(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006029
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】軸力測定方法
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
G01L5/00 103B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108399
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長埜 浩太
(72)【発明者】
【氏名】井上 剛志
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AB03
2F051AB09
(57)【要約】
【課題】
本発明は、締結要素を締め付ける際に加わる曲げモーメントを加味し、高精度に締結要素の軸力を測定する軸力測定方法を提供する。
【解決手段】
本発明の軸力測定方法は、締結要素の表面における模様の変化を締結前後で比較して、締結要素の軸力を測定する軸力測定方法において、締結要素の締結前後の模様を撮像する工程と、締結前後の模様の画像から模様の変化量を算出し、模様の変化量に基づいて、締結要素のひずみ分布を取得する工程と、締結要素の軸力と締結要素の曲げモーメントとの比率に基づくひずみ分布と、模様の画像から取得されたひずみ分布と、を照合し、締結要素の軸力を測定する工程と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結要素の表面における模様の変化を締結前後で比較して、前記締結要素の軸力を測定する軸力測定方法において、
前記締結要素の締結前後の前記模様を撮像する工程と、
締結前後の前記模様の画像から前記模様の変化量を算出し、前記模様の変化量に基づいて、前記締結要素のひずみ分布を取得する工程と、
前記締結要素の軸力と前記締結要素の曲げモーメントとの比率に基づくひずみ分布と、前記模様の画像から取得されたひずみ分布と、を照合し、前記締結要素の軸力を測定する工程と、
を有することを特徴とする軸力測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載する軸力測定方法であって、
前記締結要素の軸力を測定する工程では、前記締結要素の軸力と前記締結要素の曲げモーメントとの比率と、前記曲げモーメントと前記軸力との角度と、に基づくひずみ分布と、前記模様の画像から取得されたひずみ分布と、を照合することを特徴とする軸力測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載する軸力測定方法であって、
前記締結要素はナット又はボルトであり、
前記締結要素の模様が、前記ナットの側面又は前記ボルトの頭部の側面にあることを特徴とする軸力測定方法。
【請求項4】
請求項1に記載する軸力測定方法であって、
前記模様は、前記締結要素の表面に、塗布、印字、シールの接着、吹き付け、転写、印字により、形成されることを特徴とする軸力測定方法。
【請求項5】
請求項2に記載する軸力測定方法であって、
前記締結要素の表面のひずみ分布を取得する工程では、前記締結要素の評価面の軸方向のひずみ分布と、前記締結要素の評価面における前記締結要素の軸方向と垂直な方向のひずみ分布と、を取得することを特徴とする軸力測定方法。
【請求項6】
請求項5に記載する軸力測定方法であって、
比率毎に作成された前記締結要素の表面の上端からの距離と軸方向ひずみと締結要素の軸力との関係を有するグラフと、角度毎に作成された前記締結要素の表面の左端からの距離と軸方向ひずみと締結要素の軸力との関係を有するグラフと、に基づいて、データベースを作成することを特徴とする軸力測定方法。
【請求項7】
請求項2に記載する軸力測定方法であって、
データベースに記憶されたひずみ分布と前記模様の画像から取得されたひずみ分布とを照合する際には、記憶されたひずみ分布から、取得されたひずみ分布が類似するひずみ分布を選択することを特徴とする軸力測定方法。
【請求項8】
請求項5に記載する軸力測定方法であって、
データベースに記憶されたひずみ分布と前記模様の画像から取得されたひずみ分布とを照合する際には、前記締結要素の表面の軸方向のひずみ分布において、前記記憶されたひずみ分布と前記取得されたひずみ分布とを照合し、前記締結要素の表面における前記締結要素の軸方向と垂直な方向のひずみ分布において、前記記憶されたひずみ分布と前記取得されたひずみ分布とを照合することを特徴とする軸力測定方法。
【請求項9】
請求項2に記載する軸力測定方法であって、
前記締結要素に負荷する荷重を管理することができる工具を使用し、前記締結要素に任意の荷重を負荷することを特徴とする軸力測定方法。
【請求項10】
請求項3に記載する軸力測定方法であって、
前記ナットの側面に、凹部を形成し、前記凹部の底部に前記模様を形成することを特徴とする軸力測定方法。
【請求項11】
請求項3に記載する軸力測定方法であって、
前記ナットの側面に、段差部を形成し、前記段差部の低部に前記模様を形成することを特徴とする軸力測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結要素の軸力を測定する軸力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の被締結体を締結する締結要素は、主に、ボルト、座金、ナットなどによって構成される。そして、締結要素が、複数の被締結体を締結するために使用されると、締結要素の軸力によって、複数の被締結体が締め付けられ、固定される。このように、締結要素は、機械構造物や建築構造物の組み立てなどにおいて重要な部品である。
【0003】
また、締結要素の軸力を把握し、管理することは、被締結体の締結部に対する強度の設計やその管理において重要である。締結要素の軸力が弱いと、振動による緩みの原因になる。一方、締結要素の軸力が強いと、被締結体の破壊を引き起こす原因になり、また、被締結体の座面の陥没による緩みの原因や、ボルトやナットのねじの塑性伸びによる緩みの原因になる。
【0004】
締結要素の変位測定方法として、特開2019-197025号公報(特許文献1)には、締結要素の表面に存在する一定間隔で繰り返す模様を形成するステップと、模様の所定の領域の画像をデジタルカメラで撮像するステップと、締結要素によって被締結体を締結するステップと、締結後に、模様の所定の領域の画像をデジタルカメラで撮像するステップと、締結前の画像と締結後の画像とを重ね合わせて、モアレ縞の画像を生成し、モアレ縞の分布を求めるステップと、締結前と締結後とのモアレ縞の分布から締結要素の変位分布を求めるステップと、を有する締結要素の変位を測定する変位測定方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される締結要素の変位測定方法は、締結前と締結後とのモアレ縞の分布から締結要素の変位分布を求めるものである。
【0007】
複数の被締結体を、締結要素を使用し、締結する際には、締結要素の軸力を測定することが重要であり、高精度に締結要素の軸力を測定するためには、締結要素を締め付ける際に加わる曲げモーメントを加味することが重要である。
【0008】
しかし、特許文献1には、高精度に締結要素の軸力を測定するため、締結要素を締め付ける際に加わる曲げモーメントを加味することは記載されていない。
【0009】
そこで、本発明は、締結要素を締め付ける際に加わる曲げモーメントを加味し、高精度に締結要素の軸力を測定する軸力測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するため、本発明の軸力測定方法は、締結要素の表面における模様の変化を締結前後で比較して、締結要素の軸力を測定する軸力測定方法において、締結要素の締結前後の模様を撮像する工程と、締結前後の模様の画像から模様の変化量を算出し、模様の変化量に基づいて、締結要素のひずみ分布を取得する工程と、締結要素の軸力と締結要素の曲げモーメントとの比率に基づくひずみ分布と、模様の画像から取得されたひずみ分布と、を照合し、締結要素の軸力を測定する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、締結要素を締め付ける際に加わる曲げモーメントを加味し、高精度に締結要素の軸力を測定する軸力測定方法を提供することができる。
【0012】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明によって、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1に記載する締結要素及び被締結体2を概略的に説明する説明図である。
【
図2】実施例1に記載する軸力測定方法の工程を説明するフロー図である。
【
図3】実施例1に記載するナット1の側面の縦方向ひずみ分布を説明するグラフである。
【
図4】実施例1に記載するナット1の側面の横方向ひずみ分布を説明するグラフである。
【
図5】実施例1に記載するデータベースを説明する説明図である。
【
図6】実施例4に記載するナット1の側面を説明する説明図である。
【
図7】実施例5に記載するナット1の側面を説明する説明図である。
【
図8】実施例6に記載するナット1の側面を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を、図面を使用し、説明する。なお、実質的に同一又は類似の構成には、各図面において同一の符号を使用し、説明する。そして、各図面において説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【実施例0015】
先ず、実施例1に記載する締結要素及び被締結体2を概略的に説明する。
【0016】
図1は、実施例1に記載する締結要素及び被締結体2を概略的に説明する説明図である。
【0017】
複数の被締結体2が、締結要素によって、締結される。実施例1の締結要素は、六角形状のボルト3、座金4、六角形状のナット1によって構成される。そして、締結要素が、複数の被締結体2を締結するために使用されると、締結要素の軸力によって、複数の被締結体2が締め付けられ、固定される。
【0018】
なお、実施例1では、六角形状のボルト3及び/又は六角形状のナット1を使用したが、六角形状に限定されるものではなく、側面を有する多角形状のボルト3及び/又は側面を有する多角形状のナット1であればよい。
【0019】
実施例1では、複数の被締結体2を重ね、複数の被締結体2にそれぞれ形成される穴に、共通して、頭部と軸部とを有するボルト3を、複数の被締結体2の下方から貫通させる。そして、複数の被締結体2の上方から突出したボルト3の軸部に、座金4を嵌め、更に、座金4が嵌められたボルト3の軸部に、ナット1を螺着し、ねじ締めする。ナット1を、ボルト3に対して、締め付けることによって、締結要素に軸力が発生し、複数の被締結体2が固定される。
【0020】
なお、実施例1では、ナット1に荷重を加え、ナット1をボルト3に対して締め付けたが、ボルト3の頭部に荷重を加え、ボルト3をナット1に対して締め付けてもよい。また、雌螺子を下側の被締結体2の穴に螺設してもよい。
【0021】
そして、締結要素の軸力の測定部位として、ナット1の側面(評価面6)に、ランダムパターン5を形成する。ランダムパターン5は、塗布、印字、シールの接着、吹き付け、転写、印字などのうち、何れかの手段によって、ナット1の側面に形成される。なお、ランダムパターン5は、測定部位の位置ひずみを視覚的に顕在化させ、観測することができる人工的な模様であればよい。また、ランダムパターン5は、規則的又は不規則的な模様でもよい。そして、ランダムパターン5は、パターンの変位測定に適するものであればよく、例えば、規則的な縞模様や不規則的な模様である。
【0022】
なお、実施例1では、ナット1の側面にランダムパターン5を形成したが、ボルト3の頭部の側面(評価面6)にランダムパターン5を形成してもよい。
【0023】
ここで、締結要素の軸力とは、ボルト3の軸部に作用する力であって、ボルト3の軸部の設置方向に作用する力である。実施例1では、締結要素の軸力は上下方向(垂直方向)に作用する力である。なお、締結要素の軸力は、被締結体2を締め付ける方向を正(+)とし、被締結体2を緩める方向を負(-)とする。実施例1では、締結要素の軸力は、正(+)である。
【0024】
一方、締結要素の曲げモーメント7とは、ボルト3の軸部に作用する力であって、締結要素の軸力に対して、所定の角度8(0°(締結要素の軸力と垂直)~±90°(締結要素の軸力と平行))を有し、作用する力を意味する。なお、実施例1では、説明の都合上、締結要素の軸力に対して、所定の角度8が0°の場合、曲げモーメント7は締結要素の軸力と垂直と定義する。また、締結要素の軸力に対して、所定の角度8が±90°の場合、曲げモーメント7は締結要素の軸力と平行と定義する。つまり、角度8は、曲げモーメント7が作用する方向に対するナット1の側面(評価面6)の傾きであり、締結要素の偏心量でもある。
【0025】
次に、実施例1の軸力測定方法の工程を説明する。
【0026】
図2は、実施例1の軸力測定方法の工程を説明するフロー図である。
【0027】
実施例1の軸力測定方法は、以下の工程を有する。
【0028】
(ステップ21)ナット1の側面(締結要素の評価面6)にランダムパターン5を形成する。
【0029】
(ステップ22)ナット1の側面に形成されたランダムパターン5を、デジタルカメラを使用し、撮像する。その後、ナット1に荷重を加え、ナット1を、ボルト3に対して、締め付ける。その後、ナット1の側面に形成されたランダムパターン5を、デジタルカメラを使用し、撮像する。つまり、ナット1に荷重が負荷された締結前後のランダムパターン5を撮像する。この時、締結前後で、ランダムパターン5の画像は変化する。締結後にランダムパターン5を撮像するタイミングは、ランダムパターン5が形成された締結要素が締結された直後であってもよいし、一定時間経過後であってもよい。
【0030】
なお、実施例1では、ナット1の側面に形成されたランダムパターン5を、デジタルカメラを使用し撮像したが、撮像装置はデジタルカメラに限定されるものではない。
【0031】
(ステップ23)締結前後のランダムパターン5の画像から、一般的な画像相関法によって、ランダムパターン5の変化量を算出又は分析し、ランダムパターン5の変化量に基づいて、ナット1の側面のひずみ分布(変形分布)を取得する。ここで、ランダムパターン5の変化量とは、ランダムパターン5の移動量のことである。
【0032】
なお、ナット1の側面のひずみ分布を取得する際には、ナット1の側面の上下方向(縦方向)のひずみ分布と、ナット1の側面の左右方向(横方向)のひずみ分布と、を取得する。
【0033】
つまり、画像相関法によって、ナット1の側面に形成された変化前後のランダムパターン5の画像を比較し、ランダムパターン5の変化量を算出する。
【0034】
そして、実施例1では、長方形の評価面6であるナット1の側面に対して、縦方向の複数点のひずみ値(変化量)を算出し、これら複数点のひずみ値に基づいて、縦方向ひずみ分布を取得する。また、長方形の評価面6であるナット1の側面に対して、横方向の複数点のひずみ値(変化量)を算出し、これら複数点のひずみ値に基づいて、横方向ひずみ分布を取得する。これにより、ナット1の側面の上端から下端における軸方向ひずみ分布、及び、ナット1の側面の左端から右端における軸方向と垂直な方向のひずみ分布、を取得することができる。
【0035】
なお、ナット1の側面のひずみ分布を取得するために、変形測定センサを使用することも可能である。変形測定センサは、測定対象物に設置し、設置した任意の位置の変形を測定するセンサである。変形測定センサを使用することによって、画像を処理することなく、簡便に、ひずみ分布を取得することができる。
【0036】
(ステップ24)事前に、締結要素の軸力と曲げモーメント7との比率(α)と、曲げモーメント7と軸力との角度8(θ)と、に基づくひずみ分布を記憶したデータベースを作成する。
【0037】
また、データベースは、比率(α)毎に作成されたナット1の側面の上端からの距離と軸方向ひずみ分布(ひずみ値)/締結要素の軸力との関係を有するグラフ、及び、角度8(θ)毎に作成されたナット1の側面の左端からの距離と軸方向ひずみ分布(ひずみ値)/締結要素の軸力との関係を有するグラフ、に基づいて作成される。
【0038】
データベースは、評価面6を、有限要素法(Finite element method:FEM)によって、モデル化し、評価面6のひずみ値と締結要素の軸力との関係を、取得し、記憶する。なお、有限要素法は、荷重による位置ひずみ値を予測する数値計算方法であり、荷重や振動などの物理的な負荷によって、測定対象物の構造変化を予測する数値計算方法である。
【0039】
このように、実施例1では、事前に、評価面6におけるひずみ分布と締結要素の軸力との関係をデータベース化する。
【0040】
(ステップ25)ステップ23で取得されたひずみ分布(ランダムパターン5から取得されたひずみ分布)の形状(傾きや波形である曲線)とデータベースに記憶されたひずみ分布の形状(傾きや波形である曲線)とを照合(比較)し、記憶されたひずみ分布から、取得されたひずみ分布が最も類似するひずみ分布を選択し、選択されたひずみ分布の比率(α)に基づいて、締結要素の軸力を推定する。
【0041】
つまり、事前に作成されたデータベースに記憶された、締結要素の軸力と曲げモーメント7との比率(α)と、曲げモーメント7と軸力との角度8(θ)と、に基づくひずみ分布と、ランダムパターン5の画像から取得されたひずみ分布と、を照合し、締結要素の軸力を測定する。
【0042】
このように、実施例1に記載する軸力測定方法によれば、締結要素を締め付ける際に加わる曲げモーメント7を加味し、高精度に締結要素の軸力を測定することができる。
【0043】
なお、記憶されたひずみ分布と取得されたひずみ分布とを照合する際には、ナット1の側面の上下方向(縦方向)のひずみ分布において、記憶されたひずみ分布と取得されたひずみ分布とを照合し、ナット1の側面の左右方向(横方向)のひずみ分布において、記憶されたひずみ分布と取得されたひずみ分布とを照合する。
【0044】
この軸力測定方法は、ランダムパターン5を形成することができる、一定の面積を有する一つの評価面6を有すれば、使用することができる。したがって、面積が小さいナット1の側面やボルト3の頭部の側面にランダムパターン5を形成し、簡便に、使用することができる。
【0045】
また、この軸力測定方法は、締結要素を締結する際に、締結要素の偏心量を測定(推定)することができ、偏心の影響による誤差を軽減することができる。
【0046】
つまり、この軸力測定方法は、締結要素に偏心があった場合であっても、その偏心を原因とする誤差を軽減し、締結要素の軸力を、非接触で、簡便に、高精度に、繰返し測定することができる。
【0047】
次に、実施例1のナット1の側面の縦方向ひずみ分布を説明する。
【0048】
図3は、実施例1のナット1の側面の中央部縦方向ひずみ分布を説明するグラフである。
【0049】
図3は、比率(α)毎に作成されたナット1の上端からの距離と軸方向ひずみ/締結要素の軸力との関係を有するグラフである。つまり、比率(α)毎に作成されたナット1の縦方向ひずみ分布である。
【0050】
データベースを作成する際には、締結要素の軸力と曲げモーメント7との比率(α)をパラメータとする。
【0051】
つまり、データベースを作成する際には、所定の締結要素の軸力と所定の曲げモーメント7とを設定し、一つの比率(α)に対して、ナット1の側面の縦方向の複数点のひずみ値を算出し、プロットし、一つのグラフを取得する。更に、先と異なる締結要素の軸力及び/又は曲げモーメント7を設定し、次の比率(α)に対して、ナット1の側面の縦方向の複数点のひずみ値を算出し、プロットし、次のグラフを取得する。これを繰り返し、このグラフを取得する。
【0052】
なお、このグラフにおいて、ナット1の縦方向距離も正規化され、0.0~1.0で示される。
【0053】
ここで、ひずみ値は、締結要素の軸力で除して、無次元化した値を使用する。ひずみ値を無次元化することによって、締結要素の軸力の大きさによらず、比率(α)が同一であれば、ひずみ分布は、比率(α)毎に、一本の曲線で示すことができる。なお、このグラフは、角度8(θ)毎に(例えば、-90°、-75°、・・・、-15°、0°、+15°、・・・、+75°、+90°のように)、複数枚、作成される。
【0054】
次に、実施例1に記載するナット1の側面の横方向ひずみ分布を説明する。
【0055】
図4は、実施例1に記載するナット1の側面の中央部横方向ひずみ分布を説明するグラフである。
【0056】
図4は、角度8(θ)毎に作成されたナット1の左端からの距離と軸方向ひずみ/締結要素の軸力との関係を有するグラフである。つまり、角度8(θ)毎に作成されたナット1の横方向ひずみ分布である。
【0057】
データベースを作成する際には、曲げモーメント7と軸力との角度8(θ)をパラメータとする。
【0058】
つまり、データベースを作成する際には、所定の角度8(θ)を設定し、一つの角度8(θ)に対して、ナット1の側面の横方向の複数点のひずみ値を算出し、プロットし、一つのグラフを取得する。更に、先と異なる角度8(θ)を設定し、次の角度8(θ)に対して、ナット1の側面の縦方向の複数点のひずみ値を算出し、プロットし、次のグラフを取得する。これを繰り返し、このグラフを取得する。
【0059】
なお、このグラフにおいて、ナット1の横方向距離も正規化され、0.0~1.0で示される。
【0060】
ここで、ひずみ値は、締結要素の軸力で除して、無次元化した値を使用する。ひずみ値を無次元化することによって、締結要素の軸力の大きさによらず、角度8(θ)が同一であれば、ひずみ分布は、角度8(θ)毎に、一本の曲線で示すことができる。なお、このグラフは、比率(α)毎に(例えば、-2.0、-1.0、-0.5、-0.1、0、+0.1、+0.5、+1.0、+2.0のように)、複数枚、作成される。
【0061】
次に、実施例1に記載するデータベースを説明する。
【0062】
図5は、実施例1に記載するデータベースを説明する説明図である。
【0063】
データベースは、
図5に示すように、
図3に示す締結要素の軸力と曲げモーメント7との比率(α)における各曲線と、
図4に示す曲げモーメント7と軸力との側面の角度8(θ)における各曲線と、に基づいて、分類されたひずみ分布を記憶する。
【0064】
図5に示すデータベースは、データベースの一部分であり、例えば、縦方向に比率(α)として、α=0の縦方向ひずみ分布及び横方向ひずみ分布、α=0.1の縦方向ひずみ分布及び横方向ひずみ分布・・・と記憶され、横方向に角度8(θ)として、θ=0°、θ=15°・・・と記憶される。
【0065】
具体的には、例えば、角度8(θ)が0°の
図3からは、マスa、マスc、マスeなどが記憶され、角度8(θ)が+15°の
図3からは、マスg、マスiなどが記憶され、例えば、比率(α)が+0.1の
図4からは、マスd、マスh、マスlなどが記憶され、比率(α)が+0.5の
図4からは、マスf、マスj、マスnなどが記憶される。
【0066】
そして、データベースに記憶されたひずみ分布と、ランダムパターン5から取得されたひずみ分布と、を照合し、記憶されたひずみ分布から、取得されたひずみ分布が最も類似するひずみ分布を選択する。更に、選択されたひずみ分布の比率(α)に基づいて、締結要素の軸力を測定する。
【0067】
なお、記憶されたひずみ分布と、取得されたひずみ分布と、を照合する際には、ナット1の側面の上下方向(縦方向)のひずみ分布とナット1の側面の左右方向(横方向)のひずみ分布とについて、照合する。
【0068】
そして、記憶されたひずみ分布から、取得されたひずみ分布が最も類似するひずみ分布を選択することにより、取得されたひずみ分布(波形)の比率(α)と角度8(θ)とを把握することができる。
【0069】
角度8(θ)を把握することができることにより、曲げモーメント7が作用している方向を把握することができる。
【0070】
また、比率(α)を把握することができることにより、軸方向ひずみ/締結要素の軸力を把握することができる。これにより、比率(α)における、軸方向ひずみ/締結要素の軸力を把握することができる。
【0071】
ここで、記憶されたひずみ分布と、取得されたひずみ分布と、を照合する際には、最も類似するひずみ分布を選択し、取得されたひずみ分布(選択されたひずみ分布)を1/X倍し、記憶されたひずみ分布と、取得されたひずみ分布(1/X倍されたひずみ分布)と、を照合する。
【0072】
なお、記憶されたひずみ分布の単位は(με/kN)であり、取得されたひずみ分布の単位は(με)である。そこで、取得されたひずみ分布を、単位が(kN)であるXで除する(1/X倍する)ことによって、記憶されたひずみ分布と取得されたひずみ分布とが同一の単位となる。つまり、Xは、取得されたひずみ分布における締結要素の軸力である。これにより、締結要素の軸力を測定することができる。
【0073】
このように、実施例1に記載する軸力測定方法は、角度8(θ)毎に複数枚記憶され、締結要素の軸力と曲げモーメント7との比率(α)毎の曲線が記憶される、評価面6における軸縦方向ひずみ/締結要素の軸力の関係、及び、比率(α)毎に複数枚記憶され、曲げモーメント7と軸力との角度8(θ)毎の曲線が記憶される、評価面6における軸横方向ひずみ/締結要素の軸力の関係、に基づいて、作成されるデータベースを使用する。
【0074】
このように、この軸力測定方法によれば、締結要素を締め付ける際に加わる曲げモーメント7を加味し、高精度に締結要素の軸力を測定することができると共に、締結要素の軸力と締結要素の偏心量との変化を把握することができ、締結要素の緩みを検出することができる。
一方、実施例2では、トルクレンチなどのように、締結要素に負荷する荷重(軸力)を管理することができる工具を使用し、締結要素に任意の荷重を負荷し、荷重負荷の前後のナット1の側面に形成したランダムパターン5について、画像相関法によって、ひずみ分布を取得し、軸方向ひずみ/締結要素の軸力のグラフを取得し、データベースを作成する。
そして、このデータベースを使用し、例えば、画像相関法によって、ナット1の側面に形成したランダムパターン5から取得されたひずみ分布とデータベースに記憶されたひずみ分布と照合し、締結要素の軸力を測定する。
これにより、高精度に締結要素の軸力を測定することができると共に、締結要素の軸力と締結要素の偏心量との変化を把握することができ、締結要素の緩みを検出することができる。