(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060478
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】中空成形体の製造方法及び射出延伸ブロー成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 49/64 20060101AFI20230421BHJP
B29C 49/12 20060101ALI20230421BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
B29C49/64
B29C49/12
B29C49/06
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170110
(22)【出願日】2021-10-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】390007179
【氏名又は名称】株式会社青木固研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和秀
【テーマコード(参考)】
4F208
【Fターム(参考)】
4F208AG07
4F208AH55
4F208AR06
4F208LA01
4F208LA04
4F208LA07
4F208LB01
4F208LG03
4F208LG28
4F208LH01
4F208LH02
4F208LH09
4F208LH10
4F208LJ01
4F208LN11
4F208LN23
(57)【要約】
【課題】射出延伸ブロー成形機で離型のタイミングを早めて成形されたプリフォームを延伸してブロー成形するとき、プリフォームの底部が破裂しないようにするとともに、中空成形体の底部の肉厚が不均一にならないようにし、射出延伸ブロー成形機によって底部に不良のない中空成形体を製造する。
【解決手段】中空成形体を製造するに際し、プリフォームを射出成形する射出成形工程と、プリフォームをブロー成形し、中空成形体を得るブロー成形工程と、を備え、ブロー成形工程は、射出成形工程で得られた軟質状態の前記プリフォームの底部に、50℃から90℃に冷却された延伸ロッド20の先端部23を接触させて、前記プリフォームの底部を冷却しながら押し下げるようにして中空成形体をブロー成形する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームをブロー成形し、中空成形体を得るブロー成形工程と、
を備え、
前記ブロー成形工程は、前記射出成形工程で得られた軟質状態の前記プリフォームの底部に、50℃から90℃に冷却された延伸ロッドの先端部を接触させて、前記プリフォームの底部を冷却しながら押し下げる
中空成形体の製造方法。
【請求項2】
前記延伸ロッドの先端部を70℃から90℃に冷却する
請求項1に記載の中空成形体の製造方法。
【請求項3】
前記射出成形工程が、前記プリフォームを射出成形金型に接触させて冷却し、前記プリフォームの表層を硬化させる射出冷却工程を含み、
前記プリフォームを射出成形金型から離型し、前記プリフォームの内層からの熱を受けて前記プリフォームの表層を軟化させた状態で前記プリフォームをブロー成形金型に搬送するプリフォーム搬送工程を更に含む
請求項1又は2に記載の中空成形体の製造方法。
【請求項4】
プリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記射出成形部で射出成形された前記プリフォームを延伸する延伸ロッドを備えたブロー成形部と、
を備え、
前記ブロー成形部は、
前記延伸ロッドにおいて、前記プリフォームの底部に接触する先端部を50℃から90℃に冷却する冷却手段を備える
射出延伸ブロー成形機。
【請求項5】
前記延伸ロッドの先端部が、70℃から90℃に冷却される
請求項4に記載の射出延伸ブロー成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形体の製造方法及び射出延伸ブロー成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製のボトルやカップなどの中空成形体を製造する射出延伸ブロー成形機が用いられている。
この射出延伸ブロー成形機は、射出装置から射出された溶融樹脂でプリフォームを射出成形する射出成形部と、射出成形部で射出成形されたプリフォームをボトルやカップなどの中空成形体にブロー成形するブロー成形部と、ブロー成形部でブロー成形された中空成形体を成形機外へ送り出す取り出し部とを備えている。
【0003】
射出延伸ブロー成形機の射出成形部は、上型(射出コア型)と下型(射出キャビティ型)とリップ型とを備える射出成形金型を有する。また、リップ型は、射出成形したプリフォームを支持しながら、射出成形部からブロー成形部にプリフォームを搬送する。
【0004】
上記ブロー成形部は、割り型のブロー型とブロー成形部に対応位置するリップ型とを備えるブロー成形金型を有する。
そして、ブロー成形部は、ブロー成形金型に配されたプリフォームを延伸する延伸ロッドを備える。延伸ロッドによって、プリフォームの側部(胴部)や底部が押し下げられることで、プリフォームが延伸される。
また、ブロー成形部は、延伸ロッドを用いてプリフォームの延伸が行なわれる際、ブローエアをプリフォーム内に吹き込む吹き込み手段を備える。吹き込み手段によって、プリフォームを膨らませ、プリフォームの側部と底部とをブロー成形金型の内面に押し付けて中空成形体の形状に賦形する。
【0005】
ブロー成形部で成形された中空成形体は、ブロー成形金型の一部として構成されていたリップ型に支持され、ブロー成形金型から外されて上記取り出し部へ移動する。
その後、リップ型は中空成形体を解放する。これにより、取り出し部に位置した中空成形体は、射出延伸ブロー成形機の外部へ送り出される。そして、中空成形体を解放したリップ型は、再び射出成形部へ移動する。
【0006】
このように射出延伸ブロー成形機では、射出成形部で射出成形したプリフォームをリップ型で支持した状態で離型してブロー成形部に移動させ、ブロー成形部に位置したプリフォームを延伸ロッドによって延伸するとともに、ブローエアの吹き込みを行なって中空成形体を製造する。
【0007】
プリフォームの射出成形におけるホットパリソン方式では、延伸ロッドによるプリフォームの底部の突き破りを防止するために、プリフォームの底部の肉厚をプリフォームの側部の肉厚よりも薄く成形している。
【0008】
この点は特許文献1に示されているように、射出成形金型に充填された溶融樹脂のプリフォームの底部と側部とが、射出成形金型において、同一温度、同一時間で冷却されても、肉厚差から底部が早く冷却されて半硬化状態となるからである。
そして、プリフォームの底部の肉厚はプリフォームの側部の肉厚の1/2を基準厚さとして設定している。
【0009】
側部の肉厚を薄くしたプリフォーム、例えば側部の肉厚が2.0mm未満のプリフォームの場合、底部の肉厚を1.0mm未満に設計してしまうと、このプリフォームの射出成形時に流動配向が生じ易くなって底部が白化する。そして、ブロー成形後の中空成形体の底部にも、白化した部分が残るという不具合がある。
【0010】
流動配向を生じさせない対策としては、2.0mm以下のプリフォームの側部の肉厚に対し、底部の肉厚を1/2以上にすればよい。
しかしながら、この場合、プリフォームの底部の肉厚が厚い分、プリフォームの底部は側部に比べて軟らかい。そのため、延伸時に底部が伸び過ぎて延伸ロッドによって突き破られる現象が発生する。
【0011】
言い換えれば、プリフォームの側部の肉厚が2mm程度であって、射出成形部で射出冷却を通常の長さ(時間)で行なう条件の下でプリフォームを射出成形すると、離型の直ぐ後では、プリフォームの側部が射出冷却の作用によって硬化している度合いが大きい。
そのため、離型してブロー成形部で延伸と吹き込みを行なうと、プリフォームの底部が先行して伸び続け、延伸ロッドによって突き破られてしまう。
【0012】
ブロー成形時にプリフォームが破裂する現象を抑える対策として、延伸ロッドの先端部に冷却回路を通し、所定温度の冷媒(例えば、水)を循環させることが行なわれている。
この方法によれば、延伸時に延伸ロッドの冷えた先端部がプリフォームの底部に接触し、底部を冷却する結果、プリフォームの破裂を抑えることができる。
【0013】
特許文献1においても、延伸ロッドの先端部に冷却回路を通し、その延伸ロッドの先端部でプリフォームの底部を冷却する点が挙げられており、冷却回路に15℃から27℃の冷媒を通すことが示されている。そして、延伸ロッドの先端部でプリフォームの底部を冷却して半硬化状態にして、延伸ブロー成形を行なうことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、例えば、15℃から27℃の冷媒を通す延伸ロッドの先端部でプリフォームの底部を冷却する方法では、ブロー成形時にプリフォームの側部が底部に比べて伸び易くなるため、成形された中空成形体の底部の肉厚が側部に比べて厚くなるという不都合があった。
【0016】
また、特許文献1では、プリフォーム底部の突き破り防止対策として、製品のブロー成形時に底部が厚肉に成形することも挙げられており、その具体的な方法として、30℃から80℃に温度調節された延伸ロッドの先端部をプリフォームの底部と接触させる方法が示されている。
しかしながら、この方法で行われている底部冷却は、プリフォーム底部及びこれに続く側部(胴部)内壁に延伸ロッドの先端部材を接触させて、底部を低温に温調するというものである。この場合、プリフォームの底部と接続した側部内壁までを積極的に冷却することから、先端部材の押圧力を直接受けない部分まで余計に冷却され、これが底部周囲の延伸の妨げとなって容器底部の偏肉となっていた。
【0017】
ところで、近年、射出延伸ブロー成形機では、プリフォームや中空成形体の成形サイクルを短縮するため、プリフォームを射出成形金型から離型するタイミングが早められている。
【0018】
しかしながら、現在、射出成形金型からの離型のタイミングを早めてプリフォームを成形する形式の射出延伸ブロー成形機では、ブロー成形部の延伸ロッドに冷却手段が設けられていない。
そして、ブロー成形工程では、延伸ロッドによる上述したような冷却を行なわずにプリフォームの底部に延伸ロッドの先端部を接触させ、延伸ロッドの降下にて底部を押し下げながら側部の延伸を行なっている。
【0019】
離型のタイミングを早めてプリフォームを成形する形式の射出延伸ブロー成形機では、上述したようにプリフォームの成形サイクルは短い。
よって、離型のタイミングを早めていない形式の射出延伸ブロー成形機でのブロー成形工程と比べると、延伸ロッドの先端部がプリフォームの底部と接触する単位時間当たりの回数が多くなる。
その結果、延伸ロッドが、プリフォームを延伸した後、プリフォームの延伸によって温められた先端部の温度が元に戻る前に、次に搬送されたプリフォームを延伸することから、延伸ロッドの先端部の温度が徐々に上昇する。
【0020】
そのため、早期に離型してブロー成形金型に移動してきたプリフォームを延伸するとき、温度が上昇した延伸ロッドの先端部がプリフォームの底部を押し下げる。これにより、プリフォームの側部の延伸より先に底部が伸び過ぎて破れてしまうおそれがある。
【0021】
前記課題に鑑み、本発明は、プリフォームを延伸ブローする際、プリフォームの底部が破裂しないようにするとともに、中空成形体の底部の肉厚が不均一にならない中空成形体の製造方法及び射出延伸ブロー成形機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、プリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームをブロー成形し、中空成形体を得るブロー成形工程と、
を備え、
前記ブロー成形工程は、前記射出成形工程で得られた軟質状態の前記プリフォームの底部に、50℃から90℃に冷却された延伸ロッドの先端部を接触させて、前記プリフォームの底部を冷却しながら押し下げる
中空成形体の製造方法を提供して、上記課題を解消するものである。
【0023】
そして、本発明において、前記延伸ロッドの先端部を70℃から90℃に冷却することが良好である。
【0024】
また、本発明において、前記射出成形工程が、前記プリフォームを射出成形金型に接触させて冷却し、前記プリフォームの表層を硬化させる射出冷却工程を含み、
前記プリフォームを射出成形金型から離型し、前記プリフォームの内層からの熱を受けて前記プリフォームの表層を軟化させた状態で前記プリフォームをブロー成形金型に搬送するプリフォーム搬送工程を更に含むことが良好である。
【0025】
さらに、もう一つの発明は、プリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記射出成形部で射出成形された前記プリフォームを延伸する延伸ロッドを備えたブロー成形部と、
を備え、
前記ブロー成形部は、
前記延伸ロッドにおいて、前記プリフォームの底部に接触する先端部を50℃から90℃に冷却する冷却手段を備える
射出延伸ブロー成形機であり、この射出延伸ブロー成形機を提供して上記課題を解消するものである。
【0026】
そして、上記発明において、前記延伸ロッドの先端部が、70℃から90℃に冷却されることが良好である。
【発明の効果】
【0027】
射出延伸ブロー成形機の射出成形部で射出成形されたプリフォームは底部が柔らかいが、本発明によれば、ブロー成形部で延伸と吹き込みとを行なう際に発生していたプリフォームの破裂現象は、延伸ロッドの先端部に50℃から90℃の冷媒を通す冷却回路からなる冷却手段を設けることで抑えることができる。
【0028】
また、延伸ロッドの先端部の温度が高温になると、プリフォームの底部は伸び易くなるが、例えば、射出成形金型からプリフォームの離型のタイミングを早める形式の射出延伸ブロー成形機のように、射出冷却時間を短く設定することで、プリフォームの側部と底部との伸びのバランスを調整でき、中空成形体の底部の肉厚がばらつかない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の射出延伸ブロー成形機を概略的に示す説明図である。
【
図2】射出延伸ブロー成形機における複数の中空成形体製造工程がずれて進行する状態を示す説明図である。
【
図4】射出成形工程とブロー成形工程とがそれぞれ繰り返される状態を概略的に示す説明図である。
【
図7】中空成形体における底部で肉厚測定位置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
つぎに本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明を実施する射出延伸ブロー成形機1を示していて、射出装置2から溶融樹脂を送り込んでプリフォームを射出成形する射出成形部3と、射出成形部3で射出成形されたプリフォームを延伸し、ブローエアを吹き込んで中空成形体をブロー成形するブロー成形部4と、ブロー成形部4でブロー成形された中空成形体を射出延伸ブロー成形機1の外部へと送り出す取り出し部5とがある。
射出成形部3とブロー成形部4と取り出し部5とは、リップ型を有した図示しない回転板の回転方向に一定角度の間隔を置いて配置されている。
図1の矢印は回転板の回転方向及びリップ型の移動方向を示している。
【0031】
回転板の回転によって、射出成形部3、ブロー成形部4、取り出し部5のそれぞれの直上位置にリップ型が配置される。そして、リップ型は、一定の回転角度での回転と昇降とを繰り返す。これにより、リップ型によってプリフォームを射出成形部3からブロー成形部4へと移し、中空成形体をブロー成形部4から取り出し部5へ移す。取り出し部5においてリップ型が中空成形体を解放し、この中空成形体を解放したリップ型は、回転板の回転によって射出成形部3へ戻る。
【0032】
(射出成形部)
射出成形部3は、上型(射出コア型)と、下型(射出キャビティ型)と、リップ型とを備える射出成形金型を有する。下型、または下型と上型の双方に所定温度に調整された冷媒を通す冷却回路が設けられる。上型と下型を閉じ、高圧下で型締された射出成形金型で射出成形される溶融樹脂は、射出成形金型に接触し、冷却される。
【0033】
その後、上型と下型が開き、プリフォームがリップ型に支持された状態で回転板が上昇する。更に、回転板が回転しリップ型の移動によって、プリフォームがブロー成形部4へ移動する。
【0034】
(ブロー成形部)
ブロー成形部4は、割型で対のブロー型にリップ型を組み合わせて構成されるブロー成形金型を有する。また、ブロー成形部4は、ブロー型の間にリップ型で支持されたプリフォームの内側に進入する延伸ロッドと、プリフォームにブローエアを圧送する吹き込み装置を備える。そして、プリフォームに対し、前記延伸ロッドによる延伸とブローエアの吹き込みとを行なって、中空成形体をブロー成形する。
【0035】
ブロー成形後にブロー型が開くとともに回転板の上昇により中空成形体が離型し、回転板が回転してリップ型に支持された状態で中空成形体が取り出し部5に移動する。
【0036】
(取り出し部)
取り出し部5では、中空成形体に対するリップ型の保持が解かれる。そして、リップ型から外れた中空成形体を射出延伸ブロー成形機1から外へ送り出す。また、中空成形体を解放したリップ型は、回転板の回転で射出成形部3に移動し、上述した射出成形金型に組み入れられる。
【0037】
(中空成形体の製造方法)
次に、本実施形態に係る中空成形体の製造方法を説明する。本実施形態の中空成形体の製造方法は、前述の射出延伸ブロー成形機1を用いるもので、リップ型が射出成形部3とブロー成形部4と取り出し部5とを順に移動しながら中空成形体を製造する中空成形体製造工程6に対応する。
【0038】
より詳しくは、中空成形体製造工程6は、
図2に示すように射出成形部3でプリフォームを射出成形する射出成形工程7と、射出成形工程7で成形された前記プリフォームをブロー成形部4で延伸し、またブローエアを吹き込むことで中空成形体にブロー成形するブロー成形工程8と、ブロー成形工程8で成形された中空成形体を取り出し部5において上記リップ型の解放によって成形機外へと送り出す取り出し工程9を含む。
【0039】
(射出成形工程)
本実施の形態として挙げる射出延伸ブロー成形機1は、コップ状で広口の中空成形体を製造する成形機である。そして、コップ状の中空成形体を得るためのプリフォームは、リップ部分を広口にした擂り鉢状に射出成形される。
図3に擂り鉢状のプリフォーム15を射出成形する射出成形金型10が示されている。図示のように射出成形金型10は、下型11と、回転板12に組付けられていて前記下型11に重ね合わされるリップ型13と、リップ型13を通して下型11側に入り込むようにして降下する上型14とを備える。
【0040】
射出成形部3で繰り返される射出成形工程7は、以下の複数の段階(工程)を含む(
図4参照)。
(符号a) 前工程で成形されたプリフォーム15を離型するために型締め力を解除して射出成形金型10が型開きする段階。
(符号b) 上記回転板12が上昇して成形済みのプリフォーム15を離型し、回転板12が回転して成形済みのプリフォーム15をブロー成形部4に搬送するとともに、この回転板12の回転で、取り出し部5にあったリップ型13を下型11の上方位置に対応させる段階。
(符号c) 上型14をリップ型13に通すようにして回転板12とともに下ろして型締めし、型締め力を高圧に切り換える段階。
(符号d) 射出装置のノズル前進動作時間を確保する段階。
(符号e) 射出装置から溶融樹脂を射出する射出段階。
(符号f) 冷却段階。
なお、上述したように下型11、または下型11と上型14とに冷媒を通す冷却回路を組み付けて不図示の冷却手段が設けられており、下型11と上型14とは常時冷却されている。
【0041】
前述のように、射出成形工程7は、射出段階eと冷却段階fとからなる射出冷却工程16を有している。射出段階eにおいて、射出成形金型10の充填空間部分に送り込まれる溶融樹脂は射出成形金型10の内面に接しながら充填空間部分全体に広がり、設定量の溶融樹脂が加圧状態で満たされる。そして、冷却段階fにおいては、溶融樹脂の送り込みが完了した後、引き続き射出成形金型10の内面側からプリフォーム15を冷却する。
【0042】
このように射出冷却工程16では、溶融樹脂の充填を行なった後、常時冷えている射出成形金型10に溶融状態のプリフォーム15が接触する。その結果、プリフォーム15の表層の部分が硬化する。
また、射出冷却工程16の時点では、プリフォーム15の内層に高温度の溶融樹脂(軟化状態)があり、内層からの熱が表層側に向けて伝わる状態となっている。
【0043】
本実施の形態の射出延伸ブロー成形機1では、射出成形金型10からプリフォーム15を離型するタイミングが早められている。勿論、ブロー成形部4に搬送される途中でプリフォームの形状が崩れない硬さが確保されるまで射出冷却工程16の時間が確保されている。
【0044】
(プリフォーム搬送工程)
さらに射出成形工程7は、射出成形金型10から離型されたプリフォーム15をブロー成形部4に搬送するプリフォーム搬送工程17を含む。
【0045】
このプリフォーム搬送工程17においても、プリフォーム15の表層が硬化していてプリフォーム15の形状は保たれている。しかしながら、早期に離型していることから、射出成形金型10からは冷却されず、内層からの熱が表層側に伝わって表層の温度が上がって軟化する状態でブロー成形部4に搬送される。
図4に示されるように、射出成形金型10に溶融樹脂が射出されるたびに、射出成形部3において射出成形工程7が繰り返される。
【0046】
(ブロー成形工程)
図5にブロー成形金型18を示す。図示のブロー成形金型18において、型閉じした対のブロー型19の上方に、ブロー成形部4に移動してきたリップ型13が重なる。さらに、延伸ロッド20を支えるブローコア型21をリップ型13に重ね、リップ型13を通して延伸ロッド20をブロー型19の底側に下ろす。そして、前記延伸ロッド20の周囲を通るようにしてブローエアを送り込む送り込み手段22が、前記ブローコア型21に設けられる。
【0047】
このブロー成形金型18を配したブロー成形部4に、上記プリフォーム搬送工程17での回転板12に取り付けのリップ型13がプリフォーム15を移動させ、ブロー成形金型18の型締めが行なわれる。このとき、ブローコア型21に支持された延伸ロッド20がプリフォーム15の内側に進入する。
【0048】
ブロー成形工程8も、以下の複数の段階(工程)を含む(
図4参照)。
(符号a) 開いているブロー型19から中空成形体を取り出し部5へ搬出する段階。
(符号b) 開いているブロー型19を型閉めし始める型閉じ開始段階。
(符号c) ブロー型19の型締め段階。
(符号d) プリフォーム15が配置されるプリフォーム配置段階。
(符号e) ブローコア型21が重ね合わされて、型締め力を高圧に切り換える段階。
(符号f) ブローコア型21から延伸ロッド20が下りてプリフォーム15を伸ばし、またブローエアを吹き込んで中空成形体をブロー成形する成形段階。なお、延伸ロッド20は所定長さ降りると待機位置に戻り、また、ブローエアも所定量を吹き入れる動作を行なった後にはブローエアの送り込みを止める。
(符号g) ブロー成形金型18で成形された中空成形体の内部からブローエアを抜く排気段階。
(符号h) ブロー成形金型18に加わる型締め力を解除するブロー型圧抜き段階。
(符号i) ブロー成形金型18を型開きするブロー型開き段階。
【0049】
より詳しくは、ブロー成形部4におけるブロー成形工程8は、まず、一つ前にブロー成形された中空成形体を取り出し部5に向けて搬出する上記段階aと、ブロー型19の型閉じ開始段階bと、ブロー型19の型締め段階cを含む。
【0050】
また、この時の回転板12の動作によって、射出成形工程7で射出成形されたプリフォーム15がリップ型で支持された状態でブロー型19の上方に位置し、回転板12の降下によってブロー型19の間にプリフォーム15が配置される(段階d)。
【0051】
さらに、プリフォーム15がブロー型19に配置されると、ブロー型19の型締め力が高圧に切り換わる段階eを経て、ブローコア型21が降下し、延伸ロッド20がプリフォーム15の直上に位置する。そして、延伸ロッド20が降下してプリフォーム15の底部を押し下げながらプリフォーム15を延ばすとともに、吹き込み装置がプリフォーム15にブローエアを圧送して、中空成形体をブロー成形する(段階f)。
その後、ブローエアを抜いてプリフォーム内部を大気圧下にするとともに、ブロー成形金型18に加わる型締め力を弱め、ブロー成形金型18を型開きする(段階g、h、i)。
【0052】
(延伸ロッド)
実施の形態の射出延伸ブロー成形機1では、ブロー成形部4の延伸ロッド20の金属材で形成される先端部(下端部)23に冷却手段24が設けられていて、先端部23を冷却することで接触するプリフォーム15の底部を冷却し、その底部の軟化を抑えながら延伸時に底部での破れを防ぎ、破れない底部の押し下げでプリフォーム15の側部を延ばすようにしている。
【0053】
冷却手段24は、
図6に示されているように延伸ロッド20の先端部23の内部を経るように通された冷却回路25を備える。冷却回路25には50℃から90℃の冷媒が流され、プリフォーム15の底部に接触するごとにその底部を冷却する。
【0054】
図示されているように、延伸ロッド20が取り付けられているロッド支持板26に冷媒の供給元への戻り管路があるとともに、ロッド支持板26の上面に重なる取付板27に冷媒の供給元からの送り管路が設けられている。
【0055】
また、
図6に示されるように、ロッド支持板26に支持されている延伸ロッド20のロッド本体28が、パイプ状に形成されている。冷却回路25は、このロッド本体28の上部(ロッド支持板26側)から下部(先端部23側)に亘る内通路29に、取付板27の送り管路に連通する導管30を差し入れて、取付板27側から冷媒を導管30に送り込み、先端部23を経て導管30の外面と内通路29の内面との間を冷媒が上昇して、ロッド支持板26の戻り管路に達し、この戻り管路から供給元へと冷媒が戻るように形成されている。
【0056】
ここで、冷却回路25を通る冷媒の温度を50℃から90℃に調整することが好ましい。冷媒が前記温度範囲に冷却されることで、延伸ロッド20の先端部23に接触するプリフォーム15の底部の軟化が抑えられる。その結果、プリフォーム15の底部が伸び過ぎることがない。すなわち、プリフォーム15の底部の伸びが抑えられ、延伸ロッド20に接していないプリフォーム15の側部が適切に伸長するので、底部の破れを防止することができる。
【0057】
また、本実施形態において、射出成形部3からの離型タイミングを早めるため、プリフォーム15の射出冷却時間が短い。その状態でプリフォーム15がブロー成形部4に移動することから、プリフォーム15がブロー成形金型18の内部に位置する時点で軟化状態のプリフォーム15の内層から表層に熱が伝わり、プリフォーム15の側部が伸長し易い状態になっている。そのため、延伸ロッド20の先端部23がプリフォーム15の底部を押し下げたときにプリフォーム15の側部全体が適切に伸長する。よって、得られた中空成形体は、底部も平面方向に適正に伸びていて、底部周方向の肉厚に大きなばらつきがない。また、冷却回路25を通る冷媒の温度を70℃から90℃に調整することがより好ましい。
【0058】
これに対して、冷媒の温度が50℃を下回る場合、前記温度範囲に比べて底部周方向の肉厚にばらつきが大きくなる傾向がある。また、冷媒の温度が90℃を上回る場合、比較的高温の冷媒を用いるため、プリフォームの底部が軟化し、底部周方向の肉厚にばらつきが大きくなる傾向がある。
【0059】
(取り出し工程)
図2に示されているようにブロー成形工程8が完了すると取り出し工程9に移る。取り出し工程9では、中空成形体が、型開きしたブロー成形金型18からリップ型13に支持された状態で引き上げられ、回転板12の回転により取り出し部5に送り込まれる。そして、回転板12の停止の後にリップ型13が開いて中空成形体を解放し、この中空成形体が成形機外へと送り出される。
中空成形体の成形機外への送り出しが行なわれた後、リップ型13が閉じて射出成形部3に向けて回転板12が回転することで取り出し工程9が完了する。
【実施例0060】
以上説明した中空成形体の製造方法において、具体的な実施の例を以下に示す。ただし、本発明は、下記の実施例により限定及び制限されるものではない。
【0061】
(中空成形体の成形試験)
つぎに、射出冷却時間を短くして離型のタイミングを早めた射出延伸ブロー成形機1を用いて、擂り鉢状のプリフォームからカップ状の中空成形体を成形する試験を行なった。試験条件はつぎのとおりとした。
【0062】
(試験条件)
延伸ロッド20の先端部23に、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃のそれぞれの温度の冷媒(冷却手段24)を通した後、これらの延伸ロッド20を備えるブロー成形部4を用いてプリフォーム15をブロー成形し、重量25.2gの中空成形体を得た。なお、30℃の冷媒を用いた試料を比較例1、40℃の冷媒を用いた試料を比較例2、50℃の冷媒を用いた試料を実施例1、60℃の冷媒を用いた試料を実施例2、70℃の冷媒を用いた試料を実施例3、80℃の冷媒を用いた試料を実施例4、90℃の冷媒を用いた試料を実施例5と言う。
【0063】
図7に、各試料の肉厚測定位置を示す。ここで、
図7は、カップ状の中空成形体の底面図である。中空成形体の底面(底部)の外側から中央に延びるラインに番号1~8が付されている。ライン番号1~8は、中空成形体の底面(底部)の周方向に沿って時計回りに順にナンバリングされている。また、
図7の符号A~Fは、番号1~8の各ラインに沿って(中空成形体の底面の径方向に沿って)配置される。すなわち、ライン番号1~8のA部の肉厚を測定することで、全てのライン番号の各A部を結ぶ円周領域の肉厚差(肉厚のばらつき)が分かる。B部~F部に関しても同様である。測定結果を下表1~7に示す。なお、各表の数値の単位は、すべてmm(ミリメートル)である。
図7の中心位置のハッチング部分はゲート位置であり、中心位置に同心のハッチング部分は立ち上がり傾斜面部である。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
各表の最右列に「周方向の肉厚差」が記載されている。ここで、「周方向の肉厚差」とは、ライン番号1~8のA部の肉厚差(A部のうち、肉厚が最大のものから最小のものを引いた値)、ライン番号1~8のB部の肉厚差、ライン番号1~8のC部の肉厚差、ライン番号1~8のD部の肉厚差、ライン番号1~8のE部の肉厚差、ライン番号1~8のF部の肉厚差を示す。また、各表の最下部に記載される「肉厚差の平均」は、前述のA部~F部に対応する周方向の肉厚差の平均値(A部~F部の肉厚差を足し合わせ、これを測定領域の数である6(A部~F部の6つ)で割った値)に対応する。
【0072】
表1~2に示されるように、比較例1,2における周方向の肉厚差の平均が約0.2mmであった。これに対して、実施例1~5における周方向の肉厚差の平均は、0.1mm近傍であった。すなわち、30℃~40℃の冷媒を用いた試料に比べて、50℃~90℃の冷媒を用いた試料の底部周方向の肉厚のばらつき(偏肉)が少ないことが示された。特に、実施例3~5における周方向の肉厚差の平均は、0.1mm以下であり、底部周方向の肉厚のばらつき(偏肉)が更に少ないことが示された。