(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059776
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】ヒートパイプ
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20230420BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
F28D15/02 101N
F28D15/02 D
A01G7/00 601Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169967
(22)【出願日】2021-10-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 開催日2021年2月8日の石川県立大学2020年度博士前期課程修士論文発表会(会場:石川県立大学) 2021年8月にヤンマー資源循環支援機構事務局に提出した企画書
(71)【出願人】
【識別番号】511169999
【氏名又は名称】石川県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 年彦
(72)【発明者】
【氏名】伴田 千紘
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022DA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数のパイプを連結したヒートパイプを提供する。
【解決手段】メインパイプ2及びメインパイプ2の上端に接続されておりかつメインパイプ2の長軸の遠位方向に方放射線状に伸長している2以上のサブパイプ3を含むヒートパイプ1であり、水平方向の加温範囲を広げることが可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むヒートパイプ、
作動液を封入したメインパイプ、及び
2以上の作動液を封入したサブパイプ、ここで、該2以上のサブパイプの末端は該メインパイプの上端に接続されておりかつ該メインパイプの長軸の遠位方向に放射線状に伸長している、
ヒートパイプ。
【請求項2】
前記サブパイプがS字形状又はL字形状である、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項3】
前記サブパイプがS字形状又はL字形状であり並びに4本である、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項4】
さらに、サービスポートを前記メインパイプの上端及び前記サブパイプの上端に有する、請求項1~3のいずれか1に記載のヒートパイプ。
【請求項5】
請求項1~4に記載のいずれか1以上のヒートパイプを含む植物生育用キット。
【請求項6】
以下の工程を含む、請求項1~4に記載のいずれか1以上のヒートパイプを使用した植物の生育方法。
1)少なくともサブパイプの末端及びメインパイプを地中に埋設させる工程、及び
2)植物の根を含む土を2以上のサブパイプの内側で形成される内空に設置する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートパイプ現象を利用する複数のパイプを連結したヒートパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
(ヒートパイプ)
ヒートパイプは、中空構造をした金属製パイプで、内部を真空状態にし、そこへ液体(作動液と呼ばれる)を封入して作られる。該パイプ両端に温度差が生じると、高温部で作動液は熱吸収して蒸発し、低温部への蒸気流が生じる。そして、低温部に到達した蒸気は、熱を放出すると同時に凝縮し、その液体は壁面を通じて高温部へ戻る。ヒートパイプは、高温部と低温部とで作動液が相変化を繰り返し循環するため、パイプ両端の温度差がなくなるまで永続的に熱を伝えることができる。
ヒートパイプの液体が高温部へ戻る仕組みには2つある。1つは、重力を利用する方法(サーモサイホン式ヒートパイプ)、もう1つは、毛管力を利用する方法(ウィック式ヒートパイプ)である。いずれのヒートパイプも温度差のみを駆動力とし、高い熱輸送能を持つため、地中熱を利用した融雪技術やノートパソコンのCPU冷却装置など、幅広い分野に応用されている。
【0003】
(先行特許文献)
ヒートパイプを利用した熱輸送装置は、下記のように複数報告されている。
特許文献1は、「真空容器と、その真空容器の内周面に外周面を沿わせて配置された銅粉からなる焼結金属体と、前記真空容器の内部に封入されかつ加熱されて蒸発するとともに放熱して凝縮する作動液とを備えたヒートパイプであって、前記真空容器の内周面と前記焼結金属体の外周面との境界部分に、前記作動液を流動させるための流路が形成されていることを特徴とするヒートパイプ」を開示している。
特許文献2は、「内部に作動流体を封入して真空状態に保持した管状本体と、該管状本体の基端側に形成された二重管状凹部を有する加熱部とから成り、該加熱部の加熱面積比率を高めた事を特徴とするヒートパイプ」を開示している。
特許文献3は、「土のヒートパイプ現象を利用した熱輸送装置」を開示している。
【0004】
上記先行特許文献では、本発明の複数のパイプを連結したヒートパイプの構成を開示又は示唆をしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-115346
【特許文献2】特開2004-108749
【特許文献3】特開2017-40376
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のヒートパイプ現象を利用したヒートパイプは、下層から表層への鉛直方向の熱輸送に対して効果を発揮するものの、直管形状であるため、表層に到達した熱は水平方向に移動しにくく、加温範囲は限定的であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、メインパイプ及び該メインパイプの上端に接続されておりかつ該メインパイプの長軸の遠位方向に放射線状に伸長している2以上のサブパイプを含むヒートパイプは、上記課題である水平方向の加温範囲を広げることが可能なヒートパイプであることを確認して、本発明を完成した。
【0008】
本発明は以下の通りである。
1.以下を含むヒートパイプ、
作動液を封入したメインパイプ、及び
2以上の作動液を封入したサブパイプ、ここで、該2以上のサブパイプの末端は該メインパイプの上端に接続されておりかつ該メインパイプの長軸の遠位方向に放射線状に伸長している、
ヒートパイプ。
2.前記サブパイプがS字形状又はL字形状である、前項1に記載のヒートパイプ。
3.前記サブパイプがS字形状又はL字形状であり並びに4本である、前項1に記載のヒートパイプ。
4.さらに、サービスポートを前記メインパイプの上端及び前記サブパイプの上端に有する、前項1~3のいずれか1に記載のヒートパイプ。
5.前項1~4に記載のいずれか1以上のヒートパイプを含む植物生育用キット。
6.以下の工程を含む、前項1~4に記載のいずれか1以上のヒートパイプを使用した植物の生育方法。
1)少なくともサブパイプの末端及びメインパイプを地中に埋設させる工程、及び
2)植物の根を含む土を2以上のサブパイプの内側で形成される内空に設置する工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明のヒートパイプは、以下のいずれか1以上の効果を有する。
(1)ヒートパイプの上部では、水平方向の加温範囲が広い。
(2)ヒートパイプの下部では、高い吸熱作用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】ヒートパイプの断面概要図(メインパイプと2本のサブパイプを切断している形状)
【0011】
以下に、本発明の複数のパイプを連結したヒートパイプを詳細に説明する。なお、下記で示す図を正面から見て、図面の上下左右を、ヒートパイプ本体の上下左右として説明する。
【0012】
(本発明のヒートパイプの構成)
本発明のヒートパイプ(1)は、以下の構成を含む。
作動液(4)を封入したメインパイプ(2)。
2以上の「作動液(4)を封入したサブパイプ(3)」。2以上のサブパイプ(3)の末端はメインパイプ(2)の上端に接続されており、かつメインパイプ(2)の長軸の遠位方向(矢印7の矢尻方向)に放射線状に伸長している。
【0013】
(メインパイプ)
メインパイプ(2)の材質は、作動液(4)を収納できれば特に限定されないが、例えば、銅管、ステンレス管等を利用することができる。
メインパイプ(2)の形状は、該パイプの上端(図面の上側)に複数のサブパイプ(3)の末端(図面の下側)を連結することができれば特に限定されないが、例えば、円筒形状等を利用することができる。
メインパイプを作成の際、作動液を真空封入することが望ましい。
メインパイプ(2)の上端を複数のサブパイプ(3)の末端に連結する方法は、特に限定されないが、例えば、ろう付け(例、りん銅ろう付け)、溶接等を利用することができる。
作動液(4)を充填する際の注入口であるサービスポート(6)をメインパイプ(2)の上端に設けても良い。サービスポート(6)からメインパイプ(2)の内部を減圧することができる。
【0014】
(サブパイプ)
サブパイプ(3)の材質は、作動液(4)を収納できれば特に限定されないが、例えば、銅管等を利用することができる。
サブパイプ(3)の形状は、該パイプの末端(図面の下側)にメインパイプ(2)の先端(図面の上側)に連結することができ、かつ、メインパイプ(2)の長軸の遠位方向(矢印7の矢尻方向)に放射線状に伸長していれば限定されないが、好ましくは、L字型(
図3の右)、S字型(
図3の左)の形状に形成されたものであってもよい。
サブパイプ(3)の数は、2以上であれば特に限定されないが、3本、4本、5本、6本、7本又は8本を例示することができる。
サブパイプを作成の際、作動液を真空封入することが望ましい。
サブパイプ(3)の形状をS字型、L字型を採用した場合には、曲げ角度Rを大きくすることにより、加熱範囲(特に、水平方向の加熱範囲(
図4中の矢印8))を広げることができる。
曲げ角度Rは、90°~180°であり、好ましくは120°~150°である。
作動液(4)を充填する際の注入口であるサービスポート(6)をサブパイプの上端に設けても良い。サービスポート(6)からサブパイプ(3)の内部を減圧することができる。
【0015】
(作動液)
作動液(4)は、特に限定されない。例えば、水、エタノール、メタノール、アセトン、冷媒(特に、代替フロンガスHFC134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン))等を挙げることができる。
【0016】
(植物生育用キット)
本発明の植物生育用キットは、少なくとも本発明のヒートパイプを含む。
本発明の植物生育用キットは、水平方向(
図4の矢印8)への広い加熱範囲を利用して、2以上のサブパイプ(3)の内側で形成される内空(5)で植物を生育することを目的とする。例えば、冬の時期において、樹木根域を内空(5)に設置して、該樹木を生育する。
【0017】
(本発明のヒートパイプの使用例1)
本発明のヒートパイプの使用例(参照:
図4)として、本発明のヒートパイプを使用した植物の生育方法は、以下の工程を例示することができるが、特に限定されない。
1)メインパイプ(2)と少なくともサブパイプ(3)の末端を地中に埋設させる工程。このとき、メインパイプ(2)を下(地中方向)に、サブパイプ(3)を上にして埋設する。
2)植物の根(樹木根域)を含む土を2以上のサブパイプ(3)の内側で形成される内空(5)に設置する工程。
メインパイプ(2)の下端での吸熱及び上端への熱移動、メインパイプ(2)からサブパイプ(3)への熱移動、サブパイプ(3)の下端から上端への熱移動及び放熱により、電力なしで地中熱を表層に運び、植物の根(樹木根域)全体を加温することができる。
【0018】
(本発明のヒートパイプの使用例2)
本発明のヒートパイプの使用例として、本発明のヒートパイプを使用した植物の生育方法は、以下の工程を例示することができるが、特に限定されない。
1)サブパイプ(3)と少なくともメインパイプ(2)の末端を地中に埋設させる工程。このとき、メインパイプ(2)を上に、サブパイプを下(地中方向)にして埋設する。
複数のサブパイプ(3)によって、広範囲の吸熱が可能となり、メインパイプ(2)の上端における放熱量の増大を可能にする。
【0019】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、下記の実施例は本発明についての具体的認識を得る一助とみなすべきものであり、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例0020】
(S字形状サブパイプの熱輸送能の確認)
S字形状サブパイプ(
図5の右側)の末端及び直管形状サブパイプ(
図5の左側)の末端を15℃に設定して、上端の温度を熱画像解析(装置名:Flir C2)により温度を測定した。
S字形状サブパイプの上端の温度は、直管形状サブパイプの上端の温度と同程度であることを確認した。これにより、以下の実施例では、S字形状サブパイプを採用した。