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特開2023-60161根管治療用の往復動発生具の振動筒、この振動筒を備えた往復動発生具およびキャップ
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  • 特開-根管治療用の往復動発生具の振動筒、この振動筒を備えた往復動発生具およびキャップ 図1
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  • 特開-根管治療用の往復動発生具の振動筒、この振動筒を備えた往復動発生具およびキャップ 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060161
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】根管治療用の往復動発生具の振動筒、この振動筒を備えた往復動発生具およびキャップ
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/42 20170101AFI20230420BHJP
【FI】
A61C5/42
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023033188
(22)【出願日】2023-02-14
(62)【分割の表示】P 2019190595の分割
【原出願日】2019-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2019044252
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504230246
【氏名又は名称】鈴木 計芳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 計芳
(57)【要約】
【課題】 歯の根管の切削や神経を抜く作業などを楽に行い得るようにすることにより、歯科医師の疲労を少なくして集中力が持続できるような根管治療用具を提供する。
【解決手段】 キャップ7は、ネジ山71が刻設された捻じ込み部の底部である当接部70の中心部に挿着穴72が開口されたものである。太い柄のハンドファイル4の摘み部40の幅とキャップ7の当接部70の幅とがほぼ等しいため、ハンドファイル4は、当接部70の中心部に挿着穴72が開口されているも、当接部70によって押さえられつつ、振動筒63の中に固定される。細い柄のハンドファイル8は、その摘み部80がキャップ7の当接部70の挿着穴72に装着されつつ、振動筒63の中で固定される。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動筒がファイルの軸部の装着部を備えており、この振動筒の一側に前記針通し孔があり、他側にファイルの軸部の装着口が開口されていると共に、ファイルを固定するためのキャップが前記装着口に着脱自在に取り付けられており、前記キャップの捻じ込み部の底部が太い柄のファイルのほぼ柄の幅の当接部であると共に、該当接部に細い柄のファイルの柄の幅の挿着穴を有する、根管治療用の往復動発生具の振動筒。
【請求項2】
請求項1に記載の振動筒を備えている、根管治療用の往復動発生具。
【請求項3】
前記ファイルを備えている、請求項2に記載の根管治療用の往復動発生具。
【請求項4】
請求項1に記載の太い柄の当接部と細い柄の挿着穴とを有するキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ファイルに電気的に往復運動を発生させて虫歯となっている部分を綺麗に処置するための、電動式往復運動発生具の振動筒、この振動筒を備えた往復動発生具、また振動筒に取り付けるキャップに関する。なおこの発明で言うファイルは、ファイリングのためのファイルとリーミングのためのリーマとを含む用語であるが、この発明ではこれらに類似する治療用具を包含している。さらにプラガーやこれに類するロッドを往復運動させて歯の詰め物に加圧するための歯科用具にも関係している。
【背景技術】
【0002】
歯科医師が患者の虫歯の根管等の治療を行うに当たってはファイルと呼ばれる切削用具を用いるのが一般的である。ファイルにはファイルとリーマとが含まれ、ファイルはファイリング(上下運動)からリーマはリーミング(ねじる)から名付けられたものである。これ等は用途やサイズによって柄に色分けが為されたり記号や数字が記載されたりしている。また手で取り扱うものをハンドファイルなどと呼んでいる。また柄の太さが異なるものがある。なおこのような根管治療には根管長測定器が併用されることが多い。また神経を除去した後の虫歯の穴にワックス付きのフロスやガッターパーチュアーなどの根管充填材を緊密に詰めて再度感染が起こらないようにする治療は根管充填と呼ばれている。上述したような歯の神経の治療方法については非特許文献1のインターネットサイトの記事が分かりやすい。また根管充填治療については非特許文献2のインターネットサイトの記事が分かりやすい。
【0003】
当発明者は上述したような電動式往復運動発生具として、特願2018-558447を開発して来た。このものは筐体とこの筐体内に収められた往復動発生部と、この往復動発生部に設けられたファイルの着脱部とから成っており、細くて小さなファイルを指先に摘まんで操作する必要を無くして、この動作を自動で行わせようとしたものである。着脱部部にファイルを装着すると、往復動発生部の先端部からファイルの針部が突出して往復動を行うようになっている。この開発により歯の根管を拡大して綺麗にしたり神経を抜く作業が容易に行い得るようになっており、歯科医師の疲労が少なくなり、集中力を持続することが出来る効果を獲得したのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2018-558447
【非特許文献1】インターネットWWWサイト<URL:http://mushiba-labo.com/?p=10133>
【非特許文献2】インターネットWWWサイト<URL:http://www.is-dc-m.net/pages/root.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば特願2018-558447にファイルを装着する場合、往復動発生部に装着するファイルをこの往復動発生部に専用のものとして良い分けであるが、歯科医師としては市販のファイルをそのまま利用して装着出来る方が、慣れているものであるが故に、使い勝手が良いと感じている。
【0006】
ところで上述したように優れた電動式往復運動発生具ではあるが、治療時に於ける患者の口が開きにくい状況やその時々の口の形や医師の体勢や虫歯の位置などと言った特殊な事情によって、往復動発生部の先端部から突出するファイルの針部の長さがより短いものであると、患者の口腔内での取り回しや難しい角度の根管への対応がより楽になるのにと思うようなことが儘ある。これは根管充填などの他の歯科治療に於いても同様である。
【0007】
或いは使い易さの別の観点として、一つの電動式往復運動発生具で2種類の柄の太さのファイルを使い分けることが出来れば、ファイルの選択肢を広げられると言うことが上げられる。医師にとって使い慣れた柄の太さのファイルが2種類であったとしても、それに対応することが出来る。
【0008】
このような問題を解決することが出来れば、歯科医師の仕事がより楽になり疲労もより少なくなる。従ってこの発明の課題は上述したような問題点を解決して、第一の課題として電動式往復運動発生具が治療の状況に応じてファイルの針部の長さをより短くすることが出来るようにすること、または第二の課題として電動式往復運動発生具が治療の状況に応じて2種類の柄の太さのファイルを使い分けすることが出来るようにすること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の第一の課題は、振動筒がファイルの軸部の装着部を備えており、ファイルの往復動方向の振動筒の両側にファイルの針の針通し孔を有することで、ファイルの針の向きを変えて装着部に装着し得るように構成されていると共に、一側の針通し孔と他側の針通し孔とでは針通し孔から外に出る針の長さが異なるように構成されている、根管治療用の往復動発生具の振動筒とすることにより達成される。
【0010】
これまでは、上述したように往復動発生部の先端部からのみファイルの針を突出させるように構成されていた。これに対して本願発明では、往復動発生部の先端部を一側とすれば、他側として往復動発生部の後端部からもファイルの針を突出させることが出来るように構成したのである。これにより装着部へのファイルの装着に当たり、針をどちらの側に向けて装着するかが医師に選択出来るようになった。
【0011】
しかも一側の前記針通し孔と他側の前記針通し孔とでは針通し孔から外に出る前記針の長さが異なるように構成されていることによって、これから行う治療に必要な針の長短を選択することが出来る。例えば通常は往復動発生部の先端部から針が突出するようにファイルを装着部に装着するのであるが、針が短い方が取り回しが楽であると言うような状況が生じた場合には今度は針を逆方向である後端部に向けて装着し直すと言う具合である。従ってこの場合には先端部側の針通し孔の長さよりも、後端部側の針通し孔の長さの方を長くするように設計すれば良い。これによりこの発明に専用のファイルのみならず市販のファイルでさえ、1本あれば針の長さを2種に変化させて実質的に2本として使い分けることが出来るようになる。
【0012】
ところで装着部へのファイルの装着であるが、装着部に対して、振動筒の側面部に開けた装着口からファイルの軸部を装着するように構成されているものとすることが出来る。装着口に軸部を装着する際に、先にファイルの針を振動筒の先端部側の針通し孔に通してから、または後端部側の針通し孔に通して、その後でファイルの軸部を装着口に装着するのである。なお電動式往復運動発生具の振動側筐体に付いて触れておくと、振動筒の装着口と位置的に一致させて、振動側筐体にもファイルの軸部の装着口を開口しておく必要がある。
【0013】
このように構成することにより、ファイルの軸部を装着口から振動筒へ押し込むことにより簡単に装着することが出来るし、取り外しに当たってはファイルの軸部の凹みに指先を掛けるなどして引き出すようにすれば良い。従って振動筒の側壁部側から行うファイルの着脱も容易で便利である。
【0014】
更に振動筒の先端部側の針通し孔と後端部側の針通し孔とでは、針通し孔の長さに違いがあるように構成するのであるから、針通し孔から外に出る針の長さが先端部側と後端部側とでは異なることになる。従って所望の針長となるように、ファイルの針を何れかの針通し孔に通してから、装着口にファイルの軸部を装着することになる。すなわちただ針の向きを変えて装着するだけで、他側の針長を一側の針長よりも短くすることが出来る効果を奏する。
【0015】
次に装着部へのファイルの装着であるが、振動筒の一側に針通し孔があり、他側にファイルの軸部の装着口が開口されていると共に、この装着口に、ファイルを固定するためのキャップが着脱自在に取り付けられており、このキャップに他側となる針通し孔を有しているものとすることが出来る。この構成で特筆すべきはこのキャップに他側となる針通し孔を有している点である。なお一側の針通し孔と他側の針通し孔とでは針通し孔から外に出る針の長さが異なるようにするために、針通し孔の長さに違いがあるようにする必要がある。
【0016】
このように構成することによって、ただファイルの針の向きを変えて装着してキャップで固定すると言う操作だけで、簡単容易に他側の針長を一側の針長よりも短くすることが出来るのである。
【0017】
なおここではキャップに他側となる針通し孔を有していて、このようなキャップを装着部の装着口に取り付けるように構成しているが、他側となる針通し孔を設けるものは上記キャップと呼べるようなものでなくても良い。例えば装着部を前側と後側とに分けて互いをネジで着脱自在とすると共に、前側の装着部と後側の装着部に、針通し孔の長さに違いが出るように、長さの異なる針通し孔を設けるなどとすれば良い。
【0018】
次に上記の第二の課題は、振動筒がファイルの軸部の装着部を備えており、この振動筒の一側に前記針通し孔があり、他側にファイルの軸部の装着口が開口されていると共に、ファイルを固定するためのキャップが前記装着口に着脱自在に取り付けられており、前記キャップの捻じ込み部の底部が太い柄のファイルのほぼ柄の幅の当接部であると共に、該当接部に細い柄のファイルの柄の幅の挿着穴を有する、根管治療用の往復動発生具の振動筒とすることにより達成される。
【0019】
これまでは、振動筒とキャップとはただ1種類のファイルを装着するものとされていたが、ここでは柄の太さが異なる2種類のファイルを装着し得るものとなっている。太い柄のファイルに対しては、キャップの底部が太い柄の上端部に当接することになる。或いは細い柄のファイルに対しては、キャップの底部の挿着穴が細い柄の挿着によって細い柄を受け入れることになる。なおファイルの柄の長短の違いに付いては、振動筒へのキャップの取り付けの深さで柄の長短の違いを吸収することが可能である。例えばネジ式であるならば捻じ込みの深度を調節すれば良い。
【0020】
このように構成することによって、医師にとって使い慣れた柄の太さのファイルが2種類であったとしても、キャップへの差し替えを可能にすることで、簡単容易にそれに対応することが出来るのである。なおもし将来に幾種類もの柄の太さのファイルが標準になることがあるならば、2種類のファイルに対応する幾種類かのキャップを提供するようにすれば良い。同心状の穴の大きさを2段階、3段階とすることも可能である。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、装着部へのファイルの装着にはただファイルの針の向きを変えるだけで良く、これにより市販のファイルでさえ、1本で針の長さを2種に変化させて実質的に2本として使い分けることが出来るようになると言う効果を奏する。
【0022】
またこの発明によれば、2種類の太さの柄のファイルを交換するに当たって、キャップでこの太さの違いに対応することが出来るようになると言う効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】 実施例1の一部を切欠して模式的に表した説明図である。
図2】 この回路部分を模式的に表した説明図である。
図3】 振動筒13の一部を切欠して模式的に表した説明図である。
図4】 使用状態の説明図である。
図5】 実施例2の一部を切欠して模式的に表した説明図である。
図6】 使用状態の説明図である。
図7】 実施例3の説明図である。
図8】 使用状態の説明図である。
図9】 実施例4の説明図である。
図10】 実施例4のキャップ7を底面方向から表した説明図である。
図11】 使用状態の説明図である。
図12】 使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下ではこの発明の実施例を図面に基づいて説明するが、この発明はこれ等に限定されるものではない。
【実施例0025】
図1乃至図4を用いてこの実施例を説明する。往復動発生具1はハンドル側筐体10と振動側筐体11とから成り、振動側筐体11はハンドル側筐体10の先端部分にハンドル側筐体10とでT字状を形成するように取り付けられている。振動側筐体11の内部には根管内を治療するためのハンドファイル4の着脱部13が、開口部12から先端部分を出すような形で、往復動自在に組み込まれている。後述する往復動発生部はこの着脱部13を往復動させるためのものである。
【0026】
チェアーユニット2には電動のギヤードモータ20が納められており、ギヤードモータ20の入力端子22へはチェアーユニット電源24からフットスイッチ23を介して電力が供給されるようになっている。そしてギヤードモータ20の回転軸21は、ハンドル側筐体10の中の回転軸25に接続されている。
【0027】
回転軸25の先端部にはピン26が偏心状態で設けられており、このピン26が着脱部13の側面部に設けられたピン穴14に掛合している。このように往復動発生部が構成されている。なおこの実施例で使用されるハンドファイル4は、挿着部である摘み部40と針部41とから成っており、針部41の周囲には細かな突起42が形成されている。
【0028】
着脱部13は振動側筐体11の内側にあって前後方向(図1の上下方向)に振動可能に設けられている。また着脱部13の側面部より突出するガイドピン17が振動側筐体11の内側に前後方向すなわちハンドファイル4が往復動する方向に設けられたガイド溝18に挿入されている。
【0029】
また着脱部13の後端部には装着口16が開口されており、ハンドファイル4をここから装着すると、その針部31が着脱部13に開孔されている(一側の針通し孔としての)針通し孔15から抜け出て、摘み部40の先端部が上記針通し孔15の内側に接触するまで押し込むことが出来るように構成されている。
【0030】
また装着口16には固定手段としてのキャップ3を捻じ込むことで、ハンドファイル4を固定することが出来る。従ってハンドファイル4の交換はこのキャップ3を着脱することによって行う。特にこのキャップ3には、(他側の針通し孔としての)針通し孔30が開孔されている。この針通し孔30の奥行きの長さは、上記着脱部13の針通し孔15の奥行きの長さよりも長く設計されている。なお固定手段はネジ式でなくとも良い。
【0031】
回転軸25のピン26が着脱部13の側壁部のピン穴14に横方向から嵌め込まれているため、図3から明らかであるように、回転軸25の回転は着脱部13を前後方向に振動させるだけで、実質的にハンドファイル4の針部41周りに回転させるようには作用しない点も特徴である。但し、回動振動が比較的大きく生ずることを良しとしない場合を考慮して、上述のようなガイドピン17とガイド溝18との構成を設けているのである。なお矢線Sはストロークの方向を表している。
【0032】
この実施例の使用法であるが、図1のように装着口16にハンドファイル4をその針部41の側から挿入して、針部41が着脱部13の針通し孔15から着脱部13の外に出るようにして装着し、装着口16にキャップ3を捻じ込んでハンドファイル4を固定する。こうして往復動発生具1を根管治療に使用する準備が整う。
【0033】
この状態の往復動発生具1で問題がなければ、このままの状態で使用し続ければ良い。これに対して針部41の長さがもっと短ければ良いのにと言うような状況が生じたような場合には、この実施例の往復動発生具1ならではの次のような処置が可能である。すなわち装着口16からキャップ3を外して、一旦ハンドファイル4を取り出す。続いてハンドファイル4の姿勢を180度反転させて、摘み部40の側から装着口16に挿入する。これによって針部41は装着口16から後方に向かうことになる。そこで今度は針部41をキャップ3に設けられた針通し孔30に通すようにして、装着口16にキャップ3を捻じ込むと、ハンドファイル4が固定されると共に針部41が針通し孔30からキャップ3の外に突出する(図4)。
【0034】
図1図4とは共に模式図ではあるが、これ等の図から針部41の着脱部13の針通し孔15から外に出ている分の長さに比して、キャップ3の針通し孔30から外に出ている分の長さの方が短いことが良く分かる。
【実施例0035】
次に図5及び図6を用いて説明するこの実施例の往復動発生具5では、ハンドファイル4を振動側筐体51の側壁部側から着脱し得るように構成した点に特徴を有する。すなわち振動側筐体51の先端部には開口部52が開口されており、ここに振動筒としての着脱部53が装着されている。この着脱部53は振動側筐体51の内側にあって、前後方向(図5の上下方向)に振動可能に設けられている。また振動筒53は後端部に設けたピン穴54に、実施例1で説明したピン26が嵌め込まれている。また振動筒53の後端部より突出するガイドピン58が、振動側筐体51の内側に前後方向(図5では上下方向)に設けられたガイド溝59に挿入されている。なお振動筒53の前端部にはハンドファイル4の針部41を通すための針通し孔55が開孔されている。
【0036】
また振動筒53の側壁部にはハンドファイル4の装着口56が開口されており、この装着口56の位置に合わせて振動側筐体51の側壁部にも、図示されていない装着口が開口されている。そして振動筒53の内壁にはハンドファイル4の摘み部40の受けゴム57が取り付けられている。なお振動筒53の後ろ端部には、ハンドファイル4の針部41を通すための針通し孔500が開孔されている。
【0037】
上記針通し孔55と針通し孔500とでは奥行きの長さが異なっており、振動筒53の先端部側の針通し孔55の奥行きの長さは、同じ振動筒53の後端部側の針通し孔500の奥行きの長さよりも短く設計されている。
【0038】
この実施例の使用法であるが、図5のようにハンドファイル4をその針部41を針通し孔55に通しつつ摘み部40を装着口56の中に押し込むようにする。すると摘み部40は受けゴム57によってしっかりと固定される。次に装着口56の中の摘み部40を指先で摘まんで、一旦ハンドファイル4を装着口56から取り出す。続いてハンドファイル4の姿勢を180度反転させて、今度は針部41を針通し孔500の方に通しつつ、摘み部40を装着口56の中に押し込むようにする。これにより摘み部40は受けゴム57によりしっかりと固定される。この時針部41が、図6で表すように振動筒53の後端部側の針通し孔500から外に突出する。
【0039】
図5図6とは共に模式図であるが、これ等の図から振動筒53の先端部側の針通し孔55から外に出ている分の針部41の長さに比して、後端部側の針通し孔500から外に出ている分の針部41の長さの方が短いことが一目で了解される。
【実施例0040】
次に図7及び図8を用いて説明する往復動発生具6は、その構成を上述した実施例1に於ける往復動発生具1に倣うものであるが、ガイド溝18とガイドピン17とによる構成を備えていない。その代わりにこの往復動発生具6では、振動筒63の外周部に360度に亘って上記ピン26を挿入するためのピン穴64が刻設されていることが特徴である。但し上記360度とは言うものの、ピン穴64の一部にストッパ67が設けてある。図示しないモータの回転軸はギヤードボックスを介して回転軸に接続され、この回転軸にピン26が設けられており、このピン26がピン穴64に掛合して、ストッパ67以外の箇所ではピン穴64の中を自由に移動することが可能である。すなわち逆に、ピン26がこのストッパ67に接するまでは、振動筒63は振動側筐体61の内側で回動自在である。
【0041】
また往復動発生具6の振動側筐体61の先端部には開口部62が開口されており、ここに上記の振動筒63が装着されている。この振動筒63は振動側筐体61の内側にあって前後方向(図7の上下方向)に振動可能に設けられている。また上記振動筒63の後端部にはファイルの装着口66が開口されており、上記ファイル4をここから装着すると、その針部41が振動筒63の一側(先端部側)の針通し孔65から抜け出して、摘み部40の先端部が上記針通し孔65の内側に接触するまで押し込むことが出来るように構成されている。なお上記装着口66にはキャップ3を捻じ込むことでファイル4を固定することが出来る。従ってファイル4の交換はこのキャップ3を着脱することによって行う。特にこのキャップ3には、(他側の針通し孔としての)針通し孔30が開孔されている。この針通し孔30の奥行きの長さは上記振動筒63の針通し孔65の奥行きの長さよりも長く設けられている。なお固定手段はネジ式でなくとも良い。
【0042】
さてこの実施例の往復動発生具6は、ハンドファイル4の柔軟に屈曲する針41を往復駆動させることを旨として開発されたものである。それと言うのも、根管の曲りの形状が患者個々人によりまた同一患者であっても個々の歯によって異なるものであること、無理矢理に根管の曲がっている箇所から先に針41を侵入させたような場合では針41を引き出すのが難しくなる場合があり、また針41が曲がったり傷付いたり、悪くすると針41が欠けて根管の根尖に残ってしまうような問題点があったからである。
【0043】
このことから鋭意研究開発を行った結果、振動筒63を自由に回動させるようにすると更に良いと言う知見を得ることが出来たのである。この自由な回動とは、駆動力によって強制的に回転・回動させることではなく、ただ固定しないようにしておいて、左右のどちら方向へも、外力に抗うことなく自由に動けることを言う。このように構成したことで、ハンドファイル4の往復運動に対する抵抗があっても、或いは根管に喰い込みそうになることがあったとしても、それを避けることが出来て、針41の捩じれや曲がりが起こりにくく円滑に往復運動を継続することが出来るようになったのである。図8はその動作状態を表した模式図であるが、ピン穴64にはほぼ同じような径のピン26が挿入されているため、モータの回転軸に偏心状態で繋がるピン26が回転すると(図8でピン26は鎖線で表した位置から実線で表した位置へと移動した瞬間が表されている)、この回転運動は振動筒63の、図8の前後方向の往復運動に変換される。その一方でピン穴64が振動筒63の外周部に360度に亘って刻設されているため、振動筒63は矢線の方向に自由に回動運動を行うことが出来る。正にこのことがリーマの針状部を捩じれにくくしているのである。なおストッパ67の作用に付いては後述する。
【0044】
この実施例のピン穴64とピン26とには、上述のような重要な作用効果がある。さらに円滑に繰り返される往復運動と、ハンドファイル4の針41の柔軟に屈曲する性質との相乗効果もあって、根管の曲がっている箇所でも根管内に都合良く入り込む瞬間が何度も何度も訪れ、結果的に短時間の内に虫歯の処置を終えることが出来るようになった。なおフリーな回動が可能になると、詰め物を避けて侵入し、逆に詰め物を巻き付けながら後退して古い詰め物を取り出したりする現象も観測されるようになった。
【0045】
ところでモータの回転軸側のピン26はピン穴64に掛合しているが、このピン穴64は振動筒63の外周部に360度に亘って刻設されている。このように構成した理由は後述するが、振動筒63にハンドファイル4を後側から挿着して装着口66にキャップ3を捻じ込もうとすると、振動筒63は振動側筐体61に対して360度を超えて自由に回動してしまうため、キャップ3を締めることが難しいのである。ところがピン穴64に上記ストッパ67が設けられているため、ここで振動筒63の360度を超えての回転を抑えることが可能となって、キャップ3を確実に締め付けることが出来るのである。
【0046】
結局、針部41の着脱部63の針通し孔65から外に出ている分の長さに比して、上記キャップ3の針通し孔30から外に出ている分の長さの方が短くなるのである。
【実施例0047】
次に図9乃至図12を用いて説明するこの実施例のキャップ7は、ネジ山71が刻設された捻じ込み部の底部である当接部70の中心部に挿着穴72が開口されたものであり、上述の往復動発生具6の振動筒63の装着口66に螺着させるものである。
【0048】
往復動発生具6は、このキャップ7があることにより2種類のハンドファイル4およびハンドファイル8を使い分けることが出来る。図11はハンドファイル4を使用する場合の説明図であり、図12はハンドファイル8を使用する場合の説明図である。先ずハンドファイル4を使う場合、上記柄である所の摘み部40を手で摘んで、振動筒63の装着口66から針部41を針通し孔65に通すようにして装着して、装着口66にキャップ7を捻じ込むようにする。この時太い柄のハンドファイル4の摘み部40の幅とキャップ7の当接部70の幅とがほぼ等しいため、ハンドファイル4は、当接部70の中心部に挿着穴72が開口されているも、当接部70によって押さえられつつ、振動筒63の中に固定される。
【0049】
次にハンドファイル8を使う場合、先ずキャップ7を緩む方向に捻じりハンドファイル4を取り外す。続いてハンドファイル8の摘み部80を手で摘んで、振動筒63の装着口66から針部41を針通し孔65に通すようにして装着した後、ハンドファイル8の摘み部80をキャップ7の当接部70の挿着穴72に装着し得るようにしつつ、キャップ7が振動筒63の中で固定されるように、装着口66に深く捻じ込むようにする。なおハンドファイル8は、挿着部である細長い摘み部80と針部81と、この針部81の周囲の細かな突起82とから成るものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明によれば、電動式往復運動発生具が治療の状況に応じてファイルの針部の長さをより短くすることが出来るようになる。或いは電動式往復運動発生具が、治療の状況に応じて使い勝手が異なる2種類のファイル(柄の太さを違えた2種類のファイル)を使い分けすることが出来るようになる。これにより歯科医師の仕事がより楽になり疲労もより少なくなるなど、この発明の産業上の利用価値には極めて高いものがある。
【0051】
なおこの発明は獣医療分野での利用の可能性がある。なおこの発明の針通し孔を有するキャップは、それが捻じ込み式のものであっても、そうでないものであっても、ファイルの針通し孔を有することが重要であって、従来の電動式往復運動発生具に適用することが可能であるから、このキャップ単体に付いても産業上の利用価値は極めて大きいと言うことが出来る。或いはこの発明の挿着穴を有するキャップは、従来の電動式往復運動発生具に適用することが可能であるから、このキャップ単体に付いても産業上の利用価値は極めて大きいものであると言える
【符号の説明】
【0052】
1 :往復動発生具 10:ハンドル側筐体 11:振動側筐体
12:開口部 13:着脱部 14:ピン孔
15:針通し孔 16:装着口 17:ガイドピン
18:ガイド溝 2 :チェアーユニット 20:ギヤードモータ
21:回転軸 22:入力端子 23:フットスイッチ
24:チェアーユニット電源 25:回転軸 26:ピン
3 :キャップ 30:針通し孔 4 :ハンドファイル
40:摘み部 41:針部 42:突起
5 :往復動発生具 51:振動側筐体 52:開口部
53:着脱部 54:ピン孔 55:針通し孔
56:装着口 57:受けゴム 58:ガイドピン
59:ガイド溝 500:針通し孔 6 :往復動発生具
61:振動側筐体 62:開口部 63:振動筒
64:ピン穴 65:針通し孔 66:装着口
67:ストッパ 7 :キャップ 70:当接部
71:ネジ山 72:挿着穴 8 :ハンドファイル
80:摘み部 81:針部 82:突起
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