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特開2023-60271植物のストレス耐性、成長および収量を改善する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060271
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】植物のストレス耐性、成長および収量を改善する方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/36 20060101AFI20230420BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20230420BHJP
   A01N 37/42 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
A01N37/36
A01P21/00
A01N37/42
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023035367
(22)【出願日】2023-03-08
(62)【分割の表示】P 2020516721の分割
【原出願日】2018-09-19
(31)【優先権主張番号】62/561,292
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/591,379
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509319074
【氏名又は名称】バレント・バイオサイエンシーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Valent BioSciences LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】シュリラマ・クリシュナ・レディ
(72)【発明者】
【氏名】キンバリー・アン・ファルコ
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン・ポール・シルバーマン
(72)【発明者】
【氏名】マーシー・アン・サーピン
(72)【発明者】
【氏名】デイル・オー・ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】デレク・ディ・ウーラード
(57)【要約】
【課題】植物の干ばつストレス耐性を改善すること。
【解決手段】本発明は、有効量のアブシジン酸とリンゴ酸の混合物を植物に適用することによる、植物の干ばつストレス耐性を改善する方法に関する。本発明は、さらに、有効量のアブシジン酸とリンゴ酸の混合物を植物に適用することによる、植物の成長方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の(S)-アブシジン酸とリンゴ酸を植物に適用することを含む、植物のストレス耐性を改善する方法であって、ABA対リンゴ酸の重量比が、約3.3:1~約1:33.3である方法。
【請求項2】
ABA対リンゴ酸の重量比が、約3.3:1~約1:10である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ストレスが、非生物的ストレスである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ストレスが、干ばつストレスである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
適用をストレス前に行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
適用をストレス中に行う、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
植物が、単子葉植物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
植物が、イネ科植物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
イネ科植物が、トウモロコシ、イネ、またはコムギである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
植物が、双子葉植物である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
植物が、キュウリまたはレタスである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
有効量の(S)-アブシジン酸とリンゴ酸を植物に適用することを含む、植物の成長を改善する方法であって、ABA対リンゴ酸の重量比が、約3.3:1~約1:33.3である方法。
【請求項13】
ABA対リンゴ酸の重量比が、約3.3:1~約1:10である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ABA対リンゴ酸の重量比が、約1:30である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
植物が、非生物的ストレスにさらされる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
ストレスが、干ばつストレスである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
植物の穀粒重量が、改善される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
植物が、コムギである、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
植物が、イネである、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効量の(S)-アブシジン酸とリンゴ酸の混合物を植物に適用することによる、植物のストレス耐性を改善する方法に関する。本発明は、さらに、有効量の(S)-アブシジン酸とリンゴ酸の混合物を植物に適用することによる、植物の成長を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
栽培者は、収穫量を最大化するために、可能な限り最も生産性の高い作物の栽培を継続的に試みる。植物成長調整剤は、水および温度の制限に基づく植物の成長に影響を与えるために栽培者が使用することができる最良のツールの1つである。さまざまな条件下での植物に対する植物成長調整剤の影響は、大きく異なる。さらに、植物に複数の植物成長調節剤を同時に適用する効果を予測することは困難である。
【0003】
(S)-アブシジン酸(ABA)は、成長と発達に多くの役割を持つ内因性の植物成長調節剤である。たとえば、ABAは、種子の発芽を刺激するジベレリンに拮抗することにより、種子の発芽を阻害する。ABAは、ストレス条件下でストレス耐性を促進し、成長を維持する(Sharp RE et al. J Exp Bot、2004 55:2343-2351を参照)。興味深いことに、いくつかの研究により、十分に水分を与えられた植物において「正常な」ABAレベルを維持することが、トマト(Sharp RE et al.、J Exp Bot、2000 51:1575-1584)およびシロイヌナズナ(LeNoble ME et al. J Exp Bot、2004 55:237-245)のシュート成長を維持するために必要であることが示されている。さらに、ABAは、種子および木本植物の休眠と発達の維持に関与しており、ABAが不足すると、休眠誘導の欠如により収穫前の種子の発芽を示すことがよくある。
【0004】
さらに、ABAの適用は、低温および干ばつからの保護を提供し、種なしの食用ブドウの赤色を増強することも示されている。有効な市販のABA製剤の例として、ProTone(商標)およびContego(商標)(Valent BioSciences LLCから入手可能)が挙げられる。
【0005】
リンゴ酸は、クエン酸(TCA)回路および葉緑体のC4炭素固定プロセスの中間化合物である。さらに、リンゴ酸は、植物の葉の気孔孔辺細胞によって合成され、気孔の制御において重要な役割を果たすことが示されている。しかしながら、リンゴ酸が気孔の開閉を促進するかどうかは、各仮説を支持する証拠があるため不明である(Araujo WL et al.、Control of stomatal aperture、Plant Signal Behav. 2011 Sep、6(9)、1305-1311)。
【0006】
外因性リンゴ酸は、植物の成長を促進する可能性がある(Talebi et al.、Adv in Agri、2014、147: 278)。リンゴ酸の適用により、カドミウムストレス下での光合成が増加した(Guo et al.、Ecotoxicology and Environmental Safety、141 (2017)、119-128)。したがって、リンゴ酸は、植物において成長と蒸散に影響を及ぼす;外因性リンゴ酸が水不足ストレス条件下で、特に既知のストレス耐性化合物であるABAと組み合わせて、植物の成長にどのように影響するかは不明である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、非生物的ストレス下で植物の成長を改善する新規な方法が当該技術分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概略
1つの態様では、本発明は、有効量の(S)-アブシジン酸(ABA)およびリンゴ酸を植物に適用することを含む、植物のストレス耐性を改善する方法であって、ABA対リンゴ酸の重量比が、約3.3:1~約1:30である方法に関する。
【0009】
もう1つの態様では、本発明は、有効量の(S)-アブシジン酸(ABA)およびリンゴ酸を植物に適用することを含む、植物の成長を改善する方法であって、ABA対リンゴ酸の重量比が、約3.3:1~約1:30である方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な記載
出願人は、(S)-アブシジン酸(ABA)とリンゴ酸の混合物が、予想外にストレス条件下での干ばつストレス耐性および植物成長を改善することを、予想外に見出した。さらに、出願人は、水分貯蔵の予想外の増加によって実証されるように、ABAとリンゴ酸の混合物が、予想外に水の使用効率を改善することを見出した。出願人は、ABAとリンゴ酸の混合物が、光合成速度と乾燥重量の予想外の増加によって示されるように、炭素固定を予想外に増加させることも見出した。
【0011】
1つの実施態様では、本発明は、有効量のABAとリンゴ酸を植物に適用することを含む、植物の成長を改善する方法であって、ABA対リンゴ酸の重量比が、約3.3:1~約1:30である方法に関する。
【0012】
もう1つの好ましい実施態様では、植物成長が改善される植物は、非生物的ストレスにさらされる。
【0013】
もう1つの実施態様では、本発明は、有効量のABAとリンゴ酸を植物に適用することを含む、植物のストレス耐性を改善する方法であって、ABA対リンゴ酸の重量比が、約3.3:1~約1:30である方法に関する。
【0014】
好ましい実施態様では、改善されるストレス耐性は、非生物的ストレスである。
【0015】
好ましい実施態様では、ABAとリンゴ酸は、約10:1~約1:33.3、約10:1~約1:30:1、約3.3:1~約1:30、約3.3:1~約1:10、約3.3:1~約1:3.3、約3:1~約1:3、約1:3~約1:33.3、約1:3~約1:30、約1:3~約1:10、約3.3:1~約3:1あるいは約3.3:1、3:1、1:1、1:3、1:3.3、1:10、1:30または1:33.3の重量比で適用される。
【0016】
1つの実施態様では、植物は、単子葉植物または双子葉植物である。好ましい実施態様では、単子葉植物は、イネ科植物、より好ましくは、トウモロコシまたはコムギである。もう1つの好ましい実施態様では、双子葉植物は、草本または木本の双子葉植物、より好ましくは、キュウリまたはレタスである。
【0017】
もう1つの実施態様では、植物は、干ばつストレスにさらされる。本明細書で使用する「干ばつストレス」は、水の利用可能性が、最適な成長と発達をサポートするのに十分なである条件と比べて、植物成長が著しく遅い散水条件を意味する。
【0018】
好ましい実施態様では、ABAとリンゴ酸は、非生物的ストレスの出現前または出現中に適用される。意図したストレスが干ばつである場合、ABAとリンゴ酸の適用は、干ばつストレスの前または最中に行う。干ばつの前の適用は、土壌水分の貯蔵を可能にする。水ストレスによる収量損失が、より高い場合、土壌水分を保つことにより、植物は、重要な成長段階中に生存と成長を延長することができる。
【0019】
もう1つの好ましい実施態様では、約1~1,000 ppm、より好ましくは、約30~1,000 ppmまたは30~300 ppmのABAが、植物に適用される。
【0020】
もう1つの好ましい実施態様では、約1~1,000 ppm、より好ましくは、約30~1,000 ppmまたは30~300 ppmのリンゴ酸が植物に適用される。
【0021】
もう1つの好ましい実施態様では、ABAは、約1~約1,000リットル/ヘクタール(L/Ha)、より好ましくは、約10~約500 L/Haおよび最も好ましくは、約100~約200 L/Haの比率で植物に適用される。
【0022】
もう1つの好ましい実施態様では、リンゴ酸は、約1~約1,000 L/Ha、より好ましくは、約10~約500 L/Haおよび最も好ましくは、約100~約200 L/Haの比率で植物に適用される。
【0023】
ABAとリンゴ酸の混合物は、任意の便利な手段で適用することができる。当業者は、噴霧、散布(dusting)、および顆粒適用などの葉面散布;噴霧、畝内処理、または側方施肥などの土壌施用などの適用形態に精通している。
【0024】
もう1つの好ましい実施態様では、本発明は、ABAとリンゴ酸を含む組成物であって、ABA対リンゴ酸の重量比が、約10:1~約1:33.3、約10:1~約1:30:1、約3.3:1~約1:30、約3.3:1~約1:10、約3.3:1~約1:3.3、約3:1~約1:3、約1:3~約1:33.3、約1:3~約1:30、約1:3~約1:10、約3.3:1~約3:1あるいは約3.3:1、3:1、1:1、1:3、1:3.3、1:10、1:30または1:33.3である組成物に関する。
【0025】
本発明で利用される水性噴霧溶液は、一般に、約0.01 %~約0.5 % (v/v)の非イオン性界面活性剤を含む。
【0026】
界面活性剤は、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含む。一般に、非イオン性界面活性剤は、当該技術分野において任意の既知の非イオン性界面活性剤でありうる。適切な非イオン性界面活性剤は、一般に、オリゴマーおよびポリマーである。適切なポリマーとして、EO-PO-EOおよびPO-EO-POブロックコポリマーの両方といったようなエチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコーポリマー(EO/POブロックコポリマー)などのアルキレンオキシドランダムおよびブロックコポリマー;エチレンオキシド-ブチレンオキシドランダムおよびブロックコポリマー、エチレンオキシド-プロピレンオキシドランダムおよびブロックコポリマーのC2-6アルキルアダクト、エチレンオキシド-ブチレンオキシドランダムおよびブロックコポリマーのC2-6アルキルアダクト、メチルエーテル,エチルエーテル,プロピルエーテル,ブチルエーテルまたはそれらの混合物などのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンモノアルキルエーテル;酢酸ビニル/ビニルピロリドンコポリマー;アルキル化ビニルピロリドンコポリマー;ポリビニルピロリドン;およびポリプロピレングリコールおよびポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール;が挙げられる。他の非イオン性界面活性剤は、レシチン;およびシリコーン界面活性剤(シロキサン鎖を含む骨格を有する水溶性または分散性界面活性剤、たとえば、SilwetL77(登録商標))である。鉱油中の適切な混合物は、ATPLUS(登録商標)411である。
【0027】
本明細書で使用される「有効量」は、成長、干ばつストレス耐性、および/または収量を改善するABAおよび/またはリンゴ酸の量を意味する。「有効量」は、ABAとリンゴ酸の濃度、処理される植物の種または品種、ストレスの重症度、望ましい結果、および植物のライフステージなどによって異なる。したがって、正確な「有効量」を特定することができるとは限らない。しかしながら、個々の場合の適切な「有効量」は、当業者によって決定されうる。
【0028】
本明細書で使用される「改善する」は、植物が本発明の方法で処理されなかった場合に植物が有していたであろう資質よりも高い資質を有することを意味する。
【0029】
量、重量パーセントなどに関連して本明細書で使用されるすべての数値は、それぞれ「約」または「およそ」、すなわち、特定の値プラスまたはマイナス10 %(±10 %)として定義される。たとえば、語句「少なくとも5重量%」は、「少なくとも4.5~5.5重量%」と理解されるべきである。したがって、請求の範囲に記載された値の10%以内の量は、請求の範囲に包含される。
【0030】
冠詞「a」、「an」および「the」は、文脈上特に明記されていない限り、複数形ならびに単数形を包含することを意図する。
【0031】
開示された実施態様は、本明細書に開示された発明概念の単なる例示的な実施態様であり、特許請求の範囲が明示的に別段の記載をしない限り、限定と見なされるべきではない。
【0032】
下記の実施例は、本発明を例示し、本発明の製剤の使用方法を当業者に教示することを意図する。それらは決して制限することを意図していない。
実施例
【実施例0033】
干ばつストレス下のキュウリにおけるストレス耐性の増加
10セットのキュウリ(n=5)をそれぞれ、植え付け後第10日(10 DAP)に、30または100 ppmのABA、30または100 ppmのリンゴ酸またはそれらの混合物で処理した。5セットについては、10 DAPから開始して水を差し控え、他のセットでは、完全に灌がいした。緑葉面積を、正規化差植生指数(NDVI)を使用して緑葉面積を測定するハンドヘルドGreenseeker(登録商標)作物センサーを使用して測定した。10 DAPから開始し、処理後第4日(4 DAT)に終了するまで毎日、緑葉面積を測定し、記録した。これらの測定結果は、下記の表1で見ることができる。
【0034】
混合物が予想外の結果を提供したかどうかを判定するために、観察された併用効果(OCE)を、予想併用効果(ECE)で割り、OCE/ECE比を求めた;ここで、予想されたECEは、アボット法で計算される:
ECE = A + B - (AB/100)
ここで、ECEは予想された併用効果であり、AおよびBは単一の有効成分によって提供される効果である。混合物のOCEと混合物のECEの比率が1より大きい場合、混合物には、予想以上の相互作用が存在する(Gisi、The American Phytopathological Society、86:11、1273-1279,1996)。
【0035】
表1
【表1】
「STC」は、界面活性剤で処理されたコントロールを示す。
【0036】
表1に見られるように、ABAは、緑葉面積を増加させたが、リンゴ酸は、緑葉面積を減少させた。ABAとリンゴ酸を3.3:1の比率で混合すると、緑葉面積が予想外に増加したことがわかった。
【実施例0037】
干ばつストレス下のキュウリにおけるストレス耐性の増加
11セットのキュウリ(n=8)をそれぞれ、10 DAPの日に、30または100 ppmのABA、30または100 ppmのリンゴ酸またはそれらの混合物で処理した。10 DAPから開始して水を差し控えた。10 DAPから開始し、処理後第4日(4 DAT)に終了するまで毎日、緑葉面積を測定し、記録した。これらの測定結果は、下記の表2で見ることができる。
【0038】
表2
【表2】
「STC」は、界面活性剤で処理されたコントロールを示す。
【0039】
表2に見られるように、ABAとリンゴ酸は、それぞれ濃度に応じて緑葉面積を増減させた。予想外に、ABAとリンゴ酸を1:1、1:3.3、3.3:1の比率で混合すると、植物が水不足ストレスにさらされたときに緑葉面積が予想以上に増加した。
【実施例0040】
干ばつストレス下のキュウリ植物における乾燥重量の増加
6セットのキュウリ植物(n=5)をそれぞれ、10 DAPに、100 ppmのABA、30、100もしくは300 ppmのリンゴ酸またはそれらの混合物で処理した。10 DAP~4 DATまで水を差し控えた。4 DATに水を適用した。5 DATから7 DATまで水を差し控えた。植物を収穫し、乾燥重量を7 DATで測定し、記録した。この実験を、8 DATの収穫で繰り返した。これらの測定結果は、それぞれ下記の表3および4で見ることができる。
【0041】
表3
【表3】
「STC」は、界面活性剤で処理されたコントロールを示す。
【0042】
表4
【表4】
「STC」は、界面活性剤で処理されたコントロールを示す。
【0043】
表3および4に見られるように、ABAとリンゴ酸の混合物は、すべての濃度において、コントロールおよびいずれかの単独の適用に比べて乾燥重量を改善した。3.3:1の比率のABAとリンゴ酸の混合物は、乾燥重量の予想外の増加を実証した。
【実施例0044】
干ばつストレス下のコムギにおける水分貯蔵の増加
8セットの小麦植物(n=8)をそれぞれ、開花の1週間後に、300 ppm ABA、1000 ppmリンゴ酸またはそれらの混合物で処理した。処理後3日間は水を差し控え、次の4日間は十分な水を供給した。最初の噴霧後1週間、化学噴霧処理を繰り返し、続いて、同様の乾燥サイクルと灌がいを行った。次に、この実験を繰り返した。蒸発散量(すなわち、ポット重量の変化)を、各サイクルの1、2、3 DATで測定した。ABAとリンゴ酸の適用による水分貯蔵の予想外の増加を示す結果は、1回目の実験の第2サイクル、および2回目の実験の第1サイクルと第2サイクルについて、下記の表5~7で見ることができる。
【0045】
表5
【表5】
【0046】
表6
【表6】
【0047】
表7
【表7】
「STC」は、非処理コントロールを意味する。
【0048】
表5~7に見られるように、ABAとリンゴ酸単独の両方が、水分貯蔵の証拠を示した。水分貯蔵の証拠は、干ばつストレス中、特に3 DATに、より多量の蒸発散量があることによって見られる。ABAとリンゴ酸を1:3.3の比率で混合すると、干ばつストレスの第1サイクルと第2サイクル中、特に3 DATでの予想外の水分貯蔵レベルが実証された。
【実施例0049】
干ばつストレス下のコムギにおける水分貯蔵の増加
10セットの小麦植物(n=6)をそれぞれ、開花の1週間後に、0.025% Latron B 1956(登録商標)(J.R. Simplot Companyから入手可能)界面活性剤溶液中の100または300 ppm ABA、100、300または1000 ppmリンゴ酸またはそれらの混合物で処理した。水は、化学処理の日から差し控えた。蒸発散量を、第0日と比較したポットに残った水の量として、1、2および3 DATで測定した。結果は、下記の表8で見ることができる。
【0050】
表8
【表8】
「STC」は、界面活性剤で処理されたコントロールを示す。
【0051】
表8に見られるように、ABAとリンゴ酸単独の両方が、水分貯蔵の証拠を示した。水分貯蔵の証拠は、干ばつストレス中、特に3 DATに、より多量の蒸発散量があることによって見られる。ABAとリンゴ酸を3:1、1:1、1:3、1:3.3、および1:10の比率で混合すると、ポットに残された水分量として、第0日と比較して、干ばつストレスの第1サイクルと第2サイクル中、特に3 DATでの予想外の水分貯蔵レベルが実証された。
【実施例0052】
干ばつストレス下のコムギにおける水分貯蔵の増加
10セットの小麦植物(n=6)をそれぞれ、開花の1週間後に、0.025% Latron B 1956(登録商標)(J.R. Simplot Companyから入手可能)界面活性剤溶液中の100または300 ppm ABA、1000 ppmリンゴ酸またはそれらの混合物で処理した。処理中、水は差し控えた。蒸発散量を、1、2および3 DATで測定した。結果は、下記の表9で見ることができる。
【0053】
表9
【表9】
「STC」は、界面活性剤で処理されたコントロールを示す。
【0054】
表9に見られるように、ABAとリンゴ酸単独の両方が、水分貯蔵の証拠を示した。水分貯蔵の証拠は、干ばつストレス中、特に3 DATに、より多量の蒸発散量があることによって見られる。ABAとリンゴ酸を1:3.3の比率で混合すると、ポットに残された水分量として、第0日と比較して、特に3 DATでの予想外の水分貯蔵レベルが実証された。
【実施例0055】
干ばつストレス下のコムギにおける穀粒収量の増加
8セットの小麦植物(n=6)をそれぞれ、開花の1週間後に、100または300 ppm ABA、1000 ppmリンゴ酸またはそれらの混合物で処理した;最初の噴霧後1週間、同じ化合物による化学処理を繰り返した。処理中、水は差し控えた。生理的成熟時に、シュート重量、穂重量および穀粒収量を測定した。結果は、下記の表10で見ることができる。
【0056】
表10
【表10】
「STC」は、界面活性剤で処理されたコントロールを示す。
【0057】
表10に見られるように、ABA単独は、穀粒重量の増加の証拠を示したが、リンゴ酸単独は、穀粒重量の減少の証拠を示した。ABAとリンゴ酸を1:3.3の比率で混合すると、予想外の穀粒重量の増加が実証された。
【実施例0058】
干ばつストレス下のレタスにおける重量の増加
8セットのレタス植物(n=6)をそれぞれ、20 DAPに、300 ppm ABA、1000 ppm リンゴ酸またはそれらの混合物で処理した。処理中、水は差し控えた。34 DATに、生重量および乾燥重量を測定した。結果は、下記の表11および12で見ることができる。
【0059】
表11
【表11】
【0060】
表12
【表12】
「UTC」は、非処理コントロールを意味する。
【0061】
表11および12に見られるように、ABA単独は、生重量の増加の証拠を示すのに対し、ABA単独は、乾燥重量の減少の証拠を示し、リンゴ酸単独は、生および乾燥重量の減少の証拠を示した。ABAとリンゴ酸を1:3.3の比率で混合すると、予想外の生重量および乾燥重量の両方の増加が実証された。
【実施例0062】
干ばつストレス下の光合成の増加
7セットのトウモロコシ植物(n=7)をそれぞれ、16 DAPに、300 ppm ABAもしくは1000 ppm ABA、1000 ppm リンゴ酸またはそれらの混合物で処理した。化学処理の日から、水は差し控えた。1、4および6 DATに、光合成速度を測定した。この実験を繰り返した。結果は、下記の表13および14で見ることができる。
【0063】
表13
【表13】
【0064】
表14
【表14】
「UTC」は、界面活性剤で処理されたコントロールを意味する。
【0065】
表13および14に見られるように、ABA単独は、6 DATにて光合成速度の増加の証拠を示し、リンゴ酸単独は、6 DATにて光合成速度の増加および減少の両方の証拠を示した。ABAとリンゴ酸を1:3.3および1:1の比率で混合すると、6 DATにて、予想外の光合成速度の増加が実証された。
【実施例0066】
登熟中のイネに対する(S)-ABAとリンゴ酸の葉面散布の効果
市販の半矮性イネを使用して、ABAとリンゴ酸の組み合わせが、どちらか単独よりも穀粒収量を改善するかどうかをテストした。イネは、水と肥料溶液で飽和させた、プロファイルのグリーンズ・グレードとProMix(登録商標)-BXを組み合わせたポットからなる培地を使用して温室で栽培した。初期の登熟段階(開花後5~20日)で、イネに処理を適用した。植物を特定の比率のABAとリンゴ酸で処理すると、穀粒収量の予想外の増加が観察された。下記の表15~18を参照。
収量は、円錐花序重量として表され、穀粒収量は、円錐花序重量の約>95%である。穀粒重量と円錐花序重量の相関は、>0.99であった。ABA(30 ppm)とリンゴ酸(100 ppm)を個別に適用すると、両方で収量が減少したが、1:3.3の比率の混合物では、予想外に収量が8.2%増加した。下記の表15を参照。
【0067】
表15
【表15】
【0068】
この組み合わせによっても、1:10の ABA(30 ppm)対リンゴ酸(300 ppm)の比率で、イネの収量が予想外に改善された。下記の表16を参照。ABAとリンゴ酸の混合物は、界面活性剤で処理されたコントロール(STC)と比較して、3.9%高い穀粒収量をもたらした。
【0069】
表16
【表16】
同様の研究で、イネは、初期の登熟段階で水不足ストレスにさらされた。開花後約10日と17日において2回処理されたABA(30 ppm)とリンゴ酸(300 ppm)の混合物は、穀粒収量の予想外の増加をもたらした。下記の表17を参照。1:10の比率のABA対リンゴ酸の混合物は、個別に適用した化合物と比較して、穀粒収量が予想外に増加させた。
【0070】
表17
【表17】
【0071】
もう1つの研究では、ABA(30 ppm)とリンゴ酸(1000 ppm)を1:33.3の比率で混合すると、予想外にイネの収量が増加した。表18を参照。混合物は、界面活性剤で処理されたコントロールと比較して、穀粒収量が7.8%増加したことを示した。
【0072】
表18
【表18】
気孔コンダクタンスは、植物の葉の表面でのガス交換率の尺度である。典型的には、mmol m-2 s-1蒸気圧の単位を使用するポロメーターで測定される。ABAのイネへの適用に続いて、主円錐花序の止葉の気孔コンダクタンス、主円錐花序の穀粒発達におけるミルクステージの7つの植物の最初の分げつおよび2番目の分げつを測定した。適用後1日以内に、葉の気孔コンダクタンスの低下が観察された。葉のABA適用後のイネの止葉の気孔コンダクタンス(mmol m-2 s-1)を実証する下記の表19を参照。
【0073】
表19
【表19】
気孔コンダクタンスに対するABAの効果、特にABAの低い比率での効果が短命であり、低いことは注目に値する。リンゴ酸をABAに添加すると、適用後24時間でのイネの止葉の蒸散に対するABAまたはリンゴ酸の効果が著しく増加した。表20は、登熟中の植物の止葉に対するABA、リンゴ酸、またはその混合物の効果を調べる3つの別々の研究の平均を示す。データを、OCE/ECE比の計算にも付した。
【0074】
表20
【表20】
この結果は、ABAとリンゴ酸の活性が、1:30(ABA:リンゴ酸)の比率での同時適用によって、予想外に増加したことを明確に実証する。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の(S)-アブシジン酸とリンゴ酸を植物に適用することを含む、植物のストレス耐性を改善する方法であって、ABA対リンゴ酸の重量比が、約3.3:1~約1:33.3であり、植物が、双子葉植物である方法。
【請求項2】
ABA対リンゴ酸の重量比が、約3.3:1~約1:10である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ABA対リンゴ酸の重量比が、約3.3:1~約1:3.3である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
植物が、キュウリまたはレタスである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ストレスが、非生物的ストレスである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ストレスが、干ばつストレスである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
有効量の(S)-アブシジン酸とリンゴ酸を植物に適用することを含む、植物の成長を改善する方法であって、ABA対リンゴ酸の重量比が、約3.3:1~約1:33.3であり、植物が、双子葉植物である方法。
【請求項8】
ABA対リンゴ酸の重量比が、約3.3:1~約1:10である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ABA対リンゴ酸の重量比が、約3.3:1~約1:3.3である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ABA対リンゴ酸の重量比が、約1:30である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
植物が、キュウリまたはレタスである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
植物が、非生物的ストレスにさらされる、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
ストレスが、干ばつストレスである、請求項7に記載の方法。
【外国語明細書】