IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社サクラクレパスの特許一覧

<>
  • 特開-積層体及びインジケータ 図1
  • 特開-積層体及びインジケータ 図2
  • 特開-積層体及びインジケータ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059797
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】積層体及びインジケータ
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/00 20060101AFI20230420BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20230420BHJP
   H01L 21/31 20060101ALN20230420BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALN20230420BHJP
【FI】
H05H1/00 A
G01N21/78 A
H01L21/31 Z
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065531
(22)【出願日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2021169372
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】山川 裕
(72)【発明者】
【氏名】目見田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】西 雅之
(72)【発明者】
【氏名】嶋谷 貴文
(72)【発明者】
【氏名】浅見 綾香
【テーマコード(参考)】
2G054
2G084
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G054AA01
2G054CA08
2G054EA05
2G054GA03
2G054GE01
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA05
2G084AA07
2G084AA08
2G084CC11
2G084CC33
2G084CC34
2G084HH02
2G084HH15
2G084HH30
2G084HH34
2G084HH42
5F004CB09
5F045GB08
(57)【要約】
【課題】イオンを少なくとも含むプラズマと接触することで色調が変化する検知層を有し、プラズマと接触した面のイオン強度分布を測定するための積層体を提供すること。さらに、被処理物表面のイオン強度分布を、簡便な方法で検出できるイオン強度分布インジケータを提供すること。
【解決手段】イオンを少なくとも含むプラズマと接触することで色調が変化する検知層を有し、プラズマと接触した面のイオン強度分布を測定するための積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを少なくとも含むプラズマと接触することで色調が変化する検知層を有し、プラズマと接触した面のイオン強度分布を測定するための積層体。
【請求項2】
前記検知層が、炭素、水素、酸素及び窒素原子以外の原子を含まない樹脂及び/又は樹脂前駆体を含む層である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記検知層が多孔質層である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
プラズマと接触した面のイオン強度分布のみを測定するためのものである、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項5】
基材層の上に、イオンを少なくとも含むプラズマと接触することで色調が変化する検知層が部分的に設けられており、プラズマと接触した面のイオン強度分布を測定するための積層体。
【請求項6】
請求項1又は5に記載の積層体を備える、プラズマ照射時に生じるイオン強度分布の検知に用いる、イオン強度分布インジケータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びインジケータに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスをはじめとする電子デバイスの製造に際しては、プラズマ、オゾン、イオン、紫外線及びラジカル含有ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、「プラズマ等」という場合がある。)による処理が均一に行われる必要がある。さらに、電子デバイスの製造時における、加工性能の向上やバラツキ抑制のために、プラズマ等に含まれる各種の活性種がそれぞれどのような影響を与えているのかを、切り分けて評価することが求められている。
【0003】
このうち、半導体デバイス製造工程におけるイオンを含むプラズマによる処理として、反応性イオンエッチングが知られている。反応性イオンエッチングに際しては、被処理面におけるイオン強度分布が均一になるように処理する必要がある。例えば、半導体チップ製造の前工程でのプラズマ等による処理は、ウエハ面内で均一に行われ、面内均一性を有することが重要である。面内均一性が損なわれる場合、半導体ウエハ上に形成された各半導体チップの性能がバラつき、歩留りに影響する。
さらに、イオン注入による金属、セラミックス、樹脂等の材料の表面処理は、摩擦性、耐磨耗性、腐食性、濡れ性、生体内適合性等の特性を制御する手段として、医療分野や工業分野において広く用いられている。
このため、イオンによる処理の均一性の確認は、各電子デバイス製造装置の設計、イオン注入による表面処理装置の設計、これらの装置を使用する製造工程での管理の際に必要不可欠である。
【0004】
イオン強度分布の測定手法や、イオンを含むプラズマを検知するインジケータとしては、これまで種々の手法が知られている。
特許文献1には、ファラデーカップ集合装置を用いることで、イオンビームのイオン強度分布を高精度で測定するイオン強度分布測定装置が記載されている。
特許文献2には、プラズマ処理により変色する変色層を有するプラズマ処理検知インジケータであって、前記変色層は、Mo、W、Sn、V、Ce、Te及びBiからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素の単体及び/又は当該金属元素を含む無機化合物を含有するプラズマ処理検知インジケータが記載されている。
特許文献3には、プラズマ、オゾン、紫外線及びラジカル含有ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種を検知して色調が変化する検知層と、基材層とを有し、前記検知層は、表面の開孔部と連通する内部空間を有する構造体を備え、前記内部空間内には、プラズマ、オゾン、紫外線及びラジカル含有ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種を検知して色調が変化する検知成分を少なくとも1種含む検知剤が含まれ、積層体における各金属原子の含有量が5.0質量ppm未満である、積層体を含むインジケータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-121465号公報
【特許文献2】特許第6474390号公報
【特許文献3】特開2020-180963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のイオン強度分布装置は、設備が大掛かりであり、半導体チップ製造の前工程でのプラズマ等による処理を行う反応チャンバー等の中に置くことができない。
特許文献2、3に記載されているインジケータは、反応チャンバー内において、プラズマ処理等の進行を目視にて確認できるが、イオンの強度分布のみを切り分けてモニタリングすることが困難である。
これまで、イオンによる処理の加工精度を確認するために、被処理物表面のイオン強度分布を、簡便な方法で検出する方法・イオン強度分布インジケータは知られていなかった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、イオンを少なくとも含むプラズマと接触することで色調が変化する検知層を有し、プラズマと接触した面のイオン強度分布を測定するための積層体を提供することである。さらに、本発明が解決しようとする課題は、被処理物表面のイオン強度分布を、簡便な方法で検出できるイオン強度分布インジケータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討を行った結果、特定の構造の積層体を構成し、これをインジケータとすることで、前記課題が解決できることを見出した。
具体的には以下のとおりである。
項1:
イオンを少なくとも含むプラズマと接触することで色調が変化する検知層を有し、プラズマと接触した面のイオン強度分布を測定するための積層体。
項2:
前記検知層が、炭素、水素、酸素及び窒素原子以外の原子を含まない樹脂及び/又は樹脂前駆体を含む層である、項1に記載の積層体。
項3:
前記検知層が多孔質層である、項1又は2に記載の積層体。
項4:
プラズマと接触した面のイオン強度分布のみを測定するためのものである、項1又は2に記載の積層体。
項5:
基材層の上に、イオンを少なくとも含むプラズマと接触することで色調が変化する検知層が部分的に設けられており、プラズマと接触した面のイオン強度分布を測定するための積層体。
項6:
項1又は5に記載の積層体を備える、プラズマ照射時に生じるイオン強度分布の検知に用いる、イオン強度分布インジケータ。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、イオンを少なくとも含むプラズマと接触することで色調が変化する検知層を有し、プラズマと接触した面のイオン強度分布を測定するための積層体が提供される。
また、本発明により、被処理物表面のイオン強度分布を、簡便な方法で検出できるイオン強度分布インジケータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】基材層の上に検知層を部分的に設けたインジケータの使用状態を示す写真。
図2】本発明の一実施態様に係るイオン強度分布インジケータの概略構成図。
図3】本発明の別の実施態様に係るイオン強度分布インジケータの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[積層体]
本発明の積層体は、イオンを少なくとも含むプラズマと接触することで色調が変化する検知層を有し、プラズマと接触した面のイオン強度分布を測定するためのものである。検知層は、基材層の上に設けられる。検知層と基材層の間には、必要に応じて、基材層の色調の影響の排除や基材層の接着性等の改善のために中間層を設けることができる。
本発明の積層体は、プラズマと接触した面のイオン強度分布のみを測定するためのものであることが好ましい。本発明の積層体が有する検知層は、イオン以外の活性種(例えば、ラジカル等)と接触しても色調が変化しないものであることが好ましい。例えば、アルゴンを原料ガスとするイオンを含むプラズマと接触した場合に検知層の色調が変化し、酸素を原料ガスとするラジカルを主として含みイオンをほとんど含まないプラズマと接触した場合には、検知層の色調が変化しないものが好ましい。
なお、本明細書中、プラズマ及びイオンは、以下のとおりである。
【0012】
<プラズマ>
プラズマは、プラズマ発生用ガスを用い、交流電圧、直流電圧、パルス電圧、高周波、マイクロ波等を印加することにより発生するプラズマを意味し、減圧プラズマ及び大気圧プラズマの両方が該当する。
プラズマ発生用ガスとしては、例えば、酸素、窒素、水素、フッ素、塩素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、シラン、アンモニア、臭化硫黄、水蒸気、亜酸化窒素、テトラエトキシシラン、四フッ化炭素、トリフルオロメタン、四塩化炭素、四塩化ケイ素、六フッ化硫黄、四塩化チタン、ジクロロシラン、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、トリメチルアルミニウム、空気及び二酸化炭素からなる群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。
プラズマとしては、例えば、電子デバイスの製造に際して、成膜工程、エッチング工程、アッシング工程、不純物添加工程、洗浄工程等で使用されるプラズマ処理装置(プラズマ発生用ガスとして含有する雰囲気下で交流電圧、直流電圧、パルス電圧、高周波、マイクロ波等を印加してプラズマを発生させることによりプラズマ処理を行う装置)で発生するプラズマが挙げられる。
【0013】
<イオン>
イオンは、例えば、アルゴン、メタン、アセチレン等のガスに高周波電力を印加することで生じるもの等が挙げられる。例えば、イオン化したアルゴンを真空中、電場で加速し、金属表面などに照射・衝突させることで、ほとんど化学反応をしない性質を活かして表面原子を削り取るスパッタリングや、イオンビームエッチング、ドーピング等で用いられるイオン等であってもよい。
また、イオンは、プラズマ中に含まれるイオンであってもよい。例えば、アルゴン、窒素、空気等をプラズマ発生用ガスとして、交流電圧、直流電圧、パルス電圧、高周波、マイクロ波等を印加することにより、イオンを含有するプラズマを発生させることができる。
【0014】
<検知層>
本発明の検知層は、イオンを少なくとも含むプラズマと接触することで色調が変化する層であれば、特に限定されない。検知層は、イオンを少なくとも含むプラズマと接触することで、変色、消色又は発色のいずれか1つ以上の色調変化を起こす。
本発明の検知層は、イオンを少なくとも含むプラズマと接触することで、イオン衝撃により検知層を構成する成分の分子結合が切断され、検知層表面の炭素原子濃度が高まる(炭化)ことで、変色することが好ましい。イオンの衝突エネルギーと、検知層を構成する成分の分子結合の切断とは相関すると考えられ、色調変化の度合いから、イオンエネルギーの強度分布を評価することが可能である。
また、検知層を構成する成分の分子構造や、検知層の構造等を調整することで、分子結合の結合エネルギーが変化する。検知層を構成する成分を調整することで、イオンエネルギーに対する分子結合の切断(色調変化)を調整することが可能である。
これらより、検知層は、イオンを少なくとも含むプラズマ等を単に検知するだけでなく、プラズマに含まれるイオンのイオン強度分布を、目視により簡便に検知することができる。
【0015】
(色調)
検知層の色調は、イオンを少なくとも含むプラズマとの接触により、検知層表面の色調変化を把握できるものであればよい。例えば、透明、着色透明、白色系、淡色系のものが好ましい。淡色系としては、例えば、L表色系におけるL値が75以上である色調が挙げられる。
検知層の色調は、検知層を設ける基材層の色調を隠蔽し得るものであってもよい。
検知層がイオンを少なくとも含むプラズマと接触し、検知層表面の炭素原子濃度が高まる(炭化)ことで色調変化する場合には、検知層の色調は白色系又は淡色系であることが好ましい。なお、基材層が白色系又は淡色系である場合には、検知層の色調が透明又は着色透明であってもよい。
【0016】
(検知層形成材料)
検知層を構成する材料は、有機材料及び有機無機複合体材料からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる。
有機材料としては、例えば、樹脂、樹脂前駆体、紙又はこれらの複合体からなる群より選ばれる1種以上が挙げられるが特に限定されない。特に樹脂及び/又は樹脂前駆体が好ましく、炭素、水素、酸素及び窒素原子以外の原子を含まない樹脂及び/又は樹脂前駆体がより好ましい。樹脂又は樹脂前駆体としては、特に限定されず、合成したものでも市販のものでもよい。例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。特に、構造体として、ポリアミドイミド系樹脂(前駆体)、ポリイミド系樹脂(前駆体)、ポリベンゾイミダゾール系樹脂(前駆体)、ポリアミド系樹脂のような耐熱性高分子を用いると、耐熱性に優れた積層体となることから、高温条件下で使用可能で、強力なプラズマ処理に対する耐性を有するインジケータを構成できる。
有機無機複合体材料としては、前記有機材料と、無機材料(金属、ガラス、セラミックス等)との複合体が挙げられる。複合体としては、例えば積層体、組成物等が挙げられる。
【0017】
本発明において、積層体における各金属原子のそれぞれの含有量を5.0質量ppm未満及び/又は各ハロゲン原子の含有量を30質量ppm未満とする場合、検知層を有機材料、特に、樹脂又は樹脂前駆体とすることが好ましい。
また、金属原子及び/又はハロゲン原子による電子デバイス製造装置内の汚染を防止するために、検知層として、有機材料、特に、樹脂を用いることが好ましい。
本発明においては、検知層が、金属原子を含まない化合物、特に、炭素、水素、酸素及び窒素以外の原子を含まない樹脂及び/又は樹脂前駆体からなる層であることが好ましい。また、検知層は、その構成成分を十分に精製することや、調製に際して金属製の器具を用いない等により、金属原子やハロゲン原子等の不純物が混入しないようにするのが好ましい。これにより、積層体における各金属原子の含有量を5.0質量ppm未満とすることができ、プラズマ等を検知するためのインジケータとして積層体を用いた場合、電子デバイスの製造装置内における汚染、特に、金属原子やハロゲン原子による汚染を効果的に防止できる。
検知層は、色調変化の効果を損なわない範囲において、感度の調整や検知前後の色差の視認性向上等を目的として、各種成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えば色素、樹脂及び/又は樹脂前駆体、界面活性剤、充填剤、色調変化遅延剤、色調変化促進剤、溶媒、レベリング剤、消泡剤等の添加剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0018】
(検知層の厚さ)
検知層の厚さは、検知機能を発揮する範囲であれば特に制限されず、用途や求める特性等に応じて適宜好適化できる。清浄性と視認性の点から、例えば100μm未満、好ましくは50μm、より好ましくは30μm以下であり、例えば0.5μm以上、好ましくは5μm、より好ましくは15μm以上である。検知層厚さが100μm以上であると、検知層からの放出ガスが増大し清浄性が低下するおそれがある。また、0.5μm未満であると、検知層の下の層の色調の影響により変色レンジが狭くなるおそれがある。
【0019】
(検知層の膜密度)
検知層の膜密度は、検知機能を阻害しない範囲であれば特に制限されず、用途や求める特性等に応じて適宜好適化できる。例えば、検知層が非多孔質層である場合には、ベース材料の膜密度となる。また、検知層が多孔質層である場合、非多孔質層時のベース材料の膜密度を100%として、その相対的な膜密度を、例えば75.0%以下、好ましくは35.0%以下、より好ましくは30.0%以下、より好ましくは25.0%以下であり、15.0%以上とすることが好ましい。15.0%未満では、変色層を形成することが困難であり、また、変色層の膜強度等が不足することとなる。75.0%を超えると、変色層内部へのプラズマ等の侵入が阻害されることとなり、検知剤の分解が十分に行われず、変色層の変色感度が低くなる。
本発明において、検知層は、多孔質層であることが好ましい。
【0020】
検知層が多孔質層である場合の膜密度は、検知機能を発揮する範囲であれば特に制限されず、用途や求める特性等に応じて適宜好適化できる。感度の点から、例えば0.20g/cm以上、好ましくは0.25g/cm以上、より好ましくは0.30g/cm以上である。上限値は特に限定されないが、例えば、1.00g/cmとすることができる。
検知層が多孔質層である場合において、その膜密度が0.20g/cm未満の場合、検知層を形成することが困難であり、また、検知層の膜強度等が不足することとなる。
本発明においては、検知層を多孔質層とすることで、検知層の色調変化速度、色調変化評価の精度、色調変化感度を満足するものとできる。
【0021】
検知層が多孔質層である場合、膜密度の調整手段としては、多孔度を調整する手段が挙げられる。例えば、
(1)孔形成剤を用いる等の化学的手段による多孔化(例えば、発泡剤による多孔化、成型時等に発生するガスを用いた多孔化、成型後に多孔化形成剤を溶解、気化、昇華等させて除去する多孔化、溶解度や沸点等が異なる混合溶媒の使用等による相分離による多孔化等)
(2)延伸による多孔化
(3)粉粒体の融着による多孔化
(4)穿孔等の機械的手段による多孔化に際して、その多孔度を調整する手段が挙げられる。
【0022】
本発明においては、前記(1)の手段において、検知層を構成する樹脂と、樹脂又はその前駆体の溶解度が高い良溶媒の種類及び量と、樹脂の溶解度が低い貧溶媒の種類及び量とを調整する手段等が好ましい。
構造体を構成する樹脂として、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂等からなる群より選ばれる1種以上を用いた場合、良溶媒としては、アミド系溶媒、尿素系溶媒等からなる群より選ばれる1種以上の含窒素極性溶媒が、貧溶媒としては、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、エステル系溶媒等からなる群より選ばれる1種以上の有機溶媒が、それぞれ好ましく用いられる。
アミド系溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。尿素系溶媒としては、例えば、テトラメチル尿素、ジメチルエチレン尿素が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、ジグライム、トリグライム、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。炭化水素系溶媒としては、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル等が挙げられる。エステル系溶媒としては、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル等が挙げられる。
なお、本発明において、樹脂又は樹脂前駆体の良溶媒とは、25℃の溶媒100gに溶解する樹脂又は樹脂前駆体の量が0.1g以上となる溶媒である。また、樹脂又は樹脂前駆体の貧溶媒とは、25℃の溶媒100gに溶解する樹脂又は樹脂前駆体の量が0.1g未満である溶媒である。
【0023】
本発明においては、樹脂又は樹脂前駆体、良溶媒及び貧溶媒合計量を100質量%とした場合に、樹脂又は樹脂前駆体、良溶媒及び貧溶媒の使用量を、それぞれ以下のとおりとすることが好ましい。
樹脂又は樹脂前駆体:例えば7.0質量%以上、好ましくは8.0質量%以上であり、例えば15.0質量%以下、好ましくは11.0質量%以下。
良溶媒:例えば10.0質量%以上、好ましくは15.0質量%以上であり、例えば50.0質量%以下、好ましくは40.0質量%以下。
貧溶媒:例えば35.0質量%以上、好ましくは40.0質量%以上であり、例えば80.0質量%以下、好ましくは70.0質量%以下。
樹脂又は樹脂前駆体の量が15.0質量%を超えると、多孔度の調製が困難であり、さらに、変色レンジが狭くなるおそれがある。また、樹脂の量が7.0質量%未満であると、多孔質層が形成されないおそれがあり、さらに、変色感度が悪くなるおそれがある。
良溶媒の量が50.0質量%を超えると、多孔質層を形成することができないおそれがある。また、良溶媒の量が10.0質量%未満であると、ムラが生じるおそれがあり、相分離する可能性がある。
貧溶媒の量が80.0質量%を超えると、ムラが生じるおそれがあり、相分離する可能性がある。また、貧溶媒の量が35.0質量%未満であると、多孔質層を形成することができないおそれがある。
【0024】
また、本発明においては、樹脂又は樹脂前駆体と、有機溶媒と、を含むワニスを用い、ワニスに対して良溶媒及び貧溶媒を混合したものを使用してもよい。ワニスとしては、樹脂又は樹脂前駆体含有量が10~20質量%、好ましくは10~15質量%のワニスを用いることができる。この場合、ワニス、良溶媒及び貧溶媒合計量を100質量%とした場合に、ワニス、良溶媒及び貧溶媒の使用量を、それぞれ以下のとおりとすることが好ましい。
ワニス:例えば60質量%以上、好ましくは70質量%以上であり、例えば90質量%以下、好ましくは80質量%以下。
良溶媒:例えば1質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、例えば20質量%以下、好ましくは15質量%以下。
貧溶媒:例えば1質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、例えば20質量%以下、好ましくは15質量%以下。
ワニスの量が90質量%を超えると、多孔度の調製が困難であり、さらに、変色レンジが狭くなるおそれがある。また、ワニスの量が60質量%未満であると、多孔質層が形成されないおそれがあり、さらに、変色感度が悪くなるおそれがある。
良溶媒の量が20質量%を超えると、多孔質層を形成することができないおそれがある。また、良溶媒の量が1質量%未満であると、ムラが生じるおそれがあり、相分離する可能性がある。
貧溶媒の量が20質量%を超えると、ムラが生じるおそれがあり、相分離する可能性がある。また、貧溶媒の量が1質量%未満であると、多孔質層を形成することができないおそれがある。
【0025】
検知層は、膜密度が0.20g/cm以上、好ましくは0.20g/cm以上1.00g/cm以下の多孔質層であることが好ましい。特に、検知層は、「ポリイミド系樹脂前駆体と、アミド系溶媒(ポリイミド系樹脂前駆体の良溶媒)と、エーテル系溶媒(貧溶媒)とを含む樹脂溶液から得られたポリイミド系樹脂の多孔質層」又は「ポリアミドイミド系樹脂前駆体と、アミド系溶媒(ポリアミドイミド系樹脂前駆体の良溶媒)と、エーテル系溶媒(貧溶媒)とを含む樹脂溶液から得られたポリアミドイミド系樹脂の多孔質層」であることが好ましい。
【0026】
<基材層>
基材層は、検知層を支持し得るものであれば特に限定されない。積層体に求める特性や用途等を勘案して、無機材料、有機材料及びこれらの複合体からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
基材層の厚さは、検知層を確実に支持し得るものであれば特に制限されない。例えば0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上であり、例えば10mm以下、好ましくは1mm以下である。
基材層の形状は、特に限定されない。例えば、用途等に応じて、円形、正方形、矩形、三角形、六角形等の任意の形状にできる。本発明においては、後述の積層体の形状となるように、例えば、電子デバイス製造装置で使用される基板の形状と同一又は略同一とすることで、積層体をいわゆるダミー基板として用いることができ、簡便に上記処理が基板全体に対して均一に行われているかどうかを検知することが可能となる。
【0027】
基材層を構成する無機材料としては、例えば、金属又は合金、半導体材料、セラミックス、ガラス、石英、サファイア及びコンクリート等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
基材層を構成する有機材料としては、例えば、樹脂、紙、合成紙、木材及び繊維類(不織布、編物、織物、その他の繊維シート)、皮革等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
複合体としては、例えば、前記無機材料及び前記有機材料からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料を用いて得られる積層体や組成物が挙げられるが特に限定されない。
基材層としては、これらの中でも、半導体材料、ガラス、サファイア、樹脂及び紙からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0028】
前記半導体材料としては、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、テルル(Te)、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、窒化ア
ルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)、ダイヤモンド、シリサイド材料(β-FeSi2、MgSi2、NiSi2、BaSi2、CrSi2、CoSi2、TaSi等)、金属酸化物又は金属酸窒化物等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げら
れるが特に限定されない。
【0029】
ここで、前記金属酸化物又は金属酸窒化物としては、例えば、In-Sn-Ga-Zn-O系酸化物
、In-Hf-Ga-Zn-O系酸化物、In-Al-Ga-Zn-O系酸化物、In-Sn-Al-Zn-O系酸化物、In-Sn-Hf-Zn-O系酸化物、In-Hf-Al-Zn-O系酸化物、In-Ga-Zn-O系酸化物、In-Sn-Zn-O系酸化物、In-Al-Zn-O系酸化物、Sn-Ga-Zn-O系酸化物、Al-Ga-Zn-O系酸化物、Sn-Al-Zn-O系酸化物、In-Sn-Zn-O系酸化物、In-Hf-Zn-O系酸化物、In-La-Zn-O系酸化物、In-Ce-Zn-O系酸化物、In-Pr-Zn-O系酸化物、In-Nd-Zn-O系酸化物、In-Sm-Zn-O系酸化物、In-Eu-Zn-O系酸化物、In-Gd-Zn-O系酸化物、In-Tb-Zn-O系酸化物、In-Dy-Zn-O系酸化物、In-Ho-Zn-O系酸化物、In-Er-Zn-O系酸化物、In-Tm-Zn-O系酸化物、In-Yb-Zn-O系酸化物、In-Lu-Zn-O系酸化物、In-Zn-O系酸化物、Sn-Zn-O系酸化物、Al-Zn-O系酸化物、Zn-Mg-O系酸化物、Sn-Mg-O系酸化物、In-Mg-O系酸化物、In-Ga-O系酸化物、Zn-O-N系酸窒化物、In-O系酸化物(酸化インジウ
ム)、Sn-O系酸化物(酸化錫)、Zn-O系(酸化亜鉛)等からなる群より選ばれる少なくとも1
種が挙げられるが特に限定されない。
ここで、例えば、In-Sn-Ga-Zn-O系酸化物とは、インジウム(In)、錫(Sn)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)及び酸素(O)を有する酸化物半導体を意味し、各原子の組成比は特に問わないものであり、場合により、ケイ素(Si)等の原子を含んでいてもよい。
【0030】
前記樹脂としては、公知又は市販のものを使用することができ、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリノルボルネン等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等)、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ABS系樹脂等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられるが特に限定されない。
好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0031】
各製品の製造装置におけるインジケータとして積層体を用いる場合、基材層を構成する材料としては、例えば以下のものが挙げられる。
半導体製造装置用インジケータ:シリコン、ガリウムヒ素、炭化ケイ素等。
LED製造装置用インジケータ:サファイア、窒化ガリウム、ガリウムヒ素等。
半導体レーザー製造装置用インジケータ:ガリウムヒ素、窒化ガリウム、サファイア等。
パワーデバイス製造装置用インジケータ:炭化ケイ素、窒化ガリウム、シリコン等。
太陽電池製造装置用インジケータ:シリコン、ガラス、ゲルマニウム等。
液晶ディスプレイ製造装置用インジケータ:シリコン、ガラス、ゲルマニウム等。
有機ELディスプレイ製造装置用インジケータ:ガラス等。
汎用・簡易型インジケータ:樹脂、紙、ガラス等。
【0032】
<隠蔽層>
本発明の積層体は、検知層と基材層の間に隠蔽層を有していてもよい。
隠蔽層は、基材層の色調が、検知層の色調や検知層の変色の観察等に影響を与えないようにするための層である。また、隠蔽層の色調は、検知層の色調や検知層の変色の観察等に影響を与えない色調が好ましい。
隠蔽層を構成する成分は、特に限定されない。例えば、検知層を構成する成分と同様の成分から構成されていてもよい。この場合、隠蔽層の色調と検知層の変色後の色調とが同様のものとなることから、検知層の変色をより明確に観測することが可能となる。
また、隠蔽層の成分を、検知層と異なる成分とした場合であっても、その色調について検討し、検知層の変色後の色調と同様のものとすることが有利である。
さらに、隠蔽層を、プライマー機能を有する隠蔽層とすることで、基材層と検知層との接着性を向上させることができる。
隠蔽層の厚さとしては特に限定されないが、例えば5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、例えば35μm以下、より好ましくは30μm以下である。
【0033】
<その他の層>
本発明の積層体は、検知層、基材層及び必要に応じて設けられる隠蔽層以外に、その他の層を有していてもよい。
その他の層としては、例えば、スペーサー層、プライマー層、剥離層、緩衝層等が挙げられる。
検知層、基材層、隠蔽層及びその他の層の積層の順序は、必要に応じて設けられる隠蔽層が検知層と基材層の間に設けられる限り、特に限定されない。
検知層、隠蔽層及びその他の層は、それぞれ1層ずつ形成してもよく、それぞれ複数層形成してもよい。また、同じ層同士が隣接していてもよい。この場合、同じ層同士は、互いに同じ組成であっても又は異なる組成であってもよい。
検知層、隠蔽層及びその他の層は、基材層又は各層の全面に形成してもよく、あるいは部分的に形成してもよい。これらの場合、特に検知層の色調の変化を確保するために、少なくとも1つの検知層の一部又は全部がプラズマ等に曝されるように、検知層及びその他の層を形成できる。
その他の層の構成材料は、特に限定されず、有機材料、無機材料、有機無機複合体材料のいずれでもよい。
【0034】
<検知層の配置>
本発明においては、検知層を基材層上に全面的に又は部分的に形成することができる。
例えば、検知層を基材層上に部分的に形成した場合には、
(a)プラズマに曝される検知層の面積を小さくできるため、プラズマ処理装置のチャンバーに入る不純物の総量を減らすことができる、
(b)液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の大型基板を用いる製造プロセスに用いるインジケータを製造する場合において、検知層の作製をより低コストで行うことができる、
(c)プラズマと接触することで変化する色調を評価する際、基板のサイズにかかわらず、高価な大面積の測色計を用いる必要がなく、安価な市販の測色計を利用できる、
等の点で有利である。
【0035】
積層体のプラズマ曝露面の一部に検知層を設ける場合、例えば図1図3に示すように、基材層上の1箇所以上に設けることができる。2箇所以上に設ける場合の検知層の配置は、特に限定されない。測定したい任意の場所に設けることができ、また、基材層(基板)全面に対するプラズマ照射の分布が把握できるように配置することができる。例えば、検知層が基材層上で均等な間隔になるような配置、基材層中央とその周囲に均等な間隔になる配置等が挙げられる。また、基材層(基板)が円形(半導体製造装置用インジケータ用途等)の場合、例えば、検知層を円周状に配置することができ、基材層(基板)を正方形や矩形の場合(液晶ディスプレイ製造装置用インジケータ用途等)の場合、検知層を四角形状に配置にすることができる。
【0036】
<積層体の層構成>
本発明の積層体は、上記各処理の完了や面内均一性が確認できる限り、検知層、基材層、隠蔽層及びその他の層を用いて、任意の層構成とすることができる。
例えば、色調が変化する前の検知層の色調と、検知層以外の層(以下、「非検知層」という場合がある。)の色調を同様のものとし、イオンによる検知層の色調変化により、検知層と非検知層との色差が識別可能となるように各層を形成することができる。
例えば、色調が変化する前の検知層の色調と、非検知層の色調とを異なるものとして形成し、イオンにより検知層の色調が変化することにより、検知層と非検知層の色差がなくなるように各層を形成できる。
例えば、検知層と非検知層とが重ならないように検知層及び非検知層を形成した層(以下、「検知-非検知層」という場合がある。)の上から、さらに別のデザインを有する検知層を形成することで、検知-非検知層における検知層及び非検知層の境界線が実質的に識別できない状態にでき、より優れた意匠性を達成できる。
【0037】
本発明の積層体において、層構成の好ましい態様としては、
(1)検知層が、基材層の少なくとも一方の主面上に隣接して形成されている積層体、
(2)基材層上に、非検知層及び検知層が順に形成されており、前記非検知層が、前記基材層の主面上に隣接して形成されており、前記検知層が前記非検知層の主面上に隣接して形成されている積層体、
をあげることができる。前記上記(1)の積層体において、非検知層が検知層の主面上に隣接して形成されている積層体であってもよい。
本発明の積層体は、イオンにより検知層の色調が変化したことを報知するために、例えば検知層の変色により文字、図柄及び記号の少なくとも1種が現れる構成としてもよい。文字、図柄及び記号は、変色を知らせるすべての情報を包含するものであり、これら文字等は、使用目的等に応じて適宜デザインできる。
【0038】
<形状>
本発明の積層体の形状は、用途等に応じて任意の形状にできる。
例えば、電子デバイス製造装置で使用される基板の形状と同一又は略同一とし、積層体をいわゆるダミー基板として用いることができ、簡便に上記処理が基板全体に対して均一に行われているかどうかを検知することが可能となる。
ここで、「電子デバイス製造装置で使用される基板の形状と同一」とは、電子デバイス製造装置で使用される基板の形状と完全に同一である場合に加えて、電子デバイス製造装置で使用される基板の形状と、上記処理を行う各電子デバイス装置内の基板の設置箇所に置く(嵌める)ことができる程度に実質的に同一である場合のいずれの場合であってもよい。実質的に同一とは、例えば、基板の主面の長さ(主面形状が円形の場合は直径、正方形や矩形等であれば縦及び横の長さ)に対する積層体の主面の長さの差が±5.0mm以内、基板に対する積層体の厚さの差が±1000μm以内程度であればよい。
【0039】
<積層体における各金属原子の含有量>
積層体における各金属原子の含有量は、5.0質量ppm未満であることが好ましい。より好ましくは1.0質量ppm未満、さらに好ましくは0.5質量ppm未満、よりさらに好ましくは0.1質量ppm未満、最も好ましくは1.0質量ppt未満、より最も好ましくは0.5質量ppt未満である。
ここで、「金属原子」は、水素、炭素、窒素、酸素、ケイ素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素及び希ガス以外の原子を意味する。
積層体における各金属原子の含有量を5.0質量ppm未満とするには、積層体に含まれる全ての材料を、金属原子を含まないもので構成する。また、積層体に関係するすべての成分(溶媒等も含む)を、金属原子を含まないものとし、精製により不純物として含まれる金属原子含有物質を除去する。さらに、製造工程において、金属原子の混入(コンタミ)が発生する器具等を用いないことが好ましい。
【0040】
本発明においては、検知層、基材層、隠蔽層等の全ての層について、ICP-MS(高周波誘導結合プラズマ質量分析/Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)などにより各金属原子含有量を測定し、それぞれが5.0質量ppm未満であれば、積層体における各金属原子の含有量が5.0質量ppm未満とする。
また、本発明の積層体を含むインジケータを、被処理材料とともに処理装置に導入し、プラズマ処理等の処理を行う。その後、処理装置内に導入した被処理材料の表面にある各金属原子をフッ化水素酸等で回収してICP-MSなどにより各金属原子含有量を測定し、それぞれが5.0質量ppm未満であれば、積層体における各金属原子が5.0質量ppm未満であるとする。
積層体における各金属原子の含有量を5.0質量ppm未満とすることにより、積層体を電子デバイスの製造装置に用いるインジケータとした際に、被処理物や前記製造装置内における金属原子の汚染を防止することが可能となる。
これにより、特に、金属原子の存在を嫌う半導体電子デバイスの製造工程(特に、前半プロセスにおけるエッチング処理工程)においても使用し得るインジケータを得ることが可能となる。
【0041】
<各ハロゲン原子の含有量>
積層体における各ハロゲン原子の含有量は、30質量ppm未満であることが好ましい。より好ましくは5質量ppm未満、さらに好ましくは1質量ppm未満、よりさらに好ましくは0.5質量ppm未満、最も好ましくは1.0質量ppt未満である。
積層体における各ハロゲン原子の含有量を30質量ppm(好ましくは5質量ppm)未満とするには、積層体に含まれる全ての材料を、ハロゲン原子が含まれていないもので構成することが好ましい。また、積層体に関係するすべての成分(溶媒等も含む)について、ハロゲン原子を含まないものを用いるとともに精製により不純物として含まれるハロゲン原子含有物質を除去することが好ましい。さらに、製造工程において、ハロゲン原子の混入(コンタミ)が発生する器具等を用いない方法等を用いることが好ましい。
【0042】
本発明においては、検知層、基材層、隠蔽層等の全ての層で用いられる各材料について、燃焼イオンクロマトグラフィー又はICP-MS(高周波誘導結合プラズマ質量分析/Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)などにより各ハロゲン原子含有量を測定し、それぞれが30質量ppm未満であれば、積層体における各ハロゲン原子の含有量が30質量ppm未満であるとする。
また、本発明の積層体を含むインジケータを、被処理材料とともに処理装置に導入し、プラズマ処理等の処理を行う。その後、処理装置内に導入した被処理材料の表面にあるハロゲン原子を回収して燃焼イオンクロマトグラフィー又はICP-MSなどにより各ハロゲン原子含有量を測定し、それぞれが30質量ppm未満であれば、積層体における各ハロゲン原子の含有量が30質量ppm未満とする。
積層体における各ハロゲン原子の含有量を30質量ppm未満、例えば5質量ppm未満とすることにより、積層体を電子デバイスの製造装置に用いるインジケータとした際に、被処理物や前記製造装置内におけるハロゲン原子の汚染を防止することが可能となる。
これにより、特に、ハロゲン原子の存在を嫌う半導体電子デバイスの製造工程(特に、前半プロセスにおけるエッチング処理工程)においても使用し得るインジケータを得ることが可能となる。
【0043】
<積層体の製造方法>
積層体の製造方法は、特に限定されず、例えば、(1)基材層の上に、必要に応じて隠蔽層等を設けた後に、検知層形成材料を塗布・印刷し、乾燥・加熱することで検知層を形成し、積層体とする方法、(2)検知層形成材料から検知層を形成し、必要に応じて隠蔽層等が設けられた基材層の上に固定する方法、等が挙げられる。
本発明においては、積層体の製造容易性、積層体への不純物の混入防止等を担保できれば、前記(1)及び(2)等のいずれの方法を用いてもよい。
【0044】
本発明において、不純物混入防止の観点を重視する場合、積層体のプラズマ曝露面の全面に検知層を設けるよりも、積層体のプラズマ曝露面の一部に検知層が設けられることが好ましい。積層体のプラズマ曝露面の一部に任意の形状の検知層を設ける方法としては、特に限定されない。例えば、塗付・印刷方法により検知層を基材層の上の任意の位置に設けることができ、別途作製した任意の形状の検知層を基材層の上の任意の位置に固定することができ、基材層上の任意の位置に型、くぼみ(凹部)、貫通孔等を設け、検知層形成材料を投入(詰め込み)することにより検知層を設けることができる。
【0045】
塗付・印刷方法により任意の形状の検知層を任意の位置に設ける方法としては、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、スプレー塗布、刷毛、ローラ、ブレードによる塗布、浸漬塗布等が挙げられる。印刷方法としては、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等の印刷方法が挙げられる。
塗付・印刷方法を用い、任意の形状の検知層を任意の位置に設ける際には、例えば、マスク剤を用いて積層体のプラズマ曝露面にパターンを形成した後に、基材を塗料・インキ中に浸漬することによって検知層を形成する方法を用いることもできる。この場合、マスク剤を検知層形成後に薬液によって除去する。また、例えば、積層体のプラズマ曝露面の全面に塗布・印刷により検知層を形成した後に、検知層上にマスク剤を用いてパターンを形成し、マスク剤が形成されていない部分の検知層を薬剤・溶剤等により除去した後に、マスク剤を薬剤によって除去する。
【0046】
別途作製した検知層を基材層の上の任意の位置に固定する方法としては、特に限定されない。例えば、転写、接着剤又は粘着剤による貼付、両面テープによる貼付、その他の公知の接合方法により基材層に貼り付けることができる。また、基材層に少なくとも1つ以上のくぼみ(凹部)や貫通孔(段付き孔、テーパー孔、雌ネジ孔等)を形成し、あらかじめ形成した検知層を嵌め込み固定することができる。
【0047】
基材層上の任意の位置に型、くぼみ(凹部)、貫通孔等を設け、検知層形成材料を投入(詰め込み)することにより検知層を設ける方法としては、特に限定されない。例えば、1つ以上の任意の形状の型、1つ以上のくぼみ(凹部)や貫通孔(段付き孔、テーパー孔、雌ネジ孔等)を形成し、検知層形成材料を投入(詰め込み)することで、検知層を固定することができる。
【0048】
検知層を嵌め込み固定する際や検知層形成材料をくぼみや貫通孔に投入(詰め込み)する際には、基材層と嵌め込んだ検知層とが面一の状態であってもよく、検知層が基材層よりもくぼんだ状態(凹んだ状態、もぐりこんだ状態等)であってもよく、検知層が基材層よりも飛び出していてもよい。
また、くぼみや貫通孔内に、必要に応じてスペーサー層や緩衝層を設けてもよい。段付きの貫通孔やテーパー上の貫通孔とした場合には、基材層への検知層の着脱を容易に行うことができる。
【0049】
積層体のプラズマ曝露面の一部に検知層を設ける場合、検知層の配置としては、測定したい任意の場所に設けることができ、一か所でも複数箇所でもよい。複数箇所の場合、それぞれの場所が均等な間隔になるような配置や、中央とその周囲に均等に配置する等の配置とすることができる。また、基材層(基板)を円形とした半導体製造装置用インジケータの場合、例えば、検知層を円周状に配置することができ、基材層(基板)を正方形や矩形とした液晶ディスプレイ製造装置用インジケータの場合、検知層を四角形状に配置にすることができる。
【0050】
積層体のプラズマ曝露面の一部に検知層を設ける場合、基材層上の1箇所以上に設けることができる。2箇所以上に設ける場合の検知層の配置は、特に限定されない。測定したい任意の場所に設けることができ、また、基材層(基板)全面に対するプラズマ照射の分布が把握できるように配置することができる。例えば、検知層が基材層上で均等な間隔になるような配置、基材層中央とその周囲に均等な間隔になる配置等が挙げられる。また、基材層(基板)が円形(半導体製造装置用インジケータ用途等)の場合、例えば、検知層を円周状に配置することができ、基材層(基板)を正方形や矩形の場合(液晶ディスプレイ製造装置用インジケータ用途等)の場合、検知層を四角形状に配置にすることができる。
基材層(基板)が円形(半導体製造装置用インジケータ用途等)の場合における、検知層の配置例としては、例えば図1図3に示すような配置が挙げられるが、このような配置に限定されるものではない。
【0051】
基材層の上に検知層等を設ける際には、必要に応じて基材層に表面処理を行うことにより、接着性を向上できる可能性がある。表面処理としては、周知の手段である、プライマー処理、化成処理、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理、サンドブラスト処理等からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0052】
<積層体の用途>
本発明の積層体は、処理前の検知層の色を基準に色差を測定することで、イオンを検知するだけでなく、イオン強度分布を測定可能であることから、イオンによる処理の均一性を検知するインジケータとして用いることができる。
例えば、積層体は、半導体、LED、半導体レーザー、パワーデバイス、太陽電池、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、MEMS等の電子デバイスを製造する装置に用いるインジケータとして用いることができる。また、イオンを含むプラズマ等におけるイオン等を検知するための汎用・簡易型インジケータとして用いることができる。さらに、後述のように、イオン強度分布インジケータとして用いることもできる。
【0053】
インジケータの使用に際しては、電子デバイスを製造する際に上記処理を行う各電子デバイス製造装置内の基板の設置箇所に、本発明のインジケータを置けばよい。
例えば、ウエハステージ、ヒータ、真空チャックテーブル等に対して水平(横)に寝かせて配置してもよく、また、ウエハボート等を用いて垂直(縦)に配置してもよい。
本発明のインジケータを、電子デバイスを製造する際に用いられる基板と同一形状とすると、基板と同様に取り扱うことや設置することができる。
このような場合には、装置内に置かれたインジケータが上記処理に曝露されることで色調が変化することとなり、上記処理の面内均一性を、簡便に検知できる。
【0054】
本発明においては、市販の測色計を用い、プラズマ等を検知する前後の検知層の色調を測定することで、L色空間(なお、L色空間は、物体の色を表す際に一般的に使用されている表色系で、国際照明委員会(CIE)において1976年に規格化されたものであり、JIS Z 8781-4やJIS Z 8781-5においても採用されている表色系である。)における、明度を表すL、色相と彩度を表す色度a及びbの値を得ることができる。これらのL、a及びbの値を用い、下記の式
ΔE ab=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2
により色差ΔE abが算出される。
前記色差ΔE abに基づき、検知層がプラズマ等の検知を測定することに加えて、プラズマ等の検知層平面における面内均一性等を定量的に得ることが可能である。
特に、色差の面内分布(検知層の変色の面内分布)は、プラズマ等の流れ等と相関関係を有している。よって、色差の面内分布を把握することで、電子デバイスの製造に際して重要なプラズマ等の流れの把握や処理面内の均一性を短時間で評価するインジケータとできる。
本発明における積層体は、プラズマ等で所定の時間処理した際に、ΔE abが0.9以上、好ましくは3.0以上となることが、的確に目視判断できることから好ましい。また、ΔE abの最高値を示した後の色調変化が、所定の処理時間内において3.0未満であることが好ましい。このようなΔE abを示す積層体とすることで、プラズマ等による処理を的確に把握することができ、面内均一性等の把握も容易になる。
【0055】
[イオン強度分布インジケータ]
本発明者らは、本発明の積層体が、イオン強度分布と検知層の変色とが相関関係を有する(イオン強度依存特性を有する)ことを見出した。また、本発明の積層体の検知層は、プラズマに含まれるラジカル等のイオン以外の活性種による変色がほとんど発生しない。これにより、イオンを含むプラズマ等による処理、特にプラズマ処理時において、被処理物(ウエハ等)のイオン強度のばらつき(不均一)が発生した際には、積層体の検知層に変色分布が発生する。この変色分布を読み取ることで、被処理物表面のイオン強度分布を、容易かつ相対的に検出することが可能であることが見出された。
具体的には、イオン強度により変色感度が高くなる積層体の検知層のイオン強度依存特性を利用して、異なる変色域の色差を測定することにより、間接的に面内における温度差の測定が可能となる。
例えば、本発明者らは、実施例の積層体X1の面内におけるイオン強度差を、プラズマ処理時間及びΔE abの値から推定できることを見出した。これより、例えば、プラズマ処理を行った際に発生した変色分布におけるΔE abから、プラズマ処理時に発生したイオン強度分布を測定(推定)することができる。
【0056】
本発明のイオン強度分布インジケータは、半導体デバイス製造プロセスにおける、イオンを含むプラズマによる処理や、イオン注入プロセスにおいて、イオン強度分布の検出に対して有用である。特に、イオン注入プロセスは、半導体デバイスへの不純物添加技術として不可欠な技術となっており、その際のイオン強度分布を簡便かつ容易な手段により知ることが可能となり、半導体デバイス製造において極めて有意義である。
また、イオンによる表面処理やイオン注入は、医療・工業分野において、金属、セラミックス、高分子材料その他の工業材料の摩擦性、耐磨耗性、腐食性、濡れ性等の制御、生体内適合性の制御等への適用が進められている。このような分野においても、イオン強度分布を簡便かつ容易な手段により知ることが可能となり、極めて有意義である。
さらに、本発明のイオン強度分布インジケータは、積層体における金属含有量を少なくすることが可能であり、金属等の汚染を嫌う半導体製造装置内で用いることができ、イオン強度分布測定を容易に行うことができる。
【0057】
インジケータの具体的構成等について、図1図3を用いて詳説する。
図1は、基材層の上に検知層を部分的に設けたインジケータの使用状態を示す写真である。図1は、プラズマ処理用のチャンバーに入れるインジケータの使用状態を示すものであり、基材層2上の複数箇所に検知層3を設けたインジケータ1を、プラズマ処理装置のチャンバー内に置き、プラズマ処理を行っている。本発明のインジケータについても、同様にして使用することができる。
図2は、本発明の一実施態様に係るイオン強度分布インジケータの概略構成図であって、基材層2上(基板上)の複数箇所に検知層3を設けインジケータ1を構成した例である。図2Aは、基材層上に検知層を5箇所設けた例であり、図2Bは、基材層上に検知層を13箇所設けた例である。
図3は、本発明の一実施態様に係るイオン強度分布インジケータの概略構成図であって、基材層2上(基板上)の1箇所に検知層3を設けた例である。図3Aは、基材層2上に検知層3を固定するためのくぼみ4(凹部)を形成した例であり、図3Bは、くぼみ4に検知層3を固定して基材層2上に検知層3を設けてインジケータ1を構成した例である。なお、図3では、くぼみ4(凹部)は1箇所のみ設けられているが、2箇所以上設けてもよい。くぼみ4(凹部)の形状は、円形にこだわらず、三角形、四角形(正方形、矩形)、六角形等の任意の形状とすることができる。くぼみ4(凹部)には、検知層の取り外しを容易にするための隙間等を設けることができる。また、くぼみ4(凹部)に代えて、貫通孔(段付き孔、テーパー孔、雌ネジ孔等)としてもよい。
【実施例0058】
以下、実施例及び比較例をあげて、本発明の積層体及びインジケータをより詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0059】
[積層体の調製]
<積層体X1>
ポリイミド前駆体溶液、アミド系溶媒(ポリイミドの良溶媒)及びエーテル系溶媒(ポリイミドの貧溶媒)を含む検知層形成材料を、シリコン基板にスピンコートし、均熱ヒータで乾燥・熱処理して、シリコン基板上に多孔質の検知層を形成し、積層体X1を調製した。
【0060】
<積層体Y1>
酸化ビスマス(色材)、酸化チタン(隠蔽剤)、樹脂及びセロソルブ系溶剤を混合、分散してスラリーを作成し、シリコン基板にスピンコートし、乾燥機で乾燥して、シリコン基板上に酸化ビスマスを含む検知層を形成し、積層体Y1を調製した。
【0061】
<積層体Y2>
ポリイミド前駆体溶液、アミド系溶媒(ポリイミドの良溶媒)及びエーテル系溶媒(ポリイミドの貧溶媒)を含む多孔質層形成材料を、シリコン基板にスピンコートし、均熱ヒータで乾燥・熱処理して、シリコン基板上に多孔質層を形成した。
ポリイミド前駆体溶液、ペリレン系色素、アミド系溶媒(ポリイミドの良溶媒)及びエーテル系溶媒(ポリイミドの貧溶媒)を含む検知層形成材料を、前記多孔質層上にスピンコートし、均熱ヒータで乾燥・熱処理して、シリコン基板上に形成された多孔質層上に多孔質体の空孔中に色素が含有されている検知層を形成し、積層体Y2を調製した。
【0062】
[イオンをほとんど含まないプラズマに対する非変色性]
<実施例1、2、比較例1~4>
積層体X1、Y1及びY2の各検知層に対して、下記のプラズマ条件1により、イオンをほとんど含まないプラズマによる処理を行った。
イオンをほとんど含まないプラズマによる処理後の検知層のL、a及びbを測色計でそれぞれ測定し、各プラズマ処理時間におけるプラズマ処理前後の色差ΔE abを得た。さらに、色差ΔE abに基づいて、非変色性を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0063】
(プラズマ処理条件1)
原料ガス:O
プラズマ装置:誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled
Plasma)型プラズマ装置
ガス流量:40sccm
初期圧:5×10-4Pa以下
処理圧:10Pa
電極間距離:40mm
電力:150W
電源:13.56MHz
プラズマ処理時間:表1に記載
【0064】
(非変色性評価基準)
S:ΔE ab<0.4
A:0.4≦ΔE ab≦3.2
B:3.2<ΔE ab≦6.5
C:6.5<ΔE ab≦13.0
D:13.0<ΔE ab
【0065】
【表1】
【0066】
[イオンを含むプラズマに対する変色性]
<実施例3~6>
積層体X1の検知層に対して、下記のプラズマ条件2により、イオンを含むプラズマによる処理を行った。
イオンを含むプラズマによる処理後の検知層のL、a及びbを測色計でそれぞれ測定し、各プラズマ処理時間におけるプラズマ処理前後の色差ΔE abを得た。結果を表2に示す。
【0067】
(プラズマ処理条件2)
原料ガス:表2に記載
プラズマ装置:誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled
Plasma)型プラズマ装置
ガス流量:40sccm
初期圧:5×10-4Pa以下
処理圧:10Pa
電極間距離:40mm
電力:150W
電源:13.56MHz
プラズマ処理時間:表2に記載
【0068】
(変色性評価基準)
S:ΔE ab≧20.0
A:20.0≧ΔE ab>10.0
B:10.0≧ΔE ab>3.2
C:3.2≧ΔE ab
【0069】
【表2】
【0070】
<実施例7>
セルロース樹脂を、樹脂濃度5質量%となるようにセロソルブ系溶剤に溶解した。得られた樹脂溶液を、ガラス板上に塗布し、ホットプレートで乾燥させて樹脂膜を得た。得られた樹脂膜に対して、実施例3と同じ条件でイオンを含むプラズマによる処理を行い、実施例3と同様にして、イオンを含むプラズマ処理前後の色差ΔE abを得て、変色性評価を行った。結果を表3に示す。
【0071】
<実施例8~31>
樹脂を表3に示すものとし、樹脂濃度を15質量%とした以外は実施例7と同様にして、イオンを含むプラズマ処理前後の色差ΔE abを得て、変色性評価を行った。結果を表3に示す。
【0072】
<実施例32>
テフロン(登録商標)フィルムを用いた以外は実施例7と同様にして、イオンを含むプラズマ処理前後の色差ΔE abを得て、変色性評価を行った。結果を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
表1、2に示されるように、積層体X1は、イオンをほとんど含まないプラズマに対する非変色性に優れ、イオンを含むプラズマに対する変色性に優れていることがわかる。イオンをほとんど含まないプラズマは、ラジカルを主たる活性種とすることから、積層体X1は、ラジカルによる色調変化が起きないことがわかる。
一方、表1より、積層体Y1及びY2は、イオンをほとんど含まないプラズマに対する非変色性に劣ることから、ラジカルによる色調変化が起きてしまい、イオン分布強度のみの測定が困難である。
また、表3に示す各種樹脂を検知層形成材料として検知層を形成した場合も、イオンを含むプラズマに対する変色性に優れていることがわかる。
これらより、本発明に係る積層体は、プラズマ処理時のイオン強度分布の発生の有無とその程度を、ΔE abを読み取ることにより容易かつ相対的に検出することが可能となる。さらに、各検知層における、イオン強度分布とΔE abとの相関関係をあらかじめ求めておくことで、プラズマ処理面内におけるイオン強度分布を、容易に間接的に測定することが可能となる。
【符号の説明】
【0075】
1:インジケータ
2:基材層
3:検知層
4:くぼみ(凹部)
図1
図2
図3