施形態では、連通孔4の外周縁に開口壁4aを設けたが、開口壁4aは無くてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 :内装部材
2 :立壁
4 :連通孔
6 :対向面
21 :第1立壁
22 :第2立壁
B :ボデー部材
C :車両
C1 :流通面積
C2 :流通面積
R :室内
S :空間
Vi :ベント孔