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特開2023-60000レトロウイルスおよびレンチウイルスベクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060000
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】レトロウイルスおよびレンチウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/867 20060101AFI20230420BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230420BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230420BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230420BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20230420BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230420BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230420BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230420BHJP
   C12N 15/48 20060101ALN20230420BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230420BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230420BHJP
   C07K 14/725 20060101ALN20230420BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20230420BHJP
   C07K 14/15 20060101ALN20230420BHJP
   C07K 14/155 20060101ALN20230420BHJP
   A61K 35/17 20150101ALN20230420BHJP
【FI】
C12N15/867 Z ZNA
C12N7/01
C12N5/10
C07K16/28
C07K14/54
C07K19/00
C12N15/12
A61K35/76
A61K38/20
A61K39/395 N
C12N15/48
C12N15/13
C12N15/62 Z
C07K14/725
C12N5/0783
C07K14/15
C07K14/155
A61K35/17
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023029559
(22)【出願日】2023-02-28
(62)【分割の表示】P 2020050861の分割
【原出願日】2016-03-01
(31)【優先権主張番号】1503500.9
(32)【優先日】2015-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】517215973
【氏名又は名称】オートラス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マーティン プーレ
(72)【発明者】
【氏名】レイラ メッカオウイ
(57)【要約】
【課題】レトロウイルスおよびレンチウイルスベクターの提供。
【解決手段】本発明は、(i)分裂促進ドメインおよび膜貫通ドメインを含む分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質;ならびに/または(ii)サイトカインドメインおよび膜貫通ドメインを含む、サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質を含むウイルスエンベロープを有するレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであって、分裂促進性またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質の一部ではない、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを提供する。ナチュラルキラー細胞のT細胞のような細胞がそのようなウイルスベクターによって形質導入される場合、それらは、分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および/またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質によって同時に活性化される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願図面の一部に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターならびにその生産のための細胞に関する。ベクターは、T細胞などの細胞に形質導入するために使用することができる。特に、本発明は、T細胞などの細胞の形質導入および活性化の両方を行うことができるレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子操作されたT細胞産物の生成は、典型的には、分裂促進因子による刺激、続いて、レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターなどの組み込みベクターの形質導入を必要とする。
【0003】
広く使用されているアプローチは、抗TCR/CD3および抗CD28などの可溶性の分裂促進性モノクローナル抗体(mAb)を細胞培養物に添加することである。代替のアプローチは、抗TCR/CD3 mAbを抗CD28 mAbとともにビーズに付着させることである。ビーズの表面は、可溶性抗体単独と比較して、改善されたT細胞活性化特性を有する。
【0004】
さらに、サイトカイン(例えばIL2、IL15またはIL7)が細胞培養物に一般的に添加される。
【0005】
これらの分裂促進性抗体およびサイトカインは、一回使用の消耗品であり、典型的には、T細胞産生プロセスにおいて最も費用のかかる部分を示す。
【0006】
Mauriceらは、CD3アゴニストOKT3がビリオン表面上に提示されるようなレンチ
ウイルスエンベロープタンパク質の直接的な遺伝子操作を記載している(Mauriceら;Blood;2002年;99巻;2342~2350頁)。Verhoeyenらは、レンチウイルスエ
ンベロープタンパク質がIL7を組み込むように遺伝子操作された同様のアプローチを記載している(Verhoeyenら;Blood;2003年;101巻;2167~2174頁)。
これらの遺伝子操作アプローチの各々は、ウイルスエンベロープタンパク質を複雑に遺伝子操作することが必要である。この複雑な遺伝子操作は、個々のペプチドがビリオン表面上に提示されるように行われなければならない。このアプローチは、ウイルス力価を低下させることも示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Mauriceら;Blood;2002年;99巻;2342~2350頁
【非特許文献2】Verhoeyenら;Blood;2003年;101巻;2167~2174頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、上述した欠点を伴わない遺伝子操作されたT細胞産物を生成するための新しいアプローチが必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】RD114エンベロープ糖タンパク質およびscFvまたは膜結合型サイトカインのような様々な分裂促進性の要素が散りばめられている脂質二重層によって囲まれたretroSTIMベクターの図。
【0010】
図2】OKT3 scFvをレンチウイルスに組み込むことができることの実証。結果は、T細胞の活性化を示す。(a)非刺激-293T細胞からのレンチウイルスベクターを形質導入された;(b)OKT3、CD28.2およびIL2での刺激-293T細胞からのレンチウイルスベクターを形質導入された;(c)非刺激-293T.OKT3からの上清を形質導入され、導入ベクター(transfervector)のみをトランスフェクトされた;(d)非刺激-293T.OKT3からのレンチウイルスベクターを形質導入した。上のパネルは、形質導入(x軸)、およびCD25発現による活性化(y軸)の散布図を示す。下のパネルは、T細胞培養の顕微鏡写真を示す。クランピングは活性化を示した。
【0011】
図3】T細胞の分裂促進刺激および形質導入がgagpolに依存することの実証。表面結合型のOKT3を安定に発現する293T細胞に、gagpol、RD-PRO env、導入ベクターまたはrevと併せて3つのプラスミドの全てをトランスフェクトした。その後の上清を初代ヒトT細胞に適用した。T細胞を以下のパラメーターを用いてフローサイトメトリーにより試験した:T細胞活性化を測定するためのCD25; Fcスペーサーを有するCARである導入遺伝子を検出するための抗Fc;周期中の細胞を決定するためのki67。gagpolが供給された条件だけが有意な分裂促進刺激をもたらした。(revと共に)全てのプラスミドが供給された条件のみが、T細胞の分裂促進刺激および形質導入をもたらした。
【0012】
図4】異なるレンチウイルスのシュードタイピングが分裂促進効果を支持することの実証。膜結合型OKT3を安定に発現する293T細胞に、レンチウイルスの導入ベクター、レンチウイルスgagpol、revおよび異なるenvプラスミド:すなわちVSV-G、RD-PRO、Ampho、GALVおよび麻疹M/Hをトランスフェクトした。その後の上清を初代ヒトT細胞に適用した。その後、細胞をki67で染色し、フローサイトメトリーで試験した。全ての偽型は分裂促進効果を支持したが、麻疹のシュードタイピングでは効果は低下したようであった。
【0013】
図5】T細胞の分裂促進刺激および形質導入がガンマ-レトロウイルスベクターを用いて達成されることの実証。膜結合型OKT3を安定に発現する293T細胞に、CARをコードするガンマ-レトロウイルス導入ベクター、ガンマ-レトロウイルスgagpol発現プラスミドおよびRD114発現プラスミドをトランスフェクトした。その後の上清を初代ヒトT細胞に適用した。その後、T細胞を抗Fc、抗CD25およびki67で染色し、フローサイトメトリーで試験した。分裂促進刺激は適用しなかったが、T細胞は活性化され、サイクルし(cycle)、導入遺伝子を発現していた。
【0014】
図6】2つの異なる分裂促進刺激をウイルスベクターに組み込むことができることと、抗CD28刺激と併せた抗CD3/TCR刺激が、抗CD3/TCR単独と比較して改善された効果を有することの実証。
【0015】
図7】細胞表面上に様々な要素を発現する293T細胞から生成された様々なレンチウイルスベクターで刺激されたT細胞の低解像度顕微鏡画像。
【0016】
図8】分裂促進性およびサイトカインペプチドの様々な組合せを示すlentiSTIMベクターの形質導入後のCD4およびCD8 T細胞の活性化。活性化は、形質導入120時間後でのCD25発現によって決定される。
【0017】
図9】分裂促進性およびサイトカインペプチドの様々な組合せを示すlentiSTIMベクターの形質導入後のCD4およびCD8 T細胞の増殖。増殖は、形質導入120時間後でのKi67発現によって決定される。
【0018】
図10】分裂促進性およびサイトカインペプチドの様々な組合せを示すlentiSTIMベクターの形質導入後のT細胞の拡大増殖。拡大増殖は、形質導入120時間後での絶対細胞数によって決定される。
【0019】
図11】抗CD3および抗CD28抗体を発現するlentiSTIMベクターまたは抗CD3および抗CD28抗体でコーティングしたビーズで活性化したPBMCのT細胞サブセット表現型の調査。NM-LV=非改変レンチウイルス;STIM-LV=lentiSTIMベクター;Tem=エフェクター記憶T細胞;Tcm=セントラル記憶T細胞;Tscm=記憶T幹細胞;Tn=ナイーブT細胞。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、レトロウイルスまたはレンチウイルスのキャプシドに、これらのウイルスがT細胞を活性化し、かつT細胞に形質導入するように分裂促進刺激および/またはサイトカイン刺激を組み込むことが可能であるという知見に基づく。このことにより、ベクター、分裂促進因子およびサイトカインを添加する必要がなくなる。本発明は、プロデューサー/パッケージング細胞膜から出芽する際にレトロウイルスに組み込まれる、分裂促進性膜貫通タンパク質および/またはサイトカインに基づく膜貫通タンパク質をプロデューサーまたはパッケージング細胞に含めることを含む。分裂促進性膜貫通タンパク質および/またはサイトカインに基づく膜貫通タンパク質は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質の一部としてではなく、プロデューサー細胞上の別個の細胞表面分子として発現される。これは、ウイルスエンベロープのリーディングフレームが影響を受けず、したがって機能的完全性およびウイルス力価を保つことを意味する。
【0021】
したがって、第1の態様では、本発明は、
(i)分裂促進ドメインおよび膜貫通ドメインを含む分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質;ならびに/または
(ii)サイトカインドメインおよび膜貫通ドメインを含む、サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質
を含むウイルスエンベロープを有するレトロウイルスまたはレンチウイルスベクターであって、分裂促進性またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質の一部ではない、レトロウイルスまたはレンチウイルスベクターを提供する。
【0022】
レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターは、env遺伝子によってコードされた別個のウイルスエンベロープ糖タンパク質を含んでもよい。
したがって、
(i)ウイルスエンベロープ糖タンパク質:ならびに
(ii)構造:M-S-TMを有する分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質
(ここで、Mは分裂促進ドメインであり、Sは任意選択のスペーサーであり、TMは膜貫通ドメインである);ならびに/または
(iii)サイトカインドメインおよび膜貫通ドメインを含む、サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質
を含むウイルスエンベロープを有するレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが提供される。
【0023】
分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および/またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質の一部ではない。それら
は、ウイルスエンベロープ中に別個のタンパク質として存在し、別個の遺伝子によってコードされる。
分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質は、構造:M-S-TMを有してもよく、
ここで、Mは分裂促進ドメインであり、Sは任意選択のスペーサーであり、TMは膜貫通ドメインである。
【0024】
分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質は、CD3、CD28、CD134またはCD137などの活性化T細胞表面抗原に結合し得る。分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質は、そのような活性化T細胞表面抗原に対するアゴニストを含んでいてもよい。
【0025】
分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質は、OKT3、15E8、TGN1412のような抗体からの結合ドメイン;またはOX40Lもしくは41BBLのような共刺激分子を含んでいてもよい。
【0026】
ウイルスベクターは、ウイルスエンベロープ中に2つまたはそれを超える分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質を含んでいてもよい。例えば、ウイルスベクターは、CD3に結合する第1の分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質およびCD28に結合する第2の分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質を含んでいてもよい。
【0027】
サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質は、例えば、IL2、IL7およびIL15から選択されるサイトカインを含んでいてもよい。
特に、
(ia)CD3に結合する第1の分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質;および
(ib)CD28に結合する第2の分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質
を含むウイルスエンベロープを有するレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが提供される。
【0028】
(ia)CD3に結合する第1の分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質;
(ib)CD28に結合する第2の分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質;および
(ii)IL2を含む、サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質
を含むウイルスエンベロープを有するレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターも提供される。
【0029】
(ia)CD3に結合する第1の分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質;
(ib)CD28に結合する第2の分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質;
(iia)IL7を含む、サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質;および(iib)IL15を含む、サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質
を含むウイルスエンベロープを有するレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターも提供される。
【0030】
ウイルスベクターは、偽型ウイルスベクターを与える異種のウイルスエンベロープ糖タンパク質を含んでいてもよい。例えば、ウイルスエンベロープ糖タンパク質は、RD114またはその変異体の1つ、VSV-G、テナガザル白血病ウイルス(GALV)由来であってもよく、またはアンホトロピックエンベロープ、麻疹エンベロープまたはヒヒレトロウイルスエンベロープ糖タンパク質である。
【0031】
本発明の第1の態様の第2の実施形態では、ウイルスベクターのウイルスエンベロープはまた、
(iv)捕捉部分に結合する結合ドメイン
スペーサー;ならびに膜貫通ドメイン
を含むタグ化タンパク質を含むことがあり、タグ化タンパク質はタグ化タンパク質の捕捉部分への結合を介した細胞上清からのウイルスベクターの精製を容易にする。
【0032】
タグ化タンパク質の結合ドメインは、1つまたは複数のストレプトアビジン結合エピトープを含むことができる。ストレプトアビジン結合エピトープは、パッケージング細胞によって産生されるストレプトアビジン捕捉レトロウイルスベクターを溶出するためにビオチンを使用することができるように、ビオチンよりも低い親和性でストレプトアビジンに結合するビオチン模倣体などのビオチン模倣体であってよい。
【0033】
適切なビオチン模倣体の例には、StreptagII(配列番号36)、Flankedccstretag(配列番号37)およびccstreptag(配列番号38)が含まれる。
【0034】
本発明の第1の態様のウイルスベクターは、T細胞受容体またはキメラ抗原受容体をコードする核酸配列を含んでいてもよい。
【0035】
ウイルスベクターは、ウイルス様粒子(VLP)であってもよい。
【0036】
第2の態様では、本発明は、細胞表面で、
(ii)分裂促進ドメインおよび膜貫通ドメインを含む分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質;ならびに/または
(ii)サイトカインドメインおよび膜貫通ドメインを含む、サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質
を発現し、その結果、パッケージング細胞によって産生されたレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが、本発明の第1の態様において定義されたものである、宿主細胞を提供する。
本発明の第2の態様の第2の実施形態では、宿主細胞はまた、細胞表面で、
(iii)捕捉部分に結合する結合ドメイン;および
膜貫通ドメイン
を含むタグ化タンパク質であって、タグ化タンパク質の捕捉部分への結合を介した細胞上清からのウイルスベクターの精製を容易にするタグ化タンパク質を発現し、その結果、パッケージング細胞によって産生されたレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが、本発明の第1の態様の第2の実施形態において定義されたものであることがある。
【0037】
タグ化タンパク質はまた、結合ドメインと膜貫通ドメインとの間にスペーサーを含んでいてもよい。
【0038】
宿主細胞という用語は、パッケージング細胞またはプロデューサー細胞であり得る。
【0039】
パッケージング細胞は、以下の遺伝子:gag、pol、envおよび/またはrevのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0040】
プロデューサー細胞は、gag、pol、envおよび必要に応じてrev遺伝子を含み、レトロウイルスまたはレンチウイルスゲノムも含む。
【0041】
このことに関して、宿主細胞は、分裂促進性および/またはサイトカイン膜貫通タンパク質を安定に発現する任意の適切な細胞株であり得る。これは、複製の能力が無いレトロウイルス/レンチウイルスベクターを産生するために、導入ベクター、gagpol、env(およびレンチウイルスの場合はrev)を一過性でトランスフェクトされ得る。
【0042】
第3の態様では、分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および/またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質をコードする核酸を細胞に形質導入またはトランスフェクトするステップを含む、本発明の第2の態様に記載の宿主細胞を作製するための方法が提供される。
【0043】
第4の態様では、レトロウイルスまたはレンチウイルスゲノムを本発明の第2の態様に記載の細胞において発現させるステップを含む、本発明の第1の態様に記載のウイルスベクターを産生するための方法が提供される。
【0044】
第5の態様では、T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞が、1つもしくは複数の分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および/または1つもしくは複数のサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質によって活性化されるように、本発明の第1の態様に記載のウイルスベクターをT細胞またはNK細胞に形質導入するステップを含む、活性化されたトランスジェニックT細胞またはNK細胞を作製するための方法が提供される。
【0045】
第6の態様では、
(i)本発明の第2の態様において定義される宿主細胞;
(ii)gag、pol、envおよび必要に応じてrevを含む核酸;ならびに
(iii)レトロウイルスゲノム
を含む、本発明の第1の態様において定義されるレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを作製するためのキットが提供される。
【0046】
(i)本発明の第2の態様において定義されるパッケージング細胞;および
(ii)レトロウイルスゲノム
を含む、本発明の第1の態様において定義されるレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを作製するためのキットも提供される。
【0047】
(i)分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および/またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質をコードする1つまたは複数の核酸;ならびに
(ii)レトロウイルスのgag、polおよびenv遺伝子を含む核酸
を含む、本発明の第2の態様の第2の実施形態に記載のパッケージング細胞を作製するためのキットも提供される。
【0048】
(i)分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および/またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質をコードする1つまたは複数の核酸;
(ii)レトロウイルスのgag、polおよびenv遺伝子を含む核酸;ならびに
(iii)レトロウイルスベクターゲノムまたはレンチウイルスベクターゲノム
を含む、本発明の第2の態様に記載のプロデューサー細胞を作製するためのキットも提供される。
【0049】
したがって、本発明は、組み込みの分裂促進刺激および/またはサイトカイン刺激を有するウイルスベクターを提供する(図1を参照されたい)。このベクターは、T細胞を刺激し、遺伝子挿入にも作用する能力を有する。このことには多くの利点がある:(1)添加する必要があるのは1つの構成成分のみであるため、T細胞遺伝子操作のプロセスを簡潔にする;(2)ウイルスが不安定であり、除去する必要がないため、ビーズの除去および関連する収量の低減を回避する。(3)製造する必要があるのは1つの構成成分のみであるため、T細胞遺伝子操作のコストを低減する;(4)より大きな設計柔軟性を可能にする:各々のT細胞遺伝子操作プロセスは、遺伝子導入ベクターの作製を含むであろうし
、分裂促進刺激で産物を「フィット」させ、同じ産物を作製することもできる;(5)産生プロセスの短縮が可能となる:可溶性の抗原/ビーズに基づくアプローチにおいて、分裂促進因子およびベクターは、典型的には、1、2または時には3日で順次、別個に与えられるが、本発明のレトロウイルスベクターでは、分裂促進刺激およびウイルス侵入は同期的かつ同時的に起きるため、これを回避することができる;(6)発現および機能性のために多くの異なる融合タンパク質を試験する必要が無いため、遺伝子操作がより容易である;(7)2つ以上のシグナルを同時に加えることが可能である;ならびに(8)各々のシグナル/タンパク質の発現および/または発現レベルを別々に調節することが可能である。
【0050】
分裂促進刺激および/またはサイトカイン刺激は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質から分離された分子に提供されるため、ウイルスエンベロープ糖タンパク質の完全性は維持され、ウイルス力価に悪影響が無い。
【0051】
(詳細な説明)
レトロウイルス
レトロウイルスは、主にゲノムをRNAからDNAに「逆転写」する能力を特徴とする二本鎖RNAエンベロープウイルスである。ビリオンの長さは直径100~120nmであり、ヌクレオキャプシドタンパク質と複合体を形成した同一のプラスRNA鎖の二量体ゲノムを含有する。ゲノムは、ウイルス感染に必要な酵素タンパク質、すなわち逆転写酵素、インテグラーゼおよびプロテアーゼも含有するプロテイックキャプシド(proteiccapsid)に封入されている。マトリックスタンパク質は、ウイルス核粒子の周りを囲む、宿
主細胞膜に由来する脂質二重層であるエンベロープと相互作用するキャプシドコアの外側の層を形成する。この二重層には、宿主細胞上の特異的受容体を認識し、感染プロセスを開始させる役割を担うウイルスエンベロープ糖タンパク質が固定されている。エンベロープタンパク質は、タンパク質を脂質膜内に固定させる膜貫通(TM)と細胞受容体に結合する表面(SU)の2つのサブユニットによって形成される。
【0052】
ゲノム構造に基づき、レトロウイルスは、MLVおよびネズミ白血病ウイルスなどの単純レトロウイルス;またはHIVおよびEIAVのような複合レトロウイルス(complex retrovirus)に分類分けされる。レトロウイルスは、gag(群特異的抗原)、pro(プロテアーゼ)、pol(ポリメラーゼ)およびenv(エンベロープ)の4つの遺伝子をコードする。gag配列は、マトリックスタンパク質、ヌクレオキャプシドタンパク質、およびキャプシドタンパク質の3つの主要な構造タンパク質をコードする。pro配列は、粒子の集合、出芽および成熟の間にGagおよびGag-Polを切断する役割を担うプロテアーゼをコードする。pol配列は、逆転写酵素およびインテグラーゼの酵素をコードし、前者は、感染プロセスの間にウイルスゲノムのRNAからDNAへの逆転写を触媒し、後者はプロウイルスDNAを宿主細胞ゲノムへ組み入れる役割を担う。env配列は、エンベロープ糖タンパク質のSUおよびTMサブユニットの両方をコードする。さらに、レトロウイルスゲノムは、遺伝子発現、逆転写および宿主細胞染色体への組み入れを促進するために必要な要素を含有する、2つのLTR(長い末端反復);新たに形成するビリオンへのウイルスRNAの特異的パッケージングに必要なパッケージングシグナル(Ψ)と名付けられる配列;ならびに逆転写の間にプラス鎖DNA合成を開始する部位として機能するポリプリントラクト(polypurinetract;PPT)のよ
うな非コーディングシス作用性配列を提示する。gag、pro、polおよびenvに加えて、レンチウイルスなどの複合レトロウイルスは、ウイルス遺伝子発現、感染性粒子の集合を調節し、感染細胞におけるウイルス複製をモジュレートするvif、vpr、vpu、nef、tatおよびrevを含むアクセサリー遺伝子を有する。
【0053】
感染のプロセスの間、レトロウイルスは最初に特定の細胞表面受容体に付着する。感受
性の宿主細胞に侵入すると、レトロウイルスRNAゲノムは、親ウイルス内に保有されている、ウイルスにコードされた逆転写酵素によってDNAにコピーされる。このDNAは宿主細胞核に輸送され、次いで宿主ゲノムに組み入れられる。この段階では、典型的に、それはプロウイルスと呼ばれる。プロウイルスは、細胞分裂中の宿主染色体において安定であり、他の細胞タンパク質のように転写される。プロウイルスは、より多くのウイルスを作製するために必要とされるタンパク質およびパッケージング機構をコードし、「出芽(budding)」として公知のプロセスによって細胞から離れることができる。
【0054】
レトロウイルスおよびレンチウイルスなどのエンベロープウイルスが宿主細胞から出芽すると、それらは宿主細胞脂質膜の一部を占める。このようにして、宿主細胞由来膜タンパク質がレトロウイルス粒子の一部となる。本発明は、目的のタンパク質をウイルス粒子のエンベロープに導入するために、このプロセスを利用する。
レトロウイルスベクター
【0055】
レトロウイルスおよびレンチウイルスは、1つの目的のヌクレオチド(NOI)または複数のNOIを標的細胞に導入するためのベクターまたは送達系として使用することができる。導入は、in vitro、ex vivoまたはin vivoで起こり得る。この様式で使用される場合、ウイルスは、典型的にはウイルスベクターと呼ばれる。
【0056】
本発明のウイルスベクターにおいて、NOIは、T細胞受容体またはキメラ抗原受容体および/または自殺遺伝子をコードし得る。
【0057】
一般にレトロウイルスベクターと称されるガンマ-レトロウイルスベクターは、1990年に遺伝子療法の臨床試験に用いられた最初のウイルスベクターであり、依然として最も使用されているものの1つである。最近では、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの複合レトロウイルスに由来するレンチウイルスベクターについての関心が、その非分裂細胞に形質導入する能力のために増加している。遺伝子導入ツールとしてのレトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターの最も魅力的な特徴としては、大きな遺伝的ペイロード(最大9kbまで)容量、最小限の患者免疫応答、in vivoおよびin vitroでの高い形質導入効率、ならびに標的細胞の遺伝子含量を恒久的に改変し、送達された遺伝子の長期的な発現を持続させる能力が挙げられる。
【0058】
レトロウイルスベクターは、遺伝情報を真核細胞に送達することができる任意の適切なレトロウイルスに基づくことができる。例えば、レトロウイルスベクターは、アルファレトロウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはスプマレトロウイルスベクターであり得る。そのようなベクターは、遺伝子療法の治療および他の遺伝子送達の応用において広範に使用されてきた。
【0059】
本発明のウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、例えばガンマ-レトロウイルスベクターであってもよい。ウイルスベクターは、ヒト免疫不全ウイルスに基づくものであってもよい。
【0060】
本発明のウイルスベクターは、レンチウイルスベクターであってもよい。このベクターは、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)のような非霊長類レンチウイルスに基づくものであってもよい。
【0061】
本発明のウイルスベクターは、図1に例示されるように、分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および/またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質をウイルスエンベロープ中に含む。
【0062】
分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および/またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質は、上記で説明したように、宿主細胞膜に由来する。
ウイルス様粒子(VLP)
【0063】
レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターについては、ビリオンの集合および放出を媒介するためにはGag前駆体の発現が十分である。Gagタンパク質、およびGagの断片さえも、in vitroで集合して、ビリオンコアに似た様々な構造を形成する能力があることが示されている。ウイルスの遺伝物質を欠き、故に非感染性であるこれらの粒子は、ウイルス様粒子(VLP)と呼ばれる。完全なウイルス粒子と同じ様に、これらは宿主細胞脂質-二重層(膜)で作られた外側のウイルスエンベロープを含有し、故に宿主細胞膜貫通タンパク質を含有する。
【0064】
本発明の第1の態様のウイルスベクターは、ウイルス様粒子であっても、含んでいてもよい。
目的のヌクレオチド(NOI)
【0065】
本発明のウイルスベクターは、T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞のような標的細胞に目的のヌクレオチド(NOI)を送達することができる。
【0066】
NOIは、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)および/または自殺遺伝子の全てまたは一部をコードし得る。
【0067】
CARは、細胞外抗原認識ドメイン(バインダー)を細胞内シグナル伝達ドメイン(エンドドメイン)に接続するキメラI型膜貫通型タンパク質である。バインダーは、典型的には、モノクローナル抗体(mAb)から由来した一本鎖可変断片(scFv)であるが、抗体様抗原結合部位を含む他の形式に基づくこともできる。バインダーを膜から単離し、適切に配向させるためには、通常、スペーサードメインが必要である。膜貫通ドメインはタンパク質を細胞膜中に固定する。CARは、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインまたはエンドドメインを含むかまたはそれと会合してもよい。
【0068】
CARをコードする核酸は、本発明のレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを用いて、T細胞などの細胞に導入することができる。このようにして、多数のがん特異的T細胞を養子細胞移植法のために生成することができる。CARが標的抗原に結合すると、それが発現されるT細胞に活性化シグナルが伝達される。したがって、CARは、標的抗原を発現する腫瘍細胞に対するT細胞の特異性および細胞傷害性を指示する。
【0069】
自殺遺伝子は、例えば、アポトーシスを誘発させることによって、そのようなポリペプチドを発現する細胞を欠失させることを可能にするポリペプチドをコードする。自殺遺伝子の例は、国際公開第2013/153391号に記載されている。
宿主細胞
【0070】
第2の態様では、本発明は、細胞表面で分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質を発現する宿主細胞を提供する。
【0071】
宿主細胞は、本発明の第1の態様に記載のウイルスベクターの産生のためのものであってもよい。
【0072】
宿主細胞は、パッケージング細胞であってもよく、下記の遺伝子:gag、pol、envおよびrevのうち1つまたは複数を含んでもよい。
【0073】
レトロウイルスベクターについてのパッケージング細胞は、gag、polおよびenv遺伝子を含んでもよい。
【0074】
レンチウイルスベクターについてのパッケージング細胞は、gag、pol、envおよびrev遺伝子を含んでもよい。
【0075】
宿主細胞は、プロデューサー細胞であってもよく、gag、pol、envおよび必要に応じてrev遺伝子ならびにレトロウイルスゲノムまたはレンチウイルスベクターゲノムを含んでもよい。
【0076】
遺伝子療法に使用するための典型的な組換えレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターにおいて、1つまたは複数のgag-polおよびenvタンパク質コード領域の少なくとも一部をウイルスから除去し、パッケージング細胞によって提供するようにしてもよい。ウイルスはそのゲノムを宿主ゲノムに組み入れることができるが、改変されたウイルスゲノムは構造タンパク質の欠損のために増殖することができないので、このことによりウイルスベクターが複製能欠如となる。
【0077】
パッケージング細胞は、ウイルスベクターの量を増殖および単離するために、すなわち、標的細胞の形質導入のためのレトロウイルスベクターの適切な力価を調製するために使用される。
【0078】
いくつかの例において、増殖および単離は、レトロウイルスgagpolおよびenv(ならびにレンチウイルスの場合には、rev)遺伝子の単離ならびにパッケージング細胞株を産生するための宿主細胞へのそれらの別個の導入を伴ってもよい。パッケージング細胞株は、レトロウイルスDNAのパッケージングに必要なタンパク質を産生するが、プサイ領域(psiregion)が欠損しているためにキャプシド形成を引き起こすことはできな
い。しかしながら、プサイ領域を保有する組換えベクターがパッケージング細胞株に導入される場合、ヘルパータンパク質はプサイポジティブ組換えベクターをパッケージングして組換えウイルスストックを産生することができる。
【0079】
入手可能なパッケージング株の概要は、「レトロウイルス」(「Retroviruses」、1997年 Cold Spring HarbourLaboratoryPress編:JMCoffin、SM Hughes、HE Varmus、
449頁)に提示されている。
【0080】
3つの組換え事象が野生型ウイルス産生に必要であるように、gag、polおよびenv(ならびにレンチウイルスベクターの場合にはrev)ウイルスコーディング領域が、パッケージング細胞株に独立してトランスフェクトされる別個の発現プラスミド上に乗っているパッケージング細胞も開発された。
【0081】
一過性トランスフェクションは、安定なベクター産生細胞株を生成するために必要となるより長い時間を回避し、ベクターまたはレトロウイルスパッケージング構成成分が細胞に対して毒性がある場合に使用される。レトロウイルス/レンチウイルスベクターを生成するために典型的に使用される構成成分は、Gag/Polタンパク質をコードするプラスミド、Envタンパク質をコードするプラスミド(およびレンチウイルスベクターの場合にはrevタンパク質)ならびにレトロウイルス/レンチウイルスベクターゲノムを含む。ベクター産生は、これらの構成成分のうちの1つまたは複数を、他の必要な構成成分を含有する細胞に一過性にトランスフェクトすることを含む。
【0082】
本発明のパッケージング細胞は、レトロウイルス/レンチウイルスベクター粒子を産生することができる任意の哺乳動物細胞型であってもよい。パッケージング細胞は、293
T細胞、または懸濁液中で増殖し、血清なしで増殖するように適合された293T細胞の変異体であってもよい。
パッケージング細胞は、
a)導入ベクター
b)gagpol発現ベクター
【0083】
c)env発現ベクター
の一過性トランスフェクションによって作製されてもよい。
env遺伝子は、偽型レトロウイルスベクターを生じる、異種のものであってもよい。例えば、env遺伝子は、RD114またはその変異体の1つ、VSV-G、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、アンホトロピックエンベロープまたは麻疹エンベロープもしくはヒヒレトロウイルスエンベロープ糖タンパク質からのものであり得る。
【0084】
レンチウイルスベクターの場合、revベクターを用いた一過性トランスフェクションも行われる。
分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質
【0085】
本発明のウイルスベクターは、ウイルスエンベロープ中に分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質を含んでもよい。分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質は、レトロウイルスベクター産生期間内の宿主細胞に由来する。分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質は、パッケージング細胞により作られ、細胞表面で発現される。新生のレトロウイルスベクターが宿主細胞膜から出芽する(bud)と、分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク
質がパッケージング細胞由来脂質二重層の一部としてウイルスエンベロープに組み込まれる。
【0086】
用語「宿主細胞由来」は、分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質が上に記載したように宿主細胞に由来し、例えば、主要な構造タンパク質をコードするgag;またはエンベロープタンパク質をコードするenvのようなウイルス遺伝子の1つからの融合体またはキメラとして産生されないことを示す。
【0087】
エンベロープタンパク質は、タンパク質を脂質膜に固定する膜貫通(TM)と細胞受容体に結合する表面(SU)の、2つのサブユニットによって形成される。本発明のパッケージング細胞由来の分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質は、表面エンベロープサブユニット(SU)を含まない。
【0088】
分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質は、以下の配列の1つまたはその変異体を含み得る。
配列番号1(OKT3-CD8STK-TM-A)
【0089】
【化1】
配列番号2(15E8-CD8STK-TM-A)
【0090】
【化2】
配列番号3(TGN1412-CD8STK-TM-A)
【0091】
【化3】
【0092】
分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質は、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも98または少なくとも99%の配列同一性を有する配列番号1、2または3に示される配列の変異体を含み得るが、ただし、その変異体配列が、必要な特性、すなわちレトロウイルスベクターのエンベロープタンパク質中に存在する場合にT細胞を活性化する能力を有する分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質であることを条件とする。
【0093】
配列アラインメントの方法は、当技術分野で周知であり、適切なアラインメントプログラムを用いて遂行される。%配列同一性は、2つの配列が最適に整列された場合に2つの配列において同一であるアミノ酸またはヌクレオチド残基のパーセンテージを指す。ヌクレオチドおよびタンパク質配列の相同性または同一性は、http://blast.ncbi.nlm.nih.govで公開されているデフォルトパラメータを用いたBLASTプログラム(BasicLocalAlignment Search Tool at the National Center forBiotechnology Information)のよう
な標準アルゴリズムを用いて決定することができる。配列同一性または相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、LALIGN(http://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/lalign/およびhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/lalign/nucleotide.html)、AMAS(AnalysisofMultiply Aligned Sequences、http://www.compbio.dundee.ac.uk/Software/Amas/amas.htmlにて)、FASTA(http://www.ebi.ac.uk/Tools/sss/fasta/)、Clustal Omega(http://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)、SIM(http://web.expasy.org/sim/)、ならびにEMBOSS Needle(http://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/nucleotide.html)が挙げられる。
【0094】
分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質は、構造:M-S-TMを有し得、
ここで、Mは分裂促進性ドメインであり;Sは任意選択のスペーサードメインであり、TMは膜貫通ドメインである。
分裂促進性ドメイン
【0095】
分裂促進性ドメインは、T細胞活性化を引き起こす分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質の一部である。これは、T細胞と直接または間接的に結合またはさもなければ相互作用してもよく、T細胞活性化をもたらす。特に、分裂促進性ドメインは、T細胞表面抗原、例えばCD3、CD28、CD134およびCD137に結合し得る。
【0096】
CD3は、T細胞共受容体である。それは、4つの別々の鎖からなるタンパク質複合体である。哺乳動物において、複合体はCD3γ鎖、CD3δ鎖、および2つのCD3ε鎖を含む。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)およびζ鎖と会合して、Tリンパ球において活性化シグナルを生成する。TCR、ζ鎖、およびCD3分子は共にTCR複合体を含む。
【0097】
分裂促進性ドメインは、CD3ε鎖に結合し得る。
【0098】
CD28は、T細胞の活性化および生存に必要な共刺激シグナルを提供するT細胞上で発現されるタンパク質の1つである。T細胞受容体(TCR)に加えてCD28を介したT細胞刺激は、様々なインターロイキン(特にIL-6)の産生のための強力なシグナルを提供することができる。
【0099】
OX40としても公知のCD134は、CD28とは違って、休止中のナイーブT細胞上に構成的に発現されない受容体のTNFRスーパーファミリーのメンバーである。OX40は、活性化後24時間から72時間後に発現する二次共刺激分子である:そのリガンドのOX40Lもまた、休止中の抗原提示細胞上では発現されないが、それらの活性化後には発現される。OX40の発現は、T細胞の完全な活性化に依存する;CD28が無ければ、OX40の発現は遅れ、4倍低いレベルである。
【0100】
4-1BBとしても公知のCD137は、腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーのメンバーである。CD137は、活性化されたT細胞によって発現することができるが、CD4 T細胞よりもCD8において、大きな規模である。さらに、CD137の発現は、樹状細胞、濾胞性樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、顆粒球および炎症部位の血管壁細胞において見出される。CD137の最も特徴付けられた活性は、活性化されたT細胞の共刺激活性である。CD137の架橋は、T細胞増殖、IL-2分泌生存および細胞溶解活性を高める。
【0101】
分裂促進性ドメインは、T細胞表面抗原に特異的に結合する抗体または他の分子の全部または一部を含んでいてもよい。抗体は、TCRまたはCD28を活性化し得る。抗体は、TCR、CD3またはCD28に結合し得る。そのような抗体の例としては、OKT3、15E8およびTGN1412が挙げられる。他の適切な抗体としては、
抗CD28:CD28.2、10F3
抗CD3/TCR:UCHT1、YTH12.5、TR66が挙げられる。
【0102】
分裂促進性ドメインには、OKT3、15E8、TGN1412、CD28.2、10F3、UCHT1、YTH12.5またはTR66からの結合ドメインを含み得る。
【0103】
分裂促進性ドメインには、OX40Lおよび41BBLなどの共刺激分子の全部または一部を含み得る。例えば、分裂促進性ドメインは、OX40Lまたは41BBLからの結合ドメインを含み得る。
【0104】
Muromonab-CD3としても公知のOKT3は、CD3ε鎖を標的とするモノクローナル抗体である。それは臓器移植患者の急性拒絶反応を低減するために臨床的に使
用されている。それはヒトにおける臨床使用のために認可された最初のモノクローナル抗体であった。OKT3のCDRは下記の通りである:
【化4】
15E8は、ヒトCD28に対するマウスモノクローナル抗体である。そのCDRは下記の通りである:
【化5】
【0105】
(CD28-SuperMABとしても公知である)TGN1412は、CD28受容体に結合するだけでなく、CD28受容体に対する強力なアゴニストであるヒト化モノクローナル抗体である。そのCDRは下記の通りである。
【化6】
【0106】
OX40LはCD134に対するリガンドであり、Th2細胞分化の増幅を可能にするDC2s(樹状細胞のサブタイプ)のような細胞上で発現される。OX40Lはまた、CD252(表面抗原分類252)と称されている。
OX40L配列(配列番号22)
【化7】
【0107】
41BBLは、腫瘍壊死因子(TNF)リガンドファミリーに属するサイトカインである。この膜貫通サイトカインは、Tリンパ球における共刺激受容体分子である4-1BBのリガンドとして作用する双方向シグナルトランスデューサーである。41BBLは、Tリンパ球増殖を促進することに加えて、アネルギー性のTリンパ球を再活性化することが示されている。
41BBL配列(配列番号23)
【0108】
【化8】
スペーサードメイン
【0109】
分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および/またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質は、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインに接続するためのスペーサー配列を含んでもよい。柔軟なスペーサーは、結合を容易にするために抗原結合ドメインが様々な方向に配向することを可能にする。
【0110】
スペーサー配列は、例えば、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジまたはヒトCD8ストーク(stalk)もしくはマウスCD8ストークを含んでもよい。代わりに、スペーサー
は、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジまたはCD8ストークと類似の長さおよび/またはドメイン間隔特性を有する代替のリンカー配列を含んでいてもよい。Fc結合モチーフを除去するために、ヒトIgG1スペーサーを変更することができる。
これらのスペーサーのアミノ酸配列の例を下記に示す:
【0111】
【化9】
【0112】
スペーサー配列は、ヒトタンパク質に由来してもよい。スペーサー配列は、ウイルスタンパク質に由来していなくてもよい。特に、スペーサー配列は、レトロウイルスenvタンパク質の表面エンベロープサブユニット(SU)の一部ではなくても、由来していなくても、またはその一部を含んでいなくてもよい。
膜貫通ドメイン
【0113】
膜貫通ドメインは、膜にまたがる分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および/またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質の配列である。膜貫通ドメインは、疎水性アルファヘリックスを含んでいてもよい。膜貫通ドメインはCD28に由来していてもよく、そのことにより良好な受容体安定性を与える。
【0114】
膜貫通ドメインは、ヒトタンパク質に由来し得る。膜貫通ドメインは、ウイルスタンパク質に由来していなくてもよい。特に、膜貫通ドメインは、レトロウイルスのenvタンパク質の膜貫通エンベロープサブユニット(TM)ではなくても、由来していなくても、またはその一部を含んでいなくてもよい。
【0115】
膜貫通ドメインに対する代替的な選択肢は、GPIアンカーのような膜標的ドメインである。
【0116】
GPIアンカーリングは、小胞体において起こる翻訳後修飾である。組み立て済みのGPIアンカー前駆体は、C末端GPIシグナル配列を持つタンパク質に導入される。処理中、GPIアンカーはGPIシグナル配列を置き換え、アミド結合を介して標的タンパク質に連結される。GPIアンカーは、成熟タンパク質を膜に標的化する。
【0117】
本発明のタグ化タンパク質は、GPIシグナル配列を含んでもよい。
サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質
【0118】
本発明のウイルスベクターは、ウイルスエンベロープ中にサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質を含んでいてもよい。サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質は、ウイルスベクター産生中の宿主細胞に由来する。サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質は、宿主細胞によって作られ、細胞表面で発現される。新生のウイルスベクターが宿主細胞膜から出芽すると、サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質がパッケージング細胞由来の脂質二重層の一部としてウイルスエンベロープに組み込まれる。
【0119】
サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質は、主要構造タンパク質をコードするgagまたはエンベロープタンパク質をコードするenvのようなウイルス遺伝子の1つから産生されない。
【0120】
サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質は、サイトカインドメインおよび膜貫通ドメインを含んでもよい。それは構造C-S-TMを有していてもよく、ここで、Cはサイトカインドメインであり、Sは任意選択のスペーサードメインであり、TMは膜貫通ドメインである。スペーサードメインおよび膜貫通ドメインは、上で定義された通りである。
サイトカインドメイン
【0121】
サイトカインドメインは、IL2、IL7およびIL15などからのT細胞活性化サイトカインの一部または全部を含んでもよい。サイトカインドメインは、その特定の受容体に結合し、T細胞を活性化する能力を保持する限り、サイトカインの一部を含み得る。
【0122】
IL2は、T細胞およびある特定のB細胞の増殖および分化を調節するためにT細胞によって分泌される因子の1つである。IL2は、応答性T細胞の増殖を誘導するリンホカインである。それは、単一のグリコシル化ポリペプチドとして分泌され、その活性のためにシグナル配列の切断が必要である。溶液NMRは、IL2の構造が、2つの短いヘリックスおよびいくつかの不完全に定義されたループに隣接する4つのヘリックス(A~Dと名付けられる)の束を含むことを示唆している。ヘリックスAおよびヘリックスAとBの間のループ領域の残基は、受容体結合に重要である。IL2の配列を配列番号29として示す。
配列番号29
【化10】
【0123】
IL7は、BおよびT細胞系統の両方の初期リンパ系細胞の増殖因子として働くサイトカインである。IL7の配列を配列番号30として示す。
配列番号30
【化11】
【0124】
IL15は、IL-2と構造的類似性を持つサイトカインである。IL-2と同様に、IL-15は、IL-2/IL-15受容体ベータ鎖および共通のガンマ鎖から構成される複合体に結合し、それを介してシグナルを伝達する。IL-15は、ウイルス(複数可)による感染後に、単核食細胞およびいくつかの他の細胞によって分泌される。このサイトカインは、ウイルスに感染した細胞を殺すことを主な役割とする先天性免疫系の細胞である、ナチュラルキラー細胞の細胞増殖を誘導する。IL-15の配列を配列番号31として示す。
配列番号31
【化12】
サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質は、下記の配列またはその変異体の1つを含み得る:
配列番号32(膜-IL7)
【0125】
【化13】
配列番号33(膜-IL15)
【0126】
【化14】
【0127】
サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質は、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも98または少なくとも99%の配列同一性を有する配列番号32または33で示される配列の変異体を含んでもよいが、ただし、変異体配列が、必要な特性、すなわちレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターのエンベロープタンパク質中に存在する場合にT細胞を活性化する能力を有するサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質であることを条件とする。
タグ化タンパク質
【0128】
ウイルスベクターのウイルスエンベロープはまた、捕捉部分および膜貫通ドメインに結合する結合ドメインを含むタグ化タンパク質を含んでもよい。
【0129】
タグ化タンパク質は、
捕捉部分に結合する結合ドメイン
スペーサー;ならびに
膜貫通ドメイン
を含んでもよい。
【0130】
タグ化タンパク質は、タグ化タンパク質の捕捉部分への結合を介して、細胞上清からのウイルスベクターの精製を容易にする。
【0131】
「結合ドメイン」は、標的実体、例えば捕捉部分を認識し、特異的に結合することが可能な実体、例えばエピトープを指す。
【0132】
結合ドメインは、捕捉部分に特異的に結合することが可能な1つまたは複数のエピトープを含み得る。例えば、結合ドメインは、捕捉部分に特異的に結合することが可能な少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つのエピトープを含んでもよい。結合ドメインが2つ以上のエピトープを含む場合、各々のエピトープは、本明細書に記載されるように、リンカー配列によって分離されていてもよい。
【0133】
結合ドメインは、結合ドメインと比較して捕捉部分に対してより高い結合親和性を有する実体を添加した時に、捕捉部分から放出可能であってもよい。
ストレプトアビジン結合エピトープ
【0134】
結合ドメインは、1つまたは複数のストレプトアビジン結合エピトープを含むことができる。例えば、結合ドメインは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4または少なくとも5個のストレプトアビジン結合エピトープを含むことができる。
【0135】
ストレプトアビジンは、Streptomyces avidinii細菌から精製された52.8kDaタンパク質である。ストレプトアビジンホモ四量体はビオチン(ビタミンB7またはビタミンH)に対して非常に高い親和性を有し、解離定数(Kd)はおよそ10-15Mである。ストレプトアビジンは当技術分野において周知であり、ストレプトアビジン-ビオチン複合体の有機溶媒、変性剤、タンパク質分解酵素、ならびに極端な温度およびpHに対する耐性により、分子生物学およびバイオナノテクノロジーにおいて広範に使用されている。強力なストレプトアビジン-ビオチン結合は、様々な生体分子を互いにまたは固体支持体に付着させることに使用することができる。しかしながら、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用を破壊するためには厳しい条件が必要であり、これは精製される目的のタンパク質を変性させる可能性がある。
【0136】
結合ドメインは、例えば、ビオチン模倣体であってもよい。「ビオチン模倣体」は、ストレプトアビジンに特異的に結合する短いペプチド配列(例えば、6から20、6から18、8から18または8から15アミノ酸)を指してもよい。
【0137】
上に記載したように、ビオチン/ストレプトアビジン相互作用の親和性は非常に高い。したがって、本発明の利点は、結合ドメインが、ビオチンそれ自体と比較してストレプトアビジンに対してより低い親和性を有するビオチン模倣体を含み得ることである。
【0138】
特に、ビオチン模倣体は、ビオチンよりも低い結合親和性でストレプトアビジンに結合することができるので、その結果、ビオチンは、ストレプトアビジン捕捉レトロウイルスベクターを溶出するために使用され得る。例えば、ビオチン模倣体は、ストレプトアビジンに、1nMから100uMのKdで結合し得る。
【0139】
ビオチン模倣体は、表1に示す配列を含んでもよい。
【0140】
【表1】
【0141】
ビオチン模倣体は、StreptagII、Flankedccstreptagおよびccstreptagの群から選択されてもよい。
【0142】
結合ドメインは、2つ以上のビオチン模倣体を含んでもよい。例えば、結合ドメインは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つのビオチン模倣体を含んでもよい。
【0143】
結合ドメインが2つ以上のビオチン模倣体を含む場合、各々の模倣体は、同じであるかまたは異なる模倣体であり得る。例えば、結合ドメインは、(例えば、配列番号43によって示されるような)リンカーによって分離された2つのStreptagIIビオチン模倣体または(例えば、配列番号44によって示されるような)リンカーによって分離された2つのFlankedccstreptagを含んでもよい。
【化15】
グルタチオンS-トランスフェラーゼ
【0144】
結合ドメインは、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)ドメインを含んでもよい。
【0145】
GSTは、解毒の目的のために、還元型のグルタチオン(GSH)が生体異物基質へコンジュゲートすることを触媒する真核生物および原核生物の第II相の代謝アイソザイムのファミリーを含む。GSTファミリーは、細胞質ゾル、ミトコンドリア、およびミクロソーム(MAPEGとしても公知である)タンパク質の3つのスーパーファミリーからな
る(Udomsinpraserら Biochem.J.(2005年)388巻(Pt 3):763~71
頁)。
【0146】
GSTタンパク質はGSHに対して強い結合親和性を有しており、この相互作用は、タンパク質混合物からGSTタグ化タンパク質を単離することを可能にするために、分子生物学において一般に使用される。
【0147】
GSTのアミノ酸配列を配列番号45に示す。
配列番号45(GST)
【0148】
【化16】
リツキシマブ結合エピトープ
【0149】
本発明のタグ化タンパク質は、リツキシマブ結合エピトープ(Rエピトープ)および/またはQbend10エピトープ(Qエピトープ)を含む結合ドメインを含んでもよい。
【0150】
リツキシマブ結合エピトープは、リツキシマブに特異的に結合するエピトープを指す。例えば、リツキシマブ結合エピトープは、CD20 B細胞抗原に基づくものであってもよい。
CD20からのリツキシマブ結合エピトープ配列は、CEPANPSEKNSPSTQYC(配列番号46)である。
【0151】
Perosaら(2007年、J.Immunol 179巻:7967~7974頁)は、抗CD2
0 mAbリツキシマブによって認識されるが、異なるモチーフに囲まれたアミノ酸を有する抗原性モチーフを持つ一連のシステイン制約の7量体環状ペプチドを記載している。下記の表に示されるような、全部で11のペプチドが記載されている:
【表2】
【0152】
Liら(2006年、CellImmunol 239巻:136~43頁)はまた、下記の配列を
含むリツキシマブのミメトープ(mimetope)を記載している:
【0153】
【化17】
【0154】
本発明のポリペプチドは、配列番号46~58からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するリツキシマブ結合エピトープまたはリツキシマブ結合活性を保持するその変異体を含む。
QBend10
【0155】
CliniMACS CD34選択システムは、細胞選択を達成するためにQBEnd10モノクローナル抗体を利用する。本発明者らは、以前にCD34抗原内からQBEnd10結合エピトープをマッピングし(国際公開第2013/153391号参照)、それが配列番号59として示されるようなアミノ酸配列を有することを決定した。
【0156】
【化18】
【0157】
本発明のタグ化タンパク質の結合ドメインは、配列番号59として示されるようなアミノ酸配列を有するQBEnd10結合エピトープまたはQBEnd10結合活性を保持するその変異体を含んでもよい。
RQR8
【0158】
タグ化タンパク質は、配列番号60として示されるような136アミノ酸配列を含むかまたはそれからなる結合ドメインを含んでもよい。
配列番号60(RQR8)
【化19】
核酸
【0159】
本発明はまた、サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質をコードする核酸または分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質をコードする核酸に関する。核酸は、分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および/またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質をコードする複数の配列を含む構築物の形態であってよい。
【0160】
本明細書中で使用される場合、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」および「核酸」という用語は、互いに同義であることが意図される。
【0161】
多くの異なるポリヌクレオチドおよび核酸が遺伝コードの縮重の結果として同じポリペプチドをコードし得ることは、当業者に理解されるであろう。さらに、当業者は、ポリペプチドが発現する任意の特定の宿主生物のコドン使用頻度(codon usage)を反映させるために、通常の技術を使用して、本明細書に記載のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響を及ぼさないヌクレオチド置換を作製し得ることが理解されるべきである。
【0162】
核酸は、DNAまたはRNAを含んでもよい。それらは、一本鎖または二本鎖であってもよい。それらはまた、それらの中に合成ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドへの多くの異なるタイプの修飾が、当技術分野で公知である。これらには、メチルホスホネートおよびホスホロチオエート骨格、分子の3’および/または5’末端におけるアクリジンまたはポリリシン鎖の付加が含まれる。本明細書中に記載されるように使用する目的で、ポリヌクレオチドは、当技術分野で利用可能な任意の方法によって改変され得ることが理解されるべきである。このような修飾は、目的のポリヌクレオチドのin vivo活性または寿命を増強するために行うことができる。
【0163】
ヌクレオチド配列に関連する「変異体」、「ホモログ」または「誘導体」という用語は、配列からの、または配列への1つ(または複数の)の核酸の任意の置換、変異、修飾、置き換え、欠失または付加を含む。
【0164】
核酸は、分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質をコードする1つまたは複数の配列および/またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質をコードする1つまたは複数の配列を含むポリペプチドを産生し得る。切断部位は、ポリペプチドが産生されると、外的な切断活性を必要とすることなく受容体構成成分およびシグナル伝達構成成分に直ちに切断されるような、自己切断であってもよい。
【0165】
口蹄疫ウイルス(FMDV)2a自己切断ペプチドおよび様々な変異体ならびに2A様ペプチドを含む、様々な自己切断部位が公知である。このペプチドは、配列番号34または35として示される配列を有し得る。
【0166】
【化20】
【0167】
共発現配列は、内部リボソーム進入配列(RES)であってもよい。共発現配列は、内部プロモーターであってもよい。
ベクター
【0168】
本発明はまた、分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質をコードする1つもしくは複数の配列および/またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質をコードする1つもしくは複数の配列を含むベクターまたはベクターのキットを提供する。そのようなベクターは、プロデューサー細胞またはパッケージング細胞などの宿主細胞に核酸配列(複数可)を導入するために使用することができる。
【0169】
ベクターは、例えば、プラスミドまたはレトロウイルスベクターもしくはレンチウイルスベクターなどのウイルスベクター、またはトランスポゾンに基づくベクターもしくは合成mRNAであってもよい。
【0170】
ベクターは、宿主細胞にトランスフェクトまたは形質導入することができる。
方法
【0171】
本発明はまた、T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞が、1つまたは複数の分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および必要に応じて1つまたは複数のサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質によって活性化されるように、T細胞またはNK細胞に、本発明に記載のレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを形質導入するステップを含む、活性化されたトランスジェニックT細胞またはNK細胞を作製するための方法を提供する。
【0172】
T細胞またはNK細胞(NK call)に形質導入および活性化するための方法は、48時間またはそれ未満、例えば24時間から48時間の間の時間かかり得る。
【0173】
本発明は、実施例によりここでさらに記載されるが、それは本発明を実施するにあたって当業者を支援することに役立てることを意味するものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものでは決してない。
【実施例0174】
(実施例1)ビリオン表面上にOKT3を提示するウイルスベクターの産生
パッケージング細胞上のOKT3 scFvの発現が、T細胞標的の分裂促進性活性化を引き起こすウイルスベクターの産生をもたらすことを実証する初期の概念証明実験を行った。
【0175】
OKT3 scFv 293T細胞は、標的T細胞の活性化および形質導入を引き起こすレンチウイルスベクターを産生した。この分裂促進特性は、レンチウイルスヘルパー構成成分の存在に依存していた。すなわち、この効果は、パッケージング細胞上清の非特異的特性によるものではなかった(図2)。
【0176】
CD8ストークを介するか、またはレンチウイルスに組み込まれ分裂促進刺激を引き起こす、IgG1ヒンジの能力を介して膜に付着したOKT3 scFvの比較もまた行ったところ、2つのスペーサーの間に差は認められなかった。
【0177】
表面結合型OKT3を安定に発現する293T細胞に、レンチウイルスgagpol、RD-PRO env、導入ベクターまたはレンチウイルスrev発現プラスミドと併せて3つのプラスミドの全てをトランスフェクトした。その後の上清を初代ヒトT細胞に適用した。続いて、T細胞を以下のパラメーターを用いてフローサイトメトリーによって試験した:T細胞活性化を測定するためのCD25;導入遺伝子(Fcスペーサーを有するCAR)を検出するための抗Fc;周期中の細胞を決定するためのki67(図3)。gagpolが供給された条件だけが有意な分裂促進刺激をもたらした。
(revと共に)全てのプラスミドが供給された条件のみが、T細胞の分裂促進刺激および形質導入をもたらした。
【0178】
異なるレンチウイルスのシュードタイピングが分裂促進効果を支持するか否かを決定するために、さらなる実験も行った。膜結合型OKT3を安定に発現する293T細胞に、レンチウイルスの導入ベクター、レンチウイルスgagpol、revならびに異なるenvプラスミド:すなわちVSV-G、RD-PRO、Ampho、GALVおよび麻疹M/Hをトランスフェクトした。その後の上清を初代ヒトT細胞に適用した。その後、細胞をki67で染色し、フローサイトメトリーで試験した。全ての偽型は分裂促進効果を支持したが、麻疹のシュードタイピングでは効果は低下したようであった(図4)。
(実施例2)2つの別個の分裂促進刺激をウイルスベクターに組み込むことができる
【0179】
抗体15E8からの抗CD28活性化scFvを含む追加の構築物を生成した。(上に記載した)OKT3 scFvカセットはeGFPを発現し、15E8 scFvカセットは青色蛍光タンパク質eBFP2を発現した。
【0180】
高レベルのeGFPおよびeBFP2を共発現した293T細胞を生成し、293T細胞の表面上のOKT3および15E8の両方の発現の成功を実証した。
【0181】
レンチウイルス上清を、野生型293T細胞、OKT3 scFvだけを発現する293T細胞、およびOKT3および15E8の両方を発現する293T細胞から生成した。活性化レベルおよび形質導入の効率は、2つの刺激でより大きかった(図6)。
(実施例3)ガンマ-レトロウイルスベクターにおける機能性の実証
【0182】
膜結合型OKT3を安定に発現する293T細胞に、CAR、ガンマ-レトロウイルスgagpol発現プラスミドおよびRD114発現プラスミドをコードするガンマ-レトロウイルス伝達ベクターをトランスフェクトした。その後の上清を初代ヒトT細胞に適用した。T細胞を抗Fc、抗CD25およびki67で染色し、フローサイトメトリーで試験した。分裂促進刺激を適用しなかったが、T細胞は活性化され、サイクルし、導入遺伝子を発現していた(図5)。
(実施例4)レンチウイルスベクターに組み込まれたペプチドの組合せ
【0183】
異なる要素の組合せをパッケージング細胞株に組み込んだ。これには、スーパーアゴニスト抗CD28 mAbであるTGN1412 scFvが含まれた。サイトカインIL7およびIL15、ならびにOX40Lおよび41BBLも、下記のように様々な組合せで組み込んだ:
1.(無し)
2.OKT3
3.OKT3+15E8
4.OKT3+TGN1412
5.OKT3+15E8+OX40L+41BBL
6.OKT3+15E8+OX40L+41BBL+mIL15
7.OKT3+15E8+OX40L+41BBL+mIL7
【0184】
これらの異なる293T細胞から生成されたレンチウイルスベクターを、T細胞に刺激/形質導入するために使用した。
【0185】
分裂促進性の可溶性抗体OKT3およびCD28.2+/-IL2を併せた遺伝子操作をしていない293T細胞から生成されたベクターを対照として使用した。5日目の活性化(CD25)、増殖性画分(Ki67)および絶対数を測定した(図7から10)。
【0186】
1つではなく2つのシグナルを組み込むという顕著な利点があることが再び注目された。ビリオン表面に提示された分裂促進性ペプチドを用いた活性化が、T細胞に可溶性抗体を添加することによって達成された活性化よりも著しく優れていることもまた注目された。
【0187】
サイトカインでのmAb活性化のものと同様の増殖レベルも達成された。
方法論
分裂促進性抗体のVHおよびVLをscFvとしてクローニングし、スペーサードメイン、TMドメインおよびポーラーアンカー(polar anchor)(上記の配列番号1から3)と接続した。
【0188】
サイトカインは、スペーサー、TMドメインおよびポーラーアンカー(上記の配列番号32および33)とインフレームで接続した。
【0189】
41BBLおよびOX40Lのような天然の共刺激分子については、これらはその天然の形態でクローニングする。
【0190】
上記のタイプの膜結合型タンパク質の各々は、その後、293T細胞上で、高レベルで安定に発現することができた。
【0191】
標準的な一過性トランスフェクションを使用して、これらの293T細胞からウイルスベクターを作製した。レンチウイルスベクターについては、導入ベクター、rev発現ベクター、レンチgagpol発現ベクターおよびRD-PRO発現ベクターを共トランスフェクトした。ガンマレトロウイルスベクターについては、293T細胞に、導入ベクター、MoMLV gagpolおよびRD114発現プラスミドを共トランスフェクトした。上清は、遠心分離および0.45uMフィルターを用いた濾過により清澄化した。このウイルスをレトロネクチンプレート上の初代ヒトT細胞に適用した。IL2はいくつかの条件において添加されるか、または他の条件においては、サイトカインは添加されない。
(実施例5)レンチウイルスベクターで刺激した細胞と抗CD3/抗CD28抗体でコーティングしたビーズで刺激した細胞からのT細胞サブセット表現型の比較
【0192】
単核細胞を、標準的な技術を用いて末梢血液から単離した。その後、末梢血単核細胞(PBMC)を、
(i)非改変レンチウイルスベクターおよびIL15/IL7の存在下、3:1の比で抗CD3/抗CD28抗体でコーティングしたビーズ(Dynabeads(登録商標)ヒトTアクチベータCD3/CD28);または
(ii)IL15およびIL7の存在下、レトロネクチンでコーティングしたプレートの
上でのOKT3および15E8Bを発現するレンチウイルスベクター(実施例4に記載の組合せ3)
のいずれかで処理した。
48時間後、細胞を収集し、下記のようにT細胞表現型抗体のパネルで染色した:
・ aCD4-BV650
・ aCD8-PE.Cy7
・ aCD45RO-BV605
・ aCD45RA-FITC
・ aCD95-PB
・ aCD197-BV685
【0193】
T細胞サブセットをFACSにより分析し、その結果を図11に要約する。CD4+およびCD8+T細胞サブセットの両方について、ウイルスで刺激された細胞は、抗体でコーティングされたビーズで刺激された細胞よりも高いナイーブT細胞(TnおよびTscm)の割合を示した。
【0194】
上記の明細書文中に述べられた全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の範囲および主旨から逸脱することのない、本発明の記載された方法およびシステムの様々な改変および変更は、当業者には明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して記載されているが、特許請求される本発明は、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際に、分子生物学、細胞免疫学または関連分野の当業者に明らかである本発明を実施するために記載された形式の様々な改変は、以下の特許請求の範囲内にあることが意図される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
(i)分裂促進ドメインおよび膜貫通ドメインを含む分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質;ならびに/または
(ii)サイトカインドメインおよび膜貫通ドメインを含む、サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質
を含むウイルスエンベロープを有するレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであって、前記分裂促進性またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質の一部ではない、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクター。
(項目2)
CD3、CD28、CD134またはCD137に結合する分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質を含む、項目1に記載のウイルスベクター。
(項目3)
前記分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質が、OKT3、15E8、TGN1412、OX40Lまたは41BBLからの結合ドメインを含む、項目2に記載のウイルスベクター。
(項目4)
前記ウイルスエンベロープ中に2つまたはそれを超える分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質を含む、項目1に記載のウイルスベクター。
(項目5)
CD3に結合する第1の分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質およびCD28に結合する第2の分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質を含む、項目4に記載のウイルスベクター。
(項目6)
IL2、IL7およびIL15から選択されるサイトカインを含む、サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質を含む、前述の項目のいずれかに記載のウイルスベク
ター。
(項目7)
偽型ウイルスベクターを与える異種のウイルスエンベロープ糖タンパク質を含む、前述の項目のいずれかに記載のウイルスベクター。
(項目8)
前記エンベロープ糖タンパク質が、RD114またはその変異体の1つであるVSV-G、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、もしくはアンホトロピックエンベロープ、麻疹エンベロープまたはヒヒレトロウイルスエンベロープ糖タンパク質である、項目7に記載のウイルスベクター。
(項目9)
ウイルスエンベロープはまた、
(iii)捕捉部分に結合する結合ドメイン;および
膜貫通ドメイン
を含むタグ化タンパク質を含み、前記タグ化タンパク質は前記タグ化タンパク質の前記捕捉部分への結合を介した細胞上清からの前記ウイルスベクターの精製を容易にするタグ化タンパク質も含む、前述の項目のいずれかに記載のウイルスベクター。
(項目10)
前記タグ化タンパク質の前記結合ドメインが、1つまたは複数のストレプトアビジン結合エピトープを含む、項目9に記載のウイルスベクター。
(項目11)
前記ストレプトアビジン結合エピトープがビオチン模倣体である、項目10に記載のウイルスベクター。
(項目12)
前記ビオチン模倣体が、パッケージング細胞によって産生されたストレプトアビジン捕捉レトロウイルスベクターを溶出するためにビオチンを使用することができるように、ビオチンよりも低い親和性でストレプトアビジンに結合する、項目11に記載のウイルスベクター。
(項目13)
前記ビオチン模倣体が、StreptagII(配列番号36)、Flankedccstretag(配列番号37)およびccstreptag(配列番号38)の群から選択される、項目12に記載のウイルスベクター。
(項目14)
T細胞受容体またはキメラ抗原受容体をコードする核酸配列を含む、前述の項目のいずれかに記載のウイルスベクター。
(項目15)
ウイルス様粒子(VLP)である、前述の項目のいずれかに記載のウイルスベクター。(項目16)
細胞表面で、
(i)分裂促進ドメインおよび膜貫通ドメインを含む分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質;ならびに/または
(ii)サイトカインドメインおよび膜貫通ドメインを含む、サイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質
を発現し、その結果、宿主細胞によって産生されるレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが項目1から8までのいずれかに定義されたものとなる、宿主細胞。
(項目17)
細胞表面で、
(iii)捕捉部分に結合する結合ドメイン;および
膜貫通ドメイン
を含むタグ化タンパク質も発現し、前記タグ化タンパク質が、前記タグ化タンパク質の前記捕捉部分への結合を介した細胞上清からの前記ウイルスベクターの精製を容易にし、そ
の結果、前記パッケージング細胞によって産生されたレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが、項目9から14までのいずれかに定義されたものとなる、項目16に記載の宿主細胞。
(項目18)
下記の遺伝子:gag、pol、envおよび/またはrevのうちの1つまたは複数も含む、項目16または17に定義された宿主細胞である、パッケージング細胞。
(項目19)
gag、pol、envおよび必要に応じてrev遺伝子を含み、ならびにレトロウイルスゲノムまたはレンチウイルスゲノムも含む、項目16または17に定義された宿主細胞である、プロデューサー細胞。
(項目20)
項目16もしくは17に記載の宿主細胞、項目18に記載のパッケージング細胞または項目19に記載のプロデューサー細胞を作製するための方法であって、分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および/またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質をコードする核酸を細胞に形質導入またはトランスフェクトするステップを含む方法。
(項目21)
項目17から19までのいずれかに記載の細胞内にレトロウイルスゲノムまたはレンチウイルスゲノムを発現させるステップを含む、項目1から15までのいずれかに記載のウイルスベクターを作製するための方法。
(項目22)
T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞が、1つもしくは複数の分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および/または1つもしくは複数のサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質によって活性化されるように、項目1から15までのいずれかに記載のウイルスベクターを前記T細胞またはNK細胞に形質導入するステップを含む、活性化されたトランスジェニックT細胞またはNK細胞を作製するための方法。
(項目23)
(i)項目16または17に定義された宿主細胞;
(ii)gag、pol、envおよび必要に応じてrevを含む核酸;ならびに
(iii)レトロウイルスゲノム
を含む、項目1から15までのいずれかに定義されたレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを作製するためのキット。
(項目24)
(i)項目18に定義されたパッケージング細胞;および
(ii)レトロウイルスベクターゲノムまたはレンチウイルスベクターゲノム
を含む、項目1から15までのいずれかに定義されたレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを作製するためのキット。
(項目25)
(i)分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および/またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質をコードする1つまたは複数の核酸;ならびに
(ii)レトロウイルスgag、pol、envおよび必要に応じてrev遺伝子を含む核酸
を含む、項目18に記載のパッケージング細胞を作製するためのキット。
(項目26)
(i)分裂促進性T細胞活性化膜貫通タンパク質および/またはサイトカインに基づくT細胞活性化膜貫通タンパク質をコードする1つまたは複数の核酸;
(ii)レトロウイルスgag、pol、envおよび必要に応じてrev遺伝子を含む核酸;ならびに
(iii)レトロウイルスベクターゲノムまたはレンチウイルスベクターゲノム
を含む、項目19に記載のプロデューサー細胞を作製するためのキット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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【外国語明細書】