IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2023-59753姿勢自動評価装置、姿勢自動評価方法及び姿勢自動評価プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059753
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】姿勢自動評価装置、姿勢自動評価方法及び姿勢自動評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20230420BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20230420BHJP
【FI】
G06T7/00 660B
G06T7/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169943
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】510222006
【氏名又は名称】株式会社バイオネット研究所
(71)【出願人】
【識別番号】591055975
【氏名又は名称】水戸工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】新川 隆朗
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正隆
(72)【発明者】
【氏名】津田 美幸
(72)【発明者】
【氏名】羽尻 皓一
(72)【発明者】
【氏名】増渕 陽一
(72)【発明者】
【氏名】中井 正一郎
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096BA05
5L096DA04
5L096FA12
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】動体物の姿勢の負荷を非接触で定時間ごとに定量的に計測し、その負荷を評価する、姿勢自動評価装置、姿勢自動評価方法及び姿勢自動評価プログラムを提供する。
【解決手段】動体物MOについての姿勢自動評価装置1は、計測部10と、評価部20と、評価結果表示部20とを備え、計測部10は、動体物を撮影する画像取得部11と、画像取得部11による撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、動体物までの距離を計測する距離取得部12とを備え、評価部20は、撮影された画像から任意の特徴点を抽出する特徴点(関節)位置判断部21と、抽出された特徴点までの空間距離を計算する特徴点(関節)距離計算部22と、動体物の骨格を再構成する3次元骨格再構成部23と、動体物の姿勢を評価する姿勢評価部24とを備え、評価結果表示部30は、評価結果を数値、文字、音及び3次元骨格図の少なくとも1つをもって表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動体物についての姿勢自動評価装置であって、
前記動体物を計測する計測部と、
前記計測部の計測結果を評価する評価部と、
前記評価部の評価結果を表示する評価結果表示部と、を備え、
前記計測部は、
前記動体物を撮影する画像取得部と、
前記画像取得部による撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、前記動体物までの距離を計測する距離取得部と、を備え、
前記評価部は、
撮影された前記画像から任意の特徴点を抽出する特徴点位置判断部と、
抽出された前記特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算部と、
前記動体物の骨格を再構成する3次元骨格再構成部と、
前記動体物の姿勢を評価する姿勢評価部と、を備え、
前記評価結果表示部は、前記評価結果を数値情報、文字情報、音情報及び3次元骨格図の少なくとも1つをもって表示する、
ことを特徴とする姿勢自動評価装置。
【請求項2】
前記画像取得部は、前記動体物について連続する動画像を撮影し、
前記距離取得部は、撮影された前記動画像の各フレーム画像に同期し、撮影された前記フレーム画像と重複する視野をもち、前記動体物までの距離を計測する、
ことを特徴とする請求項1に記載の姿勢自動評価装置。
【請求項3】
前記画像取得部は、時間的に同期して、前記動体物について異なった視野からの複数の画像を撮影し、
前記距離取得部は、撮影と時間的に同期し、撮影された前記複数の画像と重複する視野をもち、前記動体物までの異なる視点からの複数の距離を計測する、
ことを特徴とする請求項1に記載の姿勢自動評価装置。
【請求項4】
前記距離取得部は、距離を計測する距離カメラを備えるとき、撮影対象の空間に関して、前記距離カメラの仰角について、半自動又は全自動で認識する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の姿勢自動評価装置。
【請求項5】
前記画像取得部は、前記動体物について異なった視野からの複数の画像を撮影し、
前記距離計測部は、撮影された前記複数の画像から前記動体物までの距離を計測をする、
ことを特徴とする請求項1に記載の姿勢自動評価装置。
【請求項6】
動体物についての姿勢自動評価方法であって、
前記動体物を計測する計測ステップと、
前記計測ステップの計測結果を評価する評価ステップと、
前記評価ステップの評価結果を表示する評価結果表示ステップと、を備え、
前記計測ステップは、
前記動体物を撮影する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップによる撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、前記動体物までの距離を計測する距離取得ステップと、を備え、
前記評価ステップは、
撮影された前記画像から任意の特徴点を抽出する特徴点位置判断ステップと、
抽出された前記特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算ステップと、
前記動体物の骨格を再構成する3次元骨格再構成ステップと、
前記動体物の姿勢を評価する姿勢評価ステップと、を備え、
前記評価結果表示ステップは、前記評価結果を数値情報、文字情報、音情報及び3次元骨格図の少なくとも1つをもって表示する、
ことを特徴とする姿勢自動評価方法。
【請求項7】
動体物についての姿勢自動評価プログラムであって、
コンピュータに、
前記動体物を計測する計測処理と、
前記計測処理の計測結果を評価する評価処理と、
前記評価処理の評価結果を表示する評価結果表示処理と、を実行させ、
前記計測処理は、
前記動体物を撮影する画像取得処理と、
前記画像取得処理による撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、前記動体物までの距離を計測する距離取得処理と、を備え、
前記評価処理は、
撮影された前記画像から任意の特徴点を抽出する特徴点位置判断処理と、
抽出された前記特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算処理と、
前記動体物の骨格を再構成する3次元骨格再構成処理と、
前記動体物の姿勢を評価する姿勢評価処理と、を備え、
前記評価結果表示処理は、前記評価結果を数値情報、文字情報、音情報及び3次元骨格図の少なくとも1つをもって表示する、
ことを特徴とする姿勢自動評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動体物についての姿勢自動評価装置、姿勢自動評価方法及び姿勢自動評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造業における製造現場や手作業による建築現場などでは、作業者の安全管理や作業負担の軽減のために様々な取り組みがなされている。その業務改善の基礎データとしては、作業者の姿勢の定期的な目視確認等が計測者によって行われているが、長時間にわたる計測の困難さや、人の判断による恣意性の問題、作業者が遮蔽物に隠れる等の問題がある。このような状況に対応するため、例えば、製造現場や建築現場における作業者の姿勢や位置を把握して安全管理を行うための安全管理装置(特許文献1参照)や建設機械(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-005229号公報
【特許文献2】特開2020-183623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、計測者による作業者の目視確認等では、長時間にわたる場合の計測の不正確性や属人的な判断となる可能性を排除することが困難であり、先行技術の提案では、作業者である人体以外の例えば動物やロボットなどを含む動体物一般や、それぞれの動体物の様々な行動態様や行動環境に対応して、動体物の姿勢や位置を把握して評価することに必ずしも十分ではないという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、動体物の姿勢の負荷を非接触で定時間ごとに定量的に計測し、その負荷を評価する、姿勢自動評価装置、姿勢自動評価方法及び姿勢自動評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために本発明の第1の観点は、動体物についての姿勢自動評価装置であって、前記動体物を計測する計測部と、前記計測部の計測結果を評価する評価部と、前記評価部の評価結果を表示する評価結果表示部とを備え、前記計測部は、前記動体物を撮影する画像取得部と、前記画像取得部による撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、前記動体物までの距離を計測する距離取得部とを備え、前記評価部は、撮影された前記画像から任意の特徴点を抽出する特徴点位置判断部と、抽出された前記特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算部と、前記動体物の骨格を再構成する3次元骨格再構成部と、前記動体物の姿勢を評価する姿勢評価部とを備え、前記評価結果表示部は、前記評価結果を数値情報、文字情報、音情報及び3次元骨格図の少なくとも1つをもって表示する、ことを特徴とする。
【0007】
上記した課題を解決するために本発明の第2の観点は、動体物についての姿勢自動評価方法であって、前記動体物を計測する計測ステップと、前記計測ステップの計測結果を評価する評価ステップと、前記評価ステップの評価結果を表示する評価結果表示ステップとを備え、前記計測ステップは、前記動体物を撮影する画像取得ステップと、前記画像取得ステップによる撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、前記動体物までの距離を計測する距離取得ステップとを備え、前記評価ステップは、撮影された前記画像から任意の特徴点を抽出する特徴点位置判断ステップと、抽出された前記特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算ステップと、前記動体物の骨格を再構成する3次元骨格再構成ステップと、前記動体物の姿勢を評価する姿勢評価ステップとを備え、前記評価結果表示ステップは、前記評価結果を数値情報、文字情報、音情報及び3次元骨格図の少なくとも1つをもって表示する、ことを特徴とする。
【0008】
上記した課題を解決するために本発明の第3の観点は、動体物についての姿勢自動評価プログラムであって、コンピュータに、前記動体物を計測する計測処理と、前記計測処理の計測結果を評価する評価処理と、前記評価処理の評価結果を表示する評価結果表示処理とを実行させ、前記計測処理は、前記動体物を撮影する画像取得処理と、前記画像取得処理による撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、前記動体物までの距離を計測する距離取得処理とを備え、前記評価処理は、撮影された前記画像から任意の特徴点を抽出する特徴点位置判断処理と、抽出された前記特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算処理と、前記動体物の骨格を再構成する3次元骨格再構成処理と、前記動体物の姿勢を評価する姿勢評価処理とを備え、前記評価結果表示処理は、前記評価結果を数値情報、文字情報、音情報及び3次元骨格図の少なくとも1つをもって表示する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、動体物の姿勢の負荷を非接触で定時間ごとに定量的に計測し、その負荷を評価する、姿勢自動評価装置、姿勢自動評価方法及び姿勢自動評価プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る姿勢自動評価装置の全体構成(計測部、評価部、評価結果表示部)を説明する図である。
図2】計測部を説明する図(その1)である。
図3】計測部を説明する図(その2)である。
図4】計測部を説明する図(その3)である。
図5】評価部のうち特徴点(関節)位置判断部を説明する図である。
図6】特徴点の部位の例を説明する図である。
図7】ステレオカメラを用いた従来のテンプレート・マッチング法の問題点を説明する図(その1)である。
図8】ステレオカメラを用いた従来のテンプレート・マッチング法の問題点を説明する図(その2)である。
図9】ステレオカメラを用いた従来のテンプレート・マッチング法の問題点(を説明する図その3)である。
図10】ステレオカメラを用いた従来のテンプレート・マッチング法の問題点を説明する図(その4)である。
図11】ステレオカメラを用いた従来のテンプレート・マッチング法の問題点を説明する図(その5)である。
図12】特徴点(関節)位置距離計算部のアルゴリズムを説明する図である。
図13】評価部のうち特徴点(関節)距離計算部を説明する図である。
図14】評価部のうち3次元骨格再構成部を説明する図である。
図15】評価部のうち姿勢評価部を説明する図である。
図16】姿勢評価の一例としてOWAS法を説明する図(その1)である。
図17】姿勢評価の一例としてOWAS法を説明する図(その2)である。
図18】姿勢評価部のアルゴリズムを説明する図(その1)である。
図19】姿勢評価部のアルゴリズムを説明する図(その2)である。
図20】姿勢評価部のアルゴリズムを説明する図(その3)である。
図21】姿勢評価部のアルゴリズムを説明する図(その4)である。
図22】姿勢評価部のアルゴリズムを説明する図(その5)である。
図23】姿勢評価部のアルゴリズムを説明する図(その6)である。
図24】姿勢評価部のアルゴリズムを説明する図(その7)である。
図25】評価結果表示部による表示を説明する図(その1)である。
図26】評価結果表示部による表示を説明する図(その2)である。
図27】評価結果表示部による表示を説明する図(その3)である。
図28】評価結果表示部による表示を説明する図(その4)である。
図29】評価結果表示部による表示を説明する図(その5)である。
図30】評価結果表示部による表示を説明する図(その6)である。
図31】評価結果表示部による表示を説明する図(その7)である。
図32】評価結果表示部による表示を説明する図(その8)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態について、図1から図32に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0012】
[姿勢自動評価装置の全体構成]
まず、図1により、本実施形態に係る姿勢自動評価装置1の全体構成について説明する。なお、本明細書では、姿勢自動評価装置1を構成する各部に対し、それぞれが実行する動作を冠した個別の名を付している。
【0013】
姿勢自動評価装置1は、人体、動物及びロボットの少なくとも1つの動体物MOを対象として姿勢を評価する。図1ほかでは、動体物MOの例として人体を想定して図示しているが、人体に限られるものではないことに留意されたい。図1に示すように、動体物MOについての姿勢自動評価装置1は、動体物MOを計測する計測部10と、計測部10による計測結果を評価する評価部20と、評価部20による評価結果を表示する評価結果表示部30とを備える。
【0014】
計測部10は、動体物MOを撮影する画像取得部11と、画像取得部11による撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、動体物MOまでの距離を計測する距離取得部12とを備える。評価部20は、撮影された画像から任意の特徴点(例えば、関節位置)を抽出する特徴点位置判断部(関節位置判断部)21と、抽出された特徴点(例えば、関節位置)までの空間距離を計算する特徴点距離計算部(関節距離計算部)22と、動体物MOの骨格を再構成する3次元骨格再構成部23と、動体物MOの姿勢を評価する姿勢評価部24とを備える。評価結果表示部30は、評価結果を数値情報、文字情報、音情報及び3次元骨格図の少なくとも1つをもって表示する。以下、各部について、詳しく説明する。
【0015】
[計測部]
次に、計測部10の例について、図2から図4を参照して説明する。図2は計測部10の例1を、図3は計測部10の例2を、図4は計測部10の例3を、それぞれ示している。
【0016】
図2に示すように、例1は、画像取得部11として空間位置があらかじめ既知の複数の光学カメラ11a1,11a2,11a3を同期するように設け、これらによって動体物MOを同時に撮影して取得された複数の画像P1,P2,P3について、距離取得部12において同一の動体物MOの画像上の視差から距離を測定する方法を用いて、距離を計算して距離情報Dを取得する例である。
【0017】
図3に示すように、例2は、画像取得部11として空間位置があらかじめ既知の光学カメラ11aを、距離取得部12として空間位置があらかじめ既知の距離カメラ12a(TOF<Time-of-Flight>カメラ、パターン投影カメラ、レーザ距離計、レーザスキャナ、ライダー<LiDAR:Light Detection and Ranging>等の距離情報を直接計測できるデバイスであり、以下、「距離カメラ」と称する)をそれぞれ同期するように設け、動体物MOを同時に撮影することにより、画像Pと距離情報Dを別々に取得する例である。なお、この場合、光学カメラ11aと距離カメラ12aは、必ずしも同一視野範囲となっている必要はないが、それぞれの視野内に計測対象物である動体物MOが含まれなければならない。
【0018】
図4に示すように、例3は、計測部10の例1と例2を組み合わせた例である。図4では、複数の光学カメラ11a1,11a2,11a3は画像取得部11として広域の複数の画像P1,P2,P3を取得する手段として用い、複数の距離カメラ12a1,12a2は距離取得部12としてそれぞれ特定の視野範囲の距離情報Dを取得する手段として用いられている。
【0019】
図4に示した例3は、複数の光学カメラ11a1,11a2,11a3により得られた複数の画像P1,P2,P3上の動体物MOの視差を基に広域での動体物MOまでの距離情報Dを推定するとともに、距離カメラ12a1,12a2で捉えられている視野領域については、推定された距離情報Dを距離カメラ12a1,12a2で得られた距離情報Dで補足する態様に容易に拡張できる。
【0020】
画像取得部11は、上記の各例によって取得された画像P1又はPを評価部20の特徴点位置判断部(関節位置判断部)21へ、距離取得部12は、同じく取得された距離情報Dを評価部20の特徴点位置計算部(関節位置計算部)22へ、それぞれ出力する。
【0021】
[評価部]
[[関節位置判断部]]
次に、評価部20の特徴点位置判断部(関節位置判断部)21の例について、図5及び図6を参照して説明する。特徴点は関節に限られないが、以下では、特徴点を関節とした場合を想定して、関節位置判断部21として説明する。図5に示すように、関節位置判断部21は、被検体である動体物MOの動画像(作業者であれば人体の動画像)について、あらかじめ機械学習で学習した学習済の関節位置判断用重み付けデータ21aを備えており、これを用いて、計測部10の画像取得部11から入力された画像P1又はPにおいて、関節部位に相当する画像の存否を推定し、関節位置判断21bを行う。機械学習の方法については様々な方法が提唱されているが、特定の方法に限定する必要はない。動画像の1フレームを入力し、例えば、図5の下段に例示するように、図6で示す人体の特徴点としての関節部位(ここでは、右肩SR、左肩SL、右肘ER)の光学カメラ11a1又は11a上の関節位置2次元座標TwDを抽出できればよい。
【0022】
ここで、図6は、動体物MOが人体である場合について、特徴点として関節部位及び線分を含む各部位を次のように例示している。すなわち、HD:頭部、S:肩幅、両肩:SL/SR、両肩の中点:S0、B:背部、W:腰幅、両腰:WL/WR、両腰の中点W0、両上腕:ArmL1/ArmR1、両肘:EL/ER、両前腕:ArmL2/ArmR2、両手首:HL/HR、両大腿:ThiL/ThiR、両膝:KL/KR、両下腿:LlimL/LlimR、両足首:AnL/AnR、である。
【0023】
なお、前述したとおり、特徴点は、図6に示した関節部位を含む各部位に限られるものではない。動体物MOの種類によって、あるいは動体物MOが人体でも評価すべき基本的な姿勢の違いによって、任意に設定してよい。例えば、動体物MOが動物の場合には、犬であれば耳や尾を特徴点としてもよく、ロボットの場合には、人型ではなく基台に対して作業部が回動するものであれば作業部の基準点を特徴点としてもよい。また、横臥している状態が通常の人体の場合には、寝返り姿勢を評価するために頭部HDや背部Bについても左右に分けて特徴点としてもよい。これらの意味において、関節位置判断部21は、特徴点位置判断部21に拡張して把握することができる。
【0024】
[[関節距離計算部]]
次に、評価部20の関節距離計算部22の例は図13に示すとおりであるが、後ほど説明することとし、その説明に先立ち、図7から図11を参照して従来のステレオカメラを用いた関節距離計算の課題について述べるとともに、図12を参照して本実施形態に係る関節距離計算について述べる。
【0025】
関節距離計算の実施においては、上記した計測部10の例2及び例3のように距離カメラ12a,12a1,12a2を用いる場合は、距離情報Dを直接計測できるために、光学カメラ11a,11a1,11a2,11a3と距離カメラ12a,12a1,12a2の位置と視野方向が確定されていれば、画像P又はP1上の特徴点例えば関節位置と距離カメラ12a,12a1,12a2上の関節位置は座標変換により容易に決定できる。しかし、上記した計測部10の例1のように複数の光学カメラ11a1,11a2,11a3を用いて距離計算する場合は、困難が伴う。その理由は、従来は光学カメラを用いた距離測定において2台の光学カメラを用いるステレオカメラが多く用いられており、ステレオカメラの場合、計測に大きな制約があったことによる。その制約とは、次のようなものである。なお、以下では、説明の便宜上、ステレオカメラを構成する2台の光学カメラを各別にカメラA、カメラBとして説明するが、構造的に1台のステレオカメラの場合も同様である。
【0026】
従来のステレオカメラを用いる手法の場合、左右のカメラA、カメラBで撮った共通部分の画像上の視差を計算するには、共通部分が同一の物体であるという事実を見出すためにテンプレート・マッチング法が必要となる。テンプレート・マッチング法とは、例えば一方のカメラAで撮ったある領域の画像が、他方のカメラBで撮った画像の中のどの位置に対応するかを、画像処理アルゴリズムにより画像マッチングを行い、その位置を特定する方法である。両者の画像の位置のずれから、カメラA、カメラBの視差角を計算し、距離を推定することができる。その結果、図7から図9に示すような(1)から(3)の制約が生じる。
【0027】
(1)カメラ間隔が小さい場合(図7「ステレオカメラ1:カメラを近づけた場合」参照)
カメラA、カメラBそれぞれと対象物との距離の違いにより、マッチングを取る対象領域の範囲が大きく異なってくる。すなわち、カメラAとカメラBを近づけたとき、観察できる範囲は広がるが、対象物との距離により、マッチング範囲(視差角の変化量)が異なる。対象物までの距離はあらかじめ分かっているわけではないので、広い距離範囲を計測しようとすると、広い範囲でのマッチングが必要となり、誤認識が生じやすい。また、マッチングで誤認識をした場合でも、誤認識かどうかを判別する手段がなく、この点が立体形状測定にとって致命的である。
【0028】
図7の例を補足すると、カメラAとカメラBを例えば10cmの間隔に近づけた場合、500cm先の視差θは、sinθ≒θとして、10/500=0.02ラジアン≒1°となり、カメラA及びカメラBの視野角を60°、横方向の画素数を1000とすれば、1°の差は約20画素に当たる。一方、50cm先の視差θは、同様に、10/50=0.2ラジアン≒12°となり、200画素となる。200画素離れていることは、1画像の1/5離れている同じ画像を探し出す必要があることを意味する。
【0029】
(2)カメラ間隔が大きい場合(図8「ステレオカメラ2:カメラを離した場合」参照)
視差は大きくとれるが、距離計算対象領域が狭くなってくる。すなわち、カメラAとカメラBを離したとき、マッチング範囲(視差角の変化量)は狭くなり、観測できる範囲も狭いものとなる。また、カメラAやカメラBの面前の対象物を計測できないという状態に陥る。
【0030】
(3)カメラの方向を変えた場合(図9「ステレオカメラ3:カメラの向きを変えた場合」参照)
カメラA及びカメラBそれぞれで捉える対象物の形状が異なってくる。すなわち、カメラAとカメラBの向きを変えたとき、マッチング範囲(視差角の変化量)はある程度広がるが、左右のカメラA及びカメラBで見る同一の対象物の形状が歪み、マッチングが困難となる。
【0031】
上記した(1)から(3)の制約は、ステレオカメラの限界を示すものである。つまり、対象物との距離や位置がある程度限定され、かつ対象物の形状が既知の場合は、簡便な距離計算法として、ある程度有効であった。しかし、対象物との距離が50cm~500cmと広い範囲の、しかも対象物の形状も時事刻々と変化する、例えば作業現場における作業者などの計測は極めて困難であった。
【0032】
ステレオカメラの欠点を端的に示す例を図10に示す。図10の左側に示した白黒の縦縞模様をステレオカメラでテンプレート・マッチングすると、マッチング・ポイント(一致画像)が多数現れ(例えば、図中、破線で囲んだ範囲の複数の画像)、計測不能になる。類似の状況は頻繁に現れることが知られていて、ステレオカメラによる距離計算法は限定的にしか使えないことが分かる。図10の右側に示したように、カメラAでテンプレート領域を決定して、カメラBの画像内で、同一部位に相当する画像を探すとき、幾らでも一致点が見つかるので、当該テンプレートまでの距離に関する情報が既知でないと、解は不定となる。
【0033】
そうすると、ステレオカメラを用いる方法は、例えば作業場の工作機械のように、直線が多い画像では、どこでもマッチングが起こりうることと、距離が不定であり、事前の視差量が推定できないために、テンプレート・マッチングする範囲が決まらなくなるので、マッチングエラー(マッチング無し)や、複数マッチングの頻発が起こると予測される。
【0034】
さらに、図11は、カメラA、カメラBの2台のカメラを用いて円形物体COと矩形物体ROについて、テンプレート・マッチングを行う例を示す。図11の左側に示したような位置関係にある円形物体COと矩形物体ROをカメラA、カメラBでそれぞれ撮影すると、カメラA、カメラBからそれぞれ見える図は図11の右側に示したようなものとなり、マッチングエラーを起こす(マッチングできない、すなわち、距離計算できない)ことが分かる。円形物体COと矩形物体ROが異なる距離に有るという情報が無いので、円形物体COと矩形物体ROの組合せが単一物体か否かの違いを数学的に区別できないからである。
【0035】
以上述べたステレオカメラを用いた手法に対し、本実施形態では、光学カメラ11a1,11a2,11a3から得られた画像上の特徴点を用いて距離計算する手法を提案する。本実施形態では、複数の光学カメラ11a1,11a2,11a3を用いて距離計算する場合に、テンプレート・マッチングを行わないこととし、また、ステレオカメラではなく、3台以上の光学カメラ11a1,11a2,11a3によって、同期した撮影で得られる複数画像からの距離再構成を行うことを特徴とする。
【0036】
その手法は、次のとおりである。
(a)あらかじめ、各光学カメラ11a1,11a2,11a3の位置及び視野方位を測定しておく。
(b)同期して取得した複数の画像P1,P2,P3から機械学習により動体物MOの関節位置を抽出する。
(c)各光学カメラ11a1,11a2,11a3の位置及び視野方位をもとに、各関節位置の光学カメラ毎の視線方位を計算する。その交点方向の近接領域に複数画面上に関節位置を認めた場合に、それらの複数画面の組み合わせが、特定個体である動体物MOの特定の関節位置を示していると仮定する。
(d)上記によりサンプリングされた複数画像に関し、後記するアルゴリズムを適用することにより、一般化された3次元座標系内での当該関節位置を求める。
【0037】
上記の手法により、動体物MOの姿勢評価に必要な部位の3次元座標のみを効果的に抽出でき、かつ多方向からの計測により、従来のステレオカメラ法より、遮蔽物に妨げられる頻度が低い、ロバストな計測が可能となる。
【0038】
多方向からの画像による3次元座標位置計算のアルゴリズムとして、N台の光学カメラで1つの対象物を撮影した場合に、対象物の位置を推定する具体的なアルゴリズムの一例について図12を参照して以下に説明する。
【0039】
(§1 設定)
設定条件は、以下のとおりである。
・対象物は、3次元空間R^3のある1点P_0である、とする。ただし、その座標値(x, y, z)は未知とする。
・N台の光学カメラのインデックスをk=1, 2, …, Nとする。第k光学カメラの位置をP_kとする。ただし、P_kの座標値は既知とする。
・P_kを始点とし、P_0を終点とするベクトルをV_kとする。つまり、V_k=P_0-P_kとする。
・ベクトルVのノルムをnorm(V)と表すことにして、ノルムが1のベクトルU_kをV_k/norm(V_k)と定義する。
・P_0が未知なのでV_kも未知ではあるが、マッチングの結果得られた視差データから、U_kは既知である、とする。ただし、U_kはあくまでも光学カメラ撮影で得られたものなので、誤差が混入していることを考慮する。
・P_kからU_kの方向に伸びる直線をL_kとする。もしも、U_kに誤差がないならば、L_1, L_2, …, L_NはP_0を交点として共有するはずであるが、U_kは誤差をもつので、互いに異なるインデックスiとjに対して、L_iとL_jは交点をもつとは限らない。
【0040】
(§2 推定方法)
上記の設定を踏まえて、P_0の位置を推定する方法は、以下のとおりである。
・ベクトルP_0は、(x, y, z)座標値からなる縦ベクトルであるとする。
・同様に、P_1, P_2, …, P_Nも、U_1, U_2, …, U_Nも、(x, y, z)座標値からなる縦ベクトルとする。
・Xを任意のベクトル又は行列として、その転置をX^*と表すことにする。
・Iを3行3列の単位行列とする。
・k=1, 2, …, Nに対して、3行3列の行列Q_kを
Q_k=I-U_k U_k^*
と定義する。定義から、Q_kはランクが2(後記参照)の対称行列であり、非負定置である。しかも、Q_kは射影行列である。つまり、Q_k^2=Q_kが成り立つ。ただし、^2は2乗を意味するものとする。
・次に、3行3列の行列Rを
R=Q_1+Q_2+…+Q_N
と定義する。一般的には、Rの行列式det(R)はゼロ以上の実数であり、det(R)=0となる可能性があるが、以下では、det(R)>0である、と仮定する。det(R)>0の仮定から、Rは逆行列inv(R)をもつことになる。
・k=1, 2, …, Nに対して、縦ベクトルS_kを
S_k=inv(R) Q_k P_k
と定義する。
・すると、P_0の推定値は、S_1+S_2+…+S_Nである。
【0041】
上記したQ_kのランクについては、次のとおりである。
・U_kと直交するノルムが1の縦ベクトルをG_kとし、U_kともG_kとも直交するノルムが1の縦ベクトルをH_kとすると、
I=U_k U_k^*+G_k G_k^*+H_k H_k^*
であるから、
Q_k=G_k G_k^*+H_k H_k^*
である。したがって、Q_kのランクは、2である。
【0042】
(§3 導出方法)
上記したP_0の推定値は、以下の方法で導出されたものである。
・R^3の任意の点を3次元縦ベクトルWで表し、R^3の任意の直線をLで表わすことにする。
・また、LとWの距離dist(L, W)を、WからLにおろされた垂線の長さ、として定義する。
・すると、k=1, 2, …, Nに対して、dist(L_k, W)は、ベクトルW-P_kからU_kに平行な成分を除外したベクトルのノルム、つまり、W-P_kをU_kに垂直な平面に射影してから求めたノルムであるから、
dist(L_k, W)=norm[(I-U_k U_k^*)(W-P_k)]=sqrt[(W-P_k)^* Q_k (W-P_k)]
である。
・そして、dist(L_1, W), dist(L_2, W), …, dist(L_N, W)の二乗和をf(W)と書くことにする。つまり、
f(W)=dist(L_1, W)^2+dist(L_2, W)^2+…+dist(L_N, W)^2
とする。
・対象物の位置P_0の推定値は、このf(W)の値を最小にするWと定義する。
・すると、平方完成によって(後記参照)、S_1+S_2+…+S_NがP_0の推定値となる。
【0043】
平方完成については、次のとおりである。
・f(W)の式変形をすると、
f(W)=Σ_(k=1)^N (W-P_k)^* Q_k (W-P_k)
=(W-inv(R) Σ_(k=1)^N Q_k P_k)^* R (W-inv(R) Σ_(k=1)^N Q_k P_k)+定数項
=(W-Σ_(k=1)^N S_k)^* R (W-Σ_(k=1)^N S_k)+定数項
であるから、f(W)が最小になるのはW=Σ_(k=1)^N S_kのときである。
【0044】
評価部20の関節距離計算部22の例は、前述したように、図13のとおりである。図13に示すように、関節距離計算部22では、関節位置判断部21で位置決定された光学カメラ11a,11a1,11a2,11a3から得られた関節位置2次元座標TwDを入力し、光学カメラ座標系から、距離カメラ座標系へ座標変換22aを行った後に、距離カメラ12a,12a1,12a2から得られた距離情報Dより、当該関節位置の、距離カメラ座標系における関節位置3次元座標計算22bを行う。
【0045】
関節位置3次元座標ThDの計算アルゴリズムは、距離カメラ12a,12a1,12a2等で得られた関節距離のデータを、カメラの画素数と視野角の仕様に基づいて極座標(天頂角、方位角、半径)に変換後、直交座標(x, y, z)に変換し、関節位置3次元座標ThDとする。図13の下段には、図6で示した人体の特徴点としての関節部位(ここでは、右肩SR、左肩SL、右肘ER)の光学カメラ11a1又は11a上の関節位置3次元座標ThDを例示している。
【0046】
[[3次元骨格再構成部]]
次に、評価部20の3次元骨格再構成部23の例について、図14を参照して説明する。図14に示すように、3次元骨格再構成部23は、関節位置3次元座標ThDを基に、隣接する関節までの関節間距離及び角度の計算23aを行った後、それらの妥当性の検証23bを行う。
【0047】
具体的には、対象物の動体物MOが人体であれば、関節間距離を計算した後、計算結果が人体の関節間距離として妥当かどうかを評価し、妥当であれば骨格データ(関節間距離データLD)として採用し、不適であれば、その部分の骨格を計測不可として排除する。同様に、隣接する関節までを結ぶ直線を骨と仮定したときに、骨と近接する骨の開き角を求め、人体の骨の可動範囲から人体の骨と骨の接する角度として妥当かどうか評価し、妥当であれば骨格データ(角度データAD)として採用し、不適であれば、その部分の骨格を計測不可として排除する。例えば、左右腰WL,WRに対し、背骨(背部B)の前傾度や後傾度の測定を行う。通常、立位姿勢の場合は、前傾については90度以上の前傾も姿勢として取りうるが、後傾は立位姿勢の場合は30度以上となると転倒する確率が高い。このように通常あり得ない数値が出た場合は、その部分の骨格を計測不可として排除する。
【0048】
図14の下段には、関節間距離データLDとして、図6で示した人体の特徴点としての部位(ここでは、肩幅S、腰幅W、背丈B(背部B)、右上腕ArmR1、左上腕ArmL1、右大腿ThiR、左大腿ThiL)の長さ[cm]を、角度データADとして、後記する図22から図23に示す開き角(ここでは、腰幅Wに対する背部Bのひねり角θ1、横曲げ角θ2、前曲げ角θf、後ろ曲げ角θb)の角度[度]を例示している。
【0049】
[[姿勢評価部]]
次に、評価部20の姿勢評価部24の例について、図15を参照して説明する。図15に示すように、姿勢評価部24は、関節位置3次元座標ThD及び関節間距離データLDと角度データADを基に、対象となる動体物MOの態様に応じた姿勢評価アルゴリズムAL1,AL2,…を選択して、姿勢の評価24aを行う。評価の結果は、姿勢評価データPEDとして出力される。図15の下段には、姿勢評価データPEDとして、上半身、下半身、手に区分した場合の評価の結果を例示している。
【0050】
姿勢評価アルゴリズムAL1,AL2,…は、動体物MOの計測の目的に対応した姿勢評価基準により、様々なアルゴリズムを用いることができる。例えば、姿勢自動評価装置1が腰痛監視システムとして採用される場合には、大きな箱等を持って歩く、又はしゃがんで持ち上げようとする姿勢に特化して認識する姿勢評価アルゴリズムが必要とされる。また、見守りシステムとして採用される場合には、1日に何時間寝て、何時間部屋を出て、何時間テレビを見ているか、あるいは定期的に食事をとっているか等の生活のリズムを計測する姿勢評価アルゴリズムが必要とされる。また、一連の流れ作業を行う作業場での作業効率の検証システムとして採用される場合には、特定の姿勢の発生頻度をチェックする姿勢評価アルゴリズムが必要とされる。
【0051】
このように、姿勢自動評価装置1は動体物MOの計測の種々の目的に対応することが可能であることから、その姿勢評価に用いる関節位置3次元座標ThDや関節間距離データLDと角度データADも、図13図14に挙げた例に限られることはない。例えば、肩SL/SR、肘EL/ER、手首HL/HRに指の各関節を特徴点として追加し、上肢の動きに特化した関節位置3次元座標ThDや関節間距離データLDと角度データADを生成してもよく、その場合には、上肢のみについての姿勢評価アルゴリズムが用いられる。
【0052】
(姿勢評価の例)
以下では、姿勢評価部24による姿勢評価の例として、図16及び図17を参照して、作業者の姿勢負荷の評価として使われているOWAS法の分類(OWAS: Ovako Working Posture Analyzing System)を応用した場合を例として挙げる。本実施形態では、後記する分類アルゴリズムにより、作業負荷分類の自動化が達成される。
【0053】
(OWAS法の概要)
まず、OWAS法の概要について、以下の説明を抜粋して引用する(引用元:「OWAS:Ovako式作業姿勢分析システム」http://www.nrec.sakura.ne.jp/OWAS.htmより。ただし、一部図番等修正)。
【0054】
「[2]各種作業姿勢評価法とOWAS
OWASは、フィンランドの製鉄会社(Ovako Oy, 現Fundia Wire)に勤めていたKarhuやNasmanらやフィンランド労働衛生研究所(Institute of Occupational Health)のKuorinkaらによって1970年代前半に開発が開始された。(中略)測定者間の姿勢判別の一致率は90%以上と高く、20以上の業種でテストされた。1980年代後半以降OWASを調査や作業改善に利用した報告が増えている。
[3]OWASによる作業姿勢の記録法
図16の例に示すように、OWASではある時点の作業姿勢を背部・上肢・下肢・重さの4項目でとらえ、これをコード化した4桁の数字(姿勢コード)で記録する。この姿勢コードの分類は、不快感の主観的評価・姿勢による健康影響・実用可能性を考慮して決定されたものである。」
【0055】
ここで、OWAS法では、図16に示すように、姿勢コードが「1.背部:1)から4)の4つの姿勢に分類(例えば、1)は「まっすぐ」)」、「2.上肢:1)から3)の3つの姿勢に分類(例えば、1)は「両腕とも肩より下」)」、「3.下肢:1)から7)の7つの姿勢に分類(例えば、1)は「すわる」)」、「4.重さまたは力:1)から3)の3つの程度に分類(例えば、1)は「10kg以下」)」に整理されているが、このうち、「4.重さまたは力」は作業する対象物の重さや、作業者の力を要する程度を示すものなので、本実施形態では計測対象外とする。「4.重さまたは力」については計測者が指定するものとする。
【0056】
次に、OWAS法では、上記の姿勢に関する記録を行った後に、姿勢の負担度と改善要求度を以下の4段階に分類して判定する(AC:Action Category)。
AC1:この姿勢による筋骨格系負担は問題ない。改善は不要である。
AC2:この姿勢は筋骨格系に有害である。近いうちに改善すべきである。
AC3:この姿勢は筋骨格系に有害である。できるだけ早期に改善すべきである。
AC4:この姿勢は筋骨格系に非常に有害である。ただちに改善すべきである。
【0057】
この判定にあたっては、図17に示すAC判定表が用いられる。AC判定表では、図17に示すように、左側に「1.背部」と「2.上肢」が、上側に「3.下肢」と「4.重さまたは力」が、それぞれ組み合わされている。組合せの数は、「1.背部」の1)から4)の分類それぞれに「2.上肢」の1)から3)の分類を組み合わせた12通りの区分と、「3.下肢」の1)から7)の分類それぞれに「4.重さまたは力」の1)から3)の分類を組み合わせた21通りの区分とにより、全体として252通りの区分が設定される。そして、それぞれの区分にAC1からAC4の判定が割り振られている。
【0058】
(本実施形態の姿勢評価アルゴリズム)
次に、図18から図24を参照して、本実施形態に係る姿勢評価アルゴリズムを説明する。姿勢評価アルゴリズムでは、OWAS法の分類を応用して以下のアルゴリズムで姿勢評価を自動化する。図18に、座標位置及び線分、角度に関する名称の定義を、図19に、アルゴリズムとして、対象となる部位(「1.背部」、「2.上肢」、「3.下肢」)、部位ごとの姿勢の分類、判定方法とデフォルト値を示す。図19における3つの部位及び部位ごとの姿勢の分類は、図16に示したOWAS法の分類と同様である一方、前述したとおり、「4.重さまたは力」はアルゴリズムに含まれない。
【0059】
姿勢評価アルゴリズムは図19に示したとおりであるが、それらのうち、「2.上肢の分類:1)から3)」、及び「3.下肢の分類:1)から6)」については、図18に記載した、座標位置(例えば、左右手首HL,HRのX,Y,Z座標)、線分(例えば、右肩SRと右肘ERの間の右上腕ArmR1)、角度(例えば、両肩の中点S0から床面への垂線の交点をS0Z0とした時の、S0Z0-S0-W0で決まる角度θS0Z0SW)の定義に基づいて、関連する指標同士の大小関係によって判断されるので、図19によって説明に代える。それら以外の「1.背部の分類:1)から4)」及び「3.下肢の分類:7)」について、以下に補足する。
【0060】
まず、「1.背部の分類:1)から4)」について、図20から図24を参照して説明する。背部Bの曲げの判断に使用する関節及び線分は、図20に示すように、肩幅S、両肩SL/SR、肩幅Sの中点S0,背部B、腰幅W、両腰WL/WR、腰幅Wの中点W0、中点S0と中点W0を結ぶ背部B(背骨に相当する)を用いる。
【0061】
背部Bの曲げは、以下の4つの曲げを取り扱う。
(イ)ひねり
(ロ)横曲げ
(ハ)前曲げ
(ニ)後ろ曲げ
【0062】
4つの曲げの定義にあたって、前提条件として、空間のx-y-z方向を、光学カメラ11a,11a1,11a2,11a3で撮影する画角の左右方向をx軸、距離カメラ12a,12a1,12a2のレンズ中心から被写体(動体物O)方向に進む光線方向をy軸、光学カメラ11a,11a1,11a2,11a3で撮影する画角の上下方向をz軸とする。分かり易いように、座標系は、図21のように、人物の概略重心位置GCを原点(x=0、Y=0、Z=0)として設定する。概略重心位置GCは、例えば、左肩SL、右肩SR、左腰WL、右腰WRの4点の座標平均でもよいし、左肘EL、右肘ER、左膝KL、右膝KRを加えた8点の座標平均でもよい。
【0063】
(イ)ひねり
図22に示すように、図20において、背部B(S0-W0)に垂直であり、中点W0を含む平面を平面Pとし、肩幅Sの平面Pへの射影線を線分S’、腰幅Wの平面Pへの射影線を線分W’とする。そして、線分S’及び線分W’のなす角をθ1とする。θ1は、右腰WRの平面Pへの射影点をWR’、右肩SRの平面Pへの射影点をSR’としたときに、WR’-W0-SR’のなす角となる。このθ1が、
θ1>θ1ひねりlimit
のとき、ひねり状態と認定する。この定義は、一般的な、例えば横臥位、腹臥位も考慮した定義とするためである。
【0064】
(ロ)横曲げ
図23に示すように、図20において、腰幅Wと背部Bを含む平面をQとする。平面Q上で、中点W0を通り、腰幅Wに垂直な垂線上への背部Bの射影線を線分B”とし、中点S0の射影点をS0”とする。そして、S0-W0-S0”のなす角をθ2とする。このθ2が、
θ2>θ2横曲げlimit
のとき、横曲げ状態と認定する。この定義は、背骨が左右に曲がっているかを考慮したものである。
【0065】
(ハ)前曲げ、(ニ)後ろ曲げ
図24に示すように、図20において、腰幅Wをz軸方向から、x-y平面に射影する。射影された端点をそれぞれWL’及びWR’とし、その中点をW0’とする。背骨に相当する背部Bを平行移動し、W0’を端点とした線分B’(W0’-S0’)を作る。線分WL’-WR’の中点W0’を通る線分に垂直な平面への線分B’の射影線を線分Bfとする。z’-W0’-S0fで作られる角度がyプラス方向の角度であれば前曲げ角度θfとする。yマイナス方向の角度すなわちz’-W0’-S0’で作られる角度であれば、後ろ曲げ角度θbとする。図24は、前曲げ角度θfの場合を図示している。このθf又はθbが、それぞれ、
θf>θf前曲げlimit
のとき、前曲げ状態と認定し、
θb>θb後ろ曲げlimit
のとき、後ろ曲げ状態と認定する。なお、θfを±で定義した場合には、図19に示したように、後ろ曲げ状態は次のように置き換えてもよい。
θf<θf後ろ曲げlimit
【0066】
以上を踏まえ、「1.背部の分類:1)から4)」は、図19に示すように、次のとおり判定される。
・分類2)の判定:「θf>θf前曲げlimit」又は「θb>θb後ろ曲げlimit(θfが±で定義される場合は、θf<θf後ろ曲げlimit)」であれば、背部Bは、「分類2):前または後ろに曲げる」と判定される。
・分類4)の判定:分類2)でなく、「θ2>θ2横曲げlimit」かつ「θ1>θ1ひねりlimit」であれば、背部Bは、「分類4):ひねりかつ横に曲げる、または斜め前に曲げる」と判定される。
・分類3)の判定:分類4)でなければ、背部Bは、「分類3):ひねるまたは横に曲げる」と判定される。
・分類1)の判定:分類3)でなければ、背部Bは、「分類1):まっすぐ」と判定される。
【0067】
次に、「3.下肢の分類:7)」について、図19に示した姿勢評価アルゴリズムでは、OWAS法における「3.下肢の分類:7)歩く又は移動する」に関する判定については、別のアルゴリズムで求めるとしている。これは、「歩く又は移動する」を検知するためには、動画による連続的な動体の動きの計測と、その動画の各フレームに同期した動体物MOの関節までの距離情報Dを用いて、3次元骨格図の時系列的変化を計測し、評価する必要があることによる。この場合は、連続するある一定期間の、フレーム間での一個体である動体物MOの動きを認識する必要がある。
【0068】
そのためには、動体物MOを空間上の1点又は有限な3次元空間領域として捉える。例えば頭部HDの1点を動体物MOの代表点として捉え、その点の動きを、標準的な動画のサンプリング・タイムである30フレーム/secでサンプリングした場合、約30msecごとの3次元空間上での頭部HDの移動時間から、「歩く又は移動する」を推定できる。この場合、代表点は、前述の人体の概略重心位置GCを用いてもよい。また、足が見える状態であれば、両足首AnL/AnRを代表点としてもよい。通常人の歩行は2~3m/secであり、30フレーム/secでサンプリングした場合、1フレーム間での移動距離は7~10cm程度であるので、7~10cm程度の移動量で一定方向に一定間隔以上移動していれば、「歩く又は移動する」と判定してよい。このほか、複数の関節位置情報から動体物MOを特定の空間領域として捉え、その個体が、3次元空間内を歩いていると考え、歩行の場合の骨格の動きを考慮して「歩く又は移動する」を判断してもよい。
【0069】
(複数の距離情報からの3次元骨格再構成)
3次元骨格再構成部23については前述したが、ここで一部補足する。設置場所や視野角の異なる複数の距離カメラ12a1,12a2による同一の動体物MOの関節距離が得られた場合には、複数の距離情報Dから一個体の3次元骨格の再構成を行うこととなる。この場合は、例えば、各距離カメラ12a1,12a2で得られた一個体の3次元関節位置の情報を用いて、それぞれの距離カメラ12a1,12a2で得られている個体が同一個体であることを認識する必要がある。そのためには、前述のような一個体の頭部HDの3次元座標位置や、動体物MOの概略重心GC又は中心位置を用いて、3次元空間上の位置の同一性を判断する必要がある。
【0070】
同一個体と判定された場合は、各関節部の位置関係の整合性を確認する。遮蔽物等により欠落した距離情報Dが有り、当該する関節位置が別の距離カメラ12a1,12a2で得られる場合は、別の距離カメラ12a1,12a2で得られた値を採用する。ただし、両肩SL/SRや両腰WL/WRなどの関節部はカメラに対する人物の向きに依存し、人体の背部、臀部の厚さ分に応じて誤差が生じるので、必要に応じて補正することにする。これにより、遮蔽物による関節データの欠落を少なくし、可能な限りの完成度の高い3次元骨格を再構成することが可能となる。
【0071】
[評価結果表示部]
次に、評価結果表示部30の例について、図25から図32を参照して説明する。評価結果表示部30では、上記した姿勢評価に基づき、姿勢自動評価装置1が用いられる目的に応じて、いろいろな表示方法が採用されてよいが、主に次の3種類に大別される。
【0072】
(1)数値情報
数値情報としては、関節部位を含む各部位を特徴点について、関節位置3次元情報(距離カメラ系、被写体座標系、一般座標系などのような座標系によって数値及び単位は異なる)を表示する。数値情報には、例えば、図13に例示した右肩SR、左肩SL、右肘ERのほか、図6に示した頭部HD、右手首HR、左手首HL、左肘EL、両肩の中点S0(首部)、右腰WR、左腰WL、右膝KR、左膝KL、右足首AnR、左足首AnLに加え、該当する場合には、右手先、左手先、右手指関節、左手指関節、右つま先、左つま先等のx軸、y軸、z軸による空間位置座標が含まれる。
【0073】
また、数値情報には、図14に例示した肩幅S、腰幅W、背部B(背丈)、右上腕ArmR1、左上腕ArmL1、右大腿ThiR、左大腿ThiLのほか、図6に示した右前腕ArmR2、左前腕ArmL2、右下腿LlimR、左下腿LlimL等の長さ(関節間距離)が含まれてもよい。さらに、図14に例示したひねり角θ1、横曲げ角θ2、前曲げ角θf、後ろ曲げ角θb(又は、-θf)が含まれてもよい。
【0074】
(2)文字情報、音情報
前述したように、姿勢自動評価装置1を用いる計測の目的は、腰痛監視システム、見守りシステム、作業効率の検証システム、など、多岐にわたる。文字情報や音情報としては、例えば、腰痛監視システムの場合には、下半身が立位のまま、前傾姿勢で何かを持ち上げようとしたときは、「腰痛注意」の文字を表示したり、「警報音」を発したりしてもよい。見守りシステムの場合には、介護施設等において、入居者の観察のため、「寝ている」、「起きている」、「動いている」、「床に倒れている」等のプライバシーを侵さない範囲での文字を表示したり、「警報音」を発したりしてもよい。作業効率の検証システムの場合には、図1の左下段の上側に示したように、例えば、「上半身」、「下半身」、「手」について、それらの姿勢を表す一般的な評価結果を表示してもよい。
【0075】
上記のうち、作業効率の検証システムにおいて、前述したOWAS法を適用して4段階のAC分類結果を文字表示した場合の例を図25に示す。また、OWAS法のAC分類の時間経過に伴う推移をチャートの形で表示した例を図26に示す。図26は、図16に示した「4.重さまたは力」が10~20kgである場合を例とした推移であり、縦軸は1~4段階のAC分類を、横軸は時間(30秒単位)を示している。
【0076】
(3)3次元骨格図表示
3次元骨格図表示は、x-z平面投影図、y-z平面投影図、x-y平面投影図や、任意の視点から見た鳥瞰図等がある。これらの骨格図表示や座標位置表示する際の座標系としては例えば次の3つが考えられる。
【0077】
・距離カメラ座標系における関節位置3次元情報表示
距離カメラ12aから見た3次元位置情報で、距離カメラ12aの目線方向をy軸とし、距離カメラ12aの視野の横方向をx軸、縦方向をz軸とする場合の一例を図27に示す。
【0078】
・被写体座標系における関節位置3次元情報表示
人体などの姿勢を3次元的に確認する上で、人体の概略中心位置を定義し、その点を3次元座標空間の原点として、人体外部任意の位置からの鳥瞰的な3次元骨格を観察できるようにすることは、非常に効果的な手段である。人体の概略中心位置の定義は、図12で示した人体骨格図の全ての計測された関節の3次元座標値の平均値であってもよい。また、両肩、両腰等の限られた関節箇所の座標の平均値であってもよい。被写体を人体とした場合の被写体座標系の一例を図28に示す。また、被写体座標系上の被写体骨格をx、y、z軸上から見た3次元平面図を光学カメラ像とともに図29に示す。同じく、被写体座標系上で、任意の視点から見た、3次元骨格の鳥瞰図の一例を光学カメラ像とともに図30に示す。
【0079】
・一般座標系における関節位置3次元情報表示
広い工場内の作業者の3次元的な作業姿勢の解析で、特に人流解析を含めた場合などには、工場内の任意の位置を座標原点として、任意の視点からの被写体の3次元的骨格図の表示が適切な場合がある。その場合にも本構成で表示が可能である。一般座標系で骨格をx-z平面に射影した例を図31に示す。
【0080】
ここで、画像と重複する視野をもつ距離カメラ12aの設置位置とその距離カメラ12aの仰角θ方向の認識手段について、図32を参照して説明する。画像と重複する視野をもつ距離カメラの設置位置を半自動又は全自動で設定する方法の一つとしては、あらかじめ工場内図面で既知の、一直線上に乗らない3個所を、画像上で位置指定し、その3点に対応する距離データを得ることで、工場内のどの位置に距離計測装置が設置されているかが決まる。また、距離カメラ12aの仰角θは、画像上で床面Fを数点位置指定することで、その距離から床平面に対し何度の仰角θで設置されているかが求まる。
【0081】
距離カメラの仰角θを求めるキャリブレーション手法は、次のとおりである。
(1)画面上で指定された3点の床面Fの座標位置と距離から、前記記載の手法によりカメラ座標系の3次元座標を求める。
(2)求めた3次元座標から、3点を通る平面の法線ベクトルnを求める
(3)求めたカメラ座標系上の法線ベクトルnと一般座標系のZ軸のなす仰角θを求める。
【0082】
詳細を以下に示す。まず、床面Fの座標と距離の3点p、p、pをp=(ξ,η,d)、p=(ξ,η,d)、p=(ξ,η,d)とする。このとき、ξは画像上のx座標、ηは画像上のy座標、dは距離を表す。床面Fの座標と距離を前記記載の手法により、カメラ座標系の3次元座標p 、p 、p に変換する。
【0083】
床面Fの三次元座標の3点をp=(x,y,z)、p=(x,y,z)、p=(x,y,z)としたとき、点p と点p を通るベクトルv=(x-x,y-y,z-z)を求める。同様に点p と点p を通るベクトルvも求める。点p 、点p 、点p を通る平面の法線ベクトルnは、vとvの外積で求めることができる。ここでは、3点を使って法線ベクトルnを求める方法を記したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。法線ベクトルnを求める方法であればどのような方法でもよく、複数点から求めてもよい。複数点から法線ベクトルnを求める方法は、例えば最小二乗法を使う方法や、RANSAC(RANdom SAmple Consensus)アルゴリズムを使う方法などが考えられる。
【0084】
さらに、求めた法線ベクトルn=(n,n,n)と一般座標系Z軸とのなす仰角θは、以下のように求める。
【数1】
【0085】
ここまでが距離カメラ12aの仰角θを求めるキャリブレーション方法である。さらに、求めた距離カメラの仰角θを使ってカメラ座標系の一点(x,y,z)を一般座標系の一点(X,Y,Z)に変換する式は以下のようになる。
【数2】
【0086】
上記記載のキャリブレーション手法ではカメラ座標系のX軸、Y軸とワールド座標系のX軸、Y軸は一致しているとして、仰角θのみを求めた。もちろんカメラ座標系のX軸と一般座標系のX軸のなす角である方位を求めて、仰角θと方位によってキャリブレーションを行ってもよい。また、今回は画像上の床面Fを手動により指定する方法を示したが、画像から床面Fを自動抽出してもよい。
【0087】
さらに、今回示した手法は一例であり、カメラ座標系と一般座標系を一致させる手法であれば、どのような方法でも構わない。距離カメラの仰角θ方向の自動認識手段としては、例えば3軸の加速度センサを装着する方法がある。
【0088】
さらに、キャリブレーションはカメラ設置時に一回実施してもよいし、撮影ごとに実施してもよい。
【0089】
[姿勢自動評価方法]
以上、姿勢自動評価装置1について実施形態を説明したが、姿勢自動評価装置1において採用されている方法は、姿勢自動評価方法として構成されてもよい。すなわち、動体物MOについての姿勢自動評価方法は、動体物MOを計測する計測ステップと、計測ステップの計測結果を評価する評価ステップと、評価ステップの評価結果を表示する評価結果表示ステップとを備える。計測ステップは、動体物MOを撮影する画像取得ステップと、画像取得ステップによる撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、動体物MOまでの距離を計測する距離取得ステップとを備える。評価ステップは、撮影された画像から任意の特徴点を抽出する特徴点位置判断ステップ(関節位置判断ステップ)と、抽出された特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算ステップ(関節位置計算ステップ)と、動体物MOの骨格を再構成する3次元骨格再構成ステップと、動体物MOの姿勢を評価する姿勢評価ステップとを備える。評価結果表示ステップは、評価結果を数値情報、文字情報、音情報及び3次元骨格図の少なくとも1つをもって表示する。
【0090】
[姿勢自動評価プログラム]
また、この姿勢自動評価方法は、その実行内容をプログラム化し、コンピュータに実行させるように姿勢自動評価プログラムとして構成されてもよい。すなわち、動体物MOについての姿勢自動評価プログラムは、コンピュータに、動体物MOを計測する計測処理と、計測処理の計測結果を評価する評価処理と、評価処理の評価結果を表示する評価結果表示処理とを実行させる。計測処理は、動体物MOを撮影する画像取得処理と、画像取得処理による撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、動体物MOまでの距離を計測する距離取得処理とを備える。評価処理は、撮影された画像から任意の特徴点を抽出する特徴点位置判断処理(関節位置判断処理)と、抽出された特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算処理(関節位置距離計算処理)と、動体物MOの骨格を再構成する3次元骨格再構成処理と、動体物MOの姿勢を評価する姿勢評価処理とを備える。評価結果表示処理は、評価結果を数値情報、文字情報、音情報及び3次元骨格図の少なくとも1つをもって表示する。
【0091】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る姿勢自動評価装置1、姿勢自動評価方法及び姿勢自動評価プログラムについて説明したが、姿勢自動評価装置1、姿勢自動評価方法及び姿勢自動評価プログラムは、上記のように構成したことにより、動体物の姿勢の負荷を非接触で定時間ごとに定量的に計測し、その負荷を評価することができる。
【0092】
より具体的には、姿勢自動評価装置1、姿勢自動評価方法及び姿勢自動評価プログラムは、動体物MO(作業者などの人体のほか、動物やロボット等)に非接触で計測が可能となり、計測者にとっても計測作業を無人化することで省力化し、長時間にわたり、属人性を排除した計測が実現できる。また、計測する負荷のスレッショルド(例えば、背部の前傾角度のスレッショルド値)の設定等も指定できる。また、常時計測が可能なため、例えば、腰痛を起こしやすい姿勢をした場合に、警告を発する等の機能実現も可能となる。
【符号の説明】
【0093】
1…姿勢自動評価装置
10…計測部
11…画像取得部
11a,11a1,11a2,11a3…光学カメラ
12…距離取得部
12a,12a1,12a2…距離カメラ
20…評価部
21…関節位置判断部(特徴点位置判断部)
22…関節距離計算部(特徴点距離計算部)
23…3次元骨格再構成部
24…姿勢評価部
30…評価結果表示部
MO…動体物
A,B…ステレオカメラ
CO…円形物体
RO…矩形物体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32