(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060307
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】ナノリグノセルロース組成物およびこれらの組成物を生成するプロセス
(51)【国際特許分類】
D21H 11/18 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
D21H11/18
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023036412
(22)【出願日】2023-03-09
(62)【分割の表示】P 2019570562の分割
【原出願日】2018-06-22
(31)【優先権主張番号】62/523,293
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/014,589
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519448038
【氏名又は名称】エーピーアイ インテレクチュアル プロパティー ホールディングス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,キンバリー
(72)【発明者】
【氏名】レツィーナ,テオドラ
(57)【要約】
【課題】技術分野には、弱いセルロース繊維の強度を高め、紙、中芯原紙パルプ、およびパルプ生成物の特定の特性を改善する必要性もある。
【解決手段】
いくつかの変形は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、35重量%~80重量%のセルロースナノフィブリル、セルロースミクロフィブリル、またはこれらの組み合わせ、15重量%~45重量%のリグニン、および5重量%~20重量%のヘミセルロースを含む、新たなナノリグノセルロース組成物を提供する。ヘミセルロースは、主成分としてキシランまたはマンナンを含有し得る。新規特性は、原バイオマスの高ヘミセルロース含有量と従来のナノセルロースの低ヘミセルロース含有量との間の中間であるヘミセルロース含有量に起因する。ナノリグノセルロース組成物は、リグニンの存在のために疎水性である。ナノリグノセルロース組成物を作製および使用するためのプロセスも記載される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約35重量%~約80重量%のセルロースナノフィブリル、セルロースミクロフィブリル、またはこれらの組み合わせ、約15重量%~約45重量%のリグニン、および約5重量%~約20重量%のヘミセルロースを含む、ナノリグノセルロース組成物。
【請求項2】
前記組成物が、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約40重量%~約70重量%のセルロースナノフィブリル、セルロースミクロフィブリル、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のナノリグノセルロース組成物。
【請求項3】
前記組成物が、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約45重量%~約60重量%のセルロースナノフィブリル、セルロースミクロフィブリル、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のナノリグノセルロース組成物。
【請求項4】
前記組成物が、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約20重量%~約40重量%のリグニンを含む、請求項1に記載のナノリグノセルロース組成物。
【請求項5】
前記組成物が、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約25重量%~約35重量%のリグニンを含む、請求項1に記載のナノリグノセルロース組成物。
【請求項6】
前記組成物が、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約7重量%~約15重量%のヘミセルロースを含む、請求項1に記載のナノリグノセルロース組成物。
【請求項7】
前記組成物が、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約8重量%~約14重量%のヘミセルロースを含む、請求項1に記載のナノリグノセルロース組成物。
【請求項8】
前記ヘミセルロースが、主成分としてキシランを含有する、請求項1に記載のナノリグノセルロース組成物。
【請求項9】
前記ヘミセルロースが、主成分としてマンナンを含有する、請求項1に記載のナノリグノセルロース組成物。
【請求項10】
前記ナノリグノセルロース組成物が、100分未満での少なくとも99%濾過完了を特徴とする、請求項1に記載のナノリグノセルロース組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のナノリグノセルロース組成物を含有するパルプ生成物または紙製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権データ
この国際特許出願は、2017年6月22日に出願された、米国仮特許出願第62/523,293号、および2018年6月21日に出願された、米国特許出願第16/014,589号の優先権を主張し、この各々は本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般的には、ナノセルロース、およびリグノセルロースバイオマスを分画し、セルロース画分をさらに加工することによって生成される関連材料に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオマス精製(またはバイオリファイニング)は、産業においてより普及してきている。セルロース繊維および糖類、ヘミセルロース糖類、リグニン、合成ガス、ならびにこれらの中間体の誘導体は、化学および燃料生産に活用されている。実際に、我々は現在、石油製油所が現在原油を加工するのとほぼ同じように、入ってくるバイオマスを加工することができる統合バイオリファイナリーの商業化を観察している。十分に活用されていないリグノセルロースバイオマス原料は、石油よりもずっと安く、炭素ベースであり、かつ環境ライフサイクルの観点からずっと良好である可能性を有する。
【0004】
リグノセルロースバイオマスは、地球上で最も豊富な再生可能材料であり、化学製品、燃料、および材料を製造するための潜在的な原料として長く認識されている。リグノセルロースバイオマスは通常、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンを主に含む。セルロースおよびヘミセルロースは、糖類の天然ポリマーであり、リグニンは、バイオマスネットワーク全体を補強する芳香族/脂肪族炭化水素ポリマーである。バイオマスのいくつかの形態(例えば、再生材料)は、ヘミセルロースを含有しない。
【0005】
地球上で最も入手可能な天然ポリマーであるにもかかわらず、セルロースが、ナノ結晶セルロース(NCC)、ナノフィブリルセルロース(NFC)、およびバクテリアセルロース(BC)形態の、ナノ構造材料として注目を集めたのはごく最近である。ナノセルロースは、ポリマー強化、抗微生物フィルム、生分解性食品包装、印刷紙、顔料およびインク、紙および板紙包装、バリアフィルム、接着剤、バイオコンポジット、創傷治癒、医薬品および薬物送達、織物、水溶性ポリマー、建設材料、輸送産業の再生利用可能な内部および構造成分、レオロジー変性剤、低カロリー食品添加剤、化粧品増粘剤、医薬錠剤結合剤、生物活性紙、エマルジョンのためのピッカリング安定剤および粒子安定化フォーム、塗料製剤、光交換のためのフィルム、ならびに洗浄剤などの広範囲の用途における使用のために開発されている。
【0006】
バイオマス由来のパルプは、機械加工によってナノセルロースに変換され得る。プロセスは単純であり得るが、不利点としては、高いエネルギー消費、激しい機械処理による繊維および粒子の損傷、ならびにフィブリル直径および長さの広範な分布が挙げられる。
【0007】
技術分野では、低減したエネルギーコストでバイオマスからナノセルロースを生成するための改善したプロセスが必要とされる。また、ナノセルロースを生成するための技術分野では、改善した出発材料(すなわち、バイオマス由来のパルプ)が必要とされる。いくつかの用途について、高い疎水性を有するナノセルロースを生成することが望ましい。
【0008】
技術分野には、弱いセルロース繊維の強度を高め、紙、中芯原紙パルプ、およびパルプ生成物の特定の特性を改善する必要性もある。
【発明の概要】
【0009】
いくつかの変形は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約35重量%~約80重量%のセルロースナノフィブリル、セルロースミクロフィブリル、またはこれらの組み合わせ、約15重量%~約45重量%のリグニン、および約5重量%~約20重量%のヘミセルロースを含む、ナノリグノセルロース組成物を提供する。ヘミセルロースは、主成分としてキシランまたはマンナンを含有し得る。
【0010】
特定の実施形態では、組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約40重量%~約70重量%のセルロースナノフィブリル、セルロースミクロフィブリル、またはこれらの組み合わせを含む。
【0011】
特定の実施形態では、組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約45重量%~約60重量%のセルロースナノフィブリル、セルロースミクロフィブリル、またはこれらの組み合わせを含む。
【0012】
特定の実施形態では、組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約20重量%~約40重量%のリグニンを含む。
【0013】
特定の実施形態では、組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約25重量%~約35重量%のリグニンを含む。
【0014】
特定の実施形態では、組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約7重量%~約15重量%のヘミセルロースを含む。
【0015】
特定の実施形態では、組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約8重量%~約14重量%のヘミセルロースを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、当該ナノリグノセルロース組成物は、100分未満での少なくとも99%濾過完了(例えば、100%完了)を特徴とする。
【0017】
本発明はまた、開示のナノリグノセルロース組成物を含有するパルプ生成物または紙製品を提供する。
【0018】
いくつかの変形は、ナノリグノセルロース組成物を生成するためのプロセスを提供し、プロセスは、
(a)リグノセルロースバイオマス原料を提供することと、
(b)原料を消化室において有効な反応条件下で蒸気および/または熱水を含む反応溶液で消化して、セルロースに富む固体、ヘミセルロース、およびリグニンを含有する消化ストリームを生成することと、
(c)任意にセルロースに富む固体を洗浄して、セルロースに富む固体からヘミセルロースオリゴマーの少なくとも一部分および/またはリグニンの少なくとも一部分を除去することと、
(d)セルロースに富む固体を機械的に処理して、セルロースナノフィブリルおよび/またはセルロースナノ結晶、ヘミセルロース、ならびにリグニンを含有するナノリグノセルロース組成物を形成することと、
(e)ナノリグノセルロース組成物を回収することと、を含む。
【0019】
いくつかのプロセスでは、ナノリグノセルロース組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約35重量%~約80重量%のセルロースナノフィブリル、セルロースミク
ロフィブリル、またはこれらの組み合わせ、約15重量%~約45重量%のリグニン、および約5重量%~約20重量%のヘミセルロースを含む。
【0020】
いくつかのプロセスでは、ナノリグノセルロース組成物は、100分未満での少なくとも99%濾過完了を特徴とする。
【0021】
プロセスは、ナノリグノセルロース組成物を含有するパルプ生成物または紙製品をさらに含み得る。例えば、ナノリグノセルロース組成物は、紙製品を製造するために抄紙機に供給され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】バイオマスの熱水抽出から生成された材料を精製および均質化することによって、実験的に生成された例示的なナノセルロースのSEM画像である。
【
図1B】バイオマスの熱水抽出から生成された材料を精製および均質化することによって、実験的に生成された例示的なナノセルロースのSEM画像である。
【
図1C】バイオマスの熱水抽出から生成された材料を精製および均質化することによって、実験的に生成された例示的なナノセルロースのSEM画像である。
【
図2】実施例1で生成された洗浄されたナノリグノセルロースの40倍に拡大した光学顕微鏡写真である。
【
図3】実施例2で生成された洗浄されたナノリグノセルロースの40倍に拡大した光学顕微鏡写真である。
【
図4】従来技術のKraftパルプと比較した実施例2のナノリグノセルロースの濾過速度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この説明は、当業者が本発明を作製および使用することを可能にし、これは本発明のいくつかの実施形態、適合、変形、代替、および使用について記載する。本発明のこれらおよび他の実施形態、特徴、および利点は、任意の添付の図面と共に本発明の以下の詳細な説明を参照して考慮される場合、当業者にはより明らかとなるであろう。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、別段に文脈で明確な指示がない限り、複数の参照物を含む。別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。パーセンテージに基づく全ての組成物数および範囲は、別段に指示されない限り、重量パーセンテージである。全範囲の数または条件は、任意の好適な小数点に丸められた範囲内に含まれる任意の特定の値を包含することを意味する。
【0025】
別段に指示がない限り、明細書および特許請求の範囲で使用されるパラメータ、反応条件、成分の濃度などを表す全ての数は、「約」という用語によって全ての事例において修正されているものと理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、少なくとも特定の分析技法に応じて変動し得る近似値である。
【0026】
「~を含む(including)」、「~を含有する」、または「~を特徴とする」と同義である「~を含む(comprising)」という用語は、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。「~を含む」は、指名された請求項要素は必須であるが、他の請求項要素を追加してもよく、依然として特許請求の範囲内の構成体を形成することを意味する、請求項の記載に使用される専門用語である。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「~からなる」という句は、特許請求の範囲において特定されていない任意の要素、ステップ、または成分を除外する。「~からなる」という句(またはその変形)が、プリアンブル直後ではなく、請求項の主体の条項に出現する場合、これはその条項に記載される要素のみを限定し、他の要素は全体として請求項から除外される。本明細書で使用されるとき、「~から本質的になる」という句は、特許請求の範囲を特定の要素または方法ステップ、ならびに特許請求の主題の基礎および新規特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。
【0028】
「~を含む」、「~からなる」、および「~から本質的になる」とい用語に関して、本明細書においてこれらの3つの用語のうちの1つが使用される場合、本開示および特許請求の主題は、他の2つの用語のいずれかの使用を含み得る。よって、別段に明示的に列挙されないいくつかの実施形態では、「~を含む」の任意の例は、「~からなる」または、あるいは、「~から本質的になる」によって置換され得る。
【0029】
いくつかの変形は、リグノセルロースバイオマスをナノセルロースまたはナノリグノセルロースに変換するための驚くほど単純なプロセスの発見に基づいている。バイオマスは、分解ヘミセルロースへの蒸気または熱水浸漬に供され得る。このステップに続いて、セルロースに富む(およびリグニンに富む)固体の機械的精製が行われる。
【0030】
いくつかの変形は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約35重量%~約80重量%のセルロースナノフィブリル、セルロースミクロフィブリル、またはこれらの組み合わせ、約15重量%~約45重量%のリグニン、および約5重量%~約20重量%のヘミセルロースを含む、ナノリグノセルロース組成物を提供する。
【0031】
様々な実施形態では、ナノリグノセルロース組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約(または少なくとも約、または多くとも約)30、35、40、45、50、55、60、65、75、75、80、85、または90重量%のセルロースナノフィブリル、セルロースミクロフィブリル、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0032】
様々な実施形態では、ナノリグノセルロース組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約(または少なくとも約、または多くとも約)10、15、20、25、30、35、40、45、または50重量%のリグニンを含み得る。
【0033】
様々な実施形態では、ナノリグノセルロース組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約(または少なくとも約、または多くとも約)2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20重量%のヘミセルロースを含み得る。ヘミセルロースは、主成分としてキシランまたはマンナンを含有し得る。
【0034】
「絶乾、無灰、および無アセチル基準」は、列挙される濃度が(i)例えば、糖ポリマーに、化学的に含有されるH-OH基を含まない、任意の水を絶対的に含まず、(ii)疎性灰(例えば、砂または塵)および結合灰(例えば、固体から容易に抽出されない金属酸化物)の両方を含む、任意の灰を含まず、(iii)ヘミセルロース成分に結合したアセチル基、またはアセチル基から誘導される遊離酢酸であることを意味する。
【0035】
特定の実施形態では、組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約40重量%~約70重量%のセルロースナノフィブリル、セルロースミクロフィブリル、またはこれらの組み合わせを含む。
【0036】
特定の実施形態では、組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約45重量%~約60重量%のセルロースナノフィブリル、セルロースミクロフィブリル、またはこれらの組み合わせを含む。
【0037】
特定の実施形態では、組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約20重量%~約40重量%のリグニンを含む。
【0038】
特定の実施形態では、組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約25重量%~約35重量%のリグニンを含む。
【0039】
特定の実施形態では、組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約7重量%~約15重量%のヘミセルロースを含む。
【0040】
特定の実施形態では、組成物は、絶乾、無灰、および無アセチル基準で、約8重量%~約14重量%のヘミセルロースを含む。
【0041】
ナノリグノセルロース組成物は、例えば、水分として、または固体のスラリーにおいて、水を含有し得る。ナノリグノセルロース組成物は、(湿量基準であるが)無灰および無アセチル基準で、少なくとも約(または少なくとも約、または多くとも約)5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90重量%以上の水を含有し得る。
【0042】
ナノリグノセルロース組成物は、灰を含有し得る。ナノリグノセルロース組成物は、絶乾および無アセチル基準で、少なくとも約(または少なくとも約、または多くとも約)0.1、0.5、1、2、3、4、5重量%以上の灰を含有し得る。
【0043】
ナノリグノセルロース組成物は、アセチル基を含有し得る。ナノリグノセルロース組成物は、絶乾および無灰基準で、少なくとも約(または少なくとも約、または多くとも約)0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0重量%以上のアセチル含有量を含有し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、当該ナノリグノセルロース組成物は、100分未満での少なくとも99%濾過完了(例えば、100%完了)を特徴とする。
【0045】
本発明はまた、開示のナノリグノセルロース組成物を含有するパルプ生成物または紙製品を提供する。
【0046】
いくつかの変形では、製紙工場は、ナノリグノセルロースを共生成し、この材料を、より強いシート、もしくはより滑らかなシートを作製するか、または最終紙製品のより安価な供給を可能にする手段として、それら自体の供給に戻す。いくつかの実施形態では、ナノリグノセルロースは、そのミルまたは近くのミルでのサイドラインオペレーションとして、既存の低コンシステンシー精製機を使用して生成される。得られたナノリグノセルロースの少なくともいくらかは、ブレンドに戻される。
【0047】
この概念は、パルプを生成する主原料としてより低コストの木質を使用する能力をもたらし得る。多くの製紙工場は、強度およびシート形成/滑らかさの望ましい組み合わせを達成するために硬材および軟材のブレンドを使用する。より高コストの原料を置換することに加えて、ナノリグノセルロースは、抄紙機の歩留向上剤として作用し得る。よって、抄紙機は、歩留向上剤の機能および同材料(ナノリグノセルロース)からのシート強度を活用し得る。
【0048】
本発明の原理は、ケミカル(例えば、AVAP(登録商標)、クラフト、またはサルファイト)、メカニカル、サーモメカニカル、ケミサーモメカニカル、ハイドロサーマル-メカニカル(例えば、GreenBox+(登録商標)またはGP3+(商標))、または他のタイプのパルピングを含む、任意のタイプのパルプまたはミルに適用され得る。ケミカルパルピングは、一般的には、リグニンおよびヘミセルロースを小さな水溶性分子に分解し、これはセルロース繊維を脱重合することなくセルロース繊維から洗浄することができる。AVAP(登録商標)パルピングは、有意な糖分解なしにリグニンおよびヘミセルロースを除去し、全ての主成分(セルロース、ヘミセルロース、およびリグニン)を回収することを可能にする。砕木および精製機メカニカルパルピングなどの様々なメカニカルパルピング方法は、セルロース繊維を互いに物理的に引裂く。かなりのリグニンは、繊維に付着したままである。繊維は切断され得るので、強度は損なわれる。関連ハイブリッドパルピング方法は、短縮されたケミカルパルピングプロセスを開始する化学および熱処理と、続いて繊維を分離する機械処理との組み合わせを使用する。これらのハイブリッド方法は、サーモメカニカルパルピングおよびケミサーモメカニカルパルピングを含む。化学および熱処理は、機械処理によってその後必要とされるエネルギーの量を低減し、また繊維によって経験される強度喪失の量を低減する。
【0049】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、サーモメカニカルパルプミルまたはハイドロサーマル-メカニカルパルプミルに適用される。
【0050】
いくつかの実施形態では、通常のパルピングオペレーションから生成されるサーモメカニカルまたはハイドロサーマル-メカニカルパルプのいくらかは、ナノセルロース粒子(例えば、セルロースナノフィブリル)を生成するサーモメカニカルまたはハイドロサーマル-メカニカルパルプの機械精製が関与する、サイドラインナノセルロース生成オペレーションに送られる。2016年9月28日に出願され、「PROCESSES FOR PRODUCING NANOCELLULOSE, AND NANOCELLULOSE COMPOSITIONS PRODUCED THEREFROM」と題された共同所有の米国特許出願第15/278,800号は、いくつかの実施形態における、サーモメカニカルまたはハイドロサーマル-メカニカルパルプをナノセルロースに変換するその教示について、本明細書に参照により組み込まれる。
【0051】
いくつかの変形では、ナノセルロースは、得られる複合体が意図される用途に必要な強度特性を満たすか、または超えるように、不十分な強度特性を有する中芯原紙パルプに添加され得る。これらの実施形態の原理は、中芯原紙またはナノセルロースの任意の特定の源には限定されないが、好ましい実施形態は、(GreenBox+(登録商標)技術として知られる)蒸気または熱水抽出によって生成された中芯原紙を、(AVAP(登録商標)技術として知られる)バイオマスの酸性溶媒分別によって得られたパルプを精製することによって生成されたナノセルロースと組み合わせる。
【0052】
いくつかの好ましい実施形態では、出発バイオマスの蒸気抽出または熱水抽出が使用され、パルプが生成され、これは次いで精製され、任意に洗浄されて、中芯原紙パルプが生成される。様々な実施形態における、中芯原紙パルプを生成する例示的なプロセス条件については、本明細書に参照により組み込まれる、2013年10月2日に出願された(2014年4月10日にUS20140096922A1として公開された)共同所有の米国特許出願第14/044,784号を参照されたい。
【0053】
いくつかの実施形態では、出発バイオマスの熱水抽出が使用され、パルプが生成され、これは次いで精製されてナノリグノセルロースを生成する。本明細書で意図されるとき、「ナノリグノセルロース」は、実質的な量のリグニンおよびヘミセルロースと密接に(すなわち、化学的におよび/または物理的に)会合したセルロースの粒子を含有する材料である。(ナノリグノセルロース粒子内の)セルロースは、ナノフィブリルおよび/またはミクロフィブリルを含み得る。(ナノリグノセルロース粒子内の)リグニンのパーセンテージは、通常少なくとも約20重量%であり、(ナノリグノセルロース粒子内の)ヘミセルロースのパーセンテージは、通常少なくとも約5重量%である。特定の実施形態は、本明細書に参照によって組み込まれる、2016年8月25日にUS20160244788として公開された、共同所有の米国特許出願第15/047,608号に記載される熱水消化および/または精製を使用する。
【0054】
有効な熱水抽出条件は、リグノセルロースバイオマスを(様々な圧力で飽和、過熱、または過飽和形態の)蒸気および/または熱水と接触させることを含み得る。いくつかの実施形態では、HWEステップは、約140~220℃、例えば、約150℃、160℃、170℃、175℃、180℃、185℃、190℃、200℃、または210℃の温度で液体熱水を使用して行われる。いくつかの実施形態では、HWEステップは、約1分~約60分、例えば、約2、2.5、3、3.5、4、5、7.5、10、12.5、15、20、25、30、35、40、45、50、または55分の滞留時間で液体熱水を使用して行われる。
【0055】
特定の実施形態では、リグニンでコーティングされたナノセルロース(好ましくはリグニンでコーティングされたセルロースナノフィブリル)が中芯原紙パルプに添加される。理論によって限定されることなく、ナノフィブリル中のリグニンは、中芯原紙の耐湿性を強化し得る。リグニンでコーティングされたナノセルロースの生成を以下に詳細に記載する。いくつかの実施形態では、リグニンは、プレス中に繊維間のボイドを充填する。
【0056】
周知の技法を使用して、中芯原紙生成物は、(ナノセルロースで)変性された中芯原紙パルプから生成され得る。例えば、Twede and Selke,“Cartons, crates and corrugated board:handbook of paper and wood packaging technology,”DEStech Publications,pages 41-56,2005、およびFoster,“Boxes, Corrugated” in The Wiley Encyclopedia of Packaging Technology,1997,eds.Brody A and Marsh K,2nd ed.を参照されたい。
【0057】
本明細書で意図されるとき、「ナノセルロース」は、これらに限定されないが、ミクロフィブリル化セルロース(またはセルロースミクロフィブリル)、ナノフィブリル化セルロース(またはセルロースナノフィブリル)、微結晶セルロース、ナノ結晶セルロース、および粒子化またはフィブリル化溶解パルプを含む、広範囲のセルロース材料を含むように広く定義される。典型的には、本明細書で提供されるナノセルロースは、ナノメートルスケールの少なくとも1つの長さ寸法(例えば、直径)を有する粒子を含むであろう。
【0058】
「ナノフィブリル化セルロース」または同等に「セルロースナノフィブリル」は、ナノメートルサイズの粒子もしくは繊維、またはミクロンサイズおよびナノメートルサイズの粒子もしくは繊維を含有するセルロース繊維または領域を意味する。「ナノ結晶セルロース」または同等に「セルロースナノ結晶」は、ナノメートルサイズのドメイン、またはミクロンサイズおよびナノメートルサイズのドメインを含有するセルロース粒子、領域、または結晶を意味する。「ミクロンサイズ」は1μm~100μmを含み、「ナノメートルサイズ」は0.01nm~1000nm(1μm)を含む。(長繊維を含む)より大きなドメインもこれらの材料中に存在し得る。
【0059】
本発明の特定の例示的な実施形態をここで説明する。これらの実施形態は、特許請求される本発明の範囲を限定することを意図していない。ステップの順序は様々であり得、いくつかのステップは省略され得、および/またはステップは追加され得る。第1のステップ、第2のステップなどへの本明細書における参照は、いくつかの実施形態を例示する目的のみのためのものである。
【0060】
いくつかの変形は、セルロースおよびナノリグノセルロースを含むパルプ生成物を提供し、ナノセルロースは、セルロースナノフィブリルおよび/またはセルロースナノ結晶を含み、ナノリグノセルロースは、セルロースを生成するパルピングプロセスとは別のステップにおいてセルロースから誘導される。
【0061】
いくつかの実施形態では、パルピングプロセスは、サーモメカニカルパルピングまたはハイドロサーマル-メカニカルパルピングである。パルプ生成物は、紙または紙とは異なる構造物(例えば、ボックス、パネル、エンジニアドウッドなど)であり得る。
【0062】
好ましい実施形態では、パルプ生成物は、ナノリグノセルロースを含まないそうでなければ同一のパルプ生成物よりも強い。いくつかの実施形態では、パルプ生成物は、ナノリグノセルロースを含まないそうでなければ同一のパルプ生成物よりも滑らかである。
【0063】
パルピングプロセスは、特定の実施形態では、サーモメカニカルパルピングであり、ナノリグノセルロースは、セルロース、リグニン、およびヘミセルロースを含有するナノフィブリルから本質的になる。ナノフィブリルは、サーモメカニカルパルピングから(有意な量のリグニンおよびヘミセルロースを有する)セルロース前駆体を機械的に精製することによって生成され得る。
【0064】
他の変形は、セルロースパルプおよびナノリグノセルロースを含む中芯原紙パルプ組成物を提供し、ナノリグノセルロースは、疎水性ナノフィブリルを含む。いくつかの実施形態では、ナノリグノセルロースは、乾量基準で組成物の少なくとも0.1重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、5重量%、または10重量%の濃度で存在する。特定の実施形態では、ナノリグノセルロースは、パルプ供給の有意な部分、すなわち、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%以上である。
【0065】
中芯原紙パルプ組成物のいくつかの実施形態では、セルロースパルプは、メカニカルパルプまたはサーモメカニカルパルプ(例えば、GreenBox+(登録商標)パルプ)である。いくつかの実施形態では、セルロースパルプは、ケミカルパルプ(例えば、AVAP(登録商標)、クラフト、サルファイト、またはソーダパルプ)である。
【0066】
いくつかの実施形態では、プロセスは、中芯原紙パルプ組成物から中芯原紙生成物を生成することをさらに含む。第1の量のリグノセルロースバイオマスおよび第2の量のリグノセルロースバイオマスは、バイオマスの同じ源またはバイオマスの異なる源からのものであり得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、ナノリグノセルロースは、リグニン含有疎水性セルロースである。いくつかまたは他の実施形態では、ナノリグノセルロースは、主にナノフィブリル、ミクロフィブリル、またはこれらの組み合わせの形態である。
【0068】
いくつかの実施形態では、開示されるプロセスを実施するためのシステムが提供される。システムは、第1の場所で第1のパルプを生成する第1のサブシステム、および第1の場所とは異なる第2の場所でナノリグノセルロースを生成する第2のサブシステムを含み得る。最終生成物の生成は、第1もしくは第2のサブシステムのうちの1つ、または別の場所で行われ得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、ナノリグノセルロースは、硬材、軟材、農業廃棄物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるバイオマス源から誘導される。
【0070】
いくつかの実施形態では、ナノリグノセルロースは、バイオマスを酸、リグニンの溶媒、および水の存在下で分別して、セルロースに富む固体および液相を生成することと、次いでセルロースに富む固体を機械的に精製して、ナノリグノセルロースを生成することから得られる。特定の実施形態では、酸は二酸化硫黄であり、溶媒はエタノールである。特定の実施形態では、セルロース繊維を強化するためのナノリグノセルロースを作製するためにAVAP(登録商標)プロセスが使用される。
【0071】
「強化すること」は、様々な実施形態において、単純混合、研削、粉砕、撹拌、堆積/乾燥、または他の処理によって達成することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、方法は、セルロース繊維から単繊維生成物を生成することをさらに含む。これらまたは他の実施形態では、方法は、セルロース繊維から複合体を生成することをさらに含む。弱い繊維のナノリグノセルロースでの強化は、複合および単繊維生成物、ならびに他の生成物において強度を増加させることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、生成物がまずセルロース繊維から作製され、次いで(パルプではない)生成物がナノリグノセルロースで強化される。これらの実施形態では、望ましい場合、強化は、例えば、バルク生成物または選択された表面もしくは領域に行うことができる。
【0074】
バイオマス原料は、硬材、軟材、森林残渣、ユーカリ、産業廃棄物、パルプおよび紙廃棄物、消費者廃棄物、またはこれらの組み合わせから選択され得る。いくつかの実施形態は、食用作物、一年草、エネルギー作物、またはたは他の毎年再生可能な原料と関連したリグノセルロースバイオマスを含む、農業廃棄物を活用する。例示的な農業廃棄物としては、これらに限定されないが、トウモロコシ茎葉、トウモロコシ繊維、小麦わら、サトウキビバガス、サトウキビわら、稲わら、エンバクわら、大麦わら、ススキ、エネルギーケーンわら/残渣、またはこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書に開示されるプロセスは、原料柔軟性から恩恵を受け、これは広範囲のセルロース含有原料に有効である。
【0075】
本明細書で使用される場合、「リグノセルロースバイオマス」は、セルロース、リグニン、およびヘミセルロースを含有する任意の材料を意味する。1つ以上のタイプのバイオマスの混合物を使用することができる。いくつかの実施形態では、バイオマス原料は、リグノセルロース成分(例えば、上記のもの)と、加えてスクロース含有成分(例えば、サトウキビまたはエネルギーケーン)および/またはデンプン成分(例えば、トウモロコシ、小麦、稲など)との両方を含む。様々な水分レベルは、出発バイオマスと関連付けられ得る。バイオマス原料は、そうである必要はないが、比較的乾燥していることがある。一般的には、バイオマスは、微粒子またはチップの形態であるが、粒子サイズは本発明では重要ではない。
【0076】
いくつかの実施形態では、セルロースに富む固体は、セルロースに富む固体の1トンあたり約5000キロワット-時間未満、例えば、セルロースに富む固体の1トンあたり約4000、3000、2000、または1000キロワット-時間未満の全機械エネルギーで処理される。エネルギー消費は、任意の他の好適なユニットで測定され得る。機械処理装置を駆動するモーターによって引き込まれる電流を測定する電流計は、全機械エネルギーの推定値を得る1つの方法である。
【0077】
機械処理は、決してこれらに限定されないが、粉砕、研削、打延、音波処理、またはセルロースにおいてナノフィブリルおよび/もしくはナノ結晶を形成もしくは放出する任意の他の手段などの1つ以上の既知の技法を使用し得る。本質的には、繊維をフィブリルに物理的に分離する任意のタイプのミルまたは装置が活用され得る。そのようなミルは、産業において周知であり、限定なしに、Valleyビーター、シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー、広角および狭角の両方を含む、コニカルリファイナー、シリンドリカルリファイナー、ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、ならびに他の類似する粉砕または研削装置を含む。例えば、Smook,Handbook for Pulp & Paper Technologists,Tappi Press,1992、およびHubbe et al.,“Cellulose Nanocomposites:A Review,”BioResources 3(3),929-980(2008)を参照されたい。
【0078】
機械処理の程度は、いくつかの手段のいずれかによってプロセス中に監視され得る。特定の光学機器は、繊維長さ分布および細粒分%に関する連続データを提供することができ、そのいずれかは、機械処理ステップのエンドポイントを定義するために使用され得る。時間、温度、および圧力は、機械処理中に変動し得る。例えば、いくつかの実施形態では、周囲温度および圧力で、約5分~2時間の時間にわたる音波処理が活用され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、セルロースに富む固体の一部分は、ナノフィブリルに変換される一方で、セルロースに富む固体の残部は、フィブリル化されない。様々な実施形態では、セルロースに富む固体の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または実質的に全てが、ナノフィブリルにフィブリル化される。いくつかの実施形態では、ナノフィブリルの一部分は、ナノ結晶に変換される一方で、ナノフィブリルの残部は、ナノ結晶に変換されない。乾燥中、いくつかのナノ結晶はまた一緒になり、ナノフィブリルを形成することが可能である。
【0080】
機械処理後、ナノセルロース材料は、粒子サイズによって分類され得る。材料の一部分は、グルコースを生成する酵素加水分解などの別のプロセスに供され得る。そのような材料は、例えば、良好な結晶度を有し得るが、所望の粒子サイズまたは重合度を有さないこともある。
【0081】
プロセスは、セルロースに富む固体の1つ以上の酵素または1つ以上の酸での処理をさらに含み得る。酸が使用される場合、それらは、二酸化硫黄、亜硫酸、リグノスルホン酸、酢酸、ギ酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。酢酸またはウロン酸などのヘミセルロースと会合した酸が、単独で、または他の酸と共に使用され得る。また、プロセスは、セルロースに富む固体の熱での処理を含み得る。いくつかの実施形態では、プロセスは、酵素または酸を使用しない。
【0082】
酸が使用される場合、酸は、例えば、硫酸、硝酸、またはリン酸などの強酸であり得る。弱酸は、より過酷な温度および/または時間下で使用され得る。セルロース(すなわち、セルラーゼ)および場合によってはヘミセルロース(すなわち、ヘミセルラーゼ活性で)を加水分解する酵素が、酸の代わりに、または潜在的には酸性加水分解前もしくは後の順次構成においてのいずれかで使用され得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、プロセスは、セルロースに富む固体を酵素的に処理して非晶質セルロースを加水分解することを含む。他の実施形態では、または酵素処理前もしくは後に順次、プロセスは、セルロースに富む固体を酸処理して非晶質セルロースを加水分解することを含み得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、プロセスは、結晶セルロースを酵素的に処理することをさらに含む。他の実施形態では、または酵素処理前もしくは後に順次、プロセスは、結晶セルロースを酸処理することをさらに含む。
【0085】
望ましい場合、機械処理の前に、または場合によってはこれと同時に、酵素処理が使用され得る。しかしながら、好ましい実施形態では、ナノ繊維の単離前に非晶質セルロースを加水分解するか、または繊維壁の構造を弱めるために酵素処理は必要ない。
【0086】
機械処理後、ナノリグノセルロースが回収され得る。セルロースナノフィブリルおよび/またはナノ結晶の分離は、ナノフィブリルの完全性を維持しながら細胞壁の超微細構造を崩壊させることができる装置を使用して達成され得る。例えば、ホモジナイザーが使用され得る。いくつかの実施形態では、1~100nm幅の範囲の成分フィブリルを有するセルロース凝集体フィブリルが回収され、フィブリルは互いに完全に分離していない。
【0087】
いくつかの実施形態では、ナノリグノセルロース材料は、約10~約1000、例えば、約15、20、25、35、50、75、100、150、200、250、300、400、または500の粒子の平均長さ対幅アスペクト比を特徴とする。ナノフィブリルは、一般的には、ナノ結晶よりも高いアスペクト比と関連付けられる。例えば、ナノ結晶は、約100nm~500nmの長さ範囲および約1~10nmの直径を有し得る。ナノフィブリルは、40~400のアスペクト比に換算される、約2000nmの長さおよび5~50nmの直径範囲を有し得る。いくつかの実施形態では、アスペクト比は、50未満、45未満、40未満、35未満、30未満、25未満、20未満、15未満、または10未満である。
【0088】
任意に、プロセスは、非晶質セルロースをグルコースに加水分解すること、グルコースを回収すること、およびグルコースを発酵生成物に発酵させることをさらに含む。任意に、プロセスは、ヘミセルロースのいくつかに由来するヘミセルロース糖類を回収すること、発酵させること、またはさらに処理することをさらに含む。任意に、プロセスは、リグニンを回収すること、燃焼すること、またはさらに処理することをさらに含む。
【0089】
非晶質セルロースの加水分解から生成されるグルコースは、エタノール、または別の発酵共生成物を生成する全体的なプロセスに組み込まれ得る。よって、いくつかの実施形態では、プロセスは、非晶質セルロースをグルコースに加水分解すること、およびグルコースを回収することをさらに含む。グルコースは、精製され、販売され得る。またはグルコースは、これに限定されないが、エタノールなどの発酵生成物に発酵され得る。グルコースまたは発酵生成物は、望ましい場合、ヘミセルロース糖加工などの初期工程に再循環され得る。
【0090】
ヘミセルロース糖類が回収および発酵される場合、それらは、モノマーまたはその前駆体を生成するために発酵され得る。モノマーが重合されて、ポリマーが生成され得、これは次いでナノセルロース材料と組み合わされて、ポリマー-ナノセルロース複合体が形成され得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、プロセスは、ナノリグノセルロース材料を1つ以上のナノリグノセルロース誘導体に化学的に変換することをさらに含む。例えば、ナノリグノセルロース誘導体は、ナノリグノセルロースエステル、ナノリグノセルロースエーテル、ナノリグノセルロースエーテルエステル、アルキル化ナノリグノセルロース化合物、架橋ナノリグノセルロース化合物、酸官能化ナノリグノセルロース化合物、塩基官能化ナノリグノセルロース化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0092】
ポリマーを用いる機能化、化学表面変性、ナノ粒子(すなわち、ナノリグノセルロース以外の他のナノ粒子)を用いる機能化、無機物もしくは界面活性剤での変性、または生化学的変性などの、様々なタイプのナノリグノセルロース機能化または誘導体化が使用され得る。
【0093】
リグニンの高装填率は、熱可塑性物質において達成されている。さらにより高い装填レベルは、リグニンの周知の変性で得られる。実質的な量のリグニンを含有する有用なポリマー材料の調製は、30年超にわたって調査の対象となっている。典型的には、リグニンは、機械的な特徴を満たしながら、最大25~40重量%の押出によりポリオレフィンまたはポリエステルにブレンドされ得る。リグニンと他の疎水性ポリマーとの間の適合性を増加させるために、異なるアプローチが使用された。例えば、リグニンの化学変性は、長鎖脂肪酸でのエステル化によって達成され得る。
【0094】
複合体における強度向上軽量ナノセルロースの用途を限定する有意な因子は、セルロースの固有の親水性である。疎水性を与えて、疎水性ポリマーマトリックスにおける均一な分散を可能にするナノセルロース表面の表面変性は、研究の盛んな分野である。本明細書で提供されるナノリグノセルロースは疎水性であることが発見された。
【0095】
任意に、疎水性ナノリグノセルロース材料を生成するためのプロセスは、ナノリグノセルロース材料の疎水性を増加させるようにリグニンを化学的に変性することをさらに含み得る。本発明の実施形態によって提供されるナノリグノセルロース材料の疎水性をさらに増加させるために、任意の既知の化学的変性がリグニンに対して行われ得る。
【0096】
本発明のいくつかの変形は、セルロースバイオマスから作製される高粘度化合物を生成する比較的単純なプロセスに基づいている。高粘度化合物は、掘削流体、塗料などのような、異なる流体と小さな割合で混合される場合、レオロジー変性剤として作用するであろう。
【0097】
水圧破砕流体製剤、特に水ベース製剤、また油ベース製剤では、これらの組成物は、ゲル化剤として機能し得る。容易な混合および取扱いは、各リザーバーの特徴についてカスタマイズを可能にする。これらのレオロジー変性剤のいくつかの特性は、現在市場で入手可能な製品と比較される場合、強力な利点を示す。これらの特性のいくつかは、より高い熱安定性、強いずり流動化、チキソトロピー性、および水溶性である。これらの新たな化合物の別の重要な特性は、それらが生分解性であることであり、それらの生成には、バイオマスおよび水以外の任意の化学物質は関与しない。
【0098】
いくつかの変形は、ナノセルロース材料を生成するためのプロセスを提供し、プロセスは、
(a)リグノセルロースバイオマス原料を提供することと、
(b)原料を消化室において有効な反応条件下で蒸気および/または熱水を含む反応溶液で消化して、セルロースに富む固体、ヘミセルロース、およびリグニンを含有する消化ストリームを生成することと、
(c)任意にセルロースに富む固体を洗浄して、セルロースに富む固体からヘミセルロースオリゴマーの少なくとも一部分および/またはリグニンの少なくとも一部分を除去することと、
(d)セルロースに富む固体を機械的に処理して、セルロースナノフィブリルおよび/またはセルロースナノ結晶を含有するナノセルロース材料を形成することと、
(e)ナノリグノセルロース材料を回収することと、を含む。
【0099】
プロセスは、セルロースに富む固体の1つ以上の酵素(例えば、セルラーゼ)または1つ以上の酸、例えば、二酸化硫黄、亜硫酸、リグノスルホン酸、酢酸、ギ酸、もしくはこれらの組み合わせでの処理をさらに含み得る。プロセスは、セルロースに富む固体の熱での処理をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、ステップ(b)~(d)は、任意の酵素または外部から追加された酸を使用しない。
【0100】
ナノセルロース材料は、セルロースナノフィブリルまたはセルロースナノフィブリルおよびセルロースナノ結晶の混合物を含み得る。
図1A~1Cは、バイオマスの熱水抽出から生成された材料を精製および均質化することによって、実験的に生成された例示的なナノセルロースのSEM画像を示す。ナノセルロース材料は、直径1ミクロン未満のリグニン粒子を含む、リグニンも含み得る。プロセスは、セルロースに富む固体を漂白すること、および/またはナノセルロース材料をこれが生成された後に漂白することを含み得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、プロセスは、ヘミセルロースオリゴマーに由来するヘミセルロース糖類を回収すること、発酵させること、またはさらに処理することをさらに含む。例えば、ヘミセルロース糖類は、(これに限定されないが)エタノールなどの発酵生成物に発酵され得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、プロセスは、セルロースに富む固体の一部分をグルコースに加水分解すること、グルコースを回収すること、および任意にグルコースをn-ブタノールまたは1,4-ブタンジオールなどの発酵生成物に発酵させることをさらに含む。
【0103】
プロセスは、セルロースに富む固体から洗浄されたリグニンを回収すること、燃焼すること、またはさらに処理することをさらに含み得る。(開始原料中の)初期リグニンの一部または全てがナノセルロース材料の一部となり得、これは、ナノセルロース材料は、リグニンの存在により少なくとも部分的に疎水性となる。
【0104】
いくつかの実施形態では、プロセスは、ナノセルロース材料を1つ以上のナノセルロース誘導体に化学的に変換することをさらに含む。例えば、ナノセルロース誘導体は、ナノセルロースエステル、ナノセルロースエーテル、ナノセルロースエーテルエステル、アルキル化ナノセルロース化合物、架橋ナノセルロース化合物、酸官能化ナノセルロース化合物、塩基官能化ナノセルロース化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0105】
特定の実施形態では、ステップ(d)は、ディスク精製、続いてセルロースに富む固体の均質化を含む。ステップ(d)、またはその一部分は、少なくとも10重量%、例えば、少なくとも20重量%の固体コンシステンシーで行われ得る。
【0106】
プロセスは、いくつかの実施形態では、セルロースに富む固体に含有されるセルロース繊維を爆砕することを含む。繊維の爆砕は、例えば、蒸気爆砕および/または急速な減圧を使用して達成され得る。特定の実施形態では、ステップ(d)は、任意に減圧と共にブローラインリファイナーを利用する。
【0107】
本発明のいくつかの変形は、セルロースバイオマスからバイオマス由来のレオロジー変性剤を生成するためのプロセスを提供し、プロセスは、
(a)セルロースバイオマスを含む原料を提供することと、
(b)原料を消化室において有効な反応条件下で蒸気および/または熱水を含む反応溶液で消化して、セルロースに富む固体、ヘミセルロース、およびリグニンを含有する消化ストリームを生成することと、
(c)第1の高強度精製ユニットにおいてセルロースに富む固体を精製し、これによっ
て精製されたセルロース固体を生成することと、
(d)ステップ(c)後に精製セルロース固体を洗浄、および/または精製前のステップ(c)前に消化ストリームを洗浄し、これによって洗浄された精製セルロース固体を生成することと、
(e)第2の高強度精製ユニットにおいて洗浄された精製セルロース固体をゲル化し、これによってゲル化されたセルロース固体を生成することと、
(f)高せん断ホモジナイザーにおいてゲル化セルロース固体を均質化し、これによってセルロースナノフィブリル、セルロースナノ結晶、またはセルロースナノフィブリルおよびセルロースナノ結晶の混合物を含有するバイオマス由来のレオロジー変性剤を生成することと、を含む。
【0108】
任意に、プロセスは、ステップ(b)の前に原料を湿式または乾式清浄することをさらに含む。任意に、原料が清浄されるか否かにかかわらず、プロセスは、ステップ(b)の前に原料のサイズを低減することをさらに含む。
【0109】
ステップ(b)は、約140℃~約210℃の消化温度で行われ得る。ステップ(b)は、約5分~約45分の消化時間にわたって行われ得る。ステップ(b)は、約2~約6の液体/固体重量比で行われ得る。
【0110】
プロセスは、ステップ(b)後、消化ストリームの熱間ブローまたは冷間ブロー減圧を含み得る。
【0111】
第1の高強度精製ユニットは、例えば、ディスクまたはコニカルプレートを活用し得る。様々な実施形態では、第1の高強度精製ユニットは、エネルギーを約20kW/トン~約200kW/トン(絶乾基準)の量でセルロースに富む固体に伝達する。
【0112】
ステップ(d)における洗浄は、約18℃~約95℃の温度で行われ得る。いくつかの実施形態では、ステップ(d)における洗浄は、加圧スクリュープレスを活用する。
【0113】
第2の高強度精製ユニットは、例えば、ディスクまたはコニカルプレートを活用し得る。第1および第2の高強度精製ユニットは、好ましくは、異なるグルーブおよびダム寸法を有する異なるパターンを有する。様々な実施形態では、第2の高強度精製ユニットは、エネルギーを約20kW/トン~約200kW/トン(絶乾基準)の量で洗浄された精製セルロース固体に伝達する。
【0114】
いくつかの実施形態では、高せん断ホモジナイザーは、約10,000psig~約25,000psigの圧力下で生成されたせん断に等しいせん断力を伝達する。
【0115】
いくつかの実施形態では、洗浄された精製セルロース固体は、ステップ(e)の前にある時間にわたって保存される。ステップ(e)は、ステップ(a)~(d)とは異なる場所で行われ得る。また、ステップ(f)は、ステップ(a)~(e)とは異なる場所で行われ得る。
【0116】
本発明の他の変形は、セルロースバイオマスからバイオマス由来のレオロジー変性剤を生成するためのプロセスを提供し、プロセスは、
(a)セルロースに富む固体を含む予備処理された原料を提供することと、
(b)第1の高強度精製ユニットにおいてセルロースに富む固体を精製し、これによって精製されたセルロース固体を生成することと、
(c)任意にステップ(b)後に精製セルロース固体を洗浄、および/または任意に精製前のステップ(b)前に消化ストリームを洗浄し、これによって洗浄された精製セルロース固体を生成することと、
(d)第2の高強度精製ユニットにおいて洗浄された精製セルロース固体をゲル化し、これによってゲル化されたセルロース固体を生成することと、
(e)高せん断ホモジナイザーにおいてゲル化セルロース固体を均質化し、これによってセルロースナノフィブリルを含有するバイオマス由来のレオロジー変性剤を生成することと、を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、予備処理された原料は、木質またはリグノセルロースバイオマスに由来するクラフトパルプである。いくつかの実施形態では、予備処理された原料は、木質またはリグノセルロースバイオマスに由来するサルファイトトパルプである。いくつかの実施形態では、予備処理された原料は、木質またはリグノセルロースバイオマスに由来するソーダパルプである。いくつかの実施形態では、予備処理された原料は、木質またはリグノセルロースバイオマスに由来するメカニカルパルプである。いくつかの実施形態では、予備処理された原料は、木質またはリグノセルロースバイオマスに由来するサーモメカニカルパルプである。いくつかの実施形態では、予備処理された原料は、木質またはリグノセルロースバイオマスに由来するケミメカニカルパルプである。
【0118】
本発明の変形は、(i)記載のプロセスに従って生成されたナノセルロース材料または(ii)記載のプロセスに従って生成されたバイオマス由来のレオロジー変性剤を含む、水ベースの水圧破砕流体製剤または添加剤を提供する。
【0119】
本発明の変形は、(i)記載のプロセスに従って生成されたナノセルロース材料または(ii)記載のプロセスに従って生成されたバイオマス由来のレオロジー変性剤を含む、油ベースの水圧破砕流体製剤または添加剤を提供する。
【0120】
本発明の変形は、(i)記載のプロセスに従って生成されたナノセルロース材料または(ii)記載のプロセスに従って生成されたバイオマス由来のレオロジー変性剤を含む、水ベースの掘削流体製剤または添加剤を提供する。
【0121】
本発明の変形は、(i)記載のプロセスに従って生成されたナノセルロース材料または(ii)記載のプロセスに従って生成されたバイオマス由来のレオロジー変性剤を含む、油ベースの掘削流体製剤または添加剤を提供する。
【0122】
いくつかの変形は、(i)記載のプロセスに従って生成されたナノセルロース材料または(ii)記載のプロセスに従って生成されたバイオマス由来のレオロジー変性剤を含む、ポリマー-ナノセルロース複合体を提供する。例示的なポリマーとしては、これらに限定されないが、ポリアクチド、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0123】
いくつかの実施形態では、このプロセスは、1ミクロン~100ミクロン、例えば、15ミクロン~50ミクロンのサイズを有する高粘度化合物を形成する。(バイオマスおよび水以外)任意の化学物質なしで生成されたこれらの新たな化合物は、レオロジー変性剤として使用され得、セルロースベースであるため、完全に生分解性である。
【0124】
プロセスは、いくつかの利点を示す。設計は、プロセスが、バイオマスでの始動から高粘度の化合物の生成まで1つのラインで完全に一体化されることを可能にする。または、プロセスは、異なる地理的な場所に位置し得るいくつかのモジュールに分けられてもよい。
【0125】
バイオマス原料は、硬材、軟材、森林廃棄物、農業廃棄物(例えば、サトウキビバガス)、産業廃棄物、消費者廃棄物、またはそれらの組み合わせから選択され得る。これらのプロセスのいずれかでは、原料は、スクロースを含み得る。原料中にスクロースが存在するいくつかの実施形態では、スクロースの大部分は、発酵性糖類の一部として回収される。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態は、「農業廃棄物」の処理を可能にし、「農業廃棄物」とは、本発明の目的では、食用作物、一年草、エネルギー作物、または他の毎年再生可能な原料に関連するリグノセルロースバイオマスを含むことが意図される。例示的な農業廃棄物としては、トウモロコシの茎、トウモロコシ繊維、麦わら、サトウキビバガス、稲わら、エンバクわら、大麦わら、ススキ、エネルギーケーン、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、農業廃棄物は、サトウキビバガス、エネルギーケーンバガス、サトウキビの茎、またはエネルギーケーンの茎である。
【0127】
いくつかの実施形態では、プロセスは、ステップ(b)前に原料を湿式または乾式清浄することをさらに含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、ステップ(b)前に原料のサイズを低減することをさらに含む。プロセスは、消化室の上流でのサイズ低減、熱水浸漬、水切り、スチーミング、または他の動作を含み得る。
【0128】
ステップ(b)は、約140℃~約210℃、例えば、約175℃~約195℃の消化温度で行われ得る。ステップ(b)は、約5分~約45分、例えば、約15分~約30分の消化時間にわたって行われ得る。ステップ(b)は、約2~約6、例えば、約3、3.5、4、4.5、または5の液体/固体重量比で行われ得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、反応溶液は、飽和、過熱、または過飽和形態の蒸気を含む。いくつかの実施形態では、反応溶液は、熱水を含む。
【0130】
加圧容器中の圧力は、水性リカーを液体、蒸気、またはこれらの組み合わせとして維持するように調節され得る。例示的な圧力は、約1atm~約30atm、例えば、約3atm、5atm、10atm、または15atmである。
【0131】
消化室(加圧抽出容器)の固相滞留時間は、約2分~約4時間、例えば、約5分~約1時間で変動し得る。特定の実施形態では、消化室滞留時間は、約5~15分、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15分となるように制御される。消化室の液相滞留時間は、約2分~約4時間、例えば、約5分~約1時間で変動し得る。消化室の気相滞留時間は、約1分~約2時間、例えば、約3分~約30分などで変動し得る。固相、液相、および気相の滞留時間は、全てほぼ同じであってもよく、またはそれらは、反応器の技術原理(例えば、再循環および内部再循環戦略)に従って独立して制御されてもよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、プロセスは、ステップ(b)後、消化ストリームの熱間ブロー減圧をさらに含む。あるいは、ステップ(b)後、消化ストリームの冷間ブロー減圧が使用され得る。
【0133】
減圧するために、消化室と精製ユニットとの間にブロータンクが置かれ得る。いくつ間実施形態では、蒸気はブロータンクから分離され、上記の少なくとも一部から熱が回収される。任意に、蒸気の少なくとも一部は、圧縮されて消化室に戻され、かつ/または蒸気の少なくとも一部はプロセスからパージされる。「ブロータンク」は、タンクのみでなく、プロセス流中の減圧を可能にすることができる任意の他の装置または機器を含むように広く企図されるべきであることに留意されたい。したがって、ブロータンク(またはブロー手段)は、タンク、容器、パイプの区画、弁、分離デバイス、または他のユニットであり得る。
【0134】
各機械的リファイナーは、熱間ブローリファイナー、熱間原料リファイナー、ディスクリファイナー、コニカルリファイナー、円筒型リファイナー、直列式ディファイブレーター、ホモジナイザー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。機械的処理(精製)は、粉砕、研削、叩解、音波処理、またはセルロース粒子サイズを低減するための任意の他の手段などであるが、決してこれらに限定されない、1つ以上の既知の技術を用いてもよい。そのようなリファイナーは当該技術分野で周知であり、Valleyビーター、シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー、コニカルリファイナー(広角および狭角の両方を含む)、円筒型リファイナー、ホモジナイザー、マイクロフリューダイザ、および他の類似の粉砕または研削装置が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Smook,Handbook for Pulp&Paper Technologists,Tappi Press,1992を参照されたい。
【0135】
精製は、約2%~約50%コンシステンシー、例えば、約3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、15%、20%、30%、35%、または40%コンシステンシーを含む、広範囲の固体濃度(コンシステンシー)で行われ得る。
【0136】
各機械的リファイナーは、約20~約200kW/トン(すなわち、精製ストリームに変換された固相に基づく、繊維1トン当たりの精製力(kW))を伝達するように構成され得る。特定の実施形態では、機械的リファイナーは、繊維1トン当たり約75~約150kWの精製力を伝達するように構成されている。例えば、プレートを有する機械的リファイナーは、これらの動力入力を達成するために、プレートタイプ、間隙、スピード等を変更することによって調節され得る。
【0137】
機械処理の程度は、いくつかの手段のいずれかによってプロセス中に監視され得る。特定の光学機器は、繊維長分布および微細化%に関する連続データを提供することができ、これらのいずれかは、機械処理ステップのエンドポイントを定義するために使用され得る。時間、温度、および圧力は、機械処理中に変動し得る。例えば、いくつかの実施形態では、周囲温度および圧力で、約5分~2時間の時間にわたる音波処理が活用され得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、セルロースに富む固体の一部分は、フィブリル化および/またはゲル化に変換される一方で、セルロースに富む固体の残部は、フィブリル化および/またはゲル化されない。様々な実施形態では、セルロースに富む固体の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または実質的に全ては、フィブリル化および/またはゲル化される。
【0139】
第1の高強度精製ユニットは、例えば、ディスクまたはコニカルプレートを活用し得る。いくつかの実施形態では、第1の高強度精製ユニットは、エネルギーを約20kW/トン~約200kW/トン(絶乾基準)、例えば、約75kW/トン~約150kW/トン(絶乾基準)の量でセルロースに富む固体に伝達する。
【0140】
いくつかの実施形態では、ステップ(d)における洗浄は、約18℃~約95℃、例えば、約70℃~約80℃の温度で行われる。ステップ(d)における洗浄は、加圧スクリュープレスを使用し得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、第2の高強度精製ユニットは、ディスクまたはコニカルプレートを活用する。第1および第2の高強度精製ユニットは、好ましくは、異なるグルーブおよびダム寸法を有する異なるパターンを有する。いくつかの実施形態では、第2の高強度精製ユニットは、エネルギーを約20kW/トン~約200kW/トン(絶乾基準)、例えば、約75kW/トン~約150kW/トン(絶乾基準)の量で洗浄された精製セルロース固体に伝達する。
【0142】
いくつかの実施形態では、高せん断ホモジナイザー(またはせん断を付与することができる他のユニット動作)は、約1,000psig~約50,000psig、例えば、約10,000psig~約25,000psigの圧力下で生成されたせん断に等しいせん断力を伝達する。
【0143】
洗浄された精製セルロース固体は、ステップ(a)~(d)とは異なる場所で行われ得る、ステップ(e)前のある時間にわたって保存され得る。いくつかの実施形態では、ステップ(f)は、ステップ(a)~(e)とは異なる場所で行われない。
【0144】
いくつかの実施形態では、バイオマス由来のレオロジー変性剤は、約1ミクロン~約100ミクロン、例えば、約1ミクロン~約50ミクロンの粒子サイズ(例えば、繊維またはフィブリル長さまたは有効長さ)を特徴とし得る。特定の実施形態では、粒子の大部分(例えば、約50%、60%、70%、80%、90%、または95%)は、10~15ミクロンのサイズ範囲である。バイオマス由来のレオロジー変性剤は、5ミクロン未満、例えば、4、3、2、1ミクロン以下の粒子(すなわち、ナノ粒子)を含み得る。粒子の幅は、1ミクロン未満であり得る。100ミクロン超、例えば、150、200、250、300、400、500ミクロン以上の粒子が存在し得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、バイオマス由来のレオロジー変性剤は、約10ミクロン、例えば、約9、8、7、6、5、4、3、2、1ミクロン以下の粒子サイズ(例えば、長さまたは有効長さ)を特徴とし得る。特定の実施形態では、ナノセルロース粒子長さは、約900、800、700、600、500、400、300、200、100nm以下である。(1ミクロンを超える長さを含む)これらまたは他の実施形態では、ナノセルロース粒子直径は、約3nm~約1000nm、例えば、約5nm~約500nm、もしくは約10nm~約200nm、または約5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、もしくは450nmであり得る。これらの実施形態のいくつかでは、ナノ粒子(またはそれらの一部分)は、ナノ結晶として特徴付けられ得る。
【0146】
レオロジー変性剤化合物は、構造中に初期バイオマスリグニンのいくらかを含むナノセルロースのようないくらかの微結晶形状を有する、主にセルロースベースのポリマーである。いくつかの実施形態では、化合物特性は、主に親水性であり、水ベース掘削流体および水ベース破砕流体の強い安定性を可能にする。リグニン含有量および好適な高強度精製を有するいくつかの実施形態では、化合物は、疎水性、適度に疎水性、または親水性および疎水性の組み合わせである。
【0147】
本開示は、本明細書に記載されるプロセスに従って生成されたバイオマス由来のレオロジー変性剤を含む、水ベースの水圧破砕流体製剤または添加剤を提供する。
【0148】
本開示は、本明細書に記載されるプロセスに従って生成されたバイオマス由来のレオロジー変性剤を含む、油ベースの水圧破砕流体製剤または添加剤を提供する。
【0149】
本開示は、本明細書に記載されるプロセスに従って生成されたバイオマス由来のレオロジー変性剤を含む、水ベースの掘削流体製剤または添加剤を提供する。
【0150】
本開示は、本明細書に記載されるプロセスに従って生成されたバイオマス由来のレオロジー変性剤を含む、油ベースの掘削流体製剤または添加剤を提供する。
【0151】
プロセスは、ストリッピングによる1つ以上の発酵阻害剤(例えば、酢酸またはフルフラール)の除去をさらに含み得る。このストリッピングは、発酵前に、加水分解されたセルロースストリームを処理することによって行われ得る。あるいは、または加えて、ストリッピングは、消化に続くストリーム、例えばブローラインなどにおいて行われ得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、プロセスは、初期消化に由来する液相中に含有される発酵性糖類を希釈発酵生成物に発酵させるステップをさらに含む。プロセスは、発酵生成物の濃縮および精製をさらに含み得る。発酵生成物は、例えば、エタノール、n-ブタノール、1,4-ブタンジオール、コハク酸、乳酸、またはこれらの組み合わせから選択され得る。また、リグニンを含有する固体ストリームは、発酵前または発酵の下流のいずれかで除去され得る。
【0153】
ステップは、加水分解物を調整して揮発性酸および他の発酵阻害剤の一部または大部分を除去することを含み得る。気化は、揮発性酸を除去する前に、存在する場合は二酸化硫黄を引火またはストリッピングして除去することを含み得る。気化ステップは、好ましくは4.8未満の酢酸解離pH、最も好ましくは約1~約2.5で選択されるpHで行われる。いくつかの実施形態では、追加の気化ステップが使用され得る。これらの追加の気化ステップは、第1の気化ステップに対して異なる条件(例えば、温度、圧力、およびpH)で行われ得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、気化された有機酸の一部または全ては、蒸気もしくは濃縮物として第1のステップ(調理ステップ)に再循環され、バイオマスからヘミセルロースまたは鉱物を除去することを助け得る。酢酸などの有機酸のこの再循環は、再循環される量によって変動し得るプロセス条件とともに最適化され、調理効果を改善し得る。
【0155】
ステップは、保存、輸送、または加工され得る発酵性糖類を回収することを含み得る。ステップは、発酵性糖類を共生成物(一次生成物はレオロジー変性剤である)に発酵させることを含み得る。
【0156】
ステップは、燃焼のための(リグニンを含有する)固体残留物を調製することを含み得る。このステップは、乾燥押出バイオマスを精製、製粉、流体化、締固め、および/またはペレット化することを含み得る。固体残留物は微粉末、緩い繊維、ペレット、煉炭、押出物の形態または任意の他の好適な形態でボイラーに供給され得る。既知の機器を使用して、固体残留物を加圧室を通して押出して、不均一な大きさのペレットもしくは煉炭を形成し得る。
【0157】
発酵に続いて、残留固体(蒸留残留物など)を固体もしくはスラリー形態で回収、または燃焼、または再循環して、バイオマスペレットに組み合わせ得る。発酵残留固体の使用は、鉱物のさらなる除去を必要とし得る。一般的には、蒸留残留物の濃縮後、残ったあらゆる固体が燃焼に使用され得る。
【0158】
あるいは、または加えて、プロセスは、残留固体を発酵共生成物として固体、液体、またはスラリー形態で回収することを含み得る。発酵共生成物は、典型的にはカリウム、窒素、および/または亜リン酸において豊富であるため、発酵剤または発酵剤組成物として使用され得る。
【0159】
プロセスは、連続、半連続、またはバッチであり得る。連続または半連続であるとき、ストリッピングコラムは向流的に、並流的に、またはそれらの組み合わせで操作され得る。
【0160】
プロセスは、精製ステップ前および/または精製の一部として、セルロースに富む固体を漂白することをさらに含み得る。あるいは、または加えて、プロセスは、精製材料、ゲル化材料、または均質化材料を漂白することをさらに含み得る。酵素漂白を含む、任意の既知の漂白技術またはシーケンスが使用され得る。
【0161】
本明細書で提供されるレオロジー変性剤は、掘削流体、掘削流体添加剤、破砕流体、および破砕流体添加剤に組み込まれ得る。レオロジー変性剤は、広範囲の濃度、例えば、約0.001重量%~約10重量%以上、例えば、約0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、または2重量%で存在し得る。
【0162】
本発明は、いくつかの変形では、異なる用途で使用され得るセルロース化合物の群に関する。用途の1つは、掘削流体の生成物向上剤としてそれらを使うことである。レオロジー変性剤は、掘削流体における1つ以上の機能を果たし得る。例えば、レオロジー変性剤は、粘度を増加させるゲル化剤、または一般的には増粘剤として役立ち得る。レオロジー変性剤は、摩擦低減剤として役立ち得る。また、レオロジー変性剤は、他のポリマーを置き換え、あるいはそれらに添加される、掘削ポリマーであり得る。
【0163】
掘削流体は、天然ガスおよびオイル産業ならびに大型掘削機器を使用する他の産業での掘削に使用される流体である。掘削流体は、円滑にし、静水圧を提供し、ドリルを低温に保ち、ドリルカットの穴をできるだけ清潔に保つために使用される。本明細書で提供されるレオロジー変性剤は、これらの掘削流体への添加剤として適している。
【0164】
いくつかの実施形態では、酵素を「ブレーカー」として組成物とともに使用して、一定期間の後、または特定の条件(例えば、温度またはpH)下で、レオロジー変性剤を分解することができる。
【0165】
いくつかの実施形態では、リグノスルホネートは、掘削用途における向上した潤滑性のために組み込まれる。また、鉱物スラリーの粘度の低減するリグノスルホネートの能力は、油掘削泥において有益であり得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、天然リグニンもしくは非スルホン化リグニン、または非スルホン化リグニン誘導体は、組成物に組み込まれる。
【0167】
いくつかの実施形態は、レオロジー変性剤を含む掘削流体添加剤を提供する。
【0168】
いくつかの実施形態は、レオロジー変性剤を含む掘削流体添加剤を提供し、添加剤は、リグノスルホネートをさらに含む。
【0169】
いくつかの実施形態は、レオロジー変性剤を含む掘削流体添加剤を提供し、添加剤は、非スルホン化リグニンをさらに含む。
【0170】
いくつかの実施形態は、レオロジー変性剤を含む掘削流体添加剤を提供し、添加剤は、架橋剤をさらに含む。
【0171】
いくつかの実施形態は、架橋レオロジー変性剤およびリグノスルホネートを含む掘削流体添加剤を提供する。
【0172】
いくつかの実施形態は、開示される掘削流体添加剤を含む掘削流体を提供する。掘削流体は、水ベース掘削流体、油ベース掘削流体、またはハイブリッド水ベース/油ベース掘削流体であり得る。
【0173】
様々な実施形態では、掘削流体は、バイオマス由来の加重材料、バイオマス由来の濾過制御剤、バイオマス由来のレオロジー制御剤、バイオマス由来のpH制御剤、バイオマス由来の逸泥材料、バイオマス由来の表面活性変性剤、バイオマス由来の潤滑剤、およびバイオマス由来の凝集剤、ならびに/またはバイオマス由来の安定剤のうちの1つ以上をさらに含む。
【0174】
いくつかの変形は、本発明は、掘削流体添加剤を使用する方法を提供し、方法は、開示される掘削流体添加剤をベース流体に組み合わせて、掘削流体を生成することを含む。いくつかの変形では、本発明は、開示される掘削流体添加剤を地質学的形成に直接または間接的に導入することを含む方法を提供する。
【0175】
いくつかの変形では、掘削方法は、掘削流体添加剤を地質学的形成に直接または間接的に導入することを含み、掘削流体添加剤は、有効な条件下でゲル化するための酵素を含む。関連の変形では、掘削方法は、掘削流体添加剤を地質学的形成に直接または間接的に導入することと、次いで有効な条件下でゲル化するための酵素をその後導入することと、を含む。
【0176】
いくつかの変形は、掘削流体添加剤を生成するためのプロセスを提供し、プロセスは、バイオマスを有効な予備処理条件および精製条件下で精製して、開示の掘削流体添加剤を生成することを含む。いくつかの実施形態では、有効な予備処理条件は、リグノスルホン酸の生成を含む。任意に、リグノスルホン酸の少なくとも一部分は、除去されず、掘削流体添加剤中に存在したままである。特定の実施形態では、掘削流体添加剤は、プロセスから誘導される液体スラリーを含む。例えば、スラリーは、バイオマスならびに水および予備処理化学物質(例えば、酸、溶媒など)から誘導されたレオロジー変性剤を含有し得る。
【0177】
これらの組成物の別の用途は、水圧破砕流体の製品向上剤としてそれらを使用することである。この目的の改善は、特に、摩擦低減、より高い速度での改善されたポンピング、高温での減圧および予測可能な粘度における影響によるものである。加えて、これらの生成物は完全に生分解性であり、これらはバイオマスから生成され、かつガラクトマンナン誘導体のような他の製品より生物汚損の影響を受けにくい。
【0178】
レオロジー変性剤は、破砕流体におけるロバストなゲル化のために架橋され得る。いくつかの実施形態では、レオロジー変性剤の架橋によって、より水和性であるより強力なゲルを得ることができる。
【0179】
バイオマス由来の(バイオマス構造からの)灰または(洗浄からの)砂をプロパントとして使用して、採掘されたシリカと置き換えてもよい。
【0180】
本発明は、他の変形では、破砕流体添加剤を提供する。
【0181】
いくつかの実施形態は、レオロジー変性剤を含む破砕流体添加剤を提供する。
【0182】
いくつかの実施形態は、レオロジー変性剤を含む破砕流体添加剤を提供し、添加剤は、リグノスルホネートをさらに含む。
【0183】
いくつかの実施形態は、レオロジー変性剤を含む破砕流体添加剤を提供し、添加剤は、非スルホン化リグニンをさらに含む。
【0184】
いくつかの実施形態は、レオロジー変性剤を含む破砕流体添加剤を提供し、添加剤は、架橋剤をさらに含む。
【0185】
いくつかの実施形態は、架橋レオロジー変性剤およびリグノスルホネートを含む破砕流体添加剤を提供する。
【0186】
いくつかの実施形態は、開示される破砕流体添加剤を含む破砕流体を提供する。破砕流体は、水ベース破砕流体、油ベース破砕流体、またはハイブリッド水ベース/油ベース破砕流体であり得る。
【0187】
破砕流体は、開示される破砕流体添加剤に加えて、バイオマス由来の酸(酢酸、ギ酸、レブリン酸、および/またはリグノスルホン酸など)、バイオマス由来の腐食防止剤(リグニンまたはリグニン誘導体など)、バイオマス由来の破砕低減剤(リグノスルホン酸またはリグノスルホン酸誘導体など)、バイオマス由来の粘土制御剤、バイオマス由来の架橋剤、バイオマス由来のスケール防止剤、バイオマス由来のブレーカー、バイオマス由来の鉄制御剤、バイオマス由来の殺生物剤(例えば、バイオマス加水分解物)、および/または再循環されたもしくは回収されたバイオリファイナリー由来の水源のうちの1つ以上をさらに含み得る。典型的には、破砕流体担体は、バイオマス由来のプロパント(例えば、バイオマスの構造内に含有される灰、および/またはバイオマスと共に収集される砂、灰、泥)であり得るプロパントを運搬し、含み、またはそれと組み合わされることを意図する。
【0188】
本発明のいくつかの変形は、破砕流体添加剤を使用する方法を提供し、方法は、開示される破砕流体添加剤をベース流体に組み合わせて、破砕流体を生成することを含む。いくつかの方法は、破砕流体添加剤を地質学的形成に直接または間接的に導入することを含む。
【0189】
いくつかの変形は、破砕流体添加剤を生成するためのプロセスは、バイオマスを有効な予備処理条件および精製条件下で精製して、開示の破砕流体添加剤を生成することを含む。いくつかの実施形態では、予備処理条件は、任意に完全には除去されず、破砕流体添加剤中に存在する、リグノスルホン酸の生成を含む。いくつかの実施形態では、破砕流体添加剤は、プロセスから誘導される液体スラリーを含む。例えば、スラリーは、バイオマスならびに水および予備処理化学物質(例えば、溶媒、酸、塩基など)から誘導されるレオロジー変性剤を含有し得る。
【0190】
いくつかの実施形態のレオロジー変性剤は、約100~約2000、例えば、約400~約1200または約500~約800の平均セルロース重合度を特徴とする。特定の実施形態では、レオロジー変性剤は、酵素を含まない。
【0191】
本開示は、決してレオロジー変性剤に限定されない。開示されるように(バイオマス予備処理後)複数の精製ステップによって生成される材料は、広範囲の用途で使用され得る。例えば、レオロジー変性剤は、構造物、フォーム、アエロゲル、ポリマー複合体、炭素複合体、フィルム、コーティング、コーティング前駆体、電流または電圧担体、フィルター、メンブレン、触媒、触媒担体、コーティング添加剤、塗料添加剤、接着剤添加剤、セメント添加剤、紙コーティング、増粘剤、レオロジー変性剤、掘削流体のための添加剤、ならびにこれらの組み合わせまたは誘導体からなる群から選択される生成物に組み込まれ得る。
【0192】
いくつかの実施形態は、センサ、触媒、抗菌性材料の用途、電流通過およびエネルギー貯蔵能力を有する製品を提供する。セルロース結晶は、金属鎖および半導体鎖の合成を助ける能力を有する。
【0193】
いくつかの実施形態は、精製セルロースおよび炭素含有材料、例えば、リグニン、グラファイト、グラフェン、またはカーボンエアロゲルなど(であるが、これらに限定されない)を含有する複合体を提供する。
【0194】
セルロース結晶は、界面活性剤の安定化特性と組み合わされてもよく、様々な半導体材料の構造の製作に利用され得る。
【0195】
精製セルロースにおける-OH側鎖基の反応性表面は、化学種をグラフトして異なる表面特性を達成することを容易にする。表面の官能化により、自己集合を容易にする粒子表面化学の調整、広範囲のマトリックスポリマー内の制御された分散、および粒子-粒子間および粒子-マトリックス間の両方の結合強度の制御が可能になる。複合体は、透明であり得、鋳鉄よりも高い引張強度を有し得、非常に低い熱膨張率を有し得る。潜在的用途としては、バリアフィルム、抗菌フィルム、透明フィルム、フレキシブルディスプレイ、ポリマー用強化充填剤、生物医学的インプラント、医薬品、薬物送達、繊維および織物、電子部品用テンプレート、分離膜、バッテリ、スーパーキャパシタ、電気活性ポリマー、および多くの他のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0196】
本発明に好適な他の用途としては、強化ポリマー、接着剤、高強度紡糸繊維および織物、先端複合材料、バリアおよび他の特性のためのフィルム、コーティング用添加剤、塗料、ラッカー、接着剤、切替可能な光学装置、医薬品および薬物送達システム、骨置換および歯の修復、改良紙、包装および建築製品、食品および化粧品用添加剤、触媒、ならびにヒドロゲルが挙げられる。
【0197】
航空宇宙および輸送複合体は、これらのレオロジー変性剤の恩恵を受け得る。自動車用途としては、ポリプロピレン、ポリアミド(例えば、ナイロン)、またはポリエステル(例えば、PBT)とのセルロース複合体が挙げられる。
【0198】
本明細書で提供されるレオロジー変性剤は、再生可能な生分解性複合体のための強度強化添加剤として好適であり得る。セルロースフィブリル構造は、包装、建築材料、電化製品、および再生可能繊維における応用のための改善された破壊靭性および亀裂形成の防止のために、2つの有機相間の結合剤として機能し得る。
【0199】
本明細書で提供されるレオロジー変性剤は、フレキシブルディスプレイ、フレキシブル回路、印刷可能エレクトロニクス、およびフレキシブルソーラーパネルにおける応用のための透明で寸法安定性の強度強化添加剤および基材であり得る。基材シートに組み込まれたセルロースは、例えば、真空濾過によって形成され、圧力下で乾燥され、焼成される。シート構造において、セルロースは、充填剤凝集体間の接着剤として機能する。形成された焼成シートは、平滑で可撓性である。
【0200】
本明細書で提供されるレオロジー変性剤は、亀裂の減少ならびに強靭性および強度の増加を可能にする複合体およびセメント添加剤に好適であり得る。発泡した気泡セルロース-コンクリートハイブリッド材料は、亀裂減少および強度が増強した軽量構造を可能にする。
【0201】
セルロースでの強度強化は、水分および酸素バリア特性が強化された高強度、高バルク、高充填剤含有量の紙およびボード紙における応用のために、結合領域および結合強度の両方を増強させる。特に、紙パルプ工業が、本明細書で提供されるレオロジー変性剤の恩恵を受け得る。
【0202】
多孔性セルロースは、気泡バイオプラスチック、絶縁体およびプラスチック、ならびに生物活性膜およびフィルターに使用され得る。高多孔性セルロース材料は、一般に、濾過媒体の製造、ならびに生医学的用途、例えば、透析膜において高い関心を集めている。
【0203】
本明細書で提供されるレオロジー変性剤は、紫外線放射によって引き起こされる摩耗に対する塗料、保護用塗料、およびワニスの耐久性を改善するための添加剤として好適であり得る。
【0204】
本明細書で提供されるレオロジー変性剤は、食品および化粧品における増粘剤として好適である。レオロジー変性剤は、チキソトロピック、生分解性、寸法安定性のある(温度および塩付加に対して安定した)増粘剤として使用され得る。本明細書で提供されるレオロジー変性剤材料は、エマルジョンおよび粒子安定化フォームのためのピッカリング安定剤として好適であり得る。
【0205】
これらのレオロジー変性剤の大きな表面積は、それらの生分解性と組み合わせることにより、レオロジー変性剤を高多孔性の機械的に安定したエアロゲルに魅力的な材料にする。
【0206】
いくつかの実施形態では、プロセスは、ナノリグノセルロース材料またはその誘導体を含む構造物を形成することを含む。
【0207】
いくつかの実施形態では、プロセスは、ナノリグノセルロース材料またはその誘導体を含むフォームまたはアエロゲルを形成することを含む。
【0208】
いくつかの実施形態では、プロセスは、ナノリグノセルロース材料またはその誘導体を1つ以上の他の材料と組み合わせて、複合体を形成することを含む。例えば、他の材料は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、またはそれらの組み合わせから選択されるポリマーを含み得る。あるいは、または加えて、他の材料は、様々な形態の炭素を含み得る。
【0209】
いくつかの実施形態では、プロセスは、ナノリグノセルロース材料またはその誘導体を含むフィルムを形成することを含む。フィルムは、特定の実施形態では、光学的に透明であり、可撓性である。
【0210】
いくつかの実施形態では、プロセスは、ナノリグノセルロース材料またはその誘導体を含むコーティングまたはコーティング前駆体を形成することを含む。いくつかの実施形態では、ナノリグノセルロース含有生成物は、紙コーティングである。
【0211】
いくつかの実施形態では、ナノリグノセルロース含有生成物は、触媒、触媒担体、または共触媒として構成される。いくつかの実施形態では、ナノリグノセルロース含有生成物は、電流または電圧を保有または貯蔵するために電気化学的に構成される。
【0212】
いくつかの実施形態では、ナノリグノセルロース含有生成物は、フィルター、膜、または他の分離装置に組み込まれる。
【0213】
いくつかの実施形態では、ナノリグノセルロース含有生成物は、添加剤として、コーティング、塗料、または添加剤に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ナノリグノセルロース含有生成物は、セメント添加剤として組み込まれる。
【0214】
いくつかの実施形態では、ナノリグノセルロース含有生成物は、増粘剤またはレオロジー変性剤として組み込まれる。例えば、ナノリグノセルロース含有生成物は、油回収流体および/もしくはガス回収流体など(であるが、これらに限定されない)掘削流体、または破砕流体における添加剤であり得る。
【0215】
ナノリグノセルロース含有生成物は、開示されるナノリグノセルロース組成物のうちのいずれかを含み得る。多くのナノリグノセルロース含有生成物が可能である。例えば、ナノリグノセルロース含有生成物は、構造物、フォーム、アエロゲル、ポリマー複合体、炭素複合体、フィルム、コーティング、コーティング前駆体、電流または電圧担体、フィルター、メンブレン、触媒、触媒担体、コーティング添加剤、塗料添加剤、接着剤添加剤、セメント添加剤、紙コーティング、増粘剤、レオロジー変性剤、掘削流体のための添加剤、ならびにこれらの組み合わせまたは誘導体からなる群から選択され得る。
【0216】
特定のナノリグノセルロース含有生成物は、例えば、高透明度、良好な機械的強度、および/または強化されたガス(例えば、O2もしくはCO2)バリア特性を提供する。本明細書で提供される疎水性ナノセルロース材料を含有する特定のナノリグノセルロース含有生成物は、例えば、湿潤防止および氷結防止コーティングとして有用であり得る。
【0217】
いくつかの実施形態は、センサ、触媒、抗菌性材料の用途、電流通過およびエネルギー貯蔵能力を有するナノリグノセルロース含有生成物を提供する。
【0218】
いくつかの実施形態は、ナノリグノセルロースおよび炭素含有材料、例えば、リグニン、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、またはカーボンエアロゲルなど(であるが、これらに限定されない)を含有する複合体を提供する。
【0219】
ナノリグノセルロースにおける-OH側鎖基の反応性表面は、化学種をグラフトして異なる表面特性を達成することを容易にする。表面の官能化により、自己集合を容易にする粒子表面化学の調整、広範囲のマトリックスポリマー内の制御された分散、および粒子-粒子間および粒子-マトリックス間の両方の結合強度の制御が可能になる。複合体は、透明であり得、鋳鉄よりも高い引張強度を有し得、非常に低い熱膨張率を有し得る。潜在的用途としては、バリアフィルム、抗菌フィルム、透明フィルム、フレキシブルディスプレイ、ポリマー用強化充填剤、生物医学的インプラント、医薬品、薬物送達、繊維および織物、電子部品用テンプレート、分離膜、バッテリ、スーパーキャパシタ、電気活性ポリマー、および多くの他のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0220】
本発明に好適な他のナノリグノセルロース用途としては、強化ポリマー、高強度紡糸繊維および織物、先端複合材料、バリアおよび他の特性のためのフィルム、コーティング用添加剤、塗料、ラッカー、および接着剤、切替可能な光学装置、医薬品および薬物送達システム、骨置換および歯の修復、改良紙、包装および建築製品、食品および化粧品用添加剤、触媒、ならびにヒドロゲルが挙げられる。
【0221】
航空宇宙および自動車用途としては、ポリプロピレン、ポリアミド(例えば、ナイロン)、またはポリエステル(例えば、PBT)とのナノリグノセルロース複合体が挙げられる。
【0222】
本明細書で提供されるナノリグノセルロース材料は、再生可能な生分解性の複合体のための強度強化添加剤として好適である。セルロースナノフィブリル構造は、包装、建築材料、電化製品、および再生可能繊維における応用のための改善された破壊靭性および亀裂形成の防止のために、2つの有機相間の結合剤として機能し得る。
【0223】
本明細書で提供されるナノリグノセルロース材料は、フレキシブルディスプレイ、フレキシブル回路、印刷可能エレクトロニクス、およびフレキシブルソーラーパネルにおける応用のための透明で寸法安定性の強度強化添加剤および基材として好適である。基材シートに組み込まれたナノリグノセルロースは、例えば、真空濾過によって形成され、圧力下で乾燥され、焼成される。シート構造において、ナノセルロースは、充填剤凝集体間の接着剤として機能する。形成された焼成シートは、平滑で可撓性である。
【0224】
本明細書で提供されるナノリグノセルロース材料は、亀裂の減少ならびに強靭性および強度の増加を可能にする複合体およびセメント添加剤に好適である。発泡した気泡ナノリグノセルロース-コンクリートハイブリッド材料は、亀裂減少および強度が増強した軽量構造を可能にする。
【0225】
ナノリグノセルロースでの強度強化は、水分および酸素バリア特性が強化された高強度、高バルク、高充填剤含有量の紙およびボード紙における応用のために、結合領域および結合強度の両方を増強させる。特に、紙パルプ工業が、本明細書で提供されるナノリグノセルロース材料の恩恵を受け得る。
【0226】
ナノフィブリル化セルロースナノペーパーは、従来の紙よりも高い密度および高い引張機械特性を有する。これは、光学的に透明で可撓性であり得、低熱膨張特性および優れた酸素バリア特性を有し得る。ナノペーパーの機能性は、カーボンナノチューブ、ナノクレイ、または導電性ポリマーコーティングなどの他の実体を組み込むことによってさらに拡大され得る。
【0227】
Rojo et al.,“Comprehensive elucidation of the effect of residual lignin on the physical,barrier,mechanical,and surface properties of nanocellulose films,”Green Chem.,2015,17,1853-1866は、本明細書に参照によって組み込まれる。
【0228】
多孔性ナノリグノセルロースは、気泡バイオプラスチック、絶縁体およびプラスチック、ならびに生物活性膜およびフィルターに使用され得る。高多孔性材料は、一般に、濾過媒体の製造、ならびに生医学的用途、例えば、透析膜において高い関心を集めている。
【0229】
本明細書で提供されるナノリグノセルロース材料は、食品包装および印刷用紙における用途のための酸素バリアおよび木質繊維に対する親和性を有するコーティング材料として好適である。
【0230】
本明細書で提供されるナノリグノセルロース材料は、紫外線放射によって引き起こされる摩耗に対する塗料、保護用塗料、およびワニスの耐久性を改善するための添加剤として好適である。
【0231】
本明細書で提供されるナノリグノセルロース材料は、食品および化粧品における増粘剤として好適である。ナノリグノセルロースは、チキソトロピック、生分解性、寸法安定性のある(温度および塩付加に対して安定した)増粘剤として使用され得る。本明細書で提供されるナノリグノセルロース材料は、エマルジョンおよび粒子安定化フォームのためのピッカリング安定剤として好適である。
【0232】
これらのナノリグノセルロース材料の大きな表面積は、それらの生分解性と組み合わせることにより、レオロジー変性剤を高多孔性の機械的に安定したエアロゲルに魅力的な材料にする。
【0233】
本発明は、開示されるプロセスを実施するために構成されたシステム、およびそれから生成された組成物を提供する。開示されるプロセスによって生成された任意のストリームは、部分的または完全に回収、精製もしくはさらに処理、および/または市販もしくは販売され得る。
【0234】
この詳細な説明では、本発明の複数の実施形態ならびに本発明がどのように理解および実施され得るかに関する非限定的な例について言及している。本明細書に記載される特徴および利点の全てを提供しない他の実施形態が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、利用され得る。本発明は、日常的な実験ならびに本明細書に記載される方法およびシステムの最適化を組み込む。そのような変更および変形は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であるとみなされる。
【0235】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、各刊行物、特許、または特許出願が本明細書において具体的かつ個別に提示されているかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0236】
上記の方法およびステップが特定の順序で発生する特定の事象を示す場合、当業者であれば、特定のステップの順序が変更され得、かつそのような変更が本発明の変形に従うことを認識するであろう。加えて、特定のステップは、順次に行われるだけでなく、可能な場合、並行プロセスで同時に行われ得る。
【0237】
したがって、本開示の趣旨の範囲内であるか、または添付の特許請求の範囲に見られる本発明と同等である、本発明の変形が存在する範囲では、本特許請求がそれらの変形も網羅することを意図する。本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
【実施例0238】
実施例1:軟材から生成されたナノリグノセルロース
軟材(マツ)チップを、パイロットスチームガンダイジェスタ内で、185℃の温度で20分間加工し、約80%のパルプ収率を得る。パルプをパイロットプラントディスク精製機に通過させ、加熱調理したチップを繊維離解して約100の濾水度にする。パルプの濾水度により、パルプの希薄懸濁液が排出され得る速度の尺度が得られる(TAPPI T221“Drainage Time of Pulp”を参照のこと)。その後、80~85%微細物を目標にパルプを実験室規模のホモジナイザーに3回通過させ、洗浄されていないナノリグノセルロースを得る。微細物(精製材料)のパーセンテージを、ホモジナイザーに通過させる回数を増やすことによって増加させることができる。洗浄されていないナノリグノセルロースを、パルプ1kg当たり約2、1、および1kgの水で、60℃で30分間にわたって3回洗浄して、洗浄されたナノリグノセルロースを得る。
【0239】
図2は、この実施例で生成された洗浄されたナノリグノセルロースの40倍に拡大した光学顕微鏡写真を示す。
【0240】
この実施例におけるナノリグノセルロースは、沈殿したリグニン粒子(粒径約50~300ナノメートル)、リグノセルロースナノフィブリル(長さ約500ナノメートル、幅約10~500ナノメートル、長さ数十ミクロン)、およびリグノセルロース微細物(長さ76ミクロン未満および幅5ミクロン未満)の組み合わせである。
【0241】
洗浄された固体を組成について分析する。全炭水化物は、固体の約66.8重量%である。グルカンは54重量%であり、キシランは9.2重量%であり、ガラカタンは1.3重量%であり、アラビナンは0.6重量%であり、マンナンは1.7重量%である。アセチル基濃度は、固体中1.9重量%である。全リグニンは35.8重量%であり、そのうち33.3重量%(固体に基づく)はKlasonリグニンであり、2.5重量%(固体に基づく)は酸可溶性リグニンである。
【0242】
液相分析は、0.98重量%のグルコース、7.44重量%のキシロース、0.42重量%のガラクトース、0.35重量%のアラビノース、および0.79重量%のマンノースを示し、全ての糖は最初の全固体に基づくパーセンテージ(木材に基づく%)である。ギ酸は0.07重量%であり、酢酸は0.28重量%であり、HMFは0.02重量%、フルフラールは0.02重量%であり、溶解リグニンは1.82重量%であり、この場合も同様に、全て最初の全固体に基づくパーセンテージである。
【0243】
実施例2:硬材から生成されたナノリグノセルロース
硬材チップを、パイロットスチームガンダイジェスタ内で、185℃の温度で15分間加工し、約80%のパルプ収率を得る。パルプをパイロットプラントディスク精製機に通過させ、加熱調理したチップを繊維離解して約100の濾水度にする。その後、80~85%微細物を目標にパルプを実験室規模のホモジナイザーに3回通過させ、洗浄されていないナノリグノセルロースを得る。微細物(精製材料)のパーセンテージを、ホモジナイザーに通過させる回数を増やすことによって増加させることができる。洗浄されていないナノリグノセルロースを、パルプ1kg当たり約2、1、および1kgの水で、60℃で30分間にわたって3回洗浄して、洗浄されたナノリグノセルロースを得る。
【0244】
図3は、この実施例で生成された洗浄されたナノリグノセルロースの40倍率の光学顕微鏡写真を示す。
【0245】
この実施例で生成されたパルプもホモジナイザーに7回通過させて、92%の微細物を得る。これを、漂白された軟材Kraftパルプ(Masuko精製、14回通過、93%微細物(領域別))と比較する。
図4は、従来技術のKraftパルプと比較したこのナノリグノセルロースの濾過速度のグラフである。濾過は、全固体0.8重量%でのブフナー濾過であり、出発体積は450mLである(利用可能な全濾液は、ナノセルロースパッド中全固体17%に基づいて430mLであると推定される)。濾紙は、Whatman 4(細孔径20~25μm)である。
【0246】
図4は、漂白されたKraftフィブリルと比べてはるかに高いこのナノリグノセルロースの濾過速度を示す。具体的には、ナノリグノセルロースは、100分未満で本質的に100%の濾過完了に達する。高リグニン含有量のため、ナノリグノセルロースフィブリルの保水値および排出は、純セルロースフィブリルよりもはるかに高い。これは、抄紙機にナノリグノセルロースを使用するための主要な性能属性と考えられる。