(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060173
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/82 20230101AFI20230420BHJP
H10K 102/20 20230101ALN20230420BHJP
【FI】
H10K50/82
H10K102:20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033450
(22)【出願日】2023-03-06
(62)【分割の表示】P 2021160650の分割
【原出願日】2016-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2015035822
(32)【優先日】2015-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】丹 博樹
(72)【発明者】
【氏名】和氣 範明
(57)【要約】
【課題】発光装置の光透過性が低下しないようにする。
【解決手段】基板100は透光性を有しており、発光部140は基板100に形成されている。発光部140は、第1電極110、有機層120、及び第2電極130を有している。有機層120は第1電極110と第2電極130の間に位置している。第2電極130は発光部140の外側まで延在している。そして、第2電極130のうち発光部140の外側に位置する部分の少なくとも端部は、酸化している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の基板と、
前記基板の第1面に形成された発光部と、
を備え、
前記発光部は、第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極の間に位置する有機層を備え、
前記第2電極は前記発光部の外側まで延在し、かつ前記第2電極のうち前記発光部の外側に位置する部分の少なくとも端部は酸化している発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、発光装置の製造方法、及び発光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は有機ELを利用した発光装置の開発が進んでいる。この発光装置は、照明装置や表示装置として使用されており、第1電極と第2電極の間に有機層を挟んだ構成を有している。そして、一般的には第1電極には透明材料が用いられており、第2電極には金属材料が用いられている。
【0003】
有機ELを利用した発光装置の一つに、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1の技術は、有機ELを利用した表示装置に光透過性(シースルー)を持たせるために、第2電極を画素の一部にのみ設けている。このような構造において、複数の第2電極の間に位置する領域は光を透過させるため、表示装置は光透過性を有することができる。なお、特許文献1に記載の技術において、複数の第2電極の間には、画素を画定するために、透光性の絶縁膜が形成されている。特許文献1において、この絶縁膜の材料として、酸化シリコンなどの無機材料や、アクリル樹脂などの樹脂材料が例示されている。
【0004】
また、特許文献2には、第2電極を網目状にし、かつ、網目のピッチを規定することにより、発光装置を透過した像の視認性を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-23336号公報
【特許文献2】特開2014-154404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発光装置に光透過性を持たせるためには、発光装置に第2電極を設けない領域を設定する必要がある。このためには、第2電極にパターンを持たせる必要がある。このパターンを形成する方法としては、例えば蒸着時にマスクを用いる方法などがある。しかし、第2電極のパターンを形成する際に、マスクと基板の隙間より蒸着材料が回り込み第2電極の端部が第2電極の外側に向けて広がり、その結果、第2電極を設けない領域が狭くなって発光装置の光透過性が低下する恐れが出てくる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、発光装置の光透過性が低下しないようにすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、透光性の基板と、
前記基板の第1面に形成された発光部と、
を備え、
前記発光部は、第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極の間に位置する有機層を備え、
前記第2電極は前記発光部の外側まで延在し、かつ前記第2電極のうち前記発光部の外側に位置する部分の少なくとも端部は酸化している発光装置である。
【0009】
第2の発明は、透光性の基板の上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の縁を覆い、発光部を画定する絶縁層を形成する工程と、
前記第1電極の上に有機層を形成する工程と、
前記有機層の上に第2電極を形成する工程と、
前記第2電極のうち前記発光部の外側に位置する部分の端部を酸化する工程と、
を備える発光装置の製造方法である。
【0010】
第3の発明は、空間を外部から仕切る透光性の仕切部材と、
前記仕切部材の前記空間側の面に配置された透光性の基板と、
前記基板に配置された発光部と、
を備え、
前記発光部は、第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極の間に位置する有機層を備え、
前記第2電極は前記発光部の外側まで延在し、かつ前記第2電極のうち前記発光部の外側に位置する部分の少なくとも端部は酸化している発光システムである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【
図4】
図2の点線αで囲んだ領域を拡大した図である。
【
図5】変形例1に係る発光装置の要部を説明するための断面図である。
【
図6】変形例2に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【
図7】変形例3に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【
図8】第2の実施形態に係る発光装置の平面図である。
【
図9】
図8から第2電極、有機層、及び絶縁層を取り除いた図である。
【
図13】第3の実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【
図15】実施例1に係る発光システムの構成を示す断面図である。
【
図16】実施例2に係る発光システムの構成を示す断面図である。
【
図17】実施例3に係る発光システムの構成を示す断面図である。
【
図19】実施例4に係る発光システムの構成を示す断面図である。
【
図20】実施例5に係る発光システムの構成を示す断面図である。
【
図21】実施例6に係る発光システムの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る発光装置10の構成を示す断面図である。
図2は、
図1の要部を拡大した図である。第1の実施形態に係る発光装置10は、基板100及び発光部140を備えている。基板100は透光性を有しており、発光部140は基板100の第1面100aに形成されている。発光部140は、第1電極110、有機層120、及び第2電極130を有している。有機層120は第1電極110と第2電極130の間に位置している。第2電極130は発光部140の外側まで延在している。そして、第2電極130のうち発光部140の外側に位置する部分の少なくとも端部は、酸化している。以下、詳細に説明する。
【0015】
発光装置10はボトムエミッション型の照明装置であり、基板100の第2面100bから光が放射される。基板100は、例えばガラス基板や樹脂基板などの可視光を透過する基板である。また、基板100は可撓性を有していてもよい。この場合、基板100が湾曲した状態で発光装置10を使用することができる。可撓性を有している場合、基板100の厚さは、例えば10μm以上1000μm以下である。基板100は、例えば矩形などの多角形である。基板100が樹脂基板である場合、基板100は、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、又はポリイミドを用いて形成されている。また、基板100が樹脂基板である場合、水分が基板100を透過することを抑制するために、基板100の少なくとも一面(好ましくは両面)に、SiNxやSiONなどの無機バリア膜が形成されている。なお、この無機バリア膜と基板100の間に、平坦化層(例えば有機層)が設けられていてもよい。
【0016】
基板100の第1面100aには、発光部140が、第1の方向に沿って繰り返し設けられている。発光部140は、第1電極110、有機層120、及び第2電極130をこの順に積層させた構成を有している。
【0017】
第1電極110は、光透過性を有する透明電極である。透明電極の材料は、金属を含む材料、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)等の金属酸化物である。第1電極110の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。第1電極110は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。なお、第1電極110は、カーボンナノチューブ、又はPEDOT/PSSなどの導電性有機材料であってもよい。
【0018】
有機層120は発光層を有している。有機層120は、例えば、正孔注入層、発光層、及び電子注入層をこの順に積層させた構成を有している。正孔注入層と発光層との間には正孔輸送層が形成されていてもよい。また、発光層と電子注入層との間には電子輸送層が形成されていてもよい。有機層120は蒸着法で形成されてもよい。また、有機層120のうち少なくとも一つの層、例えば第1電極110と接触する層は、インクジェット法、印刷法、又はスプレー法などの塗布法によって形成されてもよい。なお、この場合、有機層120の残りの層は、蒸着法によって形成されている。また、有機層120のすべての層が、塗布法を用いて形成されていてもよい。
【0019】
第2電極130は、可視光を透過しない材料、例えば、Al、Au、Ag、Pt、Mg、Sn、Zn、及びInからなる第1群の中から選択される金属、又はこの第1群から選択される金属の合金からなる金属層を含んでいる。この場合、第2電極130は遮光性を有している。第2電極130の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。ただし、第2電極130は、第1電極110の材料として例示した材料を用いて形成されていてもよい。第2電極130は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。
【0020】
また、第1電極110の縁は、絶縁層150によって覆われている。絶縁層150は例えばポリイミドなどの感光性の樹脂材料によって形成されており、第1電極110のうち発光部140となる部分を囲んでいる。言い換えると、発光部140は、絶縁層150によって画定されている。絶縁層150を設けることにより、第1電極110の縁において第1電極110と第2電極130が短絡することを抑制できる。絶縁層150は、例えば、絶縁層150となる樹脂材料を塗布した後、この樹脂材料を露光及び現像することにより、形成される。
【0021】
そして、第2電極130は発光部140の外側まで延在している。言い換えると、第2電極130の一部の下方には、第1電極110及び有機層120の積層構造が存在しない。本図に示す例において、第2電極130の端部は、絶縁層150の上に位置している。また、第2電極130の幅は第1電極110の幅よりも広くなっている。このため、第2電極130の端部は第1電極110と重なっていない。ただし、第2電極130の幅は第1電極110の幅よりも狭くてもよい。また、有機層120は、絶縁層150の側面及び上面を経由して、発光部140の外側まで延在している。
【0022】
また、発光部140の隣には、透光領域104が設けられている。透光領域104は可視光を透過する領域である。詳細には、発光装置10のうち第2電極130が形成されている領域は、遮光領域102となっている。そして透光領域104は、隣り合う遮光領域102の間(すなわち隣り合う発光部140の間)に設けられている。透光領域104は、第2電極130が設けられていない領域である。ただし、有機層120が透光性である場合は透光領域104に有機層120が設けられていてもよい。
【0023】
そして、第2電極130のうち発光部140の外側に位置する部分の端部、例えば第2電極130のうち絶縁層150の上に位置する部分の端部は、酸化部136となっている。酸化部136は第2電極130が酸化した部分である。例えば第2電極130がアルミニウム又はアルミニウム合金によって形成されている場合、酸化部136は酸化アルミニウムを含んでいる。そして、酸化部136における可視光の透過率は、第2電極130の他の部分における可視光の透過率よりも高い。
【0024】
図3は、発光装置10の平面図である。なお、
図1は
図3のA-A断面に対応している。本図に示す例において、遮光領域102、発光部140、及び透光領域104は、直線状(
図3におけるy方向)に延在している。そして、発光部140が延在する方向に直交する方向(
図3におけるx方向)に、遮光領域102及び透光領域104は交互に繰り返し設けられている。
【0025】
なお、隣り合う発光部140の間の領域には、いずれも透光領域104が設けられているのが好ましい。ただし、いずれかの発光部140の間の領域において、透光領域104は設けられていなくてもよい。
【0026】
図4は、
図2の点線αで囲んだ領域を拡大した図である。本図に示すように、絶縁層150の側面はなだらかに傾斜しており、有機層120もこの斜面に沿って形成されている。そして、絶縁層150の上面には、第2電極130及び酸化部136が位置している。酸化部136(すなわち第2電極130の端部)は第2電極130の他の部分よりも薄く、また、端に近づくにつれて徐々に薄くなっている。
【0027】
なお、第2電極130の厚さ方向において、酸化部136の下方に酸化されていない第2電極130が残っていてもよい。例えば、
図4に示す例において、酸化部136のうち第2電極130の中央側の端部は、厚さ方向において第2電極130の表層にのみ位置している。
【0028】
次に、発光装置10の製造方法について説明する。まず、基板100に第1電極110を、例えばスパッタリング法を用いて形成する。次いで、第1電極110を例えばフォトリソグラフィー法を利用して所定のパターンにする。次いで、第1電極110の縁の上に絶縁層150を形成する。例えば絶縁層150が感光性の樹脂で形成されている場合、絶縁層150は、露光及び現像工程を経ることにより、所定のパターンに形成される。次いで、有機層120を形成する。有機層120の各層は、蒸着法を用いて形成されてもよいし、塗布法を用いて形成されてもよい。
【0029】
次いで、有機層120の上に第2電極130を形成する。第2電極130は、例えばマスクを用いた蒸着法を用いて形成される。この際、基板100とマスクの隙間より蒸着材料が回り込み、第2電極130の端部が第2電極130の外側に向けて広がり、第2電極130が設計値よりも広くなることがある。そして、第2電極130の端部は第2電極130の他の部分と比べて薄くなる。
【0030】
次いで、第2電極130のうち発光部140の外側に位置する部分の端部を酸化させる。これにより、酸化部136が形成される。この酸化処理は、例えば、酸素を含む雰囲気などの酸化雰囲気化で第2電極130の端部にレーザを照射することにより、行われる。
【0031】
その後、封止部材(図示せず)を用いて発光部140を封止する。
【0032】
以上、第1の実施形態によれば、第2電極130の端部は酸化されて酸化部136になっている。酸化部136は第2電極130と比較して可視光の透過率は高い。このため、第2電極130の端部が第2電極130の外側に向けて広がり、第2電極130が設計値よりも広くなっても、透光領域104が狭くなることを抑制できる。
【0033】
(変形例1)
図5は、変形例1に係る発光装置10の要部を説明するための断面図であり、第1の実施形態における
図4に対応している。本変形例に係る発光装置10は、酸化部136が第2電極130の表面の全体にわたって形成されている点を除いて、第1の実施形態に係る発光装置10と同様の構成である。
【0034】
詳細には、酸化部136は、第2電極130の表層を酸化雰囲気で処理することにより、形成されている。この際、第2電極130のうち表面から一定の深さまでの領域は酸化される。ここで、第2電極130の端部は、第2電極130の他の領域と比較して薄い。このため、厚さ方向で見た場合、第2電極130の端部の全体は、酸化部136となる。一方、第2電極130の他の部分は表層のみが酸化部136となり、少なくとも下層は金属層のままである。このため、第2電極130は高抵抗化しない。又、酸化部136の酸化を一括処理できるため工程の簡易化に寄与することができる。
【0035】
なお、上記した酸化雰囲気は、例えばO2、N2O、H2O2、及びO3の少なくとも一つを含んでいる。
【0036】
本変形例によっても、第2電極130の端部は酸化されて酸化部136になっている。このため、第1の実施形態と同様に、第2電極130の端部が第2電極130の外側に向けて広がり、第2電極130が設計値よりも広くなっても、透光領域104が狭くなることを抑制できる。
【0037】
また、第2電極130を酸化雰囲気中で処理する代わりに、第2電極130の全面にレーザを照射しても、
図5に示した構造が得られる。またこの場合、実施形態と比較してレーザの照射位置を厳密に制御する必要がなくなるため、発光装置10の製造工程を簡略化できる。
【0038】
(変形例2)
図6は、変形例2に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、第1の実施形態における
図1に対応している。本変形例に係る発光装置10は、透光領域104にも有機層120が形成されている点を除いて、第1の実施形態又は変形例1に係る発光装置10と同様の構成である。
【0039】
本変形例においても、第2電極130の端部は酸化されて酸化部136になっている。このため、第1の実施形態と同様に、透光領域104が狭くなることを抑制できる。また、透光領域104にも有機層120が形成されているため、複数の遮光領域102及び複数の透光領域104に有機層120を連続して形成することができる。このため、有機層120をパターンにする必要がなくなり、発光装置10の製造コストを低くすることができる。
【0040】
(変形例3)
図7は、変形例3に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、第1の実施形態における
図1に対応している。本変形例に係る発光装置10は、導電部170を備える点を除いて、第1の実施形態又は変形例1,2に係る発光装置10と同様の構成である。
【0041】
導電部170は例えば第1電極110の補助電極であり、第1電極110に接触している。本図に示す例では、導電部170は第1電極110の上に形成されている。導電部170は第1電極110よりも抵抗値が低い材料によって形成されており、例えば少なくとも一つの金属層を用いて形成されている。導電部170は、例えばMo又はMo合金などの第1金属層、Al又はAl合金などの第2金属層、及びMo又はMo合金などの第3金属層をこの順に積層させた構成を有している。これら3つの金属層のうち第2金属層が最も厚い。そして導電部170は、絶縁層150によって覆われている。このため、導電部170は有機層120及び第2電極130のいずれにも直接接続していない。
【0042】
本変形例に係る発光装置10の製造方法は、第1電極110を形成した後かつ絶縁層150を形成する前に、導電部170を形成する点を除いて、第1の実施形態に係る発光装置10と同様の構成である。導電部170は、例えば導電部170となる膜をスパッタリング法や蒸着法で形成した後、この膜をリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、形成される。ただし、導電部170は、マスクを用いたスパッタリング法を用いて形成されてもよい。
【0043】
本変形例によっても、第2電極130の端部は酸化されて酸化部136になっている。このため、第1の実施形態と同様に、透光領域104が狭くなることを抑制できる。また、導電部170が形成されているため、第1電極110の見かけ上の抵抗を低くすることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る発光装置10の平面図である。
図9は、
図8から第2電極130、有機層120、及び絶縁層150を取り除いた図である。
図10は
図8のB-B断面図であり、
図11は
図8のC-C断面図であり、
図12は
図8のD-D断面図である。
【0045】
本実施形態に係る発光装置10はディスプレイであり、基板100、複数の第1電極110、発光部140、絶縁層150、複数の開口152、複数の開口154、複数の引出配線114、有機層120、複数の第2電極130、及び複数の引出配線134を有している。
【0046】
第1電極110は、第1方向(
図9におけるY方向)にライン状に延在している。そして第1電極110の端部は、引出配線114に接続している。
【0047】
引出配線114は、第1電極110を第1端子112に接続する配線である。本図に示す例では、引出配線114の一端側は第1電極110に接続しており、引出配線114の他端側は第1端子112となっている。本図に示す例において、第1電極110及び引出配線114は一体になっている。そして引出配線114の上には、導電部170が形成されている。導電部170の構成は、変形例3と同様である。なお、引出配線114の一部は絶縁層150によって覆われている。
【0048】
絶縁層150は、
図8、及び
図10~
図12に示すように、複数の第1電極110上及びその間の領域に形成されている。絶縁層150には、複数の開口152及び複数の開口154が形成されている。複数の第2電極130は、第1電極110と交差する方向(例えば直交する方向:
図8におけるX方向)に互いに平行に延在している。開口152は、平面視で第1電極110と第2電極130の交点に位置している。具体的には、複数の開口152は、第1電極110が延在する方向(
図8におけるY方向)に並んでいる。また、複数の開口152は、第2電極130の延在方向(
図8におけるX方向)にも並んでいる。このため、複数の開口152はマトリクスを構成するように配置されていることになる。
【0049】
開口154は、平面視で複数の第2電極130のそれぞれの一端側と重なる領域に位置している。また開口154は、開口152が構成するマトリクスの一辺に沿って配置されている。そしてこの一辺に沿う方向(例えば
図8におけるY方向、すなわち第1電極110に沿う方向)で見た場合、開口154は、所定の間隔で配置されている。開口154からは、引出配線134の一部分が露出している。そして、引出配線134は、開口154を介して第2電極130に接続している。
【0050】
引出配線134は、第2電極130を第2端子132に接続する配線であり、第1電極110と同一の材料からなる層を有している。引出配線134の一端側は開口154の下に位置しており、引出配線134の他端側は、絶縁層150の外部に引き出されている。そして本図に示す例では、引出配線134の他端側が第2端子132となっている。そして引出配線134の上には、導電部170が形成されている。導電部170の構成は、変形例3と同様である。なお、引出配線134の一部は絶縁層150によって覆われている。
【0051】
開口152と重なる領域には、有機層120が形成されている。有機層120の正孔注入層は第1電極110に接しており、有機層120の電子注入層は第2電極130に接している。このため、発光部140は、開口152と重なる領域それぞれに位置していることになる。
【0052】
第2電極130の縁は酸化されており、酸化部136となっている。酸化部136の詳細は、実施形態に示した通りである。そして、実施形態と同様に、隣り合う第2電極130の間が透光領域104となっており、かつ第2電極130と重なる領域が遮光領域102となっている。
【0053】
本実施形態に係る発光装置10の製造方法は、変形例3に係る発光装置10の製造方法と同様である。
【0054】
本実施形態によっても、第2電極130の端部は酸化されて酸化部136になっている。このため、第1の実施形態と同様に、透光領域104が狭くなることを抑制できる。
【0055】
(第3の実施形態)
図13は、第3の実施形態に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、第1の実施形態における
図1に対応している。本実施形態に係る発光装置10は、光散乱層180を有している点を除いて、上述した各実施形態及び各変形例のいずれかと同様の構成を有している。本図は、変形例3と同様の場合を示している。
【0056】
光散乱層180は、基板100の第2面100bに設けられている。光散乱層180は、第2電極130の少なくとも端部(酸化部136)と重なっている。本図に示す例において、第2電極130の全体と重なっている。光散乱層180の端部は、第2電極130のうち絶縁層150の上に位置する部分と重なっている。すなわち、光散乱層180の大部分は透光領域104と重なっていない。なお、光散乱層180のすべてが透光領域104と重なっていなくてもよい。本図に示す例では、光散乱層180は発光部140にも重なっている。ただし、光散乱層180は発光部140と重なっていなくてもよい。
【0057】
なお、
図14に示すように、光散乱層180の端部は、透光領域104のうち遮光領域102に近い部分に位置していてもよい。この場合、光散乱層180の端部から第2電極130の端までの距離wは、例えば透光領域104の10%以下であるのが好ましい。
【0058】
光散乱層180は、有機材料又は無機材料からなるバインダー(ベース材)に複数の粒子を混ぜたものである。ただし、光散乱層180の構成はこれに限定されない。
【0059】
光散乱層180のバインダー(ベース材)は、例えばイミド系、アクリル系、エーテル系、シラン系、又はシロキサン系の有機材料であってもよいし、ガラスペースト、ガラスフリット、又はSiO2ゾルなどの無機材料であってもよい。光散乱層180のバインダーの屈折率は、例えば1.2以上2.2以下、好ましくは1.6以上1.9以下である。
【0060】
光散乱層180の粒子は、例えば無機材料からなる。粒子を構成する材料は、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウム、又は酸化シリコンなどの酸化物である。粒子の粒径、例えば球相当径(直径)の平均値は、例えば100nm以上5μm以下であるが、この範囲に限定されない。粒子は、透光性又は光反射性の一方を有している。粒子が透光性を有している場合、粒子の屈折率は後述する接着層200のバインダーの屈折率と異なる。
【0061】
光散乱層180の全体に対する粒子の体積比率は、例えば20%以上50%以下である。この体積比率は、例えば基板100の厚さ方向の断面において、光散乱層180に対する粒子の面積占有率で定義することができる。そして、粒子の材料及びこの体積比率(すなわち光散乱層180の粒子の含有率)を調整することにより、光散乱層180の屈折率を調整することができる。
【0062】
本実施形態によっても、第2電極130の端部は酸化されて酸化部136になっている。このため、第1の実施形態と同様に、透光領域104が狭くなることを抑制できる。また、光散乱層180は第2電極130の酸化部136と重なっている。従って、第2電極130の酸化部136を目立ちにくくすることができる。また、光散乱層180は発光部140と重なっている場合、発光装置10の光取出効率は向上する。
【0063】
(実施例1)
図15は、実施例1に係る発光システムの構成を示す断面図である。この発光システムは、発光装置10及び仕切部材20を有している。仕切部材20は透光性を有しており、空間を外部から仕切っている。この空間は、例えば人が滞在する空間、又は商品等のものが配置されている空間である。発光装置10は、上記した実施形態及び変形例のいずれかと同様の構成を有している。本図に示す例において、基板100のうち発光部140が設けられている側の面(第1面100a)は、人が滞在する空間を向いている。
【0064】
仕切部材20は、例えば人が移動するための移動体30の窓、又はショーケースの窓であり、ガラス又は透光性の樹脂を用いて形成されている。移動体30は、例えば自動車、列車、又は飛行機である。移動体30が自動車の場合、仕切部材20はフロントガラス、リアガラス、又は座席の横に取り付けられた窓ガラス(例えばドアガラス)である。仕切部材20がリアガラスの場合、複数の発光部140は例えばブレーキランプとして機能する。また、仕切部材20がフロントガラス又はリアガラスの場合、複数の発光部140はターンランプであってもよい。また、仕切部材20は、会議室などの部屋の内部と外部を仕切る窓であってもよい。発光部140の点灯/非点灯により、会議室を利用しているか否かを識別できる発光システムでも良い。
【0065】
そして、発光装置10の第2面100b、すなわち光取出側の面は、接着層200を介して仕切部材20の内面(第1面22)に固定されている。このため、発光装置10の発光部140から放射された光は、仕切部材20を介して上記した空間(例えば移動体30)の外部に放射される。一方、発光装置10は光透過性を有している。このため、人は、仕切部材20を介して空間の外部や内部を視認することができる。例えば移動体30の内側に位置する人は、仕切部材20を介して移動体30の外部を視認することができる。なお、基板100の第2面100bの全面が接着層200を介して仕切部材20の第1面22に固定されていてもよいし、第2面100bの一部(例えば互いに対向する2辺)が仕切部材20の第1面22に固定されていてもよい。
【0066】
接着層200は発光装置10を仕切部材20に固定している。このような機能を果たす材料であれば、接着層200の材料はとくに限定はされない。また、例えば仕切部材20と基板100がともにガラスで形成された場合など、仕切部材20の屈折率と発光装置10の基板100の屈折率がほぼ同じ場合は、接着層200には、両者と同じか近い屈折率を有する材料を用いる。また、仕切部材20と基板100とで屈折率とが異なる(例えば、仕切部材20がプラスチックで形成され、基板100がガラスで形成される)場合は、接着層200の屈折率は仕切部材20の屈折率と基板100の屈折率の間の数値が好ましい。このようにすると、発光装置10の発光を、仕切部材20を介して外部へ効率よく光取り出しができる。また、発光装置10と仕切部材20とは隙間なく接着されるのが好ましい。隙間があると発光装置10からの発光が仕切部材20で反射され、その反射光が発光装置10の透光領域104を介して内部に伝わるからである。
【0067】
発光装置10は、実施形態及び各変形例のいずれかに示した構成を有している。従って、発光装置10の透光領域104が狭くなることを抑制できる。また、第2電極130の酸化部136の可視光の透過率が90%以下の場合、発光部140の光の一部が散乱又は反射した場合でも、散乱光や反射光が基板100とは逆側(例えば移動体30の内側)に放射されることを抑制できる。
【0068】
(実施例2)
図16は、実施例2に係る発光システムの構成を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、発光装置10が仕切部材20のうち移動体30の外側の面(第2面24)に取り付けられている点を除いて、実施例1に係る発光システムと同様の構成である。
【0069】
本実施例に係る発光装置10は、上記した実施形態及び各変形例のいずれかと同じ構成を有している。ただし、発光装置10は、仕切部材20とは逆側の面が光取出面となっている。このようにするためには、発光装置10の第1面100a側の面を仕切部材20に対向させればよい。
【0070】
本実施例によっても、実施例1と同様に、発光装置10の透光領域104が狭くなることを抑制できる。
【0071】
また、発光装置10からの光は仕切部材20を介さずに直接移動体30の外部に放射される。このため、実施例1と比較して、移動体30の外部にいる人は発光装置10からの光を認識しやすい。また、移動体30の外部すなわち仕切部材20の第2面24側に発光装置10を取り付けているので、発光装置10の発光が仕切部材20で反射して移動体30の内部へ入ることを抑制できる。
【0072】
(実施例3)
図17は、実施例3に係る発光システムの構成を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、固定部材210を用いて発光装置10を仕切部材20に固定している点を除いて、実施例1に係る発光システムと同様の構成である。
【0073】
固定部材210は枠状の部材であり、下面が接着層200を用いて仕切部材20に固定されている。固定部材210の上部は固定部材210の内側に向けて折れ曲がっており、この折れ曲がっている部分で発光装置10の縁を押さえている。ただし、固定部材210の形状は本図に示す例に限定されない。
【0074】
本実施例によっても、実施例1と同様に、発光装置10の透光領域104が狭くなることを抑制できる。
【0075】
また、
図18に示すように、移動体30の外側に向けて凸になる方向に仕切部材20が湾曲している場合がある。このような場合において、平板上の発光装置10を仕切部材20の内面(第1面22)に直接固定することは難しい。しかし、固定部材210を用いると、このような場合でも発光装置10を仕切部材20の第1面22に固定することができる。
【0076】
このような方法で湾曲する仕切部材20と平板上の発光装置10とを固定した場合、仕切部材20と発光装置10との間の隙間に充填剤を充填してもよい。前述の通り、隙間があると発光装置10からの発光が仕切部材20で反射され、その反射光が発光装置10の透光領域104を介して内部に伝わるからである。仕切部材20の屈折率と発光装置10の基板100の屈折率とが互いにほぼ同じ場合(例えば両者ともにガラスで形成されている場合)は、充填部材の屈折率は、これらの屈折率と同じか近い値であることが好ましい。また、仕切部材20と基板100とで屈折率とが異なる(例えば、仕切部材20がプラスチックで形成され、基板100がガラスで形成される)場合は、充填剤の屈折率は仕切部材20の屈折率と発光装置10の基板100の屈折率の間の数値が好ましい。
【0077】
(実施例4)
図19は、実施例4に係る発光システムの構成を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、発光部140が仕切部材20の第1面22又は第2面24に形成されている点を除いて、実施例1に係る発光システムと同様の構成である。言い換えると、本実施例において、仕切部材20は実施例1における基板100を兼ねている。
【0078】
なお、本実施例において、仕切部材20のうち発光部140が形成される面に凹部を形成し、この凹部内に発光部140を形成してもよい。例えば、複数の発光部140が形成される領域に一つの凹部を形成し、この凹部の底面に複数の発光部140を形成してもよいし、複数の発光部140のそれぞれに個別に凹部を形成してもよい。この場合、発光部140の封止は透過性の高い構成、例えば膜封止などによって、複数の凹部を一度に封止する構成であってもよい。凹部が発光部140に対して個別、または複数のいずれの場合においても、仕切部材20から発光部140が突出することを抑制できる。なお、仕切部材20の凹部に発光部140を形成する場合において、発光部140の上部は仕切部材20の第1面22(又は第2面24)から突出していてもよいし、発光部140の全体が第1面22(又は第2面24)の下方に位置していてもよい。
【0079】
本実施例によっても、実施例1と同様に、発光装置10の透光領域104が狭くなることを抑制できる。
【0080】
(実施例5)
図20は、実施例5に係る発光システムの構成を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、仕切部材20に複数の発光装置10が取り付けられている点を除いて、上記した実施形態及び各変形例並びに実施例1~4のいずれかと同様の構成である。複数の発光装置10は、互いに同一の制御信号に従って発光及び消灯が制御されていてもよいし、互いに異なる制御信号に従って発光及び消灯が制御されていてもよい。
【0081】
本実施例によっても、発光装置10の透光領域104が狭くなることを抑制できる。
【0082】
(実施例6)
図21は、実施例6に係る発光システムの構成を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、仕切部材20の構成及び発光装置10の位置を除いて、実施例1に係る発光システムと同様の構成である。
【0083】
本実施例において、仕切部材20は、複数枚の透光部材21(例えばガラス板や樹脂板)を重ねた構成を有している。そして、発光装置10は、隣り合う透光部材21の間に挟まれることにより、仕切部材20に取り付けられている。
【0084】
本実施例によっても、発光装置10の透光領域104が狭くなることを抑制できる。
【0085】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0086】
この出願は、2015年2月25日に出願された日本出願特願2015-035822号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。