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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059814
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】誘導発熱ローラ装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/14 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
H05B6/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122814
(22)【出願日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2021169484
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】大空 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 幸三
(72)【発明者】
【氏名】北野 孝次
【テーマコード(参考)】
3K059
【Fターム(参考)】
3K059AA08
3K059AB09
3K059AD32
3K059CD48
3K059CD77
(57)【要約】
【課題】ローラ本体の回転を高速化できるだけでなく、片持ち式の誘導発熱ローラ装置を小型化するとともに、片持ち式の誘導発熱ローラ装置に必要なモータのトルクや容量を得る。
【解決手段】機台に片持ち支持された固定軸と、固定軸に軸受を介して回転可能に支持された円筒状のローラ本体と、ローラ本体の内部に設けられ、ローラ本体を誘導発熱させる誘導発熱機構と、機台及びローラ本体の間に設けられ、ローラ本体を固定軸に対して回転させるアキシャルギャップモータとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機台に片持ち支持された固定軸と、
前記固定軸に軸受を介して回転可能に支持された円筒状のローラ本体と、
前記ローラ本体の内部に設けられ、前記ローラ本体を誘導発熱させる誘導発熱機構と、
前記機台及び前記ローラ本体の間に設けられ、前記ローラ本体を前記固定軸に対して回転させるアキシャルギャップモータとを備える、片持ち式の誘導発熱ローラ装置。
【請求項2】
前記アキシャルギャップモータは、
前記ローラ本体の前記機台側を向く機台側端面に設けられ、前記ローラ本体の回転軸周りに配設された複数の永久磁石を有するディスク状のロータと、
前記機台又は前記固定軸において前記機台側端面に対向して設けられ、前記ローラ本体の回転軸方向において前記ロータと対向する複数の磁極を有するディスク状のステータとを有する、請求項1に記載の片持ち式の誘導発熱ローラ装置。
【請求項3】
前記固定軸の内部に、冷媒が流れる冷媒流路が形成されている、請求項1又は2に記載の片持ち式の誘導発熱ローラ装置。
【請求項4】
前記冷媒流路は、前記軸受を冷却するとともに、前記ステータを冷却するものである、請求項3に記載の片持ち式の誘導発熱ローラ装置。
【請求項5】
前記固定軸は、
前記ローラ本体を支持する支持軸部と、
前記支持軸部の基端部に形成され、前記機台に固定される固定フランジ部とを有し、
前記固定フランジ部に前記ステータが設けられている、請求項2に記載の片持ち式の誘導発熱ローラ装置。
【請求項6】
前記支持軸部の内部に前記軸受を冷却するための軸受冷却用流路が形成され、
前記固定フランジ部の内部に前記ステータを冷却するためのステータ冷却用流路が形成されている、請求項5に記載の片持ち式の誘導発熱ローラ装置。
【請求項7】
前記冷媒流路は、潤滑油を含有する冷媒を流すものであり、前記固定軸の外側周面に開口し、ミスト状の冷媒を前記軸受及び前記アキシャルギャップモータに供給するものである、請求項4に記載の片持ち式の誘導発熱ローラ装置。
【請求項8】
前記ローラ本体の機台側端面と前記ロータとの間に断熱層が形成されている、請求項2に記載の片持ち式の誘導発熱ローラ装置。
【請求項9】
前記ロータは、前記機台側端面に円環状の固定部材より固定されており、
前記固定部材により前記断熱層が形成されている、請求項8に記載の片持ち式の誘導発熱ローラ装置。
【請求項10】
前記固定部材は、外側周面の全周に開口する凹溝が形成されており、
前記凹溝により前記断熱層が形成されている、請求項9に記載の片持ち式の誘導発熱ローラ装置。
【請求項11】
前記固定軸の内部に、冷媒が流れる冷媒流路が形成されており、
前記冷媒流路は、前記固定軸の外側周面に開口し、前記冷媒を前記アキシャルギャップモータに供給するものであり、
前記固定部材の内部に、径方向内側から径方向外側に向かって前記冷媒が流れる内部流路が形成されている、請求項9又は10に記載の片持ち式の誘導発熱ローラ装置。
【請求項12】
前記固定軸の内部に、冷媒が流れる冷媒流路が形成されており、
前記冷媒流路は、前記固定軸の外側周面に開口し、前記冷媒を前記アキシャルギャップモータに供給するものであり、
前記ロータにおいて互いに隣り合う前記永久磁石の間に、径方向内側から径方向外側に向かって前記冷媒が流れる流路が形成されている、請求項9又は10に記載の片持ち式の誘導発熱ローラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導発熱ローラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナイロン、ポリエステル等の合成繊維等の製造工程において、紡糸後に加熱し、長さ方向に引き延ばすことにより分子配向を整えて、引張強度や弾性率などの特性を向上させる直延伸工程が行われている。
【0003】
そして、この直延伸工程では、複数の片持ち式の誘導発熱ローラ装置が用いられており、合成繊維の加熱を行うとともに、各誘導発熱ローラ装置の回転速度差によって合成繊維を延伸している。
【0004】
この片持ち式の誘導発熱ローラ装置は、特許文献1に示すように、底部中央部に軸嵌合部を有するローラ本体と、ローラ本体の内部に配置された円筒状鉄心及び誘導コイルとからなる磁束発生機構とを備え、モータの回転軸の先端部をローラ本体の軸嵌合部に嵌合連結することによりローラ本体を片持ち式に支持して、ローラ本体がモータにより回転するように構成されている。
【0005】
具体的に上記の誘導発熱ローラ装置では、ローラ本体の内部に磁束発生機構を支持する円筒部が設けられており、当該円筒部の内側周面には転がり軸受によってモータの回転軸が支持されている。
【0006】
しかしながら、モータの回転軸を転がり軸受によってモータの回転軸を支持する構成では、回転系を構成する部材の質量とその材料で決定される剛性とより決まる共振周波数に対応する回転軸の危険速度よりも高速でローラ本体を回転させることができない。
【0007】
この対策として、転がり軸受のサイズを大きくして回転軸の外径を大きくすることにより、回転軸の剛性を大きくして危険速度を高めることができるが、一方で、転がり軸受のサイズが大きくなるほど、軸受自身の許容最高回転数が低下してしまう。このように、回転軸の剛性と転がり軸受のサイズとのせめぎ合いの結果、危険速度が定まり、ローラ本体の最高回転数が決定されるという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に示すように、ホットローラ回転子及びヒータコイルの内径側に、モータ固定子を嵌合固定し、そのモータ固定子に対向して配置されたモータ回転子と当該モータ回転子とが固定されたシャフトとを備える構成も考えられている。なお、シャフトはホットローラ回転子に結合されている。また、シャフトは、ヒータコイルが設けられたホットローラボス部に接続されたカバーに、軸受を介して回転可能に支持されている。
【0009】
この構成であれば、誘導発熱ローラ装置を設置に要する面積を小型化することができるものの、シャフトの危険速度の制約を受ける構成であることに変わりなく、モータ固定子及びモータ回転子との配置がヒータコイルの内径に限定されるため、必要とする回転トルクや容量を発揮するモータにすることが困難である。そうかと言って、ヒータコイルの内径を拡大すべくホットローラ回転子の外径を大きくすれば、結果として、ホットローラ回転子の重量及び慣性モーメントが増大し、更に大きなモータが必要となるという矛盾が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009-163968号公報
【特許文献2】特開平6-111920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、ローラ本体の回転を高速化できるだけでなく、片持ち式の誘導発熱ローラ装置を小型化するとともに、片持ち式の誘導発熱ローラ装置に必要なモータのトルクや容量を得ることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明に係る誘導発熱ローラ装置は、機台に片持ち支持された固定軸と、前記固定軸に軸受を介して回転可能に支持された円筒状のローラ本体と、前記ローラ本体の内部に設けられ、前記ローラ本体を誘導発熱させる誘導発熱機構と、前記機台及び前記ローラ本体の間に設けられ、前記ローラ本体を前記固定軸に対して回転させるアキシャルギャップモータとを備えることを特徴とする。
【0013】
このようなものであれば、回転軸を用いない構成のため危険速度に制約されることが無くなり、ローラ本体の回転を高速化することが容易となる。また、アキシャルギャップモータを用いているので、従来のラジアルギャップモータを用いたものに比べて、片持ち式の誘導発熱ローラ装置を小型化することができ、設置に要する面積を大幅に縮小して省スペース化することができる。さらに、アキシャルギャップモータのロータ及びステータをローラ本体の外径と同等の寸法まで大きくすることができ、片持ち式の誘導発熱ローラ装置に必要なモータのトルクや容量を得ることができる。その上、アキシャルギャップモータがローラ本体の外部に設けられるため、ローラ本体の内部に設けられる誘導発熱機構の軸方向の寸法を可及的に大きくすることができる。
【0014】
アキシャルギャップモータの具体的な実施の態様としては、前記アキシャルギャップモータは、前記ローラ本体の前記機台側を向く機台側端面に設けられ、前記ローラ本体の回転軸周りに配設された複数の永久磁石を有するディスク状のロータと、前記機台又は前記固定軸において前記機台側端面に対向して設けられ、前記ローラ本体の回転軸方向において前記ロータと対向する複数の磁極を有するディスク状のステータとを有することが考えられる。
【0015】
軸受を冷却することにより軸受の破損を防止するためには、前記固定軸の内部に、冷媒が流れる冷媒流路が形成されていることが望ましい。
【0016】
軸受だけでなく、ステータの冷却を行うためには、前記冷媒流路は、前記軸受を冷却するとともに、前記ステータを冷却するものであることが望ましい。
【0017】
固定軸の具体的な実施の態様としては、前記固定軸は、前記ローラ本体を支持する支持軸部と、前記支持軸部の基端部に形成され、前記機台に固定される固定フランジ部とを有し、前記固定フランジ部に前記ステータが設けられていることが望ましい。
【0018】
軸受及びステータを冷却するための具体的な実施の態様としては、前記支持軸部の内部に前記軸受を冷却するための軸受冷却用流路が形成され、前記固定フランジ部の内部に前記ステータを冷却するためのステータ冷却用流路が形成されていることが望ましい。
【0019】
軸受の潤滑及び冷却とともにアキシャルギャップモータを冷却するためには、前記冷媒流路は、潤滑油を含有する冷媒を流すものであり、前記固定軸の外側周面に開口し、ミスト状の冷媒を前記軸受及び前記アキシャルギャップモータに供給するものであることが望ましい。
【0020】
誘導加熱されるローラ本体からロータへの伝熱を低減してロータが過度に加熱されることを防止するためには、前記ローラ本体の機台側端面と前記ロータとの間に断熱層が形成されていることが望ましい。
【0021】
断熱層を形成する具体的な実施の態様としては、前記ロータは、前記機台側端面に円環状の固定部材より固定されており、前記固定部材により前記断熱層が形成されていることが望ましい。このように固定部材により断熱層を形成することで断熱するための装置構成を簡単にすることができる。
【0022】
前記固定部材は、外側周面の全周に開口する凹溝が形成されており、前記凹溝により前記断熱層が形成されていることが望ましい。この構成であれば、ロータの裏面側を積極的に空冷することができる。
【0023】
前記固定軸の内部に、冷媒が流れる冷媒流路が形成されており、前記冷媒流路は、前記固定軸の外側周面に開口し、前記冷媒を前記アキシャルギャップモータに供給するものであり、前記固定部材の内部に、径方向内側から径方向外側に向かって前記冷媒が流れる内部流路が形成されていることが望ましい。この構成であれば、固定部材に冷媒が流れる内部流路を形成しているので、固定部材における断熱性能を向上させることができ、また、ロータを積極的に冷却することができる。
【0024】
前記固定軸の内部に、冷媒が流れる冷媒流路が形成されており、前記冷媒流路は、前記固定軸の外側周面に開口し、前記冷媒を前記アキシャルギャップモータに供給するものであり、前記ロータにおいて互いに隣り合う前記永久磁石の間に、径方向内側から径方向外側に向かって前記冷媒が流れる流路が形成されていることが望ましい。この構成であれば、ロータにおいて互いに隣り合う永久磁石の間に冷媒が流れる流路を形成しているので、ロータの永久磁石を積極的に冷却することができる。
【発明の効果】
【0025】
このように構成した本発明によれば、ローラ本体の回転を高速化できるだけでなく、誘導発熱ローラ装置を小型化するとともに、誘導発熱ローラ装置に必要なモータのトルクや容量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態の片持ち式の誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す断面図である。
図2】変形実施形態の片持ち式の誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す断面図である。
図3】変形実施形態の片持ち式の誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す断面図である。
図4】変形実施形態の片持ち式の誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す断面図である。
図5】固定部材の(a)構成例1の(a1)軸方向に沿った断面図、(a2)軸方向に直交する断面図、及び(b)構成例2の(b1)軸方向に沿った断面図、(b2)軸方向に直交する断面図である。
図6】変形実施形態の片持ち式の誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す断面図である。
図7】変形実施形態の片持ち式の誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す(a)部分断面図、(b)ロータの斜視図、(c)冷媒の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<本発明の一実施形態>
以下に本発明に係る片持ち式の誘導発熱ローラ装置100の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0028】
この片持ち式の誘導発熱ローラ装置100は、例えばプラスチックフィルム、紙、布、不織布、合成繊維、金属箔等のシート材又はウェブ材、線(糸)材等の連続材の熱処理工程等において用いられるものである。
【0029】
本実施形態の片持ち式の誘導発熱ローラ装置100は、図1に示すように、機台20に片持ち支持された固定軸2と、固定軸2に軸受3、4を介して回転可能に支持された円筒状のローラ本体5と、ローラ本体5の内部に設けられ、ローラ本体5を誘導発熱させる誘導発熱機構6と、機台20及びローラ本体5の間に設けられ、ローラ本体5を固定軸2に対して回転させるアキシャルギャップモータ7とを備えている。
【0030】
<固定軸2>
固定軸2は、固定された機台20に一端部が固定されることによって片持ち支持されるものである。この固定軸2は、ローラ本体5を軸受3、4を介して回転可能に支持する概略円柱状の支持軸部21と、支持軸部21の基端部に形成され、機台20に固定される固定フランジ部22とを有している。
【0031】
軸受3、4は、転がり軸受であり、クロム軸受鋼、ステンレス鋼、セラミックス等の材質を軸受部の温度に合わせて適宜選択することができるし、その潤滑剤も、耐熱グリス、耐熱油、固体潤滑剤等から軸受部の温度に合わせて適宜選択することができる。なお、転がり軸受の他に、非接触の磁気軸受に置き換えても良い。
【0032】
<ローラ本体5>
ローラ本体5は、円筒状をなす円筒部51と、当該円筒部51の軸方向一端開口部を塞ぐように設けられた第1円板部52と、円筒部51の軸方向他端開口部を塞ぐように設けられた第2円板部53とを有している。そして、円筒部51の肉厚内に、軸方向に沿って複数のジャケット室5xが形成されている。このジャケット室5xには、気液二相の熱媒体が封入されている。
【0033】
ローラ本体5の第1円板部52及び第2円板部53には、固定軸2が挿通される挿通孔52h、53hが形成されている。そして、第1円板部52の挿通孔52hと固定軸2との間に外輪回転の転がり軸受3が設けられ、第2円板部53の挿通孔53hと固定軸2との間に外輪回転の転がり軸受4が設けられている。なお、第1円板部52及び第2円板部53の一方は、円筒部51と一体形成されたものであっても良い。
【0034】
その他、ローラ本体5の円筒部51の肉厚内には、円筒部51の温度を検出するための温度センサ8が設けられている。この温度センサ8は、ローラ本体5に設けられた検出信号伝送部9に接続されており、温度センサ8の検出信号は、検出信号伝送部9によって、外部の温度制御装置(不図示)に送信される。
【0035】
この温度制御装置により、後述する電源回路(不図示)が制御されて、ローラ本体5の温度が制御される。なお、検出信号伝送部9は、例えば近距離無線通信システムを用いたものであっても良いし、送信部9a及び受信部9bを有する電磁誘導式又は光式のものであっても良い。図1の検出信号伝送部9は、第2円板部53に送信部9aが設けられ、固定フランジ部22に受信部9bが設けられている。
【0036】
<誘導発熱機構6>
誘導発熱機構6は、ローラ本体5の内部に設けられており、円筒状をなす円筒状鉄心61と、当該円筒状鉄心61の外側周面に巻装された誘導コイル62とを備えている。この誘導発熱機構6の円筒状鉄心61内には、固定軸2が挿通しており、誘導発熱機構6は、取付部材10によって固定軸2に取り付けられて固定されている。
【0037】
なお、誘導コイル62に接続されるリード線(不図示)には、商用周波数(50Hz又は60Hz)の交流電圧などを印加するための電源回路(不図示)が接続されている。
【0038】
この誘導発熱機構6により、誘導コイル62に交流電圧が印加されると交番磁束が発生し、その交番磁束はローラ本体5の側周壁(円筒部51)を通過する。この通過によりローラ本体5の円筒部51に誘導電流が発生し、その誘導電流でローラ本体5の円筒部51はジュール発熱する。
【0039】
<アキシャルギャップモータ7>
アキシャルギャップモータ7は、ローラ本体5を固定軸2に対して回転させるものであり、ローラ本体5の外部において機台20側に設けられている。
【0040】
具体的にアキシャルギャップモータ7は、ローラ本体5に固定されたディスク状のロータ(回転子)71と、固定軸2の固定フランジ部22に固定されたディスク状のステータ(固定子)72とを有している。
【0041】
ロータ71は、ローラ本体5の回転軸周りに等間隔に配設された複数の永久磁石を有するものである。本実施形態のロータ71は、ローラ本体5における回転軸方向の機台側端面5aに固定されている。本実施形態の機台側端面5aは、ローラ本体5の第2円板部53の外側端面により構成される。
【0042】
ここで、ローラ本体5の機台側端面5aとロータ71の裏面(機台20とは反対側の面)との間には、回転軸周りの周方向全体に亘って断熱層S1が形成されている。具体的にロータ71は、機台側端面5aに円環状の固定部材11より固定されており、当該固定部材11により断熱層S1が形成されている。具体的に固定部材11には、外側周面の全周に開口する凹溝11aが形成されている。この凹溝11aは、固定部材11の径方向においてロータ71の半分の位置よりも内側に形成されている。この構成により、固定部材11は、概略U字状の断面を有する構成となる。そして、凹溝11aにより断熱層S1が形成されている。なお、固定部材11の厚肉部自体も断熱層としての機能を発揮する。
【0043】
ステータ72は、ローラ本体5の回転軸方向においてロータ71と対向する複数の磁極を有するものである。この複数の磁極も、前記複数の永久磁石と同様に、ローラ本体5の回転軸周りに等間隔に配設されている。本実施形態のステータ72は、ローラ本体5の機台側端面5aに対向する対向面2aに設けられている。この対向面2xは、固定軸2の固定フランジ部22において機台側端面5aに対向する面により構成される。
【0044】
このアキシャルギャップモータ7において、ステータ72に交流電力を供給することによって、ロータ71及びステータ72との間で回転トルクが生じて、ローラ本体5が所定の回転数で回転する。
【0045】
<軸受3、4及びアキシャルギャップモータ7の冷却機構12>
さらに、本実施形態の片持ち式の誘導発熱ローラ装置100は、軸受3、4及びアキシャルギャップモータ7を冷却するための冷却機構12を備えている。
【0046】
冷却機構12は、固定軸2の内部に形成された冷媒が流れる冷媒流路121と、当該冷媒流路121に冷媒を供給するポンプ等の冷媒供給源(不図示)とを備えている。なお、冷媒としては、例えば水や空気などを用いることができる。
【0047】
冷媒流路121は、軸受3、4を冷却するとともに、アキシャルギャップモータ7のステータ72を冷却するように形成されている。具体的に冷媒流路121は、支持軸部21の内部に形成され、軸受3、4を冷却するための軸受冷却用流路121aと、固定フランジ部22の内部に形成され、ステータ72を冷却するためのステータ冷却用流路121bとを有している。
【0048】
軸受冷却用流路121aは、固定軸2の基端部に設けられた導入ポートP1及び導出ポートP2に連通し、支持軸部21の内部に軸方向に沿って形成された往復路である。この軸受冷却用流路121aは、支持軸部21の軸方向において自由端部側の軸受3又はその近傍の位置まで延びている。
【0049】
ステータ冷却用流路121bは、固定フランジ部22の内部においてステータ72に対向する部分にステータ72の周方向に沿って形成された円環状の流路を有している。本実施形態のステータ冷却用流路121bは、軸受冷却用流路121aから分岐して形成されており、導入ポートP1及び導出ポートP2に連通している。なお、ステータ冷却用流路121bは、固定軸2の内部において軸受冷却用流路121aとは独立して形成しても良い。
【0050】
<本実施形態の効果>
このように構成した誘導発熱ローラ装置100によれば、回転軸を用いない構成のため危険速度に制約されることが無くなり、ローラ本体5の回転を高速化することが容易となる。また、アキシャルギャップモータ7を用いているので、従来のラジアルギャップモータを用いたものに比べて、片持ち式の誘導発熱ローラ装置100を小型化することができ、設置に要する面積を大幅に縮小して省スペース化することができる。さらに、アキシャルギャップモータ7のロータ71及びステータ72をローラ本体5の外径と同等の寸法まで大きくすることができ、片持ち式の誘導発熱ローラ装置100に必要なモータのトルクや容量を得ることができる。その上、アキシャルギャップモータ7がローラ本体5の外部に設けられるため、ローラ本体5の内部に設けられる誘導発熱機構6の軸方向の寸法を可及的に大きくすることができる。
【0051】
ロータ71を固定するための固定部材11に凹溝11aを形成し、凹溝11aにより断熱層S1を形成しているので、誘導加熱されるローラ本体5からロータ71への伝熱を低減してロータ71が過度に加熱されることを防止することができる。また、ロータ71の裏面側を積極的に空冷することができる。
【0052】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られず、以下の態様であっても良い。
【0053】
例えば、前記実施形態のアキシャルギャップモータ7のステータ72を固定軸2の固定フランジ部22に設ける構成の他に、図2に示すように、機台20又は機台20に設けられた固定軸2とは別の部材(不図示)にステータ72を設ける構成としても良い。
【0054】
また、冷却機構12が潤滑油を含有する冷媒を軸受3、4及びアキシャルギャップモータ7に直に供給する構成としても良い。この場合、図3に示すように、冷媒流路121は、潤滑油を含有する冷媒を流すものであり、固定軸2(支持軸部21)の外側周面に開口し、当該開口121xからミスト状の冷媒を導出する構成とすることが考えられる。ここで、冷媒流路121の開口121xはノズル形状とすることで、ミスト状の冷媒を導出することができる。また、開口121xは、軸受3、4を向くように形成されている。そして、冷媒流路121の開口121xから導出されたミスト状の冷媒は、軸受3、4に噴霧される。機台側の軸受4に噴霧されたミスト状の冷媒は、アキシャルギャップモータ7のロータ71とステータ72との間を通過してそれらを冷却し、その後、外部に放出される。
【0055】
さらに、図4に示すように、固定軸2の内部に、冷媒が流れる冷媒流路121が形成されており、冷媒流路121は、固定軸2の外側周面において軸受4よりも機台側に開口し、冷媒(例えば空気)をアキシャルギャップモータ7に供給する構成としても良い。ここで、ロータ71をローラ本体5に固定する固定部材11が断熱層S1となり、固定部材11の内部に、径方向内側から径方向外側に向かって冷媒が流れる内部流路11Rが形成されている。また、冷媒流路121は、固定軸2の外側周面において固定部材11の内側周面に径方向に対向して開口している。このような構成により、冷媒流路121から供給された冷媒は、機台側の軸受4を冷却したした後に、冷媒の供給圧とともに回転に伴う遠心力によって内部流路11Rを通過する。これにより、ロータ71が冷却される。また、一部の冷媒は、ロータ71とステータ72との間を通過してそれらを冷却し、その後、外部に放出される。
【0056】
ここで、内部流路11Rを有する固定部材11の構成例を図5に示す。構成例1は、図5(a)に示すように、固定部材11が円環状をなす1枚の板部材から構成されており、当該板部材の肉厚内に径方向内側から径方向外側に向かって内部流路11Rを形成したものである。内部流路11Rは、直線状をなす流路であっても良いし、湾曲した流路であっても良い。また、構成例2は、図5(b)に示すように、固定部材11が、2枚の円環状をなす板部材11a、11bを複数のスペーサ部材11cを介して重ね合わせて構成されており、複数のスペーサ部材11cによって板部材11a、11bの間に内部流路11Rが形成されたものである。この構成において、一方の板部材11aにはロータ71が固定され、他方の板部材11bはローラ本体2に固定される。
【0057】
また、図6に示すように、ロータ71をローラ本体5に固定する固定部材11が内側周面の全周に開口する凹溝11aを有する構成としても良い。この凹溝11aにより断熱層S1が形成されている。そして、固定軸2の内部に、冷媒が流れる冷媒流路121が形成されており、冷媒流路121は、固定軸2の外側周面において軸受4よりも機台側に開口し、冷媒(例えば空気)をアキシャルギャップモータ7に供給する構成としても良い。ここで、固定部材11の凹溝11aの底壁部(外周壁部)には、1又は複数の貫通孔11hが形成されている。これら凹溝11a及び貫通孔11hにより内部流路11Rが構成される。また、冷媒流路121は、固定軸2の外側周面において固定部材11の凹溝11aに径方向に対向して開口している。このような構成により、冷媒流路121から供給された冷媒は、機台側の軸受4を冷却したした後に、冷媒の供給圧とともに回転に伴う遠心力によって凹溝11aに流入し、貫通孔11hから外部に放出される。これにより、ロータ71が冷却される。また、一部の冷媒は、ロータ71とステータ72との間を通過してそれらを冷却し、その後、外部に放出される。
【0058】
さらに、図7に示すように、ロータ71において互いに隣り合う永久磁石11mの間に、径方向内側から径方向外側に向かって冷媒が流れる流路71Rが形成された構成としても良い。ここで、ロータ71は、円環状をなす磁性体のベース部材711と、当該ベース部材711に間欠的にNS交互に設けられた永久磁石71mとを有する。なお、ベース部材711は、断熱層S1としての機能を有していても良い。また、ベース部材711とローラ本体5との間に固定部材11を設けても良い。そして、固定軸2の内部に、冷媒が流れる冷媒流路121が形成されており、冷媒流路121は、固定軸2の外側周面において軸受4よりも機台側に開口し、冷媒(例えば空気)をアキシャルギャップモータ7に供給する構成としても良い。ここで、冷媒流路121は、固定軸2の外側周面において永久磁石71mに径方向に対向して開口している。このような構成により、冷媒流路121から供給された冷媒は、機台側の軸受4を冷却したした後に、冷媒の供給圧とともに回転に伴う遠心力によって永久磁石71mの間の流路71Rを通過する。また、冷媒は、ロータ71とステータ72との間を通過する。これにより、ロータ71が冷却される。
【0059】
上述した各実施形態において、アキシャルギャップモータ7と誘導発熱機構6との間に磁気シールド部を設けても良い。この磁気シールド部は、図1及び図2においては、第2円板部53又は固定部材11に磁気シールド機能を持たせても良いし、別途磁気シールド部材を設けて構成しても良い。この構成であれば、直列的に配置されるアキシャルギャップモータ7と誘導発熱機構6との相互の磁気的な干渉を阻止することができる。その他、鉄心が漏れ磁束を発生することに対しては、磁気抵抗が低いインボリュート鉄心(断面が概略インボリュート形状をなす磁性鋼板を円筒状に積層した鉄心)を用いることも考えられる。
【0060】
上記の誘導発熱ローラ装置を複数用いて直延伸工程を行う場合には、複数の誘導発熱ローラ装置の間を安定して所定の糸道を走行させるための相互傾斜角(ネルソン角)を付与するために、固定軸2に回転可動部を設けても良い。
【0061】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
100・・・片持ち式の誘導発熱ローラ装置
20・・・機台
2・・・固定軸
21・・・支持軸部
22・・・固定フランジ部
3、4・・・軸受
5・・・ローラ本体
5x・・・機台側端面
6・・・誘導発熱機構
7・・・アキシャルギャップモータ
71・・・ロータ
72・・・ステータ
11・・・固定部材
11a・・・凹溝
S1・・・断熱層
121・・・冷媒流路
121a・・・軸受冷却用流路
121b・・・ステータ冷却用流路
11R・・・内部流路
71R・・・流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7