(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060389
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】試験用治具、及び、当該試験用治具を用いた試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/04 20060101AFI20230421BHJP
【FI】
G01N3/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169092
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 植
(72)【発明者】
【氏名】谷江 尚史
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA07
2G061AA08
2G061AA17
2G061AB01
2G061DA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】汎用的な単軸荷重試験機で曲げモーメントとねじりモーメントを試験体に付与すること、及び、両モーメントの大きさを独立で正確に調整することを実現する。
【解決手段】試験用治具10は、長尺な本体部91と本体部の両端部に配置された第1トルクアーム92aと第2トルクアーム92bとを有する試験体90を固定する第1治具11と、試験体の第1トルクアームと第2トルクアームとに当接する第2治具12と、を備え、第2治具に作用する荷重を第1トルクアームと第2トルクアームとに付与することにより、第1トルクアーム及び第2トルクアームを介して曲げモーメントとねじりモーメントとを試験体に付与する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な本体部と当該本体部の両端部に配置された第1トルクアームと第2トルクアームとを有する試験体の試験用治具であって、
前記試験体を固定する第1治具と、
前記試験体の前記第1トルクアームと前記第2トルクアームとに当接する第2治具と、を備え、
前記第2治具に作用する荷重を前記第1トルクアームと前記第2トルクアームとに付与することにより、前記第1トルクアーム及び前記第2トルクアームを介して曲げモーメントとねじりモーメントとを前記試験体に付与する
ことを特徴とする試験用治具。
【請求項2】
長尺な試験体の試験用治具であって、
試験体の両端に配置された第1トルクアーム及び第2トルクアームと、
前記試験体を固定する第1治具と、
前記試験体の前記第1トルクアームと前記第2トルクアームとに当接する第2治具と、を備え、
前記第2治具に作用する荷重を前記第1トルクアームと前記第2トルクアームとに付与することにより、前記第1トルクアーム及び前記第2トルクアームを介して曲げモーメントとねじりモーメントとを前記試験体に付与する
ことを特徴とする試験用治具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の試験用治具において、
前記第1トルクアームと前記第2治具との当接位置から前記試験体の軸心までの直交距離及び前記第2トルクアームと前記第2治具との当接位置から前記試験体の軸心までの直交距離を変化させることで、前記試験体に付与するねじりモーメントの大きさを調整する
ことを特徴とする試験用治具。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の試験用治具において、
前記第1治具は、前記試験体を支持する複数の支持部を有し、
上面視で、前記試験体の一方の端部から最も近い支持部までの水平距離及び前記試験体の他方の端部から最も近い支持部までの水平距離を変化させることで、前記試験体に付与する曲げモーメントの大きさを調整する
ことを特徴とする試験用治具。
【請求項5】
請求項1または2に記載の試験用治具において、
前記第1治具は、
前記試験体を支持する複数の支持部と、
前記支持部が設けられたベース部と、を有し、
前記第2治具は、
前記第1トルクアームに当接する第1当接部と、
前記第2トルクアームに当接する第2当接部と、
前記第1当接部と前記第2当接部が設けられ、かつ、前記試験体よりも長尺な胴体部と、を有し、
前記第2治具の前記第1当接部と前記第2当接部は、同形状及び同サイズになっており、かつ、前記胴体部のそれぞれに対応する端部から下方向に突出するように配置されている
ことを特徴とする試験用治具。
【請求項6】
請求項1または2に記載の試験用治具において、
前記第1治具は、
前記試験体を支持する複数の支持部と、
前記支持部が設けられたベース部と、を有し、
前記第2治具は、
前記第1トルクアームに当接する第1当接部と、
前記第2トルクアームに当接する第2当接部と、
前記第1当接部と前記第2当接部が設けられ、かつ、前記試験体よりも長尺な胴体部と、を有し、
前記第2治具の前記第1当接部と前記第2当接部は、同形状及び同サイズになっており、かつ、前記胴体部のそれぞれに対応する端部から上方向に突出するように配置されている
ことを特徴とする試験用治具。
【請求項7】
請求項5または6に記載の試験用治具において、
前記第1治具は、上面視で前記試験体の中心位置に仮想的に配置された中心軸と前記第2治具の胴体部の中心位置に仮想的に配置された中心軸とが重なる位置に前記試験体を配置するストッパ機構をさらに有する
ことを特徴とする試験用治具。
【請求項8】
長尺な本体部と当該本体部の両端部に配置された第1トルクアームと第2トルクアームとを有する試験体の試験治具であって、
前記第1トルクアームと前記第2トルクアームとに当接する第1治具と、
前記試験体を固定する第2治具と、を備え、
前記第1治具に作用する荷重を前記試験体の前記本体部に付与することにより、前記試験体の前記本体部と前記第1トルクアーム及び前記第2トルクアームとの間で生じる応力を利用して曲げモーメントとねじりモーメントとを前記試験体に付与する
ことを特徴とする試験用治具。
【請求項9】
長尺な試験体の試験用治具であって、
試験体の両端に配置された第1トルクアームと第2トルクアームと、
前記第1トルクアームと前記第2トルクアームとに当接する第1治具と、
前記試験体を固定する第2治具と、を備え、
前記第1治具に作用する荷重を、前記第1トルクアーム及び前記第2トルクアームを介して前記試験体に付与することにより、曲げモーメントとねじりモーメントとを前記試験体に付与する
ことを特徴とする試験用治具。
【請求項10】
請求項8または9に記載の試験用治具において、
前記第1治具は、
前記第1トルクアームに当接する第1当接部と、
前記第2トルクアームに当接する第2当接部と、
前記第1当接部と前記第2当接部が設けられ、かつ、前記試験体よりも長尺な胴体部と、を有し、
前記第2治具は、
前記試験体を支持する複数の支持部と、
前記支持部が設けられたベース部と、を有し、
前記第1治具の前記第1当接部と前記第2当接部は、同形状及び同サイズになっており、かつ、前記胴体部のそれぞれに対応する端部から上方向に突出するように配置されている
ことを特徴とする試験用治具。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれか一項に記載の試験用治具において、
前記第2治具は、上面視で前記試験体の中心位置に仮想的に配置された中心軸と前記第2治具の胴体部の中心位置に仮想的に配置された中心軸とが重なる位置に前記試験体を配置するストッパ機構をさらに有する
ことを特徴とする試験用治具。
【請求項12】
試験体に曲げモーメントとねじりモーメントとを付与する試験方法であって、
長尺な試験体の両端部に第1トルクアームと第2トルクアームとを配置して第1治具により固定し、
前記第1トルクアームと前記第2トルクアームとに第2治具を当接させ、
前記第2治具に荷重を付与し、前記第1トルクアーム及び前記第2トルクアームを介して曲げモーメントとねじりモーメントとを前記試験体に付与する
ことを特徴とする試験方法。
【請求項13】
試験体に曲げモーメントとねじりモーメントとを付与する試験方法であって、
長尺な試験体の両端部に第1トルクアームと第2トルクアームとを配置して第1治具と当接させ、前記試験体を第2治具により固定し、
前記第1治具に荷重を付与し、前記試験体と前記第1トルクアーム及び前記第2トルクアームとの間で生じる応力を利用して曲げモーメントとねじりモーメントとを前記試験体に付与する
ことを特徴とする試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
産業のロボット化及び自動化の進展に伴い、製品に用いる部品の複合荷重環境下における長期信頼性の向上が求められている。そこで、部品の長期信頼性を向上させるために、部品(試験体)に曲げモーメントとねじりモーメントを作用させる複合荷重試験方法及び複合荷重試験用治具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された複合荷重試験方法は、「試験体を単軸荷重試験機の一対のチャックに対して偏心させると共に互いに位相角を付けて配置された一対のモーメントアームの先端で前記試験体の両端を保持すると共に、前記一対のモーメントアームの基端を前記一対のチャックに取り付け、前記一対のチャックの間隔を変化させることで前記試験体に曲げモーメントと捩りモーメントを同時に付与する」ものである。また、特許文献1に記載された複合荷重試験用治具は、「試験体の両端を単軸荷重試験機の一対のチャックに取り付ける一対のモーメントアームを備え、前記一対のモーメントアームは前記試験体を前記一対のチャックに対して偏心させると共に互いに位相角を付けて配置される」ものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された複合荷重試験方法及び複合荷重試験用治具は、モーメントアームの長さと位相角のいずれか一方を変化させると、曲げモーメントとねじりモーメントの両方の大きさが変化する。そのため、試験体に付与する曲げモーメントとねじりモーメントの大きさを独立で正確に調整することが困難であった。
また、簡単な構造の試験用治具を用いて、汎用的な単軸荷重試験機で複合荷重試験できるようにすることが好ましいが、特許文献1に記載された発明では困難であった。
【0006】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、汎用的な単軸荷重試験機で曲げモーメントとねじりモーメントを簡便に試験体に付与することが可能な試験用治具、及び、当該試験用治具を用いた試験方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、長尺な本体部と当該本体部の両端部に配置された第1トルクアームと第2トルクアームとを有する試験体の試験用治具であって、前記試験体を固定する第1治具と、前記試験体の前記第1トルクアームと前記第2トルクアームとに当接する第2治具と、を備え、前記第2治具に作用する荷重を前記第1トルクアームと前記第2トルクアームとに付与することにより、前記第1トルクアーム及び前記第2トルクアームを介して曲げモーメントとねじりモーメントとを前記試験体に付与する構成とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構造でありながら、汎用的な単軸荷重試験機で曲げモーメントとねじりモーメントを試験体に付与する試験用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】実施形態1に係る試験用治具の構成図(1)である。
【
図1B】実施形態1に係る試験用治具の構成図(2)である。
【
図1C】実施形態1に係る試験用治具の上面視の構成図(3)である。
【
図2A】実施形態1に係る試験用治具の動作説明図(1)である。
【
図2B】実施形態1に係る試験用治具の動作説明図(2)である。
【
図3】実施形態1に係る試験用治具により試験体に付与される曲げモーメントとねじりモーメントの説明図である。
【
図4】実施形態1に係る試験用治具により試験体に付与される曲げモーメントの分布グラフ図である。
【
図5】実施形態1に係る試験用治具により試験体に付与されるねじりモーメントの分布グラフ図である。
【
図8】実施形態2に係る試験用治具の構成図である。
【
図10】実施形態3に係る試験用治具の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0011】
[実施形態1]
<試験用治具の構成>
以下、
図1A乃至
図5を参照して、本実施形態1に係る試験用治具10の構成について説明する。
図1A、
図1B、及び、
図1Cは、それぞれ、本実施形態1に係る試験用治具10の構成図である。
図2及び
図2Bは、それぞれ、試験用治具10の動作説明図である。
図3は、試験用治具10に付与される曲げモーメントとねじりモーメントの説明図である。
図4は、試験用治具10に付与される曲げモーメントの分布グラフ図である。
図5は、試験用治具10に付与されるねじりモーメントの分布グラフ図である。
【0012】
図1A乃至
図1Cに示すように、本実施形態では、試験体90は、長尺な本体部91と本体部91の両端部に配置された第1トルクアーム92aと第2トルクアーム92bとを有する構成になっている。以下、第1トルクアーム92aと第2トルクアーム92bとを総称する場合に「トルクアーム92」と称する場合がある。試験体90の第1トルクアームと第2トルクアームは、同形状及び同サイズになっており、かつ、試験体90の中心位置に仮想的に配置された中心軸C90(
図1C参照)を中心にして軸周りに回転対称に配置されている。つまり、第1トルクアームと第2トルクアームとを両端部に有する試験体90は、中心位置に仮想的に配置された中心軸C90(
図1C参照)を中心にして軸周りに回転対称な形状になっている。
【0013】
本実施形態に係る試験用治具10は、試験体90を固定する第1治具11と、試験体90の第1トルクアーム92aと第2トルクアーム92bとに当接する第2治具12と、を備えている。本実施形態では、試験用治具10は、第1治具11が試験体90の下方に固定配置され、第2治具12が試験体90の上方に上下動可能に配置される構成になっている。
【0014】
第1治具11は、床面等に固定配置されるベース部111と、試験体90の本体部91を支持する複数の支持部(図示例では2つの支持部112a,112b)と、試験体90の本体部91を保持する試験体ストッパ113と、試験体90の本体部91の両端部を保持するトルクアームストッパ114a,114bと、を有している。図示例では、ベース部111は、第1ベース部111aと第2ベース部111bとの2つの部位を有する構成になっている。
【0015】
第1ベース部111aは、第2ベース部111bの上方に配置され、かつ、支持部112a,112bと複数の試験体ストッパ113とが上面に設けられた部位である。第1ベース部111aの上面は、平面状になっている。第1治具11は、第1ベース部111aの上面が水平になるように配置される。支持部112a,112bは、第1ベース部111aの上面から上方に突出する突起部として形成されている。支持部112aと支持部112bの上端部(頂点)は、第1ベース部111aの上面から同じ高さの位置に設定されている。
【0016】
試験体ストッパ113は、試験体90の変位やズレを抑制する構成要素である。試験体ストッパ113は、第1ベース部111aの上面から上方に突出する突起部として形成されている。複数の試験体ストッパ113は、試験体90が本体部91の径方向に移動しないように、試験体90の本体部91を保持する部位である。第2ベース部111bは、第1ベース部111aの下方に配置され、かつ、トルクアームストッパ114a,114bが上面に設けられた部位である。
【0017】
トルクアームストッパ114a,114bは、トルクアーム(第1トルクアーム92a及び第2トルクアーム92b)の変位やズレを抑制する構成要素である。トルクアームストッパ114a,114bは、試験体90が本体部91の軸方向に移動しないように、試験体90の端部を保持する。トルクアームストッパ114aは、第1トルクアーム92aの側面部に当接するように形成されている。トルクアームストッパ114bは、第2トルクアーム92bの側面部に当接するように形成されている。
【0018】
試験体ストッパ113及びトルクアームストッパ114a,114bは、上面視で試験体90の中心位置に仮想的に配置された中心軸C90(
図1C参照)と第2治具12の胴体部121の中心位置に仮想的に配置された中心軸C12(
図1C参照)とが重なる位置に試験体90を配置するストッパ機構として機能する。
図1Aに示す例では、試験用治具10は、試験体90の変位やズレを抑制するために4つの試験体ストッパ113を有するとともに、トルクアーム(第1トルクアーム92a及び第2トルクアーム92b)の変位やズレを抑制するために2つのトルクアームストッパ114a,114bを有している。しかしながら、試験体ストッパ113及びトルクアームストッパ114a,114bは、これに限らず、試験体90の変位やズレ及びトルクアーム(第1トルクアーム92a及び第2トルクアーム92b)の変位やズレを抑制できれば、数や形状を適宜変更することができる。
【0019】
第2治具12は、試験体90の第1トルクアーム92aに当接する第1当接部122aと、試験体90の第2トルクアーム92bに当接する第2当接部122bと、両端部に第1当接部122aと第2当接部122bが設けられ、かつ、試験体90の本体部91よりも長尺な胴体部121と、を有している。本実施形態では、第2治具12の第1当接部122aと第2当接部122bは、同形状及び同サイズになっており、かつ、胴体部121のそれぞれに対応する端部から下方向に突出するように配置されている。本実施形態では、第2治具12の第1当接部122aは、試験体90の第1トルクアーム92aに対して上方から点接触で当接する構成になっている。また、第2治具12の第2当接部122bは、試験体90の第2トルクアーム92bに対して上方から点接触で当接する構成になっている。
【0020】
図1Bに示すように、第1治具11において、試験体90の両端部から第1長さL1の位置に支持部112a,112bが配置されている。第1長さL1は、試験体90の端部から最も近い支持部(支持部112a又は支持部112b)までの水平距離である。
【0021】
図1Cに示す例では、第2治具12は、試験体90の本体部91の軸心C91から前後方向に第2長さL2の位置で、第1トルクアーム92a及び第2トルクアーム92bと当接している。第2長さL2は、トルクアーム(第1トルクアーム92a又は第2トルクアーム92b)と第2治具12との当接位置から試験体90の本体部91の軸心C91までの直交距離である。
【0022】
図2Aに示すように、曲げモーメントとねじりモーメントの複合荷重試験では、汎用的な単軸荷重試験機(図示せず)により第2治具12に荷重Fが付与される。すると、
図2Bに示すように、試験用治具10は、第2治具12に作用する荷重Fを第1トルクアーム92aと第2トルクアーム92bとに付与する。これにより、試験用治具10は、第1トルクアーム92a及び第2トルクアーム92bを介して曲げモーメントMとねじりモーメントTとを試験体90に付与する(同時に付与する)。
【0023】
図1Cに示すように、第1治具11は、上面視で試験体90の中心位置に仮想的に配置された中心軸C90と第2治具12の胴体部121の中心位置に仮想的に配置された中心軸C12とが重なる位置に試験体90を配置する。
【0024】
また、第2治具12は、上面視で第2治具12の中心軸C12が常に同じ位置になるように配置される。第2治具12は、中心軸C12を中心にして軸周りに回転させることができる。これにより、第2治具12は、第1当接部122aが試験体90の軸心C91に対して第2長さL2で第1トルクアーム92aと当接するとともに、第2当接部122bが試験体90の軸心C91に対して第2長さL2で第2トルクアーム92bと当接する。
【0025】
複合荷重試験の試験者は、支持部112aと支持部112bとの間の距離が異なる複数の第1治具11を予め用意しておき、運用に応じて第1治具11を取り換えることで、第1長さL1の値を変更することができる。
【0026】
また、複合荷重試験の試験者は、胴体部121の長さが異なる複数の第2治具12を予め用意しておき、運用に応じて第2治具12を取り換えることで、第2長さL2の値を変更することができる。当接位置122から試験体の軸心C91までの直交距離である第2長さL2を変化させることで、試験体90に付与するねじりモーメントの大きさを調整することができる。
【0027】
また、本実施形態1では本体部91とトルクアームとが一体の試験体90について説明したが、試験体からトルクアームを分離可能な構成にするとよい。試験用治具として、長さが異なるトルクアームを用意し、本体部91のみからなる試験体に取り付けることができる。トルクアームを交換して第2長さL2を変化させ、試験体に付与するねじりモーメントの大きさを調整することができる。
【0028】
図2Bに示すように、荷重Fを第2治具12(好ましくは胴体部121の中心位置)に付与した場合に、曲げモーメントMとねじりモーメントTとが、ともに試験体90に同時に付与される。このとき、試験体90に作用する曲げモーメントMとねじりモーメントTは、
図3に示す荷重が試験体90に作用するため、以下の式(1)と式(2)から算出することができる。
図3は、試験用治具10により試験体90に付与される曲げモーメントMとねじりモーメントTを示している。
M=(F×L2)/2 …(1)
T=(F/2)×L1 …(2)
【0029】
図4は、試験用治具10により試験体90に付与される曲げモーメントMの分布を示している。
図4において、横軸は、試験体90端部からの距離を示しており、また、縦軸は、曲げモーメントMを示している。また、
図5は、試験用治具10により試験体90に付与されるねじりモーメントの分布を示している。
図5において、横軸は、試験体90端部からの距離を示しており、また、縦軸は、ねじりモーメントTを示している。
【0030】
図4及び
図5から分かるように、試験体90の端部から支持部112a,112bまでの水平距離である第1長さL1(試験体90の端部から最も近い支持部(支持部112a又は支持部112b)までの水平距離)は、曲げモーメントMにのみ効き、ねじりモーメントTには影響しない。また、
図4及び
図5から分かるように、第2長さL2(試験体90のトルクアームと第2治具12の当接部との当接位置から試験体90の軸心C91までの直交距離)は、ねじりモーメントTにのみ効き、曲げモーメントMには影響しない。そのため、試験用治具10は、試験体90に付与する曲げモーメントMとねじりモーメントTの大きさを独立でかつ簡単に調整することができる。
【0031】
本実施形態では、第2治具12は、試験体90のトルクアームに連結されずに接触した構成になっている。しかしながら、第2治具12は、軸受け等の部品を介して試験体90のトルクアームに連結するようにしてもよい(
図6参照)。
図6は、第2治具12の変形例の構成図である。
図6に示す例では、第2治具12は、当接部122が第1部材123と第2部材124とに分離可能な構成になっている。第1部材123は、試験体90のトルクアーム92が挿入される孔部123Hoが形成された部材である。第2部材124は、胴体部121(
図1A参照)に繋がっている部材である。第1部材123と第2部材124とは、固定ネジ125で締結される構成になっている。第2治具12は、試験体90のトルクアーム92を第1部材123の孔部123Hoに挿入して、第1部材123と第2部材124とを固定ネジ125で締結することで、試験体90のトルクアーム92に連結することができる。第2治具12と試験体90のトルクアーム92とを連結した場合に、試験用治具10は、第2治具12の上下方向の繰り返しの変位によって、上下方向の両振りの曲げモーメントMとねじりモーメントTの複合荷重試験を行うことができる。
【0032】
また、本実施形態では、単軸荷重試験機(図示せず)を使用して荷重Fを一点で第2治具12に印加することを想定している。しかしながら、試験用治具10は、それに限らず、複数点で第2治具12に印加した荷重の合力のベクトルが
図2A及び
図2Bに示す荷重Fのベクトルと一致すれば、任意の荷重試験機を使用することもできる。
【0033】
また、試験体90の本体部91は、例えば丸パイプ形状のものや、角パイプ形状のもの、棒形状のものが好ましいが、これらに限らない。試験体90は、本体部91の形状に応じて、本体部91の両端部に図示せぬ追加の部品を取り付け、図示せぬ追加の部品介して本体部91とトルクアーム92とを連結するようにしてもよい。
【0034】
試験は、必ずしも曲げモーメントMとねじりモーメントTの双方を試験体90に付与しなくてもよい場合がある。そのため、場合によっては、試験用治具10は、トルクアーム92を有していない、本体部91のみを有する試験体90に対して、第2治具12の当接部122を試験体90の本体部91に当接させることで、単純に曲げモーメントMを試験体90に付与することもできる。
【0035】
なお、
図1Aに示す例では、試験体90は、本体部91の両端部から180°の位相差で逆向きに第1トルクアーム92aと第2トルクアーム92bとが突出するように配置された構成になっている。しかしながら、試験体90は、中心軸C90(
図1C参照)を中心にして軸周りに回転対称性な構成にすることができるため、例えば
図7A及び
図7Bに示す構成にすることができる。
図7A及び
図7Bは、試験体90の変形例の構成図である。
図7A及び
図7Bに示す例では、試験体90は、本体部91の両端部から中心軸C90に対して逆向きの同じ位相差で第1トルクアーム92aと第2トルクアーム92bとが突出するように配置された構成になっている。このような試験体90は、中心軸C90を中心にして軸周りに回転対称性な構成になっている。
【0036】
<試験用治具及び試験方法の主な特徴>
(1)
図1Aに示すように、本実施形態に係る試験用治具10は、長尺な本体部91と本体部91の両端部に配置された第1トルクアーム92aと第2トルクアーム92bとを有する試験体90を固定する第1治具11と、試験体90の第1トルクアーム92aと第2トルクアーム92bとに当接する第2治具12と、を備えている。本実施形態に係る試験用治具10は、第2治具12に作用する荷重Fを第1トルクアーム92aと第2トルクアーム92bとに付与することにより、第1トルクアーム92a及び第2トルクアーム92bを介して曲げモーメントM(
図2B参照)とねじりモーメントT(
図2B参照)とを試験体90に付与する(同時に付与する)。
【0037】
このような本実施形態に係る試験用治具10は、簡単な構造でありながら、汎用的な単軸荷重試験機(図示せず)で曲げモーメントM(
図2B参照)とねじりモーメントT(
図2B参照)を併せて試験体90に付与するとともに、試験体90に付与する曲げモーメントM(
図2B参照)とねじりモーメントT(
図2B参照)の大きさを独立で正確に調整することができる。
【0038】
(2)
図1Cに示すように、本実施形態に係る試験用治具10は、上面視で、第1トルクアーム92aと第2治具12の第1当接部122aとの当接位置から試験体90の本体部91の軸心C91までの直交距離(第2長さL2)及び第2トルクアーム92bと第2治具12の第2当接部122bとの当接位置から試験体90の本体部91の軸心C91までの直交距離(第2長さL2)を変化させることで、試験体90に付与するねじりモーメントT(
図2B参照)の大きさを調整する構成になっているとよい。つまり、試験用治具10は、第2治具12を交換することで、第2治具12の第1当接部122aと第2当接部122bの双方で第2長さL2が同じになるようにしつつ、試験体90のトルクアームと第2治具12との当接位置及を変更して、第2長さL2(
図1C参照)を変化させることで、試験体90に付与するねじりモーメントT(
図2B参照)の大きさを調整する構成になっているとよい。
【0039】
このような本実施形態に係る試験用治具10は、試験体90に付与するねじりモーメントT(
図2B参照)の大きさを正確かつ容易に調整することができる。
【0040】
(3)
図1Bに示すように、本実施形態に係る試験用治具10の第1治具11は、試験体90の本体部91を支持する複数の支持部112a,112bを有し、上面視で、試験体90の一方の端部から最も近い支持部112aまでの水平距離(第1長さL1)及び試験体90の他方の端部から最も近い支持部112bまでの水平距離(第1長さL1)を変化させることで、試験体90に付与する曲げモーメントM(
図2B参照)の大きさを調整する構成になっているとよい。つまり、試験用治具10は、第1治具1011を交換することで、試験体90の本体部91の両端部で第1長さL1が同じになるようにしつつ、試験体90と第1治具11との当接位置を変更して、第1長さL1を変化させることで、試験体90に付与する曲げモーメントM(
図2B参照)の大きさを調整する構成になっているとよい。
【0041】
このような本実施形態に係る試験用治具10は、試験体90に付与する曲げモーメントM(
図2B参照)の大きさを正確かつ容易に調整することができる。
【0042】
(4)
図1Aに示すように、本実施形態に係る試験用治具10の第1治具11は、試験体90の本体部91を支持する複数の支持部112a,112bと、支持部112a,112bが設けられたベース部111と、を有している。また、試験用治具10の第2治具12は、第1トルクアーム92aに当接する第1当接部122aと、第2トルクアーム92bに当接する第2当接部122bと、第1当接部122aと第2当接部122bが設けられ、かつ、試験体90の本体部91よりも長尺な胴体部121と、を有している。第2治具12の第1当接部122aと第2当接部122bは、同形状及び同サイズになっており、かつ、胴体部121のそれぞれに対応する端部から下方向に突出するように配置されている構成になっているとよい。
【0043】
このような本実施形態に係る試験用治具10は、簡単な構造でありながら、汎用的な単軸荷重試験機(図示せず)で曲げモーメントM(
図2B参照)とねじりモーメントT(
図2B参照)を併せて試験体90に付与するとともに、試験体90に付与する曲げモーメントM(
図2B参照)とねじりモーメントT(
図2B参照)の大きさを独立で正確に調整することができる。
【0044】
(5)
図1Cに示すように、本実施形態に係る試験用治具10の第1治具11は、上面視で試験体90の中心位置に仮想的に配置された中心軸C90と第2治具12の胴体部121の中心位置に仮想的に配置された中心軸C12とが重なる位置に試験体90を配置するストッパ機構(試験体ストッパ113及びトルクアームストッパ114a,114b)をさらに有する構成になっているとよい。
【0045】
このような本実施形態に係る試験用治具10は、曲げモーメントM(
図2B参照)とねじりモーメントT(
図2B参照)の大きさの調整に適した位置に、試験体90を配置することができる。
【0046】
(6)
図1Aに示すように、本実施形態に係る試験方法は、長尺な本体部91と本体部91の両端部に配置された第1トルクアーム92aと第2トルクアーム92bとを有する試験体90を固定する第1治具11と、試験体90の第1トルクアーム92aと第2トルクアーム92bとに当接する第2治具12と、を備える試験用治具10を用いて、第2治具12に作用する荷重Fを第1トルクアーム92aと第2トルクアーム92bとに付与することにより、第1トルクアーム92a及び第2トルクアーム92bを介して曲げモーメントM(
図2B参照)とねじりモーメントT(
図2B参照)とを試験体90に付与する(同時に付与する)ものである。
【0047】
このような本実施形態に係る試験方法は、簡単な構造の試験用治具10を用いて、汎用的な単軸荷重試験機(図示せず)で曲げモーメントM(
図2B参照)とねじりモーメントT(
図2B参照)を試験体90に付与するとともに、試験体90に付与する曲げモーメントM(
図2B参照)とねじりモーメントT(
図2B参照)の大きさを独立で正確に調整することができる。
【0048】
以上の通り、本実施形態1に係る試験用治具10によれば、簡単な構造でありながら、汎用的な単軸荷重試験機で曲げモーメントとねじりモーメントを試験体に付与すること、及び、両モーメント(試験体に付与する曲げモーメントとねじりモーメント)の大きさを独立で正確に調整することを実現することができる。
【0049】
[実施形態2]
実施形態1に係る試験用治具10(
図1A参照)は、荷重Fが付与される第2治具12が試験体90の上方に配置される構成になっている。これに対し、本実施形態2では、第2治具12の少なくとも荷重Fが付与される部位が試験体90の下方に配置される試験用治具10A(
図8参照)を提供する。
【0050】
以下、
図8を参照して、本実施形態2に係る試験用治具10Aの構成について説明する。8は、本実施形態2に係る試験用治具10Aの構成図である。
【0051】
図8に示すように、本実施形態2に係る試験用治具10Aは、実施形態1に係る試験用治具10(
図1参照)と比較すると、第2治具12の代わりに、第2治具1012を有している点で相違している。
【0052】
第2治具1012は、実施形態1に係る試験用治具10の第2治具12(
図1参照)と比較すると、それぞれ、胴体部121と第1当接部122aと第2当接部122bの代わりに、胴体部1121と第1当接部1122aと第2当接部1122bを有している点で相違している。
【0053】
胴体部1121は、両端部に第1当接部1122aと第2当接部1122bが設けられた部位である。胴体部1121は、荷重Fが引張荷重として付与される部位であり、試験体90及び第1治具11のベース111の下方に配置される。
【0054】
第1当接部1122aは、試験体90の第1トルクアーム92aに当接する部位であり、第2治具1012の胴体部1121の一方の端部から上方に延びるように配置されている。
【0055】
第1当接部1122aは、試験体90の第2トルクアーム92bに当接する部位であり、第2治具1012の胴体部1121の他方の端部から上方に延びるように配置されている。
【0056】
第2治具1012の第1当接部1122aと第2当接部1122bは、同形状及び同サイズになっている。本実施形態では、第2治具1012の第1当接部1122aは、上端部がフック状の形状を呈しており、その上端部が試験体90の第1トルクアーム92aに対して上方から点接触で当接する構成になっているものとして説明する。また、第2治具1012の第2当接部1122bは、上端部がフック状の形状を呈しており、その上端部が試験体90の第2トルクアーム92bに対して上方から点接触で当接する構成になっているものとして説明する。
【0057】
本実施形態では、第1治具11の試験体ストッパ113及びトルクアームストッパ114a,114bは、上面視で試験体90の中心位置に仮想的に配置された中心軸C90(
図1B及び
図1C参照)と第2治具1012の胴体部1121の中心位置に仮想的に配置された中心軸(
図1Cに示す中心軸C12と同じもの)とが重なる位置に試験体90を配置するストッパ機構として機能する。
【0058】
曲げモーメントとねじりモーメントの複合荷重試験では、汎用的な単軸荷重試験機(図示せず)により第2治具1012に荷重F(引張荷重)が付与される。すると、試験用治具10は、第2治具12に作用する荷重Fを第1トルクアーム92aと第2トルクアーム92bとに付与する。これにより、試験用治具10Aは、第1トルクアーム92a及び第2トルクアーム92bを介して曲げモーメントMとねじりモーメントTとを試験体90に付与する。
【0059】
このような本実施形態2に係る試験用治具10Aは、実施形態1に係る試験用治具10と同様に、簡単な構造でありながら、汎用的な単軸荷重試験機(図示せず)で曲げモーメントMとねじりモーメントTを試験体90に付与するとともに、試験体90に付与する曲げモーメントMとねじりモーメントTの大きさを独立で正確に調整することができる。
【0060】
また、本実施形態2に係る試験用治具10Aは、実施形態1に係る試験用治具10(
図1A参照)と同様に、第2治具1012を交換することで、第2治具1012の第1当接部1122aと第2当接部1122bの双方で第2長さL2(
図1C参照)が同じになるようにしつつ、試験体90のトルクアームと第2治具1012との当接位置変更して、第2長さL2を変化させることで、試験体90に付与するねじりモーメントT(
図2B参照)の大きさを調整する構成になっているとよい。
【0061】
このような本実施形態2に係る試験用治具10Aは、実施形態1に係る試験用治具10と同様に、試験体90に付与するねじりモーメントT(
図2B参照)の大きさを正確かつ容易に調整することができる。
【0062】
また、本実施形態2に係る試験用治具10Aは、実施形態1に係る試験用治具10(
図1A参照)と同様に、第1治具1011を交換することで、試験体90の本体部91の両端部で第1長さL1(
図1B参照)が同じになるようにしつつ、試験体90と第1治具1011との当接位置を変更して、第1長さL1(
図1B参照)を変化させることで、試験体90に付与する曲げモーメントM(
図2B参照)の大きさを調整する構成になっているとよい。
【0063】
このような本実施形態2に係る試験用治具10Aは、実施形態1に係る試験用治具10と同様に、試験体90に付与する曲げモーメントM(
図2B参照)の大きさを正確かつ容易に調整することができる。
【0064】
本実施形態では、第2治具1012は、試験体90のトルクアームに連結されずに接触した構成になっている。しかしながら、第2治具1012は、軸受け等の部品を介して試験体90のトルクアームに連結するようにしてもよい(
図9参照)。
図9は、第2治具1012の変形例の構成図である。
図6に示す例では、第2治具1012は、当接部1122が第1部材1123と第2部材1124とに分離可能な構成になっている。第1部材1123は、試験体90のトルクアーム92が挿入される孔部1123Hoが形成された部材である。第2部材1124は、胴体部1121(
図8参照)に繋がっている部材である。第1部材1123と第2部材1124とは、固定ネジ1125で締結される構成になっている。第2治具1012は、試験体90のトルクアーム92を第1部材1123の孔部1123Hoに挿入して、第1部材1123と第2部材1124とを固定ネジ1125で締結することで、試験体90のトルクアーム92に連結することができる。第2治具1012と試験体90のトルクアーム92とを連結した場合に、試験用治具10Aは、第2治具1012の上下方向の繰り返しの変位によって、上下方向の両振りの曲げモーメントMとねじりモーメントTの複合荷重試験を行うことができる。
【0065】
以上の通り、本実施形態2に係る試験用治具10Aによれば、実施形態1に係る試験用治具10(
図1A参照)と同様に、簡単な構造でありながら、汎用的な単軸荷重試験機で曲げモーメントとねじりモーメントを試験体に付与すること、及び、両モーメント(試験体に付与する曲げモーメントとねじりモーメント)の大きさを独立で正確に調整することを実現することができる。
【0066】
[実施形態3]
以下、
図10を参照して、本実施形態3に係る試験用治具10Bの構成について説明する。
図10は、本実施形態3に係る試験用治具10Bの構成図である。
【0067】
図10に示すように、本実施形態3に係る試験用治具10Bは、
図1に示す実施形態1に係る試験用治具10の天地を逆にした構成になっている。つまり、本実施形態3に係る試験用治具10Bは、
図1に示す実施形態1に係る試験用治具10の第1治具11と同様の構成の第2治具2011を上方に配置し、
図1に示す実施形態1に係る試験用治具10の第2治具12と同様の構成の第1治具2012を上方に配置した構成になっている。
【0068】
具体的には、本実施形態に係る試験用治具10Bは、試験体90の下方に固定配置される第1治具2012と、試験体90の上方に上下動可能に配置される第2治具2011と、を備えている。
【0069】
第1治具2012は、試験体90の第1トルクアーム92aに当接する第1当接部2122aと、試験体90の第1トルクアーム92aに当接する第2トルクアーム92bに当接する第2当接部2122bと、両端部に第1当接部2122aと第2当接部2122bが設けられ、かつ、試験体90の本体部91よりも長尺な胴体部2121と、を有している。本実施形態では、第1治具2012の第1当接部2122aと第2当接部2122bは、同形状及び同サイズになっており、かつ、胴体部2121のそれぞれに対応する端部から上方向に突出するように配置されている。第1治具2012の第1当接部2122aは、試験体90の第1トルクアーム92aに対して下方から点接触で当接する構成になっている。また、第1治具2012の第2当接部2122bは、試験体90の第2トルクアーム92bに対して下方から点接触で当接する構成になっている。
【0070】
第2治具2011は、空間に上下動可能に配置されるベース部2111と、試験体90の本体部91を支持する複数の支持部(図示例では2つの支持部2112a,2112b)と、試験体90の本体部91を保持する試験体ストッパ2113と、試験体90の本体部91の両端部を保持するトルクアームストッパ2114a,2114bと、を有している。図示例では、ベース部2111は、第1ベース部2111aと第2ベース部2111bとの2つの部位を有する構成になっている。
【0071】
第1ベース部2111aは、第2ベース部2111bの下方に配置され、かつ、支持部2112a,2112bと複数の試験体ストッパ2113とが下面に設けられた部位である。第1ベース部2111aの下面は、平面状になっている。第2治具2011は、第1ベース部2111aの下面が水平になるように配置される。支持部2112a,2112bは、第1ベース部2111aの下面から下方に突出する突起部として形成されている。支持部2112aと支持部2112bの下端部は、第1ベース部111aの下面から同じ距離だけ下側の位置に設定されている。
【0072】
試験体ストッパ2113は、試験体90の変位やズレを抑制する構成要素である。試験体ストッパ2113は、第1ベース部2111aの下面から下方に突出する突起部として形成されている。複数の試験体ストッパ2113は、試験体90が本体部91の径方向に移動しないように、試験体90の本体部91を保持する部位である。第2ベース部2111bは、第1ベース部2111aの上方に配置され、かつ、トルクアームストッパ2114a,2114bが下面に設けられた部位である。
【0073】
トルクアームストッパ2114a,2114bは、トルクアーム(第1トルクアーム92a及び第2トルクアーム92b)の変位やズレを抑制する構成要素である。トルクアームストッパ2114a,2114bは、試験体90が本体部91の軸方向に移動しないように、試験体90の端部を保持する。トルクアームストッパ2114aは、第1トルクアーム92aの側面部に当接するように形成されている。トルクアームストッパ2114bは、第2トルクアーム92bの側面部に当接するように形成されている。
【0074】
試験体ストッパ2113及びトルクアームストッパ2114a,2114bは、上面視で試験体90の中心位置に仮想的に配置された中心軸C90(
図1C参照)と第1治具2012の胴体部2121の中心位置に仮想的に配置された中心軸(
図1Cに示す中心軸C12と同じもの)とが重なる位置に試験体90を配置するストッパ機構として機能する。
図10に示す例では、試験体ストッパ2113及びトルクアームストッパ2114a,2114bは、試験体90の変位やズレ及びトルクアーム(第1トルクアーム92a及び第2トルクアーム92b)の変位やズレを抑制できれば、数や形状を適宜変更することができる。
【0075】
本実施形態に係る試験用治具10Bの第1治具2012は、第1トルクアーム92aに当接する第1当接部2122aと、第2トルクアーム92bに当接する第2当接部2122bと、第1当接部2122aと第2当接部2122bが設けられ、かつ、試験体90の本体部91よりも長尺な胴体部2121と、を有している。また、試験用治具10Bの第2治具2011は、試験体90の本体部91を支持する複数の支持部2112a,2112bと、支持部2112a,2112bが設けられたベース部2111と、を有している。第1治具2012の第1当接部2122aと第2当接部2122bは、同形状及び同サイズになっており、かつ、胴体部2121のそれぞれに対応する端部から上方向に突出するように配置されている。
【0076】
このような本実施形態に係る試験用治具10Bは、第1治具2012に作用する荷重Fを試験体90の本体部91に付与することにより、試験体90の本体部91と第1トルクアーム92a及び第2トルクアーム92bとの間で生じる応力を利用して曲げモーメントMとねじりモーメントTとを試験体90に付与する構成になっている。
【0077】
係る構成において、本実施形態に係る試験用治具10Bは、簡単な構造でありながら、汎用的な単軸荷重試験機(図示せず)で曲げモーメントMとねじりモーメントTを試験体90に付与するとともに、試験体90に付与する曲げモーメントMとねじりモーメントTの大きさを独立で正確に調整することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る試験用治具10Bの第2治具2011は、上面視で試験体90の中心位置に仮想的に配置された中心軸C90(
図1C参照)と第1治具2012の胴体部2121の中心位置に仮想的に配置された中心軸(
図1Cに示す中心軸C12と同じもの)とが重なる位置に試験体90を配置するストッパ機構(試験体ストッパ2113及びトルクアームストッパ2114a,2114b)を有している。
【0079】
このような本実施形態に係る試験用治具10Bは、曲げモーメントMとねじりモーメントTの大きさの調整に適した位置に、試験体90を配置することができる。
【0080】
以上の通り、本実施形態3に係る試験用治具10Bによれば、実施形態1に係る試験用治具10(
図1A参照)と同様に、簡単な構造でありながら、汎用的な単軸荷重試験機で曲げモーメントとねじりモーメントを試験体に付与すること、及び、両モーメント(試験体に付与する曲げモーメントとねじりモーメント)の大きさを独立で正確に調整することを実現することができる。
【0081】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成を加えることも可能である。また、各構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0082】
例えば、前記した実施形態1に係る試験用治具10は、長尺な試験体の試験用治具であって、試験体の両端に配置された第1トルクアーム及び第2トルクアームと、前記試験体を固定する第1治具と、前記試験体の前記第1トルクアームと前記第2トルクアームとに当接する第2治具と、を備え、前記第2治具に作用する荷重を前記第1トルクアームと前記第2トルクアームとに付与することにより、前記第1トルクアーム及び前記第2トルクアームを介して曲げモーメントとねじりモーメントとを前記試験体に付与する構成であってもよい。
【0083】
また、例えば、前記した実施形態2に係る試験用治具10A及び前記した実施形態3に係る試験用治具10Bは、長尺な試験体の試験用治具であって、試験体の両端に配置された第1トルクアームと第2トルクアームと、前記第1トルクアームと前記第2トルクアームとに当接する第1治具と、前記試験体を固定する第2治具と、を備え、前記第1治具に作用する荷重を、前記第1トルクアーム及び前記第2トルクアームを介して前記試験体に付与することにより、曲げモーメントとねじりモーメントとを前記試験体に付与する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
10,10A,10B 試験用治具
11,2012 第1治具
111,2111 ベース部
111a,2111a 第1ベース部
111b,2111b 第2ベース部
112(112a,112b),2112a,2112b 支持部
113,2113 試験体ストッパ(ストッパ機構)
114(114a,114b),2114a,2114b トルクアームストッパ(ストッパ機構)
12,1012,2011 第2治具
121,1121,2121 胴体部
122 当接部
122a,1122a,2122a 第1当接部
122b,1122b,2122b 第2当接部
123,1123 第1部材
123Ho,1123Ho 孔部
124,1124 第2部材
125,1125 固定ネジ
90 試験体
91 本体部
92 トルクアーム
92a 第1トルクアーム
92b 第2トルクアーム
C12 中心軸
C90 中心軸
C91 軸心
F 荷重
L1 第1長さ(水平距離)
L2 第2長さ(直交距離)
M 曲げモーメント
T ねじりモーメント