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  • 特開-タイル壁およびその形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060445
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】タイル壁およびその形成方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/65 20060101AFI20230421BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
C04B41/65
E04F13/02 A
E04F13/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170060
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】520352193
【氏名又は名称】ライトウエイ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521236807
【氏名又は名称】eco断熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 正和
(72)【発明者】
【氏名】藤森 浩一郎
【テーマコード(参考)】
4G028
【Fターム(参考)】
4G028DA01
4G028DB02
(57)【要約】
【課題】コンクリートなどの構造物上に形成されるタイル壁であって、従来に比べて形成作業が容易で、目地溝の防水性が高く、所望の意匠性を付与可能なタイル壁を提供する
【解決手段】タイル壁TWは、断面視において、構造物St上に形成されたシラス12を含有するモルタル層L1と、前記モルタル層L1の表面に前記シラス12を原料として形成されたガラス層L2とを有し、平面視において、所定形状の押し型4によって形成された模擬目地溝3と、前記模擬目地溝3によって区画されたタイル部2とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物上に形成されるタイル壁であって、
断面視において、前記構造物上に形成されたシラスを含有するモルタル層と、
前記モルタル層の表面に前記シラスを原料として形成されたガラス層とを有し、
平面視において、所定形状の押し型によって形成された模擬目地溝と、前記模擬目地溝によって区画されたタイル部と、
を有することを特徴とするタイル壁。
【請求項2】
前記構造物の表面と前記モルタル層との間に下地層をさらに有する請求項1に記載のタイル壁。
【請求項3】
前記タイル部の表層の前記ガラス層が釉薬によって着色されている請求項1又は2に記載のタイル壁。
【請求項4】
前記タイル部の表面および前記模擬目地溝の表面に防水性を有する樹脂コート層をさらに有する請求項1~3のいずれかに記載のタイル壁。
【請求項5】
構造物上にタイル壁を形成する方法であって、
シラスを含有するモルタル層を前記構造物上に形成する第1工程と、
前記モルタル層の表面に所定形状の押し型を押し入れる第2工程と、
前記押し型を前記モルタル層から除去し模擬目地溝を形成するとともに、前記模擬目地溝によって区画されるタイル部を形成する第3工程と、
前記タイル部の表面および前記模擬目地溝の表面にレーザ光を照射して前記シラスを溶融して、前記タイル部の表層および前記模擬目地溝の表層をガラス層とする第4工程と、
を有することを特徴とするタイル壁の形成方法。
【請求項6】
第1工程の前に、前記構造物の表面を凹凸化処理する第5工程をさらに有する請求項5に記載のタイル壁の形成方法。
【請求項7】
前記構造物の表面と前記モルタル層との間に下地層を形成する第6工程をさらに有する請求項5又は6に記載のタイル壁の形成方法。
【請求項8】
第2工程と第3工程との間に、前記タイル部となる前記モルタル層の表面に釉薬を塗布する第7工程をさらに有し、
前記タイル部の表層のガラス層を前記釉薬で着色する請求項5~7のいずれかに記載のタイル壁の形成方法。
【請求項9】
第4工程の後に、前記タイル部の表面および前記模擬目地溝の表面に防水性を有する樹脂コート層を形成する第8工程をさらに有する請求項5~8のいずれかに記載のタイル壁の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル壁およびその形成方法に関し、より詳細には、構造物上に設けられるタイル壁およびその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物や塀等の壁面をタイル壁に形成する場合、壁面を構成する下地材に塗布・形成したモルタル層に多数のタイル片の各々を圧着してタイル壁を形成していた。そして、タイル壁のタイル片間には目地溝が一般に形成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-144471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のタイル壁の形成ではモルタル層にタイル片を1枚毎圧着させるので、多大な作業時間を要すると共に緻密な作業も要求されていた。
【0005】
また、目地溝内に入った汚れは簡単に除去することができないことがあり、経年によって汚れが目立つようになることがあった。そしてまた、目地溝の防水性はタイル片に比べると低く防水性の向上が望まれていた。加えて、近年、コンクリート等で構成された構造物表面の意匠性の向上も望まれていた。
【0006】
そこで本発明の目的は、コンクリートなどの構造物上に形成されるタイル壁において、従来に比べて形成作業が容易で、目地溝の防水性が高く、所望の意匠性を付与可能なタイル壁を提供することにある。
【0007】
また本発明の他の目的は、前記タイル壁を効率的に形成可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成する本発明に係るタイル壁は、構造物上に形成されるタイル壁であって、断面視において、前記構造物上に形成されたシラスを含有するモルタル層と、前記モルタル層の表面に前記シラスを原料として形成されたガラス層とを有し、平面視において、所定形状の押し型によって形成された模擬目地溝と、前記模擬目地溝によって区画されたタイル部とを有することを特徴とする。
【0009】
前記構成のタイル壁は、前記構造物の表面と前記モルタル層との間に下地層をさらに有するのが好ましい。
【0010】
前記構成のタイル壁は、前記タイル部の表層の前記ガラス層が釉薬によって着色されていてもよい。
【0011】
また前記構成のタイル壁は、前記タイル部の表面および前記模擬目地溝の表面に防水性を有する樹脂コート層をさらに有していてもよい。
【0012】
また本発明によれば、構造物上にタイル壁を形成する方法であって、シラスを含有するモルタル層を前記構造物上に形成する第1工程と、前記モルタル層の表面に所定形状の押し型を押し入れる第2工程と、前記押し型を前記モルタル層から除去し模擬目地溝を形成するとともに、前記模擬目地溝によって区画されるタイル部を形成する第3工程と、前記タイル部の表面および前記模擬目地溝の表面にレーザ光を照射して前記シラスを溶融して、前記タイル部の表層および前記模擬目地溝の表層をガラス層とする第4工程とを有することを特徴とするタイル壁の形成方法が提供される。
【0013】
前記構成の形成方法は、第1工程の前に、前記構造物の表面を凹凸化処理する第5工程をさらに有するのが好ましい。
【0014】
また前記構成の形成方法は、前記構造物の表面と前記モルタル層との間に下地層を形成する第6工程をさらに有するのが好ましい。
【0015】
また前記構成の形成方法は、第2工程と第3工程との間に、前記タイル部となる前記モルタル層の表面に釉薬を塗布する第7工程をさらに有し、前記タイル部の表層のガラス層を前記釉薬で着色するようにしてもよい。
【0016】
また前記構成の形成方法は、第4工程の後に、前記タイル部の表面および前記模擬目地溝の表面に防水性を有する樹脂コート層を形成する第8工程をさらに有するようにしてもよい。
【0017】
なお、本明細書における「シラス」とは、南九州に広く分布する白色粗鬆な火山噴出物およびそれに由来する2次堆積物の総称をいい、高温マグマの冷却により結晶分化作用が起こり、マグマ中の主成分SiO、Al、Fe、FeO、MgO、CaO、NaO、KO等が互いに集まり鉱物として晶出して間もなく爆発的に噴出して形成されたものであり、約3割の結晶鉱物と残り約7割の非晶質火山ガラスから成っている。非晶質火山ガラスはマグマ中の揮発性成分が急激に放出して、多孔質の軽石状を成し、SiOが65~73%、Alが12~16%、CaOが2~4%、NaOが3~4%、KOが2~4%と鉄分1~3%を含んでいる。そして、結晶鉱物は斜長石が最も多く、他に紫蘇輝石、石英、普通輝石、磁鉄工等が多少含まれている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るタイル壁によれば、コンクリートなどの構造物上に容易に形成することが可能で、目地溝の防水性は高く、所望の意匠性を付与することも可能である。
【0019】
また本発明に係る形成方法によれば、前記タイル壁を効率的に形成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るタイル壁の一例を示す部分平面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】本発明のタイル壁の形成工程の一例を示す工程図である。
図4】本発明のタイル壁の形成工程の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るタイル壁およびその形成方法についてさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0022】
図1に、本発明に係るタイル壁の一例を示す部分平面図を示し、図2に、図1のA-A線断面図を示す。図1に示す部分平面図から理解されるように、タイル壁TWは、平面視において、格子状の模擬目地溝3と、模擬目地溝3によって区画された四角形状の複数のタイル部2とを有する。そしてタイル部2の表層のガラス層L2は、後述する釉薬によって着色されている。また図2に示す断面図から理解されるように、タイル壁TWは構造物Stの表面に形成されて、構造物Stの表面に形成された下地層L3と、下地層L3の表面に形成されたシラス12を含有するモルタル層L1と、モルタル層L1の表面に形成されたガラス層L2と、ガラス層L2の表面に形成された樹脂コート層L4とを有する。
【0023】
タイル壁TWの表面の模擬目地溝3の平面形状すなわちタイル部2の平面形状は意匠性を有するものであれば特に限定はなく如何なる形状であってもよい。また模擬目地溝3の幅に限定はないが、一般に、2mm以上5mm以下の範囲が好ましい。模擬目地溝3の深さは、構造物Stに至らない範囲、すなわちモルタル層L1と下地層L3の厚み合計した最大厚み未満の範囲で適宜決定すればよいが、ガラス層L2の厚みよりも深いのが望ましい。
【0024】
モルタル層L1にシラス12が含有されているのは、シラス12のモルタル層L1における細骨材としての働きの外、後段のタイル壁TWの形成方法で説明するように、モルタル層L1に含有されるシラス12がレーザ光LB(図4に図示)の照射などによって加熱・溶融されてガラス層L2が形成されるようにするためでもある。
【0025】
このようなタイル壁TWによれば、従来のようなタイル片を個々に設置する必要がなく、従来に比べて形成作業が格段に容易になる。加えて、後述するタイル壁TWの形成方法で説明するように、所望形状の押し型4(図3に図示)を選択使用することで所望の意匠をタイル壁TWに容易に付与できる。また、タイル壁TWの模擬目地溝3は表面にガラス層L2を有すると共に、本実施形態ではガラス層L2の表面にさらに樹脂コート層L4を有するので、従来のタイル壁に比べて格段に高い防水性が得られる。これにより、例えば、海水や酸性雨などがコンクリートなどの構造物Stの内部に浸入することが防止され、構造物St内の鉄筋に海水等による錆が生じて構造物Stが劣化・崩壊することが従来に比べて一層防止・抑制される。以下、これらの層について説明する。
【0026】
(モルタル層L1)
構造物St上に形成されるモルタル層L1は、セメント11と、細骨材としてのシラス12とから構成される。セメント11としては従来公知のものが使用でき、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどが挙げられる。これらの中でもポルトランドセメントが好適に使用される。
【0027】
本発明で使用するシラス12は、前述のように、南九州に広く分布する白色粗鬆な火山噴出物およびそれに由来する2次堆積物であり、高温マグマの冷却により結晶分化作用が起こり、マグマ中の主成分SiO、Al、Fe、FeO、MgO、CaO、NaO、KO等が互いに集まり鉱物として晶出して間もなく爆発的に噴出して形成されたものであり、約3割の結晶鉱物と残り約7割の非晶質火山ガラスから成っている。本発明では火山ガラス成分を90%以上含む“淘汰された”シラスが特に好適に使用される。
【0028】
本発明で使用するシラス12の体積粒径は30μm以上180μm以下の範囲が好ましい。このような体積粒径を有するシラス12を用いることにより、モルタル層L1が強固になると共に、加熱溶融させたときに連続した均一なガラス層L2が形成される。なお、加熱溶融によってガラス層L2を安定して形成する観点からはシラス12は強熱減量が1質量%以下のものが好ましい。シラス12の強熱減量を1質量%以下にするには、例えばシラスを熱処理すればよく、例えば、シラスを加熱発泡させたシラスバルーンが好適に使用できる。
【0029】
シラス12の含有量は、表面にガラス層L2が形成な限りにおいて特に限定はないが、通常、モルタル層L1の全体に対して60質量%~90質量%の範囲が好ましい。シラス12の含有量が60質量%よりも少ないと、加熱溶融によるガラス層L2の均一な形成が困難になるおそれがある。一方、シラス12の含有量が90質量%よりも多いとモルタル層L1の強度が低下するおそれがある。なお、モルタル層L1におけるシラス12の含有量は厚み方向に変化を持たせてもよい。具体的には、例えば、シラス12の含有量を構造物Stから離れる方向に向かって連続的または段階的に増加させるようにしてもよい。
【0030】
モルタル層L1の厚みについては特に限定はないが、タイル壁TWの耐久性や構造物Stの補強性などからは、通常、1mm~5mmの範囲が好ましい。モルタル層L1の厚みが薄すぎるとモルタル層L1の強度が低下するおそれがある。一方、モルタル層L1が厚すぎると原料費用が高くなって経済的でない。
【0031】
(その他の添加物)
モルタル層L1は、ガラス層L2を着色するための金属化合物粉末が含有されていてもよい。あるいは、前記金属化合物粉末を含有した釉薬5(図4に図示)をタイル部2となるモルタル層L1の表面に塗布してもよい。ここで使用される金属化合物粉末の種類は、ガラス層L2に着けたい色から定まる。例えば、ガラス層L2を紫色にするにはMn(マンガン)、Cu(銅)、Co(コバルト)を添加、黄色にするにはAg(銀)、Ni(ニッケル)、Cr(クロム)、Cd(カドミウム)を添加、茶色にするにはFe(鉄)、S(硫黄)を添加すればよい。なお、図1に示すタイル壁では、タイル部2となるモルタル層L1の表面のみに釉薬5が塗布され、所定色に着色されている。
【0032】
金属化合物粉末の粒径は30μm~150μmの範囲が好ましい。金属化合物粉末のモルタル層L1における含有量は3質量%~15質量%の範囲が好ましい。
【0033】
また、モルタル層L1は、その外、本発明の効果を阻害しない範囲において、必要によりフライアッシュなどの無機微粉末を含有していてもよい。
【0034】
(ガラス層L2)
ガラス層L2はガラスから構成される。ガラス層L2は、好適には、ガラス層L2が形成される前のモルタル層L1の表層を加熱溶融してモルタル層L1に含まれるシラス12を溶融しガラス化することで形成される。すなわち、モルタル層L1の表面から所定深さが加熱溶融されてガラス層L2となり、残り部分が最終的にモルタル層L1となる。モルタル層L1の表面加熱には、例えばレーザ光LB(図4に図示)の照射加熱が使用でき、レーザ光LBの照射エネルギー量によって、形成されるガラス層L2の層厚が制御される。
【0035】
ガラス層L2の層厚に特に限定はないが、通常、0.3mm~1.0mmの範囲が好ましい。ガラス層L2の層厚が0.3mmよりも薄いと耐久性などが不足するおそれがある。一方、ガラス層L2を1.0mmよりも厚くするにはシラス12を加熱溶融してガラス化するために大容量のレーザ出力装置が必要となり現実的でない。
【0036】
前述のように、モルタル層L1に所定の金属化合物粉末が含有されている場合、あるいは前記金属化合物粉末を含有した釉薬5がタイル部2となるモルタル層L1の表面に塗布されている場合には、レーザ光LBの照射加熱によって金属化合物粉末が溶融して所定の金属イオンが生成しガラス層L2が着色される。金属化合物粉末の種類や組合せの異なる領域をモルタル層L1に設けておけば、モルタル層L1の表面がレーザ光の照射加熱でガラス化されると色の異なる領域が現れ意匠性を高めることができる。
【0037】
(下地層L3)
下地層L3は、構造物Stとモルタル層L1とを強固に接続する働きを奏する。下地層L3は、例えばモルタルなどから構成される。モルタルとしては、セメントと細骨材とが混合された従来公知物が使用できる。セメントは、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどが使用できる。下地層L3の層厚に特に限定はないが、通常、5mm以上10mm以下の範囲が好ましい。
【0038】
(樹脂コート層L4)
樹脂コート層L4は防水性を有する樹脂から構成される。このような樹脂としては、例えば、アクリルウレタン系樹脂やフッ素系樹脂が好適に使用される。タイル部2が着色されている場合には特に、無色透明のコート樹脂が望ましい。樹脂コート層L4は、紫外線によるガラス層等の劣化の抑制やタイル壁の遮熱性の向上、美観の維持などの作用を奏する。なお、樹脂コート層L4を形成することなくガラス層L2をタイル壁TWの最外層としても構わない。
【0039】
樹脂コート層L4の層厚に特に限定はないが、通常、数十μm~数百μm程度で足りる。
【0040】
(その他)
本発明に係るタイル壁TWは、モルタル層L1、ガラス層L2、樹脂コート層L4の外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の機能を有する層を備えてもよい。
【0041】
(構造物St)
本発明のタイル壁TWが設けられる構造物Stに特に限定はなく、例えば、土木構造物や建築構造物等が挙げられるが、本発明のタイル壁TWはコンクリートの表面に好適に設けられる。
【0042】
(タイル壁の形成方法)
タイル壁TWの形成方法について説明する。図3および図4にタイル壁TWの形成例を示す工程図を示す。
【0043】
図3(a)に示すように、まず、レーザ光LBの照射によって構造物Stの表面が凹凸化処理される(第5工程)。構造物Stの表面が凹凸化されることによって構造物Stの表面積が増大し下地層L3と構造物Stとの固着強度が大きくなる。表面の凹凸は数mm程度で足りる。構造物Stの凹凸化の程度はレーザ光LBの出力や移動速度などにより制御できる。構造物Stの凹凸化処理はレーザ光LBの照射による手段に限定されるものではなく、従来公知の処理手段を用いることができる。
【0044】
次に、図3(b)に示すように、下地層L3が構造物Stの表面に形成される(第6工程)。具体的には、セメント、細骨材と水が混合されたペースト状物が構造物Stの表面に塗布される。塗布方法としては限定はなく、吹き付けや左官仕上げ、ローラ仕上げなどの従来公知の塗布方法を用いることができる。
【0045】
次に、図3(c)に示すように、シラス12を含有するモルタル層L1が下地層L3の表面に形成される(第1工程)。具体的には、セメント11と、シラス12と、水とが混合されたペースト状物が下地層L3の表面に塗布される。塗布方法としては限定はなく、吹き付けや左官仕上げ、ローラ仕上げなどの従来公知の塗布方法を用いることができる。
【0046】
セメント11とシラス12との混合比は、一般に、質量比で1:1.5~1:9の範囲が好ましい。水の混合量によって混合物の粘度は調整可能である。使用するセメント11およびシラス12は前述のものがここでも好適に使用される。
【0047】
モルタル層L1の塗布厚は、後述のレーザ光LBの照射加熱後にモルタル層L1として残る層と、ガラス層L2となる層との層厚の合計が指標とされ、塗布後の乾燥等による収縮等が考慮される。モルタル層L1の塗布厚は、一般に、1mm~5mmの範囲が好ましい。
【0048】
図3(d)に示すように、モルタル層L1の表面に格子形状の押し型4が押し入れられる(第2工程)。この押し型4によって模擬目地溝3が形成される。押し型4の平面形状に特に限定はなく、タイル壁TWに意匠性を与える如何なる形状であってもよい。なお、押し型4の断面形状は、押し入れ方向に向かって幅が狭くなる形状、例えば、上底が下底よりも長い、いわゆる逆台形形状であるのが好ましい。モルタル層L1に押し入れた押し型4をモルタル層L1から抜き出しやすくなるからである。また、押し型4によって形成された模擬目地溝3の対向する両側壁は、底面に向かって幅が狭くなる傾斜を有するので、後述のガラス層L2を形成するためにレーザ光LBが照射された際、模擬目地溝3の側壁にもレーザ光LBが照射されて側壁の表層がガラス化されるからである。
【0049】
図4(e)に示すように、押し型4が押し入れられた状態のモルタル層L1の表面に、ガラス層L2を着色するための金属化合物粉末を含有した釉薬5がローラRにより塗布される(第7工程)。釉薬5はタイル部2にのみ塗布され、押し型4に阻まれて模擬目地溝3には塗布されない。なお、釉薬5の塗布方法はローラ塗布に限定されるものではなく、スプレー塗布など従来公知の塗布手段を用いることができる。釉薬5の種類や塗布量などを変えることによって、タイル部2のガラス層L2に種々の色彩や模様を付与することができる。なお、タイル壁TWを着色しない場合には、モルタル層L1の表面に釉薬5は塗布されなくてよい。
【0050】
モルタル層L1の表面に釉薬5が塗布された後、押し型4がモルタル層L1の表面から抜き出される(第3工程)。抜き出された押し型4の跡が模擬目地溝3となる。そして、図4(f)に示すように、モルタル層L1の表面にレーザ光LBが照射される。すると、モルタル層L1中のシラス12が加熱溶融され、モルタル層L1の表層にガラス層L2が形成される(第4工程)。シラスの溶融温度は約1700℃であるところ、レーザ光LBの照射によってモルタル層L1の表面は瞬時に前記溶融温度以上となる。また同時に、モルタル層L1表面の釉薬5中の金属化合物粉末も溶融して所定の金属イオンが生成し、タイル部2の表層のガラス層L2は所定色に着色される。
【0051】
図4(g)に示すように、ガラス層L2は、模擬目地溝3によって区画されたタイル部2の表層および模擬目地溝3の底面表層に形成される。加えて、模擬目地溝3の側壁が傾斜面であることから側壁にもレーザ光LBが照射され模擬目地溝3の側壁の表層にもガラス層L2が形成される。
【0052】
ここで使用するレーザとしては従来公知の物が使用可能であるが、短波長パルスレーザが好適に使用される。例えば、波長:1070nm、パルス幅:60ns、周波数:10kHz、エネルギー:100mJの短波長パルスレーザが用いられると、1/(6×10)secという超短時間に1.6MWの強大なエネルギーが与えられてモルタル層L1の表面から0.2mm~1.0mmまでがガラス化する。一方、モルタル層L1の表面からそれ以下の部分はモルタル層L1の本来の特性が損なわれずに保持される。
【0053】
次に、図4(h)に示すように、タイル部2の表面および模擬目地溝3の表面にコート樹脂6がスプレーガンGによって塗布されて樹脂コート層L4が必要により形成される(第8工程)。樹脂コート層L4は、アクリルウレタン系樹脂やフッ素系樹脂などの防水性を有する樹脂から構成される。ここで使用されるコート樹脂6は耐水性および耐候性をさらに有するものが好ましい。また、タイル部2が着色されている場合には、コート樹脂6は透光性を有するものが使用される。樹脂コート層L4の層厚に特に限定はないが、通常、数十μm~数百μm程度で足りる。
【0054】
(その他)
本発明に係るタイル壁TWの形成方法において、下地層L3、モルタル層L1、ガラス層L2、樹脂コート層L4の形成工程の外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の機能を有する層の形成工程が付加されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係るタイル壁によれば、コンクリートなどの構造物の表面に形成する作業が従来に比べて容易となると共に、(模擬)目地溝の防水性が高く、所望の意匠性を付与することも可能になる。
【符号の説明】
【0056】
2 タイル部
3 模擬目地溝
4 押し型
5 釉薬
6 コート樹脂
11 セメント
12 シラス
L1 モルタル層
L2 ガラス層
L3 下地層
L4 樹脂コート層
TW タイル壁
LB レーザ光
St 構造物
図1
図2
図3
図4