(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059809
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】セラミド含有組成物、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/42 20060101AFI20230420BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230420BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20230420BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230420BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230420BHJP
A61K 31/7028 20060101ALI20230420BHJP
A61K 31/164 20060101ALI20230420BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20230420BHJP
A61K 36/87 20060101ALI20230420BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230420BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20230420BHJP
A61P 17/16 20060101ALN20230420BHJP
A61P 17/18 20060101ALN20230420BHJP
【FI】
A61K8/42
A61K8/34
A61K8/60
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K31/7028
A61K31/164
A61K31/05
A61K36/87
A23L33/105
C12N5/071
A61P17/16
A61P17/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094514
(22)【出願日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2021169620
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500101243
【氏名又は名称】株式会社ファーマフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】金 有宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕晃
(72)【発明者】
【氏名】アンガ サンジャヤ
(72)【発明者】
【氏名】金 英一
(72)【発明者】
【氏名】山津 敦史
(72)【発明者】
【氏名】金 武祚
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C083
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD52
4B018MD93
4B018MD94
4B018ME06
4B018ME10
4B018ME14
4B018MF01
4B065AA93X
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA22
4B065BB06
4B065BB10
4B065BB26
4B065BD27
4B065BD43
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA50
4B065CA60
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC641
4C083AC642
4C083AD391
4C083AD392
4C083CC03
4C083EE12
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA05
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC52
4C088AB56
4C088CA25
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC52
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206GA03
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZC52
(57)【要約】
【課題】 天然物由来のセラミドを含有する組成物を提供すること。
【解決手段】 本願発明は、ポリフェノールおよびセラミドを含有する組成物を提供する。また本願発明は、ワイン発酵粕由来のセラミド含有組成物を提供する。またセラミド含有組成物を製造する方法であって、ワイン発酵粕を洗浄する工程と、該洗浄によって得られた残渣物を極性溶媒で抽出する工程とを含む、方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェノールおよびセラミドを含有する美容用および/または経口摂取用組成物。
【請求項2】
前記セラミドが、フリーセラミドおよびグルコシルセラミドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、少なくとも約1重量%のフリーセラミドを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、少なくとも約1重量%のグルコシルセラミドを含む、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、少なくとも約1重量%のポリフェノールを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物におけるフリーセラミド、グルコシルセラミド、及びポリフェノールの重量比が、約0.7~約2.4:約1.0:約1.4~約11.0である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物におけるフリーセラミド、グルコシルセラミド、及びポリフェノールの重量比が、約1.0:約1.0:約1.0である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物のpHが約5未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
約100gあたり少なくとも約10mgのレスベラトロールを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
食品用である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
化粧料用である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリフェノールおよび前記セラミドが、ワイン発酵粕由来である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ケラチノサイトの分化を促進するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
セラミド合成を促進するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
ワイン発酵粕由来のセラミド含有組成物。
【請求項16】
前記セラミド含有組成物が、少なくとも約1重量%のフリーセラミドを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記セラミド含有組成物が、少なくとも約1重量%のグルコシルセラミドを含む、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
前記セラミド含有組成物が、少なくとも約1重量%のポリフェノールを含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物におけるフリーセラミド、グルコシルセラミド、及びポリフェノールの重量比が、約0.7~約2.4:約1.0:約1.4~約11.0である、請求項15~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記セラミド含有組成物におけるフリーセラミド、グルコシルセラミド、及びポリフェノールの重量比が、約1.0:約1.0:約1.0である、請求項15~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記セラミド含有組成物のpHが約5未満である、請求項15~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
約100gあたり少なくとも約10mgのレスベラトロールを含む、請求項15~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
食品用である、請求項15~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
化粧料用である、請求項13~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
ケラチノサイトの分化を促進するための、請求項15~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
セラミド合成を促進するための、請求項15~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
セラミド含有組成物を製造する方法であって、
ワイン発酵粕を洗浄する工程と、
該洗浄によって得られた残渣物を極性溶媒で抽出する工程と
を含む、方法。
【請求項28】
前記極性溶媒がエタノールを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記エタノールの濃度が約95%である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記洗浄する工程が水によって行われる、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記抽出する工程によって得られた抽出物をpH調整する工程をさらに含む、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記pH調整が酒石酸またはクエン酸によって行われる、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミドを含有する組成物に関する。より具体的には、ポリフェノールおよびセラミド、特にフリーセラミドを含有する組成物、及びそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドはスフィンゴ脂質の一種であり、角層細胞間脂質の主成分である。セラミドは、皮膚への塗布や経口摂取により、皮膚のバリヤー効果(表面保護)をはじめ、保湿効果、水分調節、弾力性保持、コラーゲン保護、酸化防止等の効果が期待されることから、セラミドを配合した化粧品や機能性食品が多数提供されている。
【0003】
セラミドの中でも植物由来のセラミド原料は、コンニャクやコメなど多くの植物から実用化されており、いずれもグルコシルセラミド(糖セラミド)を主成分とし、主に食品用原料として使用されている。
【0004】
一方で、これらのグルコシルセラミドは非ヒト型セラミドであり、ヒト型セラミドとは構造が異なる。またヒト型セラミドは、糖やリン酸が結合していない遊離の形(フリーセラミド)をとり、通常の生きた細胞には含まれないことから、自然界にはほとんど存在していない成分となる。そのため、天然物由来のフリーセラミドの開発が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ポリフェノールとセラミド(特に、フリーセラミド)とを含む、健康および/または美容に有用な新規組成物を見出した。本発明者らはまた、ワイン醸造の際に生成される発酵粕に対して特定の処理を行うことにより、ポリフェノールに加えてセラミド(特に、フリーセラミド)を含む組成物を得ることができることを見出した。したがって、本願発明では、このようなポリフェノールおよびセラミドを含有する天然物由来の組成物や、その製造方法を提供する。
【0006】
したがって、本発明の主要な観点によれば、以下の発明が提供される。
(項目1)
ポリフェノールおよびセラミドを含有する美容用および/または経口摂取用組成物。
(項目2)
前記セラミドが、フリーセラミドおよびグルコシルセラミドを含む、上記項目に記載の組成物。
(項目3)
前記組成物が、少なくとも約1重量%のフリーセラミドを含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目4)
前記組成物が、少なくとも約1重量%のグルコシルセラミドを含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
前記組成物が、少なくとも約1重量%のポリフェノールを含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
前記組成物におけるフリーセラミド、グルコシルセラミド、及びポリフェノールの重量比が、約0.7~約2.4:約1.0:約1.4~約11.0である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
前記組成物におけるフリーセラミド、グルコシルセラミド、及びポリフェノールの重量比が、約1.0:約1.0:約1.0である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。(項目8)
前記組成物のpHが約5未満である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9)
約100gあたり少なくとも約10mgのレスベラトロールを含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目10)
食品用である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目11)
化粧料用である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目12)
前記ポリフェノールおよび前記セラミドが、ワイン発酵粕由来である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目13)
ケラチノサイトの分化を促進するための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目14)
セラミド合成を促進するための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目A1)
ワイン発酵粕由来のセラミド含有組成物。
(項目A2)
前記セラミド含有組成物が、少なくとも約1重量%のフリーセラミドを含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目A3)
前記セラミド含有組成物が、少なくとも約1重量%のグルコシルセラミドを含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目A4)
前記セラミド含有組成物が、少なくとも約1重量%のポリフェノールを含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目A5)
前記組成物におけるフリーセラミド、グルコシルセラミド、及びポリフェノールの重量比が、約0.7~約2.4:約1.0:約1.4~約11.0である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目A6)
前記セラミド含有組成物におけるフリーセラミド、グルコシルセラミド、及びポリフェノールの重量比が、約1.0:約1.0:約1.0である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目A7)
前記セラミド含有組成物のpHが約5未満である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目A8)
約100gあたり少なくとも約10mgのレスベラトロールを含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目A9)
食品用である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目A10)
化粧料用である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目A11)
ケラチノサイトの分化を促進するための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目A12)
セラミド合成を促進するための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目B1)
セラミド含有組成物を製造する方法であって、
ワイン発酵粕を洗浄する工程と、
該洗浄によって得られた残渣物を極性溶媒で抽出する工程と
を含む、方法。
(項目B2)
前記極性溶媒がエタノールを含む、上記項目に記載の方法。
(項目B3)
前記エタノールの濃度が約95%である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B4)
前記洗浄する工程が水によって行われる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B5)
前記抽出する工程によって得られた抽出物をpH調整する工程をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B6)
前記pH調整が酒石酸またはクエン酸によって行われる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C1)
ケラチノサイトの分化を促進するための方法であって、上記項目のいずれか一項に記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
(項目C2)
セラミド合成を促進するための方法であって、上記項目のいずれか一項に記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【0007】
本開示において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。なお、本開示のさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【0008】
なお、上記した以外の本開示の特徴及び顕著な作用・効果は、以下の発明の実施形態の項及び図面を参照することで、当業者にとって明確となる。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の方法により、ポリフェノールおよびセラミド、特にヒト型のフリーセラミドを含有する組成物を得ることができる。また、ワイン発酵粕からそのような組成物を得る場合には特に、ワイン発酵粕という安全性の高い天然の材料を使用しているため、機能性食品や化粧品などに配合しても、人体に対して悪影響を及ぼすことなく、安全性に優れ、利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、ワイン澱中のセラミド分子種の組成と大豆中のセラミド分子種の組成との相違を示した一実施形態に係るグラフである。
【
図2】
図2は、ワイン澱抽出物から得られたセラミド量とワインから得られたセラミド量との相違を示した一実施形態に係るグラフである。
【
図3】
図3は、セラミド含有組成物の製法における洗浄工程の検討に用いた、セラミド含有組成物の製法フローを示す模式図である。
図3左は原料のワイン澱から95%エタノールでセラミドエキスを抽出した場合、
図3右は原料のワイン澱を50%エタノールで洗浄した場合をそれぞれ示す。
【
図4】
図4は、洗浄工程の相違によるセラミド含有組成物の組成の相違を示す一実施形態に係るグラフである。
図4は各成分の含有量(mg)を示している。
【
図5】
図5は、洗浄工程の相違(原料のワイン澱から95%エタノールでセラミドエキスを抽出した場合、および原料のワイン澱を50%エタノールで洗浄した場合)によるセラミド含有組成物の組成の相違を示す一実施形態に係るグラフである。
図5は各成分の割合を示している。
【
図6】
図6は、セラミド含有組成物の製法における洗浄工程の検討に用いた、セラミド含有組成物の製法フローを示す模式図である。原料のワイン澱を水、10%、30%、または50%エタノールで洗浄した場合を示す。
【
図7】
図7は、洗浄工程の相違(原料のワイン澱を水、10%、30%、または50%エタノールで洗浄した場合)によるセラミド含有組成物の組成の相違を示す一実施形態に係るグラフである。
図7左は各成分の割合を、
図7右は各成分の含有量(mg)を、それぞれ示している。
【
図8】
図8は、セラミド含有組成物の製法における洗浄工程の検討に用いた、セラミド含有組成物の製法フローを示す模式図である。原料のワイン澱を40℃または60℃の水で洗浄した場合を示す。
【
図9】
図9は、洗浄工程の相違(原料のワイン澱を40℃または60℃の水で洗浄した場合)によるセラミド含有組成物の組成の相違を示す一実施形態に係るグラフである。
図9左は各成分の割合を、
図9右は各成分の含有量(mg)を、それぞれ示している。
【
図10】
図10は、セラミド含有組成物の製法における洗浄工程の検討に用いた、セラミド含有組成物の製法フローを示す模式図である。原料のワイン澱を30、60、または180分にわたって水で洗浄した場合を示す。
【
図11】
図11は、洗浄工程の相違(原料のワイン澱を30、60、または180分にわたって水で洗浄した場合)によるセラミド含有組成物の組成の相違を示す一実施形態に係るグラフである。
図11左は各成分の割合を、
図11右は各成分の含有量(mg)を、それぞれ示している。
【
図12】
図12は、セラミド含有組成物の製法における洗浄工程の検討に用いた、セラミド含有組成物の製法フローを示す模式図である。原料のワイン澱を10倍、8.3倍、6.7倍の加水量で洗浄した場合を示す。
【
図13】
図13は、洗浄工程の相違(原料のワイン澱を10倍、8.3倍、6.7倍の加水量で洗浄した場合)によるセラミド含有組成物の組成の相違を示す一実施形態に係るグラフである。
図11左は各成分の割合を、
図11右は各成分の含有量(mg)を、それぞれ示している。
【
図14】
図14は、セラミド含有組成物の製法におけるpH調整の検討に用いた、セラミド含有組成物の製法フローを示す模式図である。原料のワイン澱から抽出されたセラミドエキスに酒石酸、クエン酸、または炭酸ナトリウムを添加した場合を示す。
【
図15】
図15は、pHの相違によるセラミド含有組成物の色の相違を示す一実施形態に係る写真である。
【
図16】
図16は、セラミド含有組成物のヒト表皮細胞の増殖への影響を示す一実施形態に係るグラフである。セラミド含有組成物を様々な濃度で添加した培地でヒト表皮細胞(Hacat細胞)を培養すると、無添加の培地に比べて、セラミド含有組成物の処理群では細胞増殖活性が顕著に増加した。
【
図17】
図17は、赤ワイン、ワイン澱(ワインクリスタル)、セラミド含有組成物(ワインセラミド)に含まれるレスベラトロールの量を示す一実施形態に係るグラフである。
【
図18】
図18は、本願発明の一実施形態に係るワインセラミドをヒト表皮ケラチノサイトHacat細胞株に添加し、72時間培養した場合の分化マーカー(Pro-FilaggrinおよびLoricrin)のmRNA発現量を示すグラフである。
【
図19】
図19は、本願発明の一実施形態に係るワインセラミドをヒト表皮ケラチノサイトHacat細胞株に添加し、72時間培養した場合のセラミド合成経路マーカー(SPT:Serine-Palmitoyl Transferase)のmRNA発現量を示すグラフである。
【
図20】
図20は、本願発明の一実施形態に係るワインセラミド、グルコシルセラミド、およびフリーセラミドをヒト表皮ケラチノサイトHacat細胞株に添加し、72時間培養した場合の分化マーカー(Pro-Filaggrin)、およびセラミド合成経路マーカー(SPT)のmRNA発現量を示すグラフである。
【
図21】
図21は、本願発明の一実施形態に係るワインセラミド、およびワイン以外の原料から得られた各セラミド(米セラミド、パインセラミド、およびこんにゃくセラミド)をヒト表皮ケラチノサイトHacat細胞株に添加し、72時間培養した場合の分化マーカー(Pro-Filaggrin)、およびセラミド合成経路マーカー(SPT)のmRNA発現量を示すグラフである。
【
図22】
図22は、本願発明の一実施形態に係るワインセラミドを3D培養したケラチノサイトに添加して48時間培養した場合の細胞切片写真である。細胞切片のセラミド量をヘマトキシリン・エオシン染色して位相差顕微鏡下で観察した。グラフは、皮膚の厚みの平均値±SD値をμm単位で示している(N=4)。本願発明の一実施形態に係るワインセラミドは、表皮の厚さを有意に増加させた。
【
図23】
図23は、本願発明の一実施形態に係るワインセラミドを3D培養したケラチノサイトに添加して48時間培養した場合の細胞切片写真である。細胞切片のセラミド量を抗セラミド抗体で免疫染色して位相差顕微鏡下で観察した。グラフは、3D培養したケラチノサイトにおける相対蛍光密度の平均値±SD値を示す(N=4)。本願発明の一実施形態に係るワインセラミドは、皮膚のセラミド量を有意に増加させた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0012】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0013】
本明細書において、「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
【0014】
本明細書において、「セラミド」とは、スフィンゴ脂質の一種であり、スフィンゴシンと脂肪酸がアミド結合した化合物群をいう。本明細書において、「セラミド」には、セラミドの誘導体も含まれる。セラミドはスフィンゴイド塩基のアミノ基(-NH2)に脂肪酸のカルボキシル基(-COOH)が結合した構造(-NH-CO-)を有する化合物である。セラミドのスフィンゴイド塩基のアルコール性ヒドロキシル基(-OH)に、さらに糖及びリン酸などの極性基が結合し、それぞれスフィンゴ糖脂質及びスフィンゴリン脂質となる。ここで、糖が結合したものを特にグリコシルセラミドと呼び、特に糖がグルコースである場合、グルコシルセラミドと呼ぶ。セラミドに糖やリン酸などが結合していない場合にフリーセラミドと呼ぶ。フリーセラミドは一般にはスフィンゴ脂質合成系の中間代謝物であるため、特に動物及び植物においては、微量しか存在しない。ガラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、およびスフィンゴミエリンなどのように、セラミドに糖やリン酸が結合したものは、動植物から抽出されるものの、糖やリン酸が結合しているために、細胞間脂質中での配向性がフリーセラミドとは異なる。
【0015】
本明細書において、「ポリフェノール」とは、分子内に複数のフェノール性水酸基を有する化合物の総称をいい、具体的には、フラボノール、フラボン、イソフラボン、タンニン、カテキン、ケルセチン、アントシアニン、アントシアニジン、ロイコアントシアニジン、プロアントシアニジン、没食子酸プロピル、カテキン、ルチン、ケルセチン、フェルラ酸、レスベラトロール、プロシアニジン、テアフラビン、クルクミン、ピクノジェノール、ロズマリン酸、エラグ酸、キナ酸、クロロゲン酸、ヒドロキシチロソール等が挙げられる。
【0016】
本明細書において、「洗浄」とは、ワイン発酵粕(ワイン澱)と液体を攪拌しながら混合して不純物を洗い流して除去することをいう。
【0017】
本明細書において、「抽出」とは、溶液に含まれる分析対象物とそれ以外の不純物とを分離することを意味し、溶媒抽出または液液抽出ともいう。
【0018】
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。したがって、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができる。
【0019】
本願発明の一局面において、ポリフェノールおよびセラミドを含有する美容用および/または経口摂取用組成物が提供される。また本開示の他の局面において、ワイン発酵粕由来のセラミド含有組成物が提供される。ポリフェノールおよびセラミドを含有する美容用および/または経口摂取用組成物、並びにワイン発酵粕由来のセラミド含有組成物は、ともにセラミドを含有するものであるため、本明細書においては、特に言及する場合を除いて、まとめて「セラミド含有組成物」ということができる。また本明細書において、本願発明のセラミド含有組成物を「ワインセラミド」と呼ぶ場合がある。
【0020】
セラミドは、スフィンゴ脂質の一種であり、スフィンゴシンと脂肪酸がアミド結合した化合物群を含む。またセラミドは、分子中に1個以上の長鎖の直鎖および/もしくは分岐アルキルまたはアルケニル基、さらに、少なくとも2個以上の水酸基、1個以上のアミド基(および/またはアミノ基)を有する非イオン系両親媒性物質であってもよい。また、セラミドは、前記非イオン系両親媒性物質の水酸基にフォスファチジルコリン残基、または糖残基が結合した物質(いわゆるセラミド誘導体の一種)であってもよい。
【0021】
一実施形態において、セラミドには、フリーセラミドおよびグルコシルセラミドが含まれる。例えば、好ましい一実施態様において、セラミドとしては、植物由来のセラミドが含まれ、好ましくはワイン発酵粕由来のセラミドを含む。
【0022】
フリーセラミドとしては、化粧品や皮膚外用剤、または食品用に用いることができるものであれば特に限定されず、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド3B、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6I、およびセラミド6IIなどの天然フリーセラミドを挙げることができる。本願発明のセラミド含有組成物は、その取得に際し、人体に対して悪影響を及ぼすことのない材料を用いて取得することが可能であるため、食品用や皮膚塗布用を始めとして、安全性が重要視される用途の原料として有効である。またヒト型のフリーセラミドを含むため、健康食品などの食品用原料としても適している。本開示の一実施形態において、本願発明のセラミド含有組成物は、これらのフリーセラミドの1種のみ、または2種以上の任意の混合比の組み合わせを含むことができる。
【0023】
本願発明のセラミド含有組成物におけるセラミドは皮膚の水分を蒸散させないバリア機能、バリア機能を回復する機能、毛髪にハリやコシを付与する機能、角質剥離作用促進し、皮膚を滑らかにする機能、皮膚や毛髪に適用された場合に保湿効果を発揮する機能、セラミド産生促進効果を発揮する機能など種々の機能を有するが、本願発明のセラミド含有組成物の機能はこれらの機能のうちの1つもしくは2つ以上に限定されるものではなく、これら機能以外のセラミドとしての機能を有していてもよい。
【0024】
本願発明の一実施形態において、本願発明のセラミド含有組成物は、皮膚に適用しても良いし、食用として用いることもできる。いずれの場合にも肌の保湿や、シミしわ改善、紫外線対策などを含む上記機能を享受することができる。
【0025】
本願発明の一実施形態において、本願発明のセラミド含有組成物は、皮膚に適用し、および/または食品として摂取することにより、皮膚におけるケラチノサイトの分化を促進し、および/またはセラミドのDe novo合成を促進することができる。本願発明のセラミド含有組成物は、例えば、ケラチノサイトの分化マーカーの遺伝子発現を増加させることができる。ケラチノサイトの分化マーカーとしては、ケラチノサイトの分化を確認できるものであれば特に限られないが、好ましくは遺伝子マーカーを挙げることができ、例えば、Pro-Filaggrin(肌の角質層を形成するタンパク質。天然保湿因子(NMF)の原料)やLoricrin(角質層を正常に形成するための骨組みとなるタンパク質)などを挙げることができる。
【0026】
また本願発明のセラミド含有組成物は、例えば、セラミドの合成経路におけるセラミド合成に関連する遺伝子の発現を増強させることにより、セラミドの合成を促進することができる。セラミドのDe novo合成は、Serine+Palmitoyl CoA → 3-keto-sphinganine → Sphinganine → Dihydroceramide → Ceramideという経路が知られている。セラミド合成経路の分化マーカーとしては、セラミドの合成経路に関与するものであれば特に限られないが、好ましくは遺伝子マーカーを挙げることができ、例えば、SPT:Serine-Palmitoyl Transferase(セラミド de novo合成経路の酵素)などを挙げることができる。SPTは、上記セラミド合成経路におけるSerine+Palmitoyl CoAから3-keto-sphinganineへの変換を触媒する。
【0027】
また本願発明のセラミド含有組成物は、ケラチノサイトの増加および分化を促進することで、皮膚の厚さを増加させ、皮膚のターンオーバーも促進させることができる。
【0028】
本願発明の一実施形態において、本願発明のセラミド含有組成物は、少なくとも約0.01重量%以上のフリーセラミドを含み、好ましくは少なくとも約0.1重量%以上、少なくとも約0.3重量%以上、少なくとも約0.5重量%以上、または少なくとも約0.8重量%以上のフリーセラミドを含むことができ、さらに好ましくは少なくとも約1重量%以上のフリーセラミドを含むことができる。
【0029】
本願発明の一実施形態において、本願発明のセラミド含有組成物は、少なくとも約0.01重量%以上のグルコシルセラミドを含み、好ましくは少なくとも約0.1重量%以上、少なくとも約0.3重量%以上、少なくとも約0.5重量%以上、または少なくとも約0.8重量%以上のグルコシルセラミドを含むことができ、さらに好ましくは少なくとも約1重量%以上のグルコシルセラミドを含むことができる。
【0030】
ポリフェノールは、分子内に複数のフェノール性水酸基を有する化合物であり、本願発明の組成物に含まれるポリフェノールの種類については、特に制限されないが、例えば、フラボノール、フラボン、イソフラボン、タンニン、カテキン、ケルセチン、アントシアニン、アントシアニジン、ロイコアントシアニジン、プロアントシアニジン、没食子酸プロピル、カテキン、ルチン、ケルセチン、フェルラ酸、レスベラトロール、プロシアニジン、テアフラビン、クルクミン、ピクノジェノール、ロズマリン酸、エラグ酸、キナ酸、クロロゲン酸、ヒドロキシチロソール等が挙げられる。本願発明の組成物においては、これらのポリフェノールが1種単独で含まれていてもよく、また2種以上が組み合わせて含まれていてもよい。
【0031】
一実施形態において、本願発明の組成物におけるポリフェノールの含有量は、少なくとも約0.01重量%以上であり、好ましくは少なくとも約0.1重量%以上、少なくとも約0.3重量%以上、少なくとも約0.5重量%以上、または少なくとも約0.8重量%以上であり、さらに好ましくは少なくとも約1重量%以上とすることができる。
【0032】
本願発明の一実施形態において、本願発明の組成物は、ポリフェノールとしてレスベラトロールを含むことができ、約100gの本願発明の組成物あたり少なくとも約1mg、少なくとも約3mg、少なくとも約5mg、少なくとも約7mg、または少なくとも約10mgのレスベラトロールを含むことができる。
【0033】
本願発明の一実施形態において、本願発明の組成物は、上記のようなグルコシルセラミド、フリーセラミド、及びポリフェノールを、その重量比で、グルコシルセラミド:フリーセラミド:ポリフェノール=約1.0:約0.5~約3.0:約1.0~約15.0、好ましくは約1.0:約0.7~約2.4:約1.4~約11.0、さらに好ましくは約約1.0:約1.0:約1.0とすることができる。食品原料としてのセラミドについては、コンニャクやコメなど多くの植物由来のセラミドが製造されているが、いずれもグルコシルセラミドを主成分としているため、本願発明のセラミド含有組成物は、グルコシルセラミドと同程度に、またはそれ以上にフリーセラミドを含む点で有用である。
【0034】
他の実施形態において、本願発明の組成物は、セラミド及びポリフェノールを、その重量比で、総セラミド:ポリフェノール=約1.0:約0.5~約5.0、好ましくは約1.0:約0.7~約4.0とすることができる。
【0035】
本願発明の他の局面において、セラミド含有組成物を製造する方法であって、ワイン発酵粕を洗浄する工程と、該洗浄によって得られた残渣物を極性溶媒で抽出する工程とを含む、方法が提供される。
【0036】
本願発明のセラミド含有組成物の製造方法は、ワイン醸造の際に得られるワイン発酵粕(澱)(Bitartrate)を洗浄し、その後、残渣物を極性溶媒で抽出し発酵物抽出液を得ることを特徴とする。ワイン発酵粕の原料となるブドウ品種や酵母の種類やワインの製法は特に限定されず、どのようなブドウ品種や製法を用いた場合でも、例えばワイン樽の底や壁面にたまる澱を本願発明のワイン発酵粕として利用することができる。ワイン発酵の際に使用するワイン酵母は特に限定されないが、自然酵母や培養酵母を利用することができる。したがって、どのような種類のワイン澱を出発原料としても、本願発明のセラミド含有組成物の製造方法により、セラミドやグルコシルセラミドの含量を高めた組成物をセルことができる。
【0037】
一実施形態において、極性溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル等の極性溶媒を使用することができる。これらの溶媒を2種以上混合してもよい。好ましくは、極性溶媒として、エタノール、またはエタノールと水の混合物である含水エタノールを用いると、本願発明のセラミド含有組成物を効率よく抽出することができる。
【0038】
極性溶媒としての含水エタノールを用いる場合、エタノールの濃度は特に限定されず、例えばエタノール濃度を約10%~約99%(wt/wt)とすることができ、好ましくはエタノール濃度を、少なくとも約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約93%以上、約95%以上、約98%以上、約99%以上(wt/wt)とすることができる。
【0039】
一実施形態において、抽出工程における抽出温度としては、約30℃~約80℃、好ましくは約40℃~約60℃で行うことができる。また抽出時間としては、約1時間~約8時間、好ましくは、約3時間~約6時間とすることができる。
【0040】
抽出方法としては、撹拌抽出、連続抽出、浸漬抽出、向流抽出、超臨界抽出など任意の方法を採用することができ、室温ないし還流加熱下において任意の装置を使用することができる。好ましくは、本願発明の方法において、抽出方法としてはオール型やプロペラ型の撹拌機を用いて攪拌抽出を行うことができる。一実施形態において、攪拌抽出を行う場合には、所定の温度に加温しながら抽出タンク内でワイン澱と溶媒(エタノールなど)を攪拌させて抽出することができる。所定の時間にわたって攪拌した後、ろ過し、ろ液をセラミド画分(本願発明のセラミド含有組成物)とすることができる。抽出の規模は適宜設定することができ、そのため、他の実施形態において、ウォーターバス内にビーカーを設置し、そのビーカー内で、ワイン澱と溶媒(エタノールなど)を攪拌させて抽出することもできる。
【0041】
一実施形態において、洗浄工程では、ワイン発酵粕(ワイン澱)を水で洗浄することができる。一実施形態において、洗浄工程では、オール型やプロペラ型の撹拌機を用いてワイン発酵粕と水を攪拌しながら洗浄することができる。一実施形態において、ワイン発酵粕と水を混合する際に加温しながら攪拌することもできる。所定の時間にわたって攪拌した後、ろ過し、残渣を抽出工程で用いることができる。水としては、例えば精製水、滅菌水、水道水等が挙げられるが、不純物が少ない点で精製水又は滅菌水が好ましい。この場合、洗浄温度としては、約30℃~約80℃、好ましくは約40℃~約60℃で行うことができる。また洗浄時間としては、約5分~約6時間、好ましくは、約1時間~約2時間とすることができる。
【0042】
本願発明の一実施形態において、本願発明のセラミド含有組成物を製造する方法は、さらに、極性溶媒による抽出工程によって得られた抽出物をpH調整することもできる。このようなpH調整によって、得られたセラミド含有組成物の色彩を調整することができ、好ましくは所望のワイン色にすることもできる。このようなpH調整は酸やアルカリによって行うことができ、酸やアルカリの種類は、本願発明のセラミド含有組成物の効果を損なわない範囲において、また化粧品、飲食品、健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品、サプリメント、医薬品、医薬部外品、または皮膚外用剤などに用いられるものであれば特に限られないが、例えば、リン酸、酒石酸、クエン酸、または炭酸ナトリウムなどによって行うことができる。
【0043】
一実施形態において、本願発明のセラミド含有組成物は、所望の用途に応じた色となるようにpH調整することができ、上記のようなpH調整によってセラミド含有組成物のpHを例えば約5未満、約4.8未満、約4.0未満、または約3.5未満とすることができる。
【0044】
その他、本願発明のセラミド含有組成物の抽出分離、精製、同定などは通常の操作を幅広く適用することができ、例えば、上記のような抽出工程によって得られたセラミド含有組成物を必要に応じてpH調整し、さらに必要に応じて所望の賦形剤と混合し、濃縮、加熱殺菌、凍結乾燥などを行うこともできる。
【0045】
本願発明の1つの好ましい態様において、本願発明のセラミド含有組成物は、ワイン発酵粕(ワイン澱)を好ましくは約10倍量の約60℃の水で約1時間洗浄し、その後、残渣物を好ましくは約95%のエタノール溶液を用いて約40℃で約6時間にわたって抽出を行うことによって得ることができる。また本願発明の1つの好ましい態様において、本願発明のセラミド含有組成物は、上記のようにして得た抽出物を、pH約4.0未満に調整することができる。さらに本願発明の1つの好ましい態様において、本願発明のセラミド含有組成物は、シクロデキストリンなどの賦形剤と混合し、さらにエタノールを水に置換することにより濃縮し、約120℃で加熱殺菌し、凍結乾燥して粉末状にすることができる。
【0046】
本願発明の1つの好ましい態様において、本願発明のセラミド含有組成物は、上記のような製法で得ることにより、グルコシルセラミド、フリーセラミド、及びポリフェノールを、その重量比で、約1.0:約1.0:約1.0の割合で含むことができる。また本願発明の1つの好ましい態様において、本願発明のセラミド含有組成物は、上記のような製法で得ることにより、約100gの本願発明の組成物あたり少なくとも約10mgのレスベラトロールを含むことができる。
【0047】
本願発明の方法により製造されたセラミド含有組成物は、様々な用途に適用または配合することができる。用途として、例えば、化粧品、医薬品、試薬、経口摂取用組成物(例えば、健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品、サプリメント、及び特定用途食品等)などが挙げられる。
【0048】
一実施形態において、本願発明のセラミド含有組成物を含む製品は、賦形剤、担体、または添加剤などを含んでいてもよく、その種類としては、通常使用され、かつ薬学的に許容されるものであれば特に限定されず、またその配合量も適宜変更が可能である。例えば賦形剤としては、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられ、担体としては、滅菌水、生理食塩水、及び各種緩衝液等が挙げられ、添加剤としては、粘ちょう剤、緩衝材、保存剤、防腐剤等を挙げることができる。
【0049】
一実施形態において、本願発明のセラミド含有組成物を含む医薬品の剤型としては特に制限されるものではなく、必要に応じて適宜選択すればよいが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤や、注射剤、坐剤、塗布剤等の非経口剤とすることができる。これらの医薬品中の本願発明のセラミド含有組成物の配合量は特に限定されるものではなく、医薬品の種類や用途に応じて適宜設定することができる。
【0050】
一実施形態において、本願発明のセラミド含有組成物を含む経口摂取用組成物(例えば、健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品、サプリメント、及び特定用途食品等)は、必要に応じてデキストリン、乳糖、デンプン等の賦形剤や香料、色素、ゼラチン等とともに本願発明のセラミド含有組成物を配合させて製造することができる。これらの経口摂取用組成物に配合される本願発明のセラミド含有組成物の量は特に限定されるものではなく、経口摂取用組成物の種類や用途に応じて適宜設定することができる。また一実施形態において、これらの経口摂取用組成物にはその種類に応じて種々の成分を配合することができる。また一実施形態において、本願発明のセラミド含有組成物は通常消費される飲食品に添加することもできる。
【0051】
一実施形態において、本願発明のセラミド含有組成物は、化粧品、医薬品および医薬部外品を含む皮膚外用剤に配合することもできる。例えば、本願発明のセラミド含有組成物は、例えば、化粧水、乳液、クリーム、ローション、石鹸、洗顔料、入浴剤、オーデコロン、化粧オイル、日焼け・日焼け止めローション、パウダー、ファンデーション、香水、パック、アイクリーム、アイシャドー、マスカラ、アイライナー、口紅、リップクリーム、シャンプー、リンス、染毛剤、軟膏剤、クリーム剤、外用液剤等に配合することができる。
【0052】
本願発明の一実施形態において、本願発明のセラミド含有組成物を含む皮膚外用剤(化粧品、医薬品および医薬部外品を含む)には、本願発明のセラミド含有組成物の作用を損なわない範囲において、通常の皮膚外用剤に用いられる各種成分、例えば、界面活性剤、加脂剤、毛髪保護剤、保湿剤、高分子類、紫外線吸収剤、金属封鎖剤、溶剤、pH調節剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、防腐剤、香料、油性成分、高級アルコール、脂肪酸、極性脂質、抗菌成分、粘度調整剤、色素などを配合できる。
【0053】
本願発明の一実施形態において、本願発明のセラミド含有組成物は、スプレードライ、凍結乾燥、または真空乾燥し、これを粉末、顆粒、または溶液にすることで皮膚外用剤、飲食品、医薬品などに容易に含有させることができる。
【0054】
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0055】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0056】
(実施例1:ワイン澱中のセラミド分子種)
ワイン澱(Bitartrate)50gを60℃の水で1時間洗浄し、残渣物を得た。この残渣物について、95%エタノールを用いて40℃で6時間にわたって抽出した。この抽出物中におけるセラミド分子種について、同じく大豆から得られたセラミド分子種とその組成を比較した。結果を
図1に示す。この結果からわかるとおり、大豆から得られたセラミドはグルコシルセラミドのみであり、フリーセラミドは含まれない一方で、ワイン澱から得られたセラミドにはグルコシルセラミドおよびフリーセラミドの両方が含まれる。大豆セラミドは、長良サイエンス株式会社製の大豆由来グルコシルセラミド純品を使用した。
【0057】
またワイン澱抽出物とワイン自体に含まれるセラミド分子種とその量を確認した結果が
図2である。この結果から、ワイン自体にはフリーセラミドおよびグルコシルセラミドともに含まれないものの、ワイン澱から得られた抽出物中には、フリーセラミドおよびグルコシルセラミドともに含まれることがわかる。
【0058】
(実施例2:洗浄工程の検討1)
本実施例では、ワイン澱から抽出物を得る際の、原料となるワイン澱の洗浄工程について検討した。
図3には、本実施例において検討したワイン澱抽出物(図中、「Wセラミドエキス」)の製法を示した。
図3左では、ワイン澱から95%エタノールを用いてWセラミドエキスを抽出し(60℃、6時間)、その後その残渣物からさらに60%エタノールを用いてWセラミドエキスを抽出した(60℃、3時間)。
図3右では、50%エタノールを用いてワイン澱を洗浄し(40℃、1時間)、その後、洗浄後の残渣物から95%エタノールを用いてWセラミドエキスを抽出した(60℃、6時間)。結果を
図4および
図5に示す。
図4では各成分の含有量(mg)を、
図5では各成分の割合を示した。
【0059】
この図からもわかるとおり、95%エタノール抽出に続けて60%エタノール抽出をした場合には、夾雑物が多く残ってしまう。一方で、初めに50%エタノールを用いてワイン澱を洗浄し、続けて95%エタノール抽出を行った場合には、夾雑物を減らすことができた。
【0060】
(実施例3:洗浄工程の検討2)
実施例2において、はじめにエタノール抽出を行うよりもワイン澱の洗浄を行ったほうが夾雑物を除去できることがわかったため、続いて、洗浄溶液の検討を行った。本実施例においては、水、10%エタノール、30%エタノール、または50%エタノールを用いてワイン澱を洗浄し(いずれも40℃で3時間)、その後、洗浄後の残渣物から95%エタノールを用いてWセラミドエキスを抽出した(40℃、6時間)(
図6)。結果を
図7に示す。
【0061】
この図からもわかるとおり、50%エタノールで洗浄した場合に夾雑物を多く減らすことができたが、セラミド量やポリフェノール量も減少してしまった。また50%エタノールで洗浄した場合には、得られたWセラミドエキスがワイン色ではなくなっていた(図示せず)。一方で、水で洗浄した場合には、50%エタノールで洗浄した場合と比べて夾雑物の量は多いものの、セラミド量やポリフェノール量は多く残り、夾雑物の量も10%や30%のエタノールで洗浄した場合と比べて減少することができた。このことから洗浄溶液は水が最適であることがわかった。
【0062】
(実施例4:洗浄温度の検討)
実施例3において、水での洗浄が最適であることがわかったため、続いて、洗浄温度の検討を行った。本実施例においては、40℃、または60℃の水を用いてワイン澱を洗浄し(いずれも500ml、3時間)、その後、洗浄後の残渣物から95%エタノールを用いてWセラミドエキスを抽出した(40℃、6時間)(
図8)。結果を
図9に示す。
この図からもわかるとおり、60℃で洗浄した場合には、40℃で洗浄した場合に比べて夾雑物(図中、「others」で示す)を大幅に減らすことができた。
【0063】
(実施例5:洗浄時間の検討)
実施例4において、ワイン澱を水で洗浄する場合には60℃で行うのが最適であることがわかったため、続いて、洗浄時間の検討を行った。本実施例においては、30分、60分、180分にわたってワイン澱を洗浄し(いずれも500ml、60℃)、その後、洗浄後の残渣物から95%エタノールを用いてWセラミドエキスを抽出した(40℃、6時間)(
図10)。結果を
図11に示す。
【0064】
この図からもわかるとおり、水で30分間洗浄した場合には、夾雑物が一番除去できた。一方で、水で60分間洗浄した場合には、夾雑物が除去されつつ、グルコシルセラミドおよびフリーセラミドの含有率が一番高くなった。このことから、洗浄時間は60分とするのが最適であることがわかった。
【0065】
(実施例6:加水量の検討)
実施例4および5において、ワイン澱を水で洗浄する場合には60℃で60分間にわたって行うのが最適であることがわかったため、続いて、洗浄の際の加水量の検討を行った。本実施例においては、50g、60g、75gのワイン澱に対して500mlの水で洗浄し(それぞれ10倍加水、8.3倍加水、6.7倍加水。いずれも60℃で1時間)、その後、洗浄後の残渣物から95%エタノールを用いてWセラミドエキスを抽出した(40℃、6時間)(
図12)。結果を
図13に示す。
【0066】
この図からもわかるとおり、10倍加水(ワイン澱50g、水500ml)で洗浄した場合には、8.3倍加水(ワイン澱60g、水500ml)、6.7倍加水(ワイン澱75g、水500ml)の場合に比べて夾雑物(図中、「others」で示す)を大幅に減らすことができた。
【0067】
(実施例7:pH調整の検討)
実施例2~6において、ワイン澱からセラミド抽出物を得る際には、ワイン澱を10倍加水量の60℃の水で60分間にわたって洗浄するのが最適であることがわかったため、続いて、エタノール抽出によって得られたWセラミドエキスのpHの検討を行った。本実施例においては、エタノール抽出によって得られたWセラミドエキスに対して、酒石酸、クエン酸、または炭酸ナトリウムを添加し、さらに賦形剤(シクロデキストリン)を添加した後、フリーズドライによって粉末化した場合の粉末色を確認した(
図14)。結果を
図15に示す。
【0068】
図15からもわかるとおり、抽出エキスをpH調整することにより、望ましい粉末の色に調整することが可能であることがわかった。特にクエン酸または酒石酸でpH4.0またはpH3.5に調整した場合には、ワイン色の粉末を得ることができた。
【0069】
(実施例8:細胞増殖試験)
本願発明のセラミド含有組成物による細胞増殖効果を調べるため、ヒト表皮細胞(HaCaT細胞)を用いて細胞増殖試験を行った。ヒト表皮細胞(HaCaT細胞)を96wellプレートに播種し、播種24時間後に、ワイン澱から得た様々な濃度のセラミド抽出物を含む培地で培養した。培養3時間後に、細胞増殖を測定した。細胞増殖はCell Counting Kit 8(株式会社同人化学研究所製)を用いて測定した。結果を
図16に示す。
【0070】
これにより、ワイン澱から得られたセラミド抽出物は、ケラチノサイト細胞(HaCaT細胞)において、細胞増殖を促進させることがわかった(
図16の0.01~1μg/mL添加群を参照)。
【0071】
(実施例9:レスベラトロール量測定)
本実施例では、本願発明のセラミド含有組成物中のレスベラトロール量を測定した。レスベラトロールは抗酸化作用を持つポリフェノールの1種であり、赤ワインに含まれる成分として知られている。レスベラトロールを摂取することで、細胞の酸化を防ぎ、肌の弾力を改善するなどの効果が期待される。本実施例では、赤ワイン、ワイン澱(ワインクリスタル)、セラミド含有組成物(ワインセラミド)に含まれるレスベラトロールの量を、それぞれHPLCを用いて測定した。結果を
図17に示す。
【0072】
この図からも明らかなとおり、本願発明のセラミド含有組成物(ワインセラミド)に含まれるレスベラトロール量は赤ワインまたはワイン澱(ワインクリスタル)に含まれるレスベラトロール量と比較して顕著に増加していることがわかる。
【0073】
(実施例10:ワインセラミドによる各種遺伝子マーカーの発現増強効果)
ヒトケラチノサイト細胞株(HaCaT)を1×10
5 cells/wellの細胞数で12wellプレートに播種し、10% FBS含有のDMEM培地で培養した(37℃、5% CO
2)。オーバーナイトで培養した後、DMSOに溶かしたワインセラミドおよび他の原料由来のセラミド(表1)を所定の濃度で添加したDMEM培地(FBSフリー)で72時間培養した(DMSOの最終添加濃度は0.1%)。他の原料由来のセラミドは、表1に記載した各メーカーから購入したものを利用した。ワインセラミドは、実施例2~6に示した最適な手法(10倍加水による60℃、60分の水洗浄および40℃、6時間の95%エタノール抽出)によって抽出した。
【表1】
【0074】
DMSOの最終濃度が0.1%となるように添加したDMEM培地(FBSフリー)をコントロールとして用いた。72時間培養後、細胞からmRNAを回収し、cDNAを作成した。これを用いて、qPCRによって各マーカーのmRNA発現を測定した。評価した各マーカーは以下のとおりである。
・分化マーカー;Pro-Filaggrin、Loricrin
・セラミド合成経路マーカー; Serine-Palmitoyl Transferase
【0075】
結果を
図18~21に示した。
図18に示すとおり、ワインセラミドはコントロールと比較して、分化マーカーであるPro-Filaggrin(肌の角質層を形成するタンパク質。天然保湿因子(NMF)の原料)、およびLoricrin(角質層を正常に形成するための骨組みとなるタンパク質)のmRNA発現量を増加させた。これにより、ワインセラミドはケラチノサイト分化を促進することがわかる。
【0076】
また
図19に示すとおり、ワインセラミドはコントロールと比較して、セラミド合成経路マーカーであるSPT:Serine-Palmitoyl Transferase(セラミド de novo合成経路の酵素)のmRNA発現量を増加させた。これにより、ワインセラミドはセラミド合成経路を促進することがわかる。
【0077】
また
図20には、本発明のワインセラミドと、グルコシルセラミドおよびフリーセラミドとを比較した場合のPro-Filaggrin mRNA発現量およびSPT mRNA発現量を示した。グルコシルセラミドおよびフリーセラミドの添加量はワインセラミドに含まれるグルコシルセラミドおよびフリーセラミドの同等量で算出し、具体的には、ワインセラミド1μg/mL、グルコシルセラミド0.075μg/mL、フリーセラミド0.035μg/mLを用いた。グルコシルセラミドおよびフリーセラミドは、ワインセラミドから単離したものを使用した。この図からもわかるとおり、ワインセラミドはグルコシルセラミド単独またはフリーセラミド単独の場合よりもそれぞれのmRNA発現量の増加効果が高い。
【0078】
また
図21には、本発明のワインセラミドと、ワイン以外の原料から得られた各セラミド(米セラミド、パインセラミド、およびこんにゃくセラミド)とを比較した場合のPro-Filaggrin mRNA発現量およびSPT mRNA発現量を示した。各セラミドの組成は表1に示したとおりである。この図からもわかるとおり、ワインセラミドは米セラミドまたはパインセラミドよりもそれぞれのmRNA発現量の増加効果が高い。
【0079】
(実施例11:ケラチノサイトに対するワインセラミドの効果)
トランスウェルを用いて3D培養した初代培養ケラチノサイトにおいて、ワインセラミドの有効性を評価した。ワインセラミドは実施例10と同様のものを用いた。トランスウェルの角層側(Upperウェル)および基底膜側(Bottomウェル)にそれぞれワインセラミド含有の培地を所定の時間添加して培養した。対照群として、DMSO 0.1%含有の培地にて培養した。各培地で培養した後、3D培養した初代培養ケラチノサイトの凍結切片を作成し、ヘマトキシリン・エオシン染色および抗セラミド抗体を用いた免疫染色を行った。
【0080】
ヘマトキシリン・エオシン染色した切片を位相差顕微鏡下で観察し、表皮層の厚さを測定した結果を
図22に示した。この結果からわかるとおり、ワインセラミド処理により、皮膚の厚さが増加している。皮膚の厚さについては、加齢とともに皮膚のターンオーバーが低下して薄くなることが知られているため、今回の結果は、ワインセラミド処理によってケラチノサイトの増加および分化が促進され、皮膚のターンオーバーも促進したことが考えられる。
【0081】
また抗セラミド抗体で免疫染色した切片を蛍光顕微鏡下で観察し、表皮層中のセラミド含量を測定した結果を
図23に示した。この結果からわかりとおり、対照群と比較して、ワインセラミド処理した3D培養ケラチノサイトでは、免疫染色部分が拡大しており、セラミド量が増加している。実施例10に示したとおり、平面培養(2D培養)において、セラミド合成経路マーカー(SPT)のmRNA発現量が増加していたことから、本実施例におけるセラミド量の増加は、セラミドの取り込みだけではなく、セラミドの新規合成が増加したことがわかる。
【0082】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は、日本国特許庁に2021年10月15日に出願された特願2021-169620に対して優先権主張をするものであり、その内容はその全体があたかも本願の内容を構成するのと同様に参考として援用される。
本願発明により、ワイン発酵粕由来のセラミド含有組成物を提供することができる。また本願発明の方法によれば、ワイン発酵粕を原料として、夾雑物を除去しながらセラミド組成物の安定的な抽出が可能となり、またセラミド組成物の色も制御することができる。さらに本願発明のセラミド組成物はフリーセラミドを含み、ワイン発酵粕という安全性の高い天然の材料を使用しているため、機能性食品や化粧品などに配合しても、人体に対して悪影響を及ぼすことなく、安全性に優れているため、化粧品、医薬品、及び医薬部外品などの分野において有用である。