(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059791
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】ポリエステル組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20230420BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20230420BHJP
B29B 7/38 20060101ALI20230420BHJP
B29B 9/12 20060101ALI20230420BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
C08L67/00
C08L67/02
B29B7/38
B29B9/12
C08J5/18 CFD
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022023694
(22)【出願日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】110138393
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲テ▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】劉 岳欣
(72)【発明者】
【氏名】王 傳鈞
【テーマコード(参考)】
4F071
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA45
4F071AA46
4F071AA84
4F071AA88
4F071AC09
4F071AC11
4F071AC15
4F071AE05
4F071AE11
4F071AF17
4F071AF20
4F071AF23Y
4F071AF30Y
4F071AF46Y
4F071AH04
4F071AH05
4F071BA01
4F071BB05
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4F201AA24
4F201AB06
4F201AB07
4F201AR06
4F201BA01
4F201BA02
4F201BC02
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK73
4F201BL43
4J002CF052
4J002CF061
4J002CF062
4J002GG02
(57)【要約】
【目的】可視光の下で高透過率を有し、且つ優れた衝撃強度を有するポリエステル組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエステル組成物は、以下の物性を有する。ポリエステル組成物から厚さ3.2mmのフィルムを形成する時、フィルムは、フィルムの厚さ方向の可視スペクトルにおいて、90%よりも大きい光透過率を有し、-20℃において、3.50kJ/mよりも大きい衝撃強度を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル組成物から形成された厚さ3.2mmのフィルムが、前記フィルムの厚さ方向の可視スペクトルにおいて、90%よりも大きい光透過率を有する物性と、
前記フィルムが、-20℃において、3.50kJ/mよりも大きい衝撃強度を有する物性と、
を有するポリエステル組成物。
【請求項2】
少なくともポリエステル混合物で形成され、前記ポリエステル混合物が、
前記ポリエステル混合物中65~94重量部のポリエチレンテレフタレートと、
前記ポリエステル混合物中5~30重量部のポリ(エチレンテレフタレート-co-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)と、
を含む請求項1に記載のポリエステル組成物。
【請求項3】
少なくとも反応押出方法で形成されるポリエステル組成物であって、前記反応押出方法が、
押出機を提供するステップと、
前記ポリエステル混合物を前記押出機に供給して押し出し、前記ポリエステル組成物を形成するステップと、
を含む請求項2に記載のポリエステル組成物。
【請求項4】
前記ポリエステル混合物が、さらに、
前記ポリエステル混合物中0.5~2重量部の抗酸化剤、または、
前記ポリエステル混合物中0.5~2重量部のスリップ剤、
を含む請求項2に記載のポリエステル組成物。
【請求項5】
少なくとも反応押出方法で形成されるポリエステル組成物であって、前記反応押出方法が、
押出機を提供するステップと、
前記ポリエステル混合物を前記押出機に供給して押し出し、前記ポリエステル組成物を形成するステップと、
を含む請求項4に記載のポリエステル組成物。
【請求項6】
前記押出機が、加熱領域を含み、前記ポリエステル混合物を前記押出機に供給して、ホットプレス反応を行う請求項5に記載のポリエステル組成物。
【請求項7】
前記加熱領域の加熱温度が上昇する請求項6に記載のポリエステル組成物。
【請求項8】
前記加熱領域が、初期加熱領域および最終加熱領域を含み、前記最終加熱領域の最低温度が、前記初期加熱領域の最高温度よりも高いか、それに等しい請求項6に記載のポリエステル組成物。
【請求項9】
少なくとも反応押出方法で形成されるポリエステル組成物であって、前記反応押出方法が、
押出機を提供するステップと、
ポリエステル混合物を前記押出機に供給して押し出し、前記ポリエステル組成物を形成するステップと、
を含み、前記ポリエステル混合物が、
前記ポリエステル混合物中65~94重量部のポリエチレンテレフタレートと、
前記ポリエステル混合物中5~30重量部のポリ(エチレンテレフタレート-co-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)と、
を含むポリエステル組成物。
【請求項10】
押出機を提供するステップと、
ポリエステル混合物を前記押出機に供給して押し出し、ポリエステル組成物を形成するステップと、
を含み、
前記ポリエステル組成物が、前記ポリエステル組成物から形成された厚さ3.2mmのフィルムが、前記フィルムの厚さ方向の可視スペクトルにおいて、90%よりも大きい光透過率を有する物性と、前記フィルムが、-20℃において、3.50kJ/mよりも大きい衝撃強度を有する物性と、を有し、
前記ポリエステル混合物が、前記ポリエステル混合物中65~94重量部のポリエチレンテレフタレートと、前記ポリエステル混合物中5~30重量部のポリ(エチレンテレフタレート-co-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)と、を含むポリエステル組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル組成物およびその製造方法に関するものであり、特に、可視光の下で高透過率を有し、且つ優れた衝撃強度を有するポリエステル組成物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
市場において物流サービスに対する要求が高まり、特定の製品は、低温で冷蔵や保存される必要がある。そのため、冷凍物流に使用される収納箱および/または梱包材は、低温保存や運送中に製品が損傷や破損する可能性を低くするために、低温において優れた機械的強度を有するものでなければならない。
【0003】
現在、低温物流において梱包や収納箱に使用される最も一般的な材料は、ポリプロピレン(polypropylene, PP)である。しかしながら、ポリプロピレンは、結晶化されやすいことから、常に透明度が低い(特に、人が可視光の下で監視または識別に使用した時)。その結果、ポリプロピレンで作られた梱包や収納箱で保存された物品は、観察や識別を容易に行うことができない。また、低温の環境において(例えば、低温運送または保存に通常必要とされる-20℃~-8℃において)、ポリプロピレンは、衝撃強度の大幅な低下により、脆性破壊を起こす可能性がある。
【0004】
したがって、上述した低温の状況に適した適切なプラスチックをいかにして選択または形成するかが、解決すべき課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、可視光の下で高透過率を有し、且つ優れた衝撃強度を有するポリエステル組成物およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るポリエステル組成物は、以下の物性を有する。ポリエステル組成物から形成された厚さ3.2mmのフィルムは、フィルムの厚さ方向の可視スペクトルにおいて、光透過率が90%よりも大きく、-20℃において、衝撃強度が3.50kJ/mよりも大きい。
【0007】
本発明の1つの実施形態において、ポリエステル組成物は、少なくともポリエステル混合物で形成される。ポリエステル混合物は、ポリエステル混合物中65~94重量部のポリエチレンテレフタレート、およびポリエステル混合物中5~30重量部のポリ(エチレンテレフタレート-co-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)を含む。
【0008】
本発明の1つの実施形態において、ポリエステル混合物は、さらに、ポリエステル混合物中0.5~2重量部の抗酸化剤、および/またはポリエステル混合物中0.5~2重量部のスリップ剤を含む。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、ポリエステル組成物は、少なくとも反応押出方法で形成される。反応押出方法は、以下のステップを含む。押出機を提供する。ポリエステル混合物を押出機に供給して押し出し、ポリエステル組成物を形成する。
【0010】
本発明の1つの実施形態において、押出機は、加熱領域を含み、ポリエステル混合物を押出機に供給して、ホットプレス反応を行う。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、加熱領域の加熱温度は、上昇する。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、加熱領域は、初期加熱領域および最終加熱領域を含む。最終加熱領域の最低温度は、初期加熱領域の最高温度よりも高いか、それに等しい。
【0013】
本発明に係るポリエステル組成物は、少なくとも反応押出方法で形成される。反応押出方法は、以下のステップを含む。押出機を提供する。ポリエステル混合物を押出機に供給して押し出し、ポリエステル組成物を形成する。ポリエステル混合物は、ポリエステル混合物中65~94重量部のポリエチレンテレフタレート、およびポリエステル混合物中5~30重量部のポリ(エチレンテレフタレート-co-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)を含む。
【0014】
本発明に係るポリエステル組成物の製造方法は、以下のステップを含む。押出機を提供する。ポリエステル混合物を押出機に供給して押し出し、ポリエステル組成物を形成する。ポリエステル混合物は、ポリエステル混合物中65~94重量部のポリエチレンテレフタレート、およびポリエステル混合物中5~30重量部のポリ(エチレンテレフタレート-co-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)を含む。
【0015】
本発明に係るポリエステル組成物の製造方法は、以下のステップを含む。押出機を提供する。ポリエステル混合物を押出機に供給して押し出し、ポリエステル組成物を形成する。ポリエステル組成物は、以下の物性を有する。ポリエステル組成物から形成された厚さ3.2mmのフィルムは、フィルムの厚さ方向の可視スペクトルにおいて、光透過率が90%よりも大きく、-20℃において、衝撃強度が3.50kJ/mよりも大きい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係るポリエステル組成物の製造方法によって形成されたポリエステル組成物(チップ状またはフレーク状であってもよい)は、可視光の下で高透過率を有し、且つ優れた衝撃強度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
添付図面は、本発明の原理がさらに理解されるために含まれており、本明細書に組み込まれ、且つその一部を構成するものである。図面は、本発明の実施形態を例示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たしている。
【0018】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係るポリエステル組成物の製造方法の一部を示す概略的フローチャートである。
【
図2】本発明の1つの実施形態に係るポリエステル組成物の製造方法の一部を示す概略的フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の詳細な説明では、限定ではなく説明の目的で、本発明の様々な原理の完全な理解を提供するために具体的な詳細を開示する例示的な実施形態を述べる。しかし、本発明の利益を享受した当業者には、本発明が、本明細書に開示された具体的な詳細とは異なる他の実施形態で実施され得ることは自明である。更に、本発明の様々な原理の記載を不明瞭にしないために、周知の装置、方法および材料の説明は、省略され得る。
【0020】
範囲は、本明細書において、「約(about)」1つの特定の値から、および/または「約」他の特定の値までとして表現され得る。この種の範囲が表現される時、他の実施形態は、1つの特定の値から、および/またはその他の特定の値までを含んでいる。同様に、値が概略値として表現される時、「約」という先行詞を用いて表現され、特定の値は、他の実施形態を形成するものと理解される。各範囲の終点は、他方の終点に関連しても、および他方の終点から独立しても重要であることがさらに理解されるであろう。
【0021】
本明細書において、非限定的な用語(例えば、~してもよい(may)、~できる(can)、または他の類似する用語)は、不必要であるか、あるいは選択的な実施、含有、追加、または存在である。
【0022】
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語(技術および科学用語を含む)は、本発明が属する分野の当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書において定義される技術用語は、先行技術において、および本発明の明細書全体において、同じ定義を有しているものとして解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されない限り、理想化された、または過度に正式な定義として解釈されるべきではないことが、さらに理解されるであろう。
【0023】
ポリエステル混合物の準備
【0024】
本実施形態において、ポリエステル混合物は、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate, PET)およびポリ(エチレンテレフタレート-co-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)(poly(ethylene terephthalate-co-1,4-cyclohexylenedimethylene terephthalate, PETG)を含んでもよい。ポリエステル混合物の量が100重量部とみなされる時、PETの量は、65~94重量部であってもよく、PETGの量は、5~30重量部であってもよい。
【0025】
1つの実施形態において、ポリエステル混合物の量が100重量部とみなされる時、PETの量は、67重量部より大きいか、それに等しくてもよく、および/または92重量部より小さいか、それに等しくてもよい。好ましくは、ポリエステル混合物の量が100重量部とみなされる時、PETの量は、67~92重量部であってもよい。
【0026】
1つの実施形態において、PETの比率が高過ぎる(例えば、95wt%より大きい)場合、および/またはPETGの比率が低過ぎる(例えば、5wt%より小さい)場合、得られるポリエステル組成物(または、さらに後に得られるフィルム)の光透過率は、低下する可能性があり、および/または得られるポリエステル組成物(または、さらに後に得られるフィルム)の衝撃強度(例えば、約-20℃における衝撃強度)は、低下する可能性がある。
【0027】
1つの実施形態において、PETの比率が低過ぎる(例えば、65wt%より小さい)場合、および/またはPETGの比率が高過ぎる(例えば、30wt%より大きい)場合、得られるポリエステル組成物(または、さらに後に得られるフィルム)のヘイズ(haze)が高くなるため、製品応用において可視性が低下する。および/または、張力や曲げ強度が低下する可能性があるため、加工の難度が上がる。
【0028】
本実施形態において、PETは、固有粘度(intrinsic viscosity, IV)が0.6~1.0dL/gであり、および/または融点が253℃~255℃である。
【0029】
また、本発明は、PETを取得する方法を限定しない。例えば、精製テレフタル酸(purified terephthalic acid, PTA)とエチレングリコール(ethylene glycol, EG)の間のポリエステル反応によってPETを取得してもよく、あるいは、適切なリサイクル方法によって取得してもよい。1つの実施形態において、PETは、バージンポリエステルチップ(virgin polyester chip)、物理的にリサイクルされたポリエステルチップ(physically recycled polyester chip)、化学的にリサイクルされたポリエステルチップ(chemically recycled polyester chip)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0030】
1つの実施形態において、ポリエステル混合物は、さらに、抗酸化剤および/またはスリップ剤を含む。ポリエステル混合物の量が100重量部とみなされる時、抗酸化剤の量は、0.5~2重量部であってもよく、および/またはスリップ剤の量は、0.5~2重量部であってもよい。
【0031】
1つの実施形態において、抗酸化剤は、トリス(2,4-ジ-tert-ブチル)フェニルホスファイト(CAS:31570-04-4)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(CAS:6683-19-8)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0032】
1つの実施形態において、抗酸化剤は、後述する調製過程のステップ間、調製過程の間、および/または調整過程が完了した後の材料(例えば、粒状または粉末状のポリエステル混合物)に生じる酸化、酸素暴露による亀裂、または酸素暴露による変性の可能性を減らすことができる。
【0033】
1つの実施形態において、スリップ剤は、脂肪酸およびその金属石鹸(例えば、脂肪酸カリウムまたは脂肪酸ナトリウムであるが、本発明はこれに限定されない)、エステル、アミド、パラフィン、または炭化水素、あるいはこれらの組み合わせを含むことができる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0034】
1つの実施形態において、スリップ剤は、材料間(例えば、粒状または粉末状のポリエステル混合物の各粒子間であるが、本発明はこれに限定されない)、および/または材料と装置(例えば、後述する押出機の部品)の間の摩擦を減らすことができる。
【0035】
ポリエステル組成物の調製
【0036】
図1のステップS10~S20および
図2を参照すると、ポリエステル混合物を押出機(
図2に示す)に供給して(feed in)押し出し、反応押出方法によりポリエステル組成物を形成する。
【0037】
押出機は、例えば、市販の単軸スクリュー押出機(single screw extruder, SSE)、二軸スクリュー押出機(twin screw extruder, TSE)、またはその他の任意の類似するスクリュー押出機である。しかしながら、本発明はこれに限定されない。上述した市販のスクリュー押出機の構造および/または操作方法の詳細については、ここでは説明を省略する。
【0038】
1つの実施形態において、少なくとも1つのフィーダ(例えば、サイドフィーダ(side feeder))を押出機に取り付けてもよい。フィーダは、ロスインウェイト(loss-in-weight)式計量器を装備したロスインウェイト式フィーダであってもよい。フィーダは、一般的な市販のデバイスおよび/または付属品であってもよい。つまり、ポリエステル混合物の構成要素は、供給する前に混合してもよく、あるいは異なるフィーダで押出機に供給し、押出機内で混合してもよい。
【0039】
本実施形態において、
図2に示すように、押出機は、加熱領域を有することができる。こうすることによって、ポリエステル混合物を押出機に供給した後、押出機内のポリエステル混合物は、対応して押し出され、加熱されるため、ホットプレス反応により対応するポリエステル組成物を形成することができる。その後、ポリエステル組成物を絞り出す、または押し出す。本実施形態において、加熱領域の加熱温度は、240℃~280℃であってもよい。
【0040】
1つの実施形態において、絞り出した、または押し出したポリエステル組成物は、造粒によってポリエステルチップを形成することができる。
【0041】
1つの実施形態において、加熱領域の加熱温度は、押し出し方向に沿って上昇する。
【0042】
1つの実施形態において、加熱領域は、初期加熱領域および最終加熱領域を含むことができる。最終加熱領域の最低温度は、初期加熱領域の最高温度よりも高いか、それに等しい。
【0043】
図2を例に挙げると、押し出し方向に沿って(例えば、ポリエステル混合物を供給する場所からポリエステル組成物を絞り出す、または押し出す場所に向かって)、加熱領域は、第1加熱領域R1、第2加熱領域R2、第3加熱領域R3、第4加熱領域R4、および第5加熱領域R5を含むことができる。第1加熱領域R1の加熱温度は、240℃~260℃であってもよく、第2加熱領域R2の加熱温度は、245℃~265℃であってもよく、第3加熱領域R3の加熱温度は、250℃~270℃であってもよく、第4加熱領域R4の加熱温度は、250℃~270℃であってもよく、第5加熱領域R5の加熱温度は、260℃~280℃であってもよい。
【0044】
ポリエステル組成物の物性
【0045】
上述した方法によって形成されるポリエステル組成物は、下記の物性のうちの少なくとも1つを有することができる。注意すべきこととして、下記の物性は、言及した標準の試験方法によって得ることができる。そのため、対応する試験装置および/または方法については、詳しく説明しない。
【0046】
ポリエステル組成物の張力は、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials, ASTM)によって定義されたASTM-D638標準試験方法に基づいて測定することができ、55~61メガパスカル(MPa;1MPa=1×106Pa)であってもよく、例えば、55.7~60.8MPaである。
【0047】
ポリエステル組成物の曲げ強度は、ASTMによって定義されたASTM-D790標準試験方法に基づいて測定することができ、85~89MPaであってもよく、例えば、85.1~88.1MPaである。
【0048】
ポリエステル組成物の曲げ係数は、ASTMによって定義されたASTM-D790標準試験方法に基づいて測定することができ、2100~2400MPaであってもよく、例えば、2200~2300MPaである
【0049】
ポリエステル組成物のアイゾット衝撃強度(Izod impact strength)は、ASTMによって定義されたASTM-D256標準試験方法に基づいて測定することができ、3.3~5.7kg-cm/cmであってもよく、例えば、3.48~5.52kg-cm/cmである。
【0050】
ポリエステル組成物の比重は、ASTMによって定義されたASTM-D792標準試験方法に基づいて測定することができ、1.30~1.35g/cm2であってもよく、例えば、1.31~1.32g/cm2である。
【0051】
ポリエステル組成物の応用
【0052】
ポリエステル組成物は、任意の適切な方法により、その他の任意の適切な応用に使用することができる。例えば、
図1のステップS20~S31に示すように、ポリエステル組成物は、一般的な共押出方法により、フィルムを形成することができる。さらに例を挙げると、
図1のステップS20~S32に示すように、ポリエステル組成物は、一般的な射出成形プロセス方法により、特定の形状または形態を有する物体を形成することができる。
【0053】
本実施形態において、ポリエステル組成物は、対応するフィルムを形成することができる。上述した方法によりポリエステル組成物から形成された厚さ3.2mmのフィルムは、下記の物性のうちの少なくとも1つを有することができる。
【0054】
フィルムの透明度は、ASTMによって定義されたASTM-D1003標準試験方法に基づいて測定することができる。厚さ3.2mmのフィルムは、その厚さ方向において、透明度が89%よりも大きく、例えば、90.13%よりも大きいか、それに等しい。
【0055】
フィルムのヘイズは、ASTMによって定義されたASTM-D1003標準試験方法に基づいて測定することができる。厚さ3.2mmのフィルムは、ヘイズが2.0%~6.5%であってもよく、例えば、2.14%~6.09%である。
【0056】
-20℃におけるフィルムの衝撃強度は、ASTMによって定義されたASTM-D256標準試験方法に基づいて測定することができる。厚さ3.2mmのフィルムは、-20℃において、衝撃強度が3~9kJ/mであってもよく、例えば、3.59~8.90kJ/mである。
【0057】
以上のように、本発明の上述した実施形態のポリエステル組成物の製造方法によって形成されたポリエステル組成物(チップ状またはフレーク状であってもよい)は、優れた衝撃強度、比較高い可視光透過率、および比較的低いヘイズを有する。また、上述した実施形態のポリエステル組成物の製造方法によって形成されたポリエステル組成物は、既存のプラスチックフィルムまたは射出成形プロセス装置または技術に直接、または間接的に応用することができ、製造プロセスおよび/または応用において比較的簡単である。ポリエステル組成物は、さらに、他の消費者、工業、または適切な製品に加工することができる。
【0058】
実例
【0059】
以下、例を挙げて、本発明について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の例に限定されない。
【0060】
各例において、ポリエステル混合物中のポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(エチレンテレフタレート-co-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)(PETG)、抗酸化剤、およびスリップ剤の重量比は、表1に示した通りである。
【0061】
表1において、ポリエチレンテレフタレート(表1のPETで示す)は、南亜プラスチック社(Nan Ya Plastics Corporation)によって販売されているポリエステルチップであってもよく、0.6~1.0dL/gの固有粘度および253℃~255℃の融点を有することができる。
【0062】
表1において、ポリ(エチレンテレフタレート-co-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)(表1のPETGで示す)は、イーストマンケミカル社(Eastman Chemical Company)によって販売されているイースター(EastarTM)系列商品であってもよい。
【0063】
表1において、使用した抗酸化剤および/またはスリップ剤は、上述したものであってもよい。
【0064】
上述した方法によって、各例のポリエステル混合物は、対応するポリエステル組成物を形成することができ、あるいは、さらに、厚さ3.2mmのフィルムを形成することができる。
【0065】
表1において、各ポリエステル組成物および/または各フィルムの物性は、上述した方法で測定することができる。
【0066】
【0067】
上述した各例(例えば、実例1~実例4であるが、これに限定されない)において、ポリエステル組成物および/またはフィルムは、優れた衝撃強度(特に、-20℃において、しかしながら、本発明はこれに限定されない)、比較的高い機械的強度、比較的高い可視光透過率、および/または比較的低いヘイズを示した。
【0068】
また、上述した各例におけるポリエステル組成物および/またはフィルムは、既存のプラスチックフィルムまたは射出成形プロセス装置または技術に直接、または間接的に応用することができ、製造プロセスおよび/または応用において比較的簡単である。ポリエステル組成物は、さらに、他の消費者、工業、または適切な製品に加工することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
また、上述した実施形態の製造方法によって形成されたポリエステル組成物(チップ状またはフレーク状であってもよい)は、既存のプラスチックフィルムまたは射出成形プロセス装置または技術に直接、または間接的に応用することができ、さらに、他の消費者、工業、または適切な製品に加工することができる。その例は、以下を含むが、本発明はこれに限定されない:収納箱を作成するための射出成形に用いる材料、低温衝撃強度を有し、且つ可視光の下で高透過率を有する共押出技術によって製造されたフィルム、および/または低温物流に用いる梱包材。
【符号の説明】
【0070】
S10、S20、S31、S32 ステップ
R1 第1加熱領域
R2 第2加熱領域
R3 第3加熱領域
R4 第4加熱領域
R5 第5加熱領域
【手続補正書】
【提出日】2023-03-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリエステル混合物で形成され、前記ポリエステル混合物が、
前記ポリエステル混合物が100重量部に対し、65~94重量部のポリエチレンテレフタレートと、
前記ポリエステル混合物が100重量部に対し、5~30重量部のポリ(エチレンテレフタレート-co-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)と、
を含み、
前記ポリエチレンテレフタレートは、0.6~1.0dL/gの固有粘度および253℃~255℃の融点を有し、前記ポリ(エチレンテレフタレート-co-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)は、0.68~0.75dL/gの固有粘度および72℃~78℃のガラス転移温度(Tg)を有し、
前記ポリエチレンテレフタレートと前記ポリ(エチレンテレフタレート-co-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)との比は、67/30~92/5であり、
ポリエステル組成物から、共押出方法により形成された厚さ3.2mmのフィルムが、前記フィルムの厚さ方向の可視スペクトルにおいて、90%よりも大きい光透過率(ASTM-D1003)を有する物性と、
前記フィルムが、-20℃において、3.50kJ/mよりも大きい衝撃強度(ASTM-D256)を有する物性と、
を有するポリエステル組成物。
【請求項2】
前記ポリエステル混合物が、さらに、
前記ポリエステル混合物中0.5~2重量部の抗酸化剤、または、
前記ポリエステル混合物中0.5~2重量部のスリップ剤、
を含む請求項1に記載のポリエステル組成物。
【請求項3】
押出機を提供するステップと、
ポリエステル混合物を前記押出機に供給して押し出し、ポリエステル組成物を形成するステップと、
を含み、
前記ポリエステル組成物が、前記ポリエステル組成物から、共押出方法により形成された厚さ3.2mmのフィルムが、前記フィルムの厚さ方向の可視スペクトルにおいて、90%よりも大きい光透過率(ASTM-D1003)を有する物性と、前記フィルムが、-20℃において、3.50kJ/mよりも大きい衝撃強度(ASTM-D256)を有する物性と、を有し、
前記ポリエステル混合物が、前記ポリエステル混合物が100重量部に対し、65~94重量部のポリエチレンテレフタレートと、前記ポリエステル混合物が100重量部に対し、5~30重量部のポリ(エチレンテレフタレート-co-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)と、を含み、
前記ポリエチレンテレフタレートは、0.6~1.0dL/gの固有粘度および253℃~255℃の融点を有し、前記ポリ(エチレンテレフタレート-co-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)は、0.68~0.75dL/gの固有粘度および72℃~78℃のガラス転移温度(Tg)を有する、ポリエステル組成物の製造方法。
【外国語明細書】