(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060159
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/727 20060101AFI20230420BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230420BHJP
A61K 31/07 20060101ALI20230420BHJP
A61K 31/4166 20060101ALI20230420BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20230420BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20230420BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230420BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230420BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20230420BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230420BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230420BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20230420BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230420BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
A61K31/727
A61P17/00
A61K31/07
A61K31/4166
A61K31/197
A61K8/67
A61K8/73
A61K8/49
A61K8/42
A61Q19/00
A61P43/00 121
A61K8/39
A61K47/14
A61K47/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033153
(22)【出願日】2023-03-03
(62)【分割の表示】P 2020147330の分割
【原出願日】2015-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2014099355
(32)【優先日】2014-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014222195
(32)【優先日】2014-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】中 幸子
(72)【発明者】
【氏名】古野 哲生
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 沙予
(57)【要約】
【課題】皮膚疾患の抑制、防止、予防又は改善に使用される外用組成物を提供する。
【解決手段】皮膚疾患の抑制、防止、予防又は改善に使用される外用組成物は、(A)ヘパリン類似物質と、(B)アラントイン、パントテン酸、ビタミンA類、これらの薬学的に許容される塩、及びこれらの薬学的に許容される誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上と、(C)非イオン性界面活性剤と、を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚疾患の抑制、防止、予防又は改善に使用される外用組成物であって、
(A)ヘパリン類似物質と、
(B)アラントイン、パントテン酸、ビタミンA類、これらの薬学的に許容される塩、及びこれらの薬学的に許容される誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上と、
(C)非イオン性界面活性剤と、
を含有する、外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚疾患の抑制、防止、予防又は改善に使用される外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
痒みを伴う皮膚疾患として、老人性乾皮症、アトピー性皮膚炎、主婦湿疹などの乾燥性皮膚疾患、炎症性皮膚疾患、皮膚掻痒症、あせも、しもやけ、ひび、あかぎれ等が知られている。これらの皮膚疾患に罹患した患者の皮膚は、外部の刺激に対して敏感になり、これが、痒みが繰り返し生じる原因の一つとなっている。この痒みに対して、患者は過剰な掻破行動に及んでしまうことも多い。
【0003】
これらの症状に対しては、抗ヒスタミン剤及びクロタミトンなどの鎮痒成分、ヘパリン類似物質及び尿素などの保湿剤、アラントイン及びグリチルリチン酸塩などの抗炎症成分を有効成分とした皮膚外用組成物が広く用いられている。
【0004】
これらのうち、ヘパリン類似物質は、皮膚保湿作用及び血行促進作用を有する。具体的には、ヘパリン類似物質の皮膚保湿作用により、皮膚の乾燥性症状が軽減される。また、ヘパリン類似物質の血行促進作用により、使用部位の血行が促進され、血行障害に基づく痛みや腫れが軽減される。このため、ヘパリン類似物質は、皮脂欠乏症、進行性指掌角皮症、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイド、血行障害に基づく疼痛又は炎症性疾患、血栓性静脈炎、外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎等の治療又は予防に用いられる。
【0005】
特許文献1には、クロタミトンとヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物により、乾燥性皮膚疾患や炎症性皮膚疾患等に伴う痒みを改善できると記載されている。
【0006】
特許文献2には、抗ヒスタミン剤含有製剤とヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物により、乾燥性皮膚疾患及び炎症性皮膚疾患等に伴う痒みを改善できると記載されている。
【0007】
特許文献3には、非ステロイド抗炎症剤とヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物により、乾燥性皮膚疾患及び炎症性皮膚疾患等に伴う痒みを改善できると記載されている。
【0008】
特許文献4には、ヘパリン類似物質、アラントイン、及びパントテン酸を配合した皮膚外用組成物が開示されている。そして、この皮膚外用剤によれば、角層細胞の正常な分化を促進することできると記載されている。
【0009】
特許文献5には、ビタミンA類、エデト酸又はその塩、及びヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物が開示されている。そして、この皮膚外用組成物によれば、ビタミンA類を安定して含有することができると記載されている。
【0010】
ところで、痒みに対する患者の過剰な掻破行動により、皮膚が傷ついたり炎症が起こったりし、皮膚に掻痒痕が残ることがある。場合によっては、この掻痒痕は色素沈着を伴う。皮膚への色素沈着が生じる他の場合としては、例えば熱傷、外傷による外部からの傷が完治した後、色素沈着してしまう場合(瘢痕等ともいう)が挙げられる。また、ホルモンバランスの乱れ、加齢、急激な強い日焼け、慢性的な摩擦等も、皮膚への色素沈着の原因となる。皮膚の色素沈着は皮膚外観上または美容上の観点から、抑制、防止、予防又は改善することが望まれている。また、真皮に存在するメラノサイトが過剰にメラニンを産生することで、いわゆる黒あざ、茶あざ、青あざ等のあざ(痣)となることも知られている。更に、外傷(打撲、捻挫、挫傷)などで皮膚が傷ついた場合、色素沈着を伴うだけでなく、血腫(皮下出血による青あざ)が発生し色素沈着が目立つ原因にもなる。
【0011】
血腫は、外傷によって皮膚又は皮下組織にある毛細血管が破れることによって血液が組織内に滞留したものであり、皮下血腫の症状は外傷を受けた部位が青または紫色に変色する。血腫は、血管及び組織の修復により、滲出物排除により徐々に消失するものの、加齢や色素沈着を併用することで回復までに長期間要することもある。このため皮膚外観上または美容上の観点から早期に血腫を消失させる又は血腫の色を早期に退色(薄くなる)させることが望まれる。このため色素沈着または血腫の抑制、防止、予防又は改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000-229852号公報
【特許文献2】特開2000-229884号公報
【特許文献3】特開2000-38352号公報
【特許文献4】特開2011-231128号公報
【特許文献5】特開2012-36183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、皮膚疾患の抑制、防止、予防、又は改善に使用できる外用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決する皮膚疾患の抑制、防止、予防又は改善に使用される外用組成物は、(A)ヘパリン類似物質と、(B)アラントイン、パントテン酸、ビタミンA類、これらの薬学的に許容される塩、及びこれらの薬学的に許容される誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上と、(C)非イオン性界面活性剤と、を含有する。
【0015】
上記の構成によれば、外用組成物が成分(A),(B)及び(C)を含むので、それらの相乗効果によりメラニン産生抑制効果が発揮される。従って、皮膚へ色素が沈着することを抑制、防止、予防、又は改善することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外用組成物の成分(A),(B)及び(C)を含んでいるので、それらの相乗効果により、皮膚へ色素が沈着することを抑制、防止、予防、又は改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50の配合量とメラニン産生量減少率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、外用組成物に添加した成分等の、特定の成分等に対する相対量を示す場合には、「重量部」の単位を用いる。
【0019】
本実施形態の外用組成物Eは、例えば、老人性乾皮症、アトピー性皮膚炎、主婦湿疹などの乾燥性皮膚疾患、炎症性皮膚疾患、皮膚掻痒症、あせも、しもやけ、ひび、あかぎれ等の痒みを伴う皮膚疾患の患部に塗布される外皮用薬として用いられる。
【0020】
外用組成物Eには、有効成分として、以下説明する成分(A),(B)及び(C)が配合されている。
【0021】
上記の成分(A)は、ヘパリン類似物質である。ヘパリン類似物質は、血行促進作用、繊維芽細胞増殖抑制作用を有することが知られている。
【0022】
外用組成物Eに配合されるヘパリン類似物質は、コンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖の総称である。ヘパリン類似物質は、ムコ多糖を構成する単糖1分子当たり平均0.5~5分子、好ましくは平均0.6~3分子の硫酸基を有することが好ましい。
【0023】
ヘパリン類似物質としては、一般的に入手できる市販品をそのまま用いてよい。また、ムコ多糖を硫酸化する方法、または天然に存在する硫酸化多糖を抽出する等の方法によりヘパリン類似物質を得ることもできる。天然に存在する硫酸化多糖を抽出する方法としては、例えば、ウシ、ブタ等の動物の気管支を含む内臓より水性担体を用いて抽出・精製し、その後、必要に応じて抽出物を硫酸化する方法がある。ヘパリン類似物質としては、日本薬局方外医薬品規格に収載されているものが好適に使用される。
【0024】
また、ヘパリン類似物質の分子量には特に制限はないが、通常、1000~10000000程度であり、好ましくは5000~1000000である。
【0025】
外用組成物Eに配合される成分(A)の配合量の外用組成物Eの全量に占める割合は、本願効果を奏し得る限り、特に制限されないが、例えば、0.00001重量%以上である。成分(A)の配合量の外用組成物Eの全量に占める割合は、0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.05重量%以上がさらに好ましく、0.1重量%以上がさらにより好ましく、0.3重量%以上が特に好ましい。特定の実施態様においては、成分(A)の配合量の外用組成物Eの全量に占める割合を0.45重量%以上としてもよい。成分(A)の配合量の外用組成物Eの全量に占める割合を0.00001重量%以上とすることによって好ましい効果を得ることができる。成分(A)の配合量の外用組成物Eの全量に占める割合を0.001重量%以上とすることによって優れた効果を得ることができ、また、0.01重量%以上とすることにより、より優れた効果を得ることができる。また、成分(A)の外用組成物Eの全量に占める割合は、10重量%以下が好ましく、7重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらにより好ましく、1重量%以下が特に好ましい。成分(A)の配合量の外用組成物Eの全量に占める割合が10重量%よりも小さい場合には、外用組成物Eの使用時のベタツキ感が抑制され、より優れた使用感が得られる。
【0026】
成分(B)は、アラントイン、パントテン酸、ビタミンA類、これらの薬学的に許容される塩、及びこれらの薬学的に許容される誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上である。アラントインは、創傷治癒促進作用を有する有効成分である。パントテン酸は、糖質、タンパク質、脂質等のエネルギーの代謝を補助する作用を有し、細胞の賦活化、新陳代謝の活発化、保湿、抵抗力の増強等の有用な生理活性を発揮することが知られている。ビタミンA類は、打ち身などに伴う皮下出血によるあざの消失促進作用、またはあざの退色促進作用を有する有効成分である。成分(B)は、1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用しても、いずれでもよい。
【0027】
外用組成物Eに配合されるアラントインの塩の具体例としては、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム等が挙げられる。
【0028】
外用組成物Eに配合されるアラントインの誘導体の具体例としては、アラントイン酸、ジヒドロキシアルミニウムアラントイネート、アラントイングリチルレチン、クロロヒドロキシアルミニウムアラントイネート等が挙げられる。
【0029】
外用組成物Eに配合されるパントテン酸の塩の具体例としては、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0030】
外用組成物Eに配合されるパントテン酸の誘導体の具体例としては、パンテノール、パントテニルエチルエーテル、アセチルパントテニルエチルエーテル等が挙げられる。
【0031】
外用組成物Eに配合されるビタミンA類としては、レチノール又はレチノイン酸のエステルが好ましく、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、δ-レチノイン酸トコフェロールが挙げられる。
【0032】
ビタミンA類は、動物材料などの天然物から単離したもの、化学合成したものの何れであってもよい。また、ビタミンA類は、ビタミンA油の形態で用いることもできる。ビタミンA油は、動物から抽出、精製した天然油でもよく、また、ビタミンA類を植物油などに溶解させたものでもよい。後者の代表例として、日本薬局方記載のビタミンA油(1gにつき30000ビタミンA単位(IU)以上を含む)が挙げられる。
【0033】
外用組成物Eに配合される成分(B)の配合量(成分(B)として2種以上の成分が配合される場合は、それらの配合量の和)の外用組成物Eの全量に占める割合は、一例として、0.0001重量%以上である。外用組成物Eに配合される成分(B)の配合量の外用組成物Eの全量に占める割合は、0.001重量%以上が好ましく、0.04重量%以上がより好ましく、0.05重量%以上がさらに好ましく、0.5重量%以上がさらにより好ましく、1.5重量%以上が特に好ましい。成分(B)の配合量の外用組成物Eの全量に占める割合を0.0001重量%以上とすることによって好ましい効果を得ることができ、0.001重量%以上とすることにより、より優れた効果を得ることができる。また、成分(B)の外用組成物Eの全量に占める割合は、10重量%以下が好ましく、7重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。上記の範囲であれば、外用組成物Eは良好な使用感を有することができる。成分(B)の配合量の外用組成物Eの全量に占める割合を10重量%以下とすることにより、より優れた使用感が得られる。また、成分(B)の含有量は、成分(A)の1重量部に対して、例えば0.0001~25重量部である。成分(B)は、成分(A)の1重量部に対して0.01~10重量部含まれていることが好ましく、0.05~5重量部含まれていることがより好ましく、0.1~2重量部含まれていることがさらに好ましい。
【0034】
成分(C)は、非イオン性界面活性剤である。成分(C)は、1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用しても、いずれでもよい。
【0035】
非イオン性界面活性剤としては、エステル系の非イオン性界面活性剤、エーテル系の非イオン性界面活性剤、アルキルグリコシド、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0036】
エステル系の非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル等が挙げられる。
【0037】
ソルビタン脂肪酸エステル類としては、例えば、非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等が挙げられる。グリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、モノステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等が挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、モノステアリン酸ポリグリセリル、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、モノミリスチン酸ポリグリセリル等が挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸類としては、例えば、モノステアリン酸ポリグリセリル、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。プロピレングリコール脂肪酸エステル類としては、例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。硬化ヒマシ油誘導体としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(HCO-40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(HCO-50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO-60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類としては、例えば、モノラウリル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン等が挙げられる。
【0038】
エーテル系の非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等が挙げられる。
【0039】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等が挙げられる。
【0040】
アルキルグリコシドとしては、例えば、オクチルグリコシド、デシルグリコシド、ラウリルグリコシド等が挙げられる。
【0041】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等が挙げられる。
【0042】
非イオン性界面活性剤のHLB値は、川上法により測定された値を基準にしている。HLB値は、組成物の皮膚への馴染みが良い点で、8以上であることが好ましく、特に9以上、中でも10以上のものが好適である。つまり、非イオン性界面活性剤は、疎水性でないことが好ましい。
【0043】
外用組成物Eにおいて、成分(C)の配合量(成分(C)として2種以上の成分が配合される場合は、それらの配合量の和)の外用組成物Eの全量に占める割合は、0.0001重量%以上が好ましく、0.005重量%以上がより好ましく、0.01重量%以上がさらに好ましく、0.05重量%以上が特に好ましい。成分(C)の配合量の外用組成物Eの全量に占める割合を0.0001重量%以上とすることにより、より優れた効果を得ることができる。また、成分(C)の外用組成物Eの全量に占める割合は、25重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。成分(C)の配合量の外用組成物Eの全量に占める割合を25重量%以下とすることにより、外用組成物Eの使用時のベタツキ感が抑制され、より優れた使用感が得られる。また、成分(C)の含有量は、成分(A)の1重量部に対して、例えば、0.1~80重量部である。成分(C)は、成分(A)の1重量部に対して、1~50重量部含まれていることが好ましく、5~40重量部含まれていることがより好ましく、6~35重量部含まれていることがさらに好ましい。
【0044】
外用組成物Eは、上述の成分(A)、(B)及び(C)が配合されていることにより、例えば痒みを伴う皮膚疾患において、患部を掻いた後に皮膚へ色素が沈着することを抑制、防止、予防、又は改善することができる。また、外用組成物Eは、上述の成分(A)、(B)及び(C)が配合されていることにより、打ち身などに伴って発生する血腫の消失および/または退色を促進できる。
【0045】
外用組成物Eには、種々の皮膚疾患に対する有効性をより高めるために、必要に応じて上記必須成分の他に、非ステロイド性抗炎症剤、ビタミン類、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、ステロイド剤、局所麻酔剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、角質軟化剤、保湿剤、収斂剤、抗酸化剤、清涼化剤等の種々の有効成分を配合することができる。また、これらの成分の配合量は、本発明の効果を奏すれば特に制限されないが、望ましくは薬学上許容される上限配合量を限度に適宜選択される。
【0046】
外用組成物Eには、上記の有効成分以外に、通常の外用組成物に配合される水溶性成分、保存剤、pH調整剤、増粘剤、酸化防止剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0047】
外用組成物Eの剤型としては、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、乳剤、外用液剤、貼付剤、固形剤、パップ剤、パック剤、テープ剤等が挙げられる。
【0048】
なお、各製剤の常法によって外用組成物Eを調製することができる。このとき、各種剤型の製剤の調整に必要な公知の賦形剤等の成分を、適宜配合する。
【0049】
外用組成物Eの皮膚への適用量や用法は、特に制限されず、例えば、1日数回(例えば、約1~5回、好ましくは1~3回)、1回当たり適量(例えば、約0.05~5g)を皮膚に塗布すればよい。なお、外用組成物Eの皮膚への適用量や用法は使用対象の皮膚の状態、年齢、性別などによって異なる。塗布期間は、例えば約2週間~6ヶ月、好ましくは約1~6ヶ月間とすればよい。外用組成物Eは、掻痒によってメラニン産生が促進され、皮膚の色素沈着が生じる虞のある人、又は、掻痒によりメラニン産生が促進されて生じた皮膚の色素沈着を有する人に好適に使用できる。
【0050】
本実施形態にかかる外用組成物Eは、例えば、老人性乾皮症、アトピー性皮膚炎、主婦湿疹などの乾燥性皮膚疾患、炎症性皮膚疾患、皮膚掻痒症、あせも、しもやけ、ひび、あかぎれ等の痒みを伴う皮膚疾患の患部に塗布される外皮用薬として用いられるとして説明したが、外用組成物Eの用途は特にこれに限定されない。例えば、外用組成物Eを、例えば熱傷、外傷による外部からの傷が完治した後に皮膚に生じた色素沈着(例えば、瘢痕)に対し塗布する外皮用薬として用いてもよい。また、外用組成物Eを、例えばホルモンバランスの乱れ、加齢、急激な強い日焼け、慢性的な摩擦等が原因で生じた色素沈着に対し塗布する外皮用薬として用いてもよい。さらに、熱傷、外傷の傷が完治した後や、ホルモンバランスの乱れ、加齢、急激な強い日焼け、慢性的な摩擦等が発生した後、色素沈着が生じる前であっても、色素沈着の予防又は防止の目的で、外用組成物Eを皮膚に塗布してもよい。また、外用組成物Eを、あざ(例えば、黒あざ、茶あざ、青あざ)の症状がみられる皮膚の部位に塗布してもよいし、あざの予防又は防止の目的で、外用組成物Eを塗布してもよい。
【実施例0051】
以下、評価試験I及び評価試験IIで作製した実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。本実験においては、メラノーマ細胞を含む細胞溶解液を調製し、細胞1つあたりのメラニン産生量を計測してメラニン産生量を減少させる効果を評価することにより、色素沈着に対する抑制、防止、予防又は改善の効果の指標とした。なお、本発明はメラニン産生抑制の観点から色素沈着の評価を行っている。
【0052】
(評価試験I)
(サンプルの調製)
まず、10%FBS(ウシ胎児血清)含有DMEM(ダルベッコ改変イーグル)培地を用いて、マウス由来のB16メラノーマ細胞を6ウェルプレート(1ウェルあたり15.53mL)に3mLずつ播種した。このとき、マウス由来のB16メラノーマ細胞の細胞密度が3.0×104cells/mLとなるように調製した。そして、プレートを、37℃及び5%炭酸ガス及び95%空気の環境下で1日間培養した。
【0053】
その後、培地を新たなDMEM培地に交換し、10%FBS含有DMEM培地を用いて調製した被験薬を、終濃度が所定の値となるように各ウェルに添加した。なお、ここで添加する被験薬の種類及び濃度は、各実施例、比較例、参考例により異なり、これについては後述する。そして、サンプルをさらに3日間培養した。プレート中の最終的な液量は、1ウェルあたり、約3mLであった。
【0054】
培養終了後、各ウェルの上清を除去し、サンプルをPBS(-)で1回洗浄した。そして、各ウェルに0.1N・NaOHを600μL添加して室温にて24時間静置した。これにより、プレート中の細胞が溶解し、細胞溶解液が得られた。細胞溶解液において、メラニン色素はアルカリ処理により完全に溶解した状態となった。
【0055】
(被験薬)
被験薬としては、実施例1~実施例12、及び比較例2~17のそれぞれにおいて、細胞溶解液に含まれる成分(A)~成分(C)の終濃度が以下に示す値となるように濃度を調製した被験薬を用いた。なお、比較例1では被験薬として何も添加しなかった。それぞれの細胞溶解液に含まれる成分(A)~成分(C)の終濃度については、表1~表6にも示す。
【0056】
(比較例1)
被験薬として成分(A)~成分(C)のいずれも添加しないものを比較例1とした。
【0057】
(比較例2~3)
被験薬として、成分(A)~成分(C)のうち成分(A)のみ添加したものを比較例2及び3とした。比較例2及び3は、それぞれ、ヘパリン類似物質の終濃度が0.006重量%及び0.002重量%となるように調製した。
【0058】
(比較例4~7)
被験薬として、成分(A)~成分(C)のうち成分(B)のみ添加したものを比較例4~7とした。比較例4は、パンテノールの終濃度が0.01重量%となるように調製した。また、比較例5、6及び7は、アラントインの終濃度がそれぞれ0.01重量%、0.02重量%、及び0.1重量%となるように調製した。
【0059】
(比較例8~11)
被験薬として、成分(A)~成分(C)のうち成分(C)のみ添加したものを比較例8~11とした。比較例8、9及び10は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50の終濃度がそれぞれ0.004重量%、0.01重量%、及び0.04重量%となるように調製した。また、比較例11は、ポリソルベート60の終濃度が0.02重量%となるように調製した。
【0060】
(比較例12~13)
被験薬として、成分(A)~成分(C)のうち成分(A)及び(B)のみ添加したものを比較例12及び13とした。比較例12は、ヘパリン類似物質の終濃度が0.006重量%、及びパンテノールの終濃度が0.01重量%となるように調製した。また、比較例13は、ヘパリン類似物質の終濃度が0.006重量%、及びアラントインの終濃度が0.02重量%となるように調製した。
【0061】
(比較例14)
被験薬として、成分(A)~成分(C)のうち成分(A)及び(C)のみ添加したものを比較例14とした。比較例14は、ヘパリン類似物質の終濃度が0.006重量%、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50の終濃度が0.04重量%となるように調製した。
【0062】
(比較例15~17)
被験薬として、成分(A)~成分(C)のうち成分(B)及び(C)のみ添加したものを比較例15~17とした。比較例15は、パンテノールの終濃度が0.01重量%、及びポリソルベート60の終濃度が0.02重量%となるように調製した。比較例16は、アラントインの終濃度が0.02重量%、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50の終濃度が0.04重量%となるように調製した。また、比較例17は、アラントインの終濃度が0.1重量%、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50の終濃度が0.04重量%となるように調製した。
【0063】
(実施例1~4)
成分(A)の被験薬としてヘパリン類似物質を、成分(B)の被験薬としてアラントインを、成分(C)の被験薬としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50を配合したものを、実施例1~4とした。実施例1~4では、ヘパリン類似物質の終濃度が0.006重量%となるように配合量を調製した。アラントインの終濃度については、実施例1~3では0.02重量%となるように、実施例4では0.1重量%となるように、配合量を調製した。成分(B)の配合量の、成分(A)の配合量に対する割合は、実施例1~3では3.33であり、実施例4では16.7である。また、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50の配合量については、実施例1、2、3及び4のそれぞれの終濃度が0.01重量%、0.04重量%、0.2重量%及び0.1重量%となるように調製した。成分(C)の配合量の、成分(A)の配合量に対する割合は、実施例1~4で、それぞれ、1.67重量部、6.67重量部、33.3重量部、及び16.7重量部である。
【0064】
(実施例5~9)
成分(A)の被験薬としてヘパリン類似物質を、成分(B)の被験薬としてパンテノールを、成分(C)の被験薬としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50を配合したものを、実施例5~9とした。ヘパリン類似物質の終濃度については、実施例5及び6では0.006重量%となるように、実施例7~9では0.002重量%となるように、配合量を調製した。実施例5~9では、パンテノールの終濃度が0.01重量%となるように配合量を調製した。成分(B)の配合量の、成分(A)の配合量に対する割合は、実施例5及び6では1.67、実施例7~9では5である。また、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50の配合量については、実施例5、6、7、8及び9のそれぞれの終濃度が0.01重量%、0.04重量%、0.004重量%、0.01重量%及び0.04重量%となるように調製した。成分(C)の配合量の、成分(A)の配合量に対する割合は、実施例5~9でそれぞれ1.67重量部、6.67重量部、2重量部、5重量部、及び20重量部である。
【0065】
(実施例10~12)
成分(C)として、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50の代わりにポリソルベート60を配合し、その終濃度が0.02重量%となるように調製したことを除いて、実施例5と同一の配合で被験薬を添加したサンプルを、実施例10とした。成分(B)及び成分(C)の、成分(A)の配合量に対する割合は、それぞれ1.67及び3.33である。また、成分(B)として、パンテノールの代わりにアラントインを配合し、その終濃度が0.01重量%となるように調製したことを除いて、実施例10と同一の配合で被験薬を添加したサンプルを、実施例11とした。成分(B)及び成分(C)の、成分(A)の配合量に対する割合は、それぞれ1.67及び3.33である。さらに、成分(C)として、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50の代わりにポリソルベート60を配合し、その終濃度が0.01重量%となるように調製したことを除いて、実施例8と同一の配合で被験薬を添加したサンプルを、実施例12とした。成分(B)及び成分(C)の、成分(A)の配合量に対する割合は、それぞれ5重量部及び5重量部である。
【0066】
(評価方法)
実施例及び比較例の細胞溶解液について、吸光度測定装置(コロナ電気株式会社製、マイクロプレートリーダSH-9000Lab)を用いて、得られた細胞溶解液の475nmにおける吸光度を測定し、メラニン産生量の指標とした。なお、ここでのメラニン産生量は、全部のメラノーマ細胞が有するメラニン量である。
【0067】
また、実施例及び比較例の細胞溶解液について、BCA蛋白定量キット(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、BCA Protein Assay Reagent)を用いて、各細胞溶解液の蛋白定量を行った。ここでは、B16メラノーマ細胞の蛋白量を測定した。そして、この測定値を、細胞溶解液全体のメラノーマ細胞数の指標とした。
【0068】
そして、メラノーマ細胞あたりのメラニン量を評価するため、下式に示すように、吸光度の測定から得たメラニン産生量の値を蛋白量で除し、この値をメラニン量基準値とした。なお、メラニン量基準値は、相対値により評価した。
【0069】
(メラニン量基準値)=(メラニン産生量)/(蛋白量)
具体的には、比較例1~3については、比較例1のメラニン量基準値を基準値m0(100)とした。また、比較例2及び3のメラニン量基準値mを比較例1のメラニン量基準値m0で除し、それを1から引いたものを百分率で表して、比較例2、3のメラニン産生量減少率rとした。
【0070】
実施例1~6、実施例10~12、及び比較例4~17のメラニン産生量減少率rについては、各メラニン量基準値mを、被験薬としてヘパリン類似物質のみを終濃度が0.006重量%となるように添加した場合のメラニン量基準値m0.006で除し、それを1から引いたものを百分率で表した。また、実施例7~9のメラニン産生量減少率rについては、各メラニン量基準値mを、被験薬としてヘパリン類似物質のみを終濃度が0.002重量%となるように添加した場合のメラニン量基準値m0.002aで除し、それを1から引いたものを百分率で表した。以下にメラニン産生量減少率rを求める式を示す。
【0071】
【0072】
(評価結果)
これらの評価結果を表1~表6に示す。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
表1によれば、細胞溶解液にヘパリン類似物質を含まない比較例1と、ヘパリン類似物質が配合された比較例2及び3とを比較すると、ヘパリン類似物質の終濃度が0.006重量%である比較例2は比較例1よりもメラニン産生量を減少させる効果が低下している一方で、ヘパリン類似物質の終濃度が0.002重量%である比較例3は比較例1よりもわずかにメラニン産生量を減少させる効果が増加している。このことから、細胞溶解液にヘパリン類似物質が単独で配合されていても、メラニン産生を減少させることには寄与していないことが分かる。
【0080】
表2によれば、細胞溶解液に成分(B)であるアラントイン又はパンテノールが配合された比較例4~7は、いずれも、ヘパリン類似物質が単独で配合されている場合と比較して、メラニン産生量が増加していることが分かる。従って、細胞溶解液にアラントイン又はパンテノールが単独で配合されているとき、メラニン産生量を減少させる効果は全く得られないことが分かる。
【0081】
また、表3によれば、細胞溶解液に成分(C)であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50又はポリソルベート60が配合された比較例8~11は、いずれも、ヘパリン類似物質が単独で配合されている場合と比較して、メラニン産生量が増加していることが分かる。従って、細胞溶解液にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50又はポリソルベート60が単独で配合されているとき、メラニン産生量を減少させる効果は全く得られないことが分かる。
【0082】
従って、成分(A),(B)及び(C)は、単独ではメラニン産生量を減少させる効果を有しないことが分かる。
【0083】
表4によれば、成分(A)及び成分(B)が配合されているが成分(C)が配合されていない比較例12及び比較例13、成分(A)及び成分(C)が配合されているが成分(B)が配合されていない比較例14、並びに成分(B)及び成分(C)が配合されているが、成分(A)が配合されていない比較例15~17のいずれも、ヘパリン類似物質が単独で配合されている場合と比較して、メラニン産生量が増加していることが分かる。このことから、成分(A),(B)及び(C)のうち2種類を組み合わせても、メラニン産生量を減少させる効果を有しないことが分かる。
【0084】
表5及び6によれば、細胞溶解液に成分(A)、(B)及び(C)の全てが配合された実施例1~12は、ヘパリン類似物質が単独で配合されている場合と比較して、メラニン産生量が低減していることが分かる。従って、メラニン産生の抑制に効果を有しない成分(A)に対して、成分(B)及び成分(C)の両方が組み合わされてはじめて、メラニン産生量を減少させる効果が得られることが分かる。
【0085】
なお、特開2011-231128号公報には、皮膚外用剤にヘパリン類似物質、アラントイン、及びパントテン酸を配合することが開示され、添加剤として、モノステアリン酸ソルビタン等の界面活性剤を配合することが開示されている。また、特開2012-36183号公報には、ヘパリン類似物質、アラントイン、及びパントテン酸を含んだ外用組成物が開示され、この外用組成物が、任意成分としてアラントイン、パントテン酸、及び界面活性剤が配合され得ると記載されている。つまり、本発明のように外用組成物に成分(A),(B)及び(C)の全てを配合することは公知である。しかしながら、これらの文献には、成分(A)、(B)及び(C)を組み合わせることによりメラニン産生が抑制される効果について何等開示されておらず、メラニン産生が抑制される効果は、本発明者らによって初めて見出されたものである。
【0086】
外用組成物が成分(A)、(B)及び(C)を含むことによりメラノサイトにおけるメラニン産生量を減少させる効果を有するので、皮膚色素が沈着するのを抑制したり、防止したりする効果が得られることが分かる。また、外用組成物が成分(A)、(B)及び(C)を含むことによりメラニン産生量が減少するので、皮膚の基底層のケラチノサイトがターンオーバーする時に、新たな細胞に含まれるメラニン産生量が減少していることから、皮膚色素沈着を予防したり改善したりする効果が得られることが分かる。また、外用組成物が成分(A)、(B)及び(C)を含むことによりメラノサイトにおけるメラニン産生量を減少させる効果を有するので、真皮においても、あざ(例えば、黒あざ、茶あざ、青あざ)の色素沈着を予防したり改善したりする効果が得られると分かる。
【0087】
次に、成分(C)としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50が配合された実施例1~3、5~9について考える。
図1は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50の配合量とメラニン産生量減少率の関係を示すグラフである。ここで、グラフ中のE1~E3及びE5~E9は、それぞれ、実施例1~3及び実施例5~9のメラニン産生量減少率のデータであることを示す。成分(A)としてヘパリン類似物質(終濃度:0.006重量%)を配合し、成分(B)としてアラントイン(終濃度:0.02重量%)を配合し、成分(C)の配合量のみ変化させた実施例1~3の比較を破線L1で示す。また、成分(A)としてヘパリン類似物質(終濃度:0.006重量%)を配合し、成分(B)としてパンテノール(終濃度:0.01重量%)を配合し、成分(C)の配合量のみ変化させた実施例5及び6の比較を破線L2で示す。さらに、成分(A)としてヘパリン類似物質(終濃度:0.002重量%)を配合し、成分(B)としてパンテノール(終濃度:0.01重量%)を配合し、成分(C)の配合量のみ変化させた実施例7~9の比較を実線L3で示す。
【0088】
図1のグラフより、破線L1,破線L2,実線L3のいずれも、細胞溶解液におけるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50の配合量が0.04重量%となると、メラニン産生量減少率が40%近くまで向上することが分かる。また、破線L1では、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50の配合量が0.04重量%よりも増加すると、メラニン産生量減少率が約40%と一定になる。その結果、メラニン産生量減少率の変化量は、0.04重量%のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50の配合量の前後で、大きく変化することが分かる。従って、0.04重量%のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50の配合量はメラニン産生量減少率の変化量に対して変曲点であり、メラニン産生量減少率を約40%に増加させることに対して臨界的意義を有する。よって、成分(A)、成分(B)の種類及び配合量にかかわらず、成分(C)の配合量を0.04重量%以上にすると優れたメラニン産生量減少率が得られることが分かる。このことから、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50の配合量の下限値は、0.04重量%以上であることがさらに好ましい。
【0089】
このことから、実際に使用する外用組成物中においても、成分(A)や成分(B)の配合量及び種類に関わらず、成分(C)の配合量が所定濃度以上である場合に、特に優れたメラニン産生量を減少させる効果が得られると考えられる。
【0090】
(評価試験II)
次に、評価試験IIにおいて作製した実施例13及び比較例18~19について説明する。
【0091】
(サンプルの調製)
メラノーマ細胞の溶解処理において、各ウェルに添加するNaOHの濃度を4Nとし、溶解処理の条件を60℃及び3時間としたことを除いて、評価試験Iと同様にして、サンプルを作製した。
【0092】
(被験薬)
被験薬としては、実施例13及び比較例18~19のそれぞれにおいて、細胞溶解液に含まれる成分(A)~成分(C)の終濃度が以下に示す値となるように濃度を調製した被験薬を用いた。それぞれの細胞溶解液に含まれる成分(A)~成分(C)の終濃度については、表7にも示す。
【0093】
(比較例18、19)
被験薬として、成分(A)~成分(C)のうち成分(A)のみ添加したものを比較例18とした。比較例18は、ヘパリン類似物質の終濃度が0.002重量%となるように調製した。また、被験薬として、成分(A)~成分(C)のうち成分(B)のみ添加したものを比較例19とした。比較例19は、ビタミンA油の終濃度が0.003重量%となるように調製した。
【0094】
(実施例13)
成分(A)の被験薬としてヘパリン類似物質を、成分(B)の被験薬としてビタミンA油を、成分(C)の被験薬としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40を配合したものを、実施例13とした。実施例13では、ヘパリン類似物質の終濃度が0.002重量%、ビタミンA油の終濃度が0.003重量%、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40の終濃度が0.16重量%となるように、配合量を調製した。成分(B)の配合量の、成分(A)の配合量に対する割合は、1.5重量部である。また、成分(C)の配合量の、成分(A)の配合量に対する割合は、80重量部である。
【0095】
(評価方法)
実施例13及び比較例18~19の細胞溶解液について、評価試験Iと同様に吸光度を測定、及び蛋白定量を行った。そして、これらの結果より、評価試験Iと同様に、下式に基づいてメラニン量基準値を得た。
【0096】
(メラニン量基準値)=(メラニン産生量)/(蛋白量)
【0097】
比較例18のメラニン量基準値をm0.002bとした。また、実施例13又は比較例19のメラニン量基準値の値と比較例18のメラニン量基準値m0.002bを用いて、実施例13又は比較例19のメラニン産生量減少率rを算出した。
【0098】
【0099】
(評価結果)
これらの評価結果を表7に示す。
【0100】
【0101】
表7によれば、成分(B)としてビタミンA油を配合した場合にも、成分(A)及び成分(C)と組合せて用いることにより、メラニン産生量を減少させる効果があることが認められた。