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特開2023-59895フレキシブルコンテナ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059895
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】フレキシブルコンテナ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/22 20060101AFI20230420BHJP
   H05F 3/02 20060101ALI20230420BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20230420BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B65D88/22 A
H05F3/02 F
B32B7/025
B32B27/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017467
(22)【出願日】2023-02-08
(62)【分割の表示】P 2018238470の分割
【原出願日】2018-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】國分 彰
(72)【発明者】
【氏名】後藤 和博
(57)【要約】
【課題】アース線接続部の導電性樹脂層の耐久性に優れたフレキシブルコンテナ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】外周部4aからアース線接続部7が延出している。外周部4aと周壁部2との間に導電性シート8が介在している。周壁部2の導電性ターポリンと下蓋部4の導電性ターポリンの外周部4aとを高周波溶着するに際し、外周部4aの上部と周壁部2との間に導電性シート8の下部を挟んで該周壁部2、導電性シート8及び外周部4aを高周波溶着する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ターポリンよりなる周壁部、下蓋部及び上蓋部を接合してなるフレキシブルコンテナであって、
該導電性ターポリンは、前面に非導電性樹脂層が形成され、裏面に導電性樹脂層が形成されており、
該導電性ターポリンは、該導電性樹脂層を該フレキシブルコンテナの内部側として配材されており、
前記下蓋部又は上蓋部を構成する導電性ターポリンの外周部が前記周壁部の外周面に沿って延出し、該周壁部の外周面に接合されているフレキシブルコンテナにおいて、
該下蓋部又は上蓋部からアース線接続部が延出しており、
前記アース線接続部の左右幅は、基端側が先端側よりも大きいことを特徴とするフレキシブルコンテナ。
【請求項2】
前記アース線接続部は台形であることを特徴とする請求項1のフレキシブルコンテナ。
【請求項3】
前記アース線接続部の先端部の幅は15~100mmであり、基部の幅は30~200mmである請求項1のフレキシブルコンテナ。
【請求項4】
前記非導電性樹脂層は、エチレン-酢酸ビニル共重合体層を含む樹脂層によって構成されており、
該エチレン-酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの割合が10~30質量%である請求項1~3のフレキシブルコンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面に非導電性樹脂層が形成され、裏面に導電性樹脂層が形成されたターポリン同士を接合してなるフレキシブルコンテナと、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒体の輸送、保管に広く用いられているフレキシブルコンテナは、収納される粉粒体の性状により、粉粒体の注入口と排出口の注排出時、輸送時の振動、衝撃などによって、粉粒体同士または粉粒体とフレキシブルコンテナ内面との摩擦によって静電気が発生することが知られている。
【0003】
静電気をアースに逃がすために、フレキシブルコンテナの基布表面を、カーボンブラックを練り混んだ導電性付与型のゴム製素材(熱可塑性樹脂からなる素材を含む)よりなる層で被覆した導電性ターポリンが用いられている。また、ターポリンの一部を延出させて舌片状のアース線接続部を設け、このアース線接続部をアース線先端のクリップで挟持可能としたフレキシブルコンテナが用いられている。
【0004】
図5は、市販のフレキシブルコンテナの概略的な側面図(左半分を切断してある。)、図6図5のVI部分の拡大図である。また、図7はアース線接続部が劣化した状態を示す図6と同一部分の断面である。
【0005】
このフレキシブルコンテナ1は、略円筒状の周壁部2と、該周壁部2の上端側を覆う上蓋部3と、該周壁部2の下端側を覆う下蓋部4と、該上蓋部3に設けられた注入口5と、該下蓋部4に設けられた排出口6と、該フレキシブルコンテナ1の外面に設けられたアース線接続部7’等を備えている。注入口5及び排出口6は、それぞれ、周壁部2よりも小径の略円筒状となっており、該注入口5は上蓋部3の中央から上方に延出し、排出口6は下蓋部4の中央から下方に延出している。周壁部2の下部外周面にアース線接続部7’が配設されている。
【0006】
フレキシブルコンテナ1の各部は、それぞれ導電性ターポリンにより構成されている。導電性ターポリンは、図示の通り、基布の一方の面に導電性樹脂層11を形成し、他方の面に非導電性樹脂層を形成してなるものである。この導電性ターポリンは、該導電性樹脂層をフレキシブルコンテナ1の内部側として配材されている。なお、図5~7では、基布及び非導電性樹脂層を一体的に図示し、符号10を付してある。
【0007】
図6の通り、下蓋部4を構成する導電性ターポリンの外周部4aは、周壁部2の下部外周面に回り込み、該下部外周面に高周波溶着等により接合されている。
【0008】
アース線接続部7’は、この導電性ターポリンの外周部4aから延出した舌状片よりなる。フレキシブルコンテナ1内に粉粒体を収容する場合は、アース線先端のアースクリップ(図示略)で該アース線接続部7’を挟み、アースをとる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-250753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
アース線接続部7’は、本来、上記のようにアース線先端のアースクリップで挟んでフレキシブルコンテナ1のアースをとるためのものである。しかしながら、実際の作業時には、作業者がフレキシブルコンテナ1を移動させようとしてアース線接続部7’を掴んで図6の矢印F方向等にアース線接続部7’を引っ張ることがある。このようにアース線接続部7’を引っ張ると、導電性樹脂層11に強い引張力が負荷され、図7のように、アース線接続部7’の付け根付近で導電性樹脂層11に亀裂Cが生じ、アース線接続部7’の導電性樹脂層11とフレキシブルコンテナ1の導電性樹脂層11との間の電気抵抗が増大するおそれがある。なお、アース端子からの接地間抵抗はJIS C 61340-4-4で1×10Ω未満と規定されている。
【0011】
本発明は、アース線接続部の導電性樹脂層の耐久性に優れたフレキシブルコンテナ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明のフレキシブルコンテナは、導電性ターポリンよりなる周壁部、下蓋部及び上蓋部を接合してなるフレキシブルコンテナであって、該導電性ターポリンは、前面に非導電性樹脂層が形成され、裏面に導電性樹脂層が形成されており、該導電性ターポリンは、該導電性樹脂層を該フレキシブルコンテナの内部側として配材されており、前記下蓋部又は上蓋部を構成する導電性ターポリンの外周部が前記周壁部の外周面に沿って延出し、該周壁部の外周面に接合されているフレキシブルコンテナにおいて、該下蓋部又は上蓋部からアース線接続部が延出しており、該アース線接続部と周壁部との間に導電性シートが介在しており、前記外周部と周壁部との間に、該導電性シートの基部が挟み込まれて該外周部及び周壁部に対し接合されていることを特徴とするものである。
【0013】
第1発明の一態様では、前記導電性シートのうち、前記基部以外は、前記外周部から延出した自由片となっており、該自由片の延出長さは前記アース線接続部の延出長さよりも小さい。
【0014】
第1発明の一態様では、前記アース線接続部の左右幅は基端側が先端側よりも大きい。
【0015】
第2発明のフレキシブルコンテナは、導電性ターポリンよりなる周壁部、下蓋部及び上蓋部を接合してなるフレキシブルコンテナであって、該導電性ターポリンは、前面に非導電性樹脂層が形成され、裏面に導電性樹脂層が形成されており、該導電性ターポリンは、該導電性樹脂層を該フレキシブルコンテナの内部側として配材されており、前記下蓋部又は上蓋部を構成する導電性ターポリンの外周部が前記周壁部の外周面に沿って延出し、該周壁部の外周面に接合されているフレキシブルコンテナにおいて、該下蓋部又は上蓋部からアース線接続部が延出しており、前記アース線接続部の左右幅は、基端側が先端側よりも大きいことを特徴とするものである。
【0016】
本発明のフレキシブルコンテナの製造方法は、第1発明のフレキシブルコンテナを製造する方法であって、前記周壁部を構成する導電性ターポリンと下蓋部又は上蓋部を構成する導電性ターポリンの外周部との間に前記導電性シートの基部を挟み、該周壁部と、導電性シートの基部と、下蓋部又は上蓋部とを高周波溶着する工程を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
第1発明のフレキシブルコンテナにあっては、アース線接続部が外周部から延出し、このアース線接続部と周壁部との間に導電性シートが介在し、該導電性シートの基部が外周部と周壁部との間に挟み込まれて接合されているので、アース線接続部の導電性樹脂層とフレキシブルコンテナ本体側の導電性樹脂層とが導電性シートを介して電気的に導通した状態となる。そのため、作業者がアース線接続部を引っ張ることが度重なり、アース線接続部の基端側においてその導電性樹脂層に亀裂が生じたとしても、導電性シートを介して十分なアースをとることができる。
【0018】
第2発明のフレキシブルコンテナによると、作業者がアース線接続部を引っ張ることが度重なっても、アース線接続部の基端側に生じる引張応力が分散され、その導電性樹脂層に亀裂が生じることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態に係るフレキシブルコンテナのアース線接続部付近の断面斜視図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4】別の実施の形態に係るフレキシブルコンテナのアース線接続部付近の断面斜視図である。
図5】従来のフレキシブルコンテナの側面図である。
図6図5のVI部分の拡大図である。
図7】導電性樹脂層の劣化状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1~4を参照して実施の形態について説明する。
【0021】
図1~3は第1の実施の形態を示している。この実施の形態に係るフレキシブルコンテナも、前記図5のフレキシブルコンテナ1と同様に、周壁部2、上蓋部3、下蓋部4、注入口5、排出口6及びアース線接続部7を有している(上蓋部3、注入口5、排出口6は、図1~3では図示略。)。下蓋部4の外周部4aは、周壁部2の外周面に沿って立ち上がり、該周壁部2の外周面に高周波溶着等によって接合されている。なお、高周波溶着以外の接合法を採用してもよい。
【0022】
この実施の形態でも、周壁部2、上蓋部3及び下蓋部4はいずれも導電性ターポリンよりなる。周壁部2の導電性樹脂層11は、フレキシブルコンテナの内面側に位置し、上蓋部3の導電性樹脂層11は上蓋部3の下面側に位置し、下蓋部4の導電性樹脂層11は下蓋部4の上面側に位置している。
【0023】
この実施の形態では、アース線接続部7は、下蓋部4を構成する導電性ターポリンと一連一体のものであり、該外周部4aから延出する自由片状の舌状片よりなる。
【0024】
アース線接続部7は、例えば左右幅20~200mm、上下長さL図2)30~100mm程度であるが、その形状及び寸法はこれに限定されない。なお、この実施の形態では、アース線接続部7は、基端側ほど左右幅が大きくなる台形となっている。この場合、台形の上辺部分に相当する先端部の幅Wは15~100mm、特に25~75mm程度が好ましく、台形の底辺部分に相当するアース線接続部7の基部の幅Wは30~200mm、特に50~150mm程度が好ましい。
【0025】
アース線接続部7と周壁部2との間に導電性シート8が介在している。この導電性シート8の下部(基部)は、下蓋部4の外周部4aと、周壁部2の下部との間に挟み込まれ、高周波溶着等によって外周部4aと周壁部2との双方に接合されている。
【0026】
導電性シート8の左右幅Wは、アース線接続部7の左右幅よりも小さい。導電性シート8の外周部4aからの延出長さL図2)は、アース線接続部7の外周部4aからの延出長さLの10~100%、特に25~75%程度が好ましい。導電性シート8の外周部4aと周壁部2との挟み込み部分の長さ(深さ)Lは3~50mm、特に5~20mm程度が好ましい。
【0027】
このフレキシブルコンテナのその他の構成は前記図5~7に示したフレキシブルコンテナ1と同一である。
【0028】
この実施の形態に係るフレキシブルコンテナにおいても、アース線接続部7と、さらに好ましくは導電性シート8とを挟むようにアース線先端のアースクリップが装着されることにより、アースが取られる。
【0029】
この実施の形態においても、作業者がアース線接続部7を引っ張ることがありうる。作業者がアース線接続部7を引っ張ることが度重なると、図7と同様に、アース線接続部7の基端側においてその導電性樹脂層11に亀裂が入る可能性がある。
【0030】
この実施の形態では、導電性シート8の自由片部分はアース線接続部7と共にアースクリップに挟み込まれるので、アース線接続部7の基端部において導電性樹脂層11に亀裂が生じたとしても、アース線接続部7の導電性樹脂層11は、導電性シート8を介して外周部4aの導電性樹脂層11に導通するので、アースクリップはフレキシブルコンテナ全体の導電性樹脂層11に低抵抗にて導通し、十分なアースをとることができる。
【0031】
また、アース線接続部7と外周部4aとの境界付近に導電性シート8が溶着されることにより、アース線接続部7の基端部付近において、導電性樹脂層11と導電性シート8との合計の厚みを有した導電層が構成される。これにより、導電層の引張強度が大きくなり、アース線接続部7を引っ張ったときに、該導電層に亀裂が生じることが抑制される。このため、アースクリップがアース線接続部7のみを挟んだ場合でも、十分なアースをとることができる。
【0032】
また、この実施の形態では、アース線接続部7が台形となっているので、アース線接続部7が作業者によって引っ張られたときの応力がアース線接続部7の基端側で分散され、アース線接続部7の基端側において導電性樹脂層11に亀裂が入ることが抑制される。
【0033】
従って、本発明では、図4の通り、導電性シート8を省略し、台形のアース線接続部7のみを形成した場合でも、相応の効果が奏される。
【0034】
図1,4では、アース線接続部7は台形となっているが、アース線接続部7の側辺は裾野を引くような凹曲線や、それに近似した折れ曲り線で構成されてもよい。
【0035】
なお、導電性ターポリンの導電性樹脂層11の厚みは0.01~1mm、特に0.02~0.1mmであることが好ましく、非導電性樹脂層12の厚みは0.1~3mm、特に0.2~1mmであることが好ましい。導電性シート8の厚みは0.01~1mm、特に0.02~0.1mm程度が好ましい。
【0036】
[材質等]
フレキシブルコンテナ1の各部を構成する導電性ターポリンの材質の一例として次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
導電性ターポリンの基布としては、木綿及び麻などの天然繊維や、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維及びビニロン繊維などの合成繊維製の織布が挙げられる。基布は、これらの繊維を単独でまたは2種以上を組み合わせて構成したフィラメントまたはスティーブルであってもよい。なお、織布とは、これらの繊維を平織、綾織、朱子織などに織った織物や編み物を意味し、編織物の種類や構造は、導電性ターポリンのフレキシビリティを阻害しないものであれば、特に制限はない。
【0038】
基布を構成する織布としては、繊維の太さが500~1000デニールであり、打ち込み本数が15~30本/インチの平織物が好適である。ポリエステル繊維又はポリアミド繊維よりなる織布を用いる場合には、この織布としては、繊維の太さが750デニールであり、打ち込み本数20本×20本/インチの平織物が好適である。このような織布は、厚さが0.2~2mmであり、幅が0.5~3m程度のものが一般である。
【0039】
非導電性樹脂層は、熱可塑性樹脂組成物よりなることが好ましく、特にエチレンと酢酸ビニルとの共重合体層を含む樹脂層によって構成されていることが好ましい。エチレンと酢酸ビニルとの共重合体層を含む樹脂層とは、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体層の単層よりなる樹脂層のほか、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体層と他の樹脂層とが積層された多層の樹脂層であってもよい。他の樹脂層を形成する樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルを主成分とした塩化ビニル系共重合体などのポリ塩化ビニル系樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、塩素化ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)などのエチレン-アクリル酸系共重合体、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0040】
エチレン-酢酸ビニル共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルの成分重合比が90:10~70:30のものが好適である。酢酸ビニルの割合が10質量%未満であると高周波溶着加工が困難となり、また30質量%を超えると耐熱性が悪くなり、いずれも好ましくない。エチレンと酢酸ビニルの成分重合比の特に好ましい範囲は、85:15~75:25である。エチレン-酢酸ビニル共重合体としては、JIS K7210に準拠して温度190℃、荷重21.28N(2.16kgf)の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1~5.0の範囲のものが好ましく、中でも0.5~2.0の範囲のものが特に好ましい。
【0041】
導電性樹脂層11は、導電性カーボンブラックを含む熱可塑性樹脂組成物よりなることが好ましく、特に導電性カーボンブラックおよび主成分としてエチレン-酢酸ビニル共重合体層を含む樹脂層により構成されていることが好ましい。導電性カーボンブラックおよび主成分としてエチレン-酢酸ビニル共重合体層を含む樹脂層とは、導電性カーボンブラックを含む主成分としてエチレン-酢酸ビニル共重合体層(ポリオレフィン系樹脂層)の単層よりなる樹脂層のほか、この層に他の樹脂層が積層された多層の樹脂層であってもよい。他の樹脂層樹脂層を形成する樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、塩素化ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体などのエチレン-アクリル系共重合体などが挙げられる。その他、他の樹脂層は、導電性カーボンブラックを特定量配合した熱可塑性樹脂層を含むものであってもよい。
【0042】
上記導電性樹脂層に配合される導電性カーボンブラックには特に制限はないが、導電性カーボンブラックの平均表面積が比較的小さい場合には、該導電性カーボンブラックの使用量が多量となり、これにより熱可塑性樹脂をフィルム化する際の流動性が悪化したり、フィルムの強度が極端に低下したりするなどの欠点が顕著になる。導電性カーボンブラックとしては、物性上の観点から、平均表面積30m/g以上のものが好ましく、中でも平均表面積100m/g以上のものが特に好適である。
【0043】
熱可塑性樹脂、好ましくはエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む樹脂に対する導電性カーボンブラックの配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1~25質量部であることが好ましい。導電性カーボンブラックの配合量が0.1質量部未満であると、導電性樹脂層11の表面固有抵抗が大きくなり、導電性が改良されにくいため、好ましくない。導電性カーボンブラックの配合量が25質量部を越えると、導電性樹脂層11の表面固有抵抗が小さくなり、導電性は改良されるが、ターポリンの柔軟性が損なわれたり、高周波溶着加工する際にスパークが発生するおそれが高まったりするので、好ましくない。熱可塑性樹脂100質量部に対する導電性カーボンブラックの特に好ましい配合量は、3~15質量部である。
【0044】
導電性シート8は、上記の基布の両面に、上記の導電性樹脂層11と同様の導電性樹脂層を設けたものが好ましい。
【0045】
本発明のフレキシブルコンテナを製造するには、周壁部2の導電性ターポリンと下蓋部4の導電性ターポリンの外周部4aとを高周波溶着するに際し、外周部4aの上部と周壁部2との間に導電性シート8の下部を挟んで該周壁部2、導電性シート8の下部及び外周部4aを高周波溶着すればよい。
【0046】
なお、このように導電性シート8の下部を周壁部2と外周部4aとの間で挟んで高周波溶着すると、アース線接続部を挟んだ部分では厚さ(周壁部2の内面から外周部4aの外面までの厚み)が大きくなる。そして、図3に示されるように、この導電性シート8を挟んだ部分と、その周囲との間に段差が生じる。この段差を小さくするために、導電性シート8の厚さを、周壁部2及び下蓋部4を構成するターポリンの厚さよりも小さくすることが好ましい。
【0047】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。例えば、上記実施の形態では、導電性シート8は略長方形状となっているが、アース線接続部7を台形等とする場合、それに倣った(例えば相似形の)台形としてもよい。
【0048】
上記実施の形態では、アース線接続部7、導電性シート8は下蓋部4側に配置されているが、アース線接続部、導電性シートを上蓋部3側に配置してもよい。この場合の構成は、図1,2,4において上下対称のものとなる。
【実施例0049】
[実施例1]
周壁部2及び下蓋部4を厚さ0.80mmのターポリン製とし、導電性シート8を厚さ0.05mmとした図1~3に示すフレキシブルコンテナを製造した。アース線接続部7はW=100mm、W=50mm、L=60mmの台形である。導電性シート8はW=50mm、L=40mm、L=10mmの正方形であり、基端側10mmの範囲を外周部4aと周壁部2との間に挟み込んで高周波溶着した。
【0050】
このアース線接続部7を外周部4aと直角方向(図5のF方向)に294N(30kg)又は392N(40kg)で10回引っ張った(500N/minのスピードで荷重をかけ、294N、392Nに達したところで1回の引っ張りを終了した)。引っ張り前後に、アース線接続部7及び導電性シート8を挟むようにアースクリップを装着して接地間抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例2]
実施例1と同一のフレキシブルコンテナを製造し、引っ張り試験時の引っ張り方向をアース線接続部7及び延出部8が外周部4aに沿うように180°折り返される方向(図2において鉛直下向き方向)として引っ張り試験を行い、接地間抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
[実施例3,4]
導電性シート8を省略したこと以外は実施例1,2とそれぞれ同一の引っ張り試験を行った。結果を表1に示す。
【0053】
[比較例1]
アース線接続部を図6の構成(幅50mm、突出長さ40mm)としたこと以外は実施例4とそれぞれ同一の引っ張り試験を行った。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
[考察]
表1の通り、実施例1~4では、アース線接続部を繰り返し引っ張っても接地間抵抗は全く又は殆ど増加しない(実施例4の接地間抵抗3.3MΩも実用上問題とならない程度の低い値である。)。これに対し、比較例1のようにアース線接続部の折り返し角度が大きくなる方向に引っ張られた場合、接地間抵抗の増大が顕著になることが認められる。
【符号の説明】
【0056】
1 フレキシブルコンテナ
2 周壁部
3 上蓋部
4 下蓋部
5 投入口
6 排出口
7,7’ アース線接続部
8 導電性シート
10 基布及び非導電性樹脂層
11 導電性樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7