(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060456
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】調整弁
(51)【国際特許分類】
F16K 11/22 20060101AFI20230421BHJP
F16K 1/00 20060101ALN20230421BHJP
【FI】
F16K11/22
F16K1/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170081
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】福田 剛士
【テーマコード(参考)】
3H052
3H067
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA03
3H052CA12
3H052DA01
3H052EA05
3H067AA01
3H067AA24
3H067AA33
3H067BB08
3H067BB14
3H067CC44
3H067CC46
3H067DD07
3H067DD13
3H067DD23
3H067EA05
3H067EA06
3H067EB12
3H067FF17
3H067GG06
(57)【要約】
【課題】緊急時などにおいて、容易に流路を全開したり、全閉したりすることが可能な調整弁を提供する。
【解決手段】調整弁は、弁箱、第一弁座、第一弁体、第一駆動部、第二弁座、第二弁体、第二駆動部を備える。弁箱は、単一の第一共通路と、第一共通路から分岐した第一分岐路及び第二分岐路と、第一分岐路及び第二分岐路が合流する単一の第二共通路とを有する流路であって、第一共通路の流入口から第二共通路の流出口に向かって流体が通過する流路を、内部に有する。第一弁座は、第一分岐路内に設けられ、第一弁座口が形成される。第一弁体は、第一弁軸の軸方向の移動に伴って第一弁座口を開閉可能である。第二弁座は、第一共通路から第一分岐路及び第二分岐路への分岐点に設けられ、第二弁座口が形成される。第二弁体は、第二弁軸を基準に回動して第二弁座口を開閉することにより、第一共通路と第一分岐路及び第二分岐路との連通状態を切り替え可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流量を調整する調整弁であって、
単一の第一共通路と、該第一共通路から分岐した第一分岐路及び第二分岐路と、該第一分岐路及び第二分岐路が合流する単一の第二共通路とを有する流路であって、該第一共通路の流入口から該第二共通路の流出口に向かって流体が通過する流路を、内部に有する弁箱と、
前記第一分岐路内に設けられ、第一弁座口が形成された第一弁座と、
第一弁軸の軸方向の移動に伴って前記第一弁座口を開閉可能な第一弁体と、
前記第一弁軸を軸方向に移動させる第一駆動部と、
前記第一共通路から前記第一分岐路及び第二分岐路への分岐点に設けられ、第二弁座口が形成された第二弁座と、
切替流路を有する略球状の弁体であって、第二弁軸を基準に回動して前記第二弁座口を開閉することにより、前記第一共通路と前記第一分岐路及び第二分岐路との連通状態を切り替え可能な第二弁体と、
前記第二弁軸を回動させて、前記第二弁体を、前記流路を全閉する位置、前記第一共通路と前記第一分岐路とを連通する位置、及び、前記第一共通路と前記第一分岐路及び第二分岐路とを連通する位置に切り替える第二駆動部と、
を備えたことを特徴とする調整弁。
【請求項2】
前記切替流路は、前記第二弁軸との直交方向の断面がT字形状であって前記第一共通路及び第二分岐路に接続可能な流路と、該T字形状の流路の分岐点から該第二弁軸の軸方向に延びて前記第一分岐路に接続された流路と、を有する、
請求項1に記載の調整弁。
【請求項3】
前記第一弁軸及び第二弁軸は、前記第一弁体及び第二弁体が間に位置するように同一軸上に配置された、
請求項1又は請求項2に記載の調整弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気等の流体が流れる配管系統に設けられ、流体の流量を調整する調整弁に関する。
【背景技術】
【0002】
微開状態で使用する開閉バルブとしてグローブ弁などがある(例えば、特許文献1参照)。グローブ弁は、ハンドルを回して弁棒を上下させることで、弁体を上下させて流量を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した調整弁では、構造上、流体抵抗が非常に大きく、閉止時に流体の全圧力を弁棒に受けるので閉止トルクが大きい。そのため、弁の上流や下流において緊急に対応すべきトラブルが発生した場合、迅速に閉弁することが困難である。この場合、開度を一定に保持することも困難である。
【0005】
この発明は、緊急時などにおいて、容易に流路を全開したり、全閉したりすることが可能な調整弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される流体の流量を調整する調整弁は、弁箱、第一弁座、第一弁体、第一駆動部、第二弁座、第二弁体、第二駆動部を備える。弁箱は、単一の第一共通路と、第一共通路から分岐した第一分岐路及び第二分岐路と、第一分岐路及び第二分岐路が合流する単一の第二共通路とを有する流路であって、第一共通路の流入口から第二共通路の流出口に向かって流体が通過する流路を、内部に有する。第一弁座は、第一分岐路内に設けられ、第一弁座口が形成される。第一弁体は、第一弁軸の軸方向の移動に伴って第一弁座口を開閉可能である。第一駆動部は、第一弁軸を軸方向に移動させる。第二弁座は、第一共通路から第一分岐路及び第二分岐路への分岐点に設けられ、第二弁座口が形成される。第二弁体は、切替流路を有する略球状の弁体であって、第二弁軸を基準に回動して第二弁座口を開閉することにより、第一共通路と第一分岐路及び第二分岐路との連通状態を切り替え可能である。第二駆動部は、第二弁軸を回動させて、第二弁体を、流路を全閉する位置、第一共通路と第一分岐路とを連通する位置、及び、第一共通路と第一分岐路及び第二分岐路とを連通する位置に切り替える。
【0007】
上記切替流路は、第二弁軸との直交方向の断面がT字形状であって第一共通路及び第二分岐路に接続可能な流路と、T字形状の流路の分岐点から第二弁軸の軸方向に延びて第一分岐路に接続された流路と、を有していてもよい。
【0008】
上記第一弁軸及び第二弁軸は、第一弁体及び第二弁体が間に位置するように同一軸上に配置されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、流量を調整するための第一弁体ではなく、切替流路を有する略球状の第二弁体を用いて流路を全開したり、全閉したりすることができる。したがって、緊急時などにおいて、第一弁体の開度を保持したままであっても、流路を容易に全開および全閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の実施形態に係る調整弁の断面図である。
【
図2】この発明の実施形態に係る調整弁の第二弁部の部分拡大断面図である。
【
図3】この発明の実施形態に係る第二弁体の拡大断面図(X-X線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照してこの発明の実施形態である制御弁について説明する。なお、この発明の構成は、実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、この発明の実施形態に係る調整弁1の断面図である。本実施形態では、調整弁1としてグローブ弁を適用する。
【0013】
調整弁1は、例えば、ガスプラント、蒸気プラントなどのプラント(プロセスシステム)の配管系統に配置され、配管系統を流れる蒸気等の流体の流量を調整する。本実施形態の調整弁1は、通常時においては、基本的に第一弁体42(第一弁部4)を制御することで流体の流量を調整する。また、緊急時などにおいては、第二弁体52(第二弁部5)を制御することで流路を全開または全閉する。
【0014】
調整弁1は、弁箱(ボディ)2、軸装部3、第一弁部4、第二弁部5、第一駆動部6、第二駆動部7等から構成される。
【0015】
弁箱2の両端部には、配管(不図示)が接続される配管接続部8,9が溶接等によって固定されている。また、弁箱2の上端部には、接続フランジ10が形成されている。接続フランジ10には、軸装部3の下端部に形成された接続フランジ11がボルト12により締結されている。
【0016】
また、弁箱2内には、配管接続部8から流入口20及び流出口25を経由して配管接続部9に繋がる流路21が形成されている。配管接続部8の流体は、流入口20から流路21に流入して流出口25から配管接続部9に流出する。
【0017】
流路21は、第一共通路22、第一分岐路23A、第二分岐路23B、第二共通路24等から構成される。また、流路21内には、第一弁部4及び第二弁部5が配置されている。
【0018】
第一共通路22は、流入口20と第二弁部5とを連通する単一の流路である。第一分岐路23Aは、第一弁部4を経由して第二弁部5と第二共通路24とを連通する流路である。第二分岐路23Bは、第一弁部4を経由せずに、第二弁部5と第二共通路24とを連通する流路である。第二共通路24は、第一分岐路23A及び第二分岐路23Bと流出口25とを連通する単一の流路である。
【0019】
第一弁部4は、第一分岐路23A上に配置され、第一弁座41、第一弁体42及び第一弁棒45を有する。第一弁部4は、第一分岐路23Aでの流体の流量を調整する。
【0020】
第一弁座41は、例えばステンレス鋼等の金属で形成された環状弁座であり、円形の第一弁座口43を介して第一分岐路23Aの上流側(第二弁部5側)と下流側(第二共通路24側)とを連通する。
【0021】
第一弁体42は、例えばステンレス鋼等の金属で形成された玉形弁体であり、第一弁座口43に対向するように配置される。また、第一弁体42は、第一弁棒45の軸方向への移動により全閉位置及び全開位置の間で変位可能である。全閉位置は、第一弁体42が第一弁座41に着座して第一弁座口43を閉栓(全閉)する位置である。全開位置は、第一弁体42が第一弁座41から離間している状態であって第一弁座口43を全開する位置である。
【0022】
第一弁棒(第一弁軸)45は、軸方向(
図1の上下方向)に移動可能に軸装部3に軸装される。第一弁棒45は、一端に第一弁体42の上部が固定され、他端に第一駆動部6が連結されている。第一弁棒45は、ハンドル61を回すことによって軸方向に移動する。
【0023】
第二弁部5は、第二弁座51(51A,51B)、第二弁体52及び第二弁軸55を有する。第二弁部5は、第一共通路22から第一分岐路23A及び第二分岐路23Bへの分岐点に配置され、流体の流路を切り替える。具体的には、第一共通路22と第一分岐路23A及び第二分岐路23Bとの連通状態を切り替える。
【0024】
第二弁座51A,51Bは、例えば、ステンレス鋼等の金属製、又は、テフロン(登録商標)樹脂製の環状の弁座であり、円形の第二弁座口53A,53Bが形成されている。また、第二弁座51A,51Bによって、円形の第二弁座口53Cを形成する。
【0025】
第二弁座51Aは、第一共通路22と第二弁体52との間に配置されている。第二弁座51Bは、第二弁体52と第二分岐路23Bとの間に配置されている。第二弁座51A,51Bは、例えば皿ばね(不図示)の付勢力によって、第二弁体52に当接した状態である。すなわち、第二弁体52は、第二弁座51A,51Bに常に着座している状態である。
【0026】
第二弁座口53Aは、第二弁体52が
図2(A)及び
図2(B)に示す状態において、第一共通路22と第二弁体52の切替流路54とを連通する。第二弁座口53Bは、第二弁体52が
図2(B)及び
図2(C)に示す状態において、切替流路54と第二分岐路23Bとを連通する。第二弁座口53Cは、切替流路54と第一分岐路23Aとを連通する。
【0027】
第二弁体52は、ステンレス鋼等の金属で形成され、略球形状をなしており(四方ボール弁)、内部に切替流路54を有する。また、第二弁体52は、第二弁棒55を基準に回動して第二弁座口53A,53Bを開閉可能である。第二弁体55の回動によって、第一共通路22と第一分岐路23A及び第二分岐路23Bとの連通状態が切り替えられる。
【0028】
本実施形態では、第一共通路22と第一分岐路23Aとを連通する位置((
図1,
図2(A))、第一共通路22と第一分岐路23A及び第二分岐路23Bとを連通する位置(
図2(B))、及び、流路21を全閉する位置(
図2(C))に、第二弁体52を切り替え(回動)可能である。
【0029】
なお、流路21を全開する位置は、
図2(B)に示す第一共通路22と第一分岐路23A及び第二分岐路23Bとを連通する位置である。
【0030】
切替流路54は、
図2に示すように、流路54A,54Bを有する。流路54Aは、
図3に示すように、第二弁棒55との直交方向の断面がT字形状を呈する。
図3は、
図2(A)のX-X線断面図であり、第二弁体52のみを示している。流路54Aは、第一共通路22及び第二分岐路23Bに接続可能である。
【0031】
流路54Bは、T字形状の流路54Aの分岐点から第二弁軸55の軸方向(
図2の上方向)に延び、第一分岐路23Aに常に接続されている。
【0032】
なお、切替流路54の形状は、第一共通路22と第一分岐路23A及び第二分岐路23Bとの連通状態が切り替え可能であれば、図示した形状に限定されない。
【0033】
第二弁棒(第二弁軸)55は、弁箱2の底面から挿入された状態で弁箱2に回動可能に支持される。第二弁棒55は、第一弁棒45と同一軸上に配置されている。また、第二弁棒55は、一端に第二弁体52が固定され、他端に第二駆動部7のハンドル71が連結されている。第二弁棒55は、ハンドル71を回すことによって回動する。
【0034】
第一駆動部6は、弁箱2の上方に配置され、手動によって第一弁棒45を軸方向に移動させる。第一駆動部6は、ハンドル61、ヨークスリーブ62等を備える。
【0035】
ハンドル61は、ヨークスリーブ62の上部に嵌め込まれている。ヨークスリーブ62には、第一弁棒45の外周に形成された雄ネジ溝(不図示)に螺合する雌ネジ溝(不図示)が形成されている。
【0036】
これにより、ハンドル61を回すことで、ヨークスリーブ62を介して第一弁棒45が軸方向に移動する。
【0037】
第二駆動部7は、弁箱2の下方に配置され、手動によって第二弁棒55を回動させる。すなわち、第二駆動部7は、第二弁体52を上述した各位置に回動させる。第二駆動部7は、ハンドル71等を備える。ハンドル71は、ボルト72によって第二弁棒55の端部に固定される。
【0038】
これにより、ハンドル71を回すことで、第二弁棒55がハンドル71と同一方向に回動する。
【0039】
次に、調整弁1の動作例について説明する。
【0040】
通常時においては、基本的に第一弁体42の位置(開度)を制御することで流路21の流体の流量を調整する。
【0041】
具体的には、第二弁体52を、
図2(A)で示す第一共通路22と第一分岐路23Aとを連通する位置に固定する。これにより、流体は、第一共通路22から第一分岐路23Aを通過して第二共通路24に流れていく。そして、必要に応じて第一弁体45の位置を変更することで、流体の流量が調整される。
【0042】
一方、緊急時などにおいては、第二弁体52の位置を制御することで流路21を全開または全閉する。
【0043】
具体的には、第二弁体52を、緊急時の状況などに応じて、
図2(B)に示す流路21を全開する位置、又は、
図2(C)に示す流路21を全閉する位置、に変更する。すなわち、第一共通路22と第一分岐路23A及び第二分岐路23Bとが連通されることで、流路21が全開される。また、第二弁座口53Aを閉じることで、流路21が全閉される。
【0044】
第二弁体52は、ボール弁体であるので、気密性に優れている。また、第二弁棒55は、軸方向には移動しないため、第一弁棒45と比較して、全閉時に受ける流体の圧力は小さいので、第一弁棒45と比較して回動させ易い。
【0045】
なお、緊急時などにおいて、第一弁体45は、移動させず、現状の位置(開度)を保持したままでよい。すなわち、第一弁体45の位置を調整しなくても、流路21が全閉(全開)となる。
【0046】
以上のように、本発明の実施形態では、流量を調整するための第一弁体ではなく、切替流路を有する略球状の第二弁体を用いて流路を全開したり、全閉したりすることができる。したがって、緊急時などにおいて、第一弁体の開度を保持したままであっても、流路を容易に全開、全閉することができる。
【0047】
なお、上述の実施形態では、第一弁体として玉形弁体(グローブ弁)が用いられているが、特にこれに限定されるものではない。弁軸を上下動させて弁体で弁座を開閉する開閉弁であれば、ゲート弁、ニードル弁、プラグ弁等を本発明に適用してもよい。
【0048】
上述の実施形態の第一駆動部及び第二駆動部は、手動により駆動する構成が採用されているが、特にこれに限定されるものではない。モーター駆動、エア駆動の駆動部等であってもよい。
【0049】
上述の実施形態では、第二弁部が第一弁部の下方に配置されているが、第二弁部が第一分岐路及び第二分岐路の分岐点に位置していれば、特にこれに限定されるものではない。また、流路の形状も上述の実施形態に限定されるものではない。
【0050】
上述の実施形態では、
図1に示すように第一駆動部が上方に位置する状態の調整弁について説明したが、調整弁の配置方向は特にこれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明は、蒸気プラントなどのプラント(プロセスシステム)などの配管系統を流れる蒸気等の流体の流量を調節する分野などで利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 調整弁
2 弁箱
4 第一弁部
5 第二弁部
6 第一駆動部
7 第二駆動部
21 流路
22 第一共通路
23A 第一共通路
23B 第二共通路
24 第二共通路
41 第一弁座
42 第一弁体
43 第一弁座口
45 第一弁棒(第一弁軸)
51(51A,51B) 第二弁座
52 第二弁体
53(53A~53C) 第二弁座口
54 切替流路
55 第二弁棒(第二弁軸)