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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060468
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】キャスタ
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/00 20060101AFI20230421BHJP
   B60B 33/02 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
B60B33/00 501B
B60B33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170098
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】394016874
【氏名又は名称】河淳株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390003816
【氏名又は名称】株式会社ユーエイ
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217881
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 由美
(72)【発明者】
【氏名】吉次 徹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】雄島 耕太
(72)【発明者】
【氏名】小早川 直人
(57)【要約】      (修正有)
【課題】キャスタ本体からブレーキ操作部材等が突出して、他の物体に不意に干渉することを防止したキャスタを提供する。
【解決手段】キャスタは、車輪1と、車輪1を水平軸心L1廻りに回転自在に枢着したキャスタ本体2と、キャスタ本体2の天井壁部4を鉛直状一軸心L0廻りに回転自在に受持すると共に台車に固着される取付台盤3とを、備えたキャスタに於て、鉛直状一軸心L0に沿って、上下動自在に挿通した作動ピン10を、備え、作動ピン10は、下端面が車輪1の外周面に押圧する車輪1の回転制動機能と、取付台盤3とキャスタ本体2の鉛直状一軸心L0廻りの相対的回転をピン下降作動によって、阻止する車輪1の旋回ロック機能とを、発揮するよう構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪(1)と、該車輪(1)を水平軸心(L1 )廻りに回転自在に枢着したフォーク形キャスタ本体(2)と、該キャスタ本体(2)の天井壁部(4)を鉛直状一軸心(L0 )廻りに回転自在に受持すると共に台車に固着される取付台盤(3)とを、備えたキャスタに於て、
上記鉛直状一軸心(L0 )に沿って、上下動自在に挿通した作動ピン(10)を、備え、
該作動ピン(10)は、下端面(11)が車輪(1)の外周面(1A)に押圧する車輪(1)の回転制動機能と、
上記取付台盤(3)とキャスタ本体(2)の上記鉛直状一軸心(L0 )廻りの相対的回転をピン下降作動によって、阻止する車輪(1)の旋回ロック機能とを、
発揮するよう構成したことを特徴とするキャスタ。
【請求項2】
車輪(1)と、該車輪(1)を水平軸心(L1 )廻りに回転自在に枢着したフォーク形キャスタ本体(2)と、該キャスタ本体(2)の天井壁部(4)を鉛直状一軸心(L0 )廻りに回転自在に受持すると共に台車に固着される取付台盤(3)とを、備えたキャスタに於て、
上記鉛直状一軸心(L0 )に沿って形成された貫孔(5)に、上下動自在として挿通されると共に、上記キャスタ本体(2)と一体状に上記鉛直状一軸心(L0 )廻りに回転自在な作動ピン(10)を、有し、
上記作動ピン(10)に対して下方向に外力(F)を付与すると、上記作動ピン(10)が下方へ移動して、ピン下端面(11)がブレーキシュー(Bs )として上記車輪(1)の外周面(1A)を押圧して回転制動状態となるように、構成すると共に、
上記取付台盤(3)と、上記作動ピン(10)の上端部との間に、上記鉛直状一軸心(L0 )廻りの相互回転を阻止可能な旋回ロック手段(25)を、設け、
上記作動ピン(10)が下方へ移動した上記回転制動状態に対応して、上記旋回ロック手段(25)が旋回ロック状態になるように、
構成したことを特徴とするキャスタ。
【請求項3】
上記作動ピン(10)には、上下方向に長い長孔(7)を貫設し、
上記キャスタ本体(2)には、水平方向に上記長孔(7)を貫通するストッパ軸(8)を、固着し、
作動ピン(10)とキャスタ本体(2)は、上記鉛直状一軸心(L0 )廻りに、常に、一体状に回転するよう構成した請求項2記載のキャスタ。
【請求項4】
上記取付台盤(3)には、ブッシュ廻り止め手段(20)を介して、ブッシュ(6)が嵌着され、該ブッシュ(6)の上面には、放射状凹溝部(15)が形成され、
上記作動ピン(10)は上端に外鍔部(10C)を有し、該外鍔部(10C)の下面に当接するように、かつ、板バネ廻り止め機構(21)を介して、板バネ(18)を付設し、しかも、該板バネ(18)には、上記ブッシュ(6)の上面の凹溝部(15)に係合自在な係止爪(18C)又は小突起が、付設され、
上記旋回ロック手段(25)は、上記凹溝部(15)を有するブッシュ(6)と、上記係止爪(18C)又は小突起を有する板バネ(18)と、該係止爪(18C)又は小突起が上記凹溝部(15)に係合しないように弾発的に上方へ弱く付勢するコイルバネ(23)と、を具備する請求項2又は3記載のキャスタ。
【請求項5】
上記取付台盤(3)には、ブッシュ廻り止め手段(20)を介して、ブッシュ(6)が嵌着され、該ブッシュ(6)の上面には、係止用切欠凹部(28)が形成され、
上記作動ピン(10)は上端の外鍔部(10C)と、該外鍔部(10C)から下方へ延伸した垂下片部(29)とを、有し、
上記旋回ロック手段(25)は、上記切欠凹部(28)を有するブッシュ(6)と、上記垂下片部(29)と、該垂下片部(29)が上記切欠凹部(28)に係合しないように上記外鍔部(10C)に下方から当接して作動ピン(10)を上方へ弾発付勢するコイルバネ(30)と、を具備する請求項2又は3記載のキャスタ。
【請求項6】
上記取付台盤(3)には、ブッシュ廻り止め手段(20)を介して、ブッシュ(6)が嵌着され、該ブッシュ(6)の上面には、係止用の放射状凹溝部(15)が形成され、
上記作動ピン(10)は、上端の外鍔部(10C)と、該外鍔部(10C)の下方近傍のピン外周面(10S)から放射状に突設されると共に上記外鍔部(10C)の下面に連設された複数の係止用突片(33)を、有し、
上記旋回ロック手段(25)は、上記放射状凹溝部(15)を有するブッシュ(6)と、上記放射状凹溝部(15)に対して上方から係合自在な上記係止用突片(33)と、該係止用突片(33)が上記放射状凹溝部(15)に係合しないように作動ピン(10)を上方へ弾発付勢するコイルバネ(23)と、を具備する請求項2又は3記載のキャスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車輪にブレーキを掛ける回転制動機能、及び、鉛直状軸心廻りに旋回自在なフォーク形キャスタ本体を所望の進行方向に設定するための旋回ロック機能の、両機能を備えたキャスタが公知である。
また、回転制動機能のみを有するキャスタ(特許文献1参照)や、旋回ロック機能のみを有するキャスタ(特許文献2参照)も、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-6703号公報
【特許文献2】登録実用新案第3014588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車輪の回転制動機能の構成部品としてブレーキ操作レバーは、フォーク形キャスタ本体の側面に突出状に、付設されていた(特許文献1参照)。
さらに、旋回ロック機能の一構成部品として旋回規制レバーは、フォーク形キャスタ本体の前後一方向に突出状に、付設されていた(特許文献2参照)。
【0005】
しかし、従来のこのようなキャスタにあっては、下記のような欠点があった。
即ち、
(i)ブレーキ操作レバーや旋回規制レバーが、キャスタ本体から側方又は前後方向に突出していたので、他の物体に不意に干渉して切り替わる場合がある点、
(ii)ブレーキ操作レバーや旋回規制レバーは、キャスタ本体の左右回動に伴って、旋回してしまって、そのレバー位置をさぐりだす手間が掛かり、不便である点、
(iii) 台車には、ブレーキ操作レバー付キャスタと旋回規制レバー付キャスタを、各々、複数ずつ、配設することがあるが、手又は足によっての全部のレバー切替えが面倒であり、レバー切替えに時間と手間が掛かっていた点。
【0006】
そこで、本発明は、このような欠点(i)(ii)(iii)を解決することを、目的とする。
さらに、上記欠点(iii)を解決するにとどまらず、台車に設けた車輪の内で、車輪の回転制動機能及び旋回ロック機能を有する全てのキャスタを、単数の簡易な統一制御系によって、確実に、切替えコントロールすることを実現可能とすることを、別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るキャスタは、車輪と、該車輪を水平軸心廻りに回転自在に枢着したフォーク形キャスタ本体と、該キャスタ本体の天井壁部を鉛直状一軸心廻りに回転自在に受持すると共に台車に固着される取付台盤とを、備えたキャスタに於て;上記鉛直状一軸心に沿って、上下動自在に挿通した作動ピンを、備え;該作動ピンは、下端面が車輪の外周面に押圧する車輪の回転制動機能と;上記取付台盤とキャスタ本体の上記鉛直状一軸心廻りの相対的回転をピン下降作動によって、阻止する車輪の旋回ロック機能とを;発揮するよう構成した。
【0008】
また、車輪と、該車輪を水平軸心廻りに回転自在に枢着したフォーク形キャスタ本体と、該キャスタ本体の天井壁部を鉛直状一軸心廻りに回転自在に受持すると共に台車に固着される取付台盤とを、備えたキャスタに於て;上記鉛直状一軸心に沿って形成された貫孔に、上下動自在として挿通されると共に、上記キャスタ本体と一体状に上記鉛直状一軸心廻りに回転自在な作動ピンを、有し;上記作動ピンに対して下方向に外力を付与すると、上記作動ピンが下方へ移動して、ピン下端面がブレーキシューとして上記車輪の外周面を押圧して回転制動状態となるように、構成すると共に;上記取付台盤と、上記作動ピンの上端部との間に、上記鉛直状一軸心廻りの相互回転を阻止可能な旋回ロック手段を、設け;上記作動ピンが下方へ移動した上記回転制動状態に対応して、上記旋回ロック手段が旋回ロック状態になるように;構成した。
【0009】
また、上記作動ピンには、上下方向に長い長孔を貫設し;上記キャスタ本体には、水平方向に上記長孔を貫通するストッパ軸を、固着し;作動ピンとキャスタ本体は、上記鉛直状一軸心廻りに、常に、一体状に回転するよう構成した。
【0010】
また、上記取付台盤には、ブッシュ廻り止め手段を介して、ブッシュが嵌着され、該ブッシュの上面には、放射状凹溝部が形成され;上記作動ピンは上端に外鍔部を有し、該外鍔部の下面に当接するように、かつ、板バネ廻り止め機構を介して、板バネを付設し、しかも、該板バネには、上記ブッシュの上面の凹溝部に係合自在な係止爪又は小突起が、付設され;上記旋回ロック手段は、上記凹溝部を有するブッシュと、上記係止爪又は小突起を有する板バネと、該係止爪又は小突起が上記凹溝部に係合しないように弾発的に上方へ弱く付勢するコイルバネと、を具備する。
【0011】
また、上記取付台盤には、ブッシュ廻り止め手段を介して、ブッシュが嵌着され、該ブッシュの上面には、係止用切欠凹部が形成され;上記作動ピンは上端の外鍔部と、該外鍔部から下方へ延伸した垂下片部とを、有し;上記旋回ロック手段は、上記切欠凹部を有するブッシュと、上記垂下片部と、該垂下片部が上記切欠凹部に係合しないように上記外鍔部に下方から当接して作動ピンを上方へ弾発付勢するコイルバネと、を具備する。
【0012】
また、上記取付台盤には、ブッシュ廻り止め手段を介して、ブッシュが嵌着され、該ブッシュの上面には、係止用の放射状凹溝部が形成され;上記作動ピンは、上端の外鍔部と、該外鍔部の下方近傍のピン外周面から放射状に突設されると共に上記外鍔部の下面に連設された複数の係止用突片を、有し;上記旋回ロック手段は、上記放射状凹溝部を有するブッシュと、上記放射状凹溝部に対して上方から係合自在な上記係止用突片と、該係止用突片が上記放射状凹溝部に係合しないように作動ピンを上方へ弾発付勢するコイルバネと、を具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、作動ピンは他の物体に不意に干渉しにくい箇所に存在し、誤動作を発生しない。また、キャスタ本体の左右回動によっても、作動ピンの軸心は不動(一定の位置)を保ち、作動ピンの上端面に対して、上方から押下力(ベクトル)を付与させれば、迅速、かつ、確実に、車輪の回動制動及び旋回ロックを、行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の一形態を示す斜視図である。
図2】作動ピンを押下げた状態を示す斜視図である。
図3図1に対応する図であって、一部断面側面図である。
図4図2に対応する図であって、一部断面側面図である。
図5】分解斜視図である。
図6】要部拡大斜視図である。
図7】他の実施の形態を示した斜視図である。
図8】他の実施の形態に於て作動ピンを押下げた状態を示す斜視図である。
図9】別の実施の形態を示した斜視図である。
図10図9に対応する図であって、一部断面側面図である。
図11】作動ピンを押下げた状態を示す斜視図である。
図12図11に対応する図であって、一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図示の実施の形態に基づいて本発明を詳説する。
図1図6に示す本発明の実施の一形態に於て、1は車輪であり、水平軸心L1 廻りに回転自在として、フォーク形キャスタ本体2に枢着されている。
3は、キャスタ本体2の天井壁部4を、鉛直状一軸心L0 廻りに回転自在に受持する取付台盤である。この取付台盤3は、(図示省略した)台車に固着される。
【0016】
10は、上記鉛直状一軸心L0 に沿って、上下動自在に挿通された作動ピンである。
この作動ピン10は、下端面11が、車輪1の外周面1Aに対して、ブレーキシューBs として圧接して、回転制動状態とするものである。言い換えると、この作動ピン10は上下動自在であって、下方へ移動すると、車輪1の外周面1Aに押圧されて、車輪1の回転制動機能を、発揮する。
【0017】
この作動ピン10の上面10Aに対して、下方向の外力Fを、(図示省略の)ブレーキレバーの手動操作にて、リンク機構又はコントロールワイヤ等を介して作動する押圧部材によって、付与すれば、作動ピン10は下方へ移動して(図4のように、)車輪1の回転を阻止する回転制動状態となる。
なお、5は作動ピン10が上下動自在に挿通される貫孔であって、具体的には、(後述の)ブッシュ6の孔部が該当する。
【0018】
以上のように、鉛直状一軸心L0 に沿って形成された貫孔5に、上下動自在として作動ピン10は挿通されるが、さらに、作動ピン10に、上下方向に長い長孔7を、図3図5に示すように、貫設する。かつ、キャスタ本体2には、水平方向に上記長孔7を貫通するストッパ軸(ピン)8を、固着する。
このようにして、作動ピン10とキャスタ本体2は、鉛直状一軸心L0 廻りに、常に一体状に回転する。
【0019】
また、図6に示したように、取付台盤3の孔部3Aに、ブッシュ6が嵌着されるが、ブッシュ廻り止め手段20を介して、ブッシュ6が鉛直状一軸心L0 廻りには回転しないように保持(嵌着)される。このブッシュ廻り止め手段20は、(図例では)ブッシュ6の上方鍔部12の外周縁に下方開口状として複数配設された小凹部13と、取付台盤3の孔部3Aに突設された小凸部3Bと、から成る。
【0020】
即ち、ブッシュ廻り止め手段20によって、上方からブッシュ6が、取付台盤3の孔部3Aへ落し込まれると、ブッシュ6は鉛直状一軸心L0 廻りに回転しない。
なお、C型止め輪16によって、ブッシュ6は抜け止めされている(図6図5図3参照)。
【0021】
また、取付台盤3にブッシュ6を固定状態とするために、(上述したブッシュ廻り止め手段20の他に、)カシメ又は溶接等によって、固着することも好ましい(図示省略)。
【0022】
上述のように、廻り止め状態として取付台盤3に嵌着されたブッシュ6の上面には、放射状凹溝部15が形成されている。つまり、平面視、中心点から放射方向に多数の凹溝部15が形成されている。なお、(図示省略するが)この放射状凹溝部15の代りに、ブッシュ6の上面に、1個乃至複数個の孔部(凹窪部)を形成することも、望ましい。
【0023】
また、作動ピン10は、上端に外鍔部10Cを有し、この外鍔部10Cの下面に当接するように、板バネ18を設ける。しかも、板バネ廻り止め機構21を介して、板バネ18は作動ピン10に付設される。
【0024】
この板バネ廻り止め機構21は、図3図4図5に示したように、板バネ18の(作動ピン10を挿入用の)孔部の内周縁に形成した小切欠凹部19と、作動ピン10の外鍔部10Cの下面と、軸部との隅部に形成した小凸部22と、から構成される。なお、板バネ廻り止めのために、板バネ18をカシメ又は溶接等で作動ピン10に固着するも、好ましい(図示省略)。
【0025】
さらに、ブッシュ6の上面の凹溝部15に、係合自在な係止爪18Cが、板バネ18に一体に付設されている。
上述のようにして、取付台盤3と、作動ピン10の上端部との間に、鉛直状一軸心L0 廻りの相互回転を阻止可能な旋回ロック手段25が設けられている。
【0026】
図3から図4に示したように、作動ピン10が下方へ移動すれば、前記回転制動状態に対応して、旋回ロック手段25は旋回ロック状態となる。
さらに説明すれば、旋回ロック手段25には、係止爪18Cが凹溝部15に係合しないように、通常状態下で、弾発的に上方へ「弱く」付勢するコイルバネ23が、板バネ18の下端に当接状に、介装されている。
【0027】
本発明に於て、上記コイルバネ23の弾発付勢が「弱く」とは、(図3から図4のように)作動ピン10が下へ移動する際に、板バネ18が簡単に(軽く)コイルバネ23を押圧圧縮させて、係止爪18Cが凹溝部15に係止可能であると共に、作動ピン10への外力Fが無くなれば、図4から図3のように、上記凹溝部15から係止爪18Cが上方へ離脱させる程度の弾発付勢力を有することを言う。
【0028】
要するに、旋回ロック手段25は、凹溝部15を有するブッシュ6と、係止爪18Cを有する板バネ18と、係止爪18Cが凹溝部15に係合しないように弾発的に上方へ弱く付勢するコイルバネ23と、を具備する。
【0029】
さらに、以上の説明からも明らかであるように、本発明では、鉛直状一軸心L0 に沿って、上下動自在に挿通した作動ピン10を、備え;作動ピン10は、下端面11が車輪1の外周面1Aに押圧する車輪1の回転制動機能と;取付台盤3とキャスタ本体2の鉛直状一軸心L0 廻りの相対的回転をピン下降作動によって、阻止する車輪1の旋回ロック機能とを;発揮するよう構成した。
【0030】
次に、図7図8に示した本発明の他の実施形態について、説明する。
取付台盤3には、ブッシュ6が、(既説の実施形態と同様の)ブッシュ廻り止め手段20(図6参照)を介して、嵌着される。このブッシュ6の上面には、係止用切欠凹部28が、一方向に形成されている。この切欠凹部28としては、(図7図8では、)ラジアル半径方向の凹溝形状とした場合を例示する。なお、(図示省略するが)上記係止用切欠凹部28は、係止用孔部とするも、好ましい。
【0031】
そして、作動ピン10は、その上端に円形の外鍔部10Cを有すると共に、この外鍔部10Cから下方へ垂下片部29を延伸状に有する。
そして、旋回ロック手段25は、上述の切欠凹部28を有するブッシュ6と、作動ピン10の上記垂下片部29と、この垂下片部29が切欠凹部28に係合しないように外鍔部10Cに下方から当接して作動ピン10を上方へ弾発付勢するコイルバネ30とを、備えている。
【0032】
この図7図8に示した旋回ロック手段25は、旋回ロック状態下では車輪1は真直ぐ前方へ向く旋転位置にて、ロックされる。しかしながら、大き目の切欠凹部28と垂下片部29の係合は強力に旋回阻止(ロック)状態を維持する利点がある。
上述のように、車輪1の回転制動のON-OFF、及び、旋回のロック-非ロックは、作動ピン10の下降と上昇にて、切替えられる。
【0033】
従って、図2図4図8に示した如く、単純に、矢印Fで示した外力を作動ピン10の上面10A等に付与するだけで、車輪1及びキャスタ本体2の旋回方向(位置)に関係なく、極めて簡単かつ確実に、車輪1の回転制動状態及び旋回ロック状態に切替えることが可能であるという利点がある。かつ、台車には、一般に、2個、4個(さらには6個)のキャスタが使用されるが、車輪旋回方向にかかわらず、常に(平面的に見て)一点にベクトルFを作用させれば済む構造であるので、(図2図4図8参照)、図示省略した制動コントロールリンクの先端、又は、プッシュプルワイヤの先端の、可動切替部材を、上述の2個、4個等の複数の全てのキャスタに対して、同時に矢印(ベクトル)Fのように押圧させたり、逆に、上昇リリースさせることが、容易に行い得ることとなる。言い換えれば、一個(一本)の手動操作レバー等によって、全てのキャスタの同時制動切替え、同時旋回制御を、容易に実現できる利点もある。
【0034】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、次のように設計変更するも自由である。 例えば、板バネ係止爪18Cは(係止用)小突起とするも好ましい。
また、作動ピン10の小凸部22の代りに、(外鍔部10Cの下面に)小凹部(又は孔)を形成し、かつ、板バネ18には、この小凹部(又は孔)に係合可能な小凸部を(小切欠凹部19の代りに)形成するも、自由である。
【0035】
また、板バネ18の係止爪18Cに代えて、板バネ18に小凹部(又は孔)を形成すると共に、ブッシュ6の上面の凹溝部15に代えて、複数の係止用小凸部を配設するも、好ましい。
また、作動ピン10とブッシュ6の位置関係を、上下逆としても良い。つまり、作動ピン10をキャスタ本体2の内側から上方へ向かって差し込み、取付台盤3に長孔7を貫通するストッパ軸8を設ける構造とするも、自由である。
【0036】
次に、図9図12に示した本発明の別の実施形態について、説明する。
取付台盤3には、ブッシュ6が、(既説の実施形態と同様の)ブッシュ廻り止め手段20(図6参照)を介して、嵌着される。このブッシュ6の上面には、係止用の放射状凹溝部15が形成されている。
【0037】
作動ピン10は、上端に外鍔部10Cを有し、その下方近傍のピン外周面10Sから、複数の係止用突片33が、突設されており、この突片33は、外鍔部10Cの下面に連設される。
突片33は、作動ピン10の放射状凹溝部15の本数よりも少ない枚数に設定されるが、突片33の全ては、同時に放射状凹溝部15に係合可能なように、配設しておく。例えば、放射状凹溝部15が24本であれば、突片33は、6本又は4本、場合によっては2本等に設定すれば良い。
【0038】
なお、図9図12にあっては、外鍔部10Cの下方近傍のピン外周面10Sは、僅かに大きい外径寸法に設定する。なお、念を入れて述べると、上述の突片33は、ピン外周面10Sから、ピン軸心と平行な板片状として、突設されていると、表現することもできる。
【0039】
そして、旋回ロック手段25は、放射状凹溝部15を有するブッシュ6と、上記放射状凹溝部15に対して、上方から係合自在な係止用突片33と、この係止用突片33が放射状凹溝部15に係合しないように、作動ピン10を上方へ弾発付勢するコイルバネ30とを、具備している。
図例では、コイルバネ30の上端は、(前述の)やや大径ピン外周面10Sの下端段付部に係止して、作動ピン10を、常時、上方へ弾発付勢している。
【0040】
本発明は、以上詳述したように、車輪1と、該車輪1を水平軸心L1 廻りに回転自在に枢着したフォーク形キャスタ本体2と、該キャスタ本体2の天井壁部4を鉛直状一軸心L0 廻りに回転自在に受持すると共に台車に固着される取付台盤3とを、備えたキャスタに於て;上記鉛直状一軸心L0 に沿って、上下動自在に挿通した作動ピン10を、備え;該作動ピン10は、下端面11が車輪1の外周面1Aに押圧する車輪1の回転制動機能と;上記取付台盤3とキャスタ本体2の上記鉛直状一軸心L0 廻りの相対的回転をピン下降作動によって、阻止する車輪1の旋回ロック機能とを;発揮するよう構成したので、全体の構造と外形がシンプルなものとなる。かつ、作動ピン10は、キャスタ本体2の側方又は前後方向へは突出せず、他の物体に不意に干渉して誤動作することが、全く無くなる。さらに、キャスタ本体2が左右に旋回した場合にも、作動ピン10の中心軸心は移動せず、作動ピン10の操作が簡単かつ容易である。そして、車輪1の回転制動と旋回ロックとを、同じ部材───作動ピン10───をもって、同時に行い得て、構造が一層シンプルとなる。さらに、回転制御機能と旋回ロック機能を有する、台車に付設の全てのキャスタを、単数の簡易なコントロール制御系にて、切替えてコントロールすることが、可能となる。
【0041】
また、車輪1と、該車輪1を水平軸心L1 廻りに回転自在に枢着したフォーク形キャスタ本体2と、該キャスタ本体2の天井壁部4を鉛直状一軸心L0 廻りに回転自在に受持すると共に台車に固着される取付台盤3とを、備えたキャスタに於て;上記鉛直状一軸心L0 に沿って形成された貫孔5に、上下動自在として挿通されると共に、上記キャスタ本体2と一体状に上記鉛直状一軸心L0 廻りに回転自在な作動ピン10を、有し;上記作動ピン10に対して下方向に外力Fを付与すると、上記作動ピン10が下方へ移動して、ピン下端面11がブレーキシューBs として上記車輪1の外周面1Aを押圧して回転制動状態となるように、構成すると共に;上記取付台盤3と、上記作動ピン10の上端部との間に、上記鉛直状一軸心L0 廻りの相互回転を阻止可能な旋回ロック手段25を、設け;上記作動ピン10が下方へ移動した上記回転制動状態に対応して、上記旋回ロック手段25が旋回ロック状態になるように;構成したので、車輪1の回転制御する構造がシンプルとなり、かつ、作動ピン10は、キャスタ本体2から側方又は前後方向には突出せず、他の物体に不意に干渉することを防ぎ得る。しかも、旋回ロック手段25は、作動ピン10を共用して構造のさらなるシンプル化を図り得る。このように全体のコンパクト化を図ることができる。さらに、回転制御機能と旋回ロック機能を有する、台車に付設の全てのキャスタを、単数の簡易なコントロール制御系にて、切替えてコントロールすることが、可能となる。
【0042】
また、上記作動ピン10には、上下方向に長い長孔7を貫設し;上記キャスタ本体2には、水平方向に上記長孔7を貫通するストッパ軸8を、固着し;作動ピン10とキャスタ本体2は、上記鉛直状一軸心L0 廻りに、常に、一体状に回転するよう構成したので、作動ピン10が鉛直状一軸心L0 廻りに勝手に回転せず、ブレーキシューBs としての傾斜状(円弧状)の下端面11は安定姿勢で円形の車輪1の外周面に、確実に圧接して制動できる。しかも、長孔7と(それに貫通する)ストッパ軸8から成る構成は、簡素でスムーズに作動ピン10が上下移動すると共に、作動ピン10とキャスタ本体2は常に平面的に一体状に旋回する。
【0043】
また、上記取付台盤3には、ブッシュ廻り止め手段20を介して、ブッシュ6が嵌着され、該ブッシュ6の上面には、放射状凹溝部15が形成され;上記作動ピン10は上端に外鍔部10Cを有し、該外鍔部10Cの下面に当接するように、かつ、板バネ廻り止め機構21を介して、板バネ18を付設し、しかも、該板バネ18には、上記ブッシュ6の上面の凹溝部15に係合自在な係止爪18C(又は小突起)が、付設され;上記旋回ロック手段25は、上記凹溝部15を有するブッシュ6と、上記係止爪18C(又は小突起)を有する板バネ18と、該係止爪18C(又は小突起)が上記凹溝部15に係合しないように弾発的に上方へ弱く付勢するコイルバネ23と、を具備する構成であるので、車輪1の旋回方向がどちらを向いていても、(作動ピン10の下方への移動によって、)係止爪18C(又は小突起)は凹溝部15に対して、係止できる。さらに、板バネ18の弾性変形によって、スムーズに任意の凹溝部15に係止できる。また、作動ピン10を上方へ移動すれば、コイルバネ23によって、板バネ18が上方へ押されて、係止爪18C(又は小突起)の係合状態がスムーズに解除する。
さらに、本発明に付設の板バネ18は、作動ピン10の下端面11(ブレーキシューBs )を車輪1の外周面に押し当てる量が減少すること───これを仮に「エラー」と呼ぶこととする───が発生することを、防止する機能を発揮する。つまり、板バネ18の係止爪18C(又は小突起)が、ブッシュ6の凹溝部15に係合せずに(凸部に)乗り上げた場合に於て、板バネ18が弾性変形することで、上記「エラー」の防止を行い得る。
【0044】
また、上記取付台盤3には、ブッシュ廻り止め手段20を介して、ブッシュ6が嵌着され、該ブッシュ6の上面には、係止用切欠凹部28が形成され;上記作動ピン10は上端の外鍔部10Cと、該外鍔部10Cから下方へ延伸した垂下片部29とを、有し;上記旋回ロック手段25は、上記切欠凹部28を有するブッシュ6と、上記垂下片部29と、該垂下片部29が上記切欠凹部28に係合しないように上記外鍔部10Cに下方から当接して作動ピン10を上方へ弾発付勢するコイルバネ30と、を具備する構成であるので、構造が簡素化でき、かつ、旋回ロックを確実かつ強力に行い得ると共に耐久性にも優れる。
【符号の説明】
【0045】
1 車輪
1A 外周面
2 キャスタ本体
3 取付台盤
4 天井壁部
5 貫孔
6 ブッシュ
7 長孔
8 ストッパ軸
10 作動ピン
10C 外鍔部
10S ピン外周面
11 下端面
15 放射状凹溝部
18 板バネ
18C 係止爪
20 ブッシュ廻り止め手段
21 板バネ廻り止め機構
23 コイルバネ
25 旋回ロック手段
28 切欠凹部
29 垂下片部
30 コイルバネ
33 係止用突片
Bs ブレーキシュー
F 外力
0 鉛直状一軸心
1 水平軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12