(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060336
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】アルツハイマー病についての同調させた細胞周期遺伝子発現試験および関連治療法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20230420BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20230420BHJP
C12Q 1/6883 20180101ALI20230420BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6883 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023037412
(22)【出願日】2023-03-10
(62)【分割の表示】P 2020550042の分割
【原出願日】2018-12-06
(31)【優先権主張番号】62/596,588
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520199853
【氏名又は名称】ニューロジーエックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フローリン バレンティン チリラ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エル. アルコン
(57)【要約】
【課題】アルツハイマー病についての同調させた細胞周期遺伝子発現試験および関連治療法を提供する。
【解決手段】本発明は、ヒト被験体がアルツハイマー病(「AD」)または非アルツハイマー型認知症(「非ADD」)に罹患していると疑われる場合、その被験体がADに罹患しているかまたは非ADDに罹患しているかを決定するための正確な遺伝子ベースの方法を提供する。本主題の方法は、少なくとも部分的に、患者の適切な細胞集団を同調させ、次いで、AD細胞と非ADD細胞との間で差次的に発現する遺伝子の発現レベルを測定することが、その患者を、ADまたは非ADDのいずれかを有すると正確に診断することを可能にするという驚くべき発見に基づく。本発明はまた、ある種の遺伝子発現を変更する薬剤を使用して、ADを処置するための方法を提供する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月8日出願の米国仮特許出願第62/596,588号(その内容は本明細書に参考として援用される)の利益を主張する。
【0002】
本出願全体を通じて、種々の刊行物が引用される。これら刊行物の開示は、本発明が属する分野の技術水準をより十分に記載するために、本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
アルツハイマー病(「AD」)は、長い間、正確な診断法、および治療法を開発するかなりの努力の対象であった。これらの努力にも拘わらず、ADを正確に診断し、ADを非アルツハイマー型認知症(「非ADD」)から区別する方法の未だ満たされていないニーズが存在する。また、ADを処置する有効な方法の未だ満たされていないニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
本発明は、ヒト被験体がADまたは非ADDに罹患していると疑われる場合、上記被験体がADに罹患しているかまたは非ADDに罹患しているかを決定するための方法であって、
(a)上記被験体に由来する適切な細胞の集団を同調させる工程;および
(b)得られた上記同調させた細胞集団において、AD患者に由来する対応する同調させた細胞と非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞との間で差次的に発現することが公知の遺伝子の発現レベルを測定する工程、
を包含し、それによって、(i)工程(b)において測定した発現レベルがAD患者に由来する対応する同調させた細胞におけるその遺伝子の発現レベルと一致する場合、上記被験体はADに罹患している、および(ii)工程(b)において測定した発現レベルが非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞におけるその遺伝子の発現レベルと一致する場合、上記被験体は非ADDに罹患している、方法を提供する。
【0005】
本発明はまた、ヒト被験体がADまたは非ADDに罹患していると疑われる場合、上記被験体がADに罹患しているかまたは非ADDに罹患しているかを決定するための方法であって、
(a)上記被験体に由来する培養した皮膚細胞の線維芽細胞の集団を同調させる工程であって、ここで上記同調させる工程は、上記線維芽細胞をオーバーコンフルエントになるまで培養し、次いで、得られた上記オーバーコンフルエントな線維芽細胞を飢餓状態にすることを含む工程;ならびに
(b)得られた上記同調させた線維芽細胞集団において、以下の遺伝子:AC004057.1、AC092651.1、ACP6、ADAM20、ASXL2、C2CD5、CARNS1、FAM149B1、GLIS3-AS1、IL18R1、LINC01393、LZIC、MAP1LC3B2、NHLH1、NORAD、NPPA-AS1_3、OSMR-AS1、PAN3、PHBP8、PSMB9、RAB3IP、RDH16、RFESDP1、RPL5、SCG2、SDHD、SHISA5、SLC45A3、SNHG14、TTC26、URB2、USMG5、WASF2、ZCWPW2、ZNF444、およびZNF70の各々の発現レベルを測定する工程であって、ここで各遺伝子の発現レベルを測定する工程は、全転写物の数あたりのそのRNA転写物の数を測定することを含む工程、
を包含し、それによって、(i)工程(b)において測定した発現レベルがAD患者に由来する対応する同調させた細胞における上記遺伝子の発現レベルと一致する場合、上記被験体はADに罹患している、および(ii)工程(b)において測定した発現レベルが非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞における上記遺伝子の発現レベルと一致する場合、上記被験体は非ADDに罹患している、方法を提供する。
【0006】
本発明は、ヒト被験体がADまたは非ADDに罹患していると疑われる場合、上記被験体がADに罹患しているかまたは非ADDに罹患しているかを決定するための方法であって、
(a)上記被験体に由来する培養した不死化したBリンパ球の集団を同調させる工程であって、ここで上記同調させる工程は、上記リンパ球をオーバーコンフルエントになるまで培養し、次いで、得られた上記オーバーコンフルエントなリンパ球を飢餓状態にすることを含む工程;ならびに
(b)得られた上記同調させたリンパ球集団において、以下の遺伝子:AC004057.1、AC092651.1、ACP6、ADAM20、ASXL2、C2CD5、CARNS1、FAM149B1、GLIS3-AS1、IL18R1、LINC01393、LZIC、MAP1LC3B2、NHLH1、NORAD、NPPA-AS1_3、OSMR-AS1、PAN3、PHBP8、PSMB9、RAB3IP、RDH16、RFESDP1、RPL5、SCG2、SDHD、SHISA5、SLC45A3、SNHG14、TTC26、URB2、USMG5、WASF2、ZCWPW2、ZNF444、およびZNF70の各々の発現レベルを測定する工程であって、ここで各遺伝子の発現レベルを測定する工程は、全転写物の数あたりのそのRNA転写物の数を測定することを含む工程、
を包含し、それによって、(i)工程(b)において測定した発現レベルがAD患者に由来する対応する同調させた細胞における上記遺伝子の発現レベルと一致する場合、上記被験体はADに罹患している、および(ii)工程(b)において測定した発現レベルが非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞における上記遺伝子の発現レベルと一致する場合、上記被験体は非ADDに罹患している、方法をさらに提供する。
【0007】
本発明は、アルツハイマー病に罹患しているヒト被験体を処置するための方法であって、上記被験体に、治療上有効な量の、発現レベルがアルツハイマー病と相関する1種またはこれより多くの遺伝子の発現レベルに都合良く影響を及ぼすことが公知の薬剤を投与することを含む、方法をさらに提供する。
【0008】
最後に、本発明は、アルツハイマー病に罹患しているヒト被験体を処置するための方法であって、上記被験体に、治療上有効な量のカルフィルゾミブ、ボルテゾミブ、ブメタニド、フロセミドまたはトラセミドを投与することを含む、方法を提供する。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
ヒト被験体がアルツハイマー病(「AD」)または非アルツハイマー型認知症(非ADD))に罹患していると疑われる場合に、前記被験体がADに罹患しているかまたは非ADDに罹患しているかを決定するための方法であって、
(a)前記被験体に由来する適切な細胞の集団を同調させる工程;および
(b)得られた前記同調させた細胞集団において、AD患者に由来する対応する同調させた細胞と非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞との間で差次的に発現することが公知の遺伝子の発現レベルを測定する工程、
を包含し、それによって、(i)工程(b)において測定した発現レベルがAD患者に由来する対応する同調させた細胞におけるその遺伝子の発現レベルと一致する場合、前記被験体はADに罹患している、および(ii)工程(b)において測定した発現レベルが非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞におけるその遺伝子の発現レベルと一致する場合、前記被験体は非ADDに罹患している、
方法。
(項目2)
前記被験体に由来する前記適切な細胞は、培養した皮膚細胞の線維芽細胞である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記被験体に由来する前記適切な細胞は、培養したBリンパ球である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記Bリンパ球は、不死化されている、項目3に記載の方法。
(項目5)
適切な細胞の前記集団を同調させる工程は、前記細胞をオーバーコンフルエントになるまで培養し、次いで、得られた前記オーバーコンフルエントな細胞を飢餓状態にすることを含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記遺伝子は、AD患者に由来する対応する同調させた細胞と非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞との間で少なくとも50%差次的に発現することが公知である、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記遺伝子は、AD患者に由来する対応する同調させた細胞と非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞との間で少なくとも100%差次的に発現することが公知である、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記遺伝子は、AC004057.1、AC092651.1、ACP6、ADAM20、ASXL2、C2CD5、CARNS1、FAM149B1、GLIS3-AS1、IL18R1、LINC01393、LZIC、MAP1LC3B2、NHLH1、NORAD、NPPA-AS1_3、OSMR-AS1、PAN3、PHBP8、PSMB9、RAB3IP、RDH16、RFESDP1、RPL5、SCG2、SDHD、SHISA5、SLC45A3、SNHG14、TTC26、URB2、USMG5、WASF2、ZCWPW2、ZNF444、およびZNF70からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目9)
工程(b)は、複数の遺伝子の発現レベルを測定する工程を包含し、各遺伝子は、AD患者に由来する対応する同調させた細胞と非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞との間で差次的に発現することが公知である、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記複数の遺伝子は、少なくとも2種の遺伝子、少なくとも5種の遺伝子、少なくとも20種の遺伝子、少なくとも100種の遺伝子、および少なくとも1,000種の遺伝子からなる群より選択される、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記複数の遺伝子の各遺伝子は、AD患者に由来する対応する同調させた細胞と非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞との間で少なくとも50%差次的に発現することが公知である、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記複数の遺伝子の各遺伝子は、AD患者に由来する対応する同調させた細胞と非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞との間で少なくとも100%差次的に発現することが公知である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記複数の遺伝子は、AC004057.1、AC092651.1、ACP6、ADAM20、ASXL2、C2CD5、CARNS1、FAM149B1、GLIS3-AS1、IL18R1、LINC01393、LZIC、MAP1LC3B2、NHLH1、NORAD、NPPA-AS1_3、OSMR-AS1、PAN3、PHBP8、PSMB9、RAB3IP、RDH16、RFESDP1、RPL5、SCG2、SDHD、SHISA5、SLC45A3、SNHG14、TTC26、URB2、USMG5、WASF2、ZCWPW2、ZNF444、およびZNF70からなる群より選択される2種またはこれより多くの遺伝子を含む、項目9に記載の方法。
(項目14)
遺伝子の発現レベルを測定する工程は、全転写物の数あたりのその遺伝子のRNA転写物の数を測定することを含む、項目1に記載の方法。
(項目15)
ヒト被験体がアルツハイマー病(「AD」)または非アルツハイマー型認知症(「非ADD」)に罹患していると疑われている場合に、前記被験体がADに罹患しているかまたは非ADDに罹患しているかを決定するための方法であって、
(a)前記被験体に由来する培養した皮膚細胞の線維芽細胞の集団を同調させる工程であって、ここで前記同調させる工程は、前記線維芽細胞をオーバーコンフルエントになるまで培養し、次いで、得られた前記オーバーコンフルエントな線維芽細胞を飢餓状態にすることを含む工程;ならびに
(b)得られた前記同調させた線維芽細胞集団において、以下の遺伝子:AC004057.1、AC092651.1、ACP6、ADAM20、ASXL2、C2CD5、CARNS1、FAM149B1、GLIS3-AS1、IL18R1、LINC01393、LZIC、MAP1LC3B2、NHLH1、NORAD、NPPA-AS1_3、OSMR-AS1、PAN3、PHBP8、PSMB9、RAB3IP、RDH16、RFESDP1、RPL5、SCG2、SDHD、SHISA5、SLC45A3、SNHG14、TTC26、URB2、USMG5、WASF2、ZCWPW2、ZNF444、およびZNF70の各々の発現レベルを測定する工程であって、ここで各遺伝子の発現レベルを測定する工程は、全転写物の数あたりのそのRNA転写物の数を測定することを含む工程、
を包含し、それによって、(i)工程(b)において測定した発現レベルがAD患者に由来する対応する同調させた細胞における前記遺伝子の発現レベルと一致する場合、前記被験体がADに罹患している、および(ii)工程(b)において測定した発現レベルが非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞における前記遺伝子の発現レベルと一致する場合、前記被験体が非ADDに罹患している、
方法。
(項目16)
ヒト被験体がアルツハイマー病(「AD」)または非アルツハイマー型認知症(「非ADD」)に罹患していると疑われている場合に、前記被験体がADに罹患しているかまたは非ADDに罹患しているかを決定するための方法であって、
(a)前記被験体に由来する培養した不死化したBリンパ球の集団を同調させる工程であって、ここで前記同調させる工程は、前記リンパ球をオーバーコンフルエントになるまで培養し、次いで、得られた前記オーバーコンフルエントなリンパ球を飢餓状態にすることを含む工程;ならびに
(b)得られた前記同調させたリンパ球集団において、以下の遺伝子:AC004057.1、AC092651.1、ACP6、ADAM20、ASXL2、C2CD5、CARNS1、FAM149B1、GLIS3-AS1、IL18R1、LINC01393、LZIC、MAP1LC3B2、NHLH1、NORAD、NPPA-AS1_3、OSMR-AS1、PAN3、PHBP8、PSMB9、RAB3IP、RDH16、RFESDP1、RPL5、SCG2、SDHD、SHISA5、SLC45A3、SNHG14、TTC26、URB2、USMG5、WASF2、ZCWPW2、ZNF444、およびZNF70の各々の発現レベルを測定する工程であって、ここで各遺伝子の発現レベルを測定する工程は、全転写物の数あたりのそのRNA転写物の数を測定することを含む工程、
を包含し、それによって、(i)工程(b)において測定した発現レベルがAD患者に由来する対応する同調させた細胞における前記遺伝子の発現レベルと一致する場合に、前記被験体はADに罹患している、および(ii)工程(b)において測定した発現レベルが非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞における前記遺伝子の発現レベルと一致する場合、前記被験体が非ADDに罹患している、
方法。
(項目17)
アルツハイマー病に罹患したヒト被験体を処置するための方法であって、前記被験体に、治療上有効な量の、発現レベルがアルツハイマー病と相関する1種またはこれより多くの遺伝子の発現レベルに都合良く影響を及ぼすことが公知の薬剤を投与することを含む方法。
(項目18)
前記遺伝子は、AC004057.1、AC092651.1、ACP6、ADAM20、ASXL2、C2CD5、CARNS1、FAM149B1、GLIS3-AS1、IL18R1、LINC01393、LZIC、MAP1LC3B2、NHLH1、NORAD、NPPA-AS1_3、OSMR-AS1、PAN3、PHBP8、PSMB9、RAB3IP、RDH16、RFESDP1、RPL5、SCG2、SDHD、SHISA5、SLC45A3、SNHG14、TTC26、URB2、USMG5、WASF2、ZCWPW2、ZNF444、およびZNF70からなる群より選択される、項目17に記載の方法。
(項目19)
アルツハイマー病に罹患しているヒト被験体を処置するための方法であって、前記被験体に、治療上有効な量のカルフィルゾミブを投与することを含む方法。
(項目20)
アルツハイマー病に罹患しているヒト被験体を処置するための方法であって、前記被験体に、治療上有効な量のボルテゾミブを投与することを含む方法。
(項目21)
アルツハイマー病に罹患しているヒト被験体を処置するための方法であって、前記被験体に、治療上有効な量のブメタニドを投与することを含む方法。
(項目22)
アルツハイマー病に罹患しているヒト被験体を処置するための方法であって、前記被験体に、治療上有効な量のフロセミドを投与することを含む方法。
(項目23)
アルツハイマー病に罹患しているヒト被験体を処置するための方法であって、前記被験体に、治療上有効な量のトラセミドを投与することを含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この図は、第1の研究(「研究1」)に基づいて、AD群と非ADD群とを比較する場合の統計的に有意な遺伝子を示す。研究1から、0.1未満のP値に関しては2103種の統計的に有意な遺伝子が;0.05未満のP値に関しては1099種の統計的に有意な遺伝子が;0.01未満のP値に関しては285種の統計的に有意な遺伝子が;および0.001未満またはこれに等しいP値に関しては6種の統計的に有意な遺伝子が存在することが明らかになった。
【0010】
【
図2】この図は、研究1に基づいて、6つのAD症例および2つの非ADD症例に関して上位6種の統計的に有意な遺伝子(P≦0.001)を示す。四角は、AD集団を表す一方で、丸は、非ADD集団を表す。
【0011】
【
図3】この図は、研究1に基づいて、上位10種の統計的に有意な遺伝子(P≦0.01)の例を示す。(A)AD集団を四角で、および非ADD集団を丸で示す生のTPMデータ。(B)AD集団を四角で、および非ADD集団を丸で示す平均TPMデータ。エラーバーは、標準偏差である。(C)ADと対照(非ADD)とを比較する場合の遺伝子発現におけるパーセント変化(%Ch)、すなわち、100×(AD-非ADD)/非ADD。
【0012】
【
図4】この図は、研究1に基づいて、1% 重複確率の統計的有意性(P≦0.01)において11~20位にランク付けされた遺伝子を示す。(A)AD集団を四角で、および非ADD集団を丸で示す生のTPMデータ。(B)AD集団を四角で、および非ADD集団を丸で示す平均TPMデータ。エラーバーは、標準偏差である。(C)ADと対照(非ADD)とを比較する場合の遺伝子発現におけるパーセント変化(%Ch)、すなわち、100×(AD-非ADD)/非ADD。
【0013】
【
図5】この図は、研究1に基づいて、1% 重複確率の統計的有意性(P≦0.01)において21~30位にランク付けされた遺伝子を示す。(A)AD集団を四角で、および非ADD集団を丸で示す生のTPMデータ。(B)AD集団を四角で、および非ADD集団を丸で示す平均TPMデータ。エラーバーは、標準偏差である。(C)ADと対照(非ADD)とを比較する場合の遺伝子発現におけるパーセント変化(%Ch)、すなわち、100×(AD-非ADD)/非ADD。
【0014】
【
図6】この図は、研究1に基づいて、1% 重複確率の統計的有意性(P≦0.01)において31~40位にランク付けされた遺伝子を示す。(A)AD集団を四角で、および非ADD集団を丸で示す生のTPMデータ。(B)AD集団を四角で、および非ADD集団を丸で示す平均TPMデータ。エラーバーは、標準偏差である。(C)ADと対照(非ADD)とを比較する場合の遺伝子発現におけるパーセント変化(%Ch)、すなわち、100×(AD-非ADD)/非ADD。
【0015】
【
図7】この図は、研究1に基づいて、上位40種の遺伝子に関する遺伝子発現におけるパーセント変化(%Ch)を示す。
【0016】
【
図8】この図は、第2の研究(「研究2」)に基づいて、種々のレベルの統計的有意性P<0.001、0.01、0.05、および0.10についての、訓練セット(第1の円柱-薄い方の影付き)に関する統計的に有意な差次的に発現する遺伝子の数 対 検証セット(第2の円柱-濃い方の影付き)に関する統計的に有意な差次的に発現する遺伝子の数を示す。
【0017】
【
図9】この図は、研究2に基づいて、(A)PAN3、(B)PSMB9、(C)TTC26、(D)ZNF444、(E)NHLH1、(F)URB2および(G)ADAM20についての遺伝子ネットワークを示す。
【0018】
【
図10】この図は、研究2に基づいて、交差検証した遺伝子に関するネットワーク尺度を示す:(A)エッジ数;(B)平均ノード次数;および(C)平均ローカルクラスタリング係数。
【0019】
【
図11】この図は、研究2に基づいて、非ADD(n=3)と非認知症の対照(NDC;n=5)とを比較し、NDC集団と比較した場合の、非ADD集団における差次的に発現する遺伝子の数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
定義
本出願において、ある種の用語が使用され、それらは、以下のとおりに示される意味を有するものとする。
【0021】
本明細書で使用される場合、「投与する(administer)」とは、薬剤に関して、その薬剤を被験体の身体へと任意の公知の方法を介して送達することを意味する。具体的投与様式としては、静脈内、経口、舌下、経皮、皮下、腹腔内および髄腔内投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
さらに、本発明において、その種々の薬剤は、1種またはこれより多くの慣用的に使用される薬学的に受容可能なキャリアを使用して製剤化され得る。このようなキャリアは、当業者に周知である。例えば、経口送達システムは、錠剤およびカプセル剤を含む。これらは、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、他のセルロース物質およびデンプン)、賦形剤(例えば、ラクトースおよび他の糖、デンプン、リン酸二カルシウムおよびセルロース物質)、崩壊剤(例えば、デンプンポリマーおよびセルロース物質)および滑沢剤(例えば、ステアレートおよびタルク)のような添加剤を含み得る。注射用薬物送達システムは、例えば、液剤、懸濁剤、ゲル剤、マイクロスフェアおよびポリマー注射剤を含み、溶解度を変化させる剤(例えば、エタノール、プロピレングリコールおよびスクロース)およびポリマー(例えば、ポリカプロラクトン(polycaprylactone)およびPLGA)のような添加剤を含み得る。移植用システムは、ロッドおよびディスクを含み、PLGAおよびポリカプロラクトンのような添加剤を含み得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「アルツハイマー病」とは、以下の3つの症状の同時の罹患を意味する:(i)認知症;(ii)アミロイド斑;および(iii)神経原線維変化。認知症は、生涯の間に診断され得る。脳アミロイド斑および神経原線維変化は、例えば、剖検の間に診断され得る。アルツハイマー病のこの定義は、米国国立衛生研究所(NIH)の国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)によって提供されるものであり、「至適基準」として公知である。サンプルが採取および研究され、そのデータが本明細書で提示される全ての被験体は、剖検で確認されたADおよび非ADD患者である。
【0024】
本明細書で使用される場合、1つの遺伝子の発現レベルが、AD患者に由来する対応する同調させた細胞におけるその遺伝子の発現レベルと同じであるか、またはこれに近い場合に、それは、その発現レベルと一致する。例えば、AD患者に由来する同調させた細胞における遺伝子XのTPM尺度が10であり、そのTPM尺度が、同じ方法で同調させている非ADD患者に由来する同じタイプの細胞において100であると仮定する。被験体の遺伝子X発現レベルは、遺伝子XのAD発現レベルが、例えば、50未満、40未満、30未満、20未満、または理想的には、10もしくはこれ未満であった場合に、その発現レベルと一致するはずである。
【0025】
本明細書で使用される場合、リンパ球を「培養する、培養(culturing)」は、例えば、その培養を、ある温度および細胞成長を許容する成長因子環境において行うことによって達成される。別の実施形態において、リンパ球を「培養する」は、リンパ球生存度を保持する条件(例えば、増殖に関して本明細書で記載される条件)下で行われる。一実施形態において、細胞成長を許容する温度、塩分およびタンパク質環境は、37℃、10% ウシ胎仔血清(「FBS」)および1% ペニシリン(「PS」)を含むRPMI 1640培地である。本発明の一実施形態において、そのリンパ球を培養する工程は、3時間超にわたって行われる。好ましくは、そのリンパ球を培養する工程は、6時間超(例えば、一晩)にわたって行われる。Bリンパ球は、オーバーコンフルエント、すなわち、高密度/μlになるまで培養され得る。その高密度は、成長曲線において代表的には90%超であるプラトーとして決定される。次いで、そのリンパ球は、一晩飢餓状態にされる。
【0026】
リンパ球を被験体の血液から得るための方法は公知であり、例えば、フローサイトメトリー、Ficoll(血液の層を分離する親水性ポリサッカリド)、および勾配遠心分離が挙げられる。さらに、本主題の方法において、そのリンパ球(例えば、Bリンパ球)は、不死化形態または初代(すなわち、不死化されていない)形態で使用され得る。リンパ球(例えば、Bリンパ球)を不死化するための方法は公知であり、例えば、エプスタインバーウイルス(「EBV」)でリンパ球を処理することが挙げられる。
【0027】
本明細書で使用される場合、皮膚線維芽細胞を「培養する」は、例えば、その培養をある温度および細胞成長を許容する成長因子環境において行うことによって達成される。別の実施形態において、皮膚線維芽細胞を「培養する」は、皮膚線維芽細胞生存度を保持する条件(例えば、増殖に関して本明細書で記載される条件)下で行われる。一実施形態において、細胞成長を許容する温度、湿度およびタンパク質環境は、37℃、10% ウシ胎仔血清(「FBS」)および1% ペニシリン(「PS」)を含むDMEM培地である。本発明の一実施形態において、その皮膚線維芽細胞を培養する工程は、3時間超にわたって行われる。好ましくは、その皮膚線維芽細胞を培養する工程は、6時間超(例えば、一晩)にわたって行われる。
【0028】
皮膚線維芽細胞を被験体の血液から得るための方法は公知であり、例えば、皮膚パンチ生検、および外植片から細胞を成長させることを含む。細胞コンフルエンスが100%に達すると、細胞は継代される。代表的には2継代後に、線維芽細胞は、95%超の割合に精製される。
【0029】
本明細書で使用される場合、被験体に「由来する」細胞は、その被験体から直接除去された細胞に対して行われる培養および/または他の物理的操作を通じて生じる細胞である。例えば、被験体に由来する培養した皮膚線維芽細胞は、その被験体から直接除去された皮膚細胞のサンプル(例えば、パンチ生検に含まれる)の培養を通じて生じるそれら皮膚線維芽細胞である。
【0030】
本明細書で使用される場合、「アルツハイマー病を診断する」とは、症状のあるヒト被験体に関して、その被験体がアルツハイマー病に罹患している可能性が50%より高いことを決定することを意味する。好ましくは、「アルツハイマー病を診断する」とは、その被験体がアルツハイマー病に罹患している可能性が60%超、70%超、80%超または90%超あることを決定することを意味する。本明細書で使用される場合、語句「被験体がアルツハイマー病に罹患しているかを決定する」は、語句「アルツハイマー病を診断する」と同義である。
【0031】
本明細書で使用される場合、「非ADDを診断する」とは、症状のあるヒト被験体に関して、その被験体が非ADDに罹患している可能性が50%より高いことを決定することを意味する。好ましくは、「非ADDを診断する」とは、その被験体が非ADDに罹患している可能性が60%超、70%超、80%超または90%超あることを決定することを意味する。本明細書で使用される場合、語句「被験体は非ADDに罹患しているかを決定する」は、語句「非ADDを診断する」と同義である。
【0032】
本明細書で使用される場合、遺伝子は、例えば、AD患者に由来する同調させた細胞における遺伝子のTPM尺度が、同じ方法で同調させている非ADD患者に由来する同じタイプの細胞におけるものとは異なる場合に、「AD患者に由来する対応する同調させた細胞と非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞との間で差次的に発現する」。例えば、遺伝子Xは、AD患者に由来する同調させた細胞におけるそのTPM尺度が10であり、そのTPM尺度が同じ方法で同調させている非ADD患者に由来する同じタイプの細胞において100である場合に、AD患者に由来する対応する同調させた細胞と非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞との間で差次的に発現するはずである。
【0033】
本明細書で使用される場合、薬剤は、遺伝子の発現レベルに「都合良く(favorably)」影響を及ぼし、その発現レベルは、その薬剤が非AD状態と相関するレベルに向かってその発現を減少させるかまたは増大させるかのいずれかである場合に、ADと相関する。例えば、遺伝子Xの発現レベルが、AD患者において、罹患していない患者におけるより低い場合、その遺伝子の発現レベルに都合良く影響を及ぼす薬剤は、その発現レベルを増大させるはずである。同様に、遺伝子Xの発現レベルが、AD患者において、罹患していない患者におけるより高い場合、その遺伝子の発現レベルに都合良く影響を及ぼす薬剤は、その発現レベルを減少させるはずである。
【0034】
本明細書で使用される場合、遺伝子の発現レベルを「測定すること、測定(measuring)」とは、そのように行うための任意の手段(例えば、全RNA配列決定(2000万リード、2x75bp PE))を介して、その発現レベルを定量的に決定することを意味する。好ましくは、遺伝子の発現レベルの測定は、研究されているその細胞由来RNA集団に存在する100万の全RNA転写物(すなわち、FastQデータを介する「TPM」、およびサンプルあたりのFPKM予測)あたりのその遺伝子のRNA転写物の数を測定することによって達成される。例えば、同調させた細胞集団における遺伝子Xの発現レベルの測定は、50 TPMという結果を生じ得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、「非アルツハイマー型認知症」に罹患している被験体は、例えば、パーキンソン病、ハンチントン病および前頭側頭認知症を特徴づける認知症などの認知症を示す被験体を意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、細胞の「集団」は、遺伝子発現を評価するために必要とされる操作および研究を可能にする任意の細胞の数を含む。一実施形態において、その細胞の集団は、少なくとも1,000,000 細胞を含む。別の実施形態において、その細胞の集団は、100,000 細胞~1,000,000 細胞の間、10,000 細胞~100,000 細胞の間、1,000 細胞~10,000 細胞の間、100 細胞~1,000 細胞の間、10 細胞~100 細胞の間、および10未満の細胞(例えば、1個の細胞)を含む。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「被験体」とは、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウサギ、ブタ、ラットおよびマウス)が挙げられるが、これらに限定されない。その被験体がヒトである場合、その被験体は、任意の年齢であり得る。例えば、その被験体は、50歳もしくは50歳超、55歳もしくは55歳超、60歳もしくは60歳超、65歳もしくは65歳超、70歳もしくは70歳超、75歳もしくは75歳超、80歳もしくは80歳超、85歳もしくは85歳超、または90歳もしくは90歳超であり得る。本発明の方法は、全ての被験体、好ましくはヒト(および好ましくは症状がある)に対して想定される。
【0038】
本明細書で使用される場合、「ADまたは非ADDに罹患していると疑われる」ヒト被験体は、ADおよび非ADDの両方と一致する少なくとも1つの症状(例えば、認知症)を示す被験体である。
【0039】
本明細書で使用される場合、細胞の集団を「同調させる、同調させること(synchronizing)」とは、その集団中の細胞の少なくとも大部分を、同じ細胞周期ステージに(すなわち、G1、S、G2またはM期に、および好ましくはG1期、S期またはG2期に)置くことを意味する。一実施形態において、細胞の集団を同調させる工程は、その集団中の細胞のうちの少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または好ましくは少なくとも99%を、同じ細胞周期ステージに置くことを意味する。別の実施形態において、細胞の集団を同調させることは、その集団中の細胞を、オーバーコンフルエントになるまで培養し、次いで飢餓状態にした場合に、それらが存在する同じ細胞周期ステージに置くことを意味する。細胞をコンフルエントにし、続いて血清飢餓状態にすることは、代表的には、その細胞をG0/G1期で停止させる[1-3]。
【0040】
用量、すなわち、「治療上有効な量」は、本発明と関連して使用され、例えば、1回の投与、および2回またはこれより多くの投与(すなわち、分割する)を含む。一実施形態において、非アルツハイマーの適応症に関して承認された薬物の治療上有効な量は、その非アルツハイマーの適応症に関して承認された用量および投与レジメンである。
【0041】
本明細書で使用される場合、障害に罹患している被験体を「処置する、処置すること(treating)」とは、以下を含むものとするが、これらに限定されない:(i)その障害の進行を遅らせる、停止させるもしくは逆転する(reversing)、(ii)その障害の症状の進行を遅らせる、停止させるもしくは逆転する、(iii)その障害の再発の可能性を低減する、および/または(iv)その障害の症状が将来的に再発する可能性を低減する。好ましい実施形態において、障害に罹患している被験体を処置することは、(i)その障害の進行を、理想的には、その障害を排除する点まで逆転する、および/または(ii)その障害の症状の進行を、理想的には、その症状を排除する点まで逆転することを意味する。
【0042】
ADの処置は、多くの臨床エンドポイントに従って測定され得る。これらとしては、(a)(i)認知症、(ii)シナプス喪失、(iii)アミロイド斑および/もしくは(iv)神経原線維変化の進行を減少させるか、安定化するかもしくは遅らせる、ならびに/または(b)発現レベルがADと相関する遺伝子の発現レベルに都合良く影響を及ぼすことが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明の実施形態
本発明は、ヒト被験体がADまたは非ADDに罹患していると疑われる場合、その被験体がADに罹患しているかまたは非ADDに罹患しているかを決定するための正確な遺伝子ベースの方法を提供する。本主題の方法は、少なくとも部分的に、患者の適切な細胞集団を同調させ、次いで、AD細胞と非ADD細胞との間で差次的に発現する遺伝子の発現レベルを測定することが、その患者を、ADまたは非ADDのいずれかを有すると正確に診断することを可能にするという驚くべき発見に基づく。本発明はまた、ある種の遺伝子発現を変更する薬剤を使用して、ADを処置するための方法を提供する。
【0044】
具体的には、本発明は、ヒト被験体がADまたは非ADDに罹患していると疑われる場合、その被験体がADに罹患しているかまたは非ADDに罹患しているかを決定するための方法であって、
(a)その被験体に由来する適切な細胞の集団を同調させる工程;および
(b)得られたその同調させた細胞集団において、AD患者に由来する対応する同調させた細胞と非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞との間で差次的に発現することが公知の遺伝子の発現レベルを測定する工程、
を包含し、それによって、(i)工程(b)において測定した発現レベルがAD患者に由来する対応する同調させた細胞におけるその遺伝子の発現レベルと一致する場合、その被験体はADに罹患している、および(ii)工程(b)において測定した発現レベルが非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞におけるその遺伝子の発現レベルと一致する場合、その被験体は非ADDに罹患している、方法を提供する。
【0045】
本主題の方法の一実施形態において、その被験体に由来する適切な細胞は、培養した皮膚細胞の線維芽細胞である。別の実施形態において、その被験体に由来する適切な細胞は、培養したBリンパ球(好ましくは、不死化したBリンパ球)である。
【0046】
細胞集団を同調させるための方法は、当該分野で公知である。本主題の方法の一実施形態において、適切な細胞の集団を同調させることは、その細胞をオーバーコンフルエントになるまで培養し、次いで、得られたそのオーバーコンフルエントな細胞を飢餓状態にすることを含む。
【0047】
理想的には、本主題の方法において、その遺伝子は、有意なマージンで差次的に発現することが公知である。一実施形態において、その遺伝子は、AD患者に由来する対応する同調させた細胞と非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞との間で少なくとも50%差次的に発現することが公知である。好ましくは、その遺伝子は、AD患者に由来する対応する同調させた細胞と非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞との間で少なくとも100%差次的に発現することが公知である。差次的発現の程度を表す別の方法は、「% 変化」または「%Ch」であり、これは、[AD発現-非ADD発現/非ADD発現]に等しい。
【0048】
本主題の方法の別の好ましい実施形態において、その遺伝子は、CFAP97、LINC01393、ZNF623、HAUS2、PAN3、PSMB9、ZFP28、TTC26、RFESDP1、ZNF444、WASF2、NHLH1、NPPA-AS1_3、NORAD、URB2、ADAM20、ZCWPW2、AC004057.1、AC092651.1、ACP6、ACP2、C2CD5、CARNS1、FAM149B1、GLIS3-AS1、ASXL2およびIL18R1からなる群より選択される。
【0049】
一実施形態において、表9に示される遺伝子発現レベルは、個々にまたはまとめて(例えば、1種、2種もしくはこれより多く、3種もしくはこれより多く、4種もしくはこれより多くなど)、ADを示す。好ましい実施形態において、表10に示される遺伝子発現レベルは、個々にまたはまとめて(例えば、1種、2種もしくはこれより多く、3種もしくはこれより多く、4種もしくはこれより多くなど)、ADを示す。例えば、表10に示されるように、18 TPMより大きいPSMB9発現レベルは、ADを示す。なお別の実施形態において、本明細書で開示される各他の遺伝子に関するADを示す発現レベルは、示されるデータに基づいて容易に決定される。
【0050】
本主題の方法のさらなる好ましい実施形態において、工程(b)は、複数の遺伝子(各遺伝子は、AD患者に由来する対応する同調させた細胞と非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞との間で差次的に発現することが公知である)の発現レベルを測定することを含む。その複数の遺伝子(例えば、少なくとも2種の遺伝子、少なくとも5種の遺伝子、少なくとも20種の遺伝子、少なくとも100種の遺伝子、および少なくとも1,000種の遺伝子)は、任意の適切なサイズであり得る。好ましくは、その複数の遺伝子の各遺伝子は、AD患者に由来する対応する同調させた細胞と非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞との間で少なくとも50%(およびより好ましくは少なくとも100%)差次的に発現することが公知である。本主題の方法のなお別の好ましい実施形態において、その複数の遺伝子は、AC004057.1、AC092651.1、ACP6、ADAM20、ASXL2、C2CD5、CARNS1、FAM149B1、GLIS3-AS1、IL18R1、LINC01393、LZIC、MAP1LC3B2、NHLH1、NORAD、NPPA-AS1_3、OSMR-AS1、PAN3、PHBP8、PSMB9、RAB3IP、RDH16、RFESDP1、RPL5、SCG2、SDHD、SHISA5、SLC45A3、SNHG14、TTC26、URB2、USMG5、WASF2、ZCWPW2、ZNF444、およびZNF70からなる群より選択される2種またはこれより多くの遺伝子を含む。
【0051】
複数の遺伝子の発現レベルが測定される本主題の方法において、工程(b)において測定した発現レベルは、例えば、測定される遺伝子発現レベルのうちの少なくとも大部分に関して、各々のこのようなレベルがAD患者に由来する対応する同調させた細胞におけるその遺伝子の発現レベルと独立して一致する場合、AD患者に由来する対応する同調させた細胞における発現レベルと「一致」する。
【0052】
本主題の方法において、遺伝子の発現レベルを測定する工程は、当該分野で公知の任意の適切な方法によって達成され得る。好ましい実施形態において、遺伝子の発現レベルを測定する工程は、全転写物の数あたりのその遺伝子のRNA転写物の数を測定することを含む。
【0053】
好ましい実施形態において、本主題の発明は、ヒト被験体がADまたは非ADDに罹患していると疑われる場合、その被験体がADに罹患しているかまたは非ADDに罹患しているかを決定するための方法であって、
(a)その被験体に由来する培養した皮膚細胞の線維芽細胞の集団を同調させる工程であって、ここでその同調させる工程は、その線維芽細胞をオーバーコンフルエントになるまで培養し、次いで、得られたそのオーバーコンフルエントな線維芽細胞を飢餓状態にすることを含む工程;および
(b)得られたその同調させた線維芽細胞集団において、以下の遺伝子:AC004057.1、AC092651.1、ACP6、ADAM20、ASXL2、C2CD5、CARNS1、FAM149B1、GLIS3-AS1、IL18R1、LINC01393、LZIC、MAP1LC3B2、NHLH1、NORAD、NPPA-AS1_3、OSMR-AS1、PAN3、PHBP8、PSMB9、RAB3IP、RDH16、RFESDP1、RPL5、SCG2、SDHD、SHISA5、SLC45A3、SNHG14、TTC26、URB2、USMG5、WASF2、ZCWPW2、ZNF444、およびZNF70の各々の発現レベルを測定する工程であって、ここで各遺伝子の発現レベルを測定する工程は、全転写物の数あたりのそのRNA転写物の数を測定することを含む工程、
を包含し、それによって、(i)工程(b)において測定した発現レベルがAD患者に由来する対応する同調させた細胞におけるその遺伝子の発現レベルと一致する場合、その被験体はADに罹患している、および(ii)工程(b)において測定した発現レベルが非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞におけるその遺伝子の発現レベルと一致する場合、その被験体は非ADDに罹患している、方法を提供する。
【0054】
別の好ましい実施形態において、本主題の発明は、ヒト被験体がADまたは非ADDに罹患していると疑われる場合、その被験体がADに罹患しているかまたは非ADDに罹患しているかを決定するための方法であって、
(a)その被験体に由来する培養した不死化Bリンパ球の集団を同調させる工程であって、ここでその同調させる工程は、そのリンパ球をオーバーコンフルエントになるまで培養し、次いで、得られたそのオーバーコンフルエントなリンパ球を飢餓状態にすることを含む工程;および
(b)得られたその同調させたリンパ球集団において、以下の遺伝子:AC004057.1、AC092651.1、ACP6、ADAM20、ASXL2、C2CD5、CARNS1、FAM149B1、GLIS3-AS1、IL18R1、LINC01393、LZIC、MAP1LC3B2、NHLH1、NORAD、NPPA-AS1_3、OSMR-AS1、PAN3、PHBP8、PSMB9、RAB3IP、RDH16、RFESDP1、RPL5、SCG2、SDHD、SHISA5、SLC45A3、SNHG14、TTC26、URB2、USMG5、WASF2、ZCWPW2、ZNF444、およびZNF70の各々の発現レベルを測定する工程であって、ここで各遺伝子の発現レベルを測定する工程は、全転写物の数あたりのそのRNA転写物の数を測定することを含む工程、
を包含し、それによって、(i)工程(b)において測定した発現レベルがAD患者に由来する対応する同調させた細胞におけるその遺伝子の発現レベルと一致する場合、その被験体はADに罹患している、および(ii)工程(b)において測定した発現レベルが非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞におけるその遺伝子の発現レベルと一致する場合、その被験体は非ADDに罹患している、方法を提供する。
【0055】
本発明はさらに、ヒト被験体がADまたは非ADDに罹患していると疑われる場合、その被験体がADに罹患しているか、非ADDに罹患しているか、またはいずれでもない障害(「NDS」)に罹患しているかを決定するための方法であって、
(a)その被験体に由来する適切な細胞の集団を同調させる工程;および
(b)得られたその同調させた細胞集団において、AD患者に由来する対応する同調させた細胞と、非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞と、NDS被験体に由来する対応する同調させた細胞との間で差次的に発現することが公知の遺伝子の発現レベルを測定する工程、
を包含し、それによって、(i)工程(b)において測定した発現レベルがAD患者に由来する対応する同調させた細胞におけるその遺伝子の発現レベルと一致する場合、その被験体はADに罹患している、(ii)工程(b)において測定した発現レベルが非ADD患者に由来する対応する同調させた細胞におけるその遺伝子の発現レベルと一致する場合、その被験体は非ADDに罹患している、(iii)工程(b)において測定した発現レベルがNDS被験体に由来する対応する同調させた細胞におけるその遺伝子の発現レベルと一致する場合、その被験体はADにも非ADDにも罹患していない、方法を提供する。ヒト被験体がADに罹患しているかまたは非ADDに罹患しているかを決定するための上記の診断方法の種々の実施形態は、必要な変更を施してこの方法に適用する。
【0056】
本発明は、アルツハイマー病に罹患しているヒト被験体を処置するための方法であって、その被験体に、治療上有効な量の、発現レベルがアルツハイマー病と相関する1種またはこれより多くの遺伝子の発現レベルに都合良く影響を及ぼすことが公知の薬剤を投与することを含む、方法をさらに提供する。好ましくは、その遺伝子は、AC004057.1、AC092651.1、ACP6、ADAM20、ASXL2、C2CD5、CARNS1、FAM149B1、GLIS3-AS1、IL18R1、LINC01393、LZIC、MAP1LC3B2、NHLH1、NORAD、NPPA-AS1_3、OSMR-AS1、PAN3、PHBP8、PSMB9、RAB3IP、RDH16、RFESDP1、RPL5、SCG2、SDHD、SHISA5、SLC45A3、SNHG14、TTC26、URB2、USMG5、WASF2、ZCWPW2、ZNF444、およびZNF70からなる群より選択される。一実施形態において、その遺伝子は、IL18R1、PSMB9、TTC26、WASF2、ACP6、CARNS1、NPPA-AS1_3、SCG2およびSDHDからなる群より選択される。別の実施形態において、その遺伝子は、IL18R1、PSMB9、TTC26、WASF2、ACP6、CARNS1、NPPA-AS1_3、SCG2またはSDHDである。
【0057】
本発明は、アルツハイマー病に罹患しているヒト被験体を処置するための方法をさらに提供し、その方法は、その被験体に、治療上有効な量の、以下からなる群より選択される薬剤を投与することを含む:カルフィルゾミブ(Kyprolis(登録商標), Onyx Pharmaceuticals)、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標), Takeda Oncology)、ブメタニド(Bumex(登録商標), Hoffman-La Roche)、フロセミド(Lasix(登録商標))、トラセミド(Demadex(登録商標))、フラビンモノヌクレオチド、リン酸、リボフラビン、γーアミノ酪酸、アデノシン一リン酸、ヒスチジン、L-アルギニン、シスプラチン、クロザピン、シクロスポリンA、デキサメタゾン、エタネルセプト、エタノール、フィルグラスチム、グルコース、ハロペリドール、ヘパリン、インフリキシマブ、レフルノミド、一酸化窒素、酸素、ポリエチレングリコール、プレドニゾロン、プロゲステロン、タクロリムス、サリドマイド、亜鉛、カルシトリオール、カルシウム、セリン、アセチルコリン、カプサイシン、ドパミン、ヒスタミン、リチウム、ノルエピネフリン、コハク酸、ギ酸、トロメタミン、クエン酸、10Z-ヒメニアルジシン(Tocris)、JIB 04(Tocris)、CRT 0066101(Tocris)、セラストロール、ジヒドロエポネマイシン、酒石酸水素ノルアドレナリン(Tocris)、または表7に列挙される任意の他の薬物。好ましい実施形態において、上記薬剤は、カルフィルゾミブであり、これは、一実施形態において、その承認された適応症のうちの1つに関してFDA承認の表示に述べられた様式で投与される(例えば、多発性骨髄腫を処置することに関して承認された様式で、ここでその製剤は注射剤であり、30mgまたは60mgの用量で投与される)。別の好ましい実施形態において、その薬剤は、ボルテゾミブであり、これは、一実施形態において、その承認された適応症のうちの1つに関してFDA承認の表示に述べられた様式で投与される(例えば、多発性骨髄腫を処置することに関して承認された様式で、ここでその製剤は注射剤であり、3.5mgまたは1.3mg/m2の用量で投与される)。別の好ましい実施形態において、その薬剤は、ブメタニドであり、これは、一実施形態において、その承認された適応症のうちの1つに関してFDA承認の表示に述べられた様式で投与される(例えば、浮腫を処置することに関して承認された様式で、ここでその製剤は経口剤であり、0.5mg、1mgまたは2mgの用量で毎日、2日毎、または3~4日間にわたって毎日、続いて1~2日の休薬期間で投与される)。別の好ましい実施形態において、その薬剤は、フロセミドであり、これは、一実施形態において、その承認された適応症のうちの1つに関してFDA承認の表示に述べられた様式で投与される(例えば、浮腫または高血圧症の処置に関して承認された様式で、ここでその製剤は経口剤であり、1日あたり20mg、40mg、60mgまたは80mg(例えば、40mgを毎日2回)の用量で投与される)。別の好ましい実施形態において、その薬剤は、トラセミドであり、これは、一実施形態において、その承認された適応症のうちの1つに関してFDA承認の表示に述べられた様式で投与される(例えば、浮腫または高血圧症を処置することに関して承認された様式で、ここでその製剤は経口剤であり、1日あたり5mg、10mg、15mgまたは20mgの用量で投与される)。
【0058】
別の好ましい実施形態において、その薬剤は、シスプラチン、クロザピン、シクロスポリンA、デキサメタゾン、エタネルセプト、フィルグラスチム、ハロペリドール、ヘパリン、インフリキシマブ、レフルノミド、プレドニゾロン、プロゲステロン、タクロリムス、サリドマイドまたはカルシトリオールのうちのいずれかであり、これは、一実施形態において、その承認された適応症のうちの1つに関してFDA承認の表示に述べられた様式で投与される。
【0059】
10Z-ヒメニアルジシン、JIB 04、CRT 0066101、セラストロール、ジヒドロエポネマイシン、酒石酸水素ノルアドレナリン、および他の非FDA承認の薬物の各々に関しては、その好ましい投与経路は経口であり、その好ましい投与量は、0.1mg/kg~100mg/kg、1mg/kg~5mg/kg、5mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~15mg/kg、または15mg/kg~20mg/kgである。
【0060】
本発明は、以下の実施例を参照することによってよりよく理解されるが、当業者は、その詳述される具体例が、その後に続く請求項の中でより十分に記載されるように、本発明の例証に過ぎないことを容易に認識する。
【実施例0061】
【0062】
【0063】
【0064】
実施例2 - 研究2; アルツハイマー病に関する同調させた細胞周期遺伝子発現試験; 遺伝子差次的発現の交差検証
アルツハイマー病患者(AD;n=6)と非アルツハイマー型認知症患者(非ADD; n=2)との間の、同調させた皮膚線維芽細胞における遺伝子の差次的発現の最初の所見は、サンプルの第2のバッチ(AD; n=2; 非AD n=3)と相互相関した。サンプルの2つのバッチを分離する目的で、本発明者らは、サンプルの第1のセットを「トレーニングセット」およびサンプルの第2のセットを「検証セット」と称した。
【0065】
方法
遺伝子を、統計的有意性が減少する順に、すなわち、最高の統計的有意性を最初にしてランク付けした(表4および5における例)。そのランク付けは、2群のサンプル、ADおよび非ADDについてのt検定(両側、不等分散)に基づく。遺伝子の2つのリストの比較を、以下で記載されるとおりに行った。
【0066】
結果
統計的に有意な遺伝子の数は、トレーニングセットおよび検証セットにおいて類似であり(
図8)、統計的有意性が低いほど差異は小さく(P<0.10)、統計的有意性が高いほど差異は大きい(P<0.001)。統計的有意性が高いほど差異は大きい(P<0.001)ことは、そのトレーニングセット(8)に対して比較した場合に、その検証セット(5)における異なるサンプル数に起因し得るのみならず、その2つのセットにおける非ADDサンプルのタイプが異なることにも起因し得る。この差異は、調節不全の経路の多様性が高いことを示唆する。
【0067】
表4および5に示される遺伝子のうちの大部分(n=53)は、最高の統計的有意性(P<0.001)の下にあり、それらは全て、高い統計的有意性(P<0.01)の下にある。そのトレーニングセッからトの上位40種の遺伝子の存在(表4)を、検証セットからの2,077種の遺伝子のリスト(P<0.10;
図8)においてチェックした。同様に、その検証セットからの上位40種の遺伝子の存在(表5)を、そのトレーニングセットからの2,103種の遺伝子のリスト(P<0.10;
図8)においてチェックした。表4および表5の上位40種の遺伝子は、最高の統計的有意性の下にあるので、アルツハイマー病の検出、処置、および経路調節不全において最も高い影響を有する可能性が非常に高い。各セットにおける上位40種の遺伝子の相互相関は、非ADDサンプルにおける多様性に順応し、その検証セット(5)およびトレーニングセット(8)における異なるサンプル数を補償するために、反対のセット(opposite set)からのより大きな遺伝子プールで行った(P<0.10)。しかし、最終的には、類似の統計的有意性を有する遺伝子のみが、ADの調節不全のコアを代表すると考えられる。
【0068】
最高の統計的に有意な40種の遺伝子におけるこれらの最初の所見の結果は、そのトレーニングセットにおいて調節不全にされた遺伝子のうちの約81%が、その検証セットにおいても調節不全にされることを示唆する。しかし、これら遺伝子のうちのわずか約7.5%が、そのトレーニングセットおよび検証セットにおいて同じ統計的有意性を示す(表6)。
【0069】
そのトレーニングセットおよび検証セットにおいて同じ統計的有意性を示すそれら遺伝子は、その調節不全にされた経路のコアにあり、ADの遺伝的バイオマーカーのコアにあり、ADの治療標的のコアにある可能性が非常に高い。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【表7-7】
【0074】
【0075】
実施例3 - 研究2; TPM値
基準範囲
平均および標準偏差を、その2群の各々-各遺伝子のアルツハイマー病(AD)および非アルツハイマー型認知症(非ADD)の100万個あたりの転写物(TPM)値に関して計算した。次いで、その基準範囲を、平均±2標準偏差として、Horn and Pesce(Reference Intervals: A User’s Guide. Paul S. Horn and Amadeo J. Pesce. Washington, DC: AACC Press, 2005, ISBN 1-59425-035-9)に従って計算した。このようにして計算した基準範囲は、各集団(ADまたは非ADD)における全ての可能な値の95%が考慮されることを保証する。
【0076】
ADと非ADDとの間のギャップ
ADの基準範囲と非ADDの基準範囲との間に重複が存在しない場合、2つのベル型曲線の間にはギャップが存在し、それは明白な診断を示す。
【0077】
ADの基準範囲および非ADDの基準範囲において重複が存在する場合(表9において薄い灰色)、その診断には偽陽性または偽陰性の可能性がある。その基準範囲の中で重複を、すなわち、ギャップなし(薄い灰色)を示す遺伝子を、最終的なベクトル診断から排除した。その群のうちの一方において(AD群または非ADD群のうちのいずれかにおいて)、平均0を示す遺伝子もまた、排除した。
【0078】
各遺伝子のカットオフ
その残りの26種の遺伝子(表10)の各々に関するカットオフを、基準範囲におけるギャップの中央として決定した。
【0079】
遺伝子ベクトルAD診断
そのAD診断は、そのベクトルの26種の構成要素/遺伝子に基づく。その構成要素のうちの各1種に関して、そのカットオフ値より大きい(>)またはより小さい(<)を、最後の列に各遺伝子に関して示す。
【0080】
【0081】
【0082】
参考文献
1. Chen M et al. “Serum Starvation Induced Cell Cycle Synchronization Facilitates Human Somatic Cells Reprogramming”, PLoS ONE 7(4) (2012).
2. Baghdadchi N. “The Effects of Serum Starvation on Cell Cycle Synchronization”, OSR Journal of Student Research (2013).
3. Hayes O et al. “Cell confluency is as efficient as serum starvation for inducing arrest in the G0/G1 phase of the cell cycle in granulosa and fibroblast cells of cattle”, Anim. Reprod. Sci.87(3-4):181-92 (2005).
4. Spellman PT et al, ”Comprehensive identification of cell cycle-regulated genes of the yeast Saccharomyces cerevisiae by microarray hybridization” Mol. Biol. Cell. 9(12):3273-97(1998).