(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060089
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】座席
(51)【国際特許分類】
A47C 7/72 20060101AFI20230420BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20230420BHJP
【FI】
A47C7/72
B60N2/90
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031854
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2021120161の分割
【原出願日】2018-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2017167499
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】飯澤 高志
(72)【発明者】
【氏名】福田 達也
(57)【要約】
【課題】着座者に振動源位置をできるだけ正確に認識させることができる座席を提供する
【解決手段】座席1Aは、座部3及び背凭れ4と、二対の振動子5L,5R,6L,6Rと、振動吸収材7,8と、を備え、車両の運転席を構成する。振動吸収材7は、座部3の第1領域E1と第2領域E2の境界部分に配設されており、一対の振動子5L,5Rの中間部に配設されている。振動吸収材7は、振動子5Rの振動が第2領域E2に伝播すること及び振動子5Lの振動が第1領域E1に伝播することを抑制する。振動吸収材8は、背凭れ4の第1領域E3と第2領域E4の境界部分に配設されており、一対の振動子6L,6Rの中間部に配設されている。振動吸収材8は、振動子6Rの振動が第2領域E4に伝播すること及び振動子6Lの振動が第1領域E3に伝播することを抑制する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域及び他の領域を有する座席であって、
前記第1領域に配設された第1振動子と、
前記第1振動子の振動が前記他の領域に伝播することを抑制する伝播抑制手段と、を備えた
ことを特徴とする座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子を備えた座席に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の座席に振動子を設け、当該振動子を振動させることによって着座者に対して何らかの情報を発する情報提示システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1には、自車両の周囲の危険物(他車両、人、固定物などの障害物)を検出し、自車両や危険物の状態(位置や速度など)に応じて、危険物の方向に関する情報(存在する方向や移動方向)を複数の振動子によって運転者に提示する情報提示システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような内部に振動子が配設された座席においては、所定の領域に配設された振動子による振動が他の領域まで伝播してしまうため、着座者が振動源位置を誤認してしまうおそれがあり、提示された情報を正しく認識できないおそれがあるという問題があった。
【0005】
したがって、本発明の課題は、着座者に振動源位置をできるだけ正確に認識させることができる座席を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明の座席は、第1領域及び他の領域を有する座席であって、前記第1領域に配設された第1振動子と、前記第1振動子の振動が前記他の領域に伝播することを抑制する伝播抑制手段と、を備えたことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例1にかかる座席を示す斜視図である。
【
図2】
図1の座席に配設された振動子を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施例2にかかる座席を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施例3にかかる座席を示す斜視図である。
【
図5】
図4の座席に配設された振動子及び振動吸収材を示す斜視図である。
【
図6】
図4の座席における作用を説明する説明図である。
【
図7】本発明の実施例3の変形例の座席における作用を説明する説明図である。
【
図8】本発明の実施例4にかかる座席を示す斜視図である。
【
図9】
図8の座席に配設された振動子及び振動吸収材を示す斜視図である。
【
図10】
図8の座席における作用を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態にかかる座席は、第1領域及び他の領域を有するものであって、前記第1領域に配設された第1振動子と、前記第1振動子の振動が前記他の領域に伝播することを抑制する伝播抑制手段と、を備えたものである。このような構成により、着座者に振動源位置をより正確に認識させることができる。
【0009】
また、伝播抑制手段は、第1振動子の周囲に設けられた振動吸収材であってもよい。このような構成により、第1振動子の振動範囲を狭い範囲に限定することができるので、着座者に振動源位置をより正確に認識させることができる。
【0010】
また、本発明の実施形態にかかる座席は、他の領域に配設された第2振動子を更に備え、伝播抑制手段は、第2振動子の振動が第1領域に伝播することを抑制するものであってもよい。
【0011】
また、伝播抑制手段は、第2振動子の周囲に設けられた振動吸収材であってもよい。このような構成により、第2振動子の振動範囲を狭い範囲に限定することができるので、着座者に振動源位置をより正確に認識させることができる。
【0012】
また、伝播抑制手段は、座席の幅方向中央部における内部に配設された振動吸収材であってもよい。このような構成により、座席の幅方向一方側に第1振動子が配設され、他方側に第2振動子が配設された場合、一つの振動吸収材で、第1振動子の不要振動と第2振動子の不要振動の伝播を抑制できるので、座席の部品点数を少なくできる。
【0013】
また、伝播抑制手段は、座席の内部部材を、当該座席の幅方向中央部にて左右に分割した分割溝であってもよい。このような構成により、専用の振動吸収材を用いることなく不要振動の伝播を抑制できるので、座席の部品点数を少なくできる。
【0014】
また、本発明の実施形態にかかる座席は、車両の座席として搭載されるものであってもよい。
【実施例0015】
[実施例1]
本発明の実施例1にかかる「座席」を
図1,2を参照して説明する。
図1に示す座席1Aは、座部3及び背凭れ4と、二対の振動子5L,5R,6L,6Rと、振動吸収材(伝播抑制手段)7,8と、制御手段と、を備え、車両の運転席を構成する。
図1等に示す矢印Xは、座席1Aの前後方向であり、矢印Yは、座席1Aの幅方向であり、矢印Zは、座席1Aの上下方向である。
【0016】
座部3は、着座者の臀部及び大腿部を支持するためのものであって、その表面を構成するシート部材と、シート部材の内側に設けられる緩衝部材(クッション部材)等を有する。座部3は、着座面から見て、第1領域E1と、第2領域E2と、を有している。第1領域E1は、座部3の右半分である(座席1Aに着座した着座者から見た右半分である。)。第2領域E2は、座部3の左半分である(座席1Aに着座した着座者から見た左半分である。)。
【0017】
背凭れ4は、座部3の上面に対して交差するように延び、その表面を構成するシート部材と、シート部材の内側に設けられる緩衝部材(クッション部材)等を有する。座部3及び背凭れ4の緩衝部材は、例えばウレタンフォームによって構成される。背凭れ4は、着座面から見て、第1領域E3と、第2領域E4と、を有している。第1領域E3は、背凭れ4の右半分である(座席1Aに着座した着座者から見た右半分である。)。第2領域E4は、背凭れ4の左半分である(座席1Aに着座した着座者から見た左半分である。)。
【0018】
上記「着座面」とは、着座者が座席に着座した際に接触する面を意味し、座部3においてはその上面が該当し、背凭れ4においてはその前面が該当する。
【0019】
振動子(第1振動子)5Rは、座部3の緩衝部材の内部の第1領域E1に配設されている。振動子(第2振動子)5Lは、座部3の緩衝部材の内部の第2領域E2に配設されている。振動子(第1振動子)6Rは、背凭れ4の緩衝部材の内部の第1領域E3(に配設されている。振動子(第2振動子)6Lは、背凭れ4の緩衝部材の内部の第2領域E4に配設されている。
【0020】
二対の振動子5L,5R,6L,6Rは同一構成であり、
図2に示すように、ケース510内に磁気回路520が収容されたものである。ケース510は、背の低い円筒フレーム511の一端側の開口が、中央部に複数の貫通孔512が設けられた円形の第1板壁513で塞がれ、他端側の開口が円形の第2板壁514で塞がれたものである。
【0021】
第1板壁513の略中央からは、複数の貫通孔512を囲むように円筒状のボビン515が第2板壁514に向かって立設されており、そのボビン515の外周にボイスコイル516が設けられている。このように、ボイスコイル516は、ボビン515を介して第1板壁513に固定されている。また、複数の貫通孔512は、第1板壁513と交差する方向から見たときの平面視でボイスコイル516の内側に相当する領域513aに設けられている。
【0022】
磁気回路520は、リング状のプレート521及びマグネット522と円盤状のヨーク523とを備えている。プレート521及びマグネット522は、ボイスコイル516に対してギャップを開けて同軸に配置されている。プレート521、即ち磁気回路520は、ダンパ530を介して円筒フレーム511の内壁面に、第1板壁513に対する接離方向D1に振動可能に支持されている。
【0023】
ボイスコイル516に交流信号が通電されると、磁気回路520が、第1板壁513に対する接離方向D1に振動する。また、その振動のダンパ530を介した反作用でケース510が振動する。
【0024】
本実施例の振動子5L,5R,6L,6Rは外磁型の磁気回路構成であるが、振動子の構成はこれに限らず、例えば、内磁型の磁気回路構成であってもよい。
【0025】
このような振動子5L,5R,6L,6Rは、第1板壁513が着座者側に向く向きで配置されている。また、座部3において、一対の振動子5L,5Rは、座部3の幅方向の中心を通りかつ座席1Aの前後方向と平行な中心軸に関して線対称に配置されている。同様に、背凭れ4において、一対の振動子6L,6Rは、背凭れ4の幅方向の中心を通りかつ背凭れ4の下端から上端に向かう方向と平行な中心軸に関して線対称に配置されている。
【0026】
振動吸収材7は、四角柱状に形成されており、座部3の幅方向中央部における内部に配設されている。また、振動吸収材7は、その長手方向が、座席1Aの前後方向と一致している。即ち、振動吸収材7は、座部3の幅方向の中心を通りかつ座席1Aの前後方向と平行な中心軸に沿って配設されている。即ち、振動吸収材7は、座部3の第1領域E1と第2領域E2の境界部分に配設されており、一対の振動子5L,5Rの中間部に配設されている。振動吸収材7は、座部3内部の緩衝部材に対して振動が伝播しにくい素材で構成されており、本実施例では、ウレタンフォームで構成されている。
【0027】
また、振動吸収材7は、本実施例では、座部3の厚み方向の寸法が振動子5L,5Rの厚み(
図2の円筒フレーム511の矢印D1方向の寸法)と同程度であるが、この振動吸収材7における座部3の厚み方向の寸法は、適宜変更可能であり、座部3の厚みと同程度としてもよい。
【0028】
このような振動吸収材7は、振動子5Rの振動が第2領域E2に伝播することを抑制し、かつ、振動子5Lの振動が第1領域E1に伝播することを抑制する。
【0029】
振動吸収材8は、四角柱状に形成されており、背凭れ4の幅方向中央部における内部に配設されている。また、振動吸収材8は、その長手方向が、背凭れ4の下端から上端に向かう方向と一致している。即ち、振動吸収材8は、背凭れ4の幅方向の中心を通りかつ背凭れ4の下端から上端に向かう方向と平行な中心軸に沿って配設されている。即ち、振動吸収材8は、背凭れ4の第1領域E3と第2領域E4の境界部分に配設されており、一対の振動子6L,6Rの中間部に配設されている。振動吸収材8は、背凭れ4内部の緩衝部材に対して振動が伝播しにくい素材で構成されており、本実施例では、ウレタンフォームで構成されている。
【0030】
また、振動吸収材8は、本実施例では、背凭れ4の厚み方向の寸法が振動子6L,6Rの厚み(
図2の円筒フレーム511の矢印D1方向の寸法)と同程度であるが、この振動吸収材8における背凭れ4の厚み方向の寸法は、適宜変更可能であり、背凭れ4の厚みと同程度としてもよい。
【0031】
このような振動吸収材8は、振動子6Rの振動が第2領域E4に伝播することを抑制し、かつ、振動子6Lの振動が第1領域E3に伝播することを抑制する。
【0032】
上記制御手段は、振動子5L,5R,6L,6Rに流す電流を制御することにより、各振動子5L,5R,6L,6Rの振動を独立に制御する。制御手段は、自車両が走行中に車線を逸脱した場合に、振動子5L,5R,6L,6Rを振動させることでその旨を報知するといった制御を行う。
【0033】
上記構成の座席1Aによれば、各振動子5L,5R,6L,6Rが発する振動は、着座者側には良好に伝播し、座席1Aの幅方向には振動吸収材7,8によって伝播が抑制されるので、着座者に振動源位置をより正確に認識させることができる。即ち、振動を発している振動子が右側のものか左側のものかをより正確に認識させることができる。よって、各振動子5L,5R,6L,6Rの振動が意味する情報を着座者に正しく認識させることができる。また、一つの振動吸収材7で右側と左側の振動子5R,5Lの不要振動(座席1Aの幅方向に伝搬する振動)の伝播を抑制でき、一つの振動吸収材8で右側と左側の振動子6R,6Lの不要振動の伝播を抑制できるので、座席1Aの部品点数を少なくできる。
【0034】
[実施例2]
本発明の実施例2にかかる「座席」を
図3を参照して説明する。
図3において、前述した実施例1と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
図3に示す本実施例の座席1Bは、座部3及び背凭れ4と、二対の振動子5L,5R,6L,6Rと、伝播抑制手段と、制御手段と、を備え、実施例1と同じく車両の運転席を構成する。
【0036】
上記伝播抑制手段は、座部3の内部の緩衝部材を座部3の幅方向中央部にて左右に分割した分割溝P1、及び、背凭れ4の内部の緩衝部材を背凭れ4の幅方向中央部にて左右に分割した分割溝P2である。分割溝P1,P2は、実施例1の振動吸収材7,8と対応する位置に形成されている。
【0037】
分割溝P1は、座部3の緩衝部材の上面から凹に形成されており、分割溝P1の内部は空洞となっている。本実施例では、分割溝P1の深さ(座部3の厚み方向の深さ)が振動子5L,5Rの厚み(
図2の円筒フレーム511の矢印D1方向の寸法)と同程度であるが、この分割溝P1の深さは、適宜変更可能であり、座部3の緩衝部材における厚み方向の全域にわたって形成されていてもよい。また、本発明においては、分割溝P1の代わりに、座部3の緩衝部材における厚み方向の中央部をくり抜いた空洞を形成してもよい。
【0038】
このような分割溝P1は、振動子5Rの振動が第2領域E2に伝播することを抑制し、かつ、振動子5Lの振動が第1領域E1に伝播することを抑制する。
【0039】
分割溝P2は、背凭れ4の緩衝部材の前面から凹に形成されており、分割溝P2の内部は空洞となっている。本実施例では、分割溝P2の深さ(背凭れ4の厚み方向の深さ)が振動子6L,6Rの厚み(
図2の円筒フレーム511の矢印D1方向の寸法)と同程度であるが、この分割溝P2の深さは、適宜変更可能であり、背凭れ4の緩衝部材における厚み方向の全域にわたって形成されていてもよい。また、本発明においては、分割溝P2の代わりに、背凭れ4の緩衝部材における厚み方向の中央部をくり抜いた空洞を形成してもよい。
【0040】
このような分割溝P2は、振動子6Rの振動が第2領域E4に伝播することを抑制し、かつ、振動子6Lの振動が第1領域E3に伝播することを抑制する。
【0041】
上記構成の座席1Bによれば、各振動子5L,5R,6L,6Rが発する振動は、着座者側には良好に伝播し、座席1Bの幅方向には分割溝P1,P2によって伝播が抑制されるので、着座者に振動源位置をより正確に認識させることができる。即ち、振動を発している振動子が右側のものか左側のものかをより正確に認識させることができる。よって、各振動子5L,5R,6L,6Rの振動が意味する情報を着座者に正しく認識させることができる。また、座部3及び背凭れ4に分割溝P1,P2を形成することにより、実施例1で説明したような専用の振動吸収材を用いることなく振動子5L,5R,6L,6Rの不要振動(座席1Bの幅方向に伝搬する振動)の伝播を抑制できるので、座席1Bの部品点数を少なくできる。
【0042】
[実施例3]
本発明の実施例3にかかる「座席」を
図4~6を参照して説明する。
図4~6において、前述した実施例1,2と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
図4に示す本実施例の座席1Cは、座部3及び背凭れ4と、二対の振動子5L,5R,6L,6Rと、振動吸収材(伝播抑制手段)9と、制御手段と、を備え、実施例1と同じく車両の運転席を構成する。
【0044】
振動吸収材9は、
図5に示すように、環状に形成されており、各振動子5L,5R,6L,6Rの周囲、即ち円筒フレーム511の外周部分に設けられている。
図5においては、振動子5Lの周囲に設けられた振動吸収材9のみを示しているが、他の振動子5R,6L,6Rの周囲に設けられた振動吸収材9も
図5と同一構成である。
【0045】
振動子5L,5Rの周囲に設けられた振動吸収材9は、座部3内部の緩衝部材に対して振動が伝播しにくい素材で構成されており、本実施例では、ウレタンフォームで構成されている。また、振動子5L,5Rの周囲に設けられた振動吸収材9は、本実施例では、座部3の厚み方向の寸法が振動子5L,5Rの厚み(
図2の円筒フレーム511の矢印D1方向の寸法)と同程度であるが、この振動吸収材9における座部3の厚み方向の寸法は、適宜変更可能であり、座部3の厚みと同程度としてもよい。また、振動吸収材9は、振動子5L,5Rの円筒フレーム511の外周面全域を覆っている。
【0046】
振動子5Rの周囲に設けられた振動吸収材9は、内側に位置する振動子5Rの振動が、第2領域E2に伝播することを抑制する。振動子5Lの周囲に設けられた振動吸収材9は、内側に位置する振動子5Lの振動が、第1領域E1に伝播することを抑制する。
【0047】
振動子6L,6Rの周囲に設けられた振動吸収材9は、背凭れ4内部の緩衝部材に対して振動が伝播しにくい素材で構成されており、本実施例では、ウレタンフォームで構成されている。また、振動子6L,6Rの周囲に設けられた振動吸収材9は、本実施例では、背凭れ4の厚み方向の寸法が振動子6L,6Rの厚み(
図2の円筒フレーム511の矢印D1方向の寸法)と同程度であるが、この振動吸収材9における背凭れ4の厚み方向の寸法は、適宜変更可能であり、背凭れ4の厚みと同程度としてもよい。また、振動吸収材9は、振動子6L,6Rの円筒フレーム511の外周面全域を覆っている。
【0048】
振動子6Rの周囲に設けられた振動吸収材9は、内側に位置する振動子6Rの振動が、第2領域E4に伝播することを抑制する。振動子6Lの周囲に設けられた振動吸収材9は、内側に位置する振動子6Lの振動が、第1領域E3に伝播することを抑制する。
【0049】
上記構成の座席1Cによれば、
図6に示すように、各振動子5L,5R,6L,6Rが発する振動は、着座者側には良好に伝播し、振動子5L,5R,6L,6Rの径方向には振動吸収材9によって伝播が抑制されるので、着座者に振動源位置をより正確に認識させることができる。即ち、振動を発している振動子が右側のものか左側のものかをより正確に認識させることができる。よって、各振動子5L,5R,6L,6Rの振動が意味する情報を着座者に正しく認識させることができる。また、各振動子5L,5R,6L,6Rの周囲に振動吸収材9を設けることにより、各振動子5L,5R,6L,6Rの振動範囲を狭い範囲に限定することができるので、着座者に振動源位置をより正確に認識させることができる。
【0050】
上述した実施例3では、全ての振動子5L,5R,6L,6Rの周囲に振動吸収材9を設けていたが、本発明はこれに限らず、一対の振動子5L,5Rの一方の周囲に振動吸収材9を設け、一対の振動子6L,6Rの一方の周囲に振動吸収材9を設けてもよい。その場合においても、不要振動の伝播を抑制することについて一定の効果が得られる。
【0051】
[実施例3の変形例]
本発明の実施例3の変形例の「座席」を
図7を参照して説明する。
図7において、前述した実施例3と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
図7に示す座席101Cは、座部3及び背凭れ4と、二対の振動子5L,5R,6L,6Rと、各振動子5L,5R,6L,6Rの周囲に設けられた振動吸収材(伝播抑制手段)109と、制御手段と、を備え、実施例3と同じく車両の運転席を構成する。
【0053】
振動吸収材109は、振動子5L,5R,6L,6Rの厚み方向の寸法が実施例3の振動吸収材9よりも大きいこと以外は、実施例3の振動吸収材9と同一構成である。
【0054】
振動子5L,5Rの周囲に設けられた振動吸収材109は、座部3の厚みと同程度の厚みに形成されている。この振動吸収材109の内側における振動子5L,5Rの上下には、空洞S1,S2が存在している。本発明では、これら空洞S1,S2にウレタンフォームなどを充填してもよいし、座部3と同素材の緩衝部材を詰めてもよい。
【0055】
振動子6L,6Rの周囲に設けられた振動吸収材109は、背凭れ4の厚みと同程度の厚みに形成されている。この振動吸収材109の内側における振動子6L,6Rの前後には、空洞S3,S4が存在している。本発明では、これら空洞S3,S4にウレタンフォームなどを充填してもよいし、背凭れ4と同素材の緩衝部材を詰めてもよい。
【0056】
上記構成の座席101Cによれば、実施例3の振動吸収材9よりも厚みが大きく形成された振動吸収材109によって、振動子5L,5R,6L,6Rの不要振動(振動子5L,5R,6L,6Rの径方向に伝搬する振動)の伝播を、実施例3の振動吸収材9よりもさらに抑制することができる。
【0057】
[実施例4]
本発明の実施例4にかかる「座席」を
図8~10を参照して説明する。
図8~10において、前述した実施例1~3と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
図8に示す本実施例の座席1Dは、座部3及び背凭れ4と、二対の振動子5L,5R,6L,6Rと、各振動子5L,5R,6L,6Rの周囲に設けられた振動吸収材(伝播抑制手段)10と、振動吸収材10を支持した枠材11と、制御手段と、を備え、実施例1と同じく車両の運転席を構成する。
【0059】
振動吸収材10は、制振バネであり、各振動子5L,5R,6L,6R毎に3つずつ設けられている。この振動吸収材10は、
図9に示すように、一端が円筒フレーム511の外周部分に取り付けられ、他端が枠材11に取り付けられている。枠材11は、円筒状に形成されており、各振動子5L,5R,6L,6Rの外周に配置されている。3つの振動吸収材10は、各振動子5L,5R,6L,6Rの周方向に等間隔をあけて配置されている。
図9においては、振動子5Lの周囲に設けられた振動吸収材10及び枠材11のみを示しているが、他の振動子5R,6L,6Rの周囲に設けられた振動吸収材10及び枠材11も
図9と同一構成である。なお、
図9においては、振動吸収材10を模式的に示している。
【0060】
振動子5Rの周囲に設けられた振動吸収材10は、内側に位置する振動子5Rの振動が、第2領域E2に伝播することを抑制する。振動子5Lの周囲に設けられた振動吸収材10は、内側に位置する振動子5Lの振動が、第1領域E1に伝播することを抑制する。振動子6Rの周囲に設けられた振動吸収材10は、内側に位置する振動子6Rの振動が、第2領域E4に伝播することを抑制する。振動子6Lの周囲に設けられた振動吸収材10は、内側に位置する振動子6Lの振動が、第1領域E3に伝播することを抑制する。
【0061】
上記構成の座席1Dによれば、
図10に示すように、各振動子5L,5R,6L,6Rが発する振動は、着座者側には良好に伝播し、振動子5L,5R,6L,6Rの径方向には振動吸収材10によって伝播が抑制されるので、着座者に振動源位置をより正確に認識させることができる。即ち、振動を発している振動子が右側のものか左側のものかをより正確に認識させることができる。よって、各振動子5L,5R,6L,6Rの振動が意味する情報を着座者に正しく認識させることができる。また、各振動子5L,5R,6L,6Rの周囲に振動吸収材10を設けることにより、各振動子5L,5R,6L,6Rの振動範囲を狭い範囲に限定することができるので、着座者に振動源位置をより正確に認識させることができる。
【0062】
なお、本発明は、前記実施例1~4に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0063】
例えば、前記実施例1~4では、座席1A,1B,1C,1Dが二対の振動子5L,5R,6L,6Rを備えている構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、座席が一の領域に配設された1つの振動子と、該振動子の振動が他の領域に伝播することを抑制する伝播抑制手段と、を備えた構成であってもよい。この場合でも、着座者に振動源位置をより正確に認識させることができる。
【0064】
また、前記実施例1~4では、座部3及び背凭れ4が、それぞれ、座席の幅方向に隣接した第1領域と第2領域を有している構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、座部が前後方向に隣接した第1領域と第2領域を有している構成であってもよいし、背凭れが上下方向に隣接した第1領域と第2領域を有している構成であってもよい。さらに、座部又は背凭れが升目状に配置された複数の領域を有している構成であってもよい。
【0065】
また、前記実施例1~4では、伝播抑制手段である振動吸収材7,8、分割溝P1,P2、振動吸収材9、振動吸収材10が単独で採用されていたが、本発明は、これら複数種の伝播抑制手段を組み合わせて用いてもよい。例えば、実施例1の振動子5L,5Rの周囲に振動吸収材9を設け、これら振動吸収材9と振動吸収材7とで振動子5L,5Rの不要振動(座席の幅方向に伝搬する振動)の伝播を抑制する構成であってもよい。また、実施例2の振動子5L,5Rの周囲に振動吸収材10及び枠材11を設け、これら振動吸収材10と分割溝P1とで振動子5L,5Rの不要振動の伝播を抑制する構成であってもよい。
【0066】
また、前記実施例1~4では、座部3と背凭れ4の双方に振動子が配設されていたが、本発明では、座部3と背凭れ4の何れか一方のみに振動子が配設されていてもよい。
【0067】
また、前記実施例1~4では、振動子5L,5R,6L,6Rが同一構成かつ同じサイズであったが、必要な振動の強さを得るため、背凭れ4内に配設される振動子と座部3内に配設される振動子の大きさが異なってもよいし、背凭れ4、座部3内に配設される振動子の数が3個以上の場合、背凭れ4、座部3内の振動子の大きさが異なってもよい。
【0068】
また、前記実施例1~4では、座席が車両に搭載される例を説明したが、本発明の座席は、車両以外の座席、例えば、映画館や劇場の座席を構成してもよい。
【0069】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施例に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施例に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。