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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060458
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20230421BHJP
   H01C 7/02 20060101ALI20230421BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H01C7/02
H05K1/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170084
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】坂東 佑介
【テーマコード(参考)】
5E034
5E336
5E338
【Fターム(参考)】
5E034AA07
5E034DD06
5E336AA04
5E336AA12
5E336BB01
5E336CC31
5E336CC52
5E336CC55
5E336EE01
5E336GG11
5E338AA01
5E338BB75
5E338CC04
5E338CD11
5E338EE12
(57)【要約】
【課題】サーミスタがトリップ状態に至らないような異常状態であっても過電流を制限する。
【解決手段】電子機器は、電源と保護対象の回路との間に直列に挿入されるようにプリント基板10b上に実装されたサーミスタRthと抵抗器R1とを含む過電流保護回路を備える。プリント基板10bには、サーミスタRthの電極100,101が半田付けされたパッド11,12と、抵抗器の電極102,103が半田付けされたパッド13,14と、パッド13とパッド12とを接続する配線16bとが形成されている。配線16bは、パッド13からパッド12への延伸方向に対して垂直方向の幅W3がパッド12の垂直方向の幅W1よりも広く、サーミスタRthの下に形成される部分がパッド12からはみ出るように形成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と保護対象の回路との間に直列に挿入されるようにプリント基板上に実装されたサーミスタと抵抗器とを含む過電流保護回路を備え、
前記プリント基板には、
前記サーミスタの1対の電極が半田付けされた第1、第2のパッドと、
前記抵抗器の1対の電極が半田付けされた第3、第4のパッドと、
前記第3のパッドと前記第2のパッドとを接続する配線とが形成され、
前記配線は、前記第3のパッドから前記第2のパッドへの延伸方向に対して垂直方向の幅が前記第2のパッドの前記垂直方向の幅よりも広く、前記サーミスタの下に形成される部分が前記第2のパッドからはみ出るように形成されることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1記載の電子機器において、
前記抵抗器は、その発熱が前記サーミスタに伝わるように前記サーミスタの近傍に実装されることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1または2記載の電子機器において、
前記サーミスタと前記抵抗器は、チップタイプの素子であることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正特性サーミスタを利用する過電流保護回路を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
誤接続や部品故障などの異常状態に対して、正特性サーミスタを使用することでサーミスタの自己発熱により抵抗値が上昇し、電子機器の内部回路を保護することができる(非特許文献1参照)。
【0003】
図2は、サーミスタを使用した保護回路を備えた電子機器の構成を示す回路図である。図2の例では、電子機器1にDC12Vの電源2を接続した例を示している。電子機器1は、電子機器1の機能を実現する、保護対象の回路3と、過電流保護回路4とを備えている。過電流保護回路4は、サーミスタRthと、抵抗器R1と、ツェナーダイオードZD1とから構成される。
【0004】
例えば最大定格がDC20Vの回路3に対して、前段にツェナー電圧が18VのツェナーダイオードZD1を設けることで、18V以上の電圧が回路3に加わることを防ぐ。ただし、ツェナーダイオードZD1のみで保護した場合、ツェナーダイオードZD1に過電流が流れてしまうため、抵抗器R1やサーミスタRthを入れる必要がある。
【0005】
過電流保護回路4をツェナーダイオードZD1と抵抗器R1で構成した場合、抵抗器R1の抵抗値を大きくすることで過電流の制限ができるが、正常時の消費電力が増加する。抵抗値を小さくすると、過電流に対応するためにツェナーダイオードZD1や抵抗器R1の定格電力を大きくしなければならない。
【0006】
過電流保護回路4をツェナーダイオードZD1とサーミスタRthで構成した場合、例えば電源の誤接続により過電流が発生したときに、誤接続の直後にはサーミスタRthが発熱しておらず、サーミスタRthの抵抗値が低いため、ツェナーダイオードZD1に大きな過電流が流れてしまう。したがって、図2に示すように過電流保護回路4をサーミスタRthと抵抗器R1とツェナーダイオードZD1とによって構成することが望ましい。
【0007】
例えばDC12Vの電源2を接続すべき電子機器1に、図3に示すようにDC24Vの電源5を誤接続した場合、抵抗器R1の抵抗値を100Ω、ツェナーダイオードZD1のツェナー電圧を18Vとすると、図4に示すようにDC60mAの過電流が流れるが、サーミスタRthが自己発熱して電流制限がかかるために、回路3に故障が発生することはない。
【0008】
ただし、過電流保護回路4をサーミスタRthと抵抗器R1とツェナーダイオードZD1とから構成した場合でも、異常状態によってはサーミスタRthの自己発熱が僅かとなり、回路3を十分に保護できないことがある。例えばDC12Vの電源2を接続すべき電子機器1に、図5に示すようにAC24Vの電源6を誤接続した場合、抵抗器R1の抵抗値を100Ω、ツェナーダイオードZD1のツェナー電圧を18Vとすると、図6に示すように+150mA~-330mAの過電流が流れる。しかし、交流電流ではサーミスタRthが自己発熱しにくい場合があり、サーミスタRthによる電流制限が機能しない。このため、後段の抵抗器R1やツェナーダイオードZD1の定格電力を大きくしなければならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“アプリケーションノート電流保護素子としてのPTCサーミスタRthの使い方”,TDK株式会社,2021年,<https://product.tdk.com/ja/techlibrary/applicationnote/howto_ptc-limiter.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、サーミスタがトリップ状態に至らないような異常状態であっても過電流を制限することができる過電流保護回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電子機器は、電源と保護対象の回路との間に直列に挿入されるようにプリント基板上に実装されたサーミスタと抵抗器とを含む過電流保護回路を備え、前記プリント基板には、前記サーミスタの1対の電極が半田付けされた第1、第2のパッドと、前記抵抗器の1対の電極が半田付けされた第3、第4のパッドと、前記第3のパッドと前記第2のパッドとを接続する配線とが形成され、前記配線は、前記第3のパッドから前記第2のパッドへの延伸方向に対して垂直方向の幅が前記第2のパッドの前記垂直方向の幅よりも広く、前記サーミスタの下に形成される部分が前記第2のパッドからはみ出るように形成されることを特徴とするものである。
また、本発明の電子機器の1構成例において、前記抵抗器は、その発熱が前記サーミスタに伝わるように前記サーミスタの近傍に実装されることを特徴とするものである。
また、本発明の電子機器の1構成例において、前記サーミスタと前記抵抗器は、チップタイプの素子である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、抵抗器の第3のパッドとサーミスタの第2のパッドとを接続する配線を、第3のパッドから第2のパッドへの延伸方向に対して垂直方向の幅が第2のパッドの垂直方向の幅よりも広くなるようにし、サーミスタの下に形成される部分が第2のパッドからはみ出るように形成することにより、過電流による抵抗器の発熱をサーミスタに伝え易くすることができるので、サーミスタが自己発熱しにくいためにトリップ状態に至らないような異常状態であっても、サーミスタの温度を上昇させて過電流を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施例と従来の電子機器のプリント基板のサーミスタ付近の回路パターンを示す平面図である。
図2図2は、サーミスタを使用した過電流保護回路を備えた電子機器の構成を示す回路図である。
図3図3は、電子機器にDC24Vの電源を誤接続した1例を示す回路図である。
図4図4は、電子機器にDC24Vの電源を誤接続した場合の過電流を示す図である。
図5図5は、電子機器にAC24Vの電源を誤接続した1例を示す回路図である。
図6図6は、電子機器にAC24Vの電源を誤接続した場合の過電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。本実施例においても、電子機器は保護対象の回路と過電流保護回路とを有する構成であり、その回路図は従来と同様なので、図2図3図5の符号を用いて説明する。図1(A)は従来の電子機器1のプリント基板のサーミスタ付近の回路パターンを示す平面図、図1(B)は本実施例の電子機器1のプリント基板のサーミスタ付近の回路パターンを示す平面図である。
【0015】
図1(A)、図1(B)において、10a,10bは絶縁体からなるプリント基板、11,12はチップタイプのサーミスタRthの電極100,101が半田付けされた金属からなるパッド(第1、第2のパッド)13,14はチップタイプの抵抗器R1の電極102,103が半田付けされた金属からなるパッド(第3、第4のパッド)、15は一端がパッド11に接続され、他端が電源側に接続された金属からなる配線、16a,16bはパッド12とパッド13とを接続する金属からなる配線、17は一端がパッド14に接続され、他端がツェナーダイオードZD1と回路3側に接続された金属からなる配線である。
【0016】
サーミスタRthは、正の温度係数を有するPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタである。また、サーミスタRthと抵抗器R1とは、後述のように抵抗器R1の発熱をサーミスタRthに伝え易くするためにチップタイプの素子であることが好ましい。
【0017】
図1(A)、図1(B)に示すように、プリント基板10a,10b上のサーミスタRthの付近には、パッド11~14と、配線15,16a,16b,17とが形成されている。
本実施例と従来との違いの1つは、抵抗器R1の発熱を配線を介してサーミスタRthに伝え、サーミスタRthの温度を上昇させるために、サーミスタRthのパッド12と抵抗器R1のパッド13の距離を近づけ、抵抗器R1をサーミスタRthの近傍に実装したことである。
【0018】
また、サーミスタRthが半田付けされるパッド11,12の大きさは、サーミスタRthの電極100,101の大きさに合わせて設計される。従来の電子機器では、パッド13からパッド12への延伸方向(図1(A)左右方向)に対して垂直方向(図1(A)上下方向)の配線16aの幅W2は、パッド12の幅W1に合わせて設計されている。
【0019】
これに対して、本実施例では、パッド13とパッド12を接続する配線16bは、パッド13からパッド12への延伸方向(図1(B)左右方向)に対して垂直方向(図1(B)上下方向)の幅W3がパッド12の幅W1よりも広く、サーミスタRthの下に形成される部分がパッド12からはみ出るように形成される。
【0020】
以上のような構成により、本実施例では、例えば図5の例のように電子機器にAC24Vの電源が誤接続された場合で、サーミスタRthが自己発熱しにくい場合であっても、交流の過電流による抵抗器R1の発熱をサーミスタRthに伝えることで、サーミスタRthの温度を上昇させることができる。その結果、本実施例では、従来の電子機器でサーミスタRthが自己発熱しにくいためにトリップ状態に至らないような異常状態であっても、サーミスタRthの温度を上昇させてトリップ状態に遷移させることができ、サーミスタRthの抵抗値の上昇によって過電流を制限することができるので、回路3に故障が発生することはない。また、本実施例では、過電流に対応するためにツェナーダイオードZD1や抵抗器R1の定格電力を大きくする必要がなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、正特性サーミスタを利用する過電流保護技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1…電子機器、2,5,6…電源、3…保護対象の回路、4…過電流保護回路、10b…プリント基板、11~14…パッド、15,16b,17…配線、Rth…サーミスタ、R1…抵抗器、ZD1…ツェナーダイオード。
図1
図2
図3
図4
図5
図6