(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060015
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】眼科用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/10 20170101AFI20230420BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230420BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230420BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230420BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230420BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230420BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230420BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230420BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230420BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230420BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230420BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230420BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230420BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
A61K47/10
A61P27/02
A61K9/08
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/44
A61K47/34
A61K47/22
A61K47/18
A61K47/14
A61K47/32
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029997
(22)【出願日】2023-02-28
(62)【分割の表示】P 2021112827の分割
【原出願日】2015-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2014119880
(32)【優先日】2014-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015083700
(32)【優先日】2015-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水垂 陽子
(72)【発明者】
【氏名】松村 泰子
(57)【要約】
【課題】眼科用組成物中のテルペノイド類の含量低下が抑制され、残香性の高い眼科用組成物を提供する。
【解決手段】(A)多糖類;単糖類;ビタミンB
12類、ビタミンB
2類、ビタミンA類、およびパンテノールからなる群より選択される1種以上のビタミン類;植物油、動物油、および鉱物油からなる群より選択される1種以上の油分;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、およびステアリン酸ポリオキシルからなる群より選択される1種以上の界面活性剤;抗アレルギー成分;防腐成分;増粘成分;多価アルコール;消炎成分;充血除去成分;抗酸化成分;並びに、抗菌成分からなる群より選択される1種以上、並びに、(B)テルペノイド類を含有する眼科用組成物を、該眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がポリブチレンテレフタレートを含有する樹脂で成形された容器に収容することによって、テルペノイド類の含量低下が抑制された眼科用組成物を提供することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)多糖類;単糖類;ビタミンB12類、ビタミンB2類、ビタミンA類、およびパンテノールからなる群より選択される1種以上のビタミン類;植物油、動物油、および鉱物油からなる群より選択される1種以上の油分;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、およびステアリン酸ポリオキシルからなる群より選択される1種以上の界面活性剤;トラニラスト、ケトチフェン、ジフェンヒドラミン、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の抗アレルギー成分;クロルヘキシジン、ソルビン酸、ポリヘキサメチレンビグアニド、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の防腐成分;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ビニル系高分子化合物、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の増粘成分;多価アルコール;ベルベリン、アズレンスルホン酸、アラントイン、硫酸亜鉛、プラノプロフェン、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の消炎成分;ナファゾリンおよび/またはその塩である充血除去成分;ジブチルヒドロキシトルエンである抗酸化成分;並びに、スルファメトキサゾールおよび/またはその塩である抗菌成分;からなる群より選択される1種以上、並びに(B)テルペノイド類を含有する眼科用組成物であって、
該眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がポリブチレンテレフタレートを含有する樹脂で成形された容器に収容してなる眼科用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用組成物、眼科用組成物中のテルペノイド類の含量低下を抑制する作用を付与する方法、眼科用組成物の臭気を抑制する作用を付与する方法、芳香性持続剤に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科用組成物には、清涼感等の官能を付与する目的などで、メントールやカンフル等のテルペノイド類を配合することがある。このような眼科用組成物は、樹脂製の容器材料に収容されて製品化されることもある。眼科用組成物中のテルペノイド類は、保存中にしだいに含量が低下することが知られている。
【0003】
多種の樹脂の中で、ポリエステル系樹脂はテルペノイド類を配合した眼科用組成物の容器に用いられることが多い。テルペノイド類等は脂溶性であることから、脂溶性成分に低吸着性であるポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を含有した容器に収容した液剤が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、テルペノイド類の含量低下を防止するために、ポリオレフィン、飽和ポリエステル、ポリカーボネート等のプラスチック材質を用いた容器に、油、及び界面活性剤を含有させた水中油型エマルションが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-68963号公報
【特許文献2】特許第4438908号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、眼科用組成物中のテルペノイド類の含量の低下を防ぐことは未だに十分ではなく、さらなる改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、特定の多糖類、ビタミン類、油分、界面活性剤、抗アレルギー成分、防腐成分、増粘成分、多価アルコール、消炎成分、充血除去成分、抗酸化成分および/または抗菌成分と、テルペノイド類とを眼科用組成物に含有させ、さらに、該眼科用組成物と接触する面の少なくとも一部がポリブチレンテレフタレート(以下、本明細書でPBTとも記載する)樹脂を含有する容器に収容することによって、テルペノイド類の含量の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]
(A)多糖類;単糖類;ビタミンB12類、ビタミンB2類、ビタミンA類、およびパンテノールからなる群より選択される1種以上のビタミン類;植物油、動物油、および鉱物油からなる群より選択される1種以上の油分;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、およびステアリン酸ポリオキシルからなる群より選択される1種以上の界面活性剤;トラニラスト、ケトチフェン、ジフェンヒドラミン、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の抗アレルギー成分;クロルヘキシジン、ソルビン酸、ポリヘキサメチレンビグアニド、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の防腐成分;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ビニル系高分子化合物、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の増粘成分;多価アルコール;ベルベリン、アズレンスルホン酸、アラントイン、硫酸亜鉛、プラノプロフェン、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の消炎成分;ナファゾリンおよび/またはその塩である充血除去成分;ジブチルヒドロキシトルエンである抗酸化成分;並びに、スルファメトキサゾールおよび/またはその塩である抗菌成分;からなる群より選択される1種以上、並びに(B)テルペノイド類を含有する眼科用組成物であって、
該眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がポリブチレンテレフタレートを含有する樹脂で成形された容器に収容してなる眼科用組成物;
[2]
前記(A)成分のうち、多糖類がアルギン酸、ジェランガム、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上;単糖類がグルコース;ビタミン類がシアノコバラミン、レチノール、パンテノール、フラビンアデニンジヌクレオチド、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上;油分がゴマ油、ヒマシ油、ラノリン、ワセリン、および流動パラフィンからなる群より選択される1種以上;増粘成分がカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上;多価アルコールが、プロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、およびキシリトールからなる群より選択される1種以上である、[1]記載の眼科用組成物;
[3]
さらに、エデト酸ナトリウムを含有する、項[1]または[2]記載の眼科用組成物;
[4]
眼科用組成物中に、(A)多糖類;単糖類;ビタミンB12類、ビタミンB2類、ビタミンA類、およびパンテノールからなる群より選択される1種以上のビタミン類;植物油、動物油、および鉱物油からなる群より選択される1種以上の油分;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、およびステアリン酸ポリオキシルからなる群より選択される1種以上の界面活性剤;トラニラスト、ケトチフェン、ジフェンヒドラミン、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の抗アレルギー成分;クロルヘキシジン、ソルビン酸、ポリヘキサメチレンビグアニド、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の防腐成分;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ビニル系高分子化合物、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の増粘成分;多価アルコール;ベルベリン、アズレンスルホン酸、アラントイン、硫酸亜鉛、プラノプロフェンおよびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の消炎成分;ナファゾリンおよび/またはその塩である充血除去成分;ジブチルヒドロキシトルエンである抗酸化成分;並びに、スルファメトキサゾールおよび/またはその塩である抗菌成分;からなる群より選択される1種以上、並びに(B)テルペノイド類を共存させ、該眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がポリブチレンテレフタレートを含有する樹脂で成形された容器に収容することにより、該眼科用組成物中のテルペノイド類の含量低下を抑制する作用を付与する方法;
[5]
眼科用組成物中に、(A)多糖類;単糖類;ビタミンB12類、ビタミンB2類、ビタミンA類、およびパンテノールからなる群より選択される1種以上のビタミン類;植物油、動物油、および鉱物油からなる群より選択される1種以上の油分;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、およびステアリン酸ポリオキシルからなる群より選択される1種以上の界面活性剤;トラニラスト、ケトチフェン、ジフェンヒドラミン、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の抗アレルギー成分;クロルヘキシジン、ソルビン酸、ポリヘキサメチレンビグアニド、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の防腐成分;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ビニル系高分子化合物、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の増粘成分;多価アルコール;ベルベリン、アズレンスルホン酸、アラントイン、硫酸亜鉛、プラノプロフェン、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の消炎成分;ナファゾリンおよび/またはその塩である充血除去成分;ジブチルヒドロキシトルエンである抗酸化成分;並びに、スルファメトキサゾールおよび/またはその塩である抗菌成分;からなる群より選択される1種以上、並びに(B)テルペノイド類を共存させ、該眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がポリブチレンテレフタレートを含有する樹脂で成形された容器に収容することにより、該眼科用組成物の臭気を抑制する作用を付与する方法;
[6]
眼科用ポリブチレンテレフタレート含有樹脂容器に収容され、(A)多糖類;単糖類;ビタミンB12類、ビタミンB2類、ビタミンA類、およびパンテノールからなる群より選択される1種以上のビタミン類;植物油、動物油、および鉱物油からなる群より選択される1種以上の油分;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、およびステアリン酸ポリオキシルからなる群より選択される1種以上の界面活性剤;トラニラスト、ケトチフェン、ジフェンヒドラミン、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の抗アレルギー成分;クロルヘキシジン、ソルビン酸、ポリヘキサメチレンビグアニド、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の防腐成分;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ビニル系高分子化合物、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の増粘成分;多価アルコール;ベルベリン、アズレンスルホン酸、アラントイン、硫酸亜鉛、プラノプロフェン、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の消炎成分;ナファゾリンおよび/またはその塩である充血除去成分;ジブチルヒドロキシトルエンである抗酸化成分;並びに、スルファメトキサゾールおよび/またはその塩である抗菌成分からなる群より選択される1種以上、並びに(B)テルペノイド類を含有する、芳香性持続剤;を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、眼科用組成物中のテルペノイド類の含量低下を抑制することができる。また、テルペノイド類を含有する眼科用組成物に、テルペノイド類の含量低下の抑制作用を付与する方法を提供することができる。
【0010】
本発明の眼科用組成物、テルペノイド類の含量低下の抑制方法及び製造方法は、後述する成分や濃度を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】眼科用組成物にPBT含有樹脂片を浸漬させて熱処理を行う前後におけるl-メントールの残存率を示したグラフである。
【
図2】眼科用組成物にPBT含有樹脂片を浸漬させて熱処理を行う前後におけるl-メントールの残存率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、w/vは、全体の容量に対する重量の割合をいう。w/v%は、g/100mLと同義である。本発明において、「配合量」は、「含有量」と同義である。
【0013】
本発明者らは、容器に収容された眼科用組成物がテルペノイド類を含有する場合、保存中にテルペノイド類の官能が失われ、臭気が発生する場合があることを新たに見出した。本発明の眼科用組成物は、このような問題を解決し、眼科用組成物の使用後又は保存後の香りの変質を抑制することが望める。さらに、該眼科用組成物の使用後又は保存後の臭気を抑制することが望める。
【0014】
本発明の眼科用組成物は、(A)多糖類;単糖類;ビタミンB12類、ビタミンB2類、ビタミンA類、およびパンテノールからなる群より選択される1種以上のビタミン類;植物油、動物油、および鉱物油からなる群より選択される1種以上の油分;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、およびステアリン酸ポリオキシルからなる群より選択される1種以上の界面活性剤;トラニラスト、ケトチフェン、ジフェンヒドラミン、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の抗アレルギー成分;クロルヘキシジン、ソルビン酸、ポリヘキサメチレンビグアニド、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の防腐成分;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ビニル系高分子化合物、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の増粘成分;多価アルコール;ベルベリン、アズレンスルホン酸、アラントイン、硫酸亜鉛、プラノプロフェン、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の消炎成分;ナファゾリンおよび/またはその塩である充血除去成分;ジブチルヒドロキシトルエンである抗酸化成分;並びに、スルファメトキサゾールおよび/またはその塩である抗菌成分;からなる群より選択される1種以上、並びに
(B)テルペノイド類を含有する。このような本発明の眼科用組成物は、該眼科用組成物と接触する面の少なくとも一部又は全部が、PBTを含有する樹脂で成形された容器に収容されてなる。
【0015】
本発明において、眼科用組成物とは、点眼剤(点眼液又は点眼薬と同義)、コンタクトレンズ用点眼剤、人工涙液、洗眼剤(洗眼液又は洗眼薬と同義)、コンタクトレンズ装着剤、又はコンタクトレンズケア用品(消毒剤、保存剤、洗浄剤等を含む)、眼軟膏等の眼科関連のあらゆる組成物を示す。
【0016】
本発明において、これら(A)成分は単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(A)成分は天然から得られるものや化学的に合成したものであっても用いることができる。(A)成分はいずれも市販のものを利用することもできる。
【0017】
本発明において、(A)成分の多糖類とは、複数の単糖が結合した重合体の総称である。本発明において、多糖類は、自然界に存在する多糖、及び化学的に合成され得る多糖をいう。限定はされないが、多糖類としては、酸性多糖類が好ましい。
【0018】
酸性多糖類とは、多糖類のうち、酸性基を包含するものを指す。ここで、酸性基としては、限定はされないが、特にはカルボキシル基又は硫酸基を指す。繰り返し構造の構成成分は、限定はされないが、グルクロン酸、イズロン酸、マンヌロン酸、グルロン酸等のウロン酸、ガラクトサミンやグルコサミン等のアミノ糖、ガラクトース、マンノース、グルコース、ラムノース等が例としてあげられる。
【0019】
このような酸性多糖類としては、限定はされないが、ジェランガム、フコイダン、ウロン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、およびそれらの塩等が例として挙げられる。限定はされないが、好ましくは、ジェランガム、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、およびそれらの塩である。
【0020】
(A)成分の多糖類としては、天然から得られるものや、化学的に合成したものであっても用いることができ、由来は特に限定されない。(A)成分の多糖類は、市販のものを利用することもできる。ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、鉄、マンガン等の金属塩等、その他の生理学的又は薬学的に許容される塩の形態でも用いることができる。このような塩として、好ましくはアルカリ金属塩であり、特に好ましくはナトリウム塩である。また、アセチル化反応物を用いることができる。これらの多糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。テルペノイド類の含量低下を効果的に抑制する等の観点から、(A)成分の多糖類としては、ジェランガム、アルギン酸、アルギン酸のアルカリ金属塩、コンドロイチン硫酸のアルカリ金属塩、ヒアルロン酸のアルカリ金属塩が好ましく、特にコンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムが好ましい。
【0021】
(A)成分の多糖類の分子量は、繰り返し単位の数や、種類によって様々であり、限定はされないが、重量平均分子量において数百~数百万であり得る。テルペノイド類の含量低下を効果的に抑制する等の本発明による効果をより顕著に奏する観点から、(A)成分の多糖類の分子量は、重量平均分子量において、0.01万~500万であることが好ましく、0.05万~250万であることがさらに好ましい。より具体的に、例えば、コンドロイチン硫酸又はその塩の重量平均分子量は0.1万~300万であることが好ましく、0.5万~150万であることがより好ましく、1万~50万であることがさらに好ましい。より具体的に、例えば、ヒアルロン酸又はその塩の重量平均分子量は10万~500万であることが好ましく、50万~400万であることがより好ましく、60万~250万であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明において、(A)成分の単糖類には、グルコース(ブドウ糖)、リボース、エリトロース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース等のアルドースの他、リブロース、プシコース、フルクトース、ソルボース及びタガトース等のケトースも含まれる。これらの単糖類は、d体、l体又はdl体のいずれでも使用することができる。テルペノイド類の含量低下を効果的に抑制する等の観点から、(A)成分の単糖類としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースが好ましく、特には、グルコースであることが好ましい。これらの単糖類は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このような単糖類は、いずれも市販のものを利用することもできる。
【0023】
本発明において、(A)成分のビタミン類は、本発明の効果が奏される限り水溶性ビタミンでも脂溶性ビタミンであってもよい。
【0024】
(A)成分のビタミン類は、具体的には、限定はされないが、脂溶性ビタミンとしては、例えば、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、レチナール、レチノイン酸、レチノイン酸メチル、レチノイン酸エチル、レチノイン酸レチノール、ビタミンA脂肪酸エステル、d-δ-トコフェリルレチノエート、α-トコフェリルレチノエート、β-トコフェリルレチノエート、カロチン、デヒドロレチナール、リコピン、およびそれらの塩等のビタミンA類からなる群より選択される1種以上であり得る。水溶性ビタミンとしては、例えば、リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビン5’-リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル、およびそれらの塩等のビタミンB2類;シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン、およびそれらの塩等のビタミンB12類;およびパントテニルアルコール(パンテノール);からなる群より選択される1種以上であり得る。
【0025】
本発明による効果をより顕著に奏する観点から、(A)成分のビタミン類は、特には、シアノコバラミン、レチノール、パンテノール、フラビンアデニンジヌクレオチド、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、シアノコバラミン、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール、パンテノール、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウムからなる群より選択される1種以上であることが特に好ましい。ビタミンA類としては、例えば、0.550μgがビタミンA1I.U.である、DSM社製のレチノールパルミチン酸エステル等を挙げることができる。なお、I.U.とは、第十六改正日本薬局方ビタミンA定量法等に記載の手法により求められる国際単位を意味する。これらのビタミン類は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。このようなビタミン類は、いずれも市販のものを利用することもできる。
【0026】
本発明において、(A)成分の油分は、植物油、動物油、および鉱物油からなる群より選択される1種以上の油分であり得る。(A)成分として油分を使用する場合、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、植物油および/又は鉱物油がより好ましい。
【0027】
ここで、植物油とは、植物を原料とする油であれば特に限定されず、これらの誘導体であってもよい。トリグリセリドを含有する植物油が好ましい。(A)成分の植物油は、具体的には、限定はされないが、ゴマ油、ヒマシ油、ダイズ油、ラッカセイ油、アルモンド油、小麦胚芽油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油またはこれらの誘導体等が挙げられる。テルペノイド類の含量低下を効果的に抑制する等の観点から、(A)成分の植物油としては、ゴマ油、ヒマシ油、ダイズ油またはこれらの誘導体が好ましく、特には、ゴマ油、ヒマシ油であることが好ましい。これらの植物油は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。このような植物油は、いずれも市販のものを利用することもできる。
【0028】
本発明において、(A)成分の動物油とは、動物を原料とする油であれば特に限定されず、これらの誘導体であってもよい。(A)成分の動物油は、限定はされないが、スクワラン、ラノリン、オレンジラフィー油、馬油、鯨油、肝油、ミンク油、卵黄油、牛脂、乳脂、豚油等が挙げられる。(A)成分の動物油としては、スクワラン、精製ラノリン、卵黄油、またはこれらの誘導体が好ましく、特には、スクワラン、精製ラノリンであることが好ましい。これらの動物油は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。このような動物油は、いずれも市販のものを利用することもできる。
【0029】
本発明において、(A)成分の鉱物油とは、天然の石油由来の炭化水素油で、精製されて得られる液状及びグリース状の化学物質をいう。(A)成分の鉱物油は、具体的には、限定はされないが、パラフィン油、流動パラフィン、ワセリン等が挙げられ、テルペノイド類の含量低下を効果的に抑制する等の観点から、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、白色ワセリンが好ましい。これらの鉱物油は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。このような鉱物油は、いずれも市販のものを利用することもできる。
【0030】
本発明において、(A)成分の界面活性剤は、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、およびステアリン酸ポリオキシルからなる群より選択される少なくとも1種以上であり得る。
【0031】
このような界面活性剤として、具体的には、ポロクサマー407、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポロクサマー188、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール、テトロニック等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンヒマシ油3、ポリオキシエチレンヒマシ油4、ポリオキシエチレンヒマシ油6、ポリオキシエチレンヒマシ油7、ポリオキシエチレンヒマシ油10、ポリオキシエチレンヒマシ油13.5、ポリオキシエチレンヒマシ油17、ポリオキシエチレンヒマシ油20、ポリオキシエチレンヒマシ油25、ポリオキシエチレンヒマシ油35、ポリオキシエチレンヒマシ油40、ポリオキシエチレンヒマシ油50、ポリオキシエチレンヒマシ油60等のポリオキシエチレンヒマシ油;ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸ポリオキシル140等のステアリン酸ポリオキシルなどが挙げられる。なお、括弧内等の数字は平均付加モル数を示す。
【0032】
これらの界面活性剤のうち、特には、ポロクサマー407、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンヒマシ油3、ポリオキシエチレンヒマシ油10、ポリオキシエチレンヒマシ油35、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸ポリオキシル140が好ましく、ポロクサマー407、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンヒマシ油10、ポリオキシエチレンヒマシ油35、ステアリン酸ポリオキシル40がより好ましい。ポリオキシエチレンヒマシ油は、ヒマシ油に酸化エチレンが付加重合した化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数により種々の化合物が知られている。(A)成分として用いられるポリオキシエチレンヒマシ油の酸化エチレンの平均付加モル数は、特に限定はされないが、例えば、2~70モルとすることができ、好ましくは、2~60、さらに好ましくは3~50、特に好ましくは3~40とすることができる。(A)成分として用いられるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの酸化エチレンの平均付加モル数は、特に限定はされないが、例えば、10~350モルとすることができ、好ましくは、30~300、さらに好ましくは50~300、特に好ましくは100~250とすることができる。また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの酸化プロピレンの平均付加モル数は、特に限定はされないが、例えば、1~130モルとすることができ、好ましくは、5~120、さらに好ましくは10~100、特に好ましくは10~80とすることができる。(A)成分として用いられるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の酸化エチレンの平均付加モル数は、特に限定はされないが、3~120モルとすることができ、好ましくは20~100、さらに好ましくは30~80とすることができる。(A)成分として用いられるステアリン酸ポリオキシルの酸化エチレンの平均付加モル数は、特に限定はされないが、3~200モルとすることができ、好ましくは20~180、さらに好ましくは30~160とすることができる。
【0033】
本発明において、(A)成分は、トラニラスト、ケトチフェン、ジフェンヒドラミン、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の抗アレルギー成分であり得る。ここで、特には、トラニラスト、フマル酸ケトチフェン、塩酸ジフェンヒドラミンが好ましい。
【0034】
本発明において、(A)成分は、クロルヘキシジン、ソルビン酸、ポリヘキサメチレンビグアニドおよびその塩からなる群より選択される1種以上の防腐成分であり得る。防腐成分の中でも、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ポリヘキサメチレンビグアニドが好ましい。
【0035】
本発明において、(A)成分の増粘成分は、セルロース系高分子化合物でもビニル系高分子化合物であってもよい。セルロース系高分子化合物としては、特に限定はされないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースおよびそれらの塩等があり得る。ビニル系高分子化合物としては、特に限定はされないが、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、カルボキシビニルポリマーおよびそれらの塩等があり得る。(A)成分の増粘成分は、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ビニル系高分子化合物、およびそれらの塩が好ましく、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーがより好ましく、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90、カルボキシビニルポリマーがさらに好ましく、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90、カルボキシビニルポリマーが特に好ましい。
【0036】
本発明において、(A)成分は、多価アルコールであり得る。多価アルコールは、限定はされないが、プロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、およびトレハロースからなる群より選択される1種以上の多価アルコールであることが好ましい。
【0037】
本発明において、(A)成分は、ベルベリン、アズレンスルホン酸、アラントイン、硫酸亜鉛、プラノプロフェンおよびそれらの塩からなる群より選択される1種以上の消炎成分であり得る。消炎成分の中でも、硫酸ベルベリン、塩化ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウム、アラントイン、硫酸亜鉛、プラノプロフェンであることが好ましい。
【0038】
本発明において、(A)成分は、ナファゾリンおよび/またはその塩である充血除去成分であり得る。ここで、ナファゾリンの塩は、ナファゾリン塩酸塩であることが好ましい。
【0039】
本発明において、(A)成分は、ジブチルヒドロキシトルエンである抗酸化成分であり得る。
【0040】
本発明において、(A)成分は、スルファメトキサゾールまたはその塩である抗菌成分であり得る。ここで、スルファメトキサゾールの塩は、スルファメトキサゾールナトリウムであることが好ましい。
【0041】
これらの(A)成分は、すべて、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。特には、2種以上組み合わせることが好ましい。2種以上である場合、例えば、同じ分類の異なる物質を2種以上とすることも、異なる分類の異なる物質を2種以上とすることもできる。例えば、多糖類として2種類以上を含有すること、あるいは多糖類から1種以上およびビタミン類から1種以上を選択して組み合わせることもできる。単糖類、油分、界面活性剤、抗アレルギー成分、防腐成分、増粘成分、多価アルコール、消炎成分、充血除去成分、抗酸化成分、抗菌成分等の他の(A)成分についても同様である。
【0042】
本発明の眼科用組成物において、(A)成分の含有量は、(A)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科用組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定されるが、眼科用組成物の全量に対して、(A)成分の総含有量として、好ましくは0.0001w/v%以上であり、より好ましくは、0.001w/v%以上、さらに好ましくは0.005w/v%以上、特に好ましくは0.01w/v%以上である。また、眼科用組成物の全量に対して、(A)成分の総含有量として、好ましくは20w/v%以下であり、より好ましくは10w/v%以下、さらに好ましくは5w/v%以下、特に好ましくは3w/v%以下、最も好ましくは1w/v%以下である。
【0043】
本発明の眼科用組成物総量に対する多糖類の総含有量は、(A)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量に応じて適宜設定される。本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の総量に対して、多糖類の総含有量は0.0001w/v%~6w/v%含有することが好ましく、0.0005w/v%~4w/v%含有することがさらに好ましく、0.001w/v%~2w/v%含有することが特に好ましい。
【0044】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、コンドロイチン硫酸又はその塩を(A)成分として含有する場合に、例えば、コンドロイチン硫酸又はその塩の単独の含有量として、眼科用組成物の全量に対して、0.0001w/v%~5w/v%含有することが好ましく、0.0005w/v%~3w/v%含有することがさらに好ましく、0.001w/v%~1w/v%含有することが特に好ましい。別の態様では、ヒアルロン酸又はその塩を(A)成分として含有する場合に、例えば、ヒアルロン酸又はその塩の単独の含有量として、眼科用組成物の全量に対して、0.0001w/v%~1w/v%含有することが好ましく、0.0005w/v%~0.5w/v%含有することがさらに好ましく、0.001w/v%~0.05w/v%含有することが特に好ましい。
【0045】
本発明の眼科用組成物総量に対する単糖類の総含有量は、(A)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量に応じて適宜設定される。本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の総量に対して、単糖類の総含有量は0.0001w/v%~3w/v%含有することが好ましく、0.005w/v%~1.5w/v%含有することがさらに好ましく、0.001w/v%~0.5w/v%含有することが特に好ましい。
【0046】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、グルコースを(A)成分として含有する場合に、グルコースの単独の含有量として、眼科用組成物の全量に対して、0.0001w/v%~3w/v%含有することが好ましく、0.005w/v%~1.5w/v%含有することがさらに好ましく、0.001w/v%~0.5w/v%含有することが特に好ましい。
【0047】
本発明の眼科用組成物総量に対するビタミン類の総含有量は、(A)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量に応じて適宜設定される。本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の総量に対して、ビタミン類の総含有量は0.00001w/v%~1.6w/v%含有することが好ましく、0.0005w/v%~0.8w/v%含有することがさらに好ましく、0.0005w/v%~0.4w/v%含有することが特に好ましい。
【0048】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、パルミチン酸レチノールを(A)成分として含有する場合に、パルミチン酸レチノールの単独の含有量として、眼科用組成物全量の10~500,000単位/100mLが好ましく、100~300,000単位/100mLがより好ましく、500~200,000単位/100mLがさらに好ましい。配合するパルミチン酸レチノールの単位にもよるが、0.005~0.5W/V%が好ましく、0.001~0.4W/V%がより好ましく、0.01~0.3W/V%がさらに好ましい。同様に、別の好ましい態様では、例えば、シアノコバラミンを(A)成分として含有する場合に、シアノコバラミンの単独の含有量として、眼科用組成物全量の0.00001w/v%~1w/v%含有することが好ましく、0.00005w/v%~0.5w/v%含有することがさらに好ましく、0.0001w/v%~0.02w/v%含有することが特に好ましい。
【0049】
本発明の眼科用組成物総量に対する油分の総含有量は、(A)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量に応じて適宜設定される。本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の総量に対して、油分の総含有量は0.00001w/v%~6w/v%含有することが好ましく、0.0005w/v%~3w/v%含有することがさらに好ましく、0.0001w/v%~1w/v%含有することが特に好ましい。
【0050】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、ゴマ油を(A)成分として含有する場合に、ゴマ油の単独の含有量として、眼科用組成物全量の0.00001w/v%~5w/v%含有することが好ましく、0.0001w/v%~1w/v%含有することがさらに好ましい。同様に、別の好ましい態様では、例えば、ヒマシ油を(A)成分として含有する場合に、ヒマシ油の単独の含有量として、眼科用組成物全量の0.00001w/v%~5w/v%含有することが好ましく、0.0001w/v%~1w/v%含有することがさらに好ましい。同様に、別の好ましい態様では、例えば、流動パラフィンを(A)成分として含有する場合に、流動パラフィンの単独の含有量として、眼科用組成物全量の0.00001w/v%~2w/v%含有することが好ましく、0.0001w/v%~1w/v%含有することがさらに好ましい。同様に、別の好ましい態様では、例えば、ワセリンを(A)成分として含有する場合に、ワセリンの単独の含有量として、眼科用組成物全量の0.00001w/v%~5w/v%含有することが好ましく、0.00005w/v%~1w/v%含有することがさらに好ましい。
【0051】
本発明の眼科用組成物総量に対する界面活性剤の総含有量は、(A)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量に応じて適宜設定される。本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の総量に対して、界面活性剤の総含有量は0.00001w/v%~10w/v%含有することが好ましく、0.0001w/v%~8w/v%含有することがさらに好ましく、0.001w/v%~5w/v%含有することが特に好ましい。
【0052】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを(A)成分として含有する場合に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの単独の含有量として、眼科用組成物全量の0.00001w/v%~10w/v%含有することが好ましく、0.001w/v%~8w/v%含有することがさらに好ましく、0.001w/v%~5w/v%含有することが特に好ましい。同様に、別の好ましい態様では、例えば、ポリオキシエチレンヒマシ油を(A)成分として含有する場合に、ポリオキシエチレンヒマシ油の単独の含有量として、眼科用組成物全量の0.00001w/v%~10w/v%含有することが好ましく、0.0001w/v%~5w/v%含有することがさらに好ましく、0.001w/v%~3w/v%含有することが特に好ましい。
【0053】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、本発明の眼科用組成物総量に対する抗アレルギー成分の総含有量は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の総量に対して、0.00001w/v%~5w/v%含有することが好ましく、0.0005w/v%~1w/v%含有することがさらに好ましく、0.0005w/v%~0.5w/v%含有することが特に好ましい。
【0054】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、本発明の眼科用組成物総量に対する防腐成分の総含有量は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の総量に対して、0.0000001w/v%~2w/v%含有することが好ましく、0.000001w/v%~1w/v%含有することがさらに好ましく、0.00001w/v%~0.5w/v%含有することが特に好ましい。
【0055】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、クロルヘキシジン、ソルビン酸又はそれらの塩を(A)成分として含有する場合に、例えば、クロルヘキシジン、ソルビン酸又はそれらの塩の単独の含有量として、眼科用組成物の全量に対して、0.00001w/v%~2w/v%含有することが好ましく、0.00005w/v%~1w/v%含有することがさらに好ましく、0.0001w/v%~0.5w/v%含有することが特に好ましい。別の態様では、例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド又はその塩を(A)成分として含有する場合に、例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド又はその塩の単独の含有量として、眼科用組成物の全量に対して、0.0000001w/v%~0.001w/v%含有することが好ましく、0.000001w/v%~0.0005w/v%含有することがさらに好ましく、0.00001w/v%~0.0001w/v%含有することが特に好ましい。
【0056】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、本発明の眼科用組成物総量に対する増粘成分の総含有量は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の総量に対して、0.0001w/v%~10w/v%含有することが好ましく、0.0005w/v%~8w/v%含有することがさらに好ましく、0.001w/v%~5w/v%含有することが特に好ましい。
【0057】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、本発明の眼科用組成物総量に対する多価アルコールの総含有量は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の総量に対して、0.00005w/v%~10w/v%含有することが好ましく、0.0001w/v%~8w/v%含有することがさらに好ましく、0.001w/v%~5w/v%含有することが特に好ましい。
【0058】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、本発明の眼科用組成物総量に対する消炎成分の総含有量は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の総量に対して、0.00001w/v%~3w/v%含有することが好ましく、0.00005w/v%~1.5w/v%含有することがさらに好ましく、0.0001w/v%~0.6w/v%含有することが特に好ましい。
【0059】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、本発明の眼科用組成物総量に対する充血除去成分の総含有量は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の総量に対して、0.0001w/v%~0.1w/v%含有することが好ましく、0.0005w/v%~0.08w/v%含有することがさらに好ましく、0.0005w/v%~0.05w/v%含有することが特に好ましい。
【0060】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、本発明の眼科用組成物総量に対する抗酸化成分の総含有量は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の総量に対して、0.000001w/v%~2w/v%含有することが好ましく、0.00001w/v%~1.5w/v%含有することがさらに好ましく、0.0001w/v%~1w/v%含有することが特に好ましい。
【0061】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、本発明の眼科用組成物総量に対する抗菌成分の総含有量は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の総量に対して、0.01w/v%~6w/v%含有することが好ましく、0.05w/v%~5w/v%含有することがさらに好ましく、0.4w/v%~4w/v%含有することが特に好ましい。
【0062】
本明細書において、(B)成分のテルペノイド類とは、イソプレンユニットを構成単位とする構造を有するテルペン類のうち、カルボニル基やヒドロキシ基等の官能基を有する誘導体をいう。イソプレンユニットの単位数から、テルペノイド類は、モノテルペノイド(2イソプレンユニット;C10)、セスキテルペノイド(3イソプレンユニット;C15)、ジテルペノイド(4イソプレンユニット;C20)、セスタテルペノイド(5イソプレンユニット;C25)、トリテルペノイド(6イソプレンユニット;C30)、テトラテルペノイド(8イソプレンユニット;C40)、ポリテルペノイド等に分類される。
【0063】
具体的には、限定はされないが、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、リュウノウ、酢酸リナリル又はこれらの誘導体等が挙げられる。これらのテルペノイド類は、d体、l体又はdl体のいずれでも使用することができる。好ましくは、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオールであり、さらに好ましくは、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオールである。
【0064】
また、本発明において、テルペノイド類として、上記化合物を含有する精油を使用してもよい。このような精油としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油、樟脳油等が挙げられる。好ましくは、ユーカリ油、ベルガモット油、ハッカ油である。これらのテルペノイド類は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このようなテルペノイド類は、いずれも市販のものを利用することもできる。
【0065】
本発明の眼科用組成物において、(B)成分の含有量は、(B)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科用組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の全量に対して、(B)成分の総含有量として、好ましくは0.00001w/v%以上であり、より好ましくは0.00005w/v%以上、さらに好ましくは0.0001w/v%以上である。また、(B)成分の含有量は、眼科用組成物の全量に対して、(B)成分の総含有量として、好ましくは1w/v%以下であり、より好ましくは0.5w/v%以下、さらに好ましくは0.1w/v%以下である。
【0066】
限定はされないが、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、(B)成分の含有量は、(B)成分の総含有量として、眼科用組成物の全量に対して、0.00001w/v%~1w/v%含有することが好ましく、0.00005w/v%~0.5w/v%含有することがさらに好ましく、0.0001w/v%~0.1w/v%含有することがさらにより好ましい。
【0067】
本発明の眼科用組成物において、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、(A)成分に対する(B)成分の配合比率は、(A)成分の総含有量1重量部に対して、(B)成分の総含有量が0.00001~2000重量部であることが好ましく、0.0001~1000重量部であることがより好ましく、0.0005~500重量部であることがさら好ましく、0.0001~100重量部であることが特に好ましく、0.001~10重量部であることが最も好ましい。
【0068】
本明細書では、PBTを含有する樹脂で成形された容器(本明細書ではPBT含有樹脂容器ともいう)とは、眼科用の容器であって、容器の一部又は全部がポリブチレンテレフタレートを含有する樹脂で成形された容器のことを言う。ここで、「容器の一部」は、内部に収容される眼科用組成物と接触する部分の少なくとも一部である。眼科用組成物と接触する部分は、中栓、穴あき中栓、容器内面に構成された複数の層からなる構造の最も内側の層等であり得る。穴あき中栓(ノズル)を有する容器では、中栓部分のみがPBT含有樹脂で成形されていてもよい。あるいは、中栓以外の、眼科用組成物を収容する本体部分がPBT含有樹脂で成形されていてもよい。あるいは、容器全体がPBT含有樹脂で成形されていてもよい。テルペノイド類の含量低下を効果的に抑制する等の観点から、眼科用組成物を収容する本体部分がPBT含有樹脂で成形されていることが好ましい。眼科用組成物と接触する面の少なくとも一部がPBT含有樹脂で構成されていればよいが、テルペノイド類の含量低下を効果的に抑制する等の観点から、眼科用組成物と接触する面の全部がPBT含有樹脂で構成されていることが最も好ましい。容器の一部がPBT含有樹脂で形成されている場合、他の部分を形成する樹脂の種類については特に制限されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種のポリマーが構成成分として含まれていてもよい。
【0069】
本発明において、PBT含有樹脂容器の形状、内部に収容できる容量は特に限定はされない。例えば通常の点眼剤又はコンタクトレンズ装着液としての容器であれば、内容量を0.1ml以上50ml以下、好ましくは、2ml以上40ml以下、さらに好ましくは4ml以上25ml以下収容できる容器であり得る。PBT含有樹脂容器が、洗眼剤又はコンタクトレンズケア用液としての容器であれば、40ml以上600ml以下であり得る。
【0070】
この他に、本発明のPBT含有樹脂容器は、コンタクトレンズに適用する眼科用組成物を収容できる容器であり得る。
【0071】
本発明で使用される眼科用組成物は、複数回数の使用量が収容されるマルチドーズ型であってもよく、単回数の使用量が収容されるユニットドーズ型であってもよい。
【0072】
本発明では、特には、PBT含有樹脂容器は、点眼容器、洗眼液容器、コンタクトレンズ装着液収容容器、コンタクトレンズケア用液収容容器(コンタクトレンズ洗浄液収容容器、コンタクトレンズ保存液収容容器、コンタクトレンズ消毒液収容容器、コンタクトレンズマルチパーパスソリューション収容容器等が含まれる)、コンタクトレンズ包装液収容容器であることが好ましい。なお、本明細書において、コンタクトレンズはあらゆるコンタクトレンズを意味し、ソフトコンタクトレンズでもハードコンタクトレンズでもいずれでもよい。
【0073】
本発明の眼科用組成物は、PBT含有樹脂容器に収容されてなる。本発明では、PBT含有樹脂容器に眼科用組成物が収容された、容器入り点眼剤、容器入り洗眼剤、容器入りコンタクト適用製品が提供され得る。また、本発明の眼科用組成物を収容するための、PBT含有樹脂容器が提供され得る。
【0074】
本発明のPBT含有樹脂容器におけるPBT含有樹脂は、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体と1,4-ブタンジオールを重縮合させるなど公知の重合方法によって得られるポリマーを含む。これに、安定化剤や難燃助剤等の添加剤を加えてもよい。PBT含有樹脂として市販されているPBT含有樹脂を、特に制限なく用いることができる。例えば「ノバデュラン(登録商標)5010R5」、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製等が挙げられる。テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体と1,4-ブタンジオールとを重縮合して合成したポリマーには、構成成分として任意に他のモノマーが含まれていてもよく、他のポリマーが含まれていてもよい。他のポリマーには、ポリカーボネート、(メタ)アクリル酸系重合体、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン等が含まれてもよいが、これに限定されない。好ましくは、本発明のPBT含有樹脂は、テレフタル酸又はテレフタル酸ジメチルと1,4-ブタンジオールとを重縮合して合成したポリマーを、樹脂を構成するポリマー成分のうち、50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらにより好ましくは70重量%以上を占めるものである。これらは市販のものを利用することもできる。
【0075】
本発明のPBT含有樹脂は、さらに、樹脂をガラス繊維等の補強剤で強化したものも含む。
【0076】
本発明では、(A)成分及び(B)成分を含有する眼科用組成物を、該眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がPBTを含有する樹脂で成形された容器に収容することにより、(B)成分であるテルペノイド類の含量低下を抑制する方法が提供される。また、本発明では、眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がPBTを含有する樹脂で成形された容器に収容された、(A)成分及び(B)成分を含有する該眼科用組成物に、(B)成分であるテルペノイド類の含量低下を抑制する作用を付与する方法が提供される。本発明の効果により、テルペノイド類が容器を構成する樹脂に吸着されることや、その他の原因による含量の低下を抑制することが可能となる。
【0077】
本発明において、テルペノイド類の含量低下を抑制するとは、眼科用組成物を調製した直後におけるテルペノイド類の含量と比較して、一定期間の使用後又は保管後も、テルペノイド類の含量の変化をより抑制していればよい。
【0078】
さらに、本発明では、眼科用組成物中に、(A)成分、並びに(B)成分を共存させ、該眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がPBTを含有する樹脂で成形された容器に収容することにより、該眼科用組成物の臭気を抑制する作用を付与する方法が提供される。本発明の効果により、眼科用組成物の使用後又は保存後の香りの変質を抑制し、臭気を抑制することが望める。また、一つの実施形態では、本発明は、眼科用組成物中に、(A)成分、並びに(B)成分を共存させ、該眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がPBTを含有する樹脂で成形された容器に収容することにより、該眼科用組成物中のテルペノイド類の香りの変質を抑制する作用を付与する方法を提供することも可能である。
【0079】
本発明において、眼科用組成物の臭気を抑制する又はテルペノイド類の香りの変質を抑制するとは、眼科用組成物を調製した直後における臭気やテルペノイド類の香りと比較して、一定期間の使用後又は保管後も、これらの臭気の発生を抑制し、又は香りの変化をより抑制していればよい。
【0080】
本発明の眼科用組成物においては、(A)成分及び(B)成分の他に、緩衝剤を含有させることが好ましい。これにより眼科用組成物のpHを調整でき、本発明の効果を一層顕著に発揮できる。緩衝剤としては、生理学的又は薬学的に許容されるものであれば特に制限されず、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、炭酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、イプシロンーアミノカプロン酸などのいずれも用いることができる。これらの緩衝剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。具体的には、クエン酸またはその塩、酢酸またはその塩、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(トロメタモール)、炭酸またはその塩、ホウ酸またはその塩及びリン酸またはその塩が挙げられる。これらの緩衝剤の中でも、クエン酸またはその塩、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ホウ酸またはその塩、リン酸またはその塩、イプシロンーアミノカプロン酸が好ましく、ホウ酸またはその塩、リン酸またはその塩、イプシロンーアミノカプロン酸がさらに好ましい。
【0081】
本発明の眼科用組成物において、緩衝剤の含有量は、緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科用組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の総量に対して、緩衝剤の総含有量は、好ましくは0.001w/v%以上であり、より好ましくは0.01w/v%以上、さらに好ましくは0.05w/v%以上であり、さらにより好ましくは0.1w/v%以上である。また、緩衝剤の総含有量は、眼科用組成物の全量に対して、好ましくは15w/v%以下であり、より好ましくは10w/v%以下、さらに好ましくは7.5w/v%以下であり、さらにより好ましくは5w/v%以下である。
【0082】
限定はされないが、緩衝剤の含有量は、緩衝剤の総量として、眼科用組成物の全量に対して、好ましくは0.001~15w/v%であり、より好ましくは0.01~10w/v%であり、さらに好ましくは0.05~7.5w/v%であり、さらにより好ましくは0.1~5w/v%である。
【0083】
本発明の眼科用組成物においては、(A)成分及び(B)成分の他に、通常眼科用組成物に用いることができる他の成分を含有させることが好ましい。かかる成分は特に制限されないが、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、特に好ましくは、エデト酸ナトリウムであり得る。本発明において、エデト酸ナトリウムは市販のものを利用することもできる。
【0084】
本発明の眼科用組成物において、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、眼科用組成物の総量に対してエデト酸ナトリウムの総含有量は、好ましくは0.0001w/v%以上であり、より好ましくは、0.0005w/v%以上、さらに好ましくは0.001w/v%以上である。眼科用組成物の総量に対して、エデト酸ナトリウムの総含有量は、好ましくは1w/v%以下であり、より好ましくは0.5w/v%以下、さらに好ましくは0.2w/v%以下である。(A)成分に対するエデト酸ナトリウムの含有量の比率は、(A)成分の総含有量1重量部に対して、エデト酸ナトリウムの総含有量が0.0001~1000重量部が好ましく、0.0005~500重量部がより好ましく、0.001~200重量部がよりさらに好ましい。
【0085】
本発明の眼科用組成物においては、(A)成分及び(B)成分の他に、通常眼科用組成物に用いることができる他の成分を含有させることができる。かかる成分は特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造(輸入)承認基準2012年版(一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会監修)に記載された眼科用薬における有効成分が例示できる。具体的には、次のような成分が挙げられる。
【0086】
抗ヒスタミン剤:マレイン酸クロルフェニラミン等。
抗アレルギー剤:アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト、塩酸レボカバスチン、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウム、塩酸オロパタジン等。
充血除去剤:塩酸テトラヒドロゾリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン等。
アミノ酸類:アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アミノエチルスルホン酸等。
消炎剤:グリチルリチン酸二カリウム、塩化リゾチーム、ブロムフェナク、ケトロラクトロメタミン、ネパフェナク等。
収斂剤:亜鉛華、乳酸亜鉛等。
その他:スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウム、メチル硫酸ネオスチグミン等。
【0087】
さらに、本発明の眼科用組成物においては、担体、増粘剤、防腐剤、pH調整剤、一般的な等張化剤、キレート剤等の添加剤を適宜選択し、1種又はそれ以上を併用して適当量含有させてもよい。それらの添加物として、例えば、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
担体:水、含水エタノール等の水性担体。
増粘剤:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム等。
クロルヘキシジン、ソルビン酸、ポリヘキサメチレンビグアニド、スルファメトキサゾールおよびそれらの塩を除く防腐成分、殺菌剤又は抗菌剤:塩酸アルキルポリアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、チロキサポール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、フェネチルアルコール、硫酸オキシキノリン、ベンジルアルコール、塩化ポリドロニウム、クロルクレゾール、パラクロルメタキシレノール等。
等張化剤:ポリエチレングリコール、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等。
pH調節剤:塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等。
安定化剤:ブチルヒドロキシアニソール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、シクロデキストリン、デキストラン等。
キレート剤:アスコルビン酸、エデト酸四ナトリウム、コハク酸、トリヒドロキシメチルアミノメタン、ニトリロトリ酢酸、1-ヒドロキシエタン1-,1-ジホスホン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸等。
【0088】
水を担体とする場合、水の含有量は、配合成分の種類及び含有量、該眼科用組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定されるが、例えば、眼科用組成物の総量に対して水の含有量は、30w/v%以上、好ましくは50w/v%以上、より好ましくは70w/v%以上、さらに好ましくは、85w/v%以上、さらにより好ましくは90w/v%以上とすることができる。
【0089】
本発明の眼科用組成物に用いられる水は、生理学的又は薬学的に許容されるものであればよい。このような水として、例えば、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水及び注射用蒸留水などを挙げることができる。これらの定義は第十六改正日本薬局方に基づく。
【0090】
本発明において、「塩」とは、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機塩基との塩、有機塩基等との塩等の塩基性塩があり、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、又はジエタノールアミン、エチレンジアミン等との塩が挙げられる。これらの塩は、たとえば、リラナフタート等に存在する硫酸基やカルボキシル基を公知の方法により塩に変換することで得られる。さらには、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、L-グルカミン等のアミンの塩;又はリジン、δ-ヒドロキシリジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸との塩等が挙げられる。また、本発明において、「塩」とは、酸性塩等があり、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸の塩のような無機酸との塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、ケイ皮酸、乳酸、グリコール酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、サリチル酸、グルコン酸、パルミチン酸等の有機酸との塩;又はアスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との塩等も挙げられる。
【0091】
本発明でいう「生理学的又は薬学的に許容される塩」には、塩の溶媒和物又は水和物を含んでいてもよい。
【0092】
本明細書において、眼科用組成物の形態としては、水を含むものであればよく、例えば、水溶液状、ゲル状、懸濁液状、乳液状のいずれであってもよく、好ましくは水溶液状である。
【0093】
本発明の眼科用組成物のpHは、生理学的又は薬学的に許容できる範囲であれば制限されないが、例えば、pHが3以上であり、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは5.5以上、さらにより好ましくは6以上である。pHが9以下であり、好ましくは8.5以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは7.5以下、さらにより好ましくは7以下である。
【0094】
本発明の眼科用組成物の浸透圧比は、生理学的又は薬学的に許容される範囲内であれば、配合成分の種類及び含有量、該眼科用組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定されるが、例えば、0.4~5、好ましくは0.5~4、より好ましくは0.6~3、さらに好ましくは0.7~2とすることができる。なお、本発明の眼科用組成物において、浸透圧比は、第十六改正日本薬局方の浸透圧測定法(オスモル濃度測定法)に基づき、生理食塩液に対する浸透圧比として求める。
【0095】
本発明の眼科用組成物の粘度は、生理学的又は薬学的に許容される範囲内であれば、配合成分の種類及び含有量、該眼科用組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。回転粘度計(RE550型粘度計、東機産業社製、ローター;1°34‘×R24)で測定した20℃における粘度が0.01~10000mPa・sとすることが好ましく、0.05~8000mPa・sとすることがより好ましく、0.1~6000mPa・sとすることがさらに好ましい。
【0096】
本発明の眼科用組成物の使用方法は、配合成分の種類及び含有量、該眼科用組成物の用途、製剤形態に応じて適宜設定される。
【0097】
本発明の眼科用組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、第十六改正日本薬局方製剤総則に記載された方法を用いて製造することができる。必要により、滅菌工程を含めることができる。
【0098】
本発明の眼科用組成物は、単独あるいはキットの形態において、PBT含有樹脂容器内に収容されて提供される。PBT含有樹脂容器は本発明の眼科用組成物をその中に収容することで、テルペノイド類の含量の低下を抑制して良好に保持することができる。
【0099】
本発明の眼科用組成物の具体的態様としては、限定はされないが、点眼剤(点眼液又は点眼薬と同義)、コンタクトレンズ用点眼剤、人工涙液、洗眼剤(洗眼液又は洗眼薬と同義)、コンタクトレンズ用洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用品(消毒剤、保存剤、洗浄剤等を含む)、眼軟膏等が挙げられる。本発明の眼科用組成物は、テルペノイド類の含量低下を抑制でき、点眼剤、コンタクトレンズ用点眼剤、洗眼剤、又はコンタクトレンズ用洗眼剤に好適に用いられる。特に点眼剤、コンタクトレンズ用点眼剤に用いることが好ましい。
【0100】
本発明の眼科用組成物は、テルペノイド類の含量低下が抑制されるため、テルペノイド類による清涼感を持続的に感じることが可能である。また、本発明の眼科用組成物は、テルペノイド類の香りの変質を抑制し、臭気を抑制することが可能である。また、眼科用ポリブチレンテレフタレート含有樹脂容器に収容され、(A)成分及び(B)成分を含有する芳香性持続剤を提供することが可能である。
【0101】
別の実施形態として、本発明は、(A)成分、並びに(B)成分を含有する眼科用組成物を、該眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がポリブチレンテレフタレートを含有する樹脂で成形された容器に収容してなる、眼科用組成物を収容した容器であり得る。
【0102】
別の実施形態として、本発明は、(A)成分、並びに(B)成分を含有する眼科用組成物を収容するための、該眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がポリブチレンテレフタレートを含有する樹脂で成形された容器であり得る。
【0103】
別の実施形態として、本発明は、(A)成分、並びに(B)成分を含有する眼科用組成物であって、該眼科用組成物と接触する面の一部又は全部がポリブチレンテレフタレートを含有する樹脂で成形された容器に収容してなる眼科用組成物を製造する方法であり得る。
【実施例0104】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0105】
(試験液の調製)
表1~2に示す組成の眼科用組成物を常法により調製した。具体的には、(A)成分のヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量85万~160万)、コンドロイチン硫酸ナトリウム(重量平均分子量2万4千~3万4千)又はグルコース、(B)成分のl-メントール、ホウ酸及びホウ砂を、約70℃にて精製水に撹拌溶解し、それぞれ表2~3に示す濃度になるように、眼科用組成物を調製した。そのpHは、HORIBApHメーターで室温にて測定した。
【0106】
【0107】
【0108】
(試験例1.l-メントール残存率の評価試験)
実施例1~3及び比較例1~8の試験液を、10mL容量の透明ガラスバイアル(セプタムキャップ)に3mLずつ充填した。さらに直径約1cm、厚さ約2.0mmの大きさのPBT含有樹脂(製品名:PBTナチュラル、アラム社製)又は硬質PE樹脂(製品名:硬質ポリエチレン、アラム社製)を1個ずつ浸漬させ、速やかに密封した。恒温槽にて60℃、1週間静置する熱処理を行った後に、HPLC法により、下記の条件にて、溶液中におけるl-メントールの残存量を定量した。この熱処理は、室温で約3年間、保管した場合に相当する。同様の方法で各試験液の調製直後のl-メントールを定量した値を用いて、下記式に従ってl-メントール残存率(%)を求めた。
【0109】
<HPLC測定条件>
検出器:示差屈折計(セル温度:40付近の一定温度)
カラム:YMC-PackC8(内径4.6mm、長さ15cm、粒径5μm)
カラム温度:40℃
移動相:水/アセトニトリル混液(1:1)
流量:メントールの保持時間が約8分になるように調節する
注入量:100μL
【0110】
l-メントール残存率(%)=熱処理後のl-メントール濃度/各試験液の調製直後のl-メントール濃度×100
【0111】
表1及び
図1に示す通り、ガラス容器のみでの熱処理品(比較例1)では、l-メントール残存率が81.7%にまで低下した。PBT含有樹脂又は硬質PE樹脂を浸漬した比較例2、3においては、さらにl-メントールの残存率が低下しており、PBT含有樹脂においても、比較例1よりもl-メントールの残存率が悪化していることが分かった。
【0112】
これに対し、ヒアルロン酸ナトリウムを加えた実施例1においては、l-メントール残存率が向上していることが確認された。さらに、ヒアルロン酸ナトリウムを配合した試験液に硬質PE樹脂を浸漬した比較例4においては、l-メントール残存率が大きく向上しないことも確認された。
【0113】
表2及び
図2に示す通り、コンドロイチン硫酸ナトリウム又はグルコースを配合した実施例2又は3においては、l-メントール残存率が向上することが確認された。
【0114】
(試験例2.官能評価試験1)
表3に示す実施例4、比較例9~11の眼科用組成物を調製し、各試験液の官能を評価した。具体的には、実施例4及び比較例9~11の眼科用組成物を、10mL容量の透明ガラスバイアル(セプタムキャップ)に3mLずつ充填した。さらに直径約1cm約、厚さ約2.0mmの大きさのPBT含有樹脂(製品名:PBTナチュラル、アラム社製)又は硬質PE樹脂(製品名:硬質ポリエチレン、アラム社製)を1個ずつ浸漬させ、速やかに密封した。恒温槽にて60℃、1週間静置する熱処理を行った。その後、熱処理後の各試験液を、腕に30μL滴下し、指で直径約2cmの円状に広げて臭いを嗅ぎ、VAS(Visual Analog Scale)法により評価した。すなわち、「爽快な清涼感のある香り」「良い香り」について、10cmの直線の両端において、「全く感じない」を0mm、「とても感じる」を100mmとし、各試験液の匂いの大きさに相当する直線上の一点を被験者に示させた。0mmの点からの距離(mm)を測定して、官能の点数とした。また、「全く臭気を感じない」を0mm、「我慢できない不快な臭気を感じる」を100mmとし、各試験液の臭気に相当する直線上の一点を被験者に示させ、0mmの点からの距離(mm)を測定して、臭気の点数とした。熱処理後の試験は匂いに敏感な被験者を選び、5名で行った。結果を表3に示す。
【0115】
【0116】
表3に示す通り、コンドロイチン硫酸ナトリウムを含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例4は、コンドロイチン硫酸ナトリウムを含有しない比較例9や硬質PE樹脂を浸漬した比較例11と比較して、l-メントールの官能及び芳香性の良い香りを感じる官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気が少なく、官能が良好であった。また、コンドロイチン硫酸ナトリウムを含有せず、キサンタンガムを含有した比較例10は、PBT含有樹脂を浸漬しても官能は不良であった。
【0117】
(試験例3.官能評価試験2)
表4に示す実施例5~8、比較例12~15の眼科用組成物を調製し、各試験液の官能を評価した。具体的には、試験例2と同様の方法で熱処理をし、匂いを嗅ぎ、VAS法により評価した。「芳香性の良い香り」について、10cmの直線の両端において、「全く感じない」を0mm、「とても感じる」を100mmとし、各試験液の匂いの大きさに相当する直線上の一点を被験者に示させた。また、「変質した香り」について、熱処理前の香りを基準に「変質していない」を0mm、「変質している」を100mmとして評価した。試験は匂いに敏感な被験者を選び、3名で行った。結果を表4に示す。
【0118】
【0119】
表4に示す通り、(B)成分と(A)成分を含有する各試験液に、PBT含有樹脂を浸漬した実施例5~8は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例12~15よりも熱処理後の香りの変質が少なく、官能が良好であった。さらに実施例5及び6は比較例12及び13よりも熱処理後の芳香性の良い香りを感じる官能が非常に良好であった。
【0120】
(試験例4.官能評価試験3)
表5~11に示す実施例9~29、比較例16~36の眼科用組成物を調製し、試験例2と同様にして、各試験液の官能を評価した。具体的には、実施例9~29、比較例16~36の眼科用組成物を、10mL容量の透明ガラスバイアル(セプタムキャップ)に3mLずつ充填した。さらに直径約1cm約、厚さ約2.0mmの大きさのPBT含有樹脂(製品名:PBTナチュラル、アラム社製)又は硬質PE樹脂(製品名:硬質ポリエチレン、アラム社製)を1個ずつ浸漬させ、速やかに密封した。恒温槽にて60℃、1週間(表7の各試験液のみ60℃、3日間)静置する熱処理を行った。その後、熱処理後の各試験液を、腕に30μL滴下し、指で直径約2cmの円状に広げて臭いを嗅ぎ、VAS法により評価した。すなわち、「爽快な清涼感のある香り」について、10cmの直線の両端において、「全く感じない」を0mm、「とても感じる」を100mmとし、各試験液の匂いの大きさに相当する直線上の一点を被験者に示させた。0mmの点からの距離(mm)を測定して、官能の点数とした。また、「全く臭気を感じない」を0mm、「我慢できない不快な臭気を感じる」を100mmとし、各試験液の臭気に相当する直線上の一点を被験者に示させ、0mmの点からの距離(mm)を測定して、臭気の点数とした。熱処理後の試験は匂いに敏感な被験者を選び、5名で行った。結果を、表5~11に示す。
【0121】
【0122】
表5に示す通り、(A)成分として、コンドロイチン硫酸ナトリウムを含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントール官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気が少なく、官能が良好であった。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
表6~8に示す通り、(A)成分として、種々のビタミン類を含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントールの官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気が少なく、官能が良好であった。
【0127】
【0128】
【0129】
表9~10に示す通り、(A)成分の油分として、植物油を含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントールの官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気が少なく、官能が良好であった。また、(A)成分の油分として、鉱物油を含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントールの官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気が少なく、官能が良好であった。
【0130】
【0131】
表11に示す通り、(A)成分として界面活性剤を含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントールの官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気が少なく、官能が良好であった。
【0132】
(試験例5.官能評価試験4)
表12~27に示す実施例30~64、比較例37~71の眼科用組成物を調製し、試験例2と同様にして、各試験液の官能を評価した。具体的には、実施例30~64、比較例37~71の眼科用組成物を、10mL容量の透明ガラスバイアル(セプタムキャップ)に2mLずつ充填した。さらに直径約1cm約、厚さ約2.0mmの大きさのPBT含有樹脂(製品名:PBTナチュラル、アラム社製)又は硬質PE樹脂(製品名:硬質ポリエチレン、アラム社製)を1個ずつ浸漬させ、速やかに密封した。恒温槽にて、表12、14、15、16、17、20、21、22、23及び表27については60℃で12日間静置し、表13及び表19については75℃で3日間静置し、又は、表18、24、25及び表26については50℃で12日間静置する熱処理を行った。その後、熱処理後の各試験液を、腕に30μL滴下し、指で直径約2cmの円状に広げて臭いを嗅ぎ、VAS法により評価した。すなわち、「爽快な清涼感のある香り」について、10cmの直線の両端において、「全く感じない」を0mm、「とても感じる」を100mmとし、各試験液の匂いの大きさに相当する直線上の一点を被験者に示させた。0mmの点からの距離(mm)を測定して、官能の点数とした。また、「全く臭気を感じない」を0mm、「我慢できない不快な臭気を感じる」を100mmとし、各試験液の臭気に相当する直線上の一点を被験者に示させ、0mmの点からの距離(mm)を測定して、臭気の点数とした。熱処理後の試験は匂いに敏感な被験者を選び、5名で行った。また、表15、16及び18については、「変質した香り」について、熱処理前の香りを基準に「変質していない」を0mm、「変質している」を100mmとして評価した。結果を、表12~27に示す。
【0133】
【0134】
【0135】
表12~13に示す通り、(A)成分として、種々の多糖を含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントールの官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気が少なく、官能が良好であった。
【0136】
【0137】
表14に示す通り、(A)成分として、種々のビタミン類を含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントールの官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気が少なく、官能が良好であった。
【0138】
【0139】
表15に示す通り、(A)成分として、種々の油分を含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントールの官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気や変質した香りが少なく、官能が良好であった。
【0140】
【0141】
表16に示す通り、(A)成分として、種々の界面活性剤を含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントール、ユーカリ油、ベルガモット油等のテルペノイド類の官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気や変質した香りが少なく、官能が良好であった。
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
表17~19に示す通り、(A)成分として、種々の抗アレルギー成分を含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントールやd-カンフル等の、テルペノイド類の官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気や変質した香りが少なく、官能が良好であった。また、(A)成分として、抗アレルギー成分と増粘成分を共に含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例でも、テルペノイド類の官能が非常に良好であり、熱処理後の臭気や変質した香りが少なかった。
【0146】
【0147】
表20に示す通り、(A)成分として、種々の防腐成分を含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントールの官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気が少なく、官能が良好であった。
【0148】
【0149】
表21に示す通り、(A)成分として、種々の増粘成分を含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントールの官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気が少なく、官能が良好であった。
【0150】
【0151】
表22に示す通り、(A)成分として、種々の多価アルコールを含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントールの官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気が少なく、官能が良好であった。
【0152】
【0153】
【0154】
表23~24に示す通り、(A)成分として、種々の消炎成分を含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントールの官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気が少なく、官能が良好であった。
【0155】
【0156】
表25に示す通り、(A)成分として、充血除去成分を含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントールの官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気が少なく、官能が良好であった。
【0157】
【0158】
表26に示す通り、(A)成分として、抗酸化成分を含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントールの官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気が少なく、官能が良好であった。
【0159】
【0160】
表27に示す通り、(A)成分として、抗菌成分を含有し、PBT含有樹脂を浸漬した実施例は、硬質PE樹脂を浸漬した比較例と比較して、l-メントールの官能が非常に良好であった。さらに熱処理後の臭気が少なく、官能が良好であった。
【0161】
(眼科用組成物調製と容器収容例)
以下の眼科用組成物を調製する。製剤例中の数値の単位は「w/v%」である。製剤2、3、6、9、10をPET含有樹脂製の容器本体部分に充填し、本体部分の開口部にPBT含有樹脂製穴あき中栓を取り付け、PP含有樹脂の蓋をした。製剤4、7、12をPP含有樹脂製の容器本体部分に充填し、本体部分の開口部にPBT含有樹脂製穴あき中栓を取り付け、ABS含有樹脂製の蓋をした。製剤1、11をエチレン酢酸ビニル共重合体含有樹脂製の容器本体部分に充填し、本体部分の開口部にPBT含有樹脂製穴あき中栓を取り付け、PE含有樹脂の蓋をした。製剤5、8をPE含有樹脂製の容器本体部分に充填し、本体部分の開口部にPBT含有樹脂製穴あき中栓を取り付け、PS含有樹脂の蓋をした。これらの容器収容例において、製剤1~12は、使用時および/または保存時において、PBT含有樹脂に接触する。
【0162】
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