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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060300
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】体重推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 17/08 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
G01G17/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036207
(22)【出願日】2023-03-09
(62)【分割の表示】P 2019056548の分割
【原出願日】2019-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2018083703
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501039190
【氏名又は名称】株式会社ノア
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長枝 浩
(72)【発明者】
【氏名】松井 直美
(57)【要約】
【課題】簡素な構成でありながら、高精度に動物の体重を推定できる体重推定装置を提供する。
【解決手段】体重推定装置は、動物の体重を推定する体重推定装置であって、前記動物を撮像し、複数の点毎に三次元情報を取得するワンショット型3Dスキャナである情報取得装置と、前記ワンショット型3Dスキャナが所定の時間内で複数のショットを行って取得した複数の三次元情報を平均化した平均三次元情報に基づき、前記動物の外形の幾何学量を演算する演算装置と、前記演算装置が演算した前記動物の外形の幾何学量に基づいて、撮像した前記動物の体重を推定する計量装置と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の体重を推定する体重推定装置であって、
前記動物を撮像し、複数の点毎に三次元情報を取得するワンショット型3Dスキャナである情報取得装置と、
前記ワンショット型3Dスキャナが所定の時間内で複数のショットを行って取得した複数の三次元情報を平均化した平均三次元情報に基づき、前記動物の外形の幾何学量を演算する演算装置と、
前記演算装置が演算した前記動物の外形の幾何学量に基づいて、撮像した前記動物の体重を推定する計量装置と、を有することを特徴とする体重推定装置。
【請求項2】
動物の体重を推定する体重推定装置であって、
前記動物を撮像し、複数の点毎に三次元情報を取得するワンショット型3Dスキャナである情報取得装置と、
前記ワンショット型3Dスキャナが所定の時間内で複数のショットを行って取得した複数の三次元情報に基づき、複数の前記動物の外形の幾何学量を演算する演算装置と、
複数の前記動物の外形の幾何学量を平均化した平均幾何学量に基づいて、撮像した前記動物の体重を推定する計量装置と、を有することを特徴とする体重推定装置。
【請求項3】
動物の体重を推定する体重推定装置であって、
前記動物を撮像し、複数の点毎に三次元情報を取得するワンショット型3Dスキャナである情報取得装置と、
前記ワンショット型3Dスキャナが所定の時間内で複数のショットを行って取得した複数の三次元情報に基づき、複数の前記動物の外形の幾何学量を演算する演算装置と、
複数の前記動物の外形の幾何学量に基づいて、撮像した前記動物の体重を複数個求め、これらを平均化した体重を推定体重とする計量装置と、を有することを特徴とする体重推定装置。
【請求項4】
前記動物の外形の幾何学量と、前記動物の体重との相関関係を表す回帰式を記憶した記憶部を有し、
前記計量装置は、前記回帰式に、前記演算装置が演算した前記動物の外形の幾何学量を代入することにより、前記動物の体重を推定し、
前記記憶部は、推定対象となる動物の特性に応じて、複数の異なる相関関係を表す複数の回帰式を記憶しており、
前記計量装置は、前記演算装置が演算した前記動物の外形の幾何学量に基づいて、対応する回帰式の一つを選択して前記記憶部から読み出し、前記演算装置が演算した前記動物の外形の幾何学量を代入することにより、前記動物の体重を推定することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の体重推定装置。
【請求項5】
前記動物の特性とは、前記動物のサイズ、前記動物の月齢又は前記動物が飼育される豚舎であることを特徴とする請求項4に記載の体重推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の体重を推定できる体重推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜の体重を測定することで、その成育状態を把握でき、出荷に適した時期を予想することができる。そこで、従来は家畜を体重計に載せて測定を行っていた。しかしながら、家畜を一頭ずつ体重計に載せるのに手間がかかる。又、体重計の上で家畜が動くことで、精度良く体重を測定できないという問題もある。
【0003】
これに対し、特許文献1においては、上方に固定設置した光学的映像撮影器を用いて動物の画像を取得し、それに基づき動物の体高と投影面積を求めて、動物の体重を演算する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-286421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、動物の体高や投影面積など2次元の情報しか得られないため、測定誤差が大きくなり、精度良く動物の体重を測定できないという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、簡素な構成でありながら、高精度に動物の体重を推定できる体重推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の体重推定装置は、動物の体重を推定する体重推定装置であって、
前記動物を撮像し、複数の点毎に三次元情報を取得するワンショット型3Dスキャナである情報取得装置と、
前記ワンショット型3Dスキャナが所定の時間内で複数のショットを行って取得した複数の三次元情報を平均化した平均三次元情報に基づき、前記動物の外形の幾何学量を演算する演算装置と、
前記演算装置が演算した前記動物の外形の幾何学量に基づいて、撮像した前記動物の体重を推定する計量装置と、を有することを特徴とする。
本発明の体重推定装置は、動物の体重を推定する体重推定装置であって、
前記動物を撮像し、複数の点毎に三次元情報を取得するワンショット型3Dスキャナである情報取得装置と、
前記ワンショット型3Dスキャナが所定の時間内で複数のショットを行って取得した複数の三次元情報に基づき、複数の前記動物の外形の幾何学量を演算する演算装置と、
複数の前記動物の外形の幾何学量を平均化した平均幾何学量に基づいて、撮像した前記動物の体重を推定する計量装置と、を有することを特徴とする。
本発明の体重推定装置は、動物の体重を推定する体重推定装置であって、
前記動物を撮像し、複数の点毎に三次元情報を取得するワンショット型3Dスキャナである情報取得装置と、
前記ワンショット型3Dスキャナが所定の時間内で複数のショットを行って取得した複数の三次元情報に基づき、複数の前記動物の外形の幾何学量を演算する演算装置と、
複数の前記動物の外形の幾何学量に基づいて、撮像した前記動物の体重を複数個求め、これらを平均化した体重を推定体重とする計量装置と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡素な構成でありながら、高精度に動物の体重を推定できる体重推定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施の形態にかかる体重推定装置のブロック図である。
図2図2は、体重推定装置1の使用状態を示す図である。
図3図3は、変形例にかかる体重推定装置1の使用状態を示す図である。
図4図4は、撮像部5で得られた三次元情報に基づく被写体を示す模式図である。
図5図5は、体重を推定した動物を抽出した状態を示す模式図である。
図6図6は、縦軸に体重、横軸に下半身の表面積を取って相関関係を示すグラフである。
図7図7は、豚の下半身の表面積Aと、その実測体重Wとを対応付けてプロットしたデータを示す図である。
図8図8は、第1の豚舎で成育した豚の体長Lと、その実測体重Wとを対応付けてプロットしたデータを示す図である。
図9図9は、第2の豚舎で成育した豚の体長Lと、その実測体重Wとを対応付けてプロットしたデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる体重推定装置のブロック図である。図2は、体重推定装置1の使用状態を示す図である。本実施形態において「撮像」というときは、少なくとも撮像対象の三次元座標情報を取得することをいう。
【0011】
図1において、体重推定装置1は、筐体部2に設けられた操作部3、表示部4、撮像部(情報取得装置)5、記憶部6、およびこれらの制御を司るCPU(演算装置及び計量装置)7を備えている。
【0012】
操作部3は、体重推定装置1に対してユーザーが指示を入力するために操作するインターフェースである。図2では、操作部3として電源スイッチ3a及びレリーズボタン3bを図示しているが、レリーズボタンの代わりにタッチパネルを設けても良い。この場合、表示部4の表面にタッチセンサが設けられ、ユーザーが画面に触れることによって指示情報を体重推定装置1に対して入力できる。かかる場合、表示部が操作部を兼ねる。
【0013】
表示部4は、画像及び情報を表示する機能を有し、これをユーザーが視認できるようになっている。表示部4として、液晶ディスプレイを用いることができる。
【0014】
CPU7は、記憶部6に格納されているプログラムを読み取りつつ実行し、各種データの演算や制御信号の生成等を行う。
【0015】
記憶部6は、体重推定装置1において用いる各種データを記憶する機能を提供する。記憶部6としては、CPU7の一時的なワーキングエリアとして使用されるRAMやバッファ、読み取り専用のROM、不揮発性のメモリ(例えばNANDメモリなど)、専用の読み取り装置に装着された可搬性の記憶媒体(SDカード、USBメモリなど)等が該当する。
【0016】
撮像部5は、三次元情報を取得するカメラであり、被写体である動物を撮像して、画素毎に三次元座標情報を持つ三次元被写体情報及びカラー情報を取得する。カラー情報に基づいて、表示部4は被写体のカラー画像を表示できる。カラー画像の代わりに三次元被写体情報を使用しても良い。三次元情報を取得するカメラについては、公知のものを用いることができる。三次元情報を取得する装置は、Time of Flight方式、光パターン照射方式などいずれを用いたものでも良い。ただし、1データを取得するための撮影時間は短い方が好ましい。三次元情報を取得するカメラとしては、ワンショット型3Dスキャナを用いることが最も好ましい。また、撮像部5は1回のショットで得られた三次元情報を出力するが、所定の時間内で複数のショットを行い、複数のショットで得られた複数の三次元情報を出力してもよい。
【0017】
なお、動物の体重推定においては、以下の手法のいずれかを採用して取得データの平均化を行うことが望ましい。
(1)演算装置としてのCPU7が、複数の三次元情報を平均化した平均三次元情報に基づき、前記動物の外形の幾何学量を演算して推定体重とする。
(2)演算装置としてのCPU7が、複数の三次元情報に基づいて、同じ動物の外形における複数の幾何学量を演算し、該幾何学量を平均化した平均幾何学量に基づいて、撮像した前記動物の体重を推定する。
(3)演算装置としてのCPU7が、複数の三次元情報に基づいて、同じ動物の外形における複数の幾何学量を演算し、該幾何学量に基づいて、撮像した前記動物の体重を複数個求め、これらを平均化した体重を推定体重とする。
【0018】
次に、体重推定装置1の動作について説明する。図2に示すように、ユーザーが自らの手HDで体重推定装置1の筐体部2を把持し、電源スイッチ3aをオン操作すると、CPU7は、表示部4の中央に十字マークMKを表示すると共に、撮像部5により撮像した被写体の画像を表示部4にスルー表示する。十字マークMKの画面内の表示位置は中央に限らない。また、複数の十字マークを表示させても良い。CPU7と表示部4とで、選択装置を構成する。
【0019】
ユーザーは手HDを動かしつつ、表示部4において、体重を推定したい動物ANの横腹に十字マークが位置するように筐体部2を動かし、撮像部5で動物ANを規定状態で撮像する。このとき、動物ANからユーザーまでの距離には特に制約がないが、動物ANの全体を撮影できるようにする。
【0020】
動物ANの横腹に十字マークMKが位置した状態で、ユーザーがレリーズボタン3bを操作すると、撮像部5は動物ANを含む三次元被写体情報及びカラー情報を取得して、記憶部6に記憶する。更に、CPU7は三次元被写体情報に基づいて、動物ANの体重を推定する。
【0021】
図3は、変形例にかかる体重推定装置1の使用状態を示す図である。本変形例においては、電源スイッチ3aやレリーズボタン3bなどの操作部を、筐体部2の下面に連結したグリップ部2aに配置している。これにより、ユーザーが片手でグリップ部2aを把持するのみで体重推定装置1を保持し、その片手のみを用いて体重推定装置1を操作できる。
【0022】
片手のみで体重推定装置1を保持して撮像を行うことが好ましい理由を説明する。上述したように体重推定装置1を操作して動物の体重を推定したとしても、対象となった動物が移動してしまうと、他の動物と見分けがつかなくなり見失う恐れがある。そこで、撮像と同時に、対象となった動物にペイントを付すなどの作業を行うことが望まれる。
【0023】
本変形例によれば、一方の手のみで体重推定装置1を保持して撮像を行うことができるので、空いた他方の手で動物にペイントを付すなど行うことができ、対象となった動物を見失うことがない。
【0024】
更に、図示していないが、体重推定装置1は、操作部として選択ボタン(選択部)を備えることができる。このような選択ボタンは、画面をタッチパネルにすることで、画面上に設けることができる。動物の種類に応じて、例えば推定対象の動物が、月齢B月以上の豚の場合には、第1の選択ボタンをオン操作する。また、推定対象の動物が、月齢Aか月以上、B月未満の豚の場合には、第2の選択ボタンをオン操作する。さらに、推定対象の動物が、月齢A月未満の豚の場合には、第3の選択ボタンをオン操作する。この選択により、CPU7は異なった演算を行う。演算の詳細については後述する。月齢の分け方は一例である。
【0025】
以下に、CPU7で行う処理について説明するが、ここでは豚を、体重推定を行う動物として例に取り説明する。記憶部6に記憶された三次元被写体情報には、動物ANの他、体重推定処理に不要な床FL,その他の物体OBJ(他の動物を含む)の情報も含まれている。そこで、CPU7は、体重を推定したい豚の三次元被写体情報のみを抽出する。
【0026】
三次元被写体情報は、画面内における無数の点(例えば画素)毎に、体重推定装置1を基準とした三次元座標(x、y、z)を持つ。ここで、x軸は画面内の水平方向で左側が正、y軸は画面内の垂直方向で上側が正、z軸は画面の垂線方向で画面の向こう側が正と定義する。そこでCPU7は、隣接する点毎に三次元座標を比較し、背景の持つ固有の特徴から不要な三次元被写体情報を分離する。
【0027】
より具体的にCPU7は、三次元被写体情報として取得された三次元点群の中で、ある平面に最も多く載っている平面を規定し、その平面を床FLと判断して、これらの点を対象から除去する。ここで、平面に最も載っている状態とは、平面から所定の距離以内の距離にある点群の数が最も多い状態を意味する。
【0028】
更に、CPU7は、十字マークMKに対応するもしくは近傍の点が豚の横腹であるという前提に基づき、隣接する点毎に三次元座標を比較し、これに対して連続面を構成する物体を豚ANとして認識し、それ以外のものを不要な物体OBJとして、これらの点を対象から除去する。以上により、対象となる豚ANに対応した三次元座標群のみが残る(図5参照)。
【0029】
次いでCPU7は、抽出した三次元座標群から豚ANの外形にかかる幾何学量を取得する。まず、図5を参照して、抽出した三次元座標群に基づいて、豚ANの全長Lを求める。全長Lは、豚ANを構成する点群のx座標のうち最大のxの値から最小の値を引いた値と定義する。次に、全長Lの中点Pで豚ANを二分割し、左側と右側とで表面積を求める。表面積は、抽出した三次元座標群における三点を結んだ三角形を形成してメッシュ化を行い、その三角形の面積を足し合わせたものとする。この時、例えば複数のショットに応じて面積の平均化を行うことで、ノイズなどの影響を抑えることができる。尚、メッシュ化については、例えば特開2013-096745号公報に記載されている。
【0030】
豚ANの場合、一般的には上半身の表面積よりも下半身の表面積の方が大きい。そこで、CPU7は、左側の表面積と右側の表面積とを比較し、大きい方(図5では向かって左側)を下半身として特定する。このようにして、豚ANの向きを特定することができる。
【0031】
別の方法として、曲率の積分値を用いる方法もある。ある点から所定の距離だけ離れた範囲に存在する点群を用いて最も載っている球面を規定し、その球面の半径を対象となったある点の曲率と定義すると、豚ANの点群データそれぞれに曲率が付与される。前記のように、豚ANの全長Lの中点Pで豚ANを二分割し、それぞれで曲率の積分値を算出する。一般的に、豚ANの場合、下半身の曲率の積分値よりも顔が含まれた上半身の曲率の積分値の方が大きいことから、曲率の積分値の小さい方(図5では向かって左側)を下半身として特定する。
【0032】
尚、豚ANの表面をメッシュ化する際の精度には、豚ANと体重推定装置1との撮像距離が大きく関与する。そこで、メッシュ化前にスムージング処理を行うことが望ましい。具体的には、メッシュ化する際には、撮像距離が近い場合、メッシュ化パラメータ(三角形を構成する点の探索距離)を小さくする一方、撮像距離が遠い場合、メッシュ化パラメータを遠くする補正を行うことで、適切なメッシュ化を行うことができる。
【0033】
本発明者が検討を行った結果では、幾何学量である豚ANの全長L、中点Pにおける豚の身の高さ、中点Pにおける胴体最大周長T、表面積Aのいずれを用いても、体重を推定することができることが分かっている。但し、豚ANの頭を除いた部分の身の表面積と、その体重との相関関係が最も確からしいことも分かっている。そこで、ここでは豚ANの下半身の表面積をパラメータとして用いて、その体重を推定することとする。尚、表面積としては、必ずしも中点Pから下半身の表面積と規定する必要は無く、頭の部分が含まれなければ良い。
【0034】
この推定に先行して、記憶部6は、一般的な豚の下半身の表面積と、その体重との相関関係を求めておく。例えば、図6に示すように、所定のサンプル数の豚の実測体重Wを縦軸に、対応する下半身の表面積Aを横軸に取ってプロットしたとき、この相関関係は回帰直線(回帰式)W=aA+bで近似できる。この係数a、bは、予め行った調査結果やシミュレーションで求めることができ、これらを記憶部6が記憶している。
【0035】
よって、CPU7が豚ANの下半身の表面積Aを算出したときに、回帰直線W=aA+bから、体重Wを精度良く求めることができる。求めた体重Wは、例えば図2に示すように、豚ANの画像と共に「123kg」などと表示部4に表示することができる。尚、上述したように、体重を推定する際には取得データの平均化を行うことが望ましい。
【0036】
一方、豚ANの下半身の表面積に加え、その他の幾何学量をパラメータとして用いることで、より精度の良い体重推定を行える。例えば胴体最大周長Tを更にパラメータとして用いた場合、より高精度に豚ANの体重を推定できる。
【0037】
かかる場合、豚の下半身の表面積Aと、胴体最大周長Tと、その体重Wとの相関関係を求めると、この相関関係は回帰直線W=aA+bT+cで表せる。かかる場合には、記憶部6は係数a、b、cを記憶する。
【0038】
この例では、CPU7が豚ANの下半身の表面積A及び胴体最大周長Tを算出したときに、回帰直線W=aA+bT+cから、体重Wを精度良く求めることができる。
【0039】
さらに、本発明者らの検討結果によれば、動物の特性に応じて、回帰直線の係数を変更すること望ましいこともわかっている。例えば、子豚の場合は、下半身の表面積に対する顔の表面積の割合が大きいが、成長するにつれて下半身の表面積に対する顔の表面積の割合が小さくなるよう体形が変化する。したがって豚の月齢に応じて、体重を推定するのに用いる回帰直線を異ならせれば、更に精度良く体重を推定できる。
【0040】
図7は、豚の下半身の表面積Aと、その実測体重Wとを対応付けてプロットしたデータを示しており、更に該データの回帰直線を重ねて示している。ここで豚の月齢が、A月未満のデータ群3Eと、A月以上、B月未満のデータ群3Dと、B月以上のデータ群3Cとで分けると、それぞれ回帰直線が以下の通り異なることが分かった。尚、体重Wの単位はkgであり、表面積Aの単位はcmである。
・月齢がA月未満の豚の回帰直線:W=0.5・A-47 (1)式
・月齢がA月以上、B月未満の豚の回帰直線:W=0.4・A-21 (2)式
・月齢がB月以上の豚の回帰直線:W=0.3・A+10 (3)式
【0041】
上述したように、体重推定装置1は、月齢の選択ボタンを設けることができる。豚は月齢に応じて区分けされて飼育されるので、飼育場所ごとにユーザーは選択ボタンのいずれかを選択できる。選択ボタンのいずれかが選択されると、体重推定装置1により豚の撮像を行うことで、CPU7は、操作された選択ボタンに対応する(1)式~(3)式の回帰直線のいずれかを選択する。更にCPU7は、選択された回帰直線に、得られた下半身の表面積を代入することで体重を精度よく推定できる。あるいは、体重推定装置1で撮影することで、全長等の幾何学量がわかるので、その値に応じて、データ群3C~3Eのいずれに含まれるかCPU7が判断し、自動的に適用する(1)式~(3)式を変えることもできる。
【0042】
また、体重推定装置1にUSB等のインタフェースを設け、外部のパソコンなどからCPU7にアクセスできるようにし、例えば記憶部6に、所望の回帰直線を任意のタイミング(工場出荷時やユーザー使用後など)で書き込みまたは変更できるようにしてもよい。
【0043】
以上の例では、体重を推定する豚の月齢に応じて回帰直線を変える例を示した。一方、豚の種類に応じて、回帰直線を変更することもできる。例えば、豚には、ランドレース、大ヨークシャー、デュロック、バークシャー、ハンプシャー、中ヨークシャーなどの種類があり、これらの種類ごとに体形も異なっている。そこで、これらの豚の種類ごとに、あらかじめ対応する回帰直線を求めておき、体重推定装置1に設けた選択ボタンでユーザーが選択するようにしてもよい。
【0044】
以上の実施形態では、幾何学量の変数が1つ(下半身の表面積)の回帰式で回帰直線を表す例を示したが、幾何学量の変数が2つ以上の重回帰式で表してもよい。また、回帰式は一次式に限らず多次式であっても良いし、その他の関数(指数関数、log関数、三角関数などの組み合わせ)であってもよい。
【0045】
さらに、同じ種類であっても、餌や環境によっても豚の成育状況が変わってくる。この場合、成育条件の違いは何通りもあるが、大きな括りでは、子豚から成豚まで同じ豚舎で飼育することから、豚舎により成育状況が異なるということができる。
【0046】
図8は、第1の豚舎で成育した豚の体長Lと、その実測体重Wとを対応付けてプロットしたデータを示しており、また該データの回帰直線を重ねて示している。また、図9は、第1の豚舎とは異なる第2の豚舎で成育した同じ月齢の豚の体長Lと、その実測体重Wとを対応付けてプロットしたデータを示しており、また該データの回帰直線を重ねて示している。ここでは、幾何学量として体長Lを用いて体重を推定する例を示す。
【0047】
図8に示すデータでは、回帰直線がW=0.1・L-8[(4式)]で表される。一方、図9に示すデータでは、回帰直線がW=0.2・L-132[(5式)]で表される。従って、同じ種類で且つ同じ月齢の豚であっても、体重を推定するために用いる回帰直線が異なることがわかる。
【0048】
そこで、体重推定装置1に、豚舎ごとの選択ボタンを設け、いずれの豚舎の豚を撮像したかをユーザーが選択ボタンにより選択できるようにする。その後、体重推定装置1により豚の撮像を行うことで、CPU7は、操作された選択ボタンに対応する(4)式又は(5)式の回帰直線のいずれかを選択し、体長Lから体重を精度よく推定できる。
【0049】
更に回帰直線を決めるファクターとして、豚のサイズがある。ここで、サイズとは、豚の足の太さなどのパーツのサイズ、或いは体長、体高のような全体サイズの場合もある。また、同じ豚舎においても、餌の種類を変える、餌の量を変える、というような場合、回帰直線が変わる可能性がある。また、豚舎の環境(温度やストレス要因)を変えることでも回帰直線が変わる可能性がある。
【0050】
したがって、回帰直線を決める特性としては、豚のサイズ、月齢、種類、成育される豚舎などが含まれ、更に回帰直線を決める特性としては、餌の種類、給餌方針、豚舎の環境(温度、湿度、風通しなど)が含まれる。
【0051】
本発明は、以上の実施の形態に限られない。例えば、体重推定装置1による撮像では、シャッター速度が1/60程度であることから、連続的に撮像を行って三次元情報群を取得し、各三次元情報群を平均化した三次元情報群を用いて体重Wを求めるか、各三次元情報群から得られる豚の下半身の表面積Aを平均化して1つの体重Wを求めるか、もしくは複数得られた体重Wを平均化して、これを推定体重として用いることもできる。
【0052】
又、以上の実施の形態では、体重を推定する動物として、豚を例に挙げたが、本実施の形態にかかる体重推定装置1による牛や馬などの体重を推定することができる。かかる場合、牛や馬などは豚とは体形が異なるので、異なる幾何学量をパラメータとして用いることが望ましい。このため、馬などは横向きの他、背後から撮像して、三次元情報群を取得することが望ましい。
【0053】
体重推定装置は、前記情報取得装置から出力された信号に基づき、動物を含む被写体の画像を表示する画面を備えた表示装置と、前記画面に表示された動物を、体重推定対象として選択する選択装置と、をさらに有し、前記情報取得装置は、前記選択装置により選択された動物の前記三次元情報を取得すると好ましい。
【0054】
体重推定装置において、前記選択装置は、前記表示装置の画面に識別マークを表示し、前記識別マークに重ねて表示される動物を、前記体重推定対象として選択すると好ましい。
【0055】
体重推定装置において、前記識別マークは複数としてもよい。
【0056】
体重推定装置において、前記演算装置は、前記画面内に表示された、前記選択装置が選択した動物以外の被写体について、前記三次元情報を用いないと好ましい。
【0057】
体重推定装置において、前記情報取得装置は、ワンショット型3Dスキャナであり、所定の時間内で複数のショットを行い、前記演算装置は、複数のショットで得られた複数の三次元情報を平均化した平均三次元情報に基づき、前記動物の外形の幾何学量を演算すると好ましい。
【0058】
体重推定装置において、前記情報取得装置は、ワンショット型3Dスキャナであり、所定の時間内で複数のショットを行い、前記演算装置は、複数のショットで得られた複数の三次元情報に基づき、複数の前記動物の外形の幾何学量を演算し、前記計量装置は、前記動物の外形の幾何学量を平均化した平均幾何学量に基づいて、撮像した前記動物の体重を推定すると好ましい。
【0059】
体重推定装置において、前記情報取得装置は、ワンショット型3Dスキャナであり、所定の時間内で複数のショットを行い、前記演算装置は、複数のショットで得られた複数の三次元情報に基づき、複数の前記動物の外形の幾何学量を演算し、前記計量装置は、複数の前記動物の外形の幾何学量に基づいて、撮像した前記動物の体重を複数個求め、これらを平均化した体重を推定体重とすると好ましい。
【符号の説明】
【0060】
1 体重推定装置
2 筐体部
3 操作部
3a 電源スイッチ
3b レリーズボタン
4 表示部
5 撮像部
6 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9