(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059842
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】油圧機械及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
F16H 61/4008 20100101AFI20230420BHJP
【FI】
F16H61/4008
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022163008
(22)【出願日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0137719
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520485941
【氏名又は名称】ボルボ・コンストラクション・イクイップメント・アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】VOLVO CONSTRUCTION EQUIPMENT AB
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】キム・ヨンフン
(72)【発明者】
【氏名】チュ・サンギュ
【テーマコード(参考)】
3J053
【Fターム(参考)】
3J053AA03
3J053AB12
3J053AB21
3J053AB45
3J053AB50
3J053DA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】油圧モータの動作を安定的に制御するために新しいバルブコントロールアルゴリズムを適用した油圧機械及びその制御方法を提供する。
【解決手段】油圧機械は、油圧モータと、油圧モータに連結された高圧ラインと、油圧モータ連結された低圧ラインと、高圧ラインバルブと、低圧ラインバルブと、油圧モータの動作を制御する命令を入力するためのオペレータ入力装置と、命令を受信して対応するように高圧ラインバルブ及び低圧ラインバルブの開閉を制御するコントロールユニットを含み、コントロールユニットは、高圧ラインバルブが正規化バルブ容量係数、KvHPを有するように制御し、低圧ラインバルブが正規化バルブ容量係数、KvLPを有するように制御し、ここで、命令に対応するコマンド正規化バルブ容量係数、Kvcmdが0<Kvcmd<1である時、KvLP<KvHPであることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧モータと、
前記油圧モータに作動油を流入させるために前記油圧モータに連結された高圧ラインと、
前記油圧モータから前記作動油を流出させるために前記油圧モータに連結された低圧ラインと、
前記高圧ラインを開閉するための高圧ラインバルブと、
前記低圧ラインを開閉するための低圧ラインバルブと、
前記油圧モータの動作を制御する命令を入力するためのオペレータ入力装置と、
前記オペレータ入力装置から前記命令を受信してその命令に対応するように前記高圧ラインバルブ及び前記低圧ラインバルブの開閉を制御するコントロールユニットと、を含み、
前記コントロールユニットは、
前記高圧ラインバルブが正規化バルブ容量係数KvHPを有するように制御し、
前記低圧ラインバルブが正規化バルブ容量係数KvLPを有するように制御し、
ここで、前記命令に対応するコマンド正規化バルブ容量係数Kvcmdが0<Kvcmd<1であるとき、KvLP<KvHPである、
ことを特徴とする油圧機械。
【請求項2】
Kvcmd=0又はKvcmd=1であるとき、KvHP=KvLPである、ことを特徴とする請求項1に記載の油圧機械。
【請求項3】
Kvcmd=0又はKvcmd=1であるとき、Kvcmd=KvHP=KvLPである、ことを特徴とする請求項2に記載の油圧機械。
【請求項4】
0<Kvcmd<1であるとき、KvLP<Kvcmd<KvHPである、ことを特徴とする請求項1に記載の油圧機械。
【請求項5】
前記油圧モータは、前記作動油が流出入するポートA及びポートBを含み、
前記高圧ラインは、前記ポートAに連結された高圧ラインAと前記ポートBに連結された高圧ラインBとを含み、
前記低圧ラインは、前記ポートAに連結された低圧ラインAと前記ポートBに連結された低圧ラインBとを含み、
前記高圧ラインバルブは、前記高圧ラインAを開閉するための高圧ラインバルブAと、前記高圧ラインBを開閉するための高圧ラインバルブBとを含み、
前記低圧ラインバルブは、前記低圧ラインAを開閉するための低圧ラインバルブAと、前記低圧ラインBを開閉するための低圧ラインバルブBとを含み、
前記油圧モータを第1方向に回転させる命令が前記オペレータ入力装置に入力された場合、前記コントロールユニットは、前記KvHPに対応する開口量で前記高圧ラインバルブAを開放して前記KvLPに対応する開口量で前記低圧ラインバルブBを開放し、前記高圧ラインバルブB及び前記低圧ラインバルブAを閉鎖し、
前記油圧モータを前記第1方向と反対の第2方向に回転させる命令が前記オペレータ入力装置に入力された場合、前記コントロールユニットは、前記KvHPに対応する開口量で前記高圧ラインバルブBを開放して前記KvLPに対応する開口量で前記低圧ラインバルブAを開放し、前記高圧ラインバルブA及び前記低圧ラインバルブBを閉鎖する、ことを特徴とする請求項1に記載の油圧機械。
【請求項6】
前記油圧モータを第1方向に回転させる命令が前記オペレータ入力装置に入力された場合、前記高圧ラインバルブB及び前記低圧ラインバルブAは閉鎖され、
前記油圧モータを前記第1方向と反対の第2方向に回転させる命令が前記オペレータ入力装置に入力された場合、前記高圧ラインバルブA及び前記低圧ラインバルブBは閉鎖される、ことを特徴とする請求項5に記載の油圧機械。
【請求項7】
前記油圧モータが前記第1方向に回転することを停止させる命令が前記オペレータ入力装置に入力された場合、前記高圧ラインバルブB及び前記低圧ラインバルブAは閉鎖維持されるが、回転速度が0に近くなると、前記コントロールユニットは前記低圧ラインバルブAを一時開放後閉鎖し、
前記油圧モータが前記第2方向に回転することを停止させる命令が前記オペレータ入力装置に入力された場合、前記高圧ラインバルブA及び前記低圧ラインバルブBは閉鎖維持されるが、回転速度が0に近くなると、前記コントロールユニットは前記低圧ラインバルブBを一時開放後閉鎖する、ことを特徴とする請求項6に記載の油圧機械。
【請求項8】
前記高圧ラインと連結された高圧アキュムレータと、
前記低圧ラインと連結された低圧アキュムレータと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の油圧機械。
【請求項9】
前記低圧アキュムレータから前記作動油を受けて加圧し、加圧された作動油を前記高圧アキュムレータに向けて送る再生ポンプをさらに含む、ことを特徴とする請求項8に記載の油圧機械。
【請求項10】
前記作動油を保存するタンクと、
前記タンクから前記作動油を受けて加圧し、加圧された作動油を前記高圧アキュムレータに向けて送る基本ポンプをさらに含む、ことを特徴とする請求項8に記載の油圧機械。
【請求項11】
前記油圧機械は、少なくとも一つの油圧シリンダをさらに含み、
少なくとも一つの前記油圧モータ及び前記少なくとも一つの油圧シリンダは共通するように前記高圧アキュムレータに連結され、
少なくとも一つの前記油圧モータ及び前記少なくとも一つの油圧シリンダは共通するように前記低圧アキュムレータに連結されている、ことを特徴とする請求項8に記載の油圧機械。
【請求項12】
前記油圧モータは、掘削機のスイング用油圧モータ又は走行用油圧モータである、ことを特徴とする請求項1に記載の油圧機械。
【請求項13】
油圧機械を制御するための油圧機械制御方法であって、
前記油圧機械は、
油圧モータと、
前記油圧モータに作動油を流入させるために前記油圧モータに連結された高圧ラインと、
前記油圧モータから前記作動油を流出させるために前記油圧モータに連結された低圧ラインと、
前記高圧ラインを開閉するための高圧ラインバルブと、
前記低圧ラインを開閉するための低圧ラインバルブと、
前記油圧モータの動作を制御する命令を入力するためのオペレータ入力装置と、を含み、
前記オペレータ入力装置によって入力された命令を受信することと、
前記命令に対応するコマンド正規化バルブ容量係数Kvcmdを決定することと、
前記高圧ラインバルブが正規化バルブ容量係数KvHPを有するように制御することと、
前記低圧ラインバルブが正規化バルブ容量係数KvLPを有するように制御することを含み、
ここで、0<Kvcmd<1であるとき、KvLP<KvHPである、
ことを特徴とする油圧機械制御方法。
【請求項14】
Kvcmd=0又はKvcmd=1であるとき、KvHP=KvLPである、ことを特徴とする請求項13に記載の油圧機械制御方法。
【請求項15】
Kvcmd=0又はKvcmd=1であるとき、Kvcmd=KvHP=KvLPである、ことを特徴とする請求項14に記載の油圧機械制御方法。
【請求項16】
0<Kvcmd<1であるとき、KvLP<Kvcmd<KvHPである、ことを特徴とする請求項13に記載の油圧機械制御方法。
【請求項17】
コンピュータ又はコントロールユニットのプロセッシング回路上で実行される場合に、請求項13の各段階を遂行するためのプログラムコードを含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項18】
コンピュータ又はコントロールユニットのプロセッシング回路上で実行される場合に、請求項13の各段階を遂行するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラムを組み込んだことを特徴とするコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧機械及びその制御方法に関するものであり、特に、油圧モータの動作を安定的に制御するために新しいバルブコントロールアルゴリズムを適用した油圧機械及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダと併せて油圧モータは、油圧機械のアクチュエータとして一般的に使用される構成部品である。油圧モータは大きい回転慣性を有するため、例えば、回転の開始時には、圧力衝撃が惹起されて油圧モータのジャーク(jerk)が誘発されることがある。よって、このような問題点を解決することができる安定的な油圧モータコントロールアルゴリズムに対する要求があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、上記問題点を解決するために導き出されたものであり、油圧モータが有する大きい回転慣性によって惹起される問題点を効果的に対処できる油圧モータコントロールアルゴリズムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本開示は、油圧モータと、前記油圧モータに作動油を流入させるために前記油圧モータに連結された高圧ラインと、前記油圧モータから作動油を流出させるために前記油圧モータに連結された低圧ラインと、前記高圧ラインを開閉するための高圧ラインバルブと、前記低圧ラインを開閉するための低圧ラインバルブと、前記油圧モータの動作を制御する命令を入力するためのオペレータ入力装置と、前記オペレータ入力装置から前記命令を受信してその命令に対応するように前記高圧ラインバルブ及び前記低圧ラインバルブの開閉を制御するコントロールユニットと、を含み、前記コントロールユニットは、前記高圧ラインバルブが正規化(Normalized)バルブ容量係数KvHPを有するように制御し、前記低圧ラインバルブが正規化バルブ容量係数KvLPを有するように制御し、ここで、前記命令に対応するコマンド正規化バルブ容量係数Kvcmdが0<Kvcmd<1であるとき、KvLP<KvHPである油圧機械を提供する。
【0005】
また、本開示は、前記オペレータ入力装置によって入力された命令を受信することと、前記命令に対応するコマンド正規化バルブ容量係数Kvcmdを決定することと、前記高圧ラインバルブが正規化バルブ容量係数KvHPを有するように制御することと、前記低圧ラインバルブが正規化バルブ容量係数KvLPを有するように制御することを含み、ここで、0<Kvcmd<1であるとき、KvLP<KvHPである、油圧機械制御方法を提供する。
【0006】
ある実施例では、Kvcmd=0又はKvcmd=1であるとき、KvHP=KvLPである。
【0007】
ある実施例では、Kvcmd=0又はKvcmd=1であるとき、Kvcmd=KvHP=KvLPである。
【0008】
ある実施例では、0<Kvcmd<1であるとき、KvLP<Kvcmd<KvHPである。
【0009】
また、本開示は、コンピュータ又はコントロールユニットのプロセッシング回路上で実行される場合に、前記油圧機械制御方法の各段階を遂行するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを組み込んだコンピュータ可読媒体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、本開示は、油圧モータが有する大きい回転慣性によって惹起される問題点を効果的に対処できる油圧モータコントロールアルゴリズムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施例による油圧機械を概略的に示す図である。
【
図2】本開示の一実施例による油圧機械を概略的に示す図である。
【
図3】一般的な油圧機械の制御系を概略的に示す概念図である。
【
図4】
図2の油圧機械の制御系を概略的に示す概念図である。
【
図5】本開示の一実施例で油圧モータが回転を開始した場合、油圧モータの入口圧力及び出口圧力を示す概念図である。
【
図6】本開示の一実施例で油圧モータの減速が開始された場合、油圧モータの入口圧力及び出口圧力を示す概念図である。
【
図7】K
vcmdと、本開示の一実施例による制御方法によって修正されたK
vHP及びK
vLPとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の実施例を詳しく説明する。
【0013】
図1は、本開示の一実施例による油圧機械を概略的に示す図である。
【0014】
図示されたように、油圧機械は、油圧モータ100と、高圧ライン121、121’、低圧ライン123、123’、高圧ラインバルブ131、131’及び低圧ラインバルブ133、133’を含むことができる。
【0015】
ある実施例では、油圧モータ100は、作動油の流出入によって発生する回転トルクを上部本体に伝達してスイング動作(下部シャーシの上でその下部シャーシに対して上部本体を回転させる)を遂行するか、又はスプロケット若しくはホイールに伝達して走行動作(油圧機械を前進や後進又は、左側若しくは右側に方向を変えるステアリングを遂行する)を遂行する構成要素であり得る。したがって、スイング又は走行動作中に大きな荷重が油圧モータ100に印加され、これによって油圧モータ100は大きい回転慣性を有するようになる。油圧モータ100は、作動油が流出入するポートA111とポートB113とを有することができる。ある実施例では、油圧モータ100は両方向に回転が可能であり、よって、ポートA111は流入口だけではなく、流出口としても機能することができるし、同じくポートB113も流入口だけではなく、流出口としても機能することができる。
【0016】
高圧ライン121、121’は、油圧モータ100に作動油を流入させるために油圧モータ100に連結され得る。高圧ライン121、121’は、ポートA111と連結された高圧ラインA121及びポートB113と連結された高圧ラインB121’を含むことができる。
【0017】
低圧ライン123、123’は、油圧モータ100から作動油を流出させるために油圧モータ100に連結され得る。低圧ライン123、123’は、ポートA111と連結された低圧ラインA123’ 及びポートB113と連結された低圧ラインB123を含むことができる。
【0018】
高圧ラインバルブ131、131’は、高圧ライン121、121’を開閉することができる。高圧ラインバルブ131、131’は、高圧ラインA121を開閉するための高圧ラインバルブA131と、高圧ラインB121’を開閉するための高圧ラインバルブB131’とを含むことができる。
【0019】
低圧ラインバルブ133、133’は、低圧ライン123、123’を開閉することができる。低圧ラインバルブ133、133’は、低圧ラインA123’を開閉するための低圧ラインバルブA133’と、低圧ラインB123を開閉するための低圧ラインバルブB133とを含むことができる。
【0020】
油圧機械は、油圧モータ100の動作を制御する命令を入力するためのオペレータ入力装置を含むことができる。ある実施例では、オペレータ入力装置はジョイスティック形態で提供され得るが、本開示がこれに限定されるものではない。
【0021】
また、油圧機械は、オペレータ入力装置から命令を受信してその命令に対応するように高圧ラインバルブ131、131’及び低圧ラインバルブ133、133’の開閉を制御するコントロールユニット(図示せず)を含むことができる。コントロールユニットは、高圧ラインバルブ131、131’が正規化バルブ容量係数KvHPを有するように制御し、低圧ラインバルブ133、133’が正規化バルブ容量係数KvLPを有するように制御することができる。
【0022】
ある実施例では、油圧モータ100を第1方向に回転させる命令がオペレータ入力装置に入力された場合、コントロールユニットは、KvHP(KvHP>0)に対応する開口量で高圧ラインバルブA131を開放してKvLP(KvLP>0)に対応する開口量で低圧ラインバルブB133を開放し、高圧ラインバルブB131’及び低圧ラインバルブA133’を閉鎖(すなわち、KvHP=KvLP=0になるように高圧ラインバルブB131’及び低圧ラインバルブA133’を制御する)することができる。
【0023】
対照的に、ある実施例では、油圧モータ100を第1方向と反対の第2方向に回転させる命令がオペレータ入力装置に入力された場合、コントロールユニットは、KvHP(KvHP>0)に対応する開口量で高圧ラインバルブB131’を開放してKvLP(KvLP>0)に対応する開口量で低圧ラインバルブA133’を開放し、高圧ラインバルブA131及び低圧ラインバルブB133を閉鎖(すなわち、KvHP=KvLP=0になるように高圧ラインバルブA131及び低圧ラインバルブB133を制御する)することができる。
【0024】
ある実施例では、油圧モータが第1方向に回転することを停止させる命令がオペレータ入力装置に入力された場合(すなわち、オペレータ入力装置をニュートラル状態におく場合)、高圧ラインバルブB及び低圧ラインバルブAは閉鎖維持されるが、回転速度が0に近くなると、リバウンド現象を防止するために、コントロールユニットは、低圧ラインバルブAを一時的に僅かに開放した後、回転が完全に止められたときに閉鎖することができる。
【0025】
同じく、油圧モータが第2方向に回転することを停止させる命令がオペレータ入力装置に入力された場合、高圧ラインバルブA及び低圧ラインバルブBは閉鎖維持されるが、回転速度が0に近くなると、コントロールユニットは、低圧ラインバルブBを一時開放したした後、閉鎖することができる。
【0026】
ある実施例では、コントロールユニットはプロセッシング回路及び記憶媒体を含んで具現化されてもよい。プロセッシング回路は、例えば、記憶媒体に記憶されたソフトウェア命令を実行することができる、適切な中央処理ユニット、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサなどのうちで一つ又は組合せを使用して提供され得る。プロセッシング回路は、さらに、少なくとも一つのASIC又はFPGAで提供され得る。記憶媒体は、例えば、マグネチックメモリ、オプティカルメモリ、ソリッドステートメモリなどのうちで何れか一つ又は、これらの組合せが可能な永久記憶装置(persistent storage)を含むことができる。
【0027】
図2は、本開示の一実施例による油圧機械を概略的に示す。
【0028】
図1に示すように、アクチュエータとして油圧モータ100を有するどのような機械も本開示の油圧機械に該当し、例えば、重機がこれに該当することができる。特に、
図2に示すような掘削機が本開示の油圧機械に該当することができる。しかし、本開示がこれに限定されるものではない。
【0029】
図2に示すように、ある実施例では油圧機械は
図1に示すような要素に加えて、少なくとも一つの油圧シリンダ300、400、500、高圧アキュムレータ610及び低圧アキュムレータ620を含むことができる。
【0030】
ある実施例では、油圧シリンダ300、400、500は、ブームを作動させるためのブームシリンダ300、アームを作動させるためのアームシリンダ400及びバケットを作動させるためのバケットシリンダ500を含むことができる。
【0031】
高圧アキュムレータ610は高圧ラインと連結されている。したがって、高圧アキュムレータ610に蓄積された高圧の作動油は、高圧ラインを通じてアクチュエータ100~500に供給されてもよい。
【0032】
低圧アキュムレータ620は低圧ラインと連結されている。したがって、アクチュエータ100~500から排出される作動油は、低圧ラインを通じて低圧アキュムレータ620に送られる。
【0033】
ある実施例では、油圧機械は、作動油を保存するためのタンク740を含むことができる。
【0034】
ある実施例では、油圧機械は、タンク740から作動油を受けて加圧し、加圧された作動油を高圧アキュムレータ610に向けて送る基本ポンプ710を含むことができる。
【0035】
ある実施例では、油圧機械は、低圧アキュムレータ620から作動油を受けて加圧し、加圧された作動油を高圧アキュムレータ610に向けて送る再生ポンプ720を含むことができる。
【0036】
ある実施例では、油圧機械は、基本ポンプ710及び再生ポンプ720を駆動するための駆動源730を含んでもよいし、その駆動源730はエンジンであってもよい。
【0037】
ある実施例では、少なくとも一つの油圧モータ100、200及び少なくとも一つの油圧シリンダ300、400、500は、共通するように高圧アキュムレータ610に連結されてもよい。また、少なくとも一つの油圧モータ100、200及び少なくとも一つの油圧シリンダ300、400、500は、共通するように低圧アキュムレータ620に連結されてもよい。このために、ある実施例では、各アクチュエータから延長されて出た各高圧ラインは、結合して高圧ライン122を形成し、その高圧ライン122が高圧アキュムレータ610に連結されてもよい。また、ある実施例では、各アクチュエータから延長されて出た各低圧ラインは、結合して低圧ライン124を形成し、その低圧ライン124が低圧アキュムレータ620に連結されてもよい。すべてのアクチュエータはこのような二つの圧力ライン122、124が作り出す圧力差のみを使用することができる。このような特性によって、油圧モータ100、200には高圧ライン122を通じて供給される流体の流れを許容/遮断する二つの高圧ラインバルブ131、131’及び低圧ライン124を通じて排出される流体の流れを許容/遮断する二つの低圧ラインバルブ133、133’の総計4個のバルブが提供され得る。本開示では、このようなバルブの正規化バルブ容量係数Kvを制御することで、油圧モータ100、200のモータ速度性能を決定することができる。
【0038】
図3及び
図4は、それぞれ一般的な油圧機械及び
図2の油圧機械の制御系を概略的に示す概念図である。
【0039】
図3に示すように、一般的な油圧機械ではオペレータがオペレータ入力装置750を用いて命令を入力すると、その命令に対応してポンプ710を制御してポンプ710の吐出流量を変化させ、メインコントロールバルブ640を制御してメインコントロールバルブ640を通過する流量(及び流体流れ方向)を変化させて各アクチュエータ100~500に要求される流量を供給する。
【0040】
これに対して、本開示の一実施例による油圧機械では、
図4に示すように、ポンプ710、720によって供給される作動油は高圧アキュムレータ710に蓄積され、高圧アキュムレータ710は、各アクチュエータ100~500に作動油を供給するように構成することができる。よって、高圧アキュムレータ710が完全に充電された状態ではポンプ710、720から加圧作動油の供給なしでも油圧機械は作動することができる。また、高圧アキュムレータ610が完全に充電されない状態では、オペレータ入力装置750の入力と関係なく、ポンプ710、720は作動することがある。高圧アキュムレータ610、620とアクチュエータ100~500の間には高圧ライン及び低圧ラインを形成するマニホールド630が介在する。
【0041】
ある実施例では、高圧アキュムレータ610内の圧力は予め設定された圧力値(例えば、300bar)を有することができるし、低圧アキュムレータ620内の圧力も予め設定された圧力値(例えば、20bar)を有していてもよい。コントロールユニットは、予め設定された圧力値が維持されるようにポンプ710、720を制御することができる。
【0042】
再び
図1を参照する。以下では、説明の便宜のために流体がポートA111を通じて油圧モータ100に流入されてポートB113を通じて流出される場合を説明するが、以下の説明は流体がポートB113を通じて油圧モータ100に流入されてポートA111を通じて流出される場合にも同じく適用される。
【0043】
従来のバルブコントロールアルゴリズムは、オペレータ入力装置750によって入力された命令に対応する正規化バルブ容量係数Kvcmdが同一になるように、流入用の高圧ラインバルブ131及び流出用の低圧ラインバルブ133を制御する。これは、ポートA111及びポートB113以外に流体が排出される他のポートが存在しないため、流入流量は流出流量と等しいという単純な考えに基づいている。しかし、上述したように油圧モータ100は大きい慣性を有しており、したがって、Kvが変化する度に、流入ライン121と流出ライン123との間には大きい圧力差が形成され、これは圧力ショック又はリバース圧力ショックを引き起こすことがある。
【0044】
例えば、油圧モータ100を第1方向に回転させようとする場合、高圧ラインバルブA131及び低圧ラインバルブB133は開放して高圧ラインバルブB131’及び低圧ラインバルブA133’は閉鎖するが、従来のアルゴリズムは高圧ラインバルブA131及び低圧ラインバルブB133が同一のKvを有するように制御する。よって、高圧ラインバルブA131が開放された直後に、高圧ラインバルブA131を通じてポートA111に瞬間的に高圧が供給される。しかし、これと同時に低圧ラインバルブB133は開放され始めるが、油圧モータ100の高い回転慣性(例えば、スイング用油圧モータ100には上部本体が連結されていて高い回転慣性を有する)によって一時的にポートB113から低圧ライン123を通じた流体の流れが生じないこともある。その結果、ポートA111には圧力ショックが惹起されて、モータ圧力に比例するトルクが静的慣性を超過して瞬間的に上昇し、ジャークが惹起されることがある。
【0045】
また、他の事例として、オペレータが油圧モータ100の速度を減速させるためにKvcmdを減少させる場合について詳述する。同じく、従来のバルブコントロールアルゴリズムは、高圧ラインバルブA131及び低圧ラインバルブB133が同一のKvcmdを有するように制御して高圧ラインバルブA131及び低圧ラインバルブB133の開口量を減少させ始める。この場合、高圧ラインバルブA131を通じてポートA111に流れる流体の流量は減少するが、大きい回転慣性を有する油圧モータ100はポートA111から相対的に多い量の流体を吸入する。その結果、ポートA111では急激な圧力降下が生じてリバース圧力ショックが惹起される。また、油圧モータ100に連結されたギアボックスでバンギングノイズ(banging noise)が発生すると、瞬間的なリバーストルクが油圧機械に悪影響を及ぼすようになる。
【0046】
このような問題点を解決するために本開示の解決策を
図5乃至
図7を参照して以下で説明する。
【0047】
図5は、本開示の一実施例で油圧モータが回転を開始した場合、油圧モータの入口圧力及び出口圧力を示す概念図である。
【0048】
図5に示すように、油圧モータ100が回転を開始した場合、本開示のアルゴリズムは、ポートA111を通じて流体が油圧モータ100に供給されるように、高圧ラインバルブA131がK
vHPを有するように制御する。ただし、ポートB113に流体が短時間維持されるように、低圧ラインバルブB133がK
vHPより小さいK
vLPを有するように制御する。その結果、ポートB113での圧力は上昇し、したがって、ポートA111とポートB113との間の圧力差であるモータ圧力が瞬間的に上昇することを阻むことができるようになる。
【0049】
図6は、本開示の一実施例で油圧モータの減速が開始された場合、油圧モータの入口圧力及び出口圧力を示す概念図である。
【0050】
図6に示すように、油圧モータ100の減速が開始された場合、本開示のアルゴリズムは、ポートB113を通じて流体が低圧アキュムレータ620に吸入されないように、低圧ラインバルブ133がK
vLPを有するように制御する。ただし、流体が急激に散逸しないように高圧ラインバルブ131がK
vLpより大きいK
vHPを有するように制御する。その結果、ポートA111での圧力は徐々に下落し、モータ圧力が急激に逆転することを防ぐことができる。
【0051】
図5及び
図6を参照すると、本開示の実施例による新しいバルブコントロールアルゴリズムは、圧力ショックを防止するために高圧ラインバルブA131及び低圧ラインバルブB133がお互いに異なるK
vを有するように制御する。
【0052】
ある実施例では、オペレータ入力装置750によって入力された命令に対応するコマンド正規化バルブ容量係数Kvcmdが0<Kvcmd<1であるとき、コントロールユニットは、KvLP<KvHPになるようにバルブを制御することができる。
【0053】
ある実施例では、Kvcmd=0又はKvcmd=1であるとき、コントロールユニットは、KvHP=KvLPになるようにバルブを制御することができる。
【0054】
ある実施例では、Kvcmd=0又はKvcmd=1であるとき、コントロールユニットは、Kvcmd=KvHP=KvLPになるようにバルブを制御することができる。
【0055】
ある実施例では、0<Kvcmd<1であるとき、コントロールユニットは、KvLP<Kvcmd<KvHPになるようにバルブを制御することができる。
【0056】
図7は、K
vcmdと、本開示の一実施例による制御方法によって修正されたK
vHP及びK
vLPとの関係を示すグラフである。
【0057】
図7は、
図5及び
図6の実施例よりさらに進歩したバルブコントロールアルゴリズムが具現化された実施例を示す図である。
【0058】
図7のX軸とY軸は正規化されたK
v値を示す図である。
図7のグラフの左側領域ではK
vLPよりK
vHPがさらに急に増加する。この領域ではK
vcmdが増加することによってK
vHpとK
vLP間の差も増加する。
【数1】
【0059】
中間点を越せば、K
vLPがK
vHPよりさらに急に増加する。この領域ではK
vcmdが減少することによってK
vHPとK
vLP間の差が増加する。
【数2】
【0060】
図7からK
vの差は、中間点(K
v=0.5)で最大であることが分かる。
【0061】
本開示は、また、油圧機械制御方法を提供するが、油圧機械制御方法は、オペレータ入力装置750によって入力された命令を受信することと、命令に対応するコマンド正規化バルブ容量係数Kvcmdを決定することと、高圧ラインバルブA131が正規化バルブ容量係数KvHPを有するように制御することと、低圧ラインバルブB133が正規化バルブ容量係数KvLPを有するように制御することを含むことができる。
【0062】
ある実施例では、0<Kvcmd<1であるとき、KvLP<KvHPになるようにバルブを制御することができる。
【0063】
ある実施例では、Kvcmd=0又はKvcmd=1であるとき、KvHP=KvLPになるようにバルブを制御することができる。
【0064】
ある実施例では、Kvcmd=0又はKvcmd=1であるとき、Kvcmd=KvHP=KvLPになるようにバルブを制御することができる。
【0065】
ある実施例では、0<Kvcmd<1であるとき、KvLP<Kvcmd<KvHPになるようにバルブを制御することができる。
【0066】
また、本開示は、コンピュータ又はコントロールユニットのプロセッシング回路上で実行される場合に、上述した油圧機械制御方法の各段階を遂行するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラムと、そのようなプログラムを組み込んだコンピュータ可読媒体を提供することができる。
【外国語明細書】