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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059890
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】車両内装部材
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20230420BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20230420BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20230420BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B60R7/04 C
H05B3/20 377
B32B7/027
B32B5/18
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016781
(22)【出願日】2023-02-07
(62)【分割の表示】P 2018048064の分割
【原出願日】2018-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文俊
(57)【要約】
【課題】設置箇所の自由度が高く電力消費量を抑制した加温装置を備えた車両内装部材を提供する。
【解決手段】クッション性を有する発泡体24の表面を表皮材26で覆うよう構成すると共に、絶縁性を有する可撓性のベースシート42と、ベースシート42上に形成されて電源装置に接続する相互に分離した複数の配線パターン44,46と、複数の配線パターン44,46を接続するようベースシート42上に形成されたPTC特性を有する発熱部48と、を備えたフィルム発熱体40を、発泡体24と表皮材26との間に設ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション性を有する発泡体の表面を表皮材で覆うよう構成された車両内装部材であって、
絶縁性を有する可撓性のベースシートと、
前記ベースシート上に形成されて電源装置に接続する相互に分離した複数の配線パターンと、
前記複数の配線パターンを接続するよう前記ベースシート上に形成されたPTC特性を有する発熱部と、
を備えたフィルム発熱体を、前記発泡体と表皮材との間に設けた
ことを特徴とする車両内装部材。
【請求項2】
前記複数の配線パターンは、所定方向に延在するパターン基線と、当該パターン基線の延在方向に対して所定間隔で設けられた分岐パターン線とを有する櫛歯状に形成され、所定の配線パターンの分岐パターン線の間に、別の配線パターンの分岐パターン線が位置するよう構成した請求項1記載の車両内装部材。
【請求項3】
前記ベースシートは熱可塑性エラストマーシートからなり、銀ペーストにより配線パターンを印刷形成すると共に、カーボンペーストにより発熱部を印刷形成した請求項1または2記載の車両内装部材。
【請求項4】
前記フィルム発熱体は、前記配線パターンに接続する接続配線部を備え、
前記発泡体を支持する基材の裏側に電源装置に接続する電源配線が設けられ、
前記発泡体の表面を覆う前記表皮材は、当該表皮材の端末を前記基材の裏側に巻き込むようにして固定されると共に、当該基材の裏側に巻き込んだ表皮材の端末から延出する前記接続配線部の端末を前記電源配線に接続するよう構成した請求項1~3の何れか一項に記載の車両内装部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両内装部材に関し、更に詳細には、暖房装置を備えた車両内装部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に乗用車等の種々の自動車には、フロントシート(運転席および助手席)との間に、身の回りの物品を出入れ可能に収納し得る車両内装部材としてコンソールボックスが備えられている。このコンソールボックスは、各種物品を収納する物品収納部が画成された本体であるコンソール本体と、この本体の後方上部に支持機構で支持され、物品収納部の上方開口部を開閉する開閉部材である蓋部材とを備えている。このようなコンソールボックスは、フロントシートの側方に位置していることから、多くの場合、該蓋部材の上面部分をアームレストとして使用するのに適した高さとなるよう調整して設置される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-241040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように寒冷時用の暖房装置としてコンソールボックスの蓋部材やハンドルにニクロム線ヒータを内蔵し、運転者の手指を直接温め得るようにしたものがある。しかしながら、このような暖房装置は、その形状追従性に劣ることから設置箇所が制限され、特にクッション性を有する部位に配設した場合には異物感が際立ち、使用感に劣る問題がある。また、多くの自動車には、暖房装置としてエアコン等の空調装置を備え、寒冷時に乗員室内を適切な温度に保ち得るよう構成される。しかしながら、このような空調装置やニクロム線ヒータ等の暖房装置は電力消費量が大きい。このため、従来のようにガソリン等の燃料を燃焼させて動力を得る内燃機関(エンジン)を動力源とする自動車では、このような暖房装置も問題となることなく利用可能であるものの、電気自動車(Electric Vehicle)やハイブリッド車(hybrid vehicle)のように、動力源として電動機(モータ)を単独或いは併用した自動車では暖房装置に利用できる電力は限られ、その利用が制限される可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、従来の技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、設置箇所の自由度が高く電力消費量を抑制した加温装置を備えた車両内装部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、第1の発明は、
クッション性を有する発泡体の表面を表皮材で覆うよう構成された車両内装部材であって、
絶縁性を有する可撓性のベースシートと、
前記ベースシート上に形成されて電源装置に接続する相互に分離した複数の配線パターンと、
前記複数の配線パターンを接続するよう前記ベースシート上に形成されたPTC特性を有する発熱部と、
を備えたフィルム発熱体を、前記発泡体と表皮材との間に設けたことを要旨とする。
このように、可撓性を有するベースシート上に配線パターンや発熱部を設けたフィルム発熱体を加温装置として発泡体と表皮材との間に設けることで、発泡体の変形に追従してフィルム発熱体が容易に変形することができ、良好な使用感を保ったまま効果的に加温することができる。すなわち、従来は加温装置の設置が困難なクッション性が求められる車両内装部材に対しても好適に加温装置を設置することができる。また発熱部がPTC特性を有することで、サーモスタット等の温度センサや温度制御用のコントローラを設けることなく自律的に過昇温を防止することができると共に、消費電力量を抑制することができる。
【0007】
第2の発明は、
前記複数の配線パターンは、所定方向に延在するパターン基線と、当該パターン基線の延在方向に対して所定間隔で設けられた分岐パターン線とを有する櫛歯状に形成され、所定の配線パターンの分岐パターン線の間に、別の配線パターンの分岐パターン線が位置するよう構成したことを要旨とする。
このように、フィルム発熱体の配線パターンを櫛歯状に形成することで、配線パターン同士の距離を短く設定できるため発熱部の通電性が良くなり、発熱部の発熱性が良くなる。
【0008】
第3の発明は、
前記ベースシートは熱可塑性エラストマーシートからなり、銀ペーストにより配線パターンを印刷形成すると共に、カーボンペーストにより発熱部を印刷形成したことを要旨とする。
このように、ベースシートとして熱可塑性エラストマーシートを用いてフィルム発熱体を形成することで、フィルム発熱体自体が柔軟性を有し、乗員が触れた際の使用感を良好にすることができる。
【0009】
第4の発明は、
前記フィルム発熱体は、前記配線パターンに接続する接続配線部を備え、
前記発泡体を支持する基材の裏側に電源装置に接続する電源配線が設けられ、
前記発泡体の表面を覆う前記表皮材は、当該表皮材の端末を前記基材の裏側に巻き込むようにして固定されると共に、当該基材の裏側に巻き込んだ表皮材の端末から延出する前記接続配線部の端末を前記電源配線に接続するよう構成したことを要旨とする。
このように、基材の裏側に巻き込んだ表皮材の端末からフィルム発熱体の接続配線部が延出するようにすることで、接続配線部を基材裏側の電源配線に容易に接続することができる。また、発泡体や基材に穿孔を形成する等の加工を行うことなく発泡体と表皮材との間に設けたフィルム発熱体を電源配線に接続できるから、発泡体のクッション性を損なうことがなく、良好な使用感を実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、設置箇所の自由度が高く電力消費量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は、本発明に係る車両内装部材としてのコンソールボックスを示す概略斜視図であり、(b)は、コンソールボックスの蓋部材を開放した状態を示す概略斜視図である。
図2】コンソールボックスの蓋部材を分解して示す概略斜視図である。
図3】(a)は、フィルム発熱体を拡大して示す正面図であり、(b)は、(a)におけるA-A線断面図である。
図4】フィルム発熱体の取り付け行程を示す概略断面図であって、(a)は、基材に固定した発泡体にフィルム発熱体を取り付けた状態を示し、(b)は、(a)の状態に対して表皮材を上方から被せた状態を示し、(c)は、表皮材およびフィルム発熱体の接続配線部を基材の下面側に巻き込んだ状態を示し、(d)は、(c)の状態の基材に対してカバー部材を取り付けた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る車両内装部材につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお実施例では、車両内装部材として、図1(a)に示すように、車両における乗員室のフロントシート(運転席および助手席)S,Sの間に設置されたコンソールボックス10を例示する。また、実施例のコンソールボックス10において前後とは、車両に設置した際の車両の前後方向を基準として指称し、左右とは、車両の前進方向を基準とする左右方向を指称する。なお、図1では、図中左下側が車両の前側で、図中右上側が車両の後側である。
【0013】
図1に示すように、実施例に係るコンソールボックス10は、眼鏡等の身の回り品を収納し得る収納部14を内部画成したボックス本体12と、このボックス本体12の上部に配設した蓋部材20とを備えている。コンソールボックス10は、ボックス本体12の後側に設けた図示しない支持機構により蓋部材20の後部側が回転可能に支持され、当該支持機構を回転支点として蓋部材20がボックス本体12に対して回転可能になっている。そして、コンソールボックス10は、蓋部材20を回転変位することで、ボックス本体12の上部に開口する収納部14の開口部16を開閉し得るようになっている。
【0014】
この蓋部材20は、図2に示す如く、蓋部材20の剛性を確保する骨格となる基材22と、基材22の上面側に設けられた発泡体24と、発泡体24の外表面を覆う表皮材26とを備えている。また、基材22には、収納部14側となる下面にカバー部材28(図1(b)参照)を備えており、蓋部材20の開放時に外部から視認可能となる蓋部材20の下面側をカバー部材28で装飾して見栄えを良好に保つよう構成されている。そして、これら基材22およびカバー部材28は、合成樹脂等からインジェクション成形等で作製されている。発泡体24は、基材22の上面に設けられて蓋部材20の外形をなす部材であり、軟質ウレタンフォーム等の弾力性を有する柔軟な素材により構成されている。この発泡体24は、基材22の上面にホットメルト等の固定手段としての接着剤により接着することで固定されている。なお、発泡体24を基材22に固定する固定手段は、接着剤に限られるものではなく、従来公知の各種手段を採用できることは当然である。
【0015】
表皮材26は、発泡体24の外面を被覆して蓋部材20の外観をなす部材であって、ポリウレタンやポリ塩化ビニル等の合成樹脂材により形成した合成皮革やファブリック、皮革等を材質とする表皮基材を縫製することで形成され、基材22に固定した発泡体24の上方側から被せて内包可能な袋状に形成されている。この表皮材26は、図4(b)に示すように、発泡体24の上方から被せた際に表皮材26の端末が発泡体24の下方へ延出するよう形成され、基材22の下面側に巻き込んだ当該表皮材26の端末をホットメルト等の固定手段としての接着剤により基材22の下面に接着することで固定されている。すなわち、基材22の下面とカバー部材28との間の空間に表皮材26の端末が収容されて、蓋部材20の開放時に表皮材26の端末が外部に露出しないようにして良好な見栄えを保つようにしてある。なお、表皮材26の端末を基材22に固定する固定手段は、接着剤に限られるものではなく、フック状の係止部や留め具等を利用して固定するようにしてもよく、従来公知の各種手段を採用できる。
【0016】
また、図1に示すように、蓋部材20の前側の略中央部には、操作部30が設けられており、この操作部30の取り付け位置に対応して基材22に収納空間34が前方に開口して画成されている。この操作部30は、スプリング等の図示しない付勢部材により常には前方に付勢されると共に、操作部30の下部に第1係合部32が設けられている。そしてボックス本体12の前部上面には、蓋部材20を閉成した際に、操作部30に設けた第1係合部32と係合する第2係合部18が設けられており、この第1係合部32および第2係合部18が係合することで蓋部材20が閉成状態に保持される。そして、操作部30を後方へ押圧操作することで、第1係合部32および第2係合部18の係合が解除され、蓋部材20の開放が許容されるようになっている。
【0017】
また、図1図2図4に示すように、蓋部材20には、発泡体24と表皮材26との間にフィルム発熱体40が設けられている。このフィルム発熱体40は、図3に示すように、柔軟性を有するベースシート42上に形成された配線パターン44,46と、当該配線パターン44,46に接続するようベースシート42上に形成された発熱部48とを備えており、当該配線パターン44,46に通電することにより発熱部48が発熱するよう構成される。本実施例では、一方の電極(正電極)に接続する第1の配線パターン44と、他方の電極(負電極)に接続する第2の配線パターン46とがベースシート42の一方面に形成され、当該第1の配線パターン44および第2の配線パターン46を発熱部48により接続するよう構成されている。なお、ベースシート42上に形成した配線パターン44,46および発熱部48は、ベースシート42と同等の絶縁性フィルム50により覆うよう構成することが好適である。なお、以下の説明では、ベースシート42において配線パターン44,46や発熱部48が形成された面を表面と称し、反対側の面を裏面と称するものとする。そして、このベースシート42の裏面が発泡体24の上面或いは表皮材26における発泡体24に対面する内面に接着剤等の固定手段を利用して固定され、この状態の発泡体24を表皮材26で被覆することで発泡体24と表皮材26との間にフィルム発熱体40が位置するよう構成されている。なお、発泡体24に対するフィルム発熱体40の配置位置は、特に限定されるものではないが、この実施例では、発泡体24の上面前側に偏った位置において、左右の略中央に位置するよう配置されている。
【0018】
ここで、ベースシート42としては、ポリエチレンテレフタレート等の可撓性を有する絶縁性のフィルムが使用可能だが、好ましくは発泡体24の弾性変形に追従して変形可能なゴムライクな樹脂シートが採用される。特に、アミド系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)等の常温でゴム弾性を有する熱可塑性エラストマー(TPE)をシート状に形成した熱可塑性エラストマーシートが好適である。また、ベースシート42は任意の形状に形成することができるが、本実施形態では矩形状の本体部42aの両側から帯状の延出部42b,42bが延出した太いT字状に形成してあり、本体部42aが発熱部48を構成し、延出部42b,42bが後述する接続配線部52,54を構成している。また、ベースシート42の厚みは、特に限定されないが、1mm以下の厚みとすることで可撓性に優れ、乗員が触れたときの使用感が好適である。
【0019】
第1の配線パターン44および第2の配線パターン46の夫々は、例えば銀ペースト等の導電性ペーストをベースシート42上にスクリーン印刷により形成される。第1の配線パターン44は、図3に示すように、ベースシート42の本体部42aの一方の縁部(図3(a)では左側の縁部)に沿って直線状に延在する第1パターン基線44aと、当該第1パターン基線44aの延在方向に対して所定間隔で設けられ、ベースシート42の他方の縁部(図3(a)では右側の縁部)へ向けて延在する複数の第1分岐パターン線44bとを有する櫛歯状に形成され、当該第1パターン基線44aの端部に後述する第1の接続配線部52が接続するよう構成されている。また、同様に、第2の配線パターン46は、図3に示すように、ベースシート42の本体部42aの他方の縁部(図3(a)では右側の縁部)に沿って直線状に延在する第2パターン基線46aと、当該第2パターン基線46aの延在方向に対して所定間隔で設けられ、ベースシート42の一方の縁部(図3(a)では左側の縁部)へ向けて延在する複数の第2分岐パターン線46bとを有する櫛歯状に形成され、当該第2パターン基線46aの端部に後述する第2の接続配線部54が接続するよう構成されている。
【0020】
この第1の配線パターン44および第2の配線パターン46は、ベースシート42の本体部42aにおいて所定間隔離間して当該第1の配線パターン44および第2の配線パターン46が接しないよう形成されると共に、第1分岐パターン線44bの間に第2分岐パターン線46bが位置する互い違いに形成される。そして、ベースシート42の本体部42aにおいて第1の配線パターン44および第2の配線パターン46の間を埋めるように発熱部48が設けられ、当該発熱部48を介して第1の配線パターン44および第2の配線パターン46が接続している。
【0021】
発熱部48は、正の温度特性(温度が上昇すると抵抗が増加する特性:PTC(positive temperature coefficient)を有する素材により形成され、通電による自己発熱により温度が上昇することで抵抗値が増大し、自律的に電流を抑えて、その発熱温度を調節するよう構成されている。このようなPTC特性を有する発熱部48は、カーボン粒子等の導電性粒子をウレタン樹脂やポリオレフィン系樹脂等に分散させることにより構成することができる。この実施例では、発熱部48は、カーボン粒子とウレタン樹脂とワックスとを主成分としたカーボンインク(カーボンペースト)を用いてベースシート42上にスクリーン印刷して膜形成することで形成されている。ここで、発熱部48におけるカーボン粒子の含有量は、60重量%を越えるとPTC特性が発現し難くなることから、カーボン粒子を20~60重量%の範囲とし、ウレタン樹脂を20~50重量%とし、ワックスを10~30重量%の範囲とすることが好ましい。なお、配線パターン44,46や発熱部48の厚みは、特に限定されるものではないが、7~10μmで形成することができる。
【0022】
また、実施例の発熱部48は、ベースシート42の本体部42a上において第1の配線パターン44および第2の配線パターン46を形成していない範囲全体に形成してある。なお、図3では、発熱部48の形成範囲をドット状のパターンにより示してある。なお、この発熱部48は、第1の配線パターン44および第2の配線パターン46を形成した領域に重なるよう形成してもよく、例えばベースシート42において、第1の配線パターン44および第2の配線パターン46を形成した面の全面に形成するようにしてもよい。このように、発熱部48の形成面積を増やすことで、発熱面積が増えるのでより好ましい。ここで、発熱部48による発熱設定温度(例えば60°C、80°C)は、第1の配線パターン44と第2の配線パターン46や、また発熱部48の導電性材料の配合量、発熱部48を印刷形成する膜厚等を変えることによって容易に調節することができる。
【0023】
また、実施例のフィルム発熱体40は、ベースシート42の本体部42aの一方の縁部から延出して第1の配線パターン44に接続する帯状の第1の接続配線部52と、ベースシート42の他方の縁部から延出して第2の配線パターン46に接続する帯状の第2の接続配線部54とを備えている。ここで、接続配線部52,54は、第1の配線パターン44や第2の配線パターン46と同一構成により構成することができる。すなわち、ベースシート42の本体部42aから延出した延出部42b上に銀ペースト等の導電性を有するペースト材料をスクリーン印刷により形成することで構成することができる。このように構成することで、各接続配線部52,54と各配線パターン44,46とを一度の印刷工程により効率的に形成することが可能である。
【0024】
ここで、各接続配線部52,54は、図4(a)に示すように、ベースシート42を固定した発泡体24の上面に沿って密着するよう這わせた際に、各接続配線部52,54の端末が発泡体24の下方へ延出するよう形成される。この各接続配線部52,54は、発泡体24の上方から被せた表皮材26の端末よりも外側に延出(露出)する長さに形成されており、基材22の下面側に表皮材26の端末を巻き込んで固定するのに併せて各接続配線部52,54を基材22の下面側に巻き込み得るようになっている。すなわち、基材22の下面とカバー部材28との間の空間に各接続配線部52,54の端末が収容されて、蓋部材20の開放時に各接続配線部52,54の端末が外部に露出しないようにして良好な見栄えを保つようにしてある。また、基材22の下面には、車両に設けた電源装置に接続する電源配線60が取り付けられており、基材22の下面側において露出する各接続配線部52,54を電源配線60に接続するよう構成されている。このように、各接続配線部52,54を表皮材26の端末よりも外側に延出(露出)させた状態で表皮材26と併せて基材22の下面側に巻き込むようにすることで、基材22の裏側に配設されている電源配線60との接続作業を極めて容易に行うことが可能となる。ここで、電源配線60は、基材22の下面において前後方向に延在するよう設けられ、蓋部材20を回転可能に支持する支持機構が位置する基材22の後部側からボックス本体12側に引き回されるよう構成してある。
【0025】
次に、前述した本実施形態に係る車両内装部材の作用について説明する。図4(a)に示すように、基材22の上面に対してホットメルト等の固定手段としての接着剤により接着することで発泡体24を固定すると共に、当該発泡体24の上面に接着剤等の固定手段を利用してフィルム発熱体40のベースシート42を固定する。このとき、フィルム発熱体40の接続配線部52,54を発泡体24の上面に沿って這わせて、接続配線部52,54の端末を発泡体24の下方へ延出させると共に、表皮材26を発泡体24の上方から被せる(図4(b))。この状態で、発泡体24の下方へ延出する表皮材26の端末および接続配線部52,54の端末を基材22の下面側に巻き込み、当該表皮材26の端末をホットメルト等の固定手段としての接着剤により基材22の下面に接着して固定する(図4(c))。そして、表皮材26の端末よりも外側に延出(露出)した接続配線部52,54を、基材22の下面に設けた電源配線60に接続した後に、基材22の下面側にカバー部材28を取り付けることで、発泡体24と表皮材26との間にフィルム発熱体40を備えたコンソールボックス10の蓋部材20を形成することができる(図4(d))。なお、基材22に対するカバー部材28の取付構造は、従来公知の任意の構成を採用し得るものであるが、図4では、基材22の下面に形成した係合突部22aをカバー部材28に形成した取付孔28aに嵌合させることで基材22の下面側にカバー部材28を取り付けている。
【0026】
このように、基材22の裏側に巻き込んだ表皮材26の端末からフィルム発熱体40の接続配線部52,54が延出するようにすることで、接続配線部52,54を基材22裏側の電源配線60に容易に接続することができる。また、発泡体24と表皮材26との間にフィルム発熱体40を設けた場合に、当該フィルム発熱体40に対して配線接続するには、発泡体24や基材22の適宜位置に配線挿通用の穿孔を形成する等の加工を行うことによっても実現することができる。この場合には、発泡体24や基材22に対する穿孔等の形成加工により、加工前後で発泡体24のクッション性が変化し、特に穿孔等の形成位置によっては発泡体24の反発力が低下してクッション性を損なうことにも繋がりかねない。これに対して、本実施形態では、発泡体24や基材22に穿孔を形成する等の加工を行うことなく発泡体24と表皮材26との間に設けたフィルム発熱体40を電源配線60に接続できるから、発泡体24のクッション性を損なうことがなく、良好な使用感を実現できる。
【0027】
そして、可撓性を有するベースシート42上に配線パターン44,46や発熱部48を設けたフィルム発熱体40を加温装置として発泡体24と表皮材26との間に設けることで、コンソールボックスの蓋部材20に触れた乗員の手などに熱が伝わり易くなると共に、接触による発泡体24の変形に追従してフィルム発熱体40が容易に変形することができる。すなわち、従来は加温装置の設置が困難なクッション性が求められるコンソールボックスの蓋部材20に対しても、良好な使用感を保ったまま好適に加温装置(フィルム発熱体40)を設置して効果的に加温することができる。また、このフィルム発熱体40は、発熱部48がPTC特性を有することで、サーモスタット等の温度センサや温度制御用のコントローラを設けることなく自律的に過昇温を防止することができると共に、消費電力量を抑制することができる。
【0028】
また、フィルム発熱体40の配線パターン44,46を櫛歯状に形成して、第1の配線パターン44の第1分岐パターン線44bと第2の配線パターン46の第2分岐パターン線44bとが交互に互い違いに位置することで、配線パターン44,46同士の距離を短くすることができる。このため、発熱部48の通電性が良くなり発熱部48の発熱性が向上する。
【0029】
更に、フィルム発熱体40のベースシート42に熱可塑性エラストマーシートを用いることで、フィルム発熱体40自体が柔軟性を有し、乗員が触れた際の使用感を良好にすることができる。
【0030】
(変更例)
本発明に係る車両内装部材は、前述した実施形態に例示したものに限らず種々の変更が可能である。以下に、変更例の一例を示す。
(1) 本実施形態では、フィルム発熱体40のベースシート42の裏面を発泡体24の上面に取り付けるようにしたが、表皮材26において発泡体24に対面する内面に当該フィルム発熱体40のベースシート42の裏面を取り付けて、フィルム発熱体40を取り付けた表皮材26を発泡体24に被せるようにしてもよい。
(2) 本実施形態では、車両内装部材として乗員室内に設置するコンソールボックス10に開閉自在に備えた蓋部材20にフィルム発熱体40を設けるようにしたが、前後スライド型の蓋部材20であってもよい。
(3) 本実施形態では、車両内装部材として乗員室内に設置するコンソールボックス10を例示したが、これに限られるものではなく、乗車した乗員が接する可能性がある車両内装部材に対して好適に採用することができる。例えば、乗員が座るシートの座面や背もたれに設けるようにしてもよく、また背もたれに支持されたアームレストに対して採用することもできる。更にドアパネルに内装されるドアトリムやインストルメントパネルにおけるグローブボックスに対しても好適に採用することもできる。
(4) 本実施形態では、フィルム発熱体40の配線パターン44,46を櫛歯状に形成したが、これに限られるものではなく、任意の形状に形成することができる。
(5) 本実施形態では、フィルム発熱体40を矩形状の本体部44aの両側から帯状の延出部44b,44bが延出した太いT字状に形成しであるが、フィルム発熱体40の形状はこれに限らない。例えば、ベースシート42を矩形状に形成して、当該ベースシート42上において外周縁から間隔を空けた領域に第1の配線パターン44、第2の配線パターン46および発熱部48を形成して発熱領域を設けると共に、当該ベースシート42において発熱領域の外側の領域に、第1の接続配線部52および第2の接続配線部54を形成して第1の配線パターン44および第2の配線パターン46に接続するよう構成することで、フィルム発熱体40の全体形状を矩形状としてもよい。この場合、ベースシート42は、発泡体24の上方から被せた表皮材26の端末よりも発熱領域の外側の領域が外側に延出(露出)するよう形成され、発熱領域の外側の領域を表皮材26と併せて基材22の下面側に巻き込み得るよう構成される。この例では、ベースシート42上には、配線パターン44,46、発熱部48、接続配線部52,54が配置されていないエリア(発熱領域の外側の領域)が存在している。
【符号の説明】
【0031】
24 発泡体,26 表皮材,40 フィルム発熱体,42 ベースシート
44 第1の配線パターン(配線パターン),46 第2の配線パターン(配線パターン)
48 発熱部,52 第1の接続配線部(接続配線部)
54 第2の接続配線部(接続配線部)
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション性を有する発泡体の表面を表皮材で覆うよう構成された車両内装部材であって、
絶縁性を有する可撓性のベースシートと、
前記ベースシート上に形成されて電源装置に接続する相互に分離した複数の配線パターンと、
前記複数の配線パターンを接続するよう前記ベースシート上に形成されたPTC特性を有する発熱部と、
を備えたフィルム発熱体を、前記発泡体と表皮材との間に設けたことを特徴とする車両内装部材であって、
前記車両内装部材がコンソールボックス、シートの座面、シートの背もたれ、アームレスト、ドアトリム、又は、グローブボックスである車両内装部材。
【請求項2】
クッション性を有する発泡体の表面を表皮材で覆うよう構成された車両内装部材であって、
絶縁性を有する可撓性のベースシートと、
前記ベースシート上に形成されて電源装置に接続する相互に分離した複数の配線パターンと、
前記複数の配線パターンを接続するよう前記ベースシート上に形成されたPTC特性を有する発熱部と、
を備えたフィルム発熱体を、前記発泡体と表皮材との間に設けると共に、
前記発熱部は、導電性粒子とウレタン樹脂を含む
ことを特徴とする車両内装部材。
【請求項3】
合成樹脂製の基材と、前記基材の上面側に設けられたクッション性を有する発泡体とを備え、前記発泡体の表面を表皮材で覆うよう構成された車両内装部材であって、
絶縁性を有する可撓性のベースシートと、
前記ベースシート上に形成されて電源装置に接続する相互に分離した複数の配線パターンと、
前記複数の配線パターンを接続するよう前記ベースシート上に形成されたPTC特性を有する発熱部と、
を備えたフィルム発熱体を、前記発泡体と表皮材との間に設けた
ことを特徴とする車両内装部材。
【請求項4】
請求項1から3何れか一項に記載の車両内装部材であって、
前記車両内装部材は、コンソールボックス、アームレスト、ドアトリム、又は、グローブボックスである。
【請求項5】
請求項1から4何れか一項に記載の車両内装部材であって、
前記発泡体の下面側には合成樹脂製の基材を備え、
前記基材の下面にはカバー部材を更に備え、
前記基材と前記カバー部材との間に前記表皮材の端末が収容されている
ことを特徴とする車両内装部材。