(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060167
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】カチオン電着塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/02 20060101AFI20230420BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20230420BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230420BHJP
C09D 5/44 20060101ALI20230420BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230420BHJP
【FI】
C09D201/02
C09D7/65
C09D7/63
C09D5/44 A
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033281
(22)【出願日】2023-03-06
(62)【分割の表示】P 2022531901の分割
【原出願日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2020107445
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】対馬 伸司
(72)【発明者】
【氏名】永井 彰典
(72)【発明者】
【氏名】木村 友哉
(57)【要約】
【課題】
エッジ部と平面部の防食性及び仕上がり性に優れたカチオン電着塗料組成物、並びにこれらの諸塗膜性能に優れた塗装物品を提供すること。
【解決手段】
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、極性高分子化合物(C)、及び粒子(D)を含有するカチオン電着塗料組成物であって、該粒子(D)が、粘土鉱物(D1)及び/又は樹脂架橋粒子(D2)を含むことを特徴とするカチオン電着塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、極性高分子化合物(C)、及び粒子(D)を含有するカチオン電着塗料組成物であって、
前記粒子(D)が、樹脂架橋粒子(D2)を含み、
前記樹脂架橋粒子(D2)が、エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)であり、
前記エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)が、アミノ基含有エポキシ樹脂(D2-2)と架橋剤(D2-3)との反応生成物である、
ことを特徴とするカチオン電着塗料組成物。
【請求項2】
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、極性高分子化合物(C)、及び粒子(D)を含有するカチオン電着塗料組成物であって、
前記極性高分子化合物(C)が、ポリビニルアルコール及び/又はポリ(メタ)アクリルアミド系樹脂であり、
前記粒子(D)が粘土鉱物(D1)を含む、
ことを特徴とするカチオン電着塗料組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカチオン電着塗料組成物が、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(B)を含有する水分散体(I)と顔料ペースト(II)とを含有しているカチオン電着塗料組成物。
【請求項4】
前記粘土鉱物(D1)が、水分散体(I)中に含有されており、
前記粘土鉱物(D1)が、棒状、針状、繊維状、鎖状からなる群から選ばれる少なくとも1種の形状の粘土鉱物を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項5】
前記粘土鉱物(D1)が、有機処理している粘土鉱物であることを特徴とする請求項2~3のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)の体積平均粒子径が30nm~1000nmであり、
下記方法で測定されるエポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)の数平均分子量が9,000以下であることを特徴とする請求項1又は3に記載のカチオン電着塗料組成物;
<数平均分子量の測定方法>
エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)をN,N-ジメチルホルムアミドで1質量%の固形分濃度に希釈し、室温で24時間静置した。次いで濾過によって不溶解成分を取り除き、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて数平均分子量を測定した。
【請求項7】
前記粒子(D)の含有量が、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の固形分合計質量を基準として、固形分で0.1~20質量%であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項8】
前記粒子(D)が、粘土鉱物(D1)及び樹脂架橋粒子(D2)を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項9】
前記極性高分子化合物(C)が、アミド基含有樹脂、ウレア基含有樹脂、ウレタン基含有樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリアルキレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、多糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種、又はこれらの複合樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項10】
前記極性高分子化合物(C)のハンセンの溶解度パラメータにおけるδh(水素結合項)が、14MPa1/2以下、かつ1MPa1/2以上であることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項11】
前記極性高分子化合物(C)の含有量が、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の固形分合計質量を基準として、固形分で0.1~20質量%であることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物からなる電着塗料浴に被塗物を浸漬し、電着塗装する塗装方法。
【請求項13】
請求項12に記載の塗装方法によって塗膜を形成し、次いで加熱硬化する工程を含む塗装物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、極性高分子化合物(C)、及び粒子(D)を含有するカチオン電着塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン電着塗料組成物は、塗装作業性に優れ、且つ形成される塗膜の防食性が良好なことから、これらの性能が要求される自動車ボディ、自動車部品、電気機器部品及びその他の機器等などの導電性金属製品向け下塗り塗料として広く使用されている。
被塗物が鋭いエッジ部を有する場合、塗料の加熱硬化時にエッジ部の塗膜が薄くなってしまうことがあり、防食性が劣ることとなる。そのため、エッジ部を有する被塗物の塗装においては、エッジ部の防食性を向上させる手段が求められている。
【0003】
エッジ部の防食性を向上させる方法として、特許文献1には電着塗料中にポリアクリルアミド樹脂を含有することが開示されている。上記樹脂を含有することにより、加熱によって生じる収縮を制御する、又は塗膜成分と相互作用しフローによるエッジカバリング低下を抑制することができると考えられるが、極性の高い溶解性樹脂を含有することになるため、平面部の防食性が劣る場合があった。
また、特許文献2及び3には、電着塗料中にカチオン性マイクロゲル分散体(エポキシ粘性剤)を含有することが開示されている。上記樹脂を含有することにより、エッジ部において熱フローによる電着塗膜の流れを抑制することができるが、厳しい腐食条件下ではエッジ部の防食性が十分に得られない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-214572号公報
【特許文献2】特開2018-159032号公報
【特許文献3】特開平7-268063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする課題は、エッジ部と平面部の防食性、及び仕上がり性に優れたカチオン電着塗料組成物、並びにこれらの諸塗膜性能に優れた塗装物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、極性高分子化合物(C)、及び粒子(D)を含有するカチオン電着塗料組成物であって、該粒子(D)が、粘土鉱物(D1)及び/又は樹脂架橋粒子(D2)を含有するカチオン電着塗料組成物によって、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のカチオン電着塗料組成物、及びカチオン電着塗料組成物からなる電着塗料浴に被塗物を浸漬し、電着塗装する塗装方法により得られた塗装物品を提供するものである。
【0007】
項1.アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、極性高分子化合物(C)、及び粒子(D)を含有するカチオン電着塗料組成物であって、該粒子(D)が、粘土鉱物(D1)及び/又は樹脂架橋粒子(D2)を含むことを特徴とするカチオン電着塗料組成物。
項2.前記項1に記載のカチオン電着塗料組成物が、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(B)を含有する水分散体(I)と顔料ペースト(II)とを含有しているカチオン電着塗料組成物。
項3.前記粘土鉱物(D1)が、水分散体(I)中に含有することを特徴とする前記項2に記載のカチオン電着塗料組成物。
項4.前記粘土鉱物(D1)が、棒状、針状、繊維状、鎖状からなる群から選ばれる少なくとも1種の形状の粘土鉱物を含むことを特徴とする前記項1~3のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
項5.前記樹脂架橋粒子(D2)が、エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)であって、該エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)の体積平均粒子径が30nm~1000nmであることを特徴とする前記項1~4のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
項6.前記エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)が、アミノ基含有エポキシ樹脂(D2-2)と架橋剤(D2-3)との反応生成物であることを特徴とする前記項5に記載のカチオン電着塗料組成物。
項7.下記方法で測定されるエポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)の数平均分子量が9,000以下であることを特徴とする前記項5又は6に記載のカチオン電着塗料組成物;
<数平均分子量の測定方法>
エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)をN,N-ジメチルホルムアミドで1質量%の固形分濃度に希釈し、室温で24時間静置した。次いで濾過によって不溶解成分を取り除き、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて数平均分子量を測定した。
項8.前記粒子(D)の含有量が、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の固形分合計質量を基準として、固形分で0.1~20質量%であることを特徴とする前記項1~7のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
項9.前記粒子(D)が、粘土鉱物(D1)及び樹脂架橋粒子(D2)の両方を含むことを特徴とする前記項1~8のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
項10.前記極性高分子化合物(C)が、アミド基含有樹脂、ウレア基含有樹脂、ウレタン基含有樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリアルキレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、多糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種、又はこれらの複合樹脂であることを特徴とする前記項1~9のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
項11.前記極性高分子化合物(C)の含有量が、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の固形分合計質量を基準として、固形分で0.1~20質量%であることを特徴とする前記項1~10のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
項12.アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、極性高分子化合物(C)、及び粘土鉱物(D1)を含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物であって、該粘土鉱物(D1)が、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の固形分合計質量を基準として、0.1~20質量%含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物。
項13.アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、極性高分子化合物(C)、及び樹脂架橋粒子(D2)を含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物であって、該樹脂架橋粒子(D2)が、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の固形分合計質量を基準として、0.1~20質量%含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物。
項14.前記項1~13のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物からなる電着塗料浴に被塗物を浸漬し、電着塗装する塗装方法。
項15.前記項14に記載の塗装方法によって塗膜を形成し、次いで加熱硬化する工程を含む塗装物品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、エッジ部と平面部の防食性、付きまわり性、及び仕上がり性に優れ、特に薄膜での仕上がり性や防食性が良好であり、厳しい腐食条件下でもエッジ部の防食性が良好である。本発明品が塗装された自動車ボディは、融雪塩が散布された環境下を走行しても、腐食劣化が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】評価試験における4枚ボックス法付きまわり性試験の治具の概略図。
【
図2】評価試験における付きまわり性試験の概略図。
【符号の説明】
【0010】
1.直径8mmの穴を示す。
2.4枚ボックス法の付きまわり性試験用治具における外板(A面)を示す。
3.4枚ボックス法の付きまわり性試験用治具における内板(G面)を示す。
4.電着塗料浴を示す
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、極性高分子化合物(C)、及び粒子(D)を有するカチオン電着塗料組成物に関する。以下、詳細に述べる。
【0012】
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)
本発明で用いることができるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)としては、例えば、(1)エポキシ樹脂と第1級モノ-及びポリアミン、第2級モノ-及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第3,984,299号明細書参照);(2)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ-及びポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第4,017,438号明細書参照);(3)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物とのエーテル化により得られる反応物(例えば、特開昭59-43013号公報参照)等を挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0013】
上記のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造に使用されるエポキシ樹脂(A-1)は、1分子中にエポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物であり、その分子量は、少なくとも300、好ましくは400~4,000、さらに好ましくは800~2,500の範囲内の数平均分子量及び少なくとも160、好ましくは180~2,500、さらに好ましくは400~1,500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適している。かかるエポキシ樹脂としては、例えば、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリン(例えば、エピクロルヒドリン等)との反応によって得られるものを使用することができる。
【0014】
上記エポキシ樹脂の形成のために用いられるポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチル-フェニル)-2,2-プロパン、ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,2,2-エタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどを挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0015】
また、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式(1)のエポキシ樹脂が好適である。
さらに下記式(1)のエポキシ樹脂とポリフェノール化合物とを反応させて高分子量化及び/又は多官能化したエポキシ樹脂を用いることもでき、なかでも該ポリフェノール化合物としてはビスフェノールAが好適である。
【0016】
【0017】
ここで、n=0~8で示されるものが好適である。
かかるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、三菱ケミカル社からjER828EL、jER1002、jER1004、jER1007なる商品名で販売されているものが挙げられる。
【0018】
また、上記エポキシ樹脂(A-1)としては、樹脂骨格中にポリアルキレンオキシド鎖を含有しているエポキシ樹脂を使用することができる。通常、このようなエポキシ樹脂は、(α)エポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有するエポキシ樹脂と、アルキレンオキシド又はポリアルキレンオキシドを反応せしめてポリアルキレンオキシド鎖を導入する方法、(β)上記ポリフェノール化合物と、エポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有するポリアルキレンオキシドとを反応せしめてポリアルキレンオキシド鎖を導入する方法などにより得ることができる。また、既にポリアルキレンオキシド鎖を含有しているエポキシ樹脂を用いてもよい(例えば、特開平8-337750号公報参照。)。
【0019】
ポリアルキレンオキシド鎖中のアルキレン基としては、炭素数が2~8のアルキレン基が好ましく、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基がより好ましく、プロピレン基が特に好ましい。
上記のポリアルキレンオキシド鎖の含有量は、塗料安定性、仕上り性及び防食性向上の観点から、アミノ基含有エポキシ樹脂の固形分質量を基準にして、ポリアルキレンオキシドの構成成分としての含有量で、通常1.0~15質量%、好ましくは2.0~9.5質量%、より好ましくは3.0~8.0質量%の範囲内が適当である。
【0020】
上記(1)のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造に使用される第1級モノ-及びポリアミン、第2級モノ-及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ-もしくはジ-アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2-ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミンなどを挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0021】
上記(2)のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ-及びポリアミンとしては、例えば、上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1、2級混合ポリアミンのうち、例えば、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミンなどにケトン化合物を反応させて生成させたケチミン化物を挙げることができる。
【0022】
上記(3)のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物としては、例えば、上記(1)のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造に使用される第1級モノ-及びポリアミン、第2級モノ-及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンのうち、第1級アミノ基とヒドロキシル基を有する化合物、例えば、モノエタノールアミン、モノ(2-ヒドロキシプロピル)アミンなどにケトン化合物を反応させてなるヒドロキシル基含有ケチミン化物を挙げることができる。
このようなアミノ基含有エポキシ樹脂(A)のアミン価としては、30~80mgKOH/g樹脂固形分の範囲、さらには40~70mgKOH/g樹脂固形分の範囲とすることが、水分散性と防食性向上の点から好ましい。
【0023】
またアミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、必要に応じて、変性剤により変性を図ることができる。このような変性剤は、エポキシ樹脂(A-1)との反応性を有する樹脂又は化合物であれば特に限定されず、例えばポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアミドアミン、ポリカルボン酸、脂肪酸、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物を反応させた化合物、ε-カプロラクトンなどのラクトン化合物、アクリルモノマー、アクリルモノマーを重合反応させた化合物、キシレンホルムアルデヒド化合物、エポキシ化合物も変性剤として用いることができる。これらの変性剤は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
これらのうち、変性剤としては、特に付きまわり性及び/又は防食性の観点から、少なくとも1種の飽和及び/又は不飽和脂肪酸を用いることが好ましい。使用し得る脂肪酸としては、炭素数8~22の長鎖脂肪酸が好ましく、例えば、カプリル酸、カプリン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。中でも、炭素数10~20の長鎖脂肪酸がより好ましく、炭素数13~18の長鎖脂肪酸がさらに好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0024】
上記のアミン化合物と変性剤のエポキシ樹脂(A-1)への付加反応は、通常、適当な溶媒中で、約80~約170℃、好ましくは約90~約150℃の温度で1~6時間程度、好ましくは1~5時間程度で行なうことができる。
上記の溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノールなどのアルコール系、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール系化合物;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
上記の変性剤の使用割合は、厳密に制限されるものではなく、塗料組成物の用途等に応じて適宜変えることができるが、仕上り性及び防食性向上の観点から、アミノ基含有エポキシ樹脂の固形分質量を基準にして、通常0~50質量%、好ましくは3~30質量%、より好ましくは6~20質量%の範囲内が適当である。
【0025】
ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)
ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)は、ポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤とのほぼ化学理論量での付加反応生成物である。ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)で使用されるポリイソシアネート化合物としては、公知のものを使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、クルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート]、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の環化重合体又はビゥレット体;又はこれらの組合せを挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
特に、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、クルードMDI等(好ましくはクルードMDI等)の芳香族ポリイソシアネート化合物が防食性のためにより好ましい。
【0026】
一方、前記イソシアネートブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そして付加によって生成するブロック化ポリイソシアネート化合物は常温において安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約100~約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生することが望ましい。
ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)で使用されるブロック剤としては、例えば、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ-t-ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n-ブタノール、2-エチルヘキサノール、フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系化合物;ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物等(好ましくは、アルコール系化合物等)が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0027】
極性高分子化合物(C)
本発明のカチオン電着塗料組成物はエッジ部防食性を向上させる観点から、極性高分子化合物(C)を含有する。エッジ部防食性を向上させる理由に関して詳しいことは分かっていないが、極性基の水素結合力により、粘土鉱物(D1)及び/又は樹脂架橋粒子(D2)と相互作用をすることで増粘作用が発現し、エッジ部が厚膜になり防食性を高めることができると考えられる。
上記極性高分子化合物(C)の含有量としては、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の固形分合計質量を基準として、固形分で0.1~20質量%であることが好ましく、0.2~10質量%であることがより好ましく、0.4~5質量%であることがさらに好ましい。
【0028】
本明細書において「高分子」とは、2個以上の単量体(モノマー)が重合(反応)してできた重合体(ポリマー)を意図する。
上記極性高分子化合物(C)の重量平均分子量としては、例えば100以上であり、好ましくは500以上であり、より好ましくは1,000~10,000,000であり、さらに好ましくは2,000~8,000,000であり、最も好ましくは3,000~5,000,000の範囲内であることが粘度発現と耐水性の観点から好適である。
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」及び「TSKgel G-2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
【0029】
上記極性高分子化合物(C)は、極性官能基を有する高極性の高分子量化合物であり、例えば、アミド基含有樹脂、ウレア基含有樹脂、ウレタン基含有樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリアルキレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、多糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種、又はこれらの複合樹脂であり、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、アミド基含有樹脂、ポリビニルアルコールが好ましい。
上記アミド基含有樹脂としては、例えば、ポリアミド、脂肪酸アミド、ポリヒドロキシカルボン酸アミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセトアミド、ポリビニルホルムアミド、ポリ-N-メチルビニルアセトアミド、ポリ(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
また、上記極性官能基としては、アミノ基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ポリアルキレンエーテル基、アミド基、水酸基、エステル基、エポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の極性官能基を含有することが好ましい。
【0030】
上記極性高分子化合物(C)中の極性官能基濃度としては、通常0.1mmol/g以上、好ましくは1~30mmol/g、より好ましくは2~25mmol/g、さらに好ましくは5~23mmol/g、特に好ましくは6~20mmol/gであることが、粘度発現と付きまわり性の観点から好適である。
なお、本明細書において、極性官能基濃度は、極性官能基を1個として計算するものであり、例えば、1個の重合性不飽和モノマー中に2個の極性官能基を有していた場合は2個と計算する。
【0031】
また、上記極性高分子化合物(C)は、エッジ部の防食性及び付きまわり性の観点から、ハンセンの溶解度パラメータにおけるδh(水素結合項)が、14MPa1/2以下であることが好ましく、10MPa1/2以下であることがより好ましい。また、1MPa1/2以上であることが好ましく、3MPa1/2以上であることが好ましい。
ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)は、ある物質が他のある物質にどのくらい溶けるのかという溶解性を表す指標である。HSPは溶解性を3次元のベクトルで表す。この3次元ベクトルは、代表的には、分散項(δd)、極性項(δp)、水素結合項(δh)で表すことができる。分散項(δd)は分散力による効果、分極項(δp)は双極子間力による効果、水素結合項(δh)は水素結合力による効果を示す。水素結合項(δh)が高いと他成分との相互作用により塗料の粘性が発現するが、逆に極性が強くなりすぎると被塗物への付きまわり性が劣ることになる。
【0032】
本明細書で用いているハンセン溶解度パラメータ(HSP値)は、HSPiP(Hansen Solubility Parameters in Practice)というソフトを用いて算出することができる。
上記極性高分子化合物(C)としては、粘度発現の観点から、重合性不飽和モノマーを共重合した共重合体化合物であることが好ましい。
なお、本発明において、「共重合体化合物」とは、1種のモノマーの重合体と2種以上のモノマーの共重合体の両方を意味する。
【0033】
<共重合体化合物>
上記共重合体化合物の原料として用いられる重合性不飽和モノマーとしては、ラジカル重合し得る重合性不飽和基を有するモノマーであれば特に制限なく用いることができ、該重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルエーテル基などが挙げられる。なかでも、粘度発現の観点から、上記共重合体化合物が、極性官能基を有する重合性不飽和モノマーを構成成分とする共重合体であり、該極性官能基が、アミノ基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ポリアルキレンエーテル基、アミド基、水酸基、エポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の極性官能基であることが好適である。
【0034】
<極性官能基を有する重合性不飽和モノマー>
上記極性官能基を有する重合性不飽和モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、分子末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等のアミノ基及び/又はアミド基を有する重合性不飽和モノマー;イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと水酸基含有化合物との反応生成物又は水酸基含有重合性不飽和モノマーとイソシアネート基含有化合物との反応生成物等のウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等、これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基を有する重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの下記式(1)で示されるポリアルキレンエーテル基を有する重合性不飽和モノマー等が挙げられる。
CH2=C(R1)COO(CnH2nO)m-R2 ・・・式(1)
〔式中、R1は水素原子又はCH3を表し、R2は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、mは4~60、特に4~55の整数であり、nは2~3の整数であり、ここで、m個のオキシアルキレン単位(CnH2nO)は同じであっても又は互いに異なっていてもよい。〕
上記の極性官能基を有する重合性不飽和モノマーは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0035】
<その他の重合性不飽和モノマー>
上記極性官能基を有する重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数3以下のアルキル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレートなどのイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレートなどのアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0036】
<重合方法>
共重合体化合物の重合方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、重合性不飽和モノマーを有機溶媒中で溶液重合することにより製造することができるが、これに限られるものではなく、例えば、バルク重合や乳化重合や懸濁重合等でもよい。溶液重合を行う場合には、連続重合でもよいしバッチ重合でもよく、重合性不飽和モノマーは一括して仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよく、あるいは連続的又は断続的に添加してもよい。
【0037】
重合に用いられるラジカル重合開始剤としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の過酸化物系重合開始剤;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、アゾクメン、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2-(t-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0038】
上記の重合又は希釈に使用される溶媒としては、特に制限はなく、水や有機溶媒、又はその混合物などを挙げることができる。有機溶媒としては、例えば、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタンなどの炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒;n-ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶媒;エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、イソブタノール等の等のアルコール系溶媒;エクアミド(商品名、出光興産社製)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロピオアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系溶媒など、従来公知の溶媒を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0039】
有機溶媒中での溶液重合において、重合開始剤、重合性不飽和モノマー成分及び有機溶媒を混合し、撹拌しながら加熱する方法、反応熱による系の温度上昇を抑えるために有機溶媒を反応容器に仕込み、60℃~200℃の温度で撹拌しながら必要に応じて窒素やアルゴンなどの不活性ガスを吹き込みながら、重合性不飽和モノマー成分と重合開始剤を所定の時間かけて混合滴下又は分離滴下する方法などが用いられる。
重合は、一般に1~10時間程度行うことができる。各段階の重合の後に必要に応じて重合開始剤を滴下しながら反応容器を加熱する追加触媒工程を設けてもよい。
【0040】
粒子(D)
本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれる粒子(D)は、粘土鉱物(D1)及び/又は樹脂架橋粒子(D2)を含有するものである。
上記粒子(D)の含有量としては、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の固形分合計質量を基準として、固形分で0.1~40質量%であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましく、1.0~20質量%であることがさらに好ましい。
また、粒子(D)は、粘土鉱物(D1)及び樹脂架橋粒子(D2)の両方を含むことが好ましい。
【0041】
粘土鉱物(D1)
本発明のカチオン電着塗料組成物で必要に応じて用いることができる粘土鉱物(D1)は、上記樹脂(A)及び化合物(B)の固形分合計質量を基準として、通常0.1~40質量%含有し、好ましくは0.1~20質量%含有し、より好ましくは0.5~20質量%含有し、さらに好ましくは1~15質量%含有することが好適である。
上記粘土鉱物は、粘土を構成する主成分鉱物で、層状珪酸塩鉱物(フィロ珪酸塩鉱物)、方解石(カルサイト)、苦灰石(ドロマイト)、長石類、石英、沸石(ゼオライト)類、その他、鎖状構造を持つもの(アタパルジャイト、セピオライトなど)、繊維状構造を持つもの(パリゴルスカイトなど)、はっきりとした結晶構造を持たないもの(アロフェン)などが粘土鉱物と呼ばれている。
【0042】
また、本発明の粘土鉱物(D1)は、クレー以外の少なくとも1種の粘土鉱物を含むことが好ましく、クレーとクレー以外の少なくとも1種の粘土鉱物とを併用していることが好ましい。なお、「クレー」とは、粘土層から採れるシリカ、マグネシウム、鉄分、カリウム、ナトリウムを主成分とする板状又は層状の粘土であり、精製クレーも含む。精製クレーとは、酸などでクレーに含まれる不純物を溶解・除去したものである。塗料用途でクレーと言えばカオリナイト(化学式:Al2O3・2SiO2・2H2O)を含むカオリンクレーが使用される。
【0043】
上記粘土鉱物(D1)の形状は、板状、鱗片状、層状、棒状、鎖状、針状、繊維状からなる群から選ばれる少なくとも1種の形状が好ましいが、特に層状以外の粘土鉱物を含むことが好ましく、棒状、針状、繊維状、鎖状の粘土鉱物を含むことがより好ましい。
上記粘土鉱物(D1)は、有機処理しているものが好ましい。有機処理としては、特に制限はなく、例えば、国際公開第2012/086564号明細書や特開2006-52136号公報などに記載の方法を用いることができ、具体的には、アミン化合物、四級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、スルホニウム化合物などを用いて行うことができる。粘土鉱物の表面を疎水化することで、得られた粘土鉱物の分散安定性を高めている。
【0044】
粘土鉱物(D1)の平均粒子径は、好ましくは0.1~30μmであり、より好ましくは0.2~20μmであり、さらに好ましくは0.4~10μmである。
上記粘土鉱物の平均粒子径は、レーザー回折法(体積基準)によって測定することができる。粘土鉱物(D1)の平均粒子径は、一次粒子を対象にしたものであるが、一次粒子の凝集体である二次粒子による影響を極力受けないようにするため、予め3分~5分程度、超音波による再分散化(一次粒子が凝集した二次粒子を解き、再び一次粒子に分離させること)を図った後に、粒子径測定をするようにする。このことにより、一次粒子の凝集体である二次粒子の影響を極力排除して、ほぼ一次粒子からなるものの平均粒子径を測定することができる。したがって、本発明における粘土鉱物の平均粒子径とは、粘土鉱物の一次粒子における粒子径の体積基準の平均値である。
【0045】
樹脂架橋粒子(D2)
本発明のカチオン電着塗料組成物で用いることができる樹脂架橋粒子(D2)としては、樹脂を架橋した粒子であれば特に制限はないが、具体的には、例えば、エポキシ樹脂架橋粒子、アクリル樹脂架橋粒子、ウレタン樹脂架橋粒子、ポリエステル樹脂架橋粒子、又はこれらの複合粒子などが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、後述するエポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)が好適である。
上記樹脂架橋粒子(D2)は、上記樹脂(A)及び化合物(B)の固形分合計質量を基準として、通常0.1~40質量%含有し、好ましくは0.1~20質量%含有し、より好ましくは0.5~20質量%含有し、さらに好ましくは1~15質量%含有することが好適である。
【0046】
エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)
エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)は、下記条件で測定される数平均分子量が、上限としては、通常100,000未満であり、好ましくは9,000以下であり、より好ましくは5,000以下の範囲内であり、下限としては、通常100以上であり、好ましくは150以上であり、より好ましくは200以上の範囲内であることが仕上がり性とエッジ部の防食性の観点から好適である。
【0047】
<数平均分子量の測定方法>
エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)をN,N-ジメチルホルムアミドで固形分1質量%の濃度に希釈し、室温で24時間静置した。次いでGPC用マイショリフィルター(孔径:0.2ミクロン)によって不溶解成分(架橋成分)を濾過して取り除き、下記ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて数平均分子量を測定した。
なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定においては、不溶解成分(本発明においては溶媒に溶解しない架橋成分)が存在すると装置内で目詰まりが発生し、故障の原因となるため、フィルターを用いてろ過し、サンプルを調製することが一般的である。
【0048】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)>
装置:「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)、
カラム:「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」及び「TSKgel G-2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本、
移動相:N,N-ジメチルホルムアミド、
条件:測定温度40℃、流速1mL/min、
検出器:RI。
【0049】
なお、数平均分子量は、上記ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。
上記エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)は、高分子量化すると仕上がり性が悪化するため、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した数平均分子量測定データにおいて、分子量100,000以上であるピーク面積(高分子率)が全ピーク面積の40%未満であることが好ましく、30%未満であることがより好ましい。
なお、本明細書において、上記分子量100,000以上であるピーク面積を「高分子率」と呼ぶことがある。
【0050】
また、上記エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)の不溶解成分の割合については、エッジ部と平面部の防食性、及び仕上がり性の観点から、10質量%以上が好ましく、10~90質量%がより好ましく、10~60質量%がさらに好ましく、15~45質量%が特に好ましい。
不溶解成分が多い場合は仕上がり性が悪化するおそれがあり、不溶解成分が少ない場合はエッジ部の防食性が悪化するおそれがあるため、この範囲内にあることで、エッジ部の防食性と仕上がり性の両立ができ得る。
なお、上記不溶解成分(架橋成分)の割合は下記方法により算出することができる。
【0051】
<不溶解成分(架橋成分)割合の測定方法>
エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)をN,N-ジメチルホルムアミドで1質量%の固形分濃度に希釈し、室温で24時間静置した。次いでGPC用マイショリフィルター(孔径:0.2ミクロン)によって不溶解成分(架橋成分)を濾過し、不溶解成分の残渣を130℃×3時間の条件で乾燥することにより残渣の固形分質量を測定した。不溶解成分(架橋成分)の割合(質量%)は下記式により求めることができる。
不溶解成分(架橋成分)の割合(質量%)=A/B×100
A:濾過残渣の固形分質量
B:濾過前のエポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)溶液の固形分質量
【0052】
本発明のカチオン電着塗料組成物で用いることができるエポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)としては、エポキシ樹脂を架橋剤で架橋して得られる粒子であれば特に限定されない。
ここで、エポキシ樹脂架橋粒子(D2)におけるエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂を変性して得られる樹脂も包含されるものであり、エポキシ基を変性して得られるエポキシ基を持たない樹脂もエポキシ樹脂に包含される。架橋剤としては、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性官能基を1個以上有する化合物が挙げられる。好ましくは、エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、ポリカルボン酸化合物、ポリアミン化合物等からなる群より選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。またマイケル付加反応によってエポキシ樹脂を架橋するものであってもよい。
【0053】
エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)として例えば、エポキシ樹脂とアミン化合物とを反応させて得られるアミノ基含有エポキシ樹脂を製造し、該アミノ基含有エポキシ樹脂を酸化合物で中和し水性溶媒中に分散させ、得られた分散物と多官能のエポキシ樹脂及び/又はポリイソシアネート化合物とを混合及び反応させて得られるエポキシ樹脂架橋粒子などが挙げられる。
エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)の一態様として、エポキシ樹脂とアミン化合物とを反応させて得られるアミノ基含有エポキシ樹脂(D2-2)を製造する工程(I)、該アミノ基含有エポキシ樹脂(D2-2)を酸化合物で中和し、水性溶媒中に分散させる工程(II)、得られた分散物と架橋剤(D2-3)であるエポキシ樹脂とを混合及び反応させてエポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)を得る工程(III)、を含有する製造工程を以下に示す。
上記架橋剤(D2-3)としては、エポキシ化合物のほかにポリイソシアネート化合物や他の架橋可能成分も好適に用いることができる。
【0054】
<工程(I)>
エポキシ樹脂とアミン化合物とを反応させて得られるアミノ基含有エポキシ樹脂(D2-2)を製造する工程としては、前述したアミノ基含有エポキシ樹脂(A)と同様の製造方法を用いることができる。
上記エポキシ樹脂としては、前述のエポキシ樹脂(A-1)と同様のものを用いることができ、中でも、ビスフェノールAから誘導される前記式(1)のエポキシ樹脂を好適に用いることができる。さらに前記式(1)のエポキシ樹脂とポリフェノール化合物とを反応させて高分子量化及び/又は多官能化したエポキシ樹脂を好適に用いることができ、該ポリフェノール化合物としてはビスフェノールAが好ましい。
上記エポキシ樹脂の数平均分子量としては、400~5000が好ましく、700~3000がより好ましい。
【0055】
上記アミン化合物としては、前述のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)で挙げたアミン化合物を好適に用いることができるが、特にケチミン化されたアミン化合物を含むことが好ましく、なかでもケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ-及びポリアミンを含むことが好ましい。
上記ケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ-及びポリアミンとしては、例えば、下記式(2)で示されるアミン化合物のケチミン化物が挙げられ、具体的には、例えば、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサアミンなどのジケチミン化物などが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0056】
【0057】
(式中、R1及びR2は、炭素数1~8の炭化水素基であり、それぞれ異なっていても同じでもよい。nは1~5の整数である。)
【0058】
上記ケチミン化されたアミン化合物は、アミン化合物中に、0.1モル%以上、かつ80モル%未満の範囲で含有されることが好ましく、1モル%以上、かつ50モル%未満の範囲で含有されることがより好ましく、2モル%以上、かつ40モル%未満の範囲で含有されることがさらに好ましく、5モル%以上、かつ30モル%未満の範囲で含有されることが特に好ましい。
なお、本明細書において、上記ケチミン化されたアミン化合物の含有率を「ケチミン化合物含有率」と呼ぶことがある。
【0059】
アミン化合物が有するケチミン化された第1級アミノ基は、後述する水分散工程(II)において加水分解され第1級アミノ基が現れる。次いで工程(III)において該第1級アミノ基とエポキシ化合物のエポキシ基とが反応し、高分子量化及び/又は架橋反応が起こる。それ故、アミン化合物を上記範囲内にすることでエポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)の分子量、粒子径、及び/又は架橋度(不溶解成分の割合)を最適な範囲内とすることができる。
【0060】
<工程(II)>
上記工程(I)で得られたアミノ基含有エポキシ樹脂(D2-2)は、続いて酸化合物で中和し、さらに水性溶媒中に分散をすることで分散物を得ることができる。
ここで水性溶媒とは、水と必要に応じて含有できるその他の溶媒を含む溶媒のことであり、その他の溶媒としては、例えば、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、アルコール系溶媒、及びエーテルアルコール系溶媒、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
上記酸化合物としては、公知の酸化合物を特に制限なく用いることができ、なかでも有機酸が好ましく、さらにギ酸、乳酸、酢酸又はこれらの混合物が好適である。中和当量としては、アミノ基1当量に対して酸化合物を0.2~1.5当量が好ましく、0.5~1.0当量がより好ましい。
また、上記酸化合物以外に乳化剤などの添加剤を含有してもよい。
【0061】
水性溶媒中への樹脂(D2-2)の分散は、中和されたアミノ基含有エポキシ樹脂(D2-2)に対して撹拌しながら水性溶媒を加えてもよく、また、水性溶媒に対して中和されたアミノ基含有エポキシ樹脂(D2-2)を撹拌しながら加えても良く、また、水性溶媒と中和されたアミノ基含有エポキシ樹脂(D2-2)とを混合してから撹拌してもよい。
上記分散温度としては、100℃未満が好ましく40~99℃がより好ましく、50~95℃がさらに好ましい。
分散物の樹脂固形分濃度としては、5~80質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。
【0062】
<工程(III)>
上記工程(II)で得られた分散物は、続いて架橋剤(D2-3)であるエポキシ化合物と混合して、さらに反応させることで、エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)を得ることができる。
上記エポキシ化合物としては、前述のエポキシ樹脂(A-1)と同様のものを用いることができ、中でも、ビスフェノールAから誘導される前記式(1)のエポキシ樹脂を好適に用いることができる。上記エポキシ樹脂のエポキシ当量としては、180~2000が好ましく、180~500がより好ましい。
【0063】
上記反応工程において、加水分解によりケチミン化ブロックが外れたアミノ基含有エポキシ樹脂(D2-2)の第1級アミノ基と架橋剤(D2-3)であるエポキシ化合物のエポキシ基とが反応し、高分子量化及び/又は架橋反応が起こる。
上記第1級アミノ基とエポキシ基の当量比としては、第1級アミノ基1当量に対してエポキシ基を0.5~2.0当量が好ましく、0.7~1.5当量がより好ましい。
上記反応温度としては、100℃未満が好ましく40~99℃がより好ましく、50~95℃がさらに好ましい。
また、上記高分子量化及び/又は架橋反応の反応中や反応後に、40~99℃の温度で減圧をして脱溶媒工程を入れることができる。
【0064】
上記工程(III)で得られたエポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)の体積平均粒子径としては、エッジ部と平面部の防食性、及び仕上がり性の観点から、通常30nm~1000nmの範囲内であり、100nmより大きいことが好ましく、150nmより大きいことがより好ましく、200nmより大きいことがさらに好ましく、300nmより大きいことが特に好ましい。また、800nmより小さいことが好ましく、700nmより小さいことがより好ましく、600nmより小さいことがさらに好ましく、500nmより小さいことが特に好ましい。
なお、樹脂架橋粒子(B2)の体積平均粒子径はレーザー回折・散乱測定装置によって測定することができ、本明細書において粒子径はマイクロトラックUPA250(商品名、日機装社製、粒度分布測定装置)で測定を行った。
また、エポキシ樹脂架橋粒子(D2-1)のアミン価は、25~200mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、50~180mgKOH/gの範囲内であることがより好ましい。
上記範囲内とすることで、水性溶媒中での粒子の分散性と塗膜の耐水性が優れる。
【0065】
カチオン電着塗料組成物について
本発明のカチオン電着塗料組成物におけるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)、及びブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の配合割合としては、上記成分(A)及び(B)の固形分合計質量を基準にして、成分(A)を5~95質量%、好ましくは50~80質量%、成分(B)を5~95質量%、好ましくは20~50質量%の範囲内であることが、塗料安定性が良好で、仕上がり性、防食性に優れた塗装物品を得るためにも好ましい。上記範囲を外れると、上記の塗料特性及び塗膜性能のいずれかを損なうことがあり好ましくない。
【0066】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、特に限定されるものではないが、例えば、上記樹脂(A)、及び化合物(B)に加え、必要に応じて、界面活性剤や表面調整剤等の各種添加剤を十分に混合して調合樹脂とした後、水を加えて得られる水分散体(I)と、後述する顔料ペースト(II)とを含む組成物であることが好ましい。これに、水、有機溶媒、中和剤などを十分に混合して得ることができる。上記中和剤としては、公知の有機酸を特に制限なく用いることができ、なかでもギ酸、乳酸又はこれらの混合物が好適である。
【0067】
極性高分子化合物(C)、粘土鉱物(D1)、及び樹脂架橋粒子(D2)の塗料組成物への混合方法に関しては、水分散体(I)を製造する際に水分散体の中に含有させる方法、顔料ペースト(II)を製造する際に、顔料や分散樹脂と一緒に顔料ペースト中に含有させる方法、水分散体(I)及び顔料ペースト(II)を含有する塗料組成物を撹拌しながら添加する方法などがあり、いずれも好適に用いることができる。
なかでも、粘土鉱物(D1)の粒子形状を壊さないことが好ましいため、メジア型分散(ボールミルなどでの分散)ではなく、せん断型分散を用いて分散し、次いで水分散体(I)及び/又は顔料ペースト(II)中に含有(混合)させることが好ましい。
【0068】
上記せん断型分散機としては、例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」、「ハイシェアミキサー」等、シルバーソン社製「アブラミックス」、「ミキサー」等)類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
上記顔料ペースト(II)としては、着色顔料、防錆顔料及び体質顔料などの顔料をあらかじめ微細粒子に分散したものであって、例えば、顔料分散用樹脂、中和剤及び顔料を配合し、ボールミル、サンドミル、ペブルミル等のメジアを用いた分散混合機中で分散処理して、顔料ペーストを調製できる。
上記顔料分散用樹脂としては、公知のものを特に制限なく使用でき、例えば水酸基及びカチオン性基を有するエポキシ樹脂やアクリル樹脂、界面活性剤等、3級アミン型エポキシ樹脂、4級アンモニウム塩型エポキシ樹脂、3級スルホニウム塩型エポキシ樹脂、3級アミン型アクリル樹脂、4級アンモニウム塩型アクリル樹脂、3級スルホニウム塩型アクリル樹脂などを使用できる。
上記顔料としては、公知のものを特に制限なく使用でき、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;クレー、マイカ、バリタ、炭酸カルシウム、シリカなどの体質顔料;リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、酸化亜鉛(亜鉛華)等の防錆顔料;を添加することができる。
【0070】
さらに、腐食抑制又は防錆を目的として、ビスマス化合物を含有させることができる。上記ビスマス化合物としては、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス及び有機酸ビスマス等を用いることができる。
また、塗膜硬化性の向上を目的として、ジブチル錫ジベンゾエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等の有機錫化合物を用いることができる。前記酸化亜鉛(亜鉛華)等の防錆顔料やビスマス化合物を硬化触媒として用いることによって、これらの有機錫化合物を含有せずに、塗膜硬化性の向上を図ることもできる。これらの顔料の配合量は、樹脂(A)及び化合物(B)の合計樹脂固形分100質量部あたり1~100質量部、特に10~50質量部の範囲内が好ましい。
【0071】
塗膜形成方法
本発明は、前述のカチオン電着塗料組成物からなる電着塗料浴に被塗物を浸漬する工程、及び被塗物を陰極として通電する工程を含む、カチオン電着塗膜の形成方法を提供する。
本発明のカチオン電着塗料組成物の被塗物としては、自動車ボディ、自動車部品、2輪車部品、家庭用機器、その他の機器等が挙げられ、金属であれば特に制限はない。
【0072】
被塗物としての金属板としては、冷延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛-鉄二層めっき鋼板、有機複合めっき鋼板、Al素材、Mg素材など、並びにこれらの金属板を必要に応じてアルカリ脱脂等の表面を洗浄化した後、リン酸塩化成処理、クロメート処理等の表面処理を行ったものが挙げられる。
【0073】
カチオン電着塗料組成物は、カチオン電着塗装によって所望の被塗物基材表面に塗装することができる。カチオン電着方法は、一般的には、脱イオン水等で希釈して固形分濃度を約5~40質量%とし、好ましくは10~25質量%とし、さらにpHを4.0~9.0、好ましくは5.5~7.0の範囲内に調整したカチオン電着塗料組成物を浴として、通常、浴温15~35℃に調整し、負荷電圧100~400V好ましくは150~350Vの条件で被塗物を陰極として1回以上通電(好ましくは1回通電)することによって行う。電着塗装後、通常、被塗物に余分に付着したカチオン電着塗料を落とすために、限外濾過液(UF濾液)、逆浸透透過水(RO水)、工業用水、純水等で十分に水洗する。
【0074】
電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、乾燥塗膜に基づいて5~40μm、好ましくは10~35μmの範囲内とすることができる。また、塗膜の焼き付け乾燥(加熱硬化)は、電着塗膜を電気熱風乾燥機、ガス熱風乾燥機などの乾燥設備を用いて、塗装物表面の温度で110~200℃、好ましくは140~180℃にて、時間としては10~180分間、好ましくは20~50分間、電着塗膜を加熱して行う。上記焼付け乾燥により硬化塗膜を得ることができる。
【実施例0075】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0076】
アミノ基含有エポキシ樹脂の製造
製造例1
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけたフラスコに、jER828EL(商品名、ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量350) 1,200部に、ビスフェノールA 500部及びジメチルベンジルアミン 0.2部を加え、130℃でエポキシ当量850になるまで反応させた。
次に、ジエタノールアミン 160部及びジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンとのケチミン化物 65部を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル 480部を加え、固形分80%のアミノ基含有エポキシ樹脂(a-1)溶液を得た。アミノ基含有エポキシ樹脂(a-1)は、アミン価59mgKOH/g、数平均分子量2,100であった。
【0077】
ブロック化ポリイソシアネート化合物の製造
製造例2
反応容器中に、コスモネートM-200(商品名、三井化学社製、クルードMDI、NCO基含有率 31.3%) 270部、及びメチルイソブチルケトン 127部を加え70℃に昇温した。この中にエチレングリコールモノブチルエーテル 236部を1時間かけて滴下して加え、その後100℃に昇温し、この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネート基の吸収がなくなったことを確認し、樹脂固形分80%のブロック化ポリイソシアネート化合物(b-1)を得た。
【0078】
顔料分散用樹脂の製造
製造例3
撹拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を取り付けたフラスコに、ノニルフェノール 450部、CNE195LB(長春ジャパン社製、商品名、クレゾール型ノボラックエポキシ樹脂、ノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物) 960部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し、160℃で反応させた。その後、ε-カプロラクトン 430部を仕込み、170℃に昇温し、反応させた。さらに、ジエタノールアミン 105部及びN-メチルエタノールアミン 124部を反応させ、エポキシ価が0になったことを確認し、エチレングリコールモノブチルエーテルを加えて固形分を調整し、固形分60%の顔料分散用樹脂溶液を得た。
【0079】
顔料ペーストの製造
製造例4
製造例3で得た固形分60%の4級アンモニウム塩基を含有する顔料分散用樹脂 8.3部(固形分5部)、酸化チタン 21.5部、カーボンブラック 0.3部、水酸化ビスマス 2部、及び脱イオン水 20.3部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分55%の顔料ペースト(p-1)を得た。
【0080】
製造例5
製造例3で得た固形分60%の4級アンモニウム塩基を含有する顔料分散用樹脂 8.3部(固形分5部)、酸化チタン 14.5部、カーボンブラック 0.3部、水酸化ビスマス 2部、及び脱イオン水 20.3部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分55%の顔料ペースト(p-2)を得た。
【0081】
製造例6
製造例3で得た固形分60%の4級アンモニウム塩基を含有する顔料分散用樹脂 8.3部(固形分5部)、酸化チタン 14.5部、ASP-200(商品名、BASF社製、カオリンクレー、平均粒子径0.4μm) 7部、カーボンブラック 0.3部、水酸化ビスマス 2部、及び脱イオン水 20.3部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分55%の顔料ペースト(p-3)を得た。
【0082】
製造例7
製造例3で得た固形分60%の4級アンモニウム塩基を含有する顔料分散用樹脂 8.3部(固形分5部)、酸化チタン 14.5部、有機変性クレー(平均粒子径0.5μm) 7部、カーボンブラック 0.3部、水酸化ビスマス 2部、及び脱イオン水 20.3部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分55%の顔料ペースト(p-4)を得た。
【0083】
エポキシ樹脂架橋粒子の製造
製造例8
撹拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を取り付けた反応容器にjER828EL 527部、ビスフェノールA 160部、ジメチルベンジルアミン 0.1部を加え、反応容器内の温度を160℃に保持し、エポキシ当量が490g/molまで反応させた。次いで、反応容器内の温度を140℃まで冷却し、ジメチルベンジルアミン 1.7部加えエポキシ当量が890g/molまで反応させた後、メチルイソブチルケトンを220部加えながら、反応容器内の温度を100℃まで冷却した。次いでN-メチルエタノールアミン 45部とジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンのジケチミン化物 45部(ケチミン化合物含有率:22モル%)の混合物を添加し、115℃で1時間反応させることにより、アミノ基含有エポキシ樹脂溶液を得た。
得られたアミノ基含有エポキシ樹脂溶液のうち204部を新たな反応容器に加え、反応容器内の温度を90℃に保持した。次いで88%乳酸 16部を加えて酸中和し、脱イオン水を664部加え希釈分散した。次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルで固形分80%溶液としたjER828EL溶液を16部添加し、90℃で3時間反応させた後、減圧下でメチルイソブチルケトンを除去して、脱イオン水で希釈し固形分18%のエポキシ樹脂架橋粒子(d2-1)溶液を得た。得られたエポキシ樹脂架橋粒子(d2-1)は、数平均分子量(注1)1,000、高分子率(注2)10%、不溶解成分割合(注3)20質量%、体積平均粒子径(注4)220nmであった。
【0084】
(注1)数平均分子量:エポキシ樹脂架橋粒子をN,N-ジメチルホルムアミドで固形分1質量%の濃度に希釈し、室温で24時間静置した。次いでGPC用マイショリフィルター(孔径:0.2ミクロン)によって不溶解成分(架橋成分)を濾過して取り除き、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)〔「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)〕を用いて数平均分子量を測定した。
(注2)高分子率(%):上記分子量測定データにおいて、全ピーク面積に対する分子量100,000以上のピーク面積の割合(%)を示す。
(注3)不溶解成分割合(質量%):エポキシ樹脂架橋粒子をN,N-ジメチルホルムアミドで1質量%の固形分濃度に希釈し、室温で24時間静置した。続いてGPC用マイショリフィルター(孔径:0.2ミクロン)によって濾過し、不溶解成分(架橋成分)の割合を下記式により算出した。
不溶解成分の割合(質量%)=A/B×100
〔A:濾過残渣の固形分質量、B:固形分1質量%に希釈したエポキシ樹脂架橋粒子(C)溶液の質量/100〕。
(注4)体積平均粒子径(nm):エポキシ樹脂架橋粒子をマイクロトラックUPA250(商品名、日機装社製、粒度分布測定装置)で測定を行った。
【0085】
製造例9
撹拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を取り付けた反応容器にjER828EL 527部、ビスフェノールA 160部、ジメチルベンジルアミン 0.1部を加え、反応容器内の温度を160℃に保持し、エポキシ当量が490g/molまで反応させた。次いで、反応容器内の温度を140℃まで冷却し、ジメチルベンジルアミン 1.7部を加えエポキシ当量が890g/molまで反応させた後、メチルイソブチルケトンを220部加えながら、反応容器内の温度を100℃まで冷却した。次いでN-メチルエタノールアミン 45部とジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンのジケチミン化物 45部(ケチミン化合物含有率:22モル%)の混合物を添加し、115℃で1時間反応させることにより、アミノ基含有エポキシ樹脂溶液を得た。
得られたアミノ基含有エポキシ樹脂溶液のうち221部を新たな反応容器に加え、反応容器内の温度を90℃に保持した。次いで88%ギ酸 9部を加えて酸中和し、脱イオン水を662部加え希釈分散した。次いで、メチルイソブチルケトンで固形分80%溶液としたヘキサメチレンジイソシアネート溶液を7.8部添加し、90℃で3時間反応させた後、減圧下でメチルイソブチルケトンを除去して、脱イオン水で希釈し固形分18%のエポキシ樹脂架橋粒子(d2-2)溶液を得た。得られたエポキシ樹脂架橋粒子(d2-2)は、数平均分子量(注1)1,000、高分子率(注2)10%、不溶解成分割合(注3)20質量%、体積平均粒子径(注4)220nmであった。
【0086】
製造例10
撹拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を取り付けた反応容器にjER828EL 413部、ビスフェノールA 126部、ジメチルベンジルアミン 0.1部を加え、反応容器内の温度を160℃に保持し、エポキシ当量が490g/molまで反応させた。次いで、反応容器内の温度を140℃まで冷却し、ジメチルベンジルアミン 1.3部加えエポキシ当量が890g/molまで反応させた後、メチルイソブチルケトンを177部加えながら、反応容器内の温度を100℃まで冷却した。次いでジエタノールアミン 44部とN-メチルエタノールアミン 4部、ジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンのジケチミン化物 35部(ケチミン化合物含有率:22モル%)の混合物を添加し、115℃で1時間反応させることにより、アミノ基含有エポキシ樹脂溶液を得た。得られたアミノ基含有エポキシ樹脂溶液のうち305部を新たな反応容器に加え、反応容器内の温度を90℃に保持した。次いで88%乳酸 26部を加えて酸中和し、脱イオン水を1146部加え希釈分散した。次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルで固形分80%溶液としたjER828EL溶液を24部添加し、90℃で3時間反応させた後、減圧下でメチルイソブチルケトンを除去して、脱イオン水で希釈し固形分18%のエポキシ樹脂架橋粒子(d2-3)溶液を得た。得られたエポキシ樹脂架橋粒子(d2-3)は、数平均分子量(注1)1,000、高分子率(注2)10%、不溶解成分割合(注3)15質量%、体積平均粒子径(注4)45nmであった。
【0087】
アクリル樹脂架橋粒子の製造
製造例11
撹拌機、温度計、滴下ロートを取り付けた反応容器にブチルセロソルブ 120部を入れ120℃に昇温し撹拌した。ここにt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 2部、及びブチルセロソルブ 10部を混合した触媒溶液と、グリシジルメタクリレート 15部、2-エチルヘキシルメタクリレート 50部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート 20部、及びn-ブチルメタクリレート 15部からなるモノマー混合溶液を3時間で滴下した。30分間エージングした後、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 0.5部及びブチルセロソルブ 5部を混合した触媒溶液を30分かけて滴下し、2時間後、冷却した。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量は28,000であった。
ここにN,N-ジメチルアミノエタノール 7部及び50%乳酸水溶液 15部を加えて80℃で加熱撹拌することにより4級化を行った。酸価が1以下になった時点で加熱を停止し、アンモニウム基含有アクリル樹脂を得た。
反応容器に、上記アンモニウム基含有アクリル樹脂 20部と脱イオン水 270部とを加え、75℃で加熱撹拌した。ここに2,2’-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン) 1.5部の酢酸100%中和水溶液を5分かけて滴下した。5分間エージングした後、メチルメタクリレート 30部を5分かけて滴下した。さらに5分間エージングした後、上記アンモニウム基含有アクリル樹脂 70部と脱イオン水 250部とを混合した溶液にメチルメタクリレート 170部、スチレン 40部、n-ブチルメタクリレート 30部、グリシジルメタクリレート 5部及びネオペンチルグリコールジメタクリレート 30部からなるモノマー混合物のプレエマルションを40分かけて滴下した。次いで、60分後に冷却し、固形分35%のアクリル樹脂架橋粒子(d2-4)分散液を得た。得られたアクリル樹脂架橋粒子(d2-4)分散液の体積平均粒子径(注4)は120nmであった。
【0088】
カチオン電着塗料組成物の製造
実施例1
製造例1で得られたアミノ基含有エポキシ樹脂(a-1) 87.5部(固形分70部)、製造例2で得られたブロック化ポリイソシアネート化合物(b-1) 37.5部(固形分30部)を混合し、10%酢酸 13部を配合して均一に撹拌した後、脱イオン水を強く撹拌しながら約15分間を要して滴下して固形分34%のエマルションを得た。
次に、上記エマルション 294部(固形分100部)、製造例6で得た顔料ペースト(p-3) 52.4部、50%ポリビニルアルコール(注5) 2部(固形分1部)、及び脱イオン水を加え、固形分20%のカチオン電着塗料組成物(X-1)を製造した。
【0089】
実施例2~30、比較例1~6
下記表1の配合とする以外は全て実施例1と同様にして、カチオン電着塗料組成物(X-2)~(X-36)を製造した。
また、後述する評価試験の結果を表1中に記載する。本発明のカチオン電着塗料組成物においては、全ての評価で合格(「×」及び「××」が不合格)することが必要である。
【0090】
【0091】
【0092】
表中の配合量は全て固形分の値である。
(注5)ポリビニルアルコール:けん化度88%、重量平均分子量180,000、極性官能基濃度20.4mmol/g
(注6)ポリジメチルアクリルアミド:重量平均分子量900,000、極性官能基濃度10.1mmol/g
(注7)ポリジメチルアクリルアミド:重量平均分子量5,000,000、極性官能基濃度10.1mmol/g
(注8)ポリヒドロキシエチルアクリルアミド:重量平均分子量900,000、極性官能基濃度17.4mmol/g
(注9)ポリビニルアセトアミド:重量平均分子量800,000、極性官能基濃度11.8mmol/g
(注10)ポリアクリルアミド:重量平均分子量800,000、極性官能基濃度14.1mmol/g
(注11)(N-テトラコシル)グリセリン酸アミド:ポリヒドロキシカルボン酸アミド、極性官能基濃度6.8mmol/g
【0093】
また、上記表1中の粘土鉱物の種類は下記の通りである。
「D1-1」:ASP-200(商品名、カオリンクレー(板状)、平均粒子径0.4μm、BASF社製)〔メジア型分散〕
「D1-2」:ASP-200(商品名、カオリンクレー(板状)、平均粒子径0.4μm、BASF社製)〔水分散体に混合〕
「D1-3」:有機変性クレー(平均粒子径0.5μm)〔メジア型分散〕
「D1-4」:有機変性クレー(平均粒子径0.5μm)〔水分散体に混合〕
「D1-5」:GARAMITE1958(有機変性セピオライト・サポナイト・ヘクトライト(鎖状、板状)、BYK社製)〔水分散体に混合〕
「D1-6」:Pangel B20(有機変性セピオライト(鎖状)、楠本化成社製)
【0094】
〔水分散体に混合〕
なお、上記「水分散体に混合」とは、アミノ基含有エポキシ樹脂(a-1)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(b-1)、及び酢酸を配合して撹拌した後に、撹拌しながら粘土鉱物を徐々に添加して均一に混合し、続いて脱イオン水を加えて粘土鉱物を含有した水分散体(エマルション)を製造したものである。
【0095】
評価試験
<エッジ部防食性(96時間、192時間、384時間)>
カッター刃(刃角度20度、長さ10cm、リン酸亜鉛処理)に、浴温28℃で、通電時間を調整し、電着塗装を行って一般面で15μmの膜厚になるように試験板を作成した。
次に、これをJISZ-2371に準じて、96時間、192時間、及び384時間の耐塩水噴霧試験を行い、カッター刃先端のエッジ部を以下の基準で評価した。
評価は、「S」、「A」、「AB」及び「B」が合格であり、「C」及び「D」が不合格である。
S:錆の発生なし
A:錆の発生個数が10個以下/10cm
AB:錆の発生個数が11~25個/10cm
B:錆の発生個数が26~40個/10cm
C:錆の発生個数が41~60個/10cm
D:錆の発生個数が61個/10cm以上。
【0096】
試験板の作成
化成処理(商品名、パルボンド#3020、日本パーカライジング社製、リン酸亜鉛処理剤)を施した冷延鋼板(150mm(縦)×70mm(横)×0.8mm(厚))を被塗物として、実施例及び比較例で得た各々のカチオン電着塗料を用いて乾燥膜厚15μmとなるように電着塗装し、170℃で20分間焼付け乾燥して試験板を得た。
【0097】
<平面部防食性>
試験板の素地に達するように塗膜にカッターナイフでクロスカット傷を入れ、これをJIS Z-2371に準じて、35℃ソルトスプレー試験を840時間行い、カット部からの片側での錆、フクレ幅によって以下の基準で評価した。
評価は、「S」、「A」及び「B」が合格であり、「C」が不合格である。
S:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で2.0mm以下、
A:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で2.0mmを超え、かつ3.0mm以下、
B:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で3.0mmを超え、かつ3.5mm以下、
C:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で3.5mmを超える。
【0098】
<仕上がり性(表面粗度)>
得られた試験板の塗面をサーフテスト301(商品名、ミツトヨ社製、表面粗度計)を用いて、算術平均表面粗度値(Ra)をカットオフ0.8mmにて測定し、以下の基準で評価した。
評価は、「S」、「A」及び「B」が合格であり、「C」が不合格である。
S:表面粗度値(Ra)が、0.24未満、
A:表面粗度値(Ra)が、0.24以上、かつ0.28未満、
B:表面粗度値(Ra)が、0.28以上、かつ0.32未満、
C:表面粗度値(Ra)が、0.32以上、を示す。
【0099】
<付きまわり性>
4枚の鋼板に直径8mmの穴を空け、2cm間隔で設置した「4枚ボックス法付きまわり性試験の治具」(
図1参照)を、
図2のように配線した。
図2の4枚の鋼板のうち、最も左側の鋼板に向かって左側の面を「A面」、向かって右側の面を「B面」とする。同様に、左から2番目の鋼板左右の面を、それぞれ、「C面」及び「D面」、左から3番目の鋼板左右の面を、それぞれ、「E面」及び「F面」、そして最も右側の鋼板左右の面が、それぞれ、「G面」と「H面」となる。この中で、A面が「外板」であり、G面が「内板」となる。
図2の装置において、浴温28℃、A面と電極との極間距離10cm、通電時間3分間にて、外板(A面)乾燥膜厚40μmとなる電圧にて電着塗装した。付きまわり性は、内板(G面)乾燥膜厚で評価した。
評価は、「A」及び「B」が合格であり、「C」が不合格である。
A:G面(膜厚)が25μm以上で、付きまわり性が非常に優れている。
B:G面(膜厚)が17μm以上で、かつ25μm未満で、付きまわり性が良好である。
C:G面(膜厚)が17μm未満で、付きまわり性が劣る。