(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060528
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】定温輸送容器及びその内箱
(51)【国際特許分類】
F16L 59/065 20060101AFI20230421BHJP
B65D 81/38 20060101ALI20230421BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
F16L59/065
B65D81/38 A
B65D77/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170174
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】598039242
【氏名又は名称】株式会社 スギヤマゲン
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健介
【テーマコード(参考)】
3E067
3H036
【Fターム(参考)】
3E067BA05B
3E067BA05C
3E067BB14B
3E067BB14C
3E067CA18
3E067EA32
3E067EB17
3E067FA04
3E067FC01
3E067GA11
3E067GD10
3H036AA09
3H036AB33
3H036AC06
3H036AD06
(57)【要約】
【課題】真空断熱材を保護し、破損を容易に発見でき、容易に交換できるようにする。
【解決手段】定温輸送容器用の内箱は、略長方形板状の底面部411と、底面部411の四辺それぞれから底面部411に対して略垂直に立ち上がり側辺において互いに接続している略長方形板状の側面部412a~412dとを有する保護材41と、前記底面部411及び前記側面部412a~412dそれぞれの外側に貼着され、略長方形板状であり、中央に貫通孔421a~421eを有する緩衝材42a~42eとを備える。前記保護材41は、少なくとも前記貫通孔421a~421eに対応する位置が透明である。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略長方形板状の底面部と、前記底面部の四辺それぞれから前記底面部に対して略垂直に立ち上がり側辺において互いに接続している略長方形板状の側面部とを有する保護材と、
前記底面部及び前記側面部それぞれの外側に貼着され、略長方形板状であり、中央に貫通孔を有する緩衝材と
を備え、
前記保護材は、少なくとも前記貫通孔に対応する位置が透明である、
定温輸送容器用の内箱。
【請求項2】
前記保護材は、
前記側面部それぞれの上辺から前記側面部に対して略垂直に外側へ向けて延びる略長方形板状の鍔部と、
前記鍔部の外側の辺から前記側面部に対して略平行に垂れ下がる舌部と
を更に有する、請求項1の内箱。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された内箱と、略直方体箱状であり上面が開口した外箱と、五枚の真空断熱材とを備え、
前記真空断熱材は、略長方形板状であり、上面が開口した箱状となるよう前記外箱のなかに配置され、
前記内箱は、前記真空断熱材によって構成された箱の内側に配置され、これにより、前記外箱との間に前記真空断熱材を安定して挟持し、前記真空断熱材を保護するとともに、前記緩衝材の貫通孔を通して前記真空断熱材の表面の状態を観察できる、
定温輸送容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材を用いた定温輸送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
真空断熱材は、多孔質の心材の周囲をフィルムで覆い、フィルムのなかを真空に近い気圧(以下、単に「真空」という。)まで下げることにより、断熱性能を高くした断熱材である(例えば、特許文献1)。
特許文献2は、真空断熱材を用いた恒温容器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58-145678号公報
【特許文献2】特開2016-222271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空断熱材は、フィルムに傷が付くと、内部の真空が破壊され断熱性能が低下する。
このため、真空断熱材のフィルムに傷が付かないよう保護する必要がある。また、フィルムに傷が付いた場合には、そのことを容易に発見できるようにする必要がある。更に、フィルムに傷が付いたことを発見した場合には、真空断熱材を容易に交換することができるようにする必要がある。
本発明は、例えば、このような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
定温輸送容器用の内箱は、略長方形板状の底面部と、前記底面部の四辺それぞれから前記底面部に対して略垂直に立ち上がり側辺において互いに接続している略長方形板状の側面部とを有する保護材と、前記底面部及び前記側面部それぞれの外側に貼着され、略長方形板状であり、中央に貫通孔を有する緩衝材とを備える。前記保護材は、少なくとも前記貫通孔に対応する位置が透明である。
前記保護材は、前記側面部それぞれの上辺から前記側面部に対して略垂直に外側へ向けて延びる略長方形板状の鍔部と、前記鍔部の外側の辺から前記側面部に対して略平行に垂れ下がる舌部とを更に有してもよい。
定温輸送容器は、前記内箱と、略直方体箱状であり上面が開口した外箱と、五枚の真空断熱材とを備える。前記真空断熱材は、略長方形板状であり、上面が開口した箱状となるよう前記外箱のなかに配置されている。前記内箱は、前記真空断熱材によって構成された箱の内側に配置され、これにより、前記外箱との間に前記真空断熱材を安定して挟持し、前記真空断熱材を保護するとともに、前記緩衝材の貫通孔を通して前記真空断熱材の表面の状態を観察できる。
【発明の効果】
【0006】
前記内箱によれば、保護材及び緩衝材によって真空断熱材を保護できるとともに、保護材及び緩衝材の貫通孔を通して真空断熱材の表面フィルムを観察できるので、真空断熱材の内部の真空が破壊された場合に、そのことを容易に発見できる。
前記定温輸送容器によれば、内箱が一体化されているので、内箱を取り外すことにより、真空断熱材を容易に交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】蓋体の真空断熱材及び外箱の一例を示す斜視図。
【
図10】箱体の真空断熱材によって構成される中箱の一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1及び
図2に示すとおり、定温輸送容器10は、例えば、蓋体11と、箱体12とを有する。
箱体12は、例えば直方体箱状であり、上面が開口し、内部に例えば直方体状の収容空間を有する(
図7参照)。
蓋体11は、例えば長方形板状であり、箱体12の上面にある開口を閉鎖する(
図3及び
図4参照)。
【0009】
図3~
図6に示すとおり、蓋体11は、例えば、真空断熱材112と、外箱113と、カバー114とを有する。
真空断熱材112は、厚さが例えば30mm(ミリメートル)の長方形板状である。
外箱113は、例えば直方体箱状であり、下面が開口し、内部に真空断熱材112を収容している。外箱113は、厚さが例えば10mmである長方形板状の緩衝材料(例えば株式会社カネカ(東京)製のエペラン(登録商標)など)を組み合わせて形成される。
カバー114は、例えば直方体袋状であり、真空断熱材112及び外箱113を覆っている。カバー114は、下面に貫通孔141を有する。これにより、貫通孔141を通して真空断熱材112の表面フィルムを観察することができる。
また、カバー114には、ファスナーなどの開閉部(不図示)が設けられている。これにより、カバー114を容易に取り外すことができるので、真空断熱材112を容易に交換することができる。
【0010】
図7に示すとおり、箱体12は、例えば、真空断熱材22a~22e(
図9参照)と、外箱23と、内箱24とを有する。
図8に示すとおり、外箱23は、例えば直方体箱状であり、上面が開口し、内部に例えば直方体状の空間を有する。外箱23は、厚さが例えば10mmである長方形板状の緩衝材料(例えばエペラン(登録商標)など)を組み合わせて形成されている。外箱23は、例えば、底面部31と、四つの側面部32a~32dとを有する。なお、底面部31は、厚さが例えば5mmの長方形板状である補強材料(例えばテクセルなど)が緩衝材料の外側に貼着されていてもよい。
【0011】
図9に示すとおり、真空断熱材22a~22eは、厚さが例えば30mmの長方形板状である。
真空断熱材22eは、外箱23の内部空間の底面とほぼ同じ大きさを有し、外箱23の底面部31の上に配置されている。
真空断熱材22b,22dは、外箱23の内部空間の左右側面とほぼ同じ大きさを有する。ただし、高さは真空断熱材22eの分だけ小さい。真空断熱材22b,22dは、外箱23の側面部32b,32dの内側に配置され、真空断熱材22eの上に配置されている。
真空断熱材22a,22cは、外箱23の内部空間の前後側面とほぼ同じ大きさを有する。ただし、高さは真空断熱材22eの分だけ小さく、幅は真空断熱材22b,22dの分だけ小さい。真空断熱材22a,22cは、外箱23の側面部32a,32cの内側に配置され、真空断熱材22eの上に配置されている。
五枚の真空断熱材22a~22eをこのように配置することにより、
図10に示すような上面が開口した直方体箱状になり、直方体状の空間が内部に形成される。
【0012】
図11~
図13に示すとおり、内箱24は、例えば、保護材41と、緩衝材42a~42eとを有する。
保護材41は、厚さが例えば0.3mmである透明材料(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)など)で形成されている。
保護材41は、例えば、底面部411と、四つの側面部412a~412dと、四つの鍔部413a~413dと、四つの舌部414a~414dとを有する。
底面部411は、例えば長方形板状であり、真空断熱材22a~22eによって形成される内部空間の底面とほぼ同じ大きさを有する。なお、底面部411には、収容空間に収容された物品の荷重が加わるので、厚さが保護材41の他の部分よりも厚くてもよく、例えば0.6mmであってもよい。
【0013】
側面部412aは、例えば長方形板状であり、幅が底面部411とほぼ同じであり、高さは、真空断熱材22a~22eによって形成される内部空間の側面とほぼ同じである。側面部412aは、下側の辺が底面部411の前側の辺に接続し、底面部411に対してほぼ垂直に立ち上がっている。
側面部412bは、例えば長方形板状であり、奥行きが底面部411とほぼ同じであり、高さが側面部412aとほぼ同じである。側面部412bは、下側の辺が底面部411の左側の辺に接続し、前側の辺が側面部412aの左側の辺に接続し、底面部411及び側面部412aに対してほぼ垂直に延びている。
側面部412cは、例えば長方形板状であり、幅が底面部411とほぼ同じであり、高さが側面部412aとほぼ同じである。側面部412cは、下側の辺が底面部411の後側の辺に接続し、左側の辺が側面部412bの後側の辺に接続し、底面部411及び側面部412bに対してほぼ垂直、かつ、側面部412aとほぼ平行に延びている。
側面部412dは、例えば長方形板状であり、奥行きが底面部411とほぼ同じであり、高さが側面部412aとほぼ同じである。側面部412dは、下側の辺が底面部411と接続し、前側の辺が側面部412aと接続し、後側の辺が側面部412cと接続し、底面部411及び側面部412a,412bに対してほぼ垂直、かつ、側面部412bとほぼ平行に延びている。
底面部411及び側面部412a~412dは、真空断熱材22a~22eの内側の面を覆い、これにより、真空断熱材22a~22eを保護する。そして、底面部411及び側面部412a~412dによって囲まれた空間が、箱体12の収容空間となる。
【0014】
鍔部413aは、例えば長方形板状であり、幅が側面部412aとほぼ同じであり、奥行きが真空断熱材22aの厚さとほぼ同じである。鍔部413aは、後側の辺が側面部412aの上側の辺に接続し、側面部412aに対してほぼ垂直に、手前側へ向けて延びている。
鍔部413bは、例えば長方形板状であり、奥行きが側面部412bとほぼ同じであり、幅が真空断熱材22bの厚さとほぼ同じである。鍔部413bは、右側の辺が側面部412bの上側の辺に接続し、側面部412bに対してほぼ垂直に、左側へ向けて延びている。
鍔部413cは、例えば長方形板状であり、幅が側面部412cとほぼ同じであり、奥行きが真空断熱材22cの厚さとほぼ同じである。鍔部413cは、前側の辺が側面部412cの上側の辺に接続し、側面部412cに対してほぼ垂直に、後側へ向けて延びている。
鍔部413dは、例えば長方形板状であり、奥行きが側面部412dとほぼ同じであり、幅が真空断熱材22dの厚さとほぼ同じである。鍔部413dは、左側の辺が側面部412dの上側の辺に接続し、側面部412dに対してほぼ垂直に、右側へ向けて延びている。
鍔部413a~413dは、真空断熱材22a~22dの上側の面を覆い、これにより、真空断熱材22a~22dを保護する。
【0015】
舌部414aは、例えば長方形板状であり、幅が鍔部413aとほぼ同じであり、上側の辺が鍔部413aの前側の辺に接続し、鍔部413aに対してほぼ垂直に垂れ下がっている。
舌部414bは、例えば長方形板状であり、奥行きが鍔部413bとほぼ同じであり、上側の辺が鍔部413bの左側の辺に接続し、鍔部413bに対してほぼ垂直に垂れ下がっている。
舌部414cは、例えば長方形板状であり、幅が鍔部413cとほぼ同じであり、上側の辺が鍔部413cの後側の辺に接続し、鍔部413cに対してほぼ垂直に垂れ下がっている。
舌部414dは、例えば長方形板状であり、奥行きが鍔部413dとほぼ同じであり、上側の辺が鍔部413dの右側の辺に接続し、鍔部413dに対してほぼ垂直に垂れ下がっている。
舌部414a~414dは、外箱23と真空断熱材22a~22dとの間の隙間に挟み込まれる。これにより、鍔部413a~413dがめくれ上がるのを防ぐ。
【0016】
緩衝材42a~42eは、厚さが例えば3mmである長方形板状の緩衝材料(例えば積水マテリアルソリューションズ株式会社(東京)製のネオシキロン(登録商標)など)で形成されている。
緩衝材42aは、保護材41の側面部412aとほぼ同じ大きさであり、中央にほぼ長方形状の貫通孔421aを有する。緩衝材42aは、側面部412aの外側(前側)に貼着されている。
緩衝材42bは、保護材41の側面部412bとほぼ同じ大きさであり、中央にほぼ長方形状の貫通孔421bを有する。緩衝材42bは、側面部412bの外側(左側)の面に貼着されている。
緩衝材42cは、保護材41の側面部412cとほぼ同じ大きさであり、中央にほぼ長方形状の貫通孔421cを有する。緩衝材42cは、側面部412cの外側(後側)の面に貼着されている。
緩衝材42dは、保護材41の側面部412dとほぼ同じ大きさであり、中央にほぼ長方形状の貫通孔421dを有する。緩衝材42dは、側面部412dの外側(右側)の面に貼着されている。
緩衝材42eは、保護材41の側面部412eとほぼ同じ大きさであり、中央にほぼ長方形状の貫通孔421eを有する。緩衝材42eは、底面部411の外側(下側)の面に貼着されている。
緩衝材42a~42eは、箱体12の収容空間から保護材41に加わる力が真空断熱材22a~22eに直接伝達されないよう和らげる。なお、底面部411に加わる力は側面部412a~412dに加わる力より大きいので、緩衝材42eの貫通孔421eは、他の緩衝材42a~42dの貫通孔421a~421dよりも小さいことが好ましい。
【0017】
保護材41が透明材料で形成され、緩衝材42a~42eに貫通孔421a~421eが設けられているので、箱体12の内部空間から貫通孔421a~421eを通して真空断熱材22a~22eの表面フィルムの状態を観察することができる。
なお、保護材41は、緩衝材42a~42eの貫通孔421a~421eに対応する部分のみ透明であればよく、それ以外の部分は不透明であってもよい。
【0018】
真空断熱材22a~22eは、正常であれば、内部の気圧が外部よりも低いので、表面フィルムに多数の皺が観察できる。これに対し、表面フィルムに傷が付き、内部の真空状態が破壊されると、内部の気圧が外部と同じになるので、表面フィルムの皺がなくなり、つるっとした状態になる。
したがって、表面フィルムのどこか一か所を観察すれば、内部の真空状態が破壊されていないかを容易に確認することができる。
【0019】
真空断熱材22a~22dのいずれかの真空状態が破壊されていることを発見した場合、内箱24を引き抜くことにより、真空断熱材を容易に交換できる。
真空断熱材22eの真空状態が破壊された場合は、内箱24を引き抜いて、更に、真空断熱材22a~22dを取り出すことにより、真空断熱材22eを容易に交換できる。
真空断熱材22a~22eの内側の面を保護する材料が内箱24として一体化されているので、交換の手間を少なくすることができる。
【0020】
なお、真空断熱材22a~22eの大きさは、外箱23の内部空間にぴったり嵌まる大きさであるほうが隙間ができにくいが、そうすると、交換に手間がかかる。このため、わずかな遊びがあるほうが好ましい。
ただし、真空断熱材22a及び22cの幅については、真空断熱材22b及び22dとの間に隙間ができるのを防ぐため、遊びはほとんどないほうが好ましい。
また、内箱24の大きさは、外箱23との間に真空断熱材22a~22eをぴったりと挟み込む大きさであることが好ましい。そうすれば、真空断熱材22a~22eを安定して保持できるとともに、真空断熱材22a~22eの間に隙間があったとしても、その隙間を封じ込めることができるので、断熱性能の低下を防ぐことができる。
【0021】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【符号の説明】
【0022】
10 定温輸送容器、11 蓋体、12 箱体、112,22a~22e 真空断熱材、113,23 外箱、114 カバー、24 内箱、31,411 底面部、32a~32d,412a~412d 側面部、41 保護材、42a~42e 緩衝材、413a~413d 鍔部、414a~414d 舌部、141,421a~421e 貫通孔。